説明

フィルタ部材を有するメカニカルシールアセンブリ

本発明は、第一摺動面(2a)を有する第一静止摺動リング(2)、第二摺動面(3a)を有する第二回転摺動リング(3)であって、回転摺動リング(3)が回転要素(10)とともに回転し、摺動リング(2、3)の摺動面(2a、3a)が互いに反対側に設けられてその間にシールギャップ(4)を定義する、第二回転摺動リング(3)と、シールギャップ(4)とは違う方向を向いている静止摺動リング(2)の側(2b)に配置され、ハウジングシール部(12)を封止する、動的二次シール(13)と、静止摺動リング(2)に対して軸方向に予張力を印加する予張力装置(7)と、実質的にリング形状を有し、ハウジングシール部(12)よりも回転軸(X−X)からさらに離れた半径方向に配置されたフィルタ要素(14;24)と、を含む、摺動リングシール配置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシールアセンブリの動的二次シールに塵が付着するのを防止するためのフィルタ部材を有する、メカニカルシールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な形状のメカニカルシールアセンブリが、最新技術より知られている。温度および圧力による高い応力の他に、メカニカルシールアセンブリによって封止されている媒体がしばしば完全に純粋ではなく、塵粒子を含むことは、さらなる問題である。
【0003】
このような塵粒子は、シールリングの軸方向補正に付随する、動的二次シールに特に付着する。特に、付着は、動的二次シールの軌道上でも起こり得るこのような塵付着は、予張力が動的二次シールを通じて伝達される場合に、水力直径の摩耗または二次シールの破損を生じる可能性がある。その結果、最悪の場合、メカニカルシールアセンブリの完全な故障が発生するかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、単純な構造を有し、容易かつ安価に製造されながら、メカニカルシールアセンブリの故障を生じる可能性のある塵の問題を回避する、メカニカルシールアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有するメカニカルシールアセンブリによって解決される。従属請求項は、本発明の好適なさらなる展開を示す。
【0006】
請求項1の特徴を有する本発明のメカニカルシールアセンブリは、付着した塵粒子によるメカニカルシールアセンブリの機能の障害が防止されるように、塵粒子の付着を防止する。本発明によれば、この目的のためにフィルタ部材が設けられ、これはリング形状を有し、ハウジングシール部よりもさらに外側の半径方向に配置される。このハウジングシール部において、動的二次シールは、シールギャップとは違う方向を向いている静的シールリングの裏面を封止する。静的シールリングは回転せず(回転的に固定され)、静的シールリングと回転シールリングとの間のシールギャップを可能な限り小さく保持するために、予張力装置によって軸方向に移動させることができる。本発明によれば、動的二次シールの付着物が特に防止され、この付着物は動的二次シールの漏れを生じる可能性があり、特に動的二次シールの軸方向の動きを妨げる可能性がある。この軸方向の不動性は、「ハングアップ」とも称されるが、予張力が動的二次シールを通じて伝達される場合に、特に予張力装置の予張力機能に影響を及ぼす。さらに、塵粒子の付着によって動的二次シールの水力直径での望ましくない摩耗が生じることも、防止される。本発明の解決法により、リング型または環状のフィルタ部材を設けることによって、メカニカルシールアセンブリの望ましくない箇所における塵粒子の付着の単純で安価な予防を、可能にする。これにより、本発明のメカニカルシールアセンブリは、かなり少ない故障率、および、特に延長された使用寿命も、有する。これにより、本発明のメカニカルシールアセンブリは、汚染された媒体とともに使用されてもよいが、しかしメカニカルシールアセンブリには、別途抑制流体回路が設けられる必要はない。
【0007】
媒体内に存在する塵粒子を可能な限りフィルタで除去して吸収することができるようにするために、環状フィルタ部材は好ましくは、半径方向内向きに配向された円周凹部を含む。これにより、塵粒子は、円周凹部内に受容および蓄積されることが可能である。さらに、凹部の側壁部において大量の塵粒子が蓄積される場合にも、まだ十分な自由フィルタ面が残っており、これがフィルタ媒体を通る媒体の流れを確保する。好ましくは、凹部はU字型の断面を有する。
【0008】
