説明

フィルタ固定機構

【課題】 フィルタ枠の歪みや経時的な変形等によるフィルタの密封性の低下を防止できるフィルタ装置のフィルタ固定機構を提供する。
【解決手段】 フィルタ装置1のフィルタハウジング4内に形成された空気流路を横断して、定位置で回転自在に支持された少なくとも一つのカム軸15を有しており、当該カム軸の両端近傍位置にそれぞれ取り付けられた偏芯カム11と、フィルタハウジング4の内側に設けられたフィルタ枠受部8A、9A、10Aとの間にフィルタ枠6を挟み込んで、前記空気流路内の定位置にフィルタ5a〜5eを固定する。それぞれの偏芯カム11は、カム軸15の両端近傍に固定されたカムホルダ16に対して当該カム軸中心からの偏芯量を個別に調整可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化用のフィルタ装置に用いられるフィルタ固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
解剖室や病理研究室等の室内の空気を浄化するために、従来より用いられている一般的な空気浄化装置は、空気流路内に乾式や湿式のフィルタが複数段配列されたフィルタ装置と、その空気流路内に外部から有害物質等を含んだ空気を取り込んで前記フィルタを通過をさせるためのブロワー等の送風手段から構成されている。
【0003】
従来では、このようなフィルタ装置の空気流路内にフィルタを固定する機構として、例えば、特許文献1に記載されているような偏芯カム機構を用いたものが提案されている。図9は、同文献に記載されているフィルタ装置の水平断面図、図10は、図9におけるA−A断面を示す縦断面図、図11は、図9におけるB−B断面を示す横断面図であって、これらの図に示すフィルタ装置a1は、室内の空気を浄化する空気浄化装置の一部となっており、前端に外部から空気を取り入れる入口a2が設けられ、後端に図示していない送風機の吸入側に連結される出口a3が設けられたフィルタハウジングa4を有している。
【0004】
フィルタハウジングa4の内部には、入口a2から出口a3に至る空気流路が構成されていて、この空気流路内には、複数枚の活性炭フィルタやHEPAフィルタ等の乾式フィルタFが配置されている。
【0005】
これらの乾式フィルタFは、フィルタ材a5を矩形状のフィルタ枠a6に組み込んで構成されており、出口a3側に連結した図示しない送風機によりフィルタハウジングa4の空気流路内の空気を吸引することにより、入口a2側から室内の空気が取り込まれ、この空気が複数のフィルタFを通過する間に、その中に浮遊する塵埃や有害物質等が取り除かれるようになっている。
【0006】
これらのフィルタFは、フィルタ保持部a7、a8内にそれぞれ複数枚重ねて配置されており、それぞれのフィルタ保持部a7、a8内の後尾のフィルタFのフィルタ枠a6後面を、フィルタ枠受部a9、a10に当接させた状態で、最前端のフィルタFのフィルタ枠a6の前面を、カム軸a11に固定された偏芯カムa12で押圧することで、これらのフィルタFをフィルタ保持部a7、a8内に固定している。
【0007】
図11に示すように、偏芯カムa12は、フィルタ枠a6の上下左右4箇所を押圧するように、上下に配置されたそれぞれのカム軸a11の両側に一対ずつ固定されている。一方、フィルタハウジングa4の外側には、これらの4つの偏芯カムa12を一斉に連動回転させるための操作ハンドルa13が設けられている。
【0008】
前記操作ハンドルa13は、フィルタハウジングa4内に回転自在に軸受け支持されている水平な操作軸a14の一方の端部に固定されており、この操作軸a14の他方の端部には、駆動傘歯車a15が固定されている。この駆動傘歯車a15は、フィルタハウジングa4内に垂直軸線回りに回転自在に軸受支持されている連動軸a16に固定された被駆動傘歯車a17と噛み合っている。
【0009】
連動軸a16には、前記被駆動傘歯車a17の上下に離間した2箇所にウォームa18が固定されている。これらのウォームa18は、それぞれ上下一対のカム軸a11の一端に固定されたウォームホイールa19と噛み合っている。
【0010】
