説明

フィルタ装置およびその製造方法

【課題】濾材の濾過面積減少を最小限度に抑えつつ、濾材を容器へ確実に固定することが可能なフィルタ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルタエレメント10が内周孔21と密着嵌合している部分の長さLhをフィルタエレメント10の軸方向長さLfよりも短く設定して、フィルタエレメント10の第1端面12を内周孔21の開口端である容器端面24から突き出させている。これにより、溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の側面11と加熱パンチ101間の隙間に確実に収容し、溶融樹脂がフィルタエレメントの端面へ達してフィルタエレメントの端面の一部が溶融樹脂に覆われてフィルタエレメントの流路面積が減少し濾過効率が低下するという不具合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾材を容器内に収納してなるフィルタ装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器内に濾材を収納してなるフィルタ装置の一例として、たとえば、濾材を容器の一部を溶融して濾材に溶着させることにより、濾材を容器に固定する構成としたフィルタ装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005−065802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のフィルタ装置では、濾材としてのフィルタエレメントの上端および下端を容器であるフィルタケースの上カバーおよび下カバーに固定する工程において、フィルタケースの上下端部を熱板により加熱溶融させ、これにより生成された溶融樹脂内にフィルタエレメントの上端および下端を突き刺し、その後溶融樹脂が自然冷却により硬化して、フィルタエレメントがフィルタケースに固定されている。
【0005】
上述の固定工程において、フィルタケースの上下端部を加熱溶融し溶融樹脂を生成するのに用いられた熱板は、フィルタエレメントを溶融樹脂に突き刺す工程の前にフィルタエレメントを突き刺す工程の邪魔にならないようにフィルタケースから遠ざけられることになる。したがって、フィルタエレメントを溶融樹脂に突き刺す工程期間中、溶融樹脂は加熱されないことになる。言い換えると放熱し自然冷却されていることになる。このため、フィルタエレメントへの溶融樹脂の浸透が部分的に不完全となる恐れがある。このため、フィルタエレメントとフィルタケースとの固定が不十分となる可能性がある。
【0006】
また、上述のフィルタ装置では、フィルタエレメントにおいて被濾過流体、たとえば燃料の流れる方向に交差する面である濾過面の一部が溶融樹脂に突き刺さることになる。すなわち、フィルタエレメントにおける流体通路面積が部分的に減少し、フィルタ装置としての流路抵抗が増大してしまう。さらに、フィルタエレメントにおいて溶融樹脂中に突き刺さった部分の背後の所定容積部分は流体が淀み流れず濾過機能を果たさないため、フィルタ装置としての濾過面積が減少してしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、フィルタ装置としての流路抵抗増大を抑制し且つ濾材の濾過面積減少を最小限度に抑えつつ、濾材を容器へ確実に固定することが可能なフィルタ装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成する為、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
本発明の請求項1に記載のフィルタ装置は、流体を通過させて流体中の異物を濾過する濾材および濾材を収容保持する樹脂製の容器を備えるフィルタ装置であって、濾材は柱状あるいは筒状に形成され且つ流体は濾材内を濾材の軸方向に流れ、容器は筒状に形成されるとともに濾材は容器の内周孔内に内周孔と同軸上に収容され、濾材は容器の軸方向の一端側において容器の一部が溶融して生成された溶融樹脂が濾材の軸方向に沿う方向の濾材の外表面である濾材側面に溶着することによって容器に固定され、溶融樹脂は濾材の軸方向に沿う方向の濾材の外表面である濾材側面のみに溶着し、濾材の軸方向に直交する方向に沿う濾材の外表面である濾材端面のうち一端側の濾材端面上には溶着していないことを特徴としている。
【0010】
上述の構成において、流体は、濾材の一端側の濾材端面から濾材内へ流入し、濾材内を流れるうちに流体に含まれる異物が濾材に捕集され、やがて濾材の他端側の濾材端面から流出する。このため、フィルタ装置において溶融樹脂が濾材の一端側の濾材端面に付着し溶着されている場合は、この樹脂により濾材の一端側の濾材端面、言い換えると、濾材における流体の入り口が塞がれることになり、フィルタ装置としての流路抵抗が増大することになる。また、濾材の一端側の濾材端面に付着した樹脂の背後の或る容積部分においては、濾材に流入した流体が澱んで流れないため濾過機能を果たさず濾材の濾過面積の損失となる。本発明の請求項1に記載のフィルタ装置では、溶融樹脂は、濾材の軸方向に沿う方向の濾材の外表面である濾材側面のみに溶着し、濾材の一端側の濾材端面上には溶着していない。したがって、濾材の一端側の濾材端面全域が流体の入り口として機能するのでフィルタ装置の流路抵抗増大を抑制することができる。さらに、濾材においては、溶融樹脂が浸透している部分を除いた全域を流体が流れるので、濾過面積の減少を必要最小限度に抑えることができる。
【0011】
以上により、本発明の請求項1に記載のフィルタ装置によれば、フィルタ装置としての流路抵抗増大を抑制し且つ濾材の濾過面積減少を最小限度に抑えつつ、濾材を容器へ確実に固定することが可能なフィルタ装置を提供することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載のフィルタ装置は、濾材はパルプ繊維および化学繊維の少なくとも一方からなる不織布、繊維集合体または連泡構造体から形成されたハニカム構造体であることを特徴としている。
