フィルタ
【課題】耐熱性が高く、通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制された照明器具用またはランプ光源用のフィルタを提供する。
【解決手段】フィルタ1は、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を含んで構成される。フィルタ1を構成するセラミック製の板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む。
【解決手段】フィルタ1は、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を含んで構成される。フィルタ1を構成するセラミック製の板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関し、特に、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用に使用されるダウンライトは、大規模施設用や店舗用と比較して、埋込み深さが浅いことが要求される。これは、構造的に高さが制限された条件の下で、住空間の高さを十分に確保するために、他の機能が許す限り、天井面の位置をできるだけ高くしようとした結果、天井裏の距離が短くなるためである。
【0003】
一方、住宅には、その断熱性能を高めるために、断熱材が天井裏に施行されることが多く、発熱体としての照明器具にとっては環境条件が悪くなる傾向にある。この結果、温度上昇を抑えるため、熱源としてのランプがダウンライト本体の下方向、つまり開口部に近づいてくる傾向にある。
【0004】
従来のダウンライト用フィルタとしては、たとえば、アクリル製のものや、金属製のものが用いられている。
【特許文献1】特開2005−158363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタを構成する材質ごとに該フィルタの耐熱温度をまとめたものを表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1に示すように、アクリルに代表される樹脂製のフィルタは、金属製のフィルタと比較して耐熱性が低く、熱源としてのランプがダウンライトの下方向に近づいてきている状況では、必ずしも十分な耐熱性が確保できない場合がある。さらに、樹脂製のフィルタで開口部をカバーした場合、ランプ設置部と外部との空気の通流が無くなり、ランプおよびランプ設置部の温度が上昇し過ぎる場合がある。
【0008】
一方、金属製のフィルタの例としてのハニカムは形状の自由度が低い。また、ハニカムは、その貫通孔の角部に光が溜まりやすく、不快なまぶしさ(グレア)が発生しやすくなる。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐熱性が高く、通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制された照明器具用またはランプ光源用のフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルタは、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を備える。
【0011】
上記構成によれば、板状部材がセラミックス製であるため耐熱性が高く、貫通孔が設けられるため通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制されたフィルタが得られる。
【0012】
ここで、「セラミックス製の板状部材」とは、全部または大部分がセラミックスで形成された板状部材を意味し、一部にセラミックス以外で形成された部分を含むものであってもよい。
【0013】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材の厚みtと、複数の貫通孔の開口幅dとが、
t≧0.268d
の関係を満たす。
【0014】
これにより、光を拡散させながら、天井面から15°までの角度の光をカットオフすることができるので、光の効率を維持しながらグレアを抑制することができる。
【0015】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材を正面からみたときの該板状部材における複数の貫通孔が占める面積の割合は60パーセント以上である。
【0016】
これにより、照明器具の照射方向に向かう光のロスを少なくすることができる。
上記フィルタにおいて、1つの例として、複数の貫通孔が格子状またはハニカム状または同心円状に形成される。
【0017】
金属製のフィルタにおいて、貫通孔が格子状またはハニカム状に形成された場合、該貫通孔のコーナ部に光が溜まり、当該部分においてグレアが発生しやすい。この問題を解消するために金属を黒く塗装した場合、エージングという工程が必要となる。また、ダウンライトが重いイメージを与えるという問題がある。これに対し、本発明に係るフィルタは、セラミックス製であるため、表面を無光沢に調整し、貫通孔の角部においても光が溜まることを抑制することができる。この結果、着色の自由度を確保しながら、グレアを発生しにくくすることができる。同様に、貫通孔を同心円状に形成した場合も、着色の自由度を確保しながらグレアの発生を抑制することができる。
【0018】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む。
【0019】
上記いずれの素材を用いた場合も、コストの増大を抑制しながら、上述した効果を得ることができる。
【0020】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材の中心部分と周縁部分とで板状部材の厚みが異なる。また、好ましくは、板状部材の中心部分と周縁部分とで貫通孔の開口幅が異なる。また、好ましくは、貫通孔の相対する壁面は、放物面などの曲面形状または階段状に形成される。
【0021】
このようにすることで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、照明器具用またはランプ光源用のフィルタの耐熱性を向上させ、通気性を確保し、形状の自由度を向上させ、グレアの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に基づくフィルタの実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るフィルタが設けられる照明器具の側面断面図である。図2は、天井2に取付けられたフィルタ1の前面図である。図1,図2を参照して、本実施の形態に係る照明器具は、前面部に設けられるフィルタ1と、孔部2Aを有する天井2と、孔部2Aに埋め込まれるように設置されるランプ3とを含んで構成される。フィルタ1は、ランプ3からの光を拡散させながら下側に伝達する。一方で、フィルタ1は、天井2に対して一定の角度(カットオフ角度:θ)以下の領域において、ランプ3からの光をカットオフする。
