説明

フィルタユニットパネル

【課題】フィルタユニットの枠体と外枠とが共に樹脂部材であり、枠体と外枠とが溶着によって一体化された構成において、設備へ固定された際のリークや破損が生じにくいフィルタユニットパネルを提供する。
【解決手段】本発明のフィルタユニットパネル1は、複数のフィルタユニット13と、複数のフィルタユニット13を囲む外枠14とを備える。複数のフィルタユニット13は、それぞれ、フィルタ濾材11と、フィルタ濾材11を支持する枠体12とを備える。外枠14および枠体12がともに樹脂部材である。複数のフィルタユニット13は、隣接する枠体12の溶着により一体化されている。複数のフィルタユニット13と外枠14とは、外枠14と外枠14に隣接する枠体12との溶着により一体化されている。外枠14の厚さは、隣接するフィルタユニット13の厚さよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム、空調設備、ガスタービンおよび蒸気タービン等の吸気口および/または排気口において使用されるフィルタユニットパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム、空調設備、ガスタービンおよび蒸気タービン等の吸気口および/または排気口には、エアフィルタが設けられている。これらの用途におけるエアフィルタとしては、フィルタ濾材とそれを支持する枠体とを有する複数のフィルタユニットを、その外周面が互いに接するように連結させたフィルタユニットパネルが適している。特許文献1には、樹脂部材を枠体とするフィルタユニットを連結したフィルタユニットパネルの一例が開示されている。
【0003】
フィルタユニットパネルには、その四周を囲む外枠がさらに設けられることがある。外枠は、フィルタユニットを保護し、パネル全体の強度を増し、フィルタユニットの設置を容易にする。従来、外枠としては、アルミ等の金属部材や木製部材が用いられてきた。
【0004】
フィルタユニットの枠体を樹脂部材とし、外枠に金属部材や木製部材を用いる場合、フィルタユニットと外枠との接合には接着剤を用いるのが一般的である。しかし、接着剤を用いて接合すると、エアフィルタから接着剤に由来する有機ガスが発生することがある。エアフィルタからの有機ガスの発生は、とりわけクリーンルーム等にエアフィルタを用いる場合には、防止しなければならない。
【0005】
そこで、樹脂部材を枠体とする複数のフィルタユニットと共にこれらのユニットを囲む外枠を用いながらも、有機ガスの発生を抑制するフィルタユニットパネルとして、外枠の材料に樹脂を用いたフィルタユニットパネルが提案されている(例えば特許文献2参照)。このフィルタユニットパネルに用いられている外枠は、例えば、その横断面が図7に示すような形状を有する外枠101であり、図8に示すようにフィルタユニット102と一体化される。外枠101のフィルタユニット102と接する面には、図7に示すように後退部105が形成されている。外枠101の上面および下面には、フィルタユニット102の枠体104と接合される部分に凸部101a,101bが形成されている。一方、フィルタユニット102は、フィルタ濾材103とフィルタ濾材103の四周を支持する枠体104とによって構成されている。枠体104にも、外枠101と接合される部分に凸部104a,104bが形成されている。外枠101とフィルタユニット102とは、凸部101aと凸部104a、凸部101bと凸部104bを、それぞれ溶着リブとして溶着することにより、一体化される。溶解した凸部101aと凸部104a、凸部101bと凸部104bは、フィルタユニット102の枠体104と外枠101との上面および下面を跨ぐように変形し、その状態で固化して接合樹脂106a,106bとなる(図9参照)。
【0006】
このように、外枠の材料として金属に代えて樹脂を用いることにより、フィルタユニットパネル全体を焼却可能な材料により構成することが可能になる。焼却可能な材料により構成したフィルタユニットパネルは、廃棄処分が容易となる。さらに、係止つめ等を用いて接合するパネルと比べ、溶着により枠体同士および枠体と外枠とを接合したフィルタユニットパネルは、効率よく製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−119683号公報
