説明

フィルタ及びそれを用いた低温貯蔵庫

【課題】機械室の開口を閉塞する機械室カバーの意匠にかかわらず、取付可能なフィルタ及び、当該フィルタを用いた低温貯蔵庫を提供する。
【解決手段】本発明のフィルタ35は、風向を決めるためのルーバ部32と、塵埃を捕獲するためのメッシュ33とを一体に備えたものであり、外気を取り込むための吸込口29Aを有する機械室カバー29に当該フィルタ35を吸込口29Aに対応させて取り付けることで、機械室カバー29にルーバを設けることなく、フィルタ35に設けられたルーバ部32にて風向を定めることができると共に、メッシュ33による塵埃捕獲を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタの構造に関するものであり、特に、低温貯蔵庫の機械室開口を閉塞する機械室カバーに取り付けられるフィルタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低温貯蔵庫等には、圧縮機や凝縮器等の機器を配設した機械室が構成されており、当該機械室の一面、例えば前面には、機械室内を冷却する空気を吸い込む空気吸込口が形成されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す如きショーケースでは、機械室の前側を閉塞するフロントパネルが設けられており、当該フロントパネルには、機械室内に配設された凝縮器と対応する位置に開口部が形成されている。そして、この開口部には、風向を決定するルーバが取り付けられている。更に、このフロントパネルに取り付けられたルーバに、メッシュの網体が着脱自在に取り付けられている。これにより、機械室内に配設された凝縮器用送風機が運転されると、フロントパネルに形成された開口部から外気が機械室内に吸い込まれ、凝縮器、圧縮機等を空冷した後、機械室後方から排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−224520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した如き構成では、フロントパネルの開口部を閉塞するルーバは、当該フロントパネルの設計に応じて構成されるものであり、装置自体の意匠変更を行う場合、当該ルーバの意匠も変更されることとなる。そのため、ルーバの意匠変更を行う度に、機械室内の冷却性能試験などを行う必要があった。
【0006】
また、このフロントパネルに取り付けられるメッシュの網体は、所定の剛性を有する板状に構成されたものであるため、フロントパネルの形状が湾曲して形成された場合であっても、当該フロントパネルの形状に沿って取り付けることが困難であり、当該フロントパネルの開口部と間隔を存して取り付けられることが多かった。
【0007】
本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、機械室の開口を閉塞する機械室カバーの意匠にかかわらず、取付可能なフィルタ及び、当該フィルタを用いた低温貯蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のフィルタは、風向を決めるためのルーバ部と、塵埃を捕獲するためのメッシュとを一体に備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、上記発明において、変形可能とするために可撓性を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の低温貯蔵庫は、断熱壁から成る本体内に構成された貯蔵室と、断熱壁外に構成された機械室と、この機械室内に設置された凝縮器及び凝縮器用送風機と、機械室の開口を閉塞する機械室カバーとを備え、この機械室カバーは外気を取り込むための吸込口を有し、上記各発明のフィルタが当該吸込口に対応して機械室カバーに取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、上記発明において、貯蔵室は前面が開口しており、この開口を開閉自在に閉塞する扉と、この扉に交換可能に取り付けられて当該扉外面を覆うと共に、この扉から前方に突出する扉装飾カバーとを備え、機械室カバーは機械室の開口より扉装飾カバーと略面一となるまで前方に突出しており、フィルタが取り付けられた状態で、このフィルタと凝縮器との間には所定の間隔が構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルタによれば、風向を決めるためのルーバ部と、塵埃を捕獲するためのメッシュとを一体に備えたことにより、筐体の吸込口等に当該フィルタを設けるのみで、該フィルタに設けられたルーバ部によって風向を定めることができると共に、メッシュによって空気中の塵埃を捕獲することが可能となる。