【0025】
フィルタ1は、貫通孔を有するセラミックス製の板状部材により構成される。フィルタ1を構成するセラミックス製の板状部材は、たとえば、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムのいずれか、または、これらを含む複合材料から構成される。
【0026】
フィルタ1を構成するセラミックス製の板状部材は、たとえば、射出成形、押出成形により製造することが可能である。このようにすることで、後述するように、貫通孔1Aの配置や形状等を自在に変化させることが可能である。
【0027】
また、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、塗装を施すことなく、自由にフィルタ1の着色を行なうことができる。そして、経時変化、劣化を抑制しながら、フィルタ1に高級感を付与することができる。
【0028】
図3は、フィルタ1の貫通孔1Aの開口幅dおよびフィルタ1の厚みtとカットオフ角度θとの関係を説明する図である。図3を参照して、d,t,θは、tanθ=t/dの関係を満たす。すなわち、dおよびtを適宜調整することで、カットオフ角度θをその都度決定することができる。
【0029】
フィルタ1において、板状部材の厚みtと、複数の貫通孔の開口幅dとが、t≧0.268d程度(より好ましくは、t≧0.577d程度)の関係を満たすことが好ましい。これにより、光を拡散させながら、天井面から15°程度(または30°程度)までの角度の光をカットオフすることができるので、光の効率を維持しながらグレアを抑制することができる(参考:電気学会発行「光技術と照明設計」不快グレア区分と器具の例)。
【0030】
図4は、貫通孔1Aが格子状に設けられたフィルタ1の開口率を説明するための図である。図4に示す例では、貫通孔1Aの仕切り部の間隔をL、該仕切り部の厚みをTとすると、フィルタ1の開口率は以下のように表される。
開口率(%)={貫通孔の面積(P)/対象面積(S)}×100=[{(L−T)×(L−T)}/(L×L)]×100={(L2−2LT+T2)/L2}×100
フィルタ1において、板状部材を正面からみたときの該板状部材における複数の貫通孔1Aが占める面積の割合(開口率)は60パーセント程度以上(より好ましくは、80パーセント程度以上)である。一般的に、フィルタにおける貫通孔が占める面積の割合が60パーセントよりも低い場合(たとえば50パーセント程度の場合)、フィルタを設けない場合と比較して照明が暗くなるという印象が与えられる。上記のように、貫通孔の面積の割合を60パーセント以上とすることにより、照明器具の真下方向に向かう光のロスを少なくして、照明が暗いという印象を抑制することができる。
【0031】
図5は、ハニカム状の貫通孔1Aが設けられたフィルタ1を示す図である。図5を参照して、貫通孔1Aの形状および配置は、図1〜図4のように格子状に限定されず、ハニカム状であってもよい。そして、図6は、図5におけるA部詳細図である。図6を参照して、貫通孔1Aの角部には、R加工が施されている。セラミックス製のフィルタ1においては、表面が無光沢に調整され、角部に光が溜まりグレアが発生することが抑制されているが、上記のようなR加工が施されることで、グレアの発生がさらに効果的に抑制される。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、貫通孔1Aの形状を簡単に変更することができるので、上記のようなR加工部を簡単に設けることが可能である。
【0032】
なお、貫通孔1Aの形状は、適宜変更が可能であり、たとえば、円形状、楕円形状、三角形形状などを採用することが可能である。
【0033】
図7〜図15は、図4におけるLおよびTを適宜変更した例を示す。図7〜図15に示す構造のL,Tおよび開口率(%)を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
図7〜図15および表1に示すように、LおよびTを変更することで、フィルタ1の開口率を自在に変更することが可能である。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、LおよびTを簡単に変更することが可能である。
【0036】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るフィルタ1は、照明器具の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔1Aを有するセラミックス製の板状部材を含んで構成される。
【0037】
本実施の形態によれば、耐熱性が高く、通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制されたフィルタ1が得られる。
【0038】
(実施の形態2)
図16は、実施の形態2に係るフィルタの側面断面図である。図16を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1に係るフィルタ1の変形例であって、板状部材の中心部分の厚み(t1)と該板状部材の周縁部分の厚み(t2)とが異なることを特徴とする。図16の例では、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、該板状部材の厚みが小さくなっている。
【0039】
図17は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図17を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、該板状部材の厚みが大きくなっている。
【0040】
図16,図17に示すように、フィルタ1を構成する板状部材の厚みを適宜調整することで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、フィルタ1の厚みを簡単に変化させることが可能である。
【0041】
その他の事項については、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(実施の形態3)
