説明

フィルタ装置及びこのフィルタ装置を備えた空気調和装置

【課題】薄くて小形化することができるため広範囲に使用することができ、また、フィルタの清掃手段を設けることにより、フィルタの表裏両面に堆積した塵埃を自動的かつ確実に除去することのできるフィルタ装置、及びこのフィルタ装置を備えた空気調和装置を提供すること。
【解決手段】180度の奇数倍捻り両端部を連結して無端帯状に形成したフィルタ11を、3本以上の複数本のローラ15,17に掛けてほぼ平面状に形成してフィルタ装置10を構成した。
また、上記のフィルタ装置10に堆積した塵埃を除去するための、フィルタの清掃手段20を設けた。
さらに、空気調和装置に、上記のフィルタ装置10又は清掃手段20を有するフィルタ装置10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置や加湿器などに用いられるフィルタ装置及びこのフィルタ装置を備えた空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和装置の室内機の吸込み口側には、吸込み空気中に含まれる異物を捕集し除去するフィルタが設けられており、運転が長期にわたるとこのフィルタを構成するメッシュが塵埃等で目詰りし、吸込み能力の低下などの支障を来たす。また、メッシュに付着した塵埃などに細菌が繁殖して不快な臭を発生することがあるため、フィルタを適宜清掃して付着した塵埃を除去することが必要である。
【0003】
このようなフィルタの清掃にあたっては、通常フィルタを装置から取り外してメッシュに付着した塵埃を除去したり、水洗したりしているが、煩しいばかりでなく、高所に設置した室内機からフィルタを取り外すため、安全上問題がある。
そのため、フィルタを装置から取り外すことなく、装置に設置したままで自動的に清掃する技術が提案されている。この場合、フィルタの表面を清掃するだけでは裏面に清掃残りが生じて塵埃が装置内に留ることになるので、表裏両面を自動的に清掃することが望ましい。
【0004】
このようなフィルタの自動清掃装置を備えた加湿器に、金属性コイル素材をコイル径方向から押し付けてコイル素材どうしを厚み方向に重ねることにより、コイル素材どうしの間に多数の空隙部を有する帯状体を形成して、その両端部を連結した無端帯状の多孔質体を構成し、これを外周に凸部を有する駆動回転体と従動回転体との間に懸架し、凸部を空隙部内に入り込ませて付着したスケールを除去するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、エアフィルタを往復的に駆動するモータと、エアフィルタの移動経路上に設けたダストボックス内にエアフィルタの表裏両面を擦るブラシを備えた清掃手段とを有し、所定の運転積算時間が経過したときは、エアフィルタを往復動させ、ブラシによりエアフィルタの両面に付着したゴミをダストボックス内にかき落すようにした空気調和機がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−292078号公報(第4、5頁、図1−図3)
【特許文献2】特開2004−101101号公報(第5−7頁、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明は、金属製のコイル素材を二重にしてフィルタを形成しているため、フィルタの有効面積が狭いのでフィルタ自体を大型化する必要があり、高価になるばかりでなく、無終端のフィルタを上下の回転体の間で回転させる装置が必要なため装置全体が大型になってしまい、狭いスペースで使用することができず、このため使用範囲が限られていた。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明は、フィルタの両面にブラシを設ける必要があるため、特許文献1の発明と同様に大型になって設置には広いスペースが必要であり、やはり使用範囲が限られていた。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、薄くて小形化することができるため広範囲に使用することができ、また、フィルタの清掃手段を設けることにより、フィルタの表裏両面に堆積した塵埃を自動的かつ確実に除去することのできるフィルタ装置、及びこのフィルタ装置を備えた空気調和装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルタ装置は、180度の奇数倍捻り両端部を連結して無端帯状に形成したフィルタを、3本以上の複数本のローラに掛けてほぼ平面状に形成したものである。
また、上記のフィルタ装置に、フィルタに堆積した塵埃を除去するフィルタの清掃装置を設けたものである。
【0011】
本発明に係る空気調和装置は、上記のフィルタ装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタ装置の使用範囲を拡大することができ、またフィルタの清掃手段を設けた場合はフィルタの両面に堆積した塵埃を自動的にかつ確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るフィルタ装置を備えた空気調和装置の室内機の断面説明図である。
【図2】図1のフィルタ装置の平面説明図である。
【図3】図1のフィルタ装置の要部を示す斜視説明図である。
【図4】フィルタの清掃手段を設けたフィルタ装置の要部の説明図である。
