説明

フィルタ取付構造およびフィルタ取付方法

【課題】2つのフィルタの取り付けに際し、構造を簡素化しながらもリークを低減することができるフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法を提供する。
【解決手段】第1フィルタおよび第2フィルタを積層するとともに、両フィルタの周縁部のうち対向して位置する二辺の周縁部を、当該第1フィルタおよび第2フィルタが互いに圧接する方向に押し付けて両者を一体的に固定する一対のフィルタ押圧手段(13、15)と、フィルタ押圧手段によって一体化された第1フィルタおよび第2フィルタの周縁部のうち、一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を圧接状態で筐体2に固定するフィルタ固定手段40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流通する流路が形成された導管体に、2つのフィルタが一体化して取り付けられるフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気物質が排出されるガラス溶融炉等の各種の炉や装置には、排気物質中の水分やダスト等を除去するフィルタが設けられるのが一般的である。こうしたフィルタの取付構造として、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。
【0003】
この特許文献1に示されるフィルタ取付構造によれば、高性能フィルタの上流側に、排気物質中の水分を除去するミスト除去フィルタと、比較的粒径の大きいダストを除去するプレフィルタと、が一体的に取り付けられている。このように、排気物質中に含まれる物質を段階的に除去することにより、フィルタの寿命を長期化させたり、交換頻度を少なくしたりするようにしている。
【0004】
また、ミスト除去フィルタおよびプレフィルタは、これら両フィルタが互いに積層された状態で、四辺のうちの対向する二辺の周縁部が、フィルタ締付ネジによってプレフィルタ取付枠に固定されている。このように、2つのフィルタを一体的に取り付けることにより、フィルタの取付作業や交換作業を簡素化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−257329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示されるフィルタ取付構造によれば、積層された2つのフィルタの隙間、より詳細には、フィルタ締付ネジによってプレフィルタ取付枠に固定されていない二辺におけるフィルタの隙間からミスト除去フィルタを通過した排気物質がリークし、排気物質の一部がプレフィルタを介さずに高性能フィルタに導かれるおそれがある。このように、プレフィルタを介さずに高性能フィルタに導かれた排気物質中には、比較的粒径の大きいダストが含まれており、こうしたダストによって高性能フィルタが早期に目詰まりしてしまったり、破過してしまったりするという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、2つのフィルタの取り付けに際し、構造を簡素化しながらもリークを低減することができるフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のフィルタ取付構造は、流体が流通する流路が形成された導管体に、四辺を有する第1フィルタおよび第2フィルタが流体の流れ方向に沿って一体的に取り付けられたフィルタ取付構造であって、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち対向して位置する二辺の周縁部を、当該第1フィルタおよび前記第2フィルタが互いに圧接する方向に押し付けて両者を一体的に固定する一対のフィルタ押圧手段と、前記フィルタ押圧手段によって一体化された前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち、前記一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を圧接状態で前記導管体に固定するフィルタ固定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記フィルタ押圧手段は、前記第1フィルタの側面に固定される固定部、および、前記固定部に連続するとともに前記第1フィルタの周縁部に対して間隙を維持して対向する屈曲部を有するアングル部材と、前記アングル部材の前記屈曲部に形成された螺子孔に螺合して挿通可能な第1螺子部材と、を備え、前記第2フィルタは、前記第1フィルタの周縁部と前記アングル部材の屈曲部との間隙に進入可能なフランジ部を有し、前記第1螺子部材の締め付け力により前記第2フィルタのフランジ部が前記第1フィルタの周縁部に押し付けられるとよい。
