説明

フィルムデータ記録装置

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、写真カメラ用のロールフィルム生産工程において、未露光フィルムにコマ番号、ブランド、乳剤番号、バーコードその他の文字、記号(以下、データという。)を光学的に焼き込む記録装置に関し、特に焼込位置ずれを防止した記録装置に関する。
〔発明の背景〕
この種の装置は、感光材を塗布した未露光フィルムを所定幅にスリットし、且つ送り用の孔(パーフォ)を形成した後に、そのフィルムを所定の速度で搬送しながらデータ焼き込むを行なう装置である。
ところが、この装置においてデータを焼き込む場合には、その焼込位置にフィルムが到来したことを検知してから、焼き込むべきデータをメモリから読み出して焼き込む動作を行っていたので、位置検知からデータ焼き込みまでに相当な時間がかかり、フィルム搬送速度を所定以上にすれば焼込位置がずれる恐れがあった。また、フィルム搬送速度が変化すれば、焼込位置の間隔がまちまちとなる恐れがあった。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、焼込みに必要なデータのメモリからの読出時間が焼込の位置精度に影響を与えないようにすることである。
〔発明の構成〕
このために本発明は、写真フィルムに、駒番号、ブランド、乳剤番号、バーコード等のデータを記録するフィルムデータ記録装置において、前記写真フィルムを搬送可能なフィルム搬送手段と、前記写真フィルムへの前記データの記録位置を検知して、検知信号を出力可能なフィルム記録位置検知手段と、前記データを記憶可能な記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記データの読み出しを行なう読出信号を前記記憶手段に出力可能な読出信号出力手段と、前記写真フィルム上に前記データを記録する記録手段と、前記読出信号によって前記記憶手段から読み出された前記データを一時的に保持し、該保持したデータに基づき、前記検知信号に同期して前記記録手段の制御を行なう記録制御手段と、を有し、前記読出信号による前記記憶手段から前記記録制御手段への前記データの読出しタイミングが、前記検知信号に同期して行なわれる前記記録手段の制御よりも時間的に前になるように構成した。
〔実施例〕
以下、本発明の実施例について説明する。まず、第1図はその全体の概略を示す図である。未露光フィルム1は、ガイドローラ2、3に規制されてスプロケット4に巻き取られながら矢印A方向に所定の速度で搬送される。このとき、フィルム1の送り孔がスプロケット4の爪4aに係止している。また、このスプロケット4はその軸がトルクモータ5に結合されている。このトルクモータ5は第2図に示すようなトルク特性を有するので、そのモータ5によりスプロケット4に対してフィルム搬送方向と反対方向に回転力を付与することにより、そのスプロケット4には例えば搬送の停止中でも、安定したバックテンションが加わる。よって、フィルム1はその送り用の孔において送り方向と反対側の縁部にスプロケット4の爪4aが係止するので、下流側で引っ張られる引張力により搬送速度で正確に搬送される。
6はデータ入力装置であり、品種(感度、ブランド、サイズ等)の設定器61、文字、記号等のデータ出力器62及びデータ編集器63でなり、このデータ編集器63で編集されたデータは、RAM等でなるメモリ7に書き込まれる。そして、ここに書き込まれたデータは、アクセスアドレス発生器8からの信号でアドレシングされて読み出され、制御回路9で一旦ラッチされた後に、焼込タイミングパルスの到来時に、焼込部分においてフィルム1に焼き込まれる。
この焼込部分は、制御回路9により点灯が個別的にオン・オフ制御される複数のLEDでなるLED群10と、その各LEDからの光をレンズ11に個別的に導くファイバ等の導光部材12とでなり、導光部材12の末端は、例えば数ミリのピッチで一列に並んでいる。この並びの方向は、フィルム1の搬送方向に直交する方向である。そして、フィルム1に対する焼き込みは、そのフィルム1がスプロケット4上に位置するときに、搬送に同期してドットイメージで行われるようになっている。
13はスプロケット4の軸に結合され、その回転を検出するロータリエンコーダであり、アクセスアドレス発生器8はそのエンコーダ13からのパルスによりアドレス信号を出力するようになっている。また、制御回路9もこのエンコーダ13からの出力を受けて、発光指令パルス(焼込タイミングパルス)を出力するようになっている。
次に動作を説明する。
(1).メモリ7へのデータの書込みについて:メモリ7へのデータ書込みは、第3図に示すように、焼き込むべきフィルム1の長さ(12枚撮り、24枚撮り、36枚撮りにより異なる。)に対応して、焼き込むべき位置の長さ方向の全ての部分についてのデータを書き込む。即ち、実際に記号等を焼き込むべき位置は、所定ピッチ毎、或いは数箇所であるが、本実施例では、当該記号等を書き込むべき位置に対応するメモリのアドレス部分にはドット情報『1』を書き込み、そうでないアドレス部分にはドット情報『0』を書き込む。これにより、フィルムのデータ焼込部分に関する長手方向の始端から末端にかけてのすべての部分のデータ『1』、『0』が、メモリ7に若いアドレスから順に書き込まれるようになる。