従って、操作ハンドルa13を時計回りに回すと、その回転は、操作軸a14、駆動傘歯車a15、被駆動傘歯車a17を介して連動軸a16に伝達され、さらに、上下一対のウォームa18とウォームホイールa19間で減速されて上下のカム軸a11から偏心カムa12へ伝達される。
【0011】
その結果、上下2段に配置されているそれぞれのカム軸a11にそれぞれ2つずつ固定されている合計4つの偏心カムa12は、同位相で図10における時計回りに一斉に同期回転して、これらの偏心カムa12のカム面(外周面)は、フィルタ保持部a7、a8の先頭に保持されているフィルタFのフィルタ枠a6の左右両側前面に当接し、偏心カムa12の回転に伴ってこれらを後方に押し付け、隣合うフィルタFのフィルタ枠a6どうしを密着させた状態で、フィルタ枠受部a9または、フィルタ枠受部a10との間でこれらをフィルタ保持部a7、a8に固定保持する。
【0012】
この際、フィルタ枠a6とフィルタ枠受部a9、a10との間、及び隣合うフィルタ枠a6どうしの間は、それぞれのフィルタ枠a6の後面全周に取り付けられている図示しないゴム製のシール部材によって密封され、フィルタ上流側の空気がフィルタ枠の周囲からフィルタ下流側にフィルタFを通過せずに侵入することを防いでいる。
【0013】
一方、操作ハンドルa13を反時計回りに回すことにより、これらの偏心カムa12は容易に逆転してフィルタ枠a6の固定を解除することができる。そして、この状態で、フィルタハウジングa4の一方の側壁に取り付けられた蓋a20、a21(図9参照)を開けることによって、フィルタ保持部a7、a8内のフィルタFを取り出したり、新たなものと交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−72962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した特許文献1に記載されているフィルタ固定機構は、カム軸の左右両側に固定されている偏芯カムを前記カム軸を回転させることによって、カム面をフィルタ枠に押し付けて、フィルタをフィルタハウジング内に固定している。
【0016】
そのため、カム軸の両側に取り付けられている偏芯カムどうしの取付角度に狂いが生じていたり、左右それぞれの偏芯カムが押し当てられるフィルタ枠の当接面に製造上の歪みや長期の使用の結果生じた変形があると、左右の偏芯カムの押圧力が不均衡になり、フィルタ保持部内でフィルタが傾いてフィルタ枠とフィルタ枠受部間や、隣接するフィルタ枠どうしの間に隙間が生じて密封性が損なわれるおそれがあった。
【0017】
また、フィルタ枠に取り付けられているシール部材が経時的に変形して厚みが減少すると、偏芯カムによる押圧力が低下してフィルタ枠とフィルタ枠受部間や、隣接するフィルタ枠どうしの間の密封性が低下してしまう問題があった。
【0018】
そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題点を解消し、フィルタ枠の歪みや経時的な変形等によるフィルタの密封性の低下を防止できる、フィルタ装置のフィルタ固定機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的のために提供される本発明のフィルタ固定機構は、フィルタ装置のフィルタハウジング内に形成され空気流路を横断して、定位置で回転自在に支持された少なくとも一つのカム軸を有し、当該カム軸の両端近傍位置にそれぞれ取り付けられた偏芯カムの各カム面と、前記フィルタハウジングの内側に設けられたフィルタ枠受部との間にフィルタ枠を挟み込んで、前記空気流路内の定位置にフィルタを固定するようにしたものであって、それぞれの偏芯カムは、カム軸の両端近傍に固定されたカムホルダに対して当該カム軸中心からの偏芯量を個別に調整可能に取り付けられていることを特徴としている。
【0020】
前記フィルタ固定機構においては、それぞれのカムホルダには、偏芯カムのカム面のフィルタ枠を押圧固定する位置とカム軸を挟んで反対側の位置に先端を当接させて、当該カム軸に対する偏芯カムの偏芯量を位置決め調整するための調整ボルトが螺合されているとともに、当該偏芯カムとカムホルダ間には、偏芯量の調整位置を固定するための固定ボルトが設けられていることが望ましい。
【0021】
