説明

フィルタ回路

【目的】 ツェナーダイオードの短絡や配線切断などの特殊な工程をもたない単純なICプロセスで実現できるバンドパス中心周波数補正用抵抗回路内蔵のフィルタ回路を提供する。
【構成】 中心周波数補正用抵抗回路2を、一端が互いに共通に接続され、各他端にボンディングパッドが接続された複数の抵抗を備えた抵抗回路で構成した。これらのボンディングパッドの一部または全部を電源リード3に選択的に接続して抵抗回路の抵抗値を調整する。通常のワイヤボンディング工程で抵抗調整ができるので、既存のいかなるICプロセスででも中心周波数補正用抵抗回路を内蔵したフィルタ回路を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、赤外線リモコン受信装置等で周波数帯域を選択するために使用されるフィルタ回路に関し、特にバンドパスフィルタの中心周波数f0 を外付抵抗を用いずに調整できるように、内部に調整用回路を備えたフィルタ回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤外線リモコン受信装置では、外乱光やその他ノイズの影響を軽減するためにバンドパスフィルタを用いて信号周波数を選択的に受信している。バンドパスフィルタは増幅回路などと一緒に集積回路(以下、ICという)内に設けられている。バンドパスフィルタの中心周波数f0 を調整する方法としては外付抵抗を用いたものが一般的であるが、部品点数を減らすために、IC内部に補正回路を内蔵するのが好ましい。
【0003】IC内部の補正回路として、図4に示すバンドパスフィルタが提案されている(特開平3−53709号公報参照)。同図において、中心周波数補正用抵抗回路5は抵抗RAB,RBC,RCDの直列回路と、各抵抗RAB,RBC,RCDにそれぞれ並列接続したツェナーダイオードZ1 ,Z2 ,Z3 とで構成されている。抵抗RAB,RBC,RCDの直列回路の一端は、抵抗Rmin を介して本体回路1に接続され、他端は接地されている。抵抗RABの接地点,抵抗RAB,RBCの接続点,抵抗RBC,RCDの接続点および抵抗RCD,Rmin の接続点には、それぞれボンディングパッドG〜Jが設けられている。本体回路1へはコンデンサC1 を介して信号が入力される。また、本体回路1は、コンデンサC2 を介して接地されている。
【0004】この回路は、ボンディングパッドG〜Jの適宜の2個の間からツェナーダイオードZ1 ,Z2 ,Z3 の何れかに過電流を流すことにより、ツェナーダイオードZ1 ,Z2 ,Z3 の何れかを破壊してショート状態とすることができる。そして、これらツェナーダイオードZ1 ,Z2 ,Z3 を選択的に破壊することにより、抵抗値を調整するものである。
【0005】なお、前記公報でも説明されているように、本体回路1は、図5に示すように、カレントミラー回路11や相互コンダクタンスアンプ(以下、gm アンプという)6,8,バッファアンプ7,9などからなる。中心周波数f0 は相互コンダクタンスgm と、
【0006】
【数1】


【0007】の関係にある。カレントミラー回路10は中心周波数補正用抵抗回路5などとともに第1定電流供給回路11を構成している。第1定電流供給回路11の出力電流をI1 、第2定電流供給回路12の出力電流をI2 とすると、gm は比例定数kを用いて、
【0008】
【数2】


