説明

フィルタ装置

【課題】フィルタ挿入時にはフィルタのフィルタ枠に貼り付けられたガスケットとフィルタを支えるためのフィルタ取付枠との間での摩擦を防ぐことでガスケットが剥がれ無いようにし、フィルタ交換の際には硬化したガスケットがフィルタ取付枠から剥がれ難くなっていてもフィルタ取付枠からガスケットを容易に剥がすことができるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ3のフィルタ枠20は、第1フィルタガイド部材25と第2フィルタガイド部材26を有し、フィルタのガスケット22をフィルタ取付枠90に対して密着して固定させる押圧固定部40を有し、押圧固定部40は、ケーシング内で傾斜可能に連結されて第1フィルタガイド部材25を案内して保持する第1保持部51と、ケーシング内で傾斜可能に連結されて第2フィルタガイド部材26を案内して保持する第2保持部52とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタを内蔵するフィルタ装置に関し、特にケミカルフィルタ、高性能フィルタを内蔵した半導体製造装置用フィルタ装置やビル空調、工場空調などの空調に用いられ数ヶ月の交換サイクルで交換される交換頻度の高い粗塵・中性能フィルタ等を簡単に押し付けて固定し、容易に交換することができるフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ装置のチャンバーは、フィルタ特性を維持するため、フィルタの保持を確実に行え、しかも内部にかかる風圧力に耐えうる材質、板厚、構造からなる箱体である。フィルタ装置のチャンバー内にはフィルタからの空気の漏洩を防止するフィルタの締付固定装置が必要である。 従来の締付固定装置は、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている締付固定装置では、フィルタ装置にフィルタユニットが挿入して固定される際には、アームをナットで締め付けることにより、フィルタユニットは、ガスケットを介して取付け座に押圧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第4264662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載の締付固定装置では、フィルタを挿入する時に、フィルタの下流側枠体に貼り付けられたガスケットと、フィルタを支えるフィルタフレームとが擦れて、両者の間に摩擦が発生することにより、ガスケットがフィルタの下流側枠体から剥がれてしまう可能性がある。
また、使用済みのフィルタを新しいフィルタに交換する際に、使用済みのフィルタのガスケットが硬化してしまっているために、フィルタのガスケットがフィルタフレームから剥がれにくくなり、簡単にはフィルタを交換できなかった。この理由としては、フィルタのガスケットをフィルタフレームから剥がしてフィルタを交換する際に、フィルタを取り出す方向がフィルタフレームに沿った横方向に単にスライドするだけであるので、硬化したガスケットには剥がす力が伝わり難く、ガスケットをうまくフィルタフレームから剥がせないためである。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解消するために、フィルタ挿入時には、フィルタのフィルタ枠に貼り付けられたガスケットとフィルタを支えるためのフィルタ取付枠との間での摩擦を防ぐことでガスケットが剥がれ無いようにすることができ、フィルタ交換の際には、硬化したガスケットがフィルタ取付枠から剥がれ難くなっていても、フィルタ取付枠からガスケットを容易に剥がすことができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフィルタ装置は、ケーシング内にフィルタが着脱可能に装着されるフィルタ装置であって、前記フィルタは、前記フィルタの一方の面側に固定されたガスケットと、前記フィルタのフィルタ枠と、前記フィルタ枠の一方の側面に設けられた第1フィルタガイド部材と、前記フィルタ枠の他方の側面に設けられた第2フィルタガイド部材を有し、さらに、前記ケーシング内で前記フィルタの前記ガスケットを密着して固定するフィルタ取付枠と、前記フィルタ取付枠に対して前記ガスケットを密着させる押圧固定部とを備えており、前記押圧固定部は、前記ケーシング内で傾斜可能に連結されて前記フィルタの前記第1フィルタガイド部材を案内して保持する第1保持部と、前記ケーシング内で傾斜可能に連結されて前記フィルタの前記第2フィルタガイド部材を案内して保持する第2保持部とを有することを特徴とする。