【0010】
また、前記第1フィルタは流体中の水分を除去するミスト除去フィルタによって構成され、前記第2フィルタは流体中のダストを除去するダスト除去フィルタによって構成され、前記第1フィルタは前記第2フィルタよりも前記流体の流れ方向の上流側に位置するとともに、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは鉛直方向に積層されて配置されているとよい。
【0011】
また、前記導管体における前記第2フィルタよりも流体の流れ方向の下流側には、前記第2フィルタよりも粒径の小さいダストを除去可能な第3フィルタが固定されているとよい。
【0012】
また、流体が流通する流路が形成された導管体に、四辺を有する第1フィルタおよび第2フィルタを流体の流れ方向に沿って一体的に取り付けるフィルタ取付方法であって、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち対向する二辺の周縁部を、互いに圧接する方向に押し付けて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを一体的に固定する工程と、前記導管体内に設けられた載置部に、前記フィルタ押圧手段によって一体化された前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを載置する工程と、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち、前記一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を前記載置部に押し付けて固定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、2つのフィルタの取り付けに際し、構造を簡素化しながらもリークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガラス溶融炉およびフィルタ装置を示す概念図である。
【図2】第1フィルタを説明する図である。
【図3】第2フィルタを説明する図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】第1フィルタに第2フィルタを一体的に固定してフィルタユニットを構成する際の取り付け工程を説明する図である。
【図6】第1フィルタおよび第2フィルタが一体化された状態を示す図である。
【図7】フィルタ装置の外観図である。
【図8】図7(a)のVII−VII線断面図である。
【図9】図8のVIII−VIII線断面図である。
【図10】フィルタ装置にフィルタユニットを取り付ける際の取り付け工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
本発明のフィルタ取付構造は、排気物質が排出される種々の炉や装置等に適用することが可能であるが、本実施形態では、放射性廃液が混合された溶融ガラスを生成するガラス溶融炉に本発明のフィルタ取付構造を適用した場合の一例について説明する。ここでは、まず、ガラス溶融炉について簡単に説明した後に、当該ガラス溶融炉から排出される排気物質中のダスト等を除去するフィルタ装置について説明する。
【0017】
図1は、ガラス溶融炉100およびフィルタ装置1を示す概念図である。ガラス溶融炉100は、耐火煉瓦によって構成されるとともに内部に溶融空間101aが形成された溶融炉本体101を備えている。この溶融炉本体101は、直方体状の本体上部101bと、この本体上部101bの下方に連続するとともに、鉛直上方から下方に向かうにしたがって徐々に断面積が小さくなる四角錐状の本体下部101cと、からなる。
【0018】
溶融炉本体101における本体上部101bの上方には、溶融ガラスGの原料となるガラスビーズを溶融空間101aに投入するための原料供給管102と、核燃料生成の際に排出され、高濃度の白金族元素(ロジウム、パラジウム、ルテニウム)が含有された放射性廃液を溶融空間101aに投入するための廃液供給管103と、が接続されている。
【0019】
また、溶融炉本体101における本体上部101bには、加熱ヒータ104が設けられている。この加熱ヒータ104は、溶融空間101a内に投入、充填されたガラスビーズを輻射熱によって加熱、溶融するとともに、ガラスビーズが溶融された溶融ガラスGの温度を維持または昇温するものである。
【0020】