【0009】と表現できる。中心周波数補正用抵抗回路5の抵抗値が変われば第1定電流供給回路11の出力電流I1 が変わり、(数1),(数2)の関係で中心周波数f0も変化することを利用して、中心周波数f0 を補正している。前記公報では、図6に示すバンドパスフィルタも提案されている。これは、ツェナーダイオードZ1 ,Z2 ,Z3 に代えてメタル配線LAB,LBC,LCDを用い、メタル配線LAB,LBC,LCDを選択的に切断することにより、抵抗値を調整するものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の調整方法では、IC作製時にツェナーダイオードZ1 ,Z2,Z3 の短絡やメタル配線LAB,LBC,LCDの切断などの特殊な工程を必要とする。したがって、これらのいずれの工程ももたないICプロセスでは、補正回路を内蔵するICを実現できなかった。
【0011】この発明は、上記課題を解決するもので、特殊な工程をもたない単純なICプロセスで実現できる中心周波数補正用抵抗回路内蔵のフィルタ回路を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明のフィルタ回路は、中心周波数補正用の抵抗回路が、一端が互いに共通に接続され各他端にボンディングパッドが接続された複数の抵抗を備え、複数のボンディングパッドの一部または全部を所定のリードに選択的に接続して抵抗回路の抵抗値を調整可能に構成したものである。
【0013】
【作用】この発明のフィルタ回路によれば、通常のボンディング工程で複数のボンディングパッドの一部または全部を所定のリードに選択的に接続することにより、中心周波数f0 を調整することができる。
【0014】
【実施例】以下、この発明の一実施例について、図1を参照しながら説明する。図1において、本体回路1に接続された中心周波数補正用抵抗回路2は、抵抗RA ,RB ,RC で構成している。各抵抗RA ,RB ,RC の一端は互いに共通に接続しており、他端はそれぞれボンディングパッドA,B,Cに接続している。各ボンディングパッドA,B,Cは、図2に示すように、ボンディングワイヤ4で選択的に電源リード3と接続する。この実施例では、ボンディングパッドAのみが電源リード3に接続されている。なお、抵抗の本数を3本としたが、より高精度に補正するために、4本以上としてもよい。3′はグラウンドリード、3″は出力リードである。
【0015】第1定電流供給回路の構成例を図3に示す。図2と同様、ボンディングパッドAのみを電源リード3に接続したものとしている。基準電圧発生回路13が出力する電圧をVref 、エミッタフォロワ・トランジスタQ1 のベース・エミッタ間間電圧をVBE、電源電圧をVccとすると、第1定電流供給回路の出力電流I1 は、
【0016】
【数3】


【0017】である。Q2 〜Q4 はそれぞれトランジスタである。中心周波数補正用抵抗回路2,5の抵抗調整例を数値をあげて具体的に説明する。図4においてRAB=1kΩ,RBC=2kΩ,RCD=4kΩとすると、この中心周波数補正用抵抗回路5を実現できる抵抗値は0,1kΩ,2kΩ,3kΩ,4kΩ,5kΩ,6kΩ,7kΩである。一方、図1において、抵抗の本数をRA 〜RF の6本とし、RA =7kΩ,RB =6kΩ,RC =5kΩ,RD =4kΩ,RE =3kΩ,RF =0、各抵抗に対応するボンディングパッドをそれぞれA,B,C,D,E,Fとすると、
【0018】
【表1】


【0019】の組合せにより、同等の効果が実現可能である。
【0020】
【発明の効果】以上のように、この発明のフィルタ回路によれば、ICのワイヤボンディング工程で中心周波数補正用抵抗回路の抵抗値を調整できるので、ツェナーダイオードの短絡や配線切断などの工程をもたないICプロセスでも抵抗値の調整可能な中心周波数補正用抵抗回路を内蔵したフィルタ回路を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のバンドパスフィルタの構成を示す回路図である。
【図2】図1の回路の調整方法の説明図である。
【図3】図1の回路の第1定電流供給回路の構成例を示す回路図である。
【図4】従来のバンドパスフィルタの構成を示す回路図である。
【図5】図4の回路の本体回路部の構成を示す回路図である。
【図6】従来の他のバンドパスフィルタの構成を示す回路図である。
【符号の説明】
1 本体回路
2 抵抗回路
3 電源リード
A〜C ボンディングパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体回路に中心周波数補正用抵抗回路が結合されたフィルタ回路であって、前記中心周波数補正用抵抗回路は、一端が互いに共通に接続され、各他端にボンディングパッドが接続された複数の抵抗を備え、前記複数のボンディングパッドの一部または全部を所定のリードに選択的に接続して前記中心周波数補正用抵抗回路の抵抗値を調整可能に構成したことを特徴とするフィルタ回路。

【図4】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−216702
【公開日】平成6年(1994)8月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−5076
【出願日】平成5年(1993)1月14日
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)