上記構成によれば、フィルタ挿入時には、フィルタのフィルタ枠に貼り付けられたガスケットとフィルタを支えるためのフィルタ取付枠との間での摩擦を防ぐことでガスケットが剥がれ無いようにすることができ、フィルタ交換の際には、硬化したガスケットがフィルタ取付枠から剥がれ難くなっていても、フィルタ取付枠からガスケットを容易に剥がすことができる。
【0007】
好ましくは、前記第1保持部の一端部は蝶番により前記ケーシングに対して連結され、前記第1保持部の他端部は前記第1保持部の一端部を中心として引き上げ可能な移動端部であり、前記第2保持部の一端部は蝶番により前記ケーシングに対して連結され、前記第2保持部の他端部は前記第2保持部の一端部を中心として引き上げ可能な移動端部であることを特徴とする。
上記構成によれば、第1保持部の移動端部と第2保持部の移動端部を引き上げることで、フィルタの挿入と取り出しを簡単に行える。
【0008】
好ましくは、前記第1保持部は、第1支持部材と、前記第1支持部材に固定されて前記第1支持部材と間で前記第1フィルタガイド部材を通してガイドする第1ガイド溝を形成する第2支持部材と、を有し、前記第2保持部は、第3支持部材と、前記第3支持部材に固定されて前記第3支持部材と間で前記第2フィルタガイド部材を通してガイドする第2ガイド溝を形成する第4支持部材と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、フィルタの第1フィルタガイド部材を第1ガイド溝にスライドすると同時にフィルタの第2フィルタガイド部材を第2ガイド溝にスライドするだけで、簡単にフィルタの挿入と取り出しが行える。
【0009】
好ましくは、前記第1保持部は、第1支持部材と、前記第1支持部材に固定されて前記第1フィルタガイド部材を通してガイドする第1ガイド溝を形成する第2支持部材と、を有し、前記第2保持部は、第3支持部材と、前記第3支持部材に固定されて前記第2フィルタガイド部材を通してガイドする第2ガイド溝を形成する第4支持部材と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、フィルタの第1フィルタガイド部材を第1ガイド溝にスライドすると同時にフィルタの第2フィルタガイド部材を第2ガイド溝にスライドするだけで、簡単にフィルタの挿入と取り出しが行える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルタ挿入時には、フィルタのフィルタ枠に貼り付けられたガスケットとフィルタを支えるためのフィルタ取付枠との間での摩擦を防ぐことでガスケットが剥がれ無いようにすることができ、フィルタ交換の際には、硬化したガスケットがフィルタ取付枠から剥がれ難くなっていても、フィルタ取付枠からガスケットを容易に剥がすことができるフィルタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフィルタ装置の実施形態1を示す斜視図である。
【図2】図1に示すフィルタ装置の実施形態1の内部構造を示す斜視図である。
【図3】フィルタ装置1のケーシング内にフィルタが挿入されて固定されている状態を示す正面側から見た断面図である。
【図4】フィルタがケーシング内に挿入されて締め付けて固定された状態を示す側面側から見た断面図である。
【図5】本発明のフィルタ装置の実施形態2の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
(実施形態1) 図1は、本発明のフィルタ装置の実施形態1を示す斜視図である。図2は、図1に示すフィルタ装置の内部構造を示す斜視図である。
図1と図2に示すフィルタ装置1は、好ましくは半導体製造装置用のケミカルフィルタ、高性能フィルタを有する装置である。フィルタ装置1は、直方体形状を有するケーシング(もしくはチャンバーあるいは筐体ともいう)2と、フィルタ3と、送風機4を有している。フィルタ3は、例えば長方形状の板状の部材であり、Y1方向に沿ってケーシング2内に挿入して着脱可能に固定される。ケーシング2は、点検扉5により開口部2Pを閉めて密閉した際には、フィルタ3以外には、ケーシング2内を通す気流を逃がさないような構造を有する。
【0013】
図1と図2に示すケーシング2の材質としては、例えばガルバニウム鋼板、メッキ鋼板(亜鉛、アルミ合金)、ステンレスを使用し、無溶接でリベット構造とすることで無塗装とすることができる。