さらに、溶融炉本体101における本体上部101bの側壁には、電極部材からなる一対の主電極105が対向配置されている。これら一対の主電極105は、その対向部分が溶融空間101a内に位置しており、溶融空間101a内に充填されているガラスビーズに通電してジュール熱を発生させることにより、当該ガラスビーズを溶融ガラスGに溶解するものである。なお、図示は省略するが、溶融炉本体101における本体下部101cにも、上記の主電極105と同様の構成からなる補助電極が設けられており、溶融空間101a内においてムラなくガラスビーズを溶融するようにしている。
【0021】
そして、溶融炉本体101における本体下部101cの底部には、流下ノズル106が接続されており、溶融炉本体101において溶融された溶融ガラスGが、流下ノズル106を介してキャニスター107に充填されるようにしている。このように、放射性廃液とともにガラスビーズを溶融空間101aに投入すると、ガラスビーズが溶融されて溶融ガラスGが生成される過程において、当該溶融ガラスGに、放射性廃液に含まれる放射性物質(白金属元素等)が混合されることとなり、放射性物質が溶融ガラスGに封止されてキャニスター107に充填されることとなる。
【0022】
ここで、溶融ガラスGの生成過程では排気物質が生成されるが、溶融空間101a内で生成された排気物質は、溶融炉本体101に接続された排管108を介して、各種廃ガス処理機器を経由してフィルタ装置1に導かれる。上記のように、ガラス溶融炉100においては、高温の溶融空間101aに放射性廃液が投入されることから、溶融空間101aにおいて放射性廃液中の水分が蒸発するため、フィルタ装置1に導かれる排気物質には多量の水分が含有されている。
【0023】
フィルタ装置1(導管体)は、排気物質が流通する流路2aが内部に形成された筐体2を備えている。本実施形態においては、流路2aが鉛直方向に沿って設けられており、筐体2の背面下部に開口する排管接続口3に上記の排管108が接続され、筐体2の上面に形成された排気口4に大気開放管5が接続されている。したがって、フィルタ装置1に設けられた流路2aは、当該フィルタ装置1の鉛直下方側が排気物質の流れ方向の上流側となり、フィルタ装置1の鉛直上方側が排気物質の流れ方向の下流側となる。
【0024】
そして、流路2a中には、第1フィルタ10、第2フィルタ20、第3フィルタ30が、排気物質の流れ方向の上流側(筐体2の鉛直下方側)から下流側(筐体2の鉛直上方側)へと順次配設されている。これにより、排管108からフィルタ装置1に導かれた排気物質は、当該排気物質中の水分やダスト等が各フィルタ10、20、30によって除去された後に、大気開放管5を介して大気に開放されることとなる。
【0025】
なお、本実施形態においては、第1フィルタ10が、排気物質中の水分を除去する機能を備えたミスト除去フィルタによって構成されており、排気物質中の水分を、フィルタ装置1の最も上流側で除去するようにしている。また、第2フィルタ20および第3フィルタ30は、いずれも排気物質中のダストを除去する機能を備えたものであり、第3フィルタ30はHEPAフィルタによって構成され、第2フィルタ20は、第3フィルタ30よりも粒径の大きいダストを除去可能なプレフィルタとして機能する。
【0026】
したがって、排気物質は、フィルタ装置1の流路2aにおいて鉛直下方から鉛直上方に向かう際に、まず、第1フィルタ10によって水分が除去され、次いで、第2フィルタ20によって比較的粒径の大きいダストが除去され、第3フィルタ30によって微細なダストが除去されることとなる。
【0027】
このとき、上記したように、ガラス溶融炉100においては、高温の溶融空間101a内に放射性廃液を投入する関係上、排気物質に多量の水分が含有されているという特性がある。そのため、ガラス溶融炉100の稼働中には、第1フィルタ10によって多量の水分が除去されることとなるが、本実施形態においては、第1フィルタ10によって除去された水分が、重力によって鉛直下方に落下し、筐体1の底部に設けられた受け皿6に貯留されるようにしている。そして、この受け皿6には排水管7が接続されており、排水管7に設けられた排水バルブ8を開弁させることにより、受け皿6に貯留された水分を外部に排水することができるようにしている。
【0028】
ガラス溶融炉に接続された一般的なフィルタ装置においては、流路が水平方向に延在しており、ミスト除去フィルタやプレフィルタも水平方向に順に配設されている。そのため、ミスト除去フィルタによって除去された水分を常に排水し続けないと、除去した水分によってミスト除去フィルタやプレフィルタが浸水してしまい、各フィルタが早期に破過してしまう。本実施形態においては、各フィルタ10、20、30が鉛直方向に段階的に設けられており、また、水分を除去する第1フィルタ10が最も鉛直下方に位置している。そして、第1フィルタ10によって除去された水分は、重力によって落下して受け皿6に貯留されるとともに、受け皿6から排水管7を介して外部に排水されるようにしたので、各フィルタ10、20、30が浸水することがない。したがって、本実施形態のフィルタ装置1によれば、従来に比して、メンテナンスが容易となり、また、第2フィルタ20や第3フィルタ30が浸水によって早期に破過することもない。