図18は、実施の形態3に係るフィルタの側面断面図である。図18を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1,2に係るフィルタ1の変形例であって、板状部材の中心部分における貫通孔1Aの開口幅(d1)と周縁部分における貫通孔1Aの開口幅(d2)とが異なることを特徴とする。図18の例では、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、貫通孔1Aの開口幅が広くなっている。
【0042】
図19は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図19を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、貫通孔1Aの開口幅が狭くなっている。
【0043】
図18,図19に示すように、フィルタ1の貫通孔1Aの開口幅を適宜調整することで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、貫通孔1Aの開口幅を簡単に変化させることが可能である。
【0044】
その他の事項については、実施の形態1,2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0045】
(実施の形態4)
図20は、実施の形態4に係るフィルタの側面断面図である。図20を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1〜3に係るフィルタ1の変形例であって、図20に示すように、貫通孔1Aの相対する壁面が曲面形状を有することを特徴とする。図20の例では、貫通孔1Aの壁面は、ランプから離れるにつれて相対する壁面との距離が大きくなる放物面形状を有している。
【0046】
図21は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図21を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、貫通孔1Aの壁面は、ランプから離れるにつれて相対する壁面との距離が段階的に大きくなる階段形状を有している。
【0047】
その他の事項については、実施の形態1〜3と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した各実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。たとえば、実施の形態1〜4では、屋内で使用される照明器具の前面部に設けられるフィルタについて主に説明したが、同様のフィルタを、たとえば屋内および/または屋外で使用可能なランプ光源の前面部に設けることも当然に可能である。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1に係るフィルタが設けられる照明器具の側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るフィルタの前面図である。
【図3】フィルタの開口幅d、厚みtとカットオフ角度θとの関係を説明する図である。
【図4】格子状の貫通孔が設けられたフィルタの開口率を説明するための図である。
【図5】ハニカム状の貫通孔が設けられたフィルタを示す図である。
【図6】図5におけるA部詳細図である。
【図7】開口率62%のフィルタの例を示す前面図である。
【図8】開口率51%のフィルタの例を示す前面図である。
【図9】開口率64%のフィルタの例を示す前面図である。
【図10】開口率68%のフィルタの例を示す前面図である。
【図11】開口率66%のフィルタの例を示す前面図である。
【図12】開口率88%のフィルタの例を示す前面図である。
【図13】開口率81%のフィルタの例を示す前面図である。
【図14】開口率90%のフィルタの例を示す前面図である。
【図15】開口率81%のフィルタの例を示す前面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係るフィルタの側面断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係るフィルタの側面断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【図20】本発明の実施の形態4に係るフィルタの側面断面図である。
【図21】本発明の実施の形態4に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 フィルタ、1A 貫通孔、2 天井、2A 孔部、3 ランプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関し、特に、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用に使用されるダウンライトは、大規模施設用や店舗用と比較して、埋込み深さが浅いことが要求される。これは、構造的に高さが制限された条件の下で、住空間の高さを十分に確保するために、他の機能が許す限り、天井面の位置をできるだけ高くしようとした結果、天井裏の距離が短くなるためである。
【0003】
一方、住宅には、その断熱性能を高めるために、断熱材が天井裏に施行されることが多く、発熱体としての照明器具にとっては環境条件が悪くなる傾向にある。この結果、温度上昇を抑えるため、熱源としてのランプがダウンライト本体の下方向、つまり開口部に近づいてくる傾向にある。
【0004】
従来のダウンライト用フィルタとしては、たとえば、アクリル製のものや、金属製のものが用いられている。
【特許文献1】特開2005−158363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィルタを構成する材質ごとに該フィルタの耐熱温度をまとめたものを表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1に示すように、アクリルに代表される樹脂製のフィルタは、金属製のフィルタと比較して耐熱性が低く、熱源としてのランプがダウンライトの下方向に近づいてきている状況では、必ずしも十分な耐熱性が確保できない場合がある。さらに、樹脂製のフィルタで開口部をカバーした場合、ランプ設置部と外部との空気の通流が無くなり、ランプおよびランプ設置部の温度が上昇し過ぎる場合がある。
【0008】
一方、金属製のフィルタの例としてのハニカムは形状の自由度が低い。また、ハニカムは、その貫通孔の角部に光が溜まりやすく、不快なまぶしさ(グレア)が発生しやすくなる。
【0009】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐熱性が高く、通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制された照明器具用またはランプ光源用のフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフィルタは、照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を備える。
【0011】
上記構成によれば、板状部材がセラミックス製であるため耐熱性が高く、貫通孔が設けられるため通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制されたフィルタが得られる。
【0012】
ここで、「セラミックス製の板状部材」とは、全部または大部分がセラミックスで形成された板状部材を意味し、一部にセラミックス以外で形成された部分を含むものであってもよい。
【0013】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材の厚みtと、複数の貫通孔の開口幅dとが、
t≧0.268d
の関係を満たす。
【0014】
これにより、光を拡散させながら、天井面から15°までの角度の光をカットオフすることができるので、光の効率を維持しながらグレアを抑制することができる。
【0015】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材を正面からみたときの該板状部材における複数の貫通孔が占める面積の割合は60パーセント以上である。
【0016】
これにより、照明器具の照射方向に向かう光のロスを少なくすることができる。
上記フィルタにおいて、1つの例として、複数の貫通孔が格子状またはハニカム状または同心円状に形成される。
【0017】
金属製のフィルタにおいて、貫通孔が格子状またはハニカム状に形成された場合、該貫通孔のコーナ部に光が溜まり、当該部分においてグレアが発生しやすい。この問題を解消するために金属を黒く塗装した場合、エージングという工程が必要となる。また、ダウンライトが重いイメージを与えるという問題がある。これに対し、本発明に係るフィルタは、セラミックス製であるため、表面を無光沢に調整し、貫通孔の角部においても光が溜まることを抑制することができる。この結果、着色の自由度を確保しながら、グレアを発生しにくくすることができる。同様に、貫通孔を同心円状に形成した場合も、着色の自由度を確保しながらグレアの発生を抑制することができる。
【0018】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む。
【0019】
上記いずれの素材を用いた場合も、コストの増大を抑制しながら、上述した効果を得ることができる。
【0020】
上記フィルタにおいて、好ましくは、板状部材の中心部分と周縁部分とで板状部材の厚みが異なる。また、好ましくは、板状部材の中心部分と周縁部分とで貫通孔の開口幅が異なる。また、好ましくは、貫通孔の相対する壁面は、放物面などの曲面形状または階段状に形成される。
【0021】
このようにすることで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、照明器具用またはランプ光源用のフィルタの耐熱性を向上させ、通気性を確保し、形状の自由度を向上させ、グレアの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に基づくフィルタの実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るフィルタが設けられる照明器具の側面断面図である。図2は、天井2に取付けられたフィルタ1の前面図である。図1,図2を参照して、本実施の形態に係る照明器具は、前面部に設けられるフィルタ1と、孔部2Aを有する天井2と、孔部2Aに埋め込まれるように設置されるランプ3とを含んで構成される。フィルタ1は、ランプ3からの光を拡散させながら下側に伝達する。一方で、フィルタ1は、天井2に対して一定の角度(カットオフ角度:θ)以下の領域において、ランプ3からの光をカットオフする。
【0025】
フィルタ1は、貫通孔を有するセラミックス製の板状部材により構成される。フィルタ1を構成するセラミックス製の板状部材は、たとえば、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムのいずれか、または、これらを含む複合材料から構成される。
【0026】
フィルタ1を構成するセラミックス製の板状部材は、たとえば、射出成形、押出成形により製造することが可能である。このようにすることで、後述するように、貫通孔1Aの配置や形状等を自在に変化させることが可能である。
【0027】
また、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、塗装を施すことなく、自由にフィルタ1の着色を行なうことができる。そして、経時変化、劣化を抑制しながら、フィルタ1に高級感を付与することができる。
【0028】
図3は、フィルタ1の貫通孔1Aの開口幅dおよびフィルタ1の厚みtとカットオフ角度θとの関係を説明する図である。図3を参照して、d,t,θは、tanθ=t/dの関係を満たす。すなわち、dおよびtを適宜調整することで、カットオフ角度θをその都度決定することができる。
【0029】
フィルタ1において、板状部材の厚みtと、複数の貫通孔の開口幅dとが、t≧0.268d程度(より好ましくは、t≧0.577d程度)の関係を満たすことが好ましい。これにより、光を拡散させながら、天井面から15°程度(または30°程度)までの角度の光をカットオフすることができるので、光の効率を維持しながらグレアを抑制することができる(参考:電気学会発行「光技術と照明設計」不快グレア区分と器具の例)。
【0030】
図4は、貫通孔1Aが格子状に設けられたフィルタ1の開口率を説明するための図である。図4に示す例では、貫通孔1Aの仕切り部の間隔をL、該仕切り部の厚みをTとすると、フィルタ1の開口率は以下のように表される。
開口率(%)={貫通孔の面積(P)/対象面積(S)}×100=[{(L−T)×(L−T)}/(L×L)]×100={(L2−2LT+T2)/L2}×100
フィルタ1において、板状部材を正面からみたときの該板状部材における複数の貫通孔1Aが占める面積の割合(開口率)は60パーセント程度以上(より好ましくは、80パーセント程度以上)である。一般的に、フィルタにおける貫通孔が占める面積の割合が60パーセントよりも低い場合(たとえば50パーセント程度の場合)、フィルタを設けない場合と比較して照明が暗くなるという印象が与えられる。上記のように、貫通孔の面積の割合を60パーセント以上とすることにより、照明器具の真下方向に向かう光のロスを少なくして、照明が暗いという印象を抑制することができる。
【0031】
図5は、ハニカム状の貫通孔1Aが設けられたフィルタ1を示す図である。図5を参照して、貫通孔1Aの形状および配置は、図1〜図4のように格子状に限定されず、ハニカム状であってもよい。そして、図6は、図5におけるA部詳細図である。図6を参照して、貫通孔1Aの角部には、R加工が施されている。セラミックス製のフィルタ1においては、表面が無光沢に調整され、角部に光が溜まりグレアが発生することが抑制されているが、上記のようなR加工が施されることで、グレアの発生がさらに効果的に抑制される。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、貫通孔1Aの形状を簡単に変更することができるので、上記のようなR加工部を簡単に設けることが可能である。
【0032】
なお、貫通孔1Aの形状は、適宜変更が可能であり、たとえば、円形状、楕円形状、三角形形状などを採用することが可能である。
【0033】
図7〜図15は、図4におけるLおよびTを適宜変更した例を示す。図7〜図15に示す構造のL,Tおよび開口率(%)を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
図7〜図15および表1に示すように、LおよびTを変更することで、フィルタ1の開口率を自在に変更することが可能である。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、LおよびTを簡単に変更することが可能である。
【0036】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係るフィルタ1は、照明器具の前面部に設けられるフィルタであって、複数の貫通孔1Aを有するセラミックス製の板状部材を含んで構成される。
【0037】
本実施の形態によれば、耐熱性が高く、通気性が確保され、形状の自由度が高く、グレアの発生が抑制されたフィルタ1が得られる。
【0038】
(実施の形態2)
図16は、実施の形態2に係るフィルタの側面断面図である。図16を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1に係るフィルタ1の変形例であって、板状部材の中心部分の厚み(t1)と該板状部材の周縁部分の厚み(t2)とが異なることを特徴とする。図16の例では、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、該板状部材の厚みが小さくなっている。
【0039】
図17は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図17を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、該板状部材の厚みが大きくなっている。
【0040】
図16,図17に示すように、フィルタ1を構成する板状部材の厚みを適宜調整することで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、フィルタ1の厚みを簡単に変化させることが可能である。
【0041】
その他の事項については、実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(実施の形態3)
図18は、実施の形態3に係るフィルタの側面断面図である。図18を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1,2に係るフィルタ1の変形例であって、板状部材の中心部分における貫通孔1Aの開口幅(d1)と周縁部分における貫通孔1Aの開口幅(d2)とが異なることを特徴とする。図18の例では、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、貫通孔1Aの開口幅が広くなっている。
【0042】
図19は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図19を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、フィルタ1を構成する板状部材の中心部分から周縁部分に向かうにつれて、貫通孔1Aの開口幅が狭くなっている。
【0043】
図18,図19に示すように、フィルタ1の貫通孔1Aの開口幅を適宜調整することで、光の拡散を自在に調整することが可能になる。なお、セラミックス製の板状部材でフィルタ1を形成することで、貫通孔1Aの開口幅を簡単に変化させることが可能である。
【0044】
その他の事項については、実施の形態1,2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0045】
(実施の形態4)
図20は、実施の形態4に係るフィルタの側面断面図である。図20を参照して、本実施の形態に係るフィルタ1は、実施の形態1〜3に係るフィルタ1の変形例であって、図20に示すように、貫通孔1Aの相対する壁面が曲面形状を有することを特徴とする。図20の例では、貫通孔1Aの壁面は、ランプから離れるにつれて相対する壁面との距離が大きくなる放物面形状を有している。
【0046】
図21は、本実施の形態に係るフィルタの変形例の側面断面図である。図21を参照して、本変形例に係るフィルタ1においては、貫通孔1Aの壁面は、ランプから離れるにつれて相対する壁面との距離が段階的に大きくなる階段形状を有している。
【0047】
その他の事項については、実施の形態1〜3と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した各実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。たとえば、実施の形態1〜4では、屋内で使用される照明器具の前面部に設けられるフィルタについて主に説明したが、同様のフィルタを、たとえば屋内および/または屋外で使用可能なランプ光源の前面部に設けることも当然に可能である。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1に係るフィルタが設けられる照明器具の側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るフィルタの前面図である。
【図3】フィルタの開口幅d、厚みtとカットオフ角度θとの関係を説明する図である。
【図4】格子状の貫通孔が設けられたフィルタの開口率を説明するための図である。
【図5】ハニカム状の貫通孔が設けられたフィルタを示す図である。
【図6】図5におけるA部詳細図である。
【図7】開口率62%のフィルタの例を示す前面図である。
【図8】開口率51%のフィルタの例を示す前面図である。
【図9】開口率64%のフィルタの例を示す前面図である。
【図10】開口率68%のフィルタの例を示す前面図である。
【図11】開口率66%のフィルタの例を示す前面図である。
【図12】開口率88%のフィルタの例を示す前面図である。
【図13】開口率81%のフィルタの例を示す前面図である。
【図14】開口率90%のフィルタの例を示す前面図である。
【図15】開口率81%のフィルタの例を示す前面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係るフィルタの側面断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係るフィルタの側面断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【図20】本発明の実施の形態4に係るフィルタの側面断面図である。
【図21】本発明の実施の形態4に係るフィルタの変形例の側面断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 フィルタ、1A 貫通孔、2 天井、2A 孔部、3 ランプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、
複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を備えた、フィルタ。
【請求項2】
前記板状部材の厚みtと、複数の前記貫通孔の開口幅dとが、
t≧0.268d
の関係を満たす、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
複数の前記貫通孔が格子状またはハニカム状または同心円状に形成された、請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
前記板状部材の中心部分と周縁部分とで前記板状部材の厚みが異なる、請求項1から請求項4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
前記板状部材の中心部分と周縁部分とで前記貫通孔の開口幅が異なる、請求項1から請求項5のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が曲面形状を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項8】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が放物面形状を有する、請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が階段形状を有する、請求項1から請求項8のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項1】
照明器具またはランプ光源の前面部に設けられるフィルタであって、
複数の貫通孔を有するセラミックス製の板状部材を備えた、フィルタ。
【請求項2】
前記板状部材の厚みtと、複数の前記貫通孔の開口幅dとが、
t≧0.268d
の関係を満たす、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
複数の前記貫通孔が格子状またはハニカム状または同心円状に形成された、請求項1または請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記板状部材は、ステアタイト、コージェライト、フォルステライト、ジルコン、アルミナ、ジルコニア、ムライト、珪藻土、ゼオライト、陶器粘土素地、磁器素地、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウムからなる群のうち少なくとも1つの素材を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項5】
前記板状部材の中心部分と周縁部分とで前記板状部材の厚みが異なる、請求項1から請求項4のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項6】
前記板状部材の中心部分と周縁部分とで前記貫通孔の開口幅が異なる、請求項1から請求項5のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項7】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が曲面形状を有する、請求項1から請求項6のいずれかに記載のフィルタ。
【請求項8】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が放物面形状を有する、請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記板状部材の前記貫通孔の相対する壁面が階段形状を有する、請求項1から請求項8のいずれかに記載のフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−317504(P2007−317504A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145737(P2006−145737)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000161312)宮川化成工業株式会社 (13)
【出願人】(506178232)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000161312)宮川化成工業株式会社 (13)
【出願人】(506178232)
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