【0013】
そのため、例えば、請求項3の発明の如く、断熱壁から成る本体内に構成された貯蔵室と、断熱壁外に構成された機械室と、この機械室内に設置された凝縮器及び凝縮器用送風機と、機械室の開口を閉塞する機械室カバーとを備え、この機械室カバーに外気を取り込むための吸込口を有した低温貯蔵庫に、当該フィルタが当該吸込口に対応して機械室カバーに取り付けることにより、機械室カバー側に格別にルーバを設ける必要がなくなり、当該機械室カバーの構造を簡素化することが可能となる。
【0014】
また、風向を調整するルーバ部がフィルタに設けられていることにより、機械室カバーが異なるもの毎にルーバ部分の設計を不要とすることができる。従って、設計コストの低廉化を図ることができる。
【0015】
更に、請求項2の発明によれば、上記発明に加えて、フィルタは、変形可能とするために可撓性を備えたことにより、取付箇所、例えば、機械室カバーの形状が湾曲形状とされている場合であっても、当該形状に応じてフィルタを変形させて取り付けることが可能となる。また、フィルタ自体が有する張力によって、該フィルタを機械室カバーの取付箇所に保持させることも可能となり、取付構造の簡素化を図ることができる。
【0016】
また、請求項4の発明によれば、上記請求項3の発明において、貯蔵室は前面が開口しており、この開口を開閉自在に閉塞する扉と、この扉に交換可能に取り付けられて当該扉外面を覆うと共に、この扉から前方に突出する扉装飾カバーとを備え、機械室カバーは機械室の開口より扉装飾カバーと略面一となるまで前方に突出しており、フィルタが取り付けられた状態で、このフィルタと凝縮器との間には所定の間隔が構成されることにより、フィルタと凝縮器との間に所定の風圧調整空間を形成することが可能となる。
【0017】
そのため、機械室カバーに形成される吸込口の位置と、凝縮器の配設位置とが偏位している場合であっても、吸込口から吸い込んだ外気と機械室内の凝縮器とを効率的に熱交換させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した一実施例のショーケースの正面図である。
【図2】図1の状態から装飾カバーを取り外した状態のショーケースの斜視図である。
【図3】図1のショーケースの縦断側面図である。
【図4】他の形状の扉装飾カバーに交換したショーケースの斜視図である。
【図5】フィルタの斜視図である。
【図6】フィルタの正面上方向からの斜視図である。
【図7】フィルタの側面図である。
【図8】フィルタの平面図である。
【図9】撓ませた状態のフィルタの斜視図である。
【図10】図9の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。実施例の低温貯蔵庫Sは、本発明のフィルタ35を備えた飲料や食品等の商品を冷却しながら陳列販売するための所謂低温ショーケースであり、本体1を構成する縦長矩形状の断熱箱体(断熱壁)2内に前面が開口した陳列室3が構成されている。この陳列室3の前面開口は、例えば向かって右側(一側)上下を中心として回動自在に本体1に枢支された扉4により開閉自在に閉塞されている。
【0020】
この扉4は周囲の金属製扉枠(サッシュ)6と、この扉枠6の内方に嵌め込まれた複層透明ガラス板7とから成り、このガラス板7を通して外部より陳列室3内部が透視可能とされている。また、扉4の向かって左側(非枢支側)の扉枠6には、扉4を開閉するための把手5が設けられている。
【0021】
断熱箱体2の下側(陳列室3の外側。断熱箱体2外)である本体1の下部には機械室8が構成されており、この機械室8内に冷却装置Rの冷媒回路を構成する図示しない圧縮機や凝縮器9、凝縮器用送風機10等が設置されている。尚、機械室8は前面が開口している。
【0022】
一方、陳列室3内には、商品陳列用の棚11が複数段架設されている。また、断熱箱体2内の背面及び底面には、間隔を存して仕切板12及び13が設けられており、各仕切板12及び13と断熱箱体2との間に、相互に連通した背面ダクト14及び底面ダクト16が構成され、陳列室3はこれら仕切板12及び13の内側に構成されたかたちとされている。
【0023】
また、背面の仕切板12の上端と断熱箱体2間は背面ダクト14に連通した冷気吹出口17、底面の仕切板13の前端と断熱箱体2間は底面ダクト16に連通した冷気吸込口18とされている。断熱箱体2の底壁には相互に前後に位置する連通孔19、21が貫通形成されており、連通孔19と21間において仕切板13から垂下する隔壁13Aにより、底面ダクト16は前後に仕切られている。
【0024】