【0029】
次に、フィルタ装置1における第1フィルタ10および第2フィルタ20の取付構造について詳細に説明する。本実施形態においては、第1フィルタ10および第2フィルタ20が一体的に固定されてユニット化された状態で、これら両フィルタ10、20がフィルタ装置1に固定される。以下では、まず、第1フィルタ10および第2フィルタ20の構造と、フィルタ装置1の構造について説明し、その後、フィルタ装置1における第1フィルタ10および第2フィルタ20の取付方法について説明する。
【0030】
図2は、第1フィルタ10を説明する図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は背面図、図2(c)は側面図である。この図に示すように、第1フィルタ10は、ろ材の両面に、多数の貫通孔を有する金属製(ステンレス等)の板が配置された第1フィルタ本体11と、この第1フィルタ本体11の周縁を囲繞する金属製(ステンレス等)のフレーム12と、を備えて構成される。フレーム12は、辺12a、12b、12c、12dを有する、平面視が正方形状の部材で構成されており、したがって、第1フィルタ10は、所定の厚さを有する正方形状に構成されることとなる。
【0031】
そして、フレーム12の四辺のうち、対向する一対の辺12a、12cのそれぞれには、フィルタ押圧手段を構成するアングル部材13が固定されている。このアングル部材13は、フレーム12の辺12a、12cの長手方向に沿って延在する固定部13aと、この固定部13aの長手方向に直交する方向の一端から90度屈曲して連続する屈曲部13bと、からなるL型の金属部材で構成されている。
【0032】
アングル部材13は、固定部13aの長手方向をフレーム12の辺12a、12cに沿わせた状態で、当該固定部13aをフレーム12の辺12a、12cにそれぞれ溶接することによってフレーム12に固定されている。このとき、図2(c)に示すように、アングル部材13は、屈曲部13bが、第1フィルタ10の周縁部(フレーム12)に対して間隙xを維持して対向するように、フレーム12に固定されている。
【0033】
屈曲部13bには、その長手方向の両端部近傍に螺子孔14が形成されており、この螺子孔14に、フィルタ押圧手段を構成する蝶螺子からなる第1螺子部材15が挿通可能となっている。この第1螺子部材15は、螺子孔14において締付方向に回転させることにより、当該第1螺子部材15の先端がフレーム12に徐々に近づき、螺子孔14において解弛方向に回転させることにより、当該第1螺子部材15の先端がフレーム12から徐々に離間することとなるが、その作用については後で詳細に説明する。
【0034】
図3は、第2フィルタ20を説明する図であり、図3(a)は正面図、図3(b)は背面図、図3(c)は側面図であり、図4は、図3(a)のIV−IV線断面図である。これらの図に示すように、第2フィルタ20は、不織布の両面に金属製(ステンレス等)の網が配置された第2フィルタ本体21と、この第2フィルタ本体21の周縁を囲繞する金属製(ステンレス等)のフレーム22と、を備えて構成される。フレーム22は、辺22a、22b、22c、22dを有する平面視が正方形状の部材で構成されており、したがって、第2フィルタ20は所定の厚さを有する正方形状に構成されることとなる。なお、第2フィルタ20は、第1フィルタ10よりも厚みを有しており、また、第2フィルタ20のフレーム22は、第1フィルタ10のフレーム12よりも周長が小さくなっている。
【0035】
そして、フレーム22の正面には、当該フレーム22の全周に亘って、金属製(ステンレス等)のフランジ部材23が溶接されている。このフランジ部材23は、辺23a、23b、23c、23dを有する平面視が正方形状の部材で構成されており、各辺23a、23b、23c、23dが、フレーム22の各辺22a、22b、22c、22dよりも第2フィルタ本体21の外方に突出する寸法関係を維持している。このとき、フランジ部材23の外周長は、第1フィルタ10のフレーム12の外周長と等しくなっている。なお、フランジ部材23の正面側には、図3(a)中クロスハッチで示すガスケット24が、全周に亘って設けられている。
【0036】