【特許文献2】特開2009−119418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フィルタユニットパネルの外枠に求められる基本性能に、フィルタ形状の保持、設備とフィルタユニットとのシール、および、設備への固定がある。設備への固定には、押さえ金具等が用いられる。
【0009】
例えば、特許文献2に開示されたフィルタユニットパネルは、図10に示すような状態で、設備側に固定される。具体的には、設備側に設けられたフィルタユニットパネル取付枠110に、ガスケット111を介してフィルタユニットパネルの外枠101の下面を当接させると共に、押さえ金具112を外枠101の上面に当てて、ボルト113とナット114とからなる締結部材115を用いて押さえ金具112を取付枠110に対して締め付けることによって、フィルタユニットパネルの外枠101が取付枠110に対して押さえ金具112で固定される。なお、ここでの外枠101の上面および下面とは、フィルタユニットパネルを通過する気流の上流側に位置する面を上面、下流側に位置する面を下面としているため、図の上下とは逆になっている。
【0010】
フィルタユニット102の枠体104と外枠101とが樹脂材料で形成されている従来のフィルタユニットパネルでは、外枠101の厚さ(高さ)が、フィルタユニット102(フィルタユニット102の枠体104と外枠101との溶着部分も含む)の厚さ(高さ)と同程度かそれよりも小さかった。したがって、図10に示すように、従来のフィルタユニットパネルが設備に固定された場合、フィルタユニット102の厚さよりも外枠101の厚さの方が小さいため、ガスケット111でのシール不足によるリークが懸念されていた。さらに、この場合、押さえ金具112はフィルタユニット102および/または溶着部分と接することになるため、押さえ金具112でフィルタユニットパネルを固定するための全応力がフィルタユニット102および/または溶着部分に加えられることになり、フィルタユニット102および/または溶着部分が破損してリークが生じる場合があった。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、フィルタユニットの枠体と外枠とが共に樹脂部材であり、枠体と外枠とが溶着によって一体化されたフィルタユニットパネルにおいて、設備へ固定された際にリークや破損が生じにくいフィルタユニットパネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数のフィルタユニットと、前記複数のフィルタユニットを囲む外枠とを備え、前記複数のフィルタユニットが、それぞれ、フィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持する枠体とを備え、前記外枠および前記枠体がともに樹脂部材であり、前記複数のフィルタユニットが隣接する枠体の溶着により一体化され、前記複数のフィルタユニットと前記外枠とは、前記外枠と前記外枠に隣接する枠体との溶着により一体化され、前記外枠の厚さが、隣接するフィルタユニットの厚さよりも大きい、フィルタユニットパネルを提供する。
【0013】
なお、本発明のフィルタユニットパネルにおける外枠の厚さとは、外枠のうち、枠体との溶着に用いられる溶着部分を除いた部分の厚さのことである。また、フィルタユニットの厚さとは、フィルタユニットの枠体と外枠との溶着部分も含んだフィルタユニットの厚さのことである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルタユニットパネルは、外枠の厚さが隣接するフィルタユニットの厚さよりも大きい。そのため、設備に固定された状態におけるリークを抑制できる。また、フィルタユニットよりも外枠の方が厚いため、本発明のフィルタユニットパネルが固定部材によって設備に固定された場合に、当該固定部材に当接するのが外枠となる。したがって、フィルタユニットパネルを固定するための全応力がフィルタユニットおよび/または溶着部分に加えられることがないので、フィルタユニットの破損および溶着部分の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態におけるフィルタユニットパネルの平面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるフィルタユニットパネルの外枠の一例を示す横断面図である。
【図3】図2の外枠をフィルタユニットに当接させた状態を示す断面図である。
【図4】図2の外枠とフィルタユニットとを溶着した状態を示す断面図である。