この書込みはデータ入力装置6によって行われるが、焼込装置が複数台設置されている場合にはデータ入力装置6を1台として、他の焼込装置に共用することができる。
また、読出時には、ロータリエンコーダ13からの走行検出パルスをカウントして、所定ピッチ走行量毎に、メモリ7のアドレスを若いアドレスから順次アクセスすれば良いので、そのメモリ7のアドレシングにCPUやソフトウエアの介在が不要となり、アクセスアドレス発生器8は単純なハードウエアで構成することができ、よって読出の速度を高速化することが可能となる。
(2).焼き込みについて:本実施例では、データの焼き込みに際しては、後に焼き込むべきデータを前以って予めメモリ7から読み出しておいて制御回路9内にラッチし、当該データの焼込指令パルスが到来した時点で焼き込むようにしている。第4図R>図はそのタイミングチャートであり、データ準備パルスはメモリ7内から読み出したデータを制御回路9内にラッチするためのパルスである。
この焼込時には、LED群10内の所定のLEDが選択されて発光し、その発光光が導光部材12を経由してレンズ11で集光され、スプロケット4上のフィルム1を照射して、その部分を露光させる。このとき、ラッチされているデータがすべてビット情報『0』の場合には、焼込指令パルスが到来しても、実際には焼き込みは行われないことになる。このようにして、フィルム1にはドットイメージで記号等が焼き込まれる。そして、露光により形成された潜像は、フィルム1を購入したユーザが現像した際に同時に現像される。
上記ように、焼き込むべきデータを予め準備する方式としたので、メモリ7からのデータの読み出しに要する時間が焼き込みに要する時間に影響を与えることはなく、よって、フィルム1の搬送速度を高速にしても、それに追随させることができ、焼込位置を高精度に管理することができる。
焼き込み動作はスプロケット4の上で行われ、第5図(a)に示すように、爪4aが両側に形成されていて、その両爪4aの外側に同時に焼き込む場合、第5図(b)に示すように片側のみ爪4aが形成されていて両側に同時に焼き込む場合、第5図(c)に示すように片側にのみ爪4aが形成されていて、その爪4aの形成されている側にのみ焼き込む場合、第5図(d)に示すように片側にのみ爪4aが形成されていて、その爪4aの形成されていない側に焼き込む場合がある。
(3).フィルム搬送脈動の補償:ところで、フィルム1の搬送速度が脈動した場合、スプロケット4上の焼き込むべき位置も脈動して、ドットイメージで焼き込んでいる記号等の一部分が二重写となる危険性がある。この点について本実施例では、制御回路9における発光指令パルスの出力タイミングを、例えばフィルム1の搬送方向が反転した場合には、元に復帰するまで遅らせるようにしている。
第6図はその一例を示すブロックである。この例では、ロータリエンコーダ13からの出力パルス(2相パルス)を正逆判別回路14で判別して、正方向回転(搬送A方向回転)を示す正転パルスをアップダウンカウンタ15のアップ端子Uに、逆方向回転を示す逆転パルスを同カウンタ15のダウン端子Dに各々入力して、そのカウンタ15の出力とラッチ16でラッチしたカウンタ15の以前の出力値とを比較回路17で比較して、カウンタ15からの出力値がラッチ16の出力値よりも大きい場合にのみ、発光指令パルスを出力すると共に、ラッチ16の内容をその時のカウンタ15の出力値に更新するようにしている。
よって、ラッチ16には常に大きなカウント値(最大値)がラッチされる。このため、例えばスプロケット4が逆方向に回転した場合にはカウンタ15がダウンカウントしてそのカウント出力が低下するので比較器17から発光指令パルスは出力せず、スプロケット4が正方向に回転復帰してカウンタ15のカウント値が以前にラッチ16でラッチした最大値を超えたとき初めて発光指令パルスが出力するようになる。即ち、発光指令パルスは、フィルム1が正確に搬送方向に所定ピッチ進む時のみ出力する。
第7図は別の例のブロックを示す図である。この例では、アップダウンカウンタ15に初期値設定器18により予め初期値をプリセットしておいて、カウンタ15がオーバフローした時点で、発光指令パルスを出力し、同時にこのパルスによりプリセット回路としての遅延回路19を介してカウンタ15を初期値にプリセットするようにしたものである。
よって、例えばカウンタ15を『10』カウントでオーバフローするものに選定し、初期値設定器18により『8』を設定しておけば、スプロケット4が正方向に回転を継続すれば、カウンタ15が2回アップカウントする毎に発光指令パルスが出力する。逆方向に回転すれば、カウンタ15がダウンカウントするので、その後に正方向に逆方向回転分だけ復帰回転して更に『2』カウント分に相当する量だけ回転した時、発光指令パルスが出力する。
なお、ここではカウンタ15の桁上げ出力を利用したが、桁下げ出力を利用するこもできる。この場合は、正逆検出回路14の正転パルス、逆転パルスをカウンタ15の端子U、Dに逆に入力すれば良い。この場合は例えば初期値設定器18によりカウンタ15に『1』を設定しれおけば、上記の場合と全く同様、2カウントだけダウンカウントする毎に発光指令パルスが出力する。