また、各偏芯カムのカム面は一部が平坦面で構成され、フィルタ枠受部との間にフィルタ枠を挟み込んで固定したときに、当該平坦面がフィルタ枠の対向面と面接触状態で当接することも望ましい。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された発明に係るフィルタ固定機構によれば、カム軸の両端近傍に取り付けられて、フィルタ枠受部との間でフィルタのフィルタ枠を挟み込んで押圧固定するそれぞれの偏芯カムの偏芯量が個別に調整できるため、フィルタ枠の製造上の歪みや長期使用の結果生じた変形等によって、各偏芯カム間でフィルタ枠の押圧力にバラツキが生じてフィルタ枠とフィルタ枠受部間や、隣接するフィルタ枠どうしの間に隙間が生じて密封性が損なわれる問題を解消することができる。
【0023】
また、長期の使用によってフィルタ枠に取り付けられているシール部材が変形してその厚みが減少し、偏芯カムの押圧力が低下した場合に、偏芯カムの偏芯量を調整して初期の押圧力を復元できるため、長期に亘って高い密封性を維持することができる。
【0024】
また、請求項2に記載された発明に係るフィルタ固定機構によれば、前記請求項1に記載された発明の効果に加えてさらに、カム軸に対する偏芯カムの偏芯量を調整ボルトによって調整した後、これとは別に設けた固定ボルトによって偏芯量の調整位置を確実に固定することができるため、使用中に調整位置がずれてしまう虞がない。
【0025】
また、請求項3に記載された発明に係るフィルタ固定機構によれば、前記請求項1又は請求項2に記載された発明の効果に加えてさらに、フィルタ枠の固定時において、偏芯カムのカム面の一部を構成する平坦面がフィルタ枠と面接触状態で当接するため、フィルタ枠が受ける接触面圧が低減されてフィルタ枠の局所的な変形を防止することができるとともに、フィルタ枠からの反力で偏芯カムが緩む向きに回動するトルクを生じないため、フィルタハウジング内にフィルタ枠の固定状態を安定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るフィルタ固定機構の1実施形態を示す、フィルタ装置の縦断面図である。
【図2】図1のX−X断面を示す図である。
【図3】図1のY−Y断面を示す図である。
【図4】本発明に係るフィルタ固定機構が組み込まれたフィルタ装置を有する空気浄化装置を、解剖台上の被剖検体カバーに連結した状態を示す図である。
【図5】図2のG部の詳細構造を示す拡大部分断面図である。
【図6】本発明に係るフィルタ固定機構の要部構造を示す平面図である。
【図7】図6のZ−Z断面を示す図である。
【図8】本発明に係るフィルタ固定機構の要部構造を示す分解斜視図である。
【図9】従来の空気浄化装置のフィルタ装置部分の平面断面図である。
【図10】図9のA−A断面を示す図である。
【図11】図9のB−B断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るフィルタ固定機構の1実施形態を示すフィルタ装置の縦断面図、図2は、図1のX−X断面を示す図、図3は、図1のY−Y断面を示す図であって、これらの図に示すフィルタ装置1は、図4に示す空気浄化装置Aの一部を構成している。
【0028】
図4に示す空気浄化装置Aは、解剖実習室内に置かれた解剖台Bの近傍に設置して使用されるもので、フィルタ装置1は、ブロワー(送風機)を内蔵する機枠Hの上に搭載されていて、前記機枠Hの下部に取り付けられたキャスタ車輪によって床面上を移動可能になっている。
【0029】
解剖台Bには、前回の解剖実習が終了してから次回の解剖実習が開始されるまでの間、解剖実習用の被剖検体Mが載置されており、その間、解剖が中断されている被剖検体Mからホルマリンやエタノール等の有害物質が解剖実習室内に流出・拡散することを防ぐために解剖台B上の被剖検体Mには被剖検体カバーCが被せてある。
【0030】
解剖実習を再開する際には、解剖台Bから被剖検体カバーCを取り外す前に、被剖検体カバーCの一方の端面に設けられている図示しない排気口と空気浄化装置Aのフィルタ装置1との間を排気ホースDで接続する。
【0031】