【図5】本発明のフィルタユニットパネルが設備に固定された状態の一例を示す斜視図である。
【図6】図5に示す状態において、フィルタユニットパネルが固定部材によって設備に固定された状態を示す、一部断面を含む図である。
【図7】従来の外枠の一例を示す横断面図である。
【図8】図7の外枠にフィルタユニットを当接させた状態を示す断面図である。
【図9】図7の外枠とフィルタユニットとを溶着した状態を示す断面図である。
【図10】従来のフィルタユニットパネルが固定部材によって設備に固定された状態を示す、一部断面を含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のフィルタユニットパネルの実施の形態を、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の記載は本発明を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態におけるフィルタユニットパネル1の平面図である。図1に示すように、本実施の形態のフィルタユニットパネル1は、複数(本実施の形態では6つ)のフィルタユニット13と、複数のフィルタユニット13を囲む外枠14とを備えている。複数のフィルタユニット13は、それぞれ、フィルタ濾材11と、フィルタ濾材11を支持する枠体12とを備えている。フィルタ濾材11は、濾過面積の増加のためにプリーツ加工(ひだ折り加工)されている。フィルタ濾材11は、平面視(フィルタ濾材を通過する気流に沿って見た状態を指す)で矩形であり、枠体12は、平面視でその内周および外周がそれぞれ矩形を描く額縁形状を有し、その内周面でフィルタ濾材11を支持している。
【0018】
枠体12は樹脂部材であり、複数のフィルタユニット13は、互いに隣接する枠体12の溶着により一体化されている。枠体12としては、フィルタ濾材11の周縁部を固定するように、より具体的には周縁部を埋め込んで固定するように、射出成形された樹脂部材が好適である。射出成形は、枠体12の形成とフィルタ濾材11の固定とを同時に行い、製造工程を簡略化するものである。射出成形によると、樹脂部材にソリ、ヒケといった欠点が生じやすい。このため、射出成形による樹脂部材を最外に配置した状態でエアフィルタを設置すると、エアフィルタのシーリングが不完全になるおそれがある。しかし、射出成形による枠体12のこの欠点は、外枠14を設けることによって、その表出を防止できる。
【0019】
枠体12の外周面には、枠体12の周方向に伸長し、凸部(峰部)および凹部(谷部)が交互に配列された嵌合部(図3および図4の嵌合部12c参照)が形成されていてもよい。このような嵌合部は、複数のフィルタユニット13を一体化する時に、隣接するフィルタユニット13の嵌合部と嵌め合わされることになる。したがって、このような嵌合部を設けることにより、フィルタユニット13同士の溶着部分におけるリークが抑制できる。なお、枠体12の外周面に嵌合部が設けられていなくてもよい。
【0020】
フィルタ濾材11よりも当該濾材11を通過する気流の上流側に位置して前記気流の上流側を向く枠体12の面を上面、フィルタ濾材11よりも前記気流の下流側に位置して前記気流の下流側を向く枠体12の面を下面とする場合、枠体12の上面および下面には凸部が形成されており、この凸部は枠体12の外周面を延伸した壁面を有する(図3に示された枠体12の凸部12a,12b参照)。この凸部は、複数のフィルタユニット同士を一体化するとき、さらに外枠14と一体化するときに、溶着リブとして機能する。
【0021】
外枠14は、フィルタユニット13を保護し、パネル全体の強度を増し、フィルタユニットパネル1の設置を容易にする。外枠14は樹脂部材であり、隣接するフィルタユニット13の枠体12と溶着によって一体化されている。外枠14は、4本の棒状体を一体化して構成するとよい。図2に、外枠14の一例の横断面を示す。外枠14の横断面には、パネルの軽量化に寄与する中空部15が表れている。
【0022】
外枠14の内周面(フィルタユニットに接する面)には後退部16が形成されている。後退部16は、フィルタユニット13の枠体12の外周面に設けられた嵌合部と接しないように形成される(図3および図4参照)。外枠14は、後退部16の上部および下部においてフィルタユニット13に接する。後退部16を形成するのは嵌合部を収容するためであるので、枠体12に嵌合部が設けられていない場合は、外枠14に後退部16を設ける必要はない。外枠14には、後退部16に代えてユニットの嵌合部と嵌り合う嵌合部を形成してもよく、これによるとパネルの剛性がさらに向上する。しかし、この場合は、外枠14を配置するべきフィルタユニット13の最外面に現れている嵌合部に応じた嵌合部を用意する必要が生じ、複数種類の外枠を準備しなければならないことがある。他方、後退部16を利用すると、製造をやや煩雑にする上記のような必要がなくなる。