【0013】
ハニカム構造体を構成する多数のハニカム要素の隔壁が濾過面となるので、濾材の容積に対する濾過面積の比率を大きくして濾材の寿命を長くすることができる。また、ハニカム構造体は製造が容易且つ濾材として普及しているので、これを濾材として用いることにより、長寿命且つ濾材の濾過面積損失のないフィルタ装置を安価に提供することができる。
【0014】
本発明の請求項3に記載のフィルタ装置は、濾材はパルプ繊維および化学繊維の少なくとも一方からなる不織布、繊維集合体または連泡構造体から形成されたバルク構造体であることを特徴としている。
【0015】
バルク構造体は製造が容易且つ濾材として普及している。したがって、これを濾材として用いることにより、濾材の濾過面積損失のないフィルタ装置を安価に提供することができる。
【0016】
本発明の請求項4に記載のフィルタ装置の製造方法は、請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載されるフィルタ装置の製造方法であって、容器が備える内周孔内に濾材を挿入する挿入工程と、容器に加熱パンチを当接させて容器の一部を溶融させ溶融樹脂を形成するとともに溶融樹脂を濾材に浸透させる溶融・浸透工程と、溶融樹脂を固化させて濾材を容器に固定する固化工程と、を備えるフィルタ装置の製造方法であって、溶融・浸透工程において加熱パンチは、挿入工程における濾材挿入入り口側端面である容器端面、および該容器端面の外周から内周孔の軸方向に延びる側面である容器側面に当接することを特徴としている。
【0017】
従来のフィルタ装置の製造工程では、フィルタケースの上下端部を加熱溶融し溶融樹脂を生成するのに用いられた熱板は、フィルタエレメントを突き刺す工程の邪魔にならないようにフィルタケースから遠ざけられる。このため、フィルタエレメントを溶融樹脂に突き刺す工程の間、溶融樹脂は加熱されずに放熱し続けていることになる。すなわち溶融樹脂の温度が低下し続けている。これにより、フィルタエレメントへの溶融樹脂の浸透が部分的に不完全となり、フィルタエレメントとフィルタケースとの固定が不十分となる可能性がある。
【0018】
これに対して、本発明の請求項4に記載のフィルタ装置の製造方法によれば、溶融樹脂を濾材側面に浸透させる溶融・浸透工程においては、加熱パンチは容器の一部が溶融されてなる溶融樹脂に接触しており、したがって溶融樹脂は加熱され続けている。これにより、溶融樹脂をその融点温度以上の溶融状態に維持することで溶融樹脂の良好な流動性を維持し続けられるので、溶融樹脂を濾材中に確実に浸透させることができる。したがって、濾材を容器へ確実に強固に固定することができる。
【0019】
本発明の請求項5に記載のフィルタ装置の製造方法は、溶融・浸透工程において加熱パンチは、内周孔の軸方向に移動しつつ容器に接近・離間するとともに、容器端面側から容器に接近し、加熱パンチは容器に当接することにより容器の一部を溶融させるための加熱面を備え、加熱パンチは、内周孔の中心軸から加熱面までの距離が加熱面の先端において最大となり、且つ内周孔の軸方向において先端から離れるに連れて距離が減少するように形成されることを特徴としている。
【0020】
上述のフィルタ装置の製造方法において、加熱パンチは容器端面側から容器に接近し、やがて容器に当接する。加熱パンチが容器に接触すると、容器は加熱パンチから熱を供給され、容器の加熱パンチ近傍部分が融解して溶融樹脂となる。そして、加熱パンチの加熱面と濾材側面との間の隙間に融解樹脂が流入していく。
【0021】
この状態から、加熱パンチがさらに軸方向に沿って移動する場合を考える。加熱面形状は、内周孔の中心軸から加熱面までの距離が加熱面の先端において最大となり、内周孔の軸方向において先端から離れるに連れて距離が減少するように形成されている。言い換えると、加熱面と濾材側面との間の隙間の大きさは、加熱パンチの先端部において最大となり、且つ加熱パンチの先端部から遠ざかる、つまり加熱パンチの根元側に向かうに連れて小さくなっている。溶融・浸透工程において、加熱パンチが容器に向かって移動して容器に接触した後、さらに同方向に移動したときに、この加熱パンチの移動を濾材側面から見ると、加熱パンチの移動に連れて、濾材側面から加熱面までの距離が減少していく、すなわち、濾材側面と加熱面との間の隙間が減少していく。このため、加熱パンチの加熱面と濾材の濾材側面との間の隙間にある融解樹脂は、加熱パンチが移動するに連れて加熱面に押されて圧力が高まり、それにより、溶融樹脂は濾材側面から濾材中に確実に浸透して行く。
【0022】
以上により、本発明の請求項5に記載のフィルタ装置の製造方法によれば、容器の一部が溶融してなる溶融樹脂を確実に濾材側面から濾材中に浸透させることができるので、濾材と容器とを確実に固定することができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載のフィルタ装置の製造方法は、溶融・浸透工程において濾材と加熱パンチとが内周孔の径方向において重なったときに、濾材側面と加熱パンチとの間には必ず隙間が形成されることを特徴としている。
【0024】
上述のフィルタ装置の製造方法によれば、溶融・浸透工程実施中、加熱パンチを濾材の軸方向に沿って移動させる際に加熱パンチが濾材と接触し、両者が焦げ付くことや、加熱パンチの円滑な移動が妨げられることを確実に回避することができる。したがって、フィルタ装置の製造工程において加熱パンチの滑らかな移動を維持して生産性を向上することができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のフィルタ装置の製造方法は、挿入工程が完了すると、濾材の一端側の濾材端面は容器の容器端面よりも濾材の軸方向において内周孔から外側へ突き出していることを特徴としている。