更に、断熱箱体2の底壁には、連通孔19、21に対応して断熱性の冷却箱22が外側から取り付けられ、機械室8内に位置している。この冷却箱22内には冷却装置Rの冷媒回路を構成する冷却器23と冷気循環用送風機24が収納されており、冷却器23によって冷却箱22内は連通孔19側と連通孔21側とに区画されている。これにより、陳列室3−冷気吸込口18−底面ダクト16−連通孔19−冷気循環用送風機24(冷却箱22内)−冷却器23(冷却箱22内)−連通孔21−底面ダクト16−背面ダクト14−冷気吹出口17−陳列室3と渡る一連の冷気通路が構成されている。
【0025】
そして、実施例では、扉4の外面に硬質合成樹脂からなる扉装飾カバー31が取り付けられている。扉装飾カバー31は、扉4の外面を覆うように扉枠6に交換可能(ネジ止め)に取り付けられている。この場合、扉装飾カバー31は扉枠6の側面(外面)と当接し、当該扉枠6を前方から間隔を存して隠蔽する透視不能な枠装飾部31Aと、その内方でガラス板7の外面を覆うと共に、当該ガラス板7の前方に間隔を存して位置する透視可能なガラス装飾部31Bとから成り、当該枠装飾部31Aとガラス装飾部31Bとにより扉4の外面全体を覆う。
【0026】
そして、ガラス装飾部31Bは、中央が前方に突出して両端部が後退した湾曲形状とされ、前方から陳列室3内を見た場合に商品陳列がより立体的に見えるように配慮されている。そのため、当該扉装飾カバー31は、全体として扉4から前方に所定寸法、突出する構成とされる。
【0027】
このようにショーケースSの扉4に扉装飾カバー31を交換可能に取り付けているので、例えば図4の他の形状の扉装飾カバー31を取り付けた場合のように、設置場所や使用目的、陳列商品に応じてそれらを交換することで、ショーケースSの意匠を容易に変更することができるようになり、販売効果の著しい改善を図ることができるようになる。
【0028】
そして、上記扉装飾カバー31の下方に位置して機械室8の前面開口を開閉可能に閉塞する機械室カバー29が本体1に着脱自在(交換可能)に取り付けられている。本実施例では、当該機械室カバー29は、機械室8の開口よりも上方に位置する扉装飾カバー31の前面と略面一となるまで前方に突出して形成されている。
【0029】
機械室カバー29は、外気を機械室8内に取り込むための吸込口29Aが形成され、この吸込口29Aに対応して機械室カバー29には、フィルタ35が着脱可能に取り付けられている。尚、図2の34は凝縮器9の前側に対応した開口を有するグリル板であり、凝縮器用送風機10の運転により吸込口29Aからフィルタ35を経て吸引された外気を、効率良く凝縮器9に通風させる機能を奏する。
【0030】
ここで、図5乃至図10を参照して本願発明にかかるフィルタ35について詳述する。図5はフィルタ35の斜視図、図6はフィルタ35の正面上方向からの斜視図、図7はフィルタ35の側面図、図8はフィルタ35の平面図、図9は撓ませた状態のフィルタ35の斜視図、図10は図9の平面図をそれぞれ示している。
【0031】
フィルタ35は、所定間隔を存して設けられる複数のルーバ部32と、ルーバ部32の一端側に設けられるメッシュ33とが複数の連結桟36によって一体に構成されている。これらルーバ部32、メッシュ33、連結桟36は、何れも所定の可撓性を有する硬質合成樹脂にて構成される。
【0032】
ルーバ部32は、当該フィルタ35を通過する外気の風向を決めるものであり、何れも所定間隔を存して、一方向に、この場合、上下方向に並設されている。本実施例では、本体1の下側に位置する機械室カバー29に取り付けられるものであるため、前端が後端よりも低く傾斜した角度にて設けられている。
【0033】
メッシュ33は、当該フィルタ35を通過する外気に含まれた塵埃を捕獲するものであり、各ルーバ部32の後端面に沿って設けられる。
【0034】
この状態で、各ルーバ部32と略直交する方向に延在する、この場合上下に延在する複数の連結桟36によって、溶着等によりこれらルーバ部32、メッシュ33が一体に成形される。
【0035】
係る構成のフィルタ35は、何れも所定の可撓性を有する材料にて構成されたものであるため、撓ませることで変形可能とされる。
【0036】
以上の構成により、フィルタ35を機械室カバー29に取り付ける際には、機械室カバー29を本体1から取り外し、当該機械室カバー29の後面側から、フィルタ35を取り付ける。このとき、ルーバ部32が機械室カバー29の吸込口29Aから前方に臨むように取り付ける。
【0037】
この際、機械室カバー29の後面の吸込口29A縁部にフィルタ保持部を設けている場合、当該フィルタ35をその可撓性により撓ませ、吸込口29A縁部に宛がい、各フィルタ保持部にその張力にて保持させても良い。
【0038】
これにより、機械室カバー29の吸込口29Aに当該フィルタ35を設けるのみで、該フィルタ35に設けられたルーバ部32によって機械室8内に吸い込む外気の風向を定めることができると共に、メッシュ33によって当該外気に含まれる塵埃を捕獲することが可能となる。