【0023】
外枠14の上面17aおよび下面17bには、凸部18aおよび凸部18bがそれぞれ形成されている。凸部18a,18bは、外枠14の内周面を延伸した壁面を有する。図3に示すように、凸部18aおよび凸部18bは、それぞれ、外枠14がフィルタユニット13に接した状態でフィルタユニット13の枠体12に形成された凸部12aおよび凸部12bと接するように形成されている。なお、ここでは、フィルタ濾材11よりも当該濾材11を通過する気流の上流側に位置して前記気流の上流側を向く外枠14の面を上面17a、フィルタ濾材11よりも前記気流の下流側に位置して前記気流の下流側を向く外枠14の面を下面17bとする。
【0024】
外枠14とフィルタユニット13とは、凸部18a,18bおよび凸部12a,12bを溶着リブとして溶着することにより一体化される。図4に示すように、溶解した凸部18aおよび凸部12aは、外枠14と枠体12の上面を跨ぐように変形し、この状態で接合樹脂19aとなる。また、溶解した凸部18bおよび凸部12bは、外枠14と枠体12の下面を跨ぐように変形し、この状態で接合樹脂19bとなる。凸部18a,18bの形状は、特には限定されないが、テーパー状であることが好ましい。テーパー状とすることで、溶着時に溶解した凸部18a,18bの樹脂が凸部18a,18bに隣接する溝の部分に流れ込んで溜まることを抑制できるので、接合樹脂19a,19bを外枠14と枠体12とに跨った状態にしやすくなる。
【0025】
外枠14は、フィルタユニット13と一体化された状態において、その厚さがフィルタユニット13の厚さよりも大きくなるように形成されている。例えば、外枠14の上面17aの位置が枠体12の上面の位置および溶着部分(外枠14及び枠体12の上面のうち、外枠14と枠体12との溶着に用いられている部分。本実施の形態では接合樹脂19aの部分に相当する。)の位置よりも前記気流の上流側に位置し、かつ、外枠14の下面17bの位置が枠体12の下面の位置および溶着部分(外枠14および枠体12の下面のうち、外枠14と枠体12との溶着に用いられている部分。本実施の形態では接合樹脂19bの部分に相当する。)の位置よりも前記気流の下流側に位置するように、外枠14を形成するとよい。ただし、外枠14の上面17aの位置とは、外枠14の上面17aのうち、枠体12との溶着に用いられる溶着部分を除く領域において、前記気流の最も上流側の位置のことである。外枠14の下面17bの位置とは、外枠14の下面17bのうち、枠体12との溶着に用いられる溶着部分を除く領域において、前記気流の最も下流側の位置のことである。また、枠体12の上面の位置とは、枠体12の上面のうち前記気流の最も上流側の位置のことである。枠体12の下面の位置とは、枠体12の下面のうち前記気流の最も下流側の位置のことである。溶着部分(接合樹脂19a)の位置とは、当該溶着部分のうち前記気流の最も上流側の位置のことである。溶着部分(接合樹脂19b)の位置とは、当該溶着部分のうち前記気流の最も下流側の位置のことである。
【0026】
外枠14は、フィルタユニット13と一体化された状態において、その厚さがフィルタユニット13の厚さよりも大きくなるような形状であればよいため、図2に示した形状に限らない。外枠14を構成する複数本の棒状体は、それぞれ、押出成形による樹脂部材、特に横断面に中空部および/または後退部が形成されるように押出成形された樹脂部材であることが好ましい。
【0027】
枠体12および外枠14を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミド系樹脂を含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ABS樹脂等)、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、2種以上を混合して用いてもよいし、枠体12と外枠14とで異なる種類の樹脂を用いても構わない。樹脂には、ガラス繊維および炭素繊維等の充填剤、顔料、抗菌剤等を添加してもよい。