図1に示すように、ケーシング2は、正面部2A、背面部2B、側面部2C、2D、上面部2E、底面部2F、そして点検扉5を有している。正面部2Aと背面部2Bは対面し、側面部2Cと側面部2Dは対面している。上面部2Eと底面部2Fは対面しており、上面部2Eは気流の上流側であり、底面部2Fは気流の下流側である。送風機4は、ケーシング2内であって、上面部2Eの中央位置のフィンガーガード16に対応して配置されている。従って、送風機4が回転すると、気流はZ2方向に流れる。
【0014】
図1と図2に示すように、ケーシング2の形状は、X方向を一辺とし、Y方向を他辺とし、Z方向は厚み方向である。ケーシング2内にはフィルタ3が着脱可能に配置される。図1に示すように、ケーシング2の底面部2F側には高性能フィルタ30が配置されている。この高性能フィルタ30の下流側には、図示しないが例えば長方形のアルミニウム製のラス網が設けられている。
フィルタ3は例えばケミカルフィルタであり、フィルタ3は有機、酸、アルカリ等を除去する。高性能フィルタ30がフィルタ3の下部に配置されている。フィルタ3は、この高性能フィルタ30に対して気流の上流側に配置されている。高性能フィルタ30は、例えばUPLA(高性能)フィルタである。
【0015】
図1に示すように、ケーシング2の正面部2Aには、細長い点検扉5がX方向に設けられている。これらの点検扉4は、複数の蝶番19により、長方形状の開口部2Pを開閉可能である。開口部2Pは、ケーシング2内の収納空間部21に通じている。
図1において、ケーシング2内の収納空間部27内には、後で説明する押圧固定部40の第1保持部51と第2保持部52を用いて、新たなフィルタ3を、開口部2Pを通じてY1方向に沿ってスライドして挿入して収容でき、そして使用済みのフィルタを新たなフィルタに交換する際には押圧固定部40の第1保持部51と第2保持部52を用いて、フィルタ3を、開口部2Pを通じてY2方向に沿ってスライドして取り出すことができる。
【0016】
図1に示すように、フィルタ3は、金属製のフィルタ枠20を有している。フィルタ枠20は、一方の長方形の開口部20Aと他方の長方形の開口部20Bを有している。フィルタ枠20の下流側枠体21には、ガスケット22が例えば接着材を用いて貼り付けることにより固定されている。このガスケット22は、開口部を有する長方形の枠状の部材である。フィルタ枠20の第1側面部23には、第1フィルタガイド部材25がY1方向に沿って例えば溶接により固定され、第2側面部24には、第2フィルタガイド部材26がY1方向に沿って例えば溶接により固定されている。これらの第1フィルタガイド部材25と第2フィルタガイド部材26は、好ましくは断面L字型を有する帯状の部材であり、X方向に突出して形成されている。しかも、第1フィルタガイド部材25と第2フィルタガイド部材26は、好ましくはガスケット22から離れたフィルタ枠20の上面側に面一になるように位置決めされている。
【0017】
次に、図1と図2を参照して、押圧固定部40について説明する。
押圧固定部40は、ケーシング2内にフィルタ3を、スライドして挿入後に、フィルタ取付枠90(図3と図4を参照)に対して押圧して固定するために設けられている。図1に示すように押圧固定部40は、ケーシング2の収納空間部27内に配置されている。押圧固定部40は、図1では破線で示している。
図2に示すように、押圧固定部40は、第1保持部51と第2保持部52と、ストッパ95を有する。図1と図2に示すように、第1保持部51は、ケーシング2内において向かって左側に配置され、第2保持部62は、ケーシング2内において向かって右側に配置されている。第1保持部51は、フィルタ3の第1フィルタガイド部材25をスライドしながらガイドして保持するための要素であり、第2保持部52は、フィルタ3の第2フィルタガイド部材26をスライドしながらガイドして保持するための要素である。
【0018】
図2に示すように、第1保持部51は、第1支持部材61と第2支持部材62を有し、第2保持部52は、第3支持部材63と第4支持部材64を有する。
左右の第1支持部材61と第3支持部材63は同じ形状を有しており、両方共に断面がほぼL字型の帯状部材である。第1支持部材61は、スライドガイド部61Aと、移動端部61Bと、連結部61Cを有する。第3支持部材63は、スライドガイド部63Aと、移動端部63Bと、連結部63Cを有する。左右のスライドガイド部61A、63Aは、図2に示す水平保持状態では、Y1方向に形成され、移動端部61B、63Bは、Z1方向に形成されている。つまり、移動端部61Bとスライドガイド部61Aは直角に形成され、移動端部63Bとスライドガイド部63Aは直角に形成されている。連結部61Cは、第1支持部材61の一端部であり、移動端部61Bは、第1支持部材61の他端部である。連結部63Cは、第3支持部材63の一端部であり、移動端部63Bは、第3支持部材63の他端部である。