【0026】
フィルタ装置の製造工程中、溶融・浸透工程において、加熱パンチが容器端面に向かって移動して容器に接触した後にさらに同方向に移動していくと、加熱パンチの加熱面と濾材の濾材側面との間の隙間にある融解樹脂は、加熱面に押されて圧力が高まり、濾材の側面から濾材中に確実に浸透していく。このとき、溶融樹脂の一部は、加熱パンチの加熱面と濾材側面との間の隙間に流入し、さらに加熱パンチの根元側へ向かって流れる。そして、溶融樹脂が濾材側面を伝って濾材の一端側の濾材端面側の端部へ至ると、溶融樹脂が一端側濾材端面上へ回りこむ可能性がある。そうすると、濾材における一端側の濾材端面の面積が狭められフィルタ装置の流路抵抗が増大する可能性がある。
【0027】
これに対して本発明の請求項7に記載したフィルタ装置の製造方法によれば、挿入工程が完了した状態で濾材の一端側の濾材端面が容器端面よりも軸方向において外側へ突き出している。このため、加熱パンチが移動して容器に当接し容器の一部が溶融されて溶融樹脂が形成され、この溶融樹脂が濾材側面に浸透し始めた時点で、濾材の一端側端面は、溶融樹脂が浸透している部分よりも加熱パンチの移動方向とは反対方向に延長した位置にある。すなわち、濾材側面における溶融樹脂が浸透し始めた部位から濾材の一端側の端面に到る濾材側面沿いの距離が大きくなっている。これにより、加熱パンチがさらに移動して溶融樹脂の一部が加熱パンチの加熱面と濾材側面との間の隙間に流入しても、溶融樹脂は濾材の一端側の端面に至る前に停止する。したがって、溶融樹脂を確実に濾材側面から濾材中に浸透させて濾材を容器へ確実に固定できると同時に、濾材の一端側の端面上に溶融樹脂が付着することが抑制される。これにより、濾材の一端側の端面、すなわち濾材における流体通路の端面の面積が狭められてフィルタ装置の流路抵抗が増大すること、および、濾材の濾過面積が減少することを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる装置を説明する模式図である。
【図3】フィルタエレメント10製造工程を説明する模式図である。
【図4】フィルタエレメント10製造工程を説明する模式図である。
【図5】フィルタエレメント10製造工程を説明する模式図である。
【図6】フィルタエレメント10製造工程を説明する模式図である。
【図7】燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。
【図8】燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。
【図9】燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。
【図10】燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる装置を説明する模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる装置を説明する模式図である。
【図13】加熱パンチ101あるいは成型パンチ109の変形例の断面図である。
【図14】加熱パンチ101あるいは成型パンチ109の変形例の断面図である。
【図15】フィルタエレメント10の変形例の断面図である。
【図16】フィルタエレメント10の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明によるフィルタ装置の実施形態を、自動車に搭載され、燃料タンクからエンジンに供給される燃料を濾過するために用いられる燃料フィルタ1に適用した場合を例に図面に基づいて説明する。
【0030】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1は、図1に示すように、流体である燃料を通過させて燃料中の異物を除去する濾材としてのフィルタエレメント10と、フィルタエレメント10を収容保持する樹脂製の容器であるケーシング20から構成されている。
【0031】
フィルタエレメント10は、濾紙からハニカム状に形成されている。フィルタエレメント10の製造工程について簡単に説明する。先ず、図3に示すように、帯状濾紙15と、帯状濾紙15に対して半円形の山Pと鋭く切れ込んだ谷Vとが交互に繰り返されるように折り曲げ加工を施して形成された波型状濾紙16とを用意し、図4に示すように、波型状濾紙16の谷V側に帯状濾紙15を重ねて両者を接合した後、図5に示すように、山Pおよび谷Vの延設方向における一端側において波型状濾紙16の山Pをつぶして帯状濾紙15に密着させて山Pの端部を閉塞してフィルタ帯14を形成する。図5において、矢印は山Pが閉塞された側を示す。次に、このフィルタ帯14を、図6に示すように、山Pおよび谷Vの延設方向を中心軸とし且つ半円形の山Pを内側としてロール状に巻き、それによって、円柱状のフィルタエレメント10を形成する。
【0032】
ここで、フィルタ帯14をロール状に巻く工程中、山Pおよび谷Vの延設方向において山Pをつぶした一端側とは反対側の端部である他端において谷V内に谷Vを埋め尽くすように接着剤を充填するとともに、山Pの稜線全長に亘って接着剤を塗布して山Pの稜線と当該山Pの中心軸側の帯状濾紙15とを接着する。
【0033】
完成した円柱状のフィルタエレメント10においてロール状に巻かれたフィルタ帯14に着目して見ると、半円形の山Pおよび帯状濾紙15に囲まれた筒状の空間である山状筒部PPと、谷Vおよび帯状濾紙15に囲まれた筒状の空間である谷状筒部VPとが交互に配列されている。そして、円柱状に形成されたフィルタエレメント10の軸方向の一端側、言い換えると山Pおよび谷Vの延設方向の一端側においては、全ての山状筒部PPが閉塞され且つ全ての谷状筒部VPが開口しており、これに対してフィルタエレメント10の他端側においては、反対に山状筒部PPが開口し且つ谷状筒部VPが閉塞されている。したがって、フィルタエレメント10の軸方向に燃料を通過させた場合、たとえば上述した一端側から燃料を流入させると、燃料は、山状筒部PPが閉塞されているので谷状筒部VP内へ流入する。そして、フィルタエレメント10の他端側で谷状筒部VPが閉塞されているために波型状濾紙16を透過して隣接する山状筒部PP内へ流入し、山状筒部PPの他端側の開口からフィルタエレメント10外へ流出する。すなわち、燃料は、フィルタエレメント10内を流れる際に必ず波型状濾紙16を通過し、その際に燃料中の異物が波型状濾紙16に捕集されて濾過される。