【0028】
フィルタ濾材11には、公知のフィルタ濾材およびそれと同等以上の防塵性能を有するフィルタ濾材を使用できる。フィルタ濾材11としては、メルトブロー不織布、エレクトレットフィルタ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜等を用いることができる。発塵しないクリーンな材料であり、集塵性能が高いとの理由から、PTFE多孔質膜を用いることが望ましい。好ましいフィルタ濾材11としては、PTFE多孔質膜と通気性繊維層との積層体が挙げられる。通気性繊維層は、例えば高分子繊維材料から構成するとよい。フィルタ濾材11の材料としてはガラス繊維も知られているが、ガラス繊維をフィルタ濾材として用いると焼却処分が難しくなる。
【0029】
PTFE多孔質膜は、例えば以下のように製造できる。
【0030】
まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面をぬらすことができ、抽出や過熱により除去できるものであれば、特に制約はない。例えば、流動パラフィン、ナフサ、ホワイトオイル等を使用できる。液状添加量は、PTFEファインパウダー100重量部に対して5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形は、液状潤滑剤が絞り出せない程度の圧力で行う。
【0031】
次に、予備成形体をペースト押出または圧延によってシート状に成形し、このPTFEシート体を少なくとも一軸方向に延伸してPTFE多孔質膜を得る。なお、PTFEシート体の延伸は、液状潤滑剤を除去してから行うのが望ましい。延伸倍率は特に規定されず、圧力損失、捕集効率に応じて適宜設定すればよい。延伸ムラや延伸時の破談などを考慮すると、面積延伸倍率50〜900倍が好ましい。
【0032】
PTFE多孔膜についての平均孔計は、0.01〜5μmが好ましく、平均繊維径は、0.01〜0.3μmが好ましい。5.3cm/secの流速で空気を透過させる時の圧力損失は、10〜295Paが好ましい。
【0033】
通気性繊維材料は、補強材としての機能を有する。さらにそれ自身も粉塵捕集性能を有し、プレフィルタ濾材として作用する場合もある。通気性繊維材料としては、PTFE多孔質膜よりも高強度および高通気性を有するものが好適であり、その材料および形態等は特に制限されない。材料としては、フェルト、不織布、織布およびメッシュ等が挙げられる。強度、捕集性、柔軟性の観点からは不織布が好ましく、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド及びこれらの複合材料を用いることができる。
【0034】
上記のPTFE多孔質膜と通気性繊維材料とを積層させることにより、PTFE多孔質膜と通気性繊維層との積層体からなる濾材が得られるが、その積層方法は特に限定されない。単にこれらを重ね合わせてもよいし、接着剤ラミネート、熱ラミネート等の方法で積層してもよい。
【0035】
フィルタユニットを構成するフィルタ濾材は、通気面積及び捕集面積を増大させるために、プリーツ加工されていることが好ましい。
【0036】
フィルタ濾材11の厚さは、特に限定されないが、プリーツ加工した際に形状を保持する程度の厚さは必要であるため、0.05〜1mmが好ましい。フィルタ濾材の圧力損失は、線速5.3cm/secの時に20〜300Paであることが好ましく、50〜200Paであることがより好ましい。0.3〜0.5μmの粒子の捕集効率が、線速5.3cm/secの時に99%以上であることが好ましく99.97%以上がより好ましい。
【0037】
次に、本実施の形態のフィルタユニットパネル1の設備への固定について説明する。
【0038】
図5は、フィルタユニットパネル1が設備に固定された状態の一例を示す斜視図である。また、図6は、フィルタユニットパネル1が固定部材によって固定された状態を詳しく示す、一部断面を含む図である。設備側に設けられたフィルタユニットパネル取付枠51に、ガスケット52を介してフィルタユニットパネル1の外枠14の下面17bを当接させると共に、押さえ金具53を外枠14の上面17aに当てて、ボルト54とナット55とからなる締結部材56を用いて押さえ金具53を取付枠51に対して締め付けることによって、フィルタユニットパネル1の外枠14が取付枠51に対して押さえ金具53で固定される。このようにして、フィルタユニットパネル1が設備側に固定される。