【0019】
図2に示すように、連結部61Cは蝶番71を用いて、ケーシング2の背面部2Bの内面に対して連結されている。連結部63Cは蝶番72を用いて、ケーシング2の背面部2Bの内面に対して連結されている。これにより、第1保持部51は、蝶番71を介してR方向に引き上げたり逆に引き下げると同時に、第2保持部52は、蝶番72を介してR方向に引き上げたり逆に引き下げることができる。なお、移動端部61B、63Bの下端部には、それぞれ固定用のネジ77を通すためのネジ穴76が形成されている。
【0020】
一方、図2に示す第2支持部材62と第4支持部材64は、断面L字型の帯状部材であり同じ形状を有しているが、左右対称形状になっている。第2支持部材62の内面は、スライドガイド部材61Aの側面に対して例えば溶接78により固定されている。第4支持部材64の内面は、スライドガイド部材63Aの側面に対して例えば溶接79により固定されている。これにより、第2支持部材62とスライドガイド部材61Aは、第1フィルタガイド部材25をY1方向(あるいはY2方向)にスライドしてガイドする第1ガイド溝81を構成している。同様にして、第4支持部材64とスライドガイド部材63Aは、第2フィルタガイド部材26をY1方向(あるいはY2方向)にスライドしてガイドするための第2ガイド溝82を構成している。
【0021】
図3は、フィルタ装置1のケーシング2内にフィルタ3が挿入されて固定されている状態を示す正面側から見た断面図である。図4は、フィルタ3がケーシング2内に挿入されて締め付けて固定された状態を示す側面側から見た断面図である。図4(A)は、ケーシング2内にフィルタ3が挿入される前の状態を示し、図4(B)は、フィルタ3が傾斜された押圧固定部40に対して挿入された状態を示し、図4(C)は、押圧固定部40を水平にしてフィルタ3がケーシング2内に締め付けて固定された状態を示す。
【0022】
図3に示すように、ケーシング2の内部には、フィルタ取付枠90が固定されている。ケーシング2の側面部2C、2Dの内面には、フィルタ取付枠90の対向する辺部分91,92がY1方向に沿ってそれぞれ固定されている。図4に示すように、ケーシング2の正面部2Aと背面部2Bには、フィルタ取付枠90の残りの対向する辺部分93,94がX方向に沿ってそれぞれ固定されている。これにより、フィルタ3がケーシング2内に収容されて締め付けて固定されると、ガスケット22がフィルタ取付枠90の上面に対して密着されるので、ガスケット22はフィルタ3とフィルタ取付枠90との間から気流が漏れるのを防ぐ役割を果たす。
【0023】
図3と図4(C)に示すように、フィルタ3がケーシング2内に挿入されてフィルタ取付枠90に対して押し付けて固定されると、フィルタ3のガスケット22の4辺部分は、フィルタ取付枠90の対向する辺部分91,92と残りの対向する辺部分93,94に対して、それぞれ密着して押し付けて固定されるようになっている。図4に示すように、辺部分94の上には、ストッパ95が固定されており、ストッパ95は挿入されたフィルタ3の位置を停止させる。
【0024】
次に、上述したフィルタ装置1のケーシング2内にフィルタ3を挿入して押し付けて固定する操作と、さらに使用済みのフィルタと新しいフィルタ3の交換操作について順に説明する。
まず、ケーシング2内に、フィルタ3を挿入して押し付けて固定する操作を説明する。
作業者が図1の点検扉5を開くと、図1のフィルタ3は開口部2Pを通じて図1のケーシング2内に、Y1方向に沿ってスライドしながら挿入して固定できる。 図4を参照して、新しいフィルタ3を挿入して固定する操作を詳しく説明する。図4(A)に示すように、作業者が点検扉5を開けて、第1保持部51の移動端部61Bと第2保持部52の移動端部63Bは、蝶番71,72を回転中心としてR方向に沿って斜め上方向に同時に引き上げると、第1保持部51と第2保持部52は水平状態から角度θで傾斜される。つまり、移動端部61B、63Bは持上げられた状態になる。
【0025】