図5は、第1フィルタ10に第2フィルタ20を一体的に固定してフィルタユニットを構成する際の取り付け工程を説明する図である。また、図6は、第1フィルタ10および第2フィルタ20が一体化された状態を示す図であり、図6(a)は正面図、図6(b)は背面図、図6(c)は側面図である。第1フィルタ10に第2フィルタ20を固定してフィルタユニットを構成する際には、まず、図5に示すように、第1フィルタ10の背面に第2フィルタ20の正面を対向させた状態で、第1フィルタ10におけるフレーム12とアングル部材13との間に形成される間隙xに、第2フィルタ20におけるフランジ部材23を、図中黒塗りの矢印方向にスライドさせて進入させる。そして、第1フィルタ10におけるフレーム12の各辺12a、12b、12c、12dに、第2フィルタ20におけるフランジ部材23の各辺23a、23b、23c、23dをそれぞれ対向させる。
【0037】
次に、フレーム12の外側面と、フランジ部材23の外側面とが面一となった状態で、螺子孔14において第1螺子部材15を締付方向に螺合させると、第1螺子部材15の締め付け力により、フランジ部材23の辺23a、23cが、ガスケット24を介して、第1フィルタ10の周縁部(フレーム12の辺12a、12c)に押し付けられる。これにより、図6に示すように、第1フィルタ10および第2フィルタ20が一体的に固定され、フィルタユニットが構成されることとなるが、このとき、第1フィルタ10および第2フィルタ20における対向する二辺(フレーム12の辺12a、12c、フランジ部材23の辺23a、23c)が、特に強固に圧接された状態となる。
【0038】
図7は、フィルタ装置1の外観図であり、図7(a)は上面図、図7(b)は正面図である。また、図8は、図7(a)のVII−VII線断面図である。図7に示すように、フィルタ装置1の筐体2は、その正面に開口2bが形成されており、この開口2bが開閉扉9によって閉じられている。開閉扉9は、ヒンジ9aによって筐体2に開閉自在に取り付けられており、通常は、図示のように、開閉扉9によって開口2bが閉じられ、上記の第1フィルタ10、第2フィルタ20、第3フィルタ30の交換等、メンテナンス作業時に開放されるものである。
【0039】
そして、筐体2の内部には、図8に示すように、第3フィルタ30を固定するフィルタ固定部31と、フィルタユニット(第1フィルタ10および第2フィルタ20)を固定するフィルタ固定手段40とが設けられている。以下では、フィルタ固定手段40の構成について説明することとし、第3フィルタ30およびフィルタ固定部31については周知の構成であるため説明を省略する。
【0040】
フィルタ固定手段40は、フィルタユニットが載置される載置枠41、および、この載置枠41に固定された固定アングル50を備えており、載置枠41および固定アングル50によってフィルタユニットがフィルタ装置1に固定されることとなる。
【0041】
図9(a)は、図8のVIII(a)−VIII(a)線断面図、図9(b)は、図8のVIII(b)−VIII(b)線断面図である。図8および図9に示すように、フィルタ固定手段40を構成する載置枠41は、筐体2に固定されるとともに当該筐体2の側壁から内方に向けて垂直に延伸する水平面42と、この水平面42の内側端部から鉛直上方に垂直に起立する起立壁部43と、この起立壁部43の先端からさらに内方に向けて垂直に屈曲する載置部44と、を備えている。
【0042】
載置部44は、図9(b)に示すように、辺44a、44b、44c、44dによって水平方向の断面が正方形を成す枠状に形成されており、これら各辺44a、44b、44c、44dによって囲繞される空間が、上記した流路2aの一部を構成することとなる。
【0043】
そして、図8および図9(a)に示すように、載置部44の対向する辺44b、44dのそれぞれには、断面L形の固定アングル50が一対固定されている。この固定アングル50は、載置部44の辺44b、44dとほぼ等しい長さを有する平板部50aと、この平板部50aの先端から90度屈曲する突片50bと、を備えて構成される。そして、固定アングル50は、載置部44の辺44b、44dに長手方向を沿わせた状態で、これら両辺44b、44dに平板部50aが固定される。このとき、図8に示すように、固定アングル50の突片50bが載置部44の辺44b、44dに対向することとなり、載置部44と突片50bとの間に間隙yが形成される。
【0044】
また、図9(a)に示すように、突片50bには、その長手方向の両端部近傍にネジ孔51が形成されており、このネジ孔51に、フィルタ固定手段を構成する第2螺子部材52(図8参照)が挿通可能となっている。この第2螺子部材52は、ネジ孔51において締付方向に回転させることにより、当該第2螺子部材52の先端が載置部44に徐々に近づき、ネジ孔51において解弛方向に回転させることにより、当該第2螺子部材52の先端が載置部44から徐々に離間することとなる。
【0045】