被剖検体カバーCの反対側の端面には、これも図示しないが蓋体で常時は塞いである外気取込口が設けられており、前記排気口に排気ホースDを接続する際には、前記蓋体を外して被剖検体カバーC内部に前記外気取込口から外気の流入が可能にしておく。
【0032】
次いで、空気浄化装置Aの機枠H内に内蔵されているブロワーを動作させて、被剖検体カバーCの内側に充満している有害物質を含んだ空気を、排気ホースDを介して空気浄化装置A側へ吸引する。
【0033】
こうして、被剖検体カバーC内の空気は、外気取込口から流入した外部の清浄な空気によって置換される。被倍検体カバーC内の空気が完全に置換された後、被剖検体カバーCを取り外す。なお、空気浄化装置Aに回収された被剖検体カバーC内の空気は、フィルタ装置1を通過する際に内蔵するフィルタによって有害物質が除去されて清浄化された後、室内に放出される。
【0034】
図1及び図2に示すように、フィルタ装置1は、前端面に排気ホースDが連結される一対の入口2が設けられているとともに、後端部底面に機枠Hに内蔵された図示しないブロワーの吸気口へ連通する出口3が設けられた箱状のフィルタハウジング4を有している。
【0035】
前記フィルタハウジング4の内部には、入口2から出口3に至る空気流路が形成されていて、この空気流路内にはその前後方向に並べて複数のフィルタ5a〜5eが配置されている。
【0036】
この実施形態においては、これらのフィルタ5a〜5eは、全て同一仕様のものであって、ここでは、ホルマリンミストや細菌等の有害物質を除去可能な、活性炭フィルタやHEPAフィルタ等の乾式フィルタが用いられている。
【0037】
本実施形態においては、入口2のすぐ後方に配置されているフィルタ5aは、専ら入口2から空気流路内に流入した空気の流れを整流するために用いており、また、これより後段のフィルタ5b〜5eは、空気流路内に取り込まれた空気中の有害物質を確実に捕捉できるように、それぞれ2枚ずつ一組にして配置されている。
【0038】
なお、ここでは全てのフィルタ5a〜5eに、同一仕様の乾式フィルタを用いているが、先頭のフィルタ5aについては、これに代えて、例えば、多数の微細な孔が形成されたパンチングメタルや目の細かい金網等を使用した専用の整流板を用いてもよい。また、これらのフィルタ5a〜5eには、乾式フィルタに限らず、湿式フィルタや乾式フィルタと湿式フィルタを組み合わせて使用してもよい。
【0039】
図3に示すように、フィルタ5a〜5eは、矩形状のフィルタ枠6によってフィルタ材7の周囲を保持した構造になっていて、これらのフィルタ枠6の上下の面と一方の側面(図3においては左側の側面)はそれぞれ、フィルタハウジング4の内側に設けられた、左右を反転させたコ字形の横断面形状を有するフィルタ保持部8、9、10に保持されている。なお、図3では、フィルタ5aとフィルタ保持部8のみを図示しているが、他のフィルタ保持部9、10の横断面形状も同様である。
【0040】
図1及び図2に示すように、フィルタハウジング4内に形成されている空気流路の最上流側のフィルタ5aを保持しているフィルタ保持部8は、フィルタ枠6の前後幅に略等しい前後幅を有している。
【0041】
フィルタ5aは、そのフィルタ枠6の後面をフィルタ保持部8の後端に設けられているフィルタ枠受部8Aに当接位置決めされた状態で、当該フィルタ枠6の前面の左右両側中央部を、それぞれ後述する一対の偏芯カム11のカム面に押圧されることで、フィルタハウジング4内に固定支持されるようになっている。
【0042】
また、図5は、図2のG部の詳細構造を示す拡大部分断面図であって、同図に示すように、フィルタ5aのフィルタ枠6の後面には、全周に亘ってゴム素材からなる帯状のシール部材6Aが貼り付けられていて、偏芯カム11の押圧によって、このシール部材6Aがフィルタ枠受部8Aの前面に密着し、フィルタ枠6の周囲を空気流路の前後で密封するようにしてある。
【0043】
一方、図1及び図2に示すように、前記空気流路の途中位置でフィルタ5b、5cを2つ一組で保持しているフィルタ保持部9と、その下流側で同様にフィルタ5d、5eを2つ一組で保持しているフィルタ保持部10は、それぞれフィルタ枠6の前後幅の略2倍の前後幅を有していて、これらの前端にはフィルタ5bとフィルタ5dのそれぞれのフィルタ枠6の前面に当接するフィルタ枠受部9A、10Aが設けられている。