フィルタユニットパネル1の外枠14は、フィルタユニット13と一体化された状態において、その厚さがフィルタユニット13の厚さよりも大きくなるように形成されており、外枠14の上面17aの位置が枠体12の上面の位置および溶着部分の位置よりも前記気流の上流側に位置し、かつ、外枠14の下面17bの位置が枠体12の下面の位置および溶着部分の位置よりも前記気流の下流側に位置する。したがって、フィルタユニットパネル1が設備に固定される際、押さえ金具53及びガスケット52と、外枠14の上面17a及び下面17bとがそれぞれ密着するので、シール不足によるリークを抑制できる。さらに、この場合、押さえ金具53はフィルタユニット1の外枠14の上面17aと接することになるため、押さえ金具53でフィルタユニットパネル1を固定するための応力は、外枠14の上面17aにかかることになる。これにより、フィルタユニット13の破損や溶着部分の破損が生じにくくなり、これらの破損に起因するリークが抑制される。
【実施例】
【0039】
次に、本発明のフィルタユニットパネルについて、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
実施例のフィルタユニットパネルとして、図1に示すフィルタユニットパネル1と同様の構成を有するものを作製した。
【0041】
フィルタ濾材として、PTFE多孔質膜と通気性繊維層との積層体(日東電工社製「NTF9514−H21」)を、山高さが22mmで山の数が93個となるようにプリーツ加工したものを用いた。このフィルタ濾材を射出成形機の金型にセットし、ABS樹脂を射出成形して枠体を形成した。こうして、外形195mm×295mmのフィルタユニットを得た。次いで、6つのフィルタユニットを、外周面に形成された嵌合部を互いに嵌め合わせて固定し、さらに枠体の上面および下面に形成された凸部を溶着リブとする熱溶着により一体化した。熱溶着により一体化された後のフィルタユニットの高さ(厚さ)は26mmであった。
【0042】
外枠として、異形押出成形により、図2と同様の形状を有する部材を作製した。材料には、ABS樹脂およびガラス繊維からなるダイセルポリマー株式会社製の「セビアンVGR10」を用いた。この外枠の高さ(厚さ)(溶着リブとする凸部を除いた部分の高さ(厚さ))は27mmであり、フィルタユニットの高さ(厚さ)よりも大きかった。
【0043】
外枠とフィルタユニットの枠体とを、外枠および枠体の上面および下面に形成された凸部を溶着リブとする熱溶着により一体化し、外形610mm×610mmのフィルタユニットパネルを得た。得られたフィルタユニットパネルにおいて、外枠の上面の位置は枠体の上面の位置および溶着部分の位置よりも気流の上流側に位置し、かつ、外枠の下面の位置は枠体の下面の位置および溶着部分の位置よりも気流の下流側に位置するように、外枠とフィルタユニットの枠体とが一体化されていた。
【0044】
以上のように作製されたフィルタユニットパネルについて、以下の方法で強度試験およびリーク試験を行った。その結果を、表1に示す。
【0045】
<強度試験>
小型バイス(ERON製、「No.200」」)のクランプ面中央にフィルタユニットと外枠との結合部が配置されるように、フィルタユニットパネルを小型バイスに設置した。クランプ面のサイズは、100mm×73mmであった。株式会社中村製作所製のトルクレンチ「KANON(N900LCK)」を用い、トルク設定後にバイスを締め付けて、外枠とフィルタユニットとの結合部の破損状況を確認した。
【0046】
<リーク試験>
フィルタユニットパネルをダクトの下流側に設置し、風速計を用いて面風速0.5m/secとなるように風量を設定した。JIS B 9921に適合したパーティクルカウンターと、粒径が0.5μmよりも大きい試験粒子とを用いて、リークの有無を確認した。パーティクルカウンターの吸気量は28.3L/minとした。また、パーティクルカウンターに設けられたプローブは、30mm×50mmの吸入面積を有していた。フィルタユニットパネル上流側の試験粒子濃度が1×107個/minとなるようにPAO(ポリアルファオレフィン)粒子を発生させて、フィルタユニットパネル下流側に設置したプローブで1×103個以上/minの試験粒子が検出された場合にリーク有りと判断した。
【0047】
(比較例1)