図10は、フィルタ装置1にフィルタユニットを取り付ける際の取り付け工程を説明する図である。フィルタ装置1に第1フィルタ10および第2フィルタ20を取り付ける際には、まず、第1フィルタ10および第2フィルタ20をフィルタ押圧手段によって一体的に固定してフィルタユニットを構成する。そして、フィルタ装置1の開閉扉9を開放するとともに、フィルタユニットを開口2bから、図10(a)の白抜き矢印で示すように、フィルタユニットを水平方向にスライドさせてフィルタ装置1内に進入させる。
【0046】
より詳細に説明すると、フィルタ固定手段を構成する載置部44の辺44b、44d上に、フィルタユニットの周縁部を載置した状態で、当該載置部44と突片50bとの間に形成される間隙yにフィルタユニットを進入させていく。このとき、フィルタユニットは、第1フィルタ10におけるフレーム12の辺12a(第2フィルタ20におけるフランジ部材23の辺23a)が進入方向の前方に位置し、第1フィルタ10におけるフレーム12の辺12c(第2フィルタ20におけるフランジ部材23の辺23c)が進入方向の後方に位置している。
【0047】
そして、図10(b)に示すように、載置部44の各辺44a、44b、44c、44dのそれぞれに、第1フィルタ10におけるフレーム12の各辺12a、12b、12c、12dが載置されるまでフィルタユニットを進入させ、流路2aをフィルタユニットで完全に閉塞する。この状態で、ネジ孔51において第2螺子部材52を締付方向に螺合させることにより、第2螺子部材52の締め付け力によって、第1フィルタ10の周縁部(フレーム12)と、第2フィルタ20の周縁部(フランジ部材23)とが圧接状態で載置部44に押し付けられることとなる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、第1フィルタ10および第2フィルタ20の周縁部のうち対向して位置する二辺の周縁部が、フィルタ押圧手段によって互いに圧接する方向に押し付けられた状態でフィルタ装置1に取り付けられる。また、第1フィルタ10および第2フィルタ20の周縁部のうち、一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部が、フィルタ固定手段40によって、圧接状態でフィルタ装置1の筐体2に固定される。
【0049】
したがって、第1フィルタ10および第2フィルタ20の取付構造が簡素でありながらも、第1フィルタ10および第2フィルタ20は、それら両者の周縁(四辺)が全周にわたって互いに圧接した状態に維持されることとなり、両フィルタ10、20の隙間から排気物質がリークするおそれを低減することができる。これにより、第2フィルタ20によって本来除去すべきダストが混入した状態で、排気物質が第3フィルタ30に導かれてしまうおそれが低減され、第3フィルタ30が早期に目詰まりしてしまったり破過してしまったりするおそれも低減することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、第1フィルタ10および第2フィルタ20を専用のフィルタ装置1に取り付ける場合について説明したが、排気物質が導かれるダクト等に上記のフィルタ取付構造を適用することも可能である。いずれにしても、上記のフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法は、流体が流通する流路が形成された導管体に広く適用することが可能である。
【0052】
また、上記実施形態においては、ガラス溶融炉100に接続されたフィルタ装置1にフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法を適用した場合について説明したが、上記のフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法は、ガラス溶融炉に限らず、種々の炉や装置に適用可能である。
【0053】
また、上記実施形態におけるフィルタ押圧手段およびフィルタ固定手段の構成は一例に過ぎない。いずれにしても、フィルタ押圧手段は、四辺を有する2つのフィルタのうち、対向する二辺の周縁部を圧接状態に維持するものであり、また、フィルタ固定手段は、フィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を圧接状態で導管体に固定するものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0054】