【0034】
上述したように構成された円柱状のフィルタエレメント10において、図1に示すように、その軸方向における一端側の端面が第1端面12、他端側の端面が第2端面13である。本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1では、燃料は、第1端面12からフィルタエレメント10内へ流入し、フィルタエレメント10内を流れるうちに異物が濾過されて、第2端面13から流出する。しかし、フィルタエレメント10自体は、流体の流れ方向を特に限定するものではなく、どちら向きに流れても異物濾過機能上問題はない。すなわち、フィルタエレメント10においては、燃料を第2端面13から流入させ第1端面12から流出させても、濾過機能は正常に果たされる。実施形態を説明する際の便宜上、単に、第1端面12および第2端面13と区別している。したがって、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1においてフィルタエレメント10内の燃料の流れ方向は、第1端面12から第2端面13へ向かう方向、あるいは第2端面13から第1端面12へ向かう方向のどちらでもよい。
【0035】
ケーシング20は、樹脂材料、たとえばPOM樹脂等から略有底円筒状に形成されている。ケーシング20は、図2に示すように、フィルタエレメント10を収容し且つフィルタエレメント10と嵌合可能な内周孔21を備えている。内周孔21の内径dh1は、フィルタエレメント10の外径Dfとほぼ等しく形成されている。内周孔21の奥側、すなわちケーシング20の底部側には、図2に示すように、フィルタエレメント10の第2端面13に当接して内周孔21内におけるフィルタエレメント10の軸方向位置を規制する規制部22が設けられている。内周孔21の内壁において、内径寸法が内径dh1である部分の長さは、図2に示すように、規制部22から長さLhとなっている。規制部22からの長さが長さLhの位置から内周孔21の開口端までは、図2に示すように、内周孔21の内径dh1は、フィルタエレメント10の外径Dfよりも大きい内径dh2へテーパ状に拡大されている。内周孔21の内径寸法が内径dh1である部分の長さLhは、図2に示すように、フィルタエレメント10の軸方向長さである長さLfよりも短く設定されている。また、ケーシング20の底部側には、燃料フィルタ1の燃料出口である出口パイプ23が設けられている。
【0036】
フィルタエレメント10は、図1に示すように、ケーシング20の内周孔21の開口端部側において、樹脂溶着によりケーシング20に固定されている。すなわち、図1に示すように、内周孔21の開口端部近傍の内壁が全周にわたり一度溶解し、その溶融樹脂がフィルタエレメント10の軸方向に沿う方向の外表面である濾材側面としての側面11の全周に浸透して固化し、それにより、フィルタエレメント10がケーシング20に固定されている。
【0037】
次に、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造方法、特に、フィルタエレメント10とケーシング20との固定方法について、各図に基づいて説明する。
【0038】
本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程では、ケーシング20の内周孔21にフィルタエレメント10を挿入した後、樹脂製のケーシング20の内周孔21の開口端側の端部を内周孔21の全周において溶融させ、溶融樹脂をフィルタエレメント10の軸方向に沿う表面である側面11に浸透させた後に溶融樹脂を冷却し固化させて、フィルタエレメント10をケーシング20に固定している。
【0039】
ここで、燃料フィルタ1の製造工程中、ケーシング20にフィルタエレメント10を固定する工程で使用される装置等について説明する。ケーシング20にフィルタエレメント10を固定する工程では、図2に示すように、フィルタエレメント10の挿入が完了しているケーシング20を保持するための保持治具102、ケーシング20に当接してその一部を溶融させて溶融樹脂を生成するための加熱パンチ101、加熱パンチ101に通電するための電気導体103、電気導体103を介して加熱パンチ101に電流を流して加熱パンチ101の温度を高めるためのコントローラ104、溶融樹脂を冷却し固化させるために冷却用空気を噴出する空気噴出ノズル105等が用いられている。
【0040】
加熱パンチ101は、導電性材質、たとえば金属材料から形成されている。本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1では、フィルタエレメント10の形状が円柱状であるので、それに対応して、加熱パンチ101はフィルタエレメント10を内包するリング状に形成されている。加熱パンチ101は電気導体103を介してコントローラ104に接続されている。電気導体103は、たとえば銅線から形成されている。コントローラ104は、所定電圧・電流を発生制御可能な電気回路装置である。コントローラ104から電気導体103を介して加熱パンチ101へ低電圧大電流が流されると、加熱パンチ101はジュール発熱して温度が上昇し、ケーシング20を構成している樹脂材料の融点よりも高い温度となる。つまり、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造方法においては、加熱パンチ101の温度を高めるための手段として、抵抗加熱法を用いている。リング状の加熱パンチ101の内径dpは、図2に示すように、フィルタエレメント10の外径Dfよりも大きく形成されている。これによって、燃料フィルタ1の製造工程中の溶融・浸透工程において、フィルタエレメント10の外側から加熱パンチ101をフィルタエレメント10に向かって移動させる際に、加熱パンチ101がフィルタエレメント10に接触してフィルタエレメント10が加熱パンチ101に焦げ付くことなく、滑らかに移動させることができる。