【0039】
そのため、着脱自在に取り付けられるフィルタ35を共用することで、機械室カバー29側に格別にルーバを設ける必要がなくなり、当該機械室カバー29の構造を簡素化することが可能となる。従って、図4に示すように、機械室カバー29の意匠を変更する毎に、ルーバ部分の設計を不要とすることができ、着脱自在とされるフィルタ35に設けられるルーバ部32にて風向を決めることが可能となり設計コストの低廉化、更には、冷却試験の簡素化を図ることができる。
【0040】
当該フィルタ35は、機械室カバー29の吸込口29Aから前方に臨む構成とされているが、塵埃を捕獲するメッシュ33の前方に所定角度にて傾斜したルーバ部32が形成されているため、メッシュ33に捕獲された塵埃等が前方から見えにくい構成とでき、外観上不衛生な印象を与えない。しかし、大量の塵埃がメッシュ33に付着した場合には、ルーバ部32越しに視認することも可能であるため、清掃を促進させることも可能となる。
【0041】
また、フィルタ35は、変形可能とするために可撓性を備えているため、取付箇所となる機械室カバー29の形状が断面湾曲形状とされている場合であっても、図9や図10に示すように当該形状に応じてフィルタ35を変形させて取り付けることが可能となる。
【0042】
更に、上述したように当該フィルタ35の可撓性を用い、撓ませたフィルタ35の張力によって、該フィルタ35を機械室カバー29のフィルタ保持部に保持させることも可能となり、取付構造の簡素化を図ることができる。
【0043】
特に、本実施例における低温貯蔵庫Sは、扉4から前方に突出する扉装飾カバー31を備え、機械室カバー29は機械室8の開口より扉装飾カバーと略面一となるまで前方に突出して構成されているため、フィルタ35が取り付けられた状態で、このフィルタ35と機械室8内に配設される凝縮器9との間には図3に示すように所定の間隔40が構成される。
【0044】
これにより、フィルタ35と凝縮器9との間に所定の風圧調整空間を形成することが可能となる。従って、機械室カバー29に形成される吸込口29Aの位置と、凝縮器9の配設位置とが偏位している場合であっても、吸込口29Aから吸い込んだ外気と機械室8内の凝縮器9とを効率的に熱交換させることが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
S 低温貯蔵庫
R 冷却装置
1 本体
2 断熱箱体(断熱壁)
3 陳列室
4 扉
8 機械室
9 凝縮器
10 凝縮器用送風機
23 冷却器
29 機械室カバー
29A 吸込口
31 扉装飾カバー
32 ルーバ部
33 メッシュ
34 グリル板
35 フィルタ
36 連結桟

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風向を決めるためのルーバ部と、塵埃を捕獲するためのメッシュとを一体に備えたことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
変形可能とするために可撓性を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
断熱壁から成る本体内に構成された貯蔵室と、前記断熱壁外に構成された機械室と、該機械室内に設置された凝縮器及び凝縮器用送風機と、機械室の開口を閉塞する機械室カバーとを備え、
該機械室カバーは外気を取り込むための吸込口を有し、前記フィルタが当該吸込口に対応して前記機械室カバーに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のフィルタを用いた低温貯蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室は前面が開口しており、該開口を開閉自在に閉塞する扉と、該扉に交換可能に取り付けられて当該扉外面を覆うと共に、該扉から前方に突出する扉装飾カバーとを備え、
前記機械室カバーは前記機械室の開口より前記扉装飾カバーと略面一となるまで前方に突出しており、前記フィルタが取り付けられた状態で、該フィルタと前記凝縮器との間には所定の間隔が構成されることを特徴とする請求項3に記載の低温貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−30175(P2012−30175A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172061(P2010−172061)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】