作業者は、フィルタ3の第1フィルタガイド部材25と第2フィルタガイド部材26を、開口部2Pを通じて第1保持部51の第1ガイド溝81と第2保持部52の第2ガイド溝82にスライドして通す。これにより、図4(A)から図4(B)に示すように、第2支持部材62とスライドガイド部材61Aで形成されている第1ガイド溝81は、第1フィルタガイド部材25をC方向に沿ってガイドすると同時に、第4支持部材64とガイド部材63Aで形成されている第2ガイド溝82は、第2フィルタガイド部材26をC方向に沿ってガイドすることができる。そして、フィルタ3のフィルタ枠20の挿入先端がストッパ95に当たると、フィルタ3のガイドが停止してフィルタ3が第1保持部51と第2保持部52に対して位置決めされる。
【0026】
そして、図4(B)から図4(C)に示すように、作業者は第1保持部51と第2保持部52を傾斜した状態からR1方向に引き下げて、移動端部61B、63Bはネジ77によりフィルタ取付枠90に対して固定する。この固定した状態では、ガスケット22はフィルタ取付枠90に対して密着して固定できるので、ガスケット22はフィルタ3とフィルタ取付枠90との間から気流が漏れるのを防ぐことができる。
このように、図4(A)に示すように第1保持部51の移動端部61Bと第2保持部52の移動端部63Bは、蝶番71,72を用いてR方向に沿って斜め上方向に引き上げた状態でフィルタ3を挿入できるので、フィルタ3の下流側枠体に貼り付けられているガスケット22を、フィルタ取付枠90から完全に離すことができ、ガスケット22とフィルタ取付枠90との間では摩擦が生じることが無い。従って、フィルタ3を挿入する際にガスケット22が剥がれることが無く、簡単にフィルタ3をケーシング2内に挿入して固定することができる。
【0027】
次に、フィルタ3の交換操作について説明する。
使用済みのフィルタ3を新しいフィルタ3に交換する場合には、ケーシング2内に固定されている使用済みのフィルタ3をケーシング2内から取り出す作業を行う。
作業者が図4(C)に示す点検扉5を開けて、第1保持部51と第2保持部52は、蝶番71,72を回転中心としてR方向に引き上げると、図4(B)に示すように第1保持部51と第2保持部52とともにフィルタ3が水平状態から角度θで傾斜される。このように、フィルタ3はR方向に沿って斜め上方向に引き上げられる。従って、ガスケット22が経年変化により硬化していてガスケット22がフィルタ取付枠90に対して密着して貼り付いていたとしても、通常のガスケットをスライドすることで剥がす場合に比べて、ガスケット22はフィルタ取付枠90から簡単に剥がすことができる。このため、ガスケット22がフィルタ取付枠90に密着して残ってしまう恐れが無い。
その後、図4(A)に示すように、フィルタ3は第1保持部51と第2保持部52からD方向に沿って斜め上方に向けてケーシング2内からスライドして取り出すことができる。
【0028】
なお、図3と図4(C)に示すように、フィルタ3のガスケット22は、フィルタ取付枠90に対して密着して保持されるので、ガスケット22が収縮することがあっても、フィルタ3のガスケット22とフィルタ取付枠90との間から、気流がリークするのを防ぐことができる。さらに、運転時や他の装置からの振動により、フィルタ3のガスケット22がフィルタ取付枠90に対して位置ずれしてしまうのを防ぐことができる。
【0029】
(実施形態2)
次に、図5を参照して、本発明のフィルタ装置の実施形態2を説明する。
図5は、本発明の実施形態2を示している。
図5に示すフィルタ装置1Aは図2に示すフィルタ装置1とほぼ同じ構成を有しており、対応する箇所には同じ符号を付けている。図5に示すフィルタ装置1Aが図2に示すフィルタ装置1と異なる点は、押圧固定部40の第1保持部51Aと第2保持部52Aの構造である。
【0030】
第1保持部51Aは、第1支持部材61と第2支持部材162を有し、第2保持部52Aは、第3支持部材63と第4支持部材164を有する。第1支持部材61と第3支持部材63は同じ形状を有しており、両方共にほぼL字型の帯状部材である。第1支持部材61は、スライドガイド部61Aと、移動端部61Bと、連結部61Cを有する。第2支持部材63は、スライドガイド部63Aと、移動端部63Bと、連結部63Cを有する。スライドガイド部61A、63Aは、図5に示す水平保持状態では、Y1方向に形成され、移動端部61B、63Bは、Z1方向に形成されている。
連結部61Cは蝶番71を用いて、ケーシング2の背面部2Bの内面に対して連結されている。連結部63Cは蝶番72を用いて、ケーシング2の背面部2Bの内面に対して連結されている。これにより、第1保持部51は、蝶番71を回転中心としてR方向に沿って斜め上方向に引き上げることができ、第2保持部52は、蝶番72を回転中心としてR方向に沿って斜め上方向に引き上げることができる。なお、移動端部61B、63Bの下端部には、ネジ77を通すためのネジ穴76が形成されている。