(4).LEDの管理について:焼込に際しては、LED群10の各LEDがオープン或いはショート等により故障していて、焼込が正常に行なわれたか否かは確認することができないので、そのLEDを常時監視する必要がある。従来ではその監視を、LEDに流れる電流によっていたが種々の問題があった。
そこで、本実施例では、第8図に示すように、その個々のLED10aについてその両端の電圧を端子間電圧検出回路20で個別的に検出して、その電圧が所定の値(通電している場合、その順方向電圧は1.8〜2.0v)にあるか否かを判別回路21で判別して、その判別信号を異常検出回路22に入力させ、この異常検出回路22において、LEDの点灯制御情報と比較して、現在通電していなければならないLEDについて判別回路21から消灯情報が得られたり、或いは現在消灯していなければならないLEDの点灯情報が得られた場合に、警報信号を出力するようにしている。この警報信号は、LEDの異常の他に、制御回路9によるLED群10の選択動作の異常も示す信号となる。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明はデータの焼き込みに際して、焼き込むべきデータを事前にメモリから読み出しておいて、該データの焼込タイミング時に同期して焼き込むように構成したので、メモリからのデータ読出の時間が、焼込動作に何等影響することがなくなり、精度高く高速な焼込動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は記録装置の全体の概略を示す説明図、第2図はトルクモータのトルク特性図、第3図(a)はフィルムに焼き込まれたデータ『14』を示す図、(b)はメモリに格納されたデータの内容を模式的に示す図、第4図は焼き込みのタイミングチャート、第5図(a)〜(d)は焼き込み位置を示す説明図、第6図は二重焼込防止のための回路図、第7図は同様な二重焼込防止のための別の例の回路図、第8図はLED異常を検出する回路のブロック図である。
1……データを焼き込むべき未露光フィルム、2、3……ガイドローラ、4……スプロケット、4a……爪、5……トルクモータ、6……データ入力装置、7……メモリ、8……アクセスアドレス発生器、9……制御回路、10……LED群、11……レンズ、12……導光部材、13……ロータリエンコーダ、14……正逆検出回路、15……アップダウンカウンタ、16……ラッチ、17……比較器、18……初期値設定器、19……遅延回路、20……端子間電圧検出回路、21……判別回路、22……異常検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】写真フィルムに、駒番号、ブランド、乳剤番号、バーコード等のデータを記録するフィルムデータ記録装置において、前記写真フィルムを搬送可能なフィルム搬送手段と、前記写真フィルムへの前記データの記録位置を検知して、検知信号を出力可能なフィルム記録位置検知手段と、前記データを記憶可能な記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記データの読み出しを行なう読出信号を前記記憶手段に出力可能な読出信号出力手段と、前記写真フィルム上に前記データを記録する記録手段と、前記読出信号によって前記記憶手段から読み出された前記データを一時的に保持し、該保持したデータに基づき、前記検知信号に同期して前記記録手段の制御を行なう記録制御手段と、を有し、前記読出信号による前記記憶手段から前記記録制御手段への前記データの読出しタイミングが、前記検知信号に同期して行なわれる前記記録手段の制御よりも時間的に前になるように構成したことを特徴とするフィルムデータ記録装置。

【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第1図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第8図】
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【公告番号】特公平6−87146
【公告日】平成6年(1994)11月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−250695
【出願日】昭和61年(1986)10月23日
【公開番号】特開昭63−106637
【公開日】昭和63年(1988)5月11日
【出願人】(999999999)コニカ株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−96964(JP,A)
【文献】特開昭59−106980(JP,A)
【文献】特開昭58−223142(JP,A)
【文献】実開昭56−38341(JP,U)
【文献】特公昭51−847(JP,B1)
【文献】特公平2−22365(JP,B2)
【文献】特公平4−3540(JP,B2)
【文献】特公平4−81171(JP,B2)
【文献】実公昭64−6504(JP,Y2)