さらに、本実施形態においては、第1フィルタ10をミスト除去フィルタとし、第2フィルタ20をプレフィルタとし、第3フィルタ30をHEPAフィルタとしたが、各フィルタの機能についても特に限定されるものではない。例えば、排気物質中に多量の水分が含有されている場合には、第1フィルタ10および第2フィルタ20をいずれもミスト除去フィルタとし、排気物質中に水分がほとんど含有されていない場合には、第1フィルタ10および第2フィルタ20をいずれもダスト除去フィルタとする等、各フィルタは、炉や装置の運転状況により適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、2つのフィルタの取り付けに際し、構造を簡素化しながらもリークを低減することができるフィルタ取付構造およびフィルタ取付方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 …フィルタ装置
2 …筐体
2a …流路
10 …第1フィルタ
13 …アングル部材
13a …固定部
13b …屈曲部
14 …螺子孔
15 …第1螺子部材
20 …第2フィルタ
23 …フランジ部材
30 …第3フィルタ
40 …フィルタ固定手段
44 …載置部
50b …突片
51 …ネジ孔
52 …第2螺子部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路が形成された導管体に、四辺を有する第1フィルタおよび第2フィルタが流体の流れ方向に沿って一体的に取り付けられたフィルタ取付構造であって、
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち対向して位置する二辺の周縁部を、当該第1フィルタおよび前記第2フィルタが互いに圧接する方向に押し付けて両者を一体的に固定する一対のフィルタ押圧手段と、
前記フィルタ押圧手段によって一体化された前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち、前記一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を圧接状態で前記導管体に固定するフィルタ固定手段と、を備えたことを特徴とするフィルタ取付構造。
【請求項2】
前記フィルタ押圧手段は、
前記第1フィルタの側面に固定される固定部、および、前記固定部に連続するとともに前記第1フィルタの周縁部に対して間隙を維持して対向する屈曲部を有するアングル部材と、
前記アングル部材の前記屈曲部に形成された螺子孔に螺合して挿通可能な第1螺子部材と、を備え、
前記第2フィルタは、
前記第1フィルタの周縁部と前記アングル部材の屈曲部との間隙に進入可能なフランジ部を有し、
前記第1螺子部材の締め付け力により前記第2フィルタのフランジ部が前記第1フィルタの周縁部に押し付けられることを特徴とする請求項1記載のフィルタ取付構造。
【請求項3】
前記第1フィルタは流体中の水分を除去するミスト除去フィルタによって構成され、
前記第2フィルタは流体中のダストを除去するダスト除去フィルタによって構成され、
前記第1フィルタは前記第2フィルタよりも前記流体の流れ方向の上流側に位置するとともに、前記第1フィルタおよび前記第2フィルタは鉛直方向に積層されて配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のフィルタ取付構造。
【請求項4】
前記導管体における前記第2フィルタよりも流体の流れ方向の下流側には、前記第2フィルタよりも粒径の小さいダストを除去可能な第3フィルタが固定されていることを特徴とする請求項3記載のフィルタ取付構造。
【請求項5】
流体が流通する流路が形成された導管体に、四辺を有する第1フィルタおよび第2フィルタを流体の流れ方向に沿って一体的に取り付けるフィルタ取付方法であって、
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち対向する二辺の周縁部を、互いに圧接する方向に押し付けて前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを一体的に固定する工程と、
前記導管体内に設けられた載置部に、前記フィルタ押圧手段によって一体化された前記第1フィルタおよび前記第2フィルタを載置する工程と、
前記第1フィルタおよび前記第2フィルタの周縁部のうち、前記一対のフィルタ押圧手段によって押圧されている二辺と異なる二辺の周縁部を前記載置部に押し付けて固定する工程と、を含むフィルタ取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−86014(P2013−86014A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228222(P2011−228222)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】