【0031】
一方、図5に示す左右の第2支持部材162と第4支持部材164は、断面U字型の長い部材であり同じ形状を有しているが、左右対称形状になっている。第2支持部材162の下面は、スライドガイド部材61Aの上面に対して例えば溶接により固定されている。第4支持部材164の下面は、スライドガイド部材63Aの上面に対して例えば溶接により固定されている。これにより、第2支持部材162は、第1フィルタガイド部材25をY1方向(あるいはY2方向)にスライドしてガイドする第1ガイド溝81Aを構成している。同様にして、第4支持部材164は、第2フィルタガイド部材26をY1方向(あるいはY2方向)にスライドしてガイドするための第2ガイド溝82Aを構成している。
【0032】
第1保持部51の移動端部61Bと第2保持部52の移動端部63Bは、蝶番71,72を回転中心としてR方向に沿って斜め上方向に引き上げてフィルタ3を挿入するので、フィルタの下流側枠体に貼り付けられているガスケット22と、フィルタ取付枠90を離すことができ、ガスケット22とフィルタ取付枠90との間では摩擦が生じることが無い。従って、フィルタ3を挿入する際にガスケット22が剥がれることが無く、簡単にフィルタ3をケーシング2内に挿入して固定することができる。
また、フィルタを交換する際には、フィルタ3はR方向に沿って斜め上方向に引き上げられる。ガスケット22が経年変化により硬化していてガスケット22がフィルタ取付枠90に対して密着してしまっていたとしても、通常のガスケットをスライドして剥がす場合に比べて、ガスケット22はフィルタ取付枠90から簡単に剥がすことができる。このため、ガスケット22がフィルタ取付枠90に密着して残ってしまう恐れが無い。
【0033】
以上説明したように、本発明のフィルタ装置の実施形態では、フィルタは、ケーシング内において確実に押し付けることで締め付けた状態を維持でき、フィルタのシール性を確保できる。そして、フィルタ挿入時には、フィルタのフィルタ枠に貼り付けられたガスケットとフィルタを支えるためのフィルタ取付枠との間での摩擦を防ぐことでガスケットが剥がれ無いようにでき、フィルタ交換の際には、硬化したガスケットがフィルタ取付枠から剥がれ難くなっていても、フィルタ取付枠からガスケットを容易に剥がすことができる。
本発明の実施形態のフィルタ装置では、ビル空調、工場空調などの数ヶ月サイクルと交換頻度の高い粗塵・中性能フィルタが容易に着脱でき、フィルタの交換作業性が向上できる。しかも、多数のフィルタ装置が工場等の取り付け対象建物に装着されている場合には、特にフィルタの交換作業性が向上できる。
【0034】
本発明の各実施形態は、任意に組み合わせることができる。
ところで、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形例を採用することができる。フィルタ装置のケーシングは、例えば上流側のダクトと、このダクトに直交する方向に空気を流す下流側のダクトの間に配置するようにしても良い。フィルタ装置のケーシングは、ダクトの途中に配置するのではなく、ダクトの先端部に配置するようにしても良い。フィルタ装置のケーシングの上流側には、ダクトを接続し、しかもフィルタ装置のケーシングの下流側には、ファンを配置しても良い。
【0035】
本発明の実施形態では、フィルタは半導体製造装置用のケミカルフィルタ、高性能フィルタを組み合わせているが、これに限定されない。フィルタ装置は、例えば局所クリーン用のファンフィルタユニットであるが、空調ダクト用のファンユニットにも適用できる。
本発明のフィルタ装置の実施形態で使用される点検扉5、ケーシング2、押圧固定部40等の部品の材質としては、例えばガルバニウム鋼板、メッキ鋼板(亜鉛、アルミ合金)、ステンレスを使用し、無溶接でリベット構造とすることで無塗装とすることができる。
【0036】
次に、本発明を実施するための最良の一形態ついて使用材料を説明する。
本発明は、使用材料に特徴があるわけではないので、記載していないものでも使用することができる。
ケミカルフィルタは、活性炭粒状、活性炭素繊維などの物理吸着による有機系ガス除去フィルタ、添着活性炭粒状、強酸性陽イオン交換樹脂の粒状、繊維状などの化学吸着による酸性ガス除去フィルタ、添着活性炭粒状、弱塩基性陰イオン交換樹脂の粒状、繊維状などの化学吸着によるアルカリガス除去フィルタの一種あるいはその複数を積層したり、平面分割したりした組合せで使用することができる。特に、ケミカルフィルタは、薄型低圧損という観点からすると、活性炭粒状あるいはイオン交換樹脂を不織布でサンドイッチした構造の濾材をジグザグ状に折り畳んだものが好ましい。
【0037】
塵埃除去フィルタは、ガラス繊維不織布、エレクトレット不織布、PTFE膜等からなる濾材をジグザグ状に折り畳み、セパレータあるいは樹脂リボンで間隔保持して、フィルタ枠にウレタン樹脂等の気密剤で気密固化した高性能フィルタを使用することができる。特に、塵埃除去フィルタは、ボロン、有機ガス等の発生が少ない低発ガスのという観点からするとPTFE膜濾材のフィルタが好ましい。
ファンは、軸流ファン、斜流ファン、遠心ファン、シロッコファンなどを使用することができる。特に、薄型、軽量化などの観点からすると、軸流ファンが好ましい。ガスケットは、クロロプレン樹脂、EPDM樹脂などを使用することができる。特に、ガスケットは、発ガス性などの観点からすると、EPDM樹脂が好ましい。
【0038】
本発明のフィルタ装置の実施形態で使用するガスケットの一例であるガスケットは、通常使用される単独気泡タイプのクロロプレンゴムなど使用できるが、50%圧縮応力が80kPa未満(JIS K6767準拠)であり、かつ、開放気泡率が90%以下(ASTM D2856−94準拠)の発泡体を含むガスケットを用いることができる。これにより、低圧力で押し付けを行うことで、フィルタ取付枠の形状に沿ってガスケットが変形するので大きいトルクで変形しなくても、押し付けの際にはガスケットとフィルタ取付枠との間の気密性が確保できる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・フィルタ装置、2・・・ケーシング、3・・・フィルタ、4・・・送風機、5・・・点検扉(扉の一例)、22・・・ガスケット、25・・・第1フィルタガイド部材、26・・・第2フィルタガイド部材、40・・・押圧固定部、51・・・第1保持部、52・・・第2保持部、71,72・・・蝶番、90・・・フィルタ取付枠、95・・・ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にフィルタが着脱可能に装着されるフィルタ装置であって、
前記フィルタは、前記フィルタの一方の面側に固定されたガスケットと、前記フィルタのフィルタ枠と、前記フィルタ枠の一方の側面に設けられた第1フィルタガイド部材と、前記フィルタ枠の他方の側面に設けられた第2フィルタガイド部材を有し、
さらに、前記ケーシング内で前記フィルタの前記ガスケットを密着して固定するフィルタ取付枠と、
前記フィルタ取付枠に対して前記ガスケットを密着させる押圧固定部と
を備えており、
前記押圧固定部は、
前記ケーシング内で傾斜可能に連結されて前記フィルタの前記第1フィルタガイド部材を案内して保持する第1保持部と、
前記ケーシング内で傾斜可能に連結されて前記フィルタの前記第2フィルタガイド部材を案内して保持する第2保持部と
を有することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記第1保持部の一端部は蝶番により前記ケーシングに対して連結され、前記第1保持部の他端部は前記第1保持部の一端部を中心として引き上げ可能な移動端部であり、前記第2保持部の一端部は蝶番により前記ケーシングに対して連結され、前記第2保持部の他端部は前記第2保持部の一端部を中心として引き上げ可能な移動端部であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1保持部は、第1支持部材と、前記第1支持部材に固定されて前記第1支持部材と間で前記第1フィルタガイド部材を通してガイドする第1ガイド溝を形成する第2支持部材とを有し、前記第2保持部は、第3支持部材と、前記第3支持部材に固定されて前記第3支持部材と間で前記第2フィルタガイド部材を通してガイドする第2ガイド溝を形成する第4支持部材とを有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記第1保持部は、第1支持部材と、前記第1支持部材に固定されて前記第1フィルタガイド部材を通してガイドする第1ガイド溝を形成する第2支持部材とを有し、前記第2保持部は、第3支持部材と、前記第3支持部材に固定されて前記第2フィルタガイド部材を通してガイドする第2ガイド溝を形成する第4支持部材とを有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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