好ましくは、予張力装置は、動的二次シールを通じて静的シールリングに推進力を伝達する、スラストリングを含む。特に好ましくは、フィルタ部材の片側はスラストリングに固定され、反対側はハウジング部品に固定される。
【0009】
フィルタ部材として、好ましくは不織布(フリース)が使用され、不織布はさらに、好ましくは0.7μmから1.3μmのメッシュ密度、さらに好ましくは1μmのメッシュ密度を有する。
【0010】
好ましくは、フィルタ部材は一体型不織布で作られている。代替として、フィルタ部材はまた、少なくとも2層の不織布を周辺、好ましくは内周で接続することによって、その表面が軸方向に配向されている、不織布の2つの環状層で作られてもよい。特に好ましくは、フィルタ部材は、ちょうど4層の不織布で作られ、この場合、実質的にM字型の断面を有する。
【0011】
特に好ましくは、フィルタ部材は、圧力浸透性であり、すなわちフィルタ部材の前方の圧力がフィルタ部材の後方の圧力に対応する。その結果、具体的には二次シールの適切な機能が確保されるように、フィルタ部材の前方と後方の領域に、同一の圧力が存在する。
【0012】
簡単で迅速な組み立てのため、フィルタ部材は好ましくは、軸方向に自由な両端での接着接続によって固定される。
【0013】
本発明のメカニカルシールアセンブリは、特に好ましくはガス状媒体のために使用され、ガス潤滑メカニカルシールアセンブリとして実現される。本発明のメカニカルシールアセンブリは、たとえば、天然ガスなどのための圧縮機において使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態が詳細に記載される。
【図1】本発明の第一実施形態による、メカニカルシールアセンブリ1の模式的断面図である。
【図2】本発明の第二実施形態による、メカニカルシールアセンブリ2の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1を参照して、本発明の第一実施形態によるメカニカルシールアセンブリ1が記載される。
【0016】
図1から認識できるように、メカニカルシールアセンブリ1は、第一静止シールリング2および第二回転シールリング3を含む。回転シールリング3は、スリーブ16を通じて軸10に接続され、軸10およびスリーブ16とともに回転軸X−Xの周りを回転する。2つのシールリング2、3は、互いに対向している摺動面2a、3aを有し、これらはその間のシールギャップ4を定義する。
【0017】
本明細書に記載のメカニカルシールアセンブリ1は、回転軸10において第一チャンバ5と第二チャンバ6との間を封止する。この実施形態は、チャンバ5内に存在するガス状媒体を封止するように構成された、ガス潤滑メカニカルシールアセンブリについて言及する。
【0018】
さらに、メカニカルシールアセンブリ1は、スラストリング8および周囲に分配された複数の予張力バネ9を含む、予張力装置7を含む。予張力装置7は、回転シールリング3に対して静止シールリング2に予張力をかける。この文脈において、「静止」という用語は、可能な限り狭く定義されるべきシールリング2、3の間のシールギャップ4を維持するために、第二シールリング2が、上記リングに伝達される予張力装置の予張力によって軸方向に移動する可能性があることを意味することに、留意すべきである。回転シールリングに関しては、静止シールリング2は回転可能に固定して配置される。
【0019】
予張力装置7の予張力バネ9は、本実施形態においてハウジング11の穿孔内に配置される。さらに、スリーブ状ハウジングシール部12がハウジング11に配置され、この領域で静止シールリング2が支持される。ハウジングシール部12は、好ましくはタングステンカーバイド材料で作られたスリーブとして形成される。これにより、封止されるべき媒体の高圧に対する高い耐性が得られる。さらに、動的二次シール13が、静止シールリング2の裏面2bでハウジングシール部12に配置され、これは軸方向において摺動面2aと反対側に設けられる。図1から認識できるように、動的二次シール13は、静止シールリング2とスラストリング8との間に配置されている。これにより、予張力装置7の予張力は、スラストリング8を通じて静止シールリング2に伝達される。図1からさらに認識できるように、動的二次シールはL字型の断面を有し、軸方向に設けられた脚に、軸方向に配向されたV字型のインサート13aを、さらに含む。
【0020】
さらに、本発明のメカニカルシールアセンブリ1は、実質的にリング形状を有し、ハウジングシール部12よりも半径方向外側の位置に配置されている、フィルタ部材14を含む。フィルタ部材14は、不織布で作られており、1μmの孔径を有する。図1から認識できるように、フィルタ部材14は、半径方向内向きに配向された凹部14a、第一固定部14b、および第二固定部14cを含む、U字型の断面を有する。図1に示されるように、フィルタ部材14はスラストリング8のショルダ8a、およびハウジング11に取り付けられたリング部材15に、取り付けられている。固定部14b、14cにおけるフィルタ部材14の取り付けは、好ましくは接着接続によって行われる。図1から認識できるように、フィルタ部材14は、第一チャンバ5から部分5aを分離する。部分5aは、フィルタ部材14の半径方向内側に、具体的には動的二次シール13とハウジングシール部12との間の封止区域に、設けられている。フィルタ部材14の周囲凹部14aは、ガス状媒体内に存在する塵粒子を受容および蓄積するのに役立つ。
【0021】
フィルタ部材14は圧力浸透性なので、チャンバ5と部分5aには等しい圧力が存在する。これにより、具体的には、チャンバ5内の圧力変化も、フィルタ部材14の背後の部分5aに対して遅延することなく、伝達されることが可能である。したがって、フィルタ部材14は、決してメカニカルシールアセンブリの機能に影響を与えることはない。その結果、回転シールリング3に対する静止シールリング2の押圧力が、維持され得る。
【0022】
リング部材15が切り取り段差によってハウジング11に取り付けられるように、リング部材15の固定のために、下部切り欠き11aがハウジング11に形成される。
【0023】
本発明によれば、これにより、二次シール13および静止シールリング2の軸方向の自由移動の干渉に影響する可能性のある塵粒子が、特にハウジングシール部12に、付着することが防止される。したがって、フィルタ部材14は、静止シールリング2の自由な跳ね返りを確保する。フィルタ部材13は軸方向の補正移動を行うことができるので、フィルタ部材14のU字型断面により、二次シール13の移動性の制限も生じない。
【0024】
フィルタ要素14はハウジングシール部12に比較的近く配置されているので、たとえばメカニカルシールアセンブリの区域にのみ粒子の付着が発生する可能性が、さらに排除される。本発明のフィルタ部材は、メカニカルシールアセンブリの軸方向移動性を制限せず。およそ1μmのメッシュ密度によってガス浸透性でもある。塵粒子の他に、フィルタ部材は当然ながら、二次シール13の区域において外乱を引き起こす可能性もある液体粒子も、フィルタで除去することができる。
【0025】
この実施形態において、フィルタ部材14は、接着接続によって、第一及び第二固定部14b、14cにおいて取り付けられている。代替として、フィルタ部材がたとえば固定部14b、14cを締め付けることによって取り付けられることも可能であることに、留意すべきである。しかし、特に第一固定部14bとリング部材15との間に接着接続を含む実施形態は、メカニカルシールアセンブリの実装に先立って、これが既に行われ得るという利点を有している。メカニカルシールアセンブリの実装には、リング部材15のみが、ハウジング11に設けられた下部切り欠き11aの上に挟持されればよい。
【0026】
以下に、本発明の第二実施形態によるメカニカルシールアセンブリ2が図2を参照して記載されるが、ここで同じ部品または同じ機能を有する部品は、第一実施形態と同じ参照番号が付されている。
【0027】
メカニカルシールアセンブリ2は、実質的に第一実施形態に対応するが、しかしそれとは対照的にフィルタ部材が異なる構成になっている。第二実施形態において、フィルタ部材には参照番号24が付されている。フィルタ部材24は、4層の不織布24a、24b、24c、24dで作られている。この文脈において、2つの外側の層24aおよび24dはフィルタ部材を固定するのに役立ち、2つの内側の層24bおよび24cは、その中に塵粒子および/または液滴が収集される、V字型の断面を有する収集部を形成する。不織布の個別の層は、それぞれ粘着によって相互接続されている。これにより、第二実施形態のフィルタ部材は、M字型の断面を有する。それぞれ隣接する不織布の層をその境界域で接続することによって、フィルタ部材の軸方向移動性を制限することなく、第二実施形態のフィルタ部材24が確実にその形状を維持できるように、第二実施形態のフィルタ部材はある程度固定された設計を有する。これとは別に、この実施形態は、上記文脈において与えられた記載を参照することができるように、先行する実施形態に対応している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルシールアセンブリにおいて、
第一摺動面(2a)を有する第一静止シールリング(2)と、
第二摺動面(3a)を有する第二回転シールリング(3)であって、前記回転シールリング(3)は回転要素(10)とともに回転し、前記シールリング(2、3)の前記摺動面(2a、3a)は互いに反対側に設けられてその間にシールギャップ(4)を定義する、第二回転シールリング(3)と、
前記シールギャップ(4)とは違う方向を向いている前記静止シールリング(2)の側(2b)に配置され、ハウジングシール部(12)で封止する、動的二次シール(13)と、
前記静止シールリング(2)に対して軸方向に予張力を印加する、予張力装置(7)と、
実質的にリング形状を有し、塵粒子が前記二次シール(13)または前記ハウジングシール部(12)に付着するのを防止するために、前記ハウジングシール部(12)よりも回転軸(X−X)からさらに離れた半径方向に配置された、フィルタ部材(14;24)と、を含むメカニカルシールアセンブリ。
【請求項2】
前記フィルタ部材(14;24)が、塵粒子を蓄積するための、半径方向内向きに配向された、円周凹部(14a、24e)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項3】
前記予張力装置(7)が、スラストリング(8)および複数のバネ部材(9)を含むことを特徴とし、前記スラストリング(8)は前記二次シール(13)に接触し、前記バネ部材(9)の予張力が前記スラストリング(8)を通じて前記静止シールリング(2)に伝達され得る、上記請求項の1つに記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項4】
前記フィルタ部材(14;24)が、前記スラストリング(8)、ハウジング(11)、または前記ハウジング(11)に接続された要素(15)において取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項5】
前記スラストリング(8)が、前記フィルタ部材(14)が固定される、環状ショルダ(8a)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項6】
前記フィルタ部材(14;24)が接着接続によって取り付けられていることを特徴とする、上記請求項の1つに記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項7】
前記フィルタ部材が不織布または織物網であることを特徴とする、上記請求項の1つに記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項8】
前記フィルタ部材(14)が0.7μmから1.3μm、好ましくは1μmのメッシュ密度を有する不織布であることを特徴とする、請求項1から6の1つに記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項9】
前記フィルタ部材が一体型不織布で形成されていることを特徴とする、請求項7または8に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項10】
前記フィルタ部材(14)が、円周外縁で相互に接続された、少なくとも2層の不織布(24b、24c)で作られていることを特徴とする、請求項7または8に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項11】
前記フィルタ部材が、ちょうど4層の不織布で作られており、M字型の断面を有し、特にU字型の断面を有することを特徴とする、請求項10に記載のメカニカルシールアセンブリ。
【請求項12】
前記フィルタ部材(14;24)が圧力浸透性であることを特徴とする、上記請求項の1つに記載のメカニカルシールアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528779(P2011−528779A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519068(P2011−519068)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005150
【国際公開番号】WO2010/009835
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(510151348)イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】