【0041】
次に、加熱パンチ101のケーシング20に当接する側の先端形状について説明する。リング状の加熱パンチ101の内周面のうち、溶融・浸透工程においてケーシング20に当接する側の先端近傍部分は、フィルタエレメント10の側面11にその全周にわたって対向しつつ、当接したケーシング20を加熱し溶融させるとともに、加熱パンチ101およびフィルタエレメント10間の隙間に介在する溶融樹脂を加熱する加熱面Hとして機能する。
【0042】
ここで、加熱面Hの形状について説明する。加熱面H形状は、図2に示すように、加熱パンチ101がフィルタエレメント10から軸方向において離れている状態における加熱パンチ101のフィルタエレメント10側の先端Qから内周孔21の軸方向において先端Qから離れるに連れて、図7に示すように、加熱面Hがフィルタエレメント10の側面と対向した状態で側面11との距離が減少するように形成されている。すなわち、加熱面Hとフィルタエレメント10の側面11との距離は、図7に示すように、加熱パンチ101の軸方向の先端Qにおいて最大であり、先端Qから遠ざかるに連れて小さくなっている。
【0043】
以下に、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程の各工程について、実際に実施される工程の順を追って、すなわち、挿入工程、溶融・浸透工程、固化工程の順に説明する。
【0044】
先ず初めに、挿入工程について説明する。この挿入工程は、フィルタエレメント10をケーシング20の内周孔21内へ嵌合挿入するものであり、ケーシング20を保持治具102に保持させた状態で行われる。このとき、フィルタエレメント10の軸方向と内周孔21の軸方向とを一致させて、フィルタエレメント10を内周孔21内へ挿入する。このとき、図2に示すように、フィルタエレメント10の第1端面12をケーシング20の容器端面24側に、フィルタエレメント10の第2端面13をケーシング20の規制部22側にして挿入する。ここで、ケーシング20の内周孔21の内径dh1は、フィルタエレメント10の外径Dfと等しいかわずかに小さく設定されている。したがって、フィルタエレメント10と内周孔21との嵌め合いは、いわゆる締まり嵌めとなり、フィルタエレメント10の側面は内周孔21に圧接している。フィルタエレメント10を内周孔21へ挿入するのに要する力は小さく、たとえば作業者が手で挿入することが可能な程度であるものの、挿入後にフィルタエレメント10が内周孔21内で動いたり、抜け落ちたりすることはない。ここで、ケーシング10の内周孔21は、その内径寸法が内径dh1である部分の長さLhが、フィルタエレメント10の軸方向長さである長さLfよりも短く設定されている。このため、挿入工程が完了してフィルタエレメント10の端面が内周孔21の規制部22に当接した状態で、フィルタエレメント10の規制部22と反対側の端面である第1端面12は、内周孔21のフィルタエレメント10と圧接している部分よりも内周孔21の軸方向外側へ突き出している。言い換えると、フィルタエレメント10と内周孔21との嵌合状態は、図2に示すように、内周孔21の規制部22から内周孔21の開口端である容器端面24方向へ向かって長さLhの部分においては締まり嵌めであり、長さLhを超えた部分においては、図2に示すように、フィルタエレメント10の側面11と内周孔21との間に径方向の隙間が形成されている。
【0045】
次に、溶融・浸透工程について説明する。溶融・浸透工程は、コントローラ104により加熱パンチ101へ通電して加熱パンチ101の温度をケーシング20の溶融温度以上に高めるとともに、加熱パンチ101を、フィルタエレメント10が挿入されたケーシング20へ向けて移動してケーシング20に当接させ、内周孔21の一部を溶融させ、さらに溶融樹脂を、フィルタエレメント10の側面11に浸透させるものである。この溶融・浸透工程において、コントローラ104から加熱パンチ101へ通電して加熱パンチ101の温度を高めるタイミングは、加熱パンチ101がケーシング20に当接する前、あるいは当接後のどちらでもよい。加熱パンチ101の加熱面がケーシング20に当接しケーシング20を形成する樹脂が溶融すると、加熱パンチ101はさらに軸方向に内周孔21の底部へ向かって移動し所定位置で停止する。以下に、溶融・浸透工程について具体的に説明する。
【0046】
加熱パンチ101がフィルタエレメント10の装着が完了したケーシング20へ向かって移動して、図7に示すように、加熱パンチ101の加熱面Hがケーシング20の容器端面24に当接し、さらに移動する。ケーシング20は加熱パンチ101と接触した部分が加熱パンチ101により熱せられて溶解し、図8に示すように、溶融樹脂Mが生成される。このとき、加熱パンチ101の加熱面H形状が先に説明したように、フィルタエレメント10側の先端Qからフィルタエレメント10の軸方向にフィルタエレメント10から遠ざかるに連れて、図7に示すように、加熱面Hがフィルタエレメント10の側面と対向した状態で側面11との距離が減少するように形成されている。言い換えると、加熱面Hは、先端Qから離れるに連れてフィルタエレメント10の側面により近づく傾斜面状に形成されている。これにより、フィルタエレメント10側の先端Qからフィルタエレメント10の軸方向にフィルタエレメント10から遠ざかるに連れて、図7に示すように、加熱面Hがフィルタエレメント10の側面と対向した状態で側面11との距離が減少するように形成されている。言い換えると、加熱面Hは、先端Qから離れるに連れてフィルタエレメント10の側面により近づく傾斜面状に形成されている。加熱パンチ101の移動にしたがって溶融樹脂M量は増加するが、溶融樹脂Mは、依然として加熱面Hにガイドされてフィルタエレメント10の側面11に向かって流れ、やがて、フィルタエレメント10の側面11と加熱パンチ101の間に流入していく。
【0047】
ここで、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1では、フィルタエレメント10が内周孔21と密着嵌合している部分の長さ、すなわち内周孔21の内径寸法が内径dh1である部分の長さLhがフィルタエレメント10の軸方向長さである長さLfよりも短く設定され、フィルタエレメント10の第1端面12が、図2に示すように、内周孔21の開口端から突き出している。このため、溶融樹脂Mが生成された位置からフィルタエレメント10の第1端面12へ至るフィルタエレメント10の側面11と加熱パンチ101間の隙間の側面11沿いの長さおよび容積が大きくなっており、溶融樹脂Mはこの隙間容積に確実に収容されてしまい、溶融樹脂Mがフィルタエレメント10の第1端面12へ達して第1端面12にかぶさることがない。したがって、フィルタエレメントの端面の一部が溶融樹脂に覆われてフィルタエレメントの流路面積が減少し濾過効率が低下するという不具合を防止できる。
【0048】
加熱パンチ101の移動中も加熱パンチ101へはコントローラ104から通電され続け、加熱パンチ101の温度は樹脂の溶融温度以上に保たれている。このため、溶融樹脂Mは、溶融状態に維持され且つ加熱パンチ101の移動中は加熱面Hによりフィルタエレメント10の側面11へ向けて加圧されている。これにより、溶融樹脂Mは、フィルタエレメント10の側面11に確実に浸透する。フィルタエレメント10の側面11は、図6に示すように、帯状濾紙15により形成されているが、濾紙は微細な繊維を絡み合わせて形成されており、この絡み合った繊維間に溶融樹脂Mが浸透する。本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程の溶融・浸透工程では、先ず、ケーシング20の一部が溶融される溶融工程が始まり、続いて、溶融樹脂Mがフィルタエレメント10の側面11へ浸透する浸透工程が始まる。浸透工程が始まった後も加熱パンチ101はケーシング20に当接し続けるため、溶融樹脂Mの生成も引き続き行われる。したがって、浸透工程が始まった以降は溶融工程、浸透工程の両工程が同時に進行する。やがて加熱パンチ101は図9に示す位置で停止する。
【0049】
すると、引き続いて、固化工程が実行される。すなわち、コントローラ104が加熱パンチ101への通電を停止するのと同時に、空気噴出ノズル105から空気が加熱パンチ101の内外周表面に向かって噴出して、加熱パンチ101を冷却する。やがて、溶融樹脂Mが固化すると、加熱パンチ101は、図10に示すように、ケーシング20から離れて初期位置へ向かって移動する。溶融樹脂Mは、フィルタエレメント10内に浸透した溶融樹脂Mおよびフィルタエレメント10の外側にある溶融樹脂Mが固化することにより、フィルタエレメント10はケーシング20に固定される。フィルタエレメント10の側面11において、溶融樹脂Mが浸透し固化した領域である溶着領域Aは、図10に示す範囲となり、この溶着領域Aは、フィルタエレメント10の全周にわたって連続して形成され、それにより、フィルタエレメント10はケーシング20に強固に固定される。
【0050】
以上説明したように、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造方法においては、フィルタエレメント10が内周孔21と密着嵌合している部分の長さLhをフィルタエレメント10の軸方向長さLfよりも短く設定して、フィルタエレメント10の第1端面12を内周孔21の開口端から突き出させている。これにより、溶融樹脂Mが生成された位置からフィルタエレメント10の第1端面12へ至るフィルタエレメント10の側面11と加熱パンチ101間の隙間の側面11沿いの長さおよび容積を大きくして、溶融樹脂Mをこの隙間容積に確実に収容可能としている。したがって、溶融樹脂がフィルタエレメントの端面へ達してフィルタエレメントの端面の一部が溶融樹脂に覆われてフィルタエレメントの流路面積が減少し濾過効率が低下するという不具合を防止することができる。
【0051】
また、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造方法においては、生成された溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の側面11に浸透させる浸透工程実施中は、加熱パンチ101はコントローラ104により通電されて溶融樹脂Mを加熱し続けている。これにより、溶融樹脂Mは融点温度以上の溶融状態に保たれて良好な流動性を維持し続けるので、溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の側面11内へ確実に浸透させることができる。したがって、フィルタエレメント10を、その全周において確実にケーシング20に固定することができる。
【0052】
以上により、フィルタエレメント10の濾過面積減少を最小限度に抑えつつ、フィルタエレメント10をケーシング20に確実に固定することが可能な燃料フィルタ1およびその製造方法を提供することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態による燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。本発明の第2実施形態による燃料フィルタ1の製造工程は、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程に対して、加熱パンチ101の加熱手段を変更したものである。すなわち、金属製の加熱パンチ101に直接低電圧大電流を流してジュール発熱で昇温させる抵抗加熱方法に替えて、金属製の加熱パンチ101の外周に配置されたコイル106に、高周波発生装置107で発生した高周波電流を流し加熱パンチ101表面に誘導電流を発生させ、それによるジュール発熱で昇温させる電磁誘導加熱方法を採用している。加熱パンチ101の加熱方法以外の構成、および挿入工程・溶融・浸透工程・浸透工程・固化工程は、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程と同一である。
【0054】
電磁誘導加熱方法によっても、加熱パンチ101を容易に樹脂の溶融温度以上の温度に昇温させることができる。
【0055】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程を説明する模式図である。本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程は、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程に対して、ケーシング20を溶融させるための加熱手段を変更したものである。すなわち、本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程では、図12に示すように、ケーシング20の外周に配置された環状の赤外線照射装置108と成型パンチ109とにより、溶融・浸透工程〜固化工程を実施している。
【0056】
赤外線照射装置108は、ハロゲンランプ、レーザダイオード等から放射される赤外線を、図12に示すように、ケーシング20の内周孔21の外壁に向けて照射するものである。
【0057】
成型パンチ109は、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる加熱パンチ101と同一形状に形成されている。すなわち、ケーシング20に当接する部分の形状は、加熱パンチ101の加熱面Hと同一形状に形成されている。
【0058】
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程を説明する。
【0059】
先ず、成型パンチ109がフィルタエレメント10から離れている状態、すなわち成型パンチ109が図12に示す位置にある状態で、赤外線照射装置108を作動させてケーシング20に赤外線を照射して容器端面24およびそれに連なる容器側面25を溶融させる。次に、成型パンチ109をフィルタエレメント10の軸方向にフィルタエレメント10へ向かって移動させ溶融樹脂Mに押し当て、溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の側面に浸透させる。このとき、成型パンチ109は、赤外線照射装置108とケーシング20との間に入るので、ケーシング20への赤外線照射が遮られるが、赤外線照射装置108の作動は継続されて成型パンチ109を照射し、それにより成型パンチ109の温度を上昇させて溶融樹脂Mの良好な流動性を維持して、溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の全周に確実に浸透させることができる。次に、赤外線照射装置108の作動を停止し、空気噴出ノズルから空気を成型パンチ109に吹き付けて成型パンチ109を冷却して溶融樹脂Mを固化させる。次に、成型パンチ109を反対方向へ移動させて、ケーシング20から離脱させる。以上により、フィルタエレメント10とケーシング20との固定が完了する。
【0060】
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程においては、赤外線照射装置108および成型パンチ109が、本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程における加熱パンチ101の役割を果たしていると言える。
【0061】
本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程によっても、本発明の第1実施形態による燃料フィルタ1の製造工程の場合と同様の効果が得られる。すなわち、フィルタエレメント10の濾過面積減少を最小限度に抑えつつ、フィルタエレメント10をケーシング20に確実に固定することが可能な燃料フィルタ1およびその製造方法を提供することができる。
【0062】
なお、以上説明した本発明の第1実施形態および第2実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる加熱パンチ101の加熱面H形状、および本発明の第3実施形態による燃料フィルタ1の製造工程で用いられる成型パンチ109の溶融樹脂Mとの当接面形状を、いずれも同一且つ図2に示す形状に形成しているが、このような形状に限定する必要はなく、以下のような条件を満足する他の形状であってもよい。すなわち、図7に示すように、フィルタエレメント10側の先端Qからフィルタエレメント10の軸方向にフィルタエレメント10から遠ざかるに連れて、加熱面Hがフィルタエレメント10の側面と対向した状態で側面11との距離が減少するように形成されていればよい。言い換えると、加熱面Hは、先端Qから離れるに連れてフィルタエレメント10の側面により近づく傾斜面状に形成されていればよい。このような条件を満足する形状であれば、加熱パンチ101の移動中に溶融樹脂Mが加熱面Hによりフィルタエレメント10の側面11へ向けて加圧されるので、溶融樹脂Mをフィルタエレメント10の側面11に確実に浸透させることができる。たとえば、図13に示すように、加熱面Hを断面直線の斜面状としてもよい。あるいは、図14に示すように、加熱面Hの断面を曲線と直線とを組み合わせてなる斜面状としてもよい。
【0063】
また、以上説明した、本発明の第1実施形態〜第3実施形態による燃料フィルタ1の製造方法で製造される燃料フィルタ1では、フィルタエレメント10として、図6に示すように、濾紙をロール状に巻いて形成されたハニカム体を用いているが、これに限定する必要はなく、他の材質からなる濾材を用いてもよい。たとえば、不織布をブロック状に形成したもの等を用いてもよい。
【0064】
また、以上説明した、本発明の第1実施形態〜第3実施形態による燃料フィルタ1の製造方法で製造される燃料フィルタ1では、フィルタエレメント10の形状を、円柱状としているが、これ以外の形状であってもよい。たとえば、図15に示すように、燃料流れ方向に直交する断面形状が略C字状、あるいは、図16に示すように円筒状であってもよい。この場合、加熱パンチ101および成型パンチ109の形状は、フィルタエレメント10の全ての輪郭線を外挿するような形状に作られる。
【0065】
また、以上説明した各実施形態は、いずれも本発明を燃料フィルタに適用した場合を例に説明しているが、濾過対象である流体を燃料に限定する必要はなく、他の種類の流体を濾過するフィルタに適用しても良い。例えば、流体として、エンジン用潤滑油、飲料用水、工業用水、各種食用飲料、各種薬品等の液体、あるいは気体に適用しても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料フィルタ(フィルタ装置)
10 フィルタエレメント(濾材)
11 側面(濾材側面)
12 第1端面(一端側の端面)
13 第2端面(他端側の端面)
14 フィルタ帯
15 帯状濾紙
16 波型状濾紙
20 ケーシング(容器)
21 内周孔
22 規制部
23 出口パイプ
24 容器端面
25 容器側面
101 加熱パンチ
102 保持治具
103 電気導体
104 コントローラ
105 空気噴出ノズル
106 コイル
107 高周波発生装置
108 赤外線照射装置
109 成型パンチ(加熱パンチ)
A 溶着領域
Df、 外径
dh1、dh2、dp 内径
H 加熱面
Lf、Lh 長さ
M 溶融樹脂
P 山
PP 山状筒部
Q 先端
V 谷
VP 谷状筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を通過させて前記流体中の異物を濾過する濾材および前記濾材を収容保持する樹脂製の容器を備えるフィルタ装置であって、
前記濾材は柱状あるいは筒状に形成され且つ前記流体は前記濾材内を前記濾材の軸方向に流れ、
前記容器は筒状に形成されるとともに前記濾材は前記容器の内周孔内に前記内周孔と同軸上に収容され、
前記濾材は前記容器の軸方向の一端側において前記容器の一部が溶融して生成された溶融樹脂が前記濾材の軸方向に沿う方向の前記濾材の外表面である濾材側面に溶着することによって前記容器に固定され、
前記溶融樹脂は前記濾材の軸方向に沿う方向の前記濾材の外表面である濾材側面のみに溶着し、前記濾材の軸方向に交差する方向に沿う前記濾材の外表面である濾材端面のうち前記一端側の前記濾材端面上には溶着していないことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記濾材はパルプ繊維および化学繊維の少なくとも一方からなる不織布、繊維集合体または連泡構造体から形成されたハニカム構造体であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記濾材はパルプ繊維および化学繊維の少なくとも一方からなる不織布、繊維集合体または連泡構造体から形成されたバルク構造体であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載されるフィルタ装置の製造方法であって、
前記容器が備える内周孔内に前記濾材を挿入する挿入工程と、
前記容器に加熱パンチを当接させて前記容器の一部を溶融させ溶融樹脂を形成するとともに前記溶融樹脂を前記濾材に浸透させる溶融・浸透工程と、
前記溶融樹脂を固化させて前記濾材を前記容器に固定する固化工程と、を備えるフィルタ装置の製造方法であって、
前記溶融・浸透工程において前記加熱パンチは、前記挿入工程における前記濾材挿入入り口側端面である容器端面、および該容器端面の外周から前記内周孔の軸方向に延びる側面である容器側面に当接することを特徴とするフィルタ装置の製造方法。
【請求項5】
前記溶融・浸透工程において前記加熱パンチは、前記内周孔の軸方向に移動しつつ前記容器に接近・離間するとともに、前記容器の前記容器端面側から前記容器に接近し、
前記加熱パンチは前記容器に当接することにより前記容器の一部を溶融させるための加熱面を備え、
前記加熱パンチは、前記内周孔の中心軸から前記加熱面までの距離が前記加熱面の先端において最大となり、且つ前記内周孔の軸方向において前記先端から離れるに連れて前記距離が減少するように形成されることを特徴とする請求項4に記載のフィルタ装置の製造方法。
【請求項6】
前記溶融・浸透工程において前記濾材と前記加熱パンチとが前記内周孔の径方向において重なったときに、前記濾材側面と前記加熱パンチとの間には必ず隙間が形成されることを特徴とする請求項5に記載のフィルタ装置の製造方法。
【請求項7】
前記挿入工程が完了すると、前記濾材の前記一端側の前記濾材端面は前記容器の前記容器端面よりも前記濾材の軸方向において前記内周孔から外側へ突き出していることを特徴とする請求項5または請求項6のどちらか一つに記載のフィルタ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−264428(P2010−264428A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120263(P2009−120263)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】