【0044】
図示していないが、フィルタ5b〜フィルタ5eにおいては、前述した図5に示すシール部材6Aがフィルタ枠6の前面に位置するように、先頭のフィルタ5aとは前後の向きを反対にして、それぞれのフィルタ保持部9、10に保持させており、これらのもののフィルタ枠6は、フィルタ枠受部9A、10Aに対してそれぞれ後方から偏芯カム11によって押圧・固定されるようになっている。
【0045】
ここでは、詳細な図示は省略しているが、これらのフィルタ5b、5dのフィルタ枠6の前面に貼り付けられているシール部材がそれぞれフィルタ枠受部9A、10Aの後面に密着するとともに、フィルタ5b、5dのそれぞれのフィルタ枠6の後面に、フィルタ5c、5eのそれぞれのフィルタ枠6の前面に貼り付けられているシール部材が密着するようにしてある。
【0046】
図2に示すように、フィルタハウジング4の一方の側壁には、フィルタ5a、フィルタ5b、5c、フィルタ5d、5eに対応する箇所にそれぞれ、これらをフィルタハウジング4の外部へ水平に抜き出すための矩形状の開口部が3箇所設けられている。これらの開口部は、通常は着脱自在な蓋12、13、14によって閉じられている。
【0047】
また、同図に示すように、偏芯カム11は、フィルタハウジング4の左右の側壁に回転自在に軸受支持されている、水平な3つのカム軸15のそれぞれの両端近傍位置に固定されている。
【0048】
これらのカム軸15は、図示していない気密な軸受シールを貫通して、蓋12、13、14が装着されている側のフィルタハウジング4の側壁外部に突出していて、それぞれの突出端には回転操作部15Aが形成されている。
【0049】
これらの回転操作部15Aは、図3に示すように、ボックスレンチ状の操作ハンドルTを装着して回転操作できるように横断面が角形に形成されている。なお、この回転操作部15Aは、通常のボックスレンチ等の工具で回転操作できるような横断面形状であってもよい。
【0050】
図6〜図8に示すように、偏芯カム11は、カムホルダ16とセットカラー17を介して間接的にカム軸15に固定されている。偏芯カム11にはカム軸15が貫通する長孔11Aが形成されていて、この長孔11Aはカム軸15の外径に適合する幅を有し、幅方向と直交する方向に、偏芯カム11がカム軸15に対して所定量変位可能な形状としてある。
【0051】
偏芯カム11の長孔11Aの周囲には、ねじ穴11Bが3箇所形成されている。また、偏芯カム11の外周面で形成されているカム面の一部には、フィルタ枠6の固定位置でこれと当接する幅の狭い平坦面11Cが形成されているとともに、この平坦面11Cに対して長孔11Aを挟んだ反対側には広い平坦面11Dが形成されている。
【0052】
一方、カムホルダ16は、偏芯カム11の前記ねじ穴11Bが形成されている側の面の上に重ねて配置される厚い円板状の固定片16Aと、当該偏芯カム11の反対側の面に対向して配置されるガイド片16Bとが略U字状に屈曲した連結部16Cによって一体に連結されて構成されている。
【0053】
固定片16Aとガイド片16Bの対向間隔は、偏芯カム11をこれらの間に差し込んでスライド可能な間隔としてあり、これらの固定片16Aとガイド片16Bのそれぞれには、カム軸15が貫通する貫通孔16D、16Eが中心軸線を一致させて形成されている。
【0054】
また、固定片16Aには、長径方向を揃えた3つの長孔16Fが、偏芯カム11上の3つのねじ穴11Bと対応する位置に形成されている。これらの長孔16Fには、座金18を通した固定ボルト19が挿通されて偏芯カム11の対応するそれぞれのねじ穴11Bに螺着されるようになっている。
【0055】
固定片16Aには、さらに、セットカラー17の取付孔17Aを貫通させた取付ボルト20を螺合するねじ孔16Gが設けられていて、取付ボルト20によって、カムホルダ16はセットカラー17と一体に連結されている。
【0056】
また、カムホルダ16の固定片16Aとガイド片16Bとを一体に連結している連結部16Cには、ねじ孔16Hが貫通形成されている。前記ねじ孔16Hには、ロックナット21と座金22を通した調整ボルト23が螺合されている。
【0057】
なお、ここで用いているセットカラー17は、カム軸15が貫通する軸孔17Bが中心に形成された一般に市販されている円筒形状のものであって、すり割17Cを横断して螺合されている締付ボルト24を締め付けることで、当該セットカラー17は弾性変形して軸孔17Bが縮径し、その内周面がカム軸15の外周面に摩擦固定されるものである。
【0058】
また、このセットカラー17には、その外周面から軸孔17Bまで半径方向に貫通するねじ孔17Dが形成されており、このねじ孔17D内には、カム軸15に対する取付角度を位置決めするための芋ねじ25が螺合されている。
【0059】
図8に示すように、カム軸15の偏芯カム11を取り付ける位置の近傍には、所定長さの範囲で軸方向に位置決め溝15Bが形成されていて、前記芋ねじ25の先端部をこの位置決め溝15B内に嵌入させて、カム軸15に対するセットカラー17の取付角度が位置決め固定されるようになっている。
なお、カム軸15に対するセットカラー17の軸方向取付位置は、位置決め溝15B内を芋ねじ25の先端部が移動できる範囲で調整可能である。
【0060】
前述した構成において、カム軸15に偏芯カム11を取り付ける場合には、予めセットカラー17を取付ボルト20で結合したカムホルダ16の固定片16Aと、ガイド片16B間に、偏芯カム11をその広い平坦面11Dが連結部16Cと対向する向きで挿入し、3本の固定ボルト19を長孔16F内で動ける程度に緩めた状態で偏芯カム11のねじ穴11Bに螺合させる。
【0061】
一方、連結部16Cのねじ孔16Hには、ロックナット21と座金22を装着した調整ボルト23を螺合する。次いで、セットカラー17の芋ねじ25と締付ボルト24を緩めた状態で、カムホルダ16の貫通孔16D、16Eとセットカラー17の軸孔17Bにカム軸15を貫通させる。
【0062】
次に、カム軸15に形成されている前述した位置決め溝15Bに、セットカラー17の芋ねじ25の先端を嵌入させてカムホルダ16のカム軸15に対する角度の位置決めを行う。
【0063】
この際、芋ねじ25を少し緩めてある状態で、カムホルダ16のカム軸15に対する軸方向位置を調整し、その後、芋ねじ25を締め付けて固定する。こうしてカムホルダ16のカム軸15に対する位置決め調整が終わったら、セットカラー17の締付ボルト24を締め付けて、カム軸15にカムホルダ16を完全に固定する。
【0064】
次に、カム軸15に対する偏芯カム11の偏芯量の調整を行う。偏芯カム11の偏芯量の調整は、カム軸15を回転させてカム面に形成されている平坦面11Cをフィルタ枠6に対向させてから、調整ボルト23を回転させてその先端で平坦面11Dを押して、平坦面11Cをフィルタ枠6に当接させる。
【0065】
この際、偏芯カム11は、カムホルダ16の固定片16Aに形成されている3つの長孔16Fに固定ボルト19のそれぞれがガイドされるため、カムホルダ16に対して傾くことなく並進的に変位させることができる。
【0066】
ここからさらに、フィルタ枠6に対して適切な押圧力が発生するまで調整ボルト23を回転させてからロックナット21を締め付けて調整ボルト23を固定する。次いで、3つの固定ボルト19を均等に締め付けて、偏芯カム11をカムホルダ16に対して確実に固定する。
【0067】
なお、前述した偏芯カム11の偏芯量の調整は、フィルタ枠6のシール部材6Aの密封性を確保するために、フィルタ交換や清掃でフィルタ保持部に対してフィルタ枠を着脱する場合にその都度行うことが望ましい。
【0068】
また、フィルタ枠6に貼り付けられたシール部材6A(図5参照)は、長期の使用で経時的に変形して偏芯カム11によるフィルタ枠6の押し付け力が低下してくるため、定期的に偏芯カム11の偏芯量の調整を行うことが望ましい。
【0069】
なお、前述した実施形態においては、カムホルダ16とカム軸15に固定されるセットカラー17とは別部品としているが、これらは単一部品として構成してもよい。また、本実施形態においては、カムホルダ16に対して偏芯カム11を3つの長孔16Fとこれらの長孔に挿通されている固定ボルト19によって偏芯カム11をスライド自在に案内支持しているが、この構成に限定するものではない。
【0070】
例えば、これらの3つの固定ボルト19のうち、2つを偏芯カム11に突設されたガイドピンに代えてこれらのガイドピンを16Fに係合させ、残りの一つの固定ボルト19で偏芯カム11をカムホルダ16に固定するようにしてもよい。
【0071】
また、例えば、カムホルダと偏芯カムとの間を蟻溝等のガイド溝でスライド自在に連結し、偏芯カムのカムホルダに対する偏芯位置の位置決めは、前述したカムホルダ16における調整ボルト23とその調整位置を固定するロックナット21ような位置決め調整手段のみで行い、固定ボルトを省略してもよい。
【0072】
さらに、前述した実施形態においては、図1〜図3に示すように、それぞれのカム軸5を回転操作部5Aを回転することによって直接回転させているが、本実施形態に限定するものではなく、先に、図9乃至図11で説明したもののように、操作軸の回転をウォーム減速機構や傘歯車機構等の伝動機構を介して複数のカム軸に伝達し、各カム軸に設けられている偏芯カムを一斉に同期回転させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のフィルタ固定機構は、偏芯カムとフィルタ枠受部との間にフィルタ枠を挟み込んでフィルタを空気流路内に固定する構造を有する様々な分野のフィルタ装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 フィルタ装置
2 入口
3 出口
4 フィルタハウジング
5a〜5e フィルタ
6 フィルタ枠
6A シール部材
7 フィルタ材
8、9、10 フィルタ保持部
8A、9A、10A フィルタ枠受部
11 偏芯カム
11A 長孔
11B ねじ穴
11C、11D 平坦面
12、13、14 蓋
15 カム軸
15A 回転操作部
15B 位置決め溝
16 カムホルダ
16A 固定片
16B 保持片
16C 連結部
16D、16E 貫通孔
16F 長孔
16G、16H ねじ孔
17 セットカラー
17A 取付孔
17B 軸孔
17C すり割
17D ねじ孔
18 座金
19 固定ボルト
20 取付ボルト
21 ロックナット
22 座金
23 調整ボルト
24 締付ボルト
25 芋ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ装置のフィルタハウジング内に形成され空気流路を横断して、定位置で回転自在に支持された少なくとも一つのカム軸を有し、当該カム軸の両端近傍位置にそれぞれ取り付けられた偏芯カムの各カム面と、前記フィルタハウジングの内側に設けられたフィルタ枠受部との間にフィルタ枠を挟み込んで、前記空気流路内の定位置にフィルタを固定するようにしたフィルタ固定機構において、
それぞれの偏芯カムは、カム軸の両端近傍に固定されたカムホルダに対して当該カム軸中心からの偏芯量を個別に調整可能に取り付けられていることを特徴とするフィルタ固定機構。
【請求項2】
それぞれのカムホルダには、偏芯カムのカム面のフィルタ枠を押圧固定する位置とカム軸を挟んで反対側の位置に先端を当接させて、当該カム軸に対する偏芯カムの偏芯量を位置決め調整するための調整ボルトが螺合されているとともに、当該偏芯カムとカムホルダ間には、偏芯量の調整位置を固定するための固定ボルトが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ固定機構。
【請求項3】
各偏芯カムのカム面の一部に平坦面が形成され、フィルタ枠受部との間にフィルタ枠を挟み込んで固定したときに、当該平坦面がフィルタ枠の対向面と面接触状態で当接することを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ固定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−654(P2013−654A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134094(P2011−134094)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(591108190)株式会社セフテック (5)
【出願人】(391028122)株式会社ガステック (15)
【出願人】(394008765)
【出願人】(596170697)
【Fターム(参考)】