【図5】図4のフィルタ装置の作用説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るフィルタ装置の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るフィルタ装置を備えた空気調和装置の室内機を示す図1において、1は下部が開口された室内機の本体(以下、室内機本体という)で、内部の中央部には電動送風機2が設置されており、その外周(吹出し側)には熱交換器3が配設されている。4は熱交換器3の下部に設置されて熱交換器3に発生した凝縮水を受けるドレンパンである。そして、熱交換器3の外周(下流側)には、熱交換器3を通過した調和空気を室内に導く風路5が設けられている。
【0015】
また、室内機本体1の室内に露出する部分(下部開口部)には化粧パネル6が装着されており、この化粧パネル6の中央部には、吸込みグリル8を有し室内の空気を吸込む吸込み口7が設けられて、その外周には風路5と連通する調和空気の吹出し口9が設けられている。9aは吹出し口9に設けられた風向板である。
【0016】
室内機本体1と化粧パネル6との間にはフィルタ装置10が配設されており、このフィルタ装置10は、吸込み空気中の塵埃を捕集するフィルタ11と、フィルタ11の幅とほぼ等しい長さで両端部外周にギア16(図4参照)が設けられて、駆動モータ(図示せず)に駆動される駆動ローラ15、及び回転自在に支持された従動ローラ17a,17bとからなり、必要に応じて、フィルタ11に堆積した塵埃を除去して清掃するフィルタ清掃手段20(以下、清掃手段という)が設けられている。
【0017】
フィルタ11は、例えば、エラストマーなどの可撓性を有する材料からなるフィルタ枠12に、空気の流通に対して大きな抵抗とならず、かつ塵埃を捕集できるメッシュ13をインサートしてほぼ四角形状に形成したもので、フィルタ枠12の両側縁部の上面及び下面には、駆動ローラ15のギア16と噛合うラック状のギア(図示せず)が設けられている。
【0018】
フィルタ装置10は、図2に示すように、フィルタ11を180度の奇数倍捻り、両端部を連結して無端帯状として例えばメビウスの帯やヘキサフレクサゴンのように形成し、このフィルタ11を1本の駆動ローラ15と2本の従動ローラ17a,17bに掛けて、表裏のない平面状に形成したものである。なお、18は駆動ローラ15の外周の一部を覆うフィルタガイドで、フィルタ11は駆動ローラ15とフィルタガイド18との間を通過する。
【0019】
フィルタの清掃手段20は、図4に示すように、駆動ローラ15の近傍にダストボックス21が配設され、このダストボックス21内には挿脱可能なダスト回収箱22が設けられている。また、ダストボックス21の上部には、駆動ローラ15と平行に、かつ両端部がダストボックス21に回転自在に支持され、駆動モータ(図示せず)によって回転駆動されるブラシ軸25が設けられており、その外周には、フィルタガイド18内において駆動ローラ15に巻き取られたフィルタ11の面と接触するように、毛足が例えば15mm程度の植毛テープを螺旋状に巻き付けたブラシ26が形成されている。
【0020】
27はブラシ26の斜め下方において、ブラシ26の植毛を梳くようにブラシ26と交差してダストボックス21に設けられた櫛部で、ブラシ26の植毛に付着した塵埃を除去する。なお、上記の説明では、ブラシ軸25に植毛テープを螺旋状に巻き付けてブラシ26を形成した場合を示したが、ブラシ軸25に複数本の植毛テープを直線状に取付けてブラシ26を構成してもよく、あるいはブラシ軸25の外周全体に植毛を取付けてブラシ26を構成してもよい。
【0021】
次に、上記のような清掃手段20を備えたフィルタ装置10を組込んだ空気調和装置の室内機の作用について説明する。
空気調和装置が運転を開始すると、室内機の電動送風機2が駆動されて吸込み口7から室内空気が吸込まれる。吸込まれた空気は停止しているフィルタ装置10のフィルタ11に捕集されて清浄な空気となり、熱交換器3に導かれて冷却又は加熱されて冷風又は温風の調和空気となって、風路5を経て吹出し口9から室内に吹出され、室内を空気調和する。
【0022】
空気調和装置の運転を停止すると、駆動ローラ15の駆動モータに通電され、図5に示すように、駆動ローラ15を矢印a方向に回転させる。これにより、ラック状のギアが駆動ローラ15のギア16と噛合うフィルタ11は、駆動ローラ15に巻き取られて矢印b方向に移動する。
【0023】
このとき、ブラシ軸25は駆動モータにより矢印c方向に回転し、これに設けたブラシ26の植毛が巻き取られたフィルタ11の一方の面に接触し、フィルタ11に付着している塵埃を掻き落す。フィルタ11が1周して再び駆動ローラ15に到達したときはフィルタ11は反転しており、他方の面がブラシ26の植毛と接触し、フィルタ11に付着している塵埃が掻き落される。
【0024】
このようにして、フィルタ11が2回転する間に、両面に堆積した塵埃がブラシ26によって除去されて清掃され、清掃が終ると駆動ローラが停止し、ブラシ26の回転も停止する。これにより、フィルタ11の両面に堆積した塵埃は自動的に除去され、清掃される。なお、このような作用は、図示しない制御部の指令により行われる。
除去された塵埃はダストボックス21のダスト回収箱22内に落下し、ダスト回収箱22が塵埃で一杯になったときは、ダスト回収箱22をダストボックス21から引き出して、塵埃を捨てる。