外枠の形状を、図9に示した形状とした点以外は、実施例1と同様の方法でフィルタユニットパネルを作製した。なお、外枠の高さ(厚さ)は23mmであり、フィルタユニットの高さ(厚さ)よりも小さかった。したがって、比較例1のフィルタユニットパネルは、外枠の上面の位置が枠体の上面の位置および溶着部分の位置よりも気流の下流側に位置し、かつ、外枠の下面の位置は枠体の下面の位置および溶着部分の位置よりも気流の上流側に位置していた。
【0048】
比較例1のフィルタユニットパネルについても、実施例1と同様の方法で、強度試験およびリーク試験を行った。その結果を、表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
以上の結果から、外枠の高さ(厚さ)がフィルタユニットの高さ(厚さ)よりも大きく設定された、本発明の構成を満たす実施例1のフィルタユニットパネルは、比較例1のフィルタユニットパネルと比較して、設備へ固定された際のリークや破損が生じにくいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフィルタユニットパネルは、設備に固定された状態におけるリークを抑制でき、さらに設備に固定した場合に破損しにくいので、クリーンルーム等の特に高度な防塵が要求される用途においても、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルタユニットパネル
11 フィルタ濾材
12 枠体
12a、12b 枠体の凸部
12c 枠体の嵌合部
13 フィルタユニット
14 外枠
15 中空部
16 後退部
17a 外枠の上面
17b 外枠の下面
18a、18b 外枠の凸部
19a、19b 接合樹脂
51 フィルタユニットパネル取付枠
52 ガスケット
53 押さえ金具
54 ボルト
55 ナット
56 締結部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルタユニットと、前記複数のフィルタユニットを囲む外枠とを備え、
前記複数のフィルタユニットが、それぞれ、フィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持する枠体とを備え、
前記外枠および前記枠体がともに樹脂部材であり、
前記複数のフィルタユニットが隣接する枠体の溶着により一体化され、
前記複数のフィルタユニットと前記外枠とは、前記外枠と前記外枠に隣接する枠体との溶着により一体化され、
前記外枠の厚さが、隣接するフィルタユニットの厚さよりも大きい、
フィルタユニットパネル。
【請求項2】
前記外枠が、溶着により一体化された複数本の棒状体により構成された、請求項1に記載のフィルタユニットパネル。
【請求項3】
前記複数本の棒状体が、それぞれ、横断面に中空部および/または後退部が形成されるように押出成形された樹脂部材である、請求項2に記載のフィルタユニットパネル。
【請求項4】
前記フィルタ濾材よりも当該濾材を通過する気流の上流側に位置して前記気流の上流側を向く外枠および枠体の面を上面、前記フィルタ濾材よりも前記気流の下流側に位置して前記気流の下流側を向く外枠および枠体の面を下面としたときに、
前記外枠の上面の位置が、前記枠体の上面の位置よりも前記気流の上流側に位置し、かつ、前記外枠および前記枠体の上面における前記外枠と前記枠体との溶着部分の位置よりも前記気流の上流側に位置し、
前記外枠の下面の位置が、前記枠体の下面の位置よりも前記気流の下流側に位置し、かつ、前記外枠および前記枠体の下面における前記外枠と前記枠体との溶着部分の位置よりも前記気流の下流側に位置する、
請求項1〜3の何れか1項に記載のフィルタユニットパネル。
ただし、前記外枠の上面の位置とは、前記外枠の上面のうち、前記枠体との溶着に用いられる溶着部分を除く領域において、前記気流の最も上流側の位置のことであり、前記外枠の下面の位置とは、前記外枠の下面のうち、前記枠体との溶着に用いられる溶着部分を除く領域において、前記気流の最も下流側の位置のことである。また、前記枠体の上面の位置とは、前記枠体の上面のうち前記気流の最も上流側の位置のことであり、前記枠体の下面の位置とは、前記枠体の下面のうち前記気流の最も下流側の位置のことである。また、前記外枠および前記枠体の上面における前記外枠と前記枠体との溶着部分の位置とは、当該溶着部分のうち前記気流の最も上流側の位置のことであり、前記外枠および前記枠体の下面における前記外枠と前記枠体との溶着部分の位置とは、当該溶着部分のうち前記気流の最も下流側の位置のことである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate