説明

フィルタ

【課題】フィルタにおいて、プリーツ形状の谷部領域を含む濾過面積を有効に活用する。
【解決手段】フィルタ10は、プリーツ形状の濾材12と、濾材12を内部に固定するフィルタ枠14とを有する。濾材12には、これのプリーツ形状を保持するリテーナ16が接着される。リテーナ16は、プリーツ加工された濾材12のエア流入側の谷部20のみに、そのプリーツの折り目に対して垂直方向に設けられる。この構成により、少ないリテーナ16で、プリーツのピッチLを大きくしてその形状を保持することができ、濾過面積を有効に活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルタに関し、特に濾材の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタは、建物に設置される空調機器の一つであり、空気中の塵埃を捕集する機器である。フィルタは、塵埃を捕集する濾材と、濾材を内部に固定するフィルタ枠とを有する。このようなフィルタにおいては、濾材をジグザグに蛇腹状に折り曲げた状態、すなわちプリーツ形状の状態でフィルタ枠に取り付ける例がある。この構成により、濾材の濾過面積が大きくなるので、フィルタの外形と圧力損失を大きくすることなく、処理風量を増加させることができる。
【0003】
下記特許文献1には、極微小な塵埃を捕集するメインフィルタと、メインフィルタより上流側に設けられ、比較的粗大な塵埃を捕集するプレフィルタとを有する洗浄再生用フィルタが記載されている。
【0004】
この洗浄再生用フィルタにおいては、プレフィルタの濾材の濾過面積を増大させて、そのプレフィルタの使用期間を長期化させることによって、メインフィルタとプレフィルタのメンテナンス周期、すなわち洗浄または交換周期が同一になるようにしている。
【0005】
下記特許文献2には、プリーツ加工された濾材と、濾材に接着され、濾材のプリーツ形状を保持する熱可塑性樹脂のリテーナとを有するフィルタが記載されている。
【0006】
このリテーナは、予めプリーツ加工された濾材の各山部に、そのプリーツの折り目に対して垂直方向に溶融状態でそれぞれ設けられる。そして、それらのリテーナが完全に固まらない、すなわち接合性を有している状態で、濾材を折り畳んでプリーツ同士を接触そして固化させることで、濾材のプリーツ形状が保持される。このとき、リテーナは、濾材の山部の稜線を沿うように連続的に接合される。一方、リテーナは、山部以外の濾材の表面、すなわち谷部には接着されず、その領域においては濾材から離間して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−244953号公報
【特許文献2】特開2000−84333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2のようなフィルタにおいては、濾材に設けられるリテーナにより、フィルタ使用時であっても、濾材のプリーツ形状を保持することができる。しかしながら、各山部に設けられたリテーナ同士の接触、すなわち隣接するリテーナにおける端部同士の接触により濾材のプリーツ形状の保持を図る構成では、プリーツのピッチ、例えば隣接する山部の間隔の上限が制限される。言い換えれば、上記構成では、プリーツのピッチが小さくなってしまう。
【0009】
このようにプリーツのピッチが小さいと、フィルタ使用時に、エア流入側におけるフィルタの山部に堆積する塵埃によって、フィルタの各山部を含む平面上に塵埃層が形成されてしまう。このようにエア流入側に塵埃層が形成されてしまうと、圧力損失が上昇し処理風量が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、簡易な構造で、プリーツ形状の谷部領域を含む濾過面積を、長期間にわたって有効に活用することができ、圧力損失の上昇と処理風量の低下を抑制することができるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プリーツ形状の濾材と、濾材を内部に固定するフィルタ枠と、を有するフィルタにおいて、濾材には、これのプリーツ形状を保持するリテーナが接着され、リテーナは、プリーツ加工された濾材のエア流入側またはエア流出側のいずれか一方の側は谷部のみに、そのプリーツの折り目に対して垂直方向に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、リテーナは、エア流入側の谷部に設けられることができる。
【0013】
また、リテーナは、さらに、エア流出側の山部であって、エア流入側に設けられるリテーナに対向する領域に設けられることができる。
【0014】
また、リテーナは、エア流入側およびエア流出側の谷部のみに設けられることができる。
【0015】
また、リテーナは、エア流出側の谷部に設けられ、さらに、エア流入側の山部であって、エア流出側に設けられるリテーナに対向する領域に設けられることができる。
【0016】
また、プリーツのピッチは、8mm以上であることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフィルタによれば、プリーツ形状の谷部領域を含む濾過面積を、長期間にわたって有効に活用することができ、圧力損失の上昇と処理風量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るフィルタの構成を示す斜視図である。
【図2】プリーツ形状の濾材を示す側面図である。
【図3】プリーツ加工された濾材を示す図である。
【図4】別の態様におけるプリーツ形状の濾材を示す側面図である。
【図5】プリーツ加工された濾材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るエアフィルタの実施形態について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態におけるフィルタ10の構成を示す斜視図である。
【0020】
フィルタ10は、ジグザグに折れ曲がったプリーツ形状の濾材12と、濾材12を内部に固定するフィルタ枠14とを有する。フィルタ10は、図1に示される矢印方向から流入する空気中に含まれる塵埃を濾材12で捕集して空気を清浄する。
【0021】
なお、上記矢印方向から見たフィルタ10の側は、空気がフィルタ10に流入する部分であり、ここを以降、エア流入側と記す。一方、上記矢印方向とは逆の方向から見たフィルタ10の側は、空気がフィルタ10から流出する部分であり、以降、エア流出側と記す。
【0022】
濾材12は、空気中の塵埃を捕集することができる多孔質の材質からなり、例えば不織布、紙、ガラス繊維、布巾、またはこれらを組み合わせたものからなる。特に、濾材12は、比色法または計数法で評価される材質が好適である。
【0023】
濾材12には、これのプリーツ形状を保持するリテーナ16(図2,3に示す)が接着される。リテーナ16は、接着剤であり、例えば熱可塑性樹脂のホットメルトである。
【0024】
濾材12とリテーナ16の構成について、図2,3を用いて説明する。図2は、プリーツ形状の濾材12を示す側面図である。具体的には、リテーナ16によりプリーツ形状に保持されている濾材12を示す側面図である。この図の矢印は、図1と同様、空気の流れを示す。図3は、プリーツ加工された濾材12を示す図である。具体的には、プリーツ加工された濾材12であって、プリーツ形状に折り込まれる前の濾材12を示す図である。この図に示される2つの濾材12は同一のものであり、図中の上方に位置する濾材12がエア流入側から見たもの、そして図中の下方に位置する濾材12がエア流出側から見たものである。
【0025】
濾材12は、図2に示されるように、ジグザグに折れ曲がったプリーツ形状である。濾材12は、プリーツ形状の凸状になった部分の表面である山部18と、凹状になった部分の表面である谷部20とを有する。エア流入側から見る凸状の裏面は、エア流出側から見る凹状に該当しその表面が谷部20になり、エア流入側から見る凹状の裏面は、エア流出側から見る凸状に該当しその表面が山部18になる。
【0026】
本実施形態のリテーナ16は、エア流入側の谷部20のみに、そのプリーツの折り目22に対して垂直方向に設けられる。折り目22は、図3に示されるように、プリーツ加工の際に、等間隔に形成される。この構成により、プリーツのピッチL(図2に示す)を大きくすることができる。ピッチLは、従来技術においては6mm程度であり、本発明においては、8mm以上、例えば8〜9mmが好適である。
【0027】
プリーツ加工された濾材12を、プリーツ形状にする製造方法について説明する。溶融状態のリテーナ16が、予めプリーツ加工された濾材12のエア流入側の谷部20に、折り目22に対して垂直方向に所定の長さで設けられる。リテーナ16は、折り目22の方向に対して、所定の間隔をあけて設けられるとともに、上記垂直方向に対して、山部18の領域をあけて、例えば同一線上に設けられる。
【0028】
そして、リテーナ16が完全に固化する前、すなわち接合性を有している状態のとき、濾材12を折り目22に沿って折り畳み、ピッチLのプリーツ形状に成形する。このとき、谷部20の領域が鋭角状態になり、そこのリテーナ16の表面であって、鋭角状態により対向する表面同士が接着する。そして、その状態でリテーナ16が固化することで、濾材12のプリーツ形状が保持される。
【0029】
本実施形態のフィルタ10によれば、エア流入側の濾材12の谷部20のみに設けられたリテーナ16自体が、濾材12の折り畳み時に接着および固化することにより、プリーツ形状の保持が可能になる。そして、本実施形態のリテーナ16は、隣接するリテーナ16に対して分断されて設けられる構成であるにもかかわらず、プリーツのピッチLを大きくすることができる。このようなピッチLの増大により、エア流入側の山部18付近における塵埃層の形成が抑制されるので、谷部20領域を含む濾過面積を有効に活用することができるようになる。その結果、圧力損失の上昇と処理風量の低下が抑制されて、フィルタ10のメンテナンス周期、すなわち洗浄または交換周期を延ばすことができる。しかも、このようなリテーナ16の構成は、従来技術で述べたリテーナの構成、すなわち濾材の山部の稜線を沿うようにリテーナを設ける構成に比べ、リテーナ16の使用量を低減することができ、結果として、製造コストを削減することができる。なお、本実施形態では、ピッチLを8〜9mmとしたが、従来通りのピッチLが6mm程度のフィルタにも適用できることは言うまでもない。ピッチLが狭い場合、谷部20でリテーナ16同士の接着量が大きくなるため形状保持力があり、その場合でも従来に比してリテーナ16の使用量を低減できる。
【0030】
本実施形態においては、リテーナ16が、エア流入側の濾材12の谷部20のみに設けられる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、エア流入側にはリテーナ16を設けず、エア流出側の濾材12の谷部20のみに設けられてもよい。さらに、プリーツ形状を保持する強度の増大を図るのであれば、リテーナ16が、エア流入側とエア流出側の濾材12の谷部20に設けられてもよい。いずれの構成にしても、従来技術のフィルタ構造に比べ、プリーツのピッチLを大きくすることができる。また、ピッチLを大きくすることで、例えば、使用済みフィルタ10の濾材12を洗浄して再利用する場合に汚れが落ち易くなり、リサイクル化を促進でき省資源化を推進させることができる。
【0031】
次に、別の態様のフィルタ10について、図を用いて説明する。図4は、別の態様におけるプリーツ形状の濾材12の構成を示す側面図である。具体的には、リテーナ16によりプリーツ形状に保持されている濾材12を示す側面図である。この図の矢印は、図1,2と同様、空気の流れを示す。図5は、プリーツ加工された濾材12を示す図である。具体的には、プリーツ加工された濾材12であって、プリーツ形状に折り込まれる前の濾材12を示す図である。この図に示される2つ濾材12も、図3と同様、同一のものであり、図中の上方に位置する濾材12がエア流入側から見たもの、そして図中の下方に位置する濾材12がエア流出側から見たものである。なお、上記実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0032】
この態様のリテーナ16は、エア流入側は谷部20のみに、そのプリーツの折り目22に対して垂直方向に設けられる。さらに、リテーナ16は、エア流出側の山部18であって、エア流入側に設けられるリテーナ16に対向する領域に設けられる。このように、リテーナ16が濾材12を挟むように設けられることにより、濾過面積を減らすことなく、プリーツ形状の保持力を強化することができる。
【0033】
プリーツ加工された濾材12を、プリーツ形状にする製造方法について説明する。溶融状態のリテーナ16が、予めプリーツ加工された濾材12のエア流入側の谷部20に、折り目22に対して垂直方向に所定の長さで設けられる。リテーナ16は、折り目22の方向に対して、所定の間隔をあけて5本設けられるとともに、垂直方向に対して、山部の領域をあけて、例えば同一線上に設けられる。なお、折り目22方向に設けられるリテーナ16の数は一例であって、本発明は、リテーナ16の数5本に限定されない。
【0034】
そして、溶融状態のリテーナ16が、プリーツ加工された濾材12のエア流出側の山部18に、エア流入側のリテーナ16に対向する領域に設けられる。このとき、リテーナ16は、折り目22の方向に対して、エア流入側の谷部18に設けられるリテーナ16の間隔に合わせて、5本設けられるとともに、垂直方向に対して、隣接する谷部20の領域をあけて、例えば同一線上に設けられる。このとき、山部18に設けられるリテーナ16は、補強用であるので、プリーツ形状に折り曲げたときに、隣接する山部18のリテーナ16における端部同士が接触しないような長さが好ましい。
【0035】
そして、リテーナ16が固化する前で接合性を有している状態のとき、濾材12を折り目22に沿って折り畳み、ピッチLのプリーツ形状に成形する。このとき、谷部20の領域が鋭角状態になり、そこのリテーナ16の表面であって、鋭角状態により対向する表面同士が接着する。そして、その状態でリテーナ16が固化することで、濾材12のプリーツ形状が保持される。また、エア流出側の山部18に設けられたリテーナ16は、リテーナ16同士が接着しないものの、エア流出側の対向位置にもリテーナ16があり濾材12を挟んでいるため、その形状保持力が向上する。
【0036】
なお、この別の態様では、リテーナ16をエア流入側は谷部20のみに設け、それに対向するエア流出側の山部18にもリテーナ16を設ける場合について説明したが、この構成に限定されるものではなく、その逆の構成、すなわちエア流入側の山部18と、それに対向するエア流出側の谷部20とにリテーナ16を設ける構成であっても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
10 フィルタ、12 濾材、14 フィルタ枠、16 リテーナ、18 山部、20 谷部、22 折り目。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ形状の濾材と、
濾材を内部に固定するフィルタ枠と、
を有するフィルタにおいて、
濾材には、これのプリーツ形状を保持するリテーナが接着され、
リテーナは、プリーツ加工された濾材のエア流入側またはエア流出側のいずれか一方の側は谷部のみに、そのプリーツの折り目に対して垂直方向に設けられる、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
リテーナは、エア流入側の谷部に設けられる、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタにおいて、
リテーナは、さらに、エア流出側の山部であって、エア流入側に設けられるリテーナに対向する領域に設けられる、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
リテーナは、エア流入側およびエア流出側の谷部のみに設けられる、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルタにおいて、
リテーナは、エア流出側の谷部に設けられ、さらに、エア流入側の山部であって、エア流出側に設けられるリテーナに対向する領域に設けられる、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のフィルタにおいて、
プリーツのピッチは、8mm以上である、
ことを特徴とするフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217890(P2012−217890A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84334(P2011−84334)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】