【0025】
本実施の形態に係るフィルタ装置10によれば、フィルタ11を180度の奇数倍捻って端部を連結して無端帯状にし、少なくとも3本のローラ15,17a,17bに懸けてほぼ平面状に形成したのでメッシュ13の重なる部分を少くしてフィルタ11の有効面積を広くすることができ、その上薄型にすることができるので、使用範囲を大幅に拡大することができる。
【0026】
また、フィルタ装置10に清掃手段20を設けた場合は、可撓性を有するフィルタ11が駆動ローラ15に巻き取られる間に、フィルタ11の両面に堆積した塵埃がブラシ26により自動的に除去されて清掃されるので、使用者を煩わすことなく容易かつ確実に塵埃を除去することができ、安全でフィルタ11の除塵効率を高めることができる。
【0027】
さらに、図1に示すように、吸込み口7が下面にある室内機の吸込み口7にフィルタ装置10が設置された場合は、フィルタ11の裏面に付着した塵埃は除去しにくく清掃残りが生じ易いが、本実施の形態によれば、フィルタ11の両面に堆積した塵埃を自動的に除去することができるので清掃残りがなく、塵埃が室内機内に留ることがない。
【0028】
また、このように、フィルタ11を自動清掃することにより、空気調和装置の長期使用が可能で耐久性を向上することができ、その上、エネルギーの消費量を節減することができる。さらに、省エネルギー化を達成できるため、空気調和装置のライフサイクルにおける各段階での環境負荷軽減効果を得ることができる。
【0029】
[実施の形態2]
実施の形態1では、空気調和装置の室内機本体1と化粧パネル6との間に、清掃手段20を備えたフィルタ装置10を設置した場合を示したが、本実施の形態は、化粧パネル6内にフィルタ装置10又は清掃手段20を有するフィルタ装置10を配置したものである。
【0030】
本実施の形態によれば、フィルタ装置10を設置するための余分なスペースが不必要となるため、空気調和装置の室内機をより省スペース化、小形化することができる。
その他の構成、作用、効果は実施の形態1の場合と同様である。
【0031】
[実施の形態3]
実施の形態1では、フィルタ11を駆動ローラ15と2本の従動ローラ17a,17bに掛けてフィルタ装置10を構成した場合を示したが、本実施の形態は、1本の駆動ローラ15と多数の従動ローラ(図には、7本の従動ローラ17a〜17gが示してある)に、180度捻って両端部を連結した無端帯状のフィルタ11を掛けて、フィルタ装置10を構成したものである。なお、駆動ローラ15は2本又はそれ以上設けてもよい。
【0032】
本実施の形態によれば、フィルタ装置10の形状を適宜変更できるため、設置する風路の形状に対応した形状に形成することができるので、適用範囲を拡大することができる。
【0033】
上記の説明では、本発明に係るフィルタ装置10を、空気調和装置の天井埋込型室内機に実施した場合を示したが、これに限定するものではなく、壁掛型の室内機等にも実施することができ、さらに、加湿器、冷蔵庫、送風機、空冷装置などのフィルタ装置にも実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 室内機本体、2 電動送風機、3 熱交換器、5 風路、6 化粧パネル、7 吸込み口、9 吹出し口、10 フィルタ装置、11 フィルタ、12 フィルタ枠、13 メッシュ、15 駆動ローラ、16 ギア、17 従動ローラ、20 清掃手段、21 ダストボックス、22 ダスト回収箱、25 ブラシ軸、26 ブラシ、27 櫛部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
180度の奇数倍捻り両端部を連結して無端帯状に形成したフィルタを、3本以上の複数本のローラに掛けてほぼ平面状に形成したことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記3本以上のローラのうち少なくとも1本のローラを駆動手段によって回転駆動される駆動ローラとし、該駆動ローラによって前記フィルタを移動させることを特徴とする請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記駆動ローラに近接して、前記フィルタに堆積した塵埃を除去するフィルタの清掃手段を設けたことを特徴とする請求項2記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタの清掃手段は、前記駆動ローラの近傍に設けたダストボックスと、前記駆動ローラと平行に配置されて外周に前記フィルタと接触するブラシが取付けられ、前記ダストボックスに回転自在に支持されて駆動手段により回転駆動されるブラシ軸と、該ブラシ軸に近接して配置され該ブラシ軸のブラシに付着した塵埃を除去する櫛部とによって構成したことを特徴とする請求項3記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかのフィルタ装置を備えたことを特徴とする空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154562(P2012−154562A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14098(P2011−14098)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】