説明

フィルム層を有する積層粘着剤構成物を備える身体排泄物収集器具

収集パウチと身体に取り付けるための粘着片とを備える身体排泄物収集器具であって、前記粘着片は、支持体層(21)、少なくとも1つの中間粘着剤層(22)、接皮粘着剤層(23)およびフィルム層(24)を備え、前記中間粘着剤層と前記接皮粘着剤層が、液不透過性透湿性の柔軟な粘着剤を含み、前記フィルム層が前記接皮粘着剤層と前記中間粘着剤層の間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚に収集パウチを取り付けるための感圧接着剤構成物を備える身体排泄物収集器具に関し、前記構成物は少なくとも2つの柔軟な粘着剤層を含む。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚に収集器具を接着するとき、考慮する必要がある主な状況は、以下の通りである:
1)粘着剤の装着;粘着剤は所定の位置に留まらなければならず、皮膚または身体の動きによって外れたり、または剥がれ落ちたりしてはならない。
2)粘着剤の除去;粘着剤は、結果として過度の痛みや皮膚の損傷を起こすことなく除去が容易でなければならない。
これは逆説である−粘着剤は所定の位置にきちんと留まらなければならず、しかも除去が容易でなければならない。現在の解決法は、その2つの状況に対応する接着性の妥協である。
【0003】
柔軟な粘着剤系は、皮膚に優しい粘着片(adhesive wafer)として使用するのに有利であることが分かった。
【0004】
透過性粘着材料を使用して、皮膚に優しい粘着片を設計する新たな可能性が得られる。皮膚からの水分を調節するための充填剤の添加量が比較的少なく、それによって粘着剤の柔軟性が増す。材料特性として非常に柔軟であるように透湿性材料を配合することができる。これは、柔軟な粘着剤系を設計するための主要因である。更に、非常に柔軟な性質を有する透過性フィルムも配合することができ、このようにして、ある一定の柔軟性を有する粘着片構成を設計することができる。(標準的なハイドロコロイド片と対照的に)柔軟な粘着片を皮膚に装着することに関して、柔軟な粘着片は身体の動きに追従することができ、粘着剤が剥離する感じがしないため、高度の快適さと安定性が得られる。
【0005】
国際出願PCT/DK2008/050148号明細書に記載の構成物は、水分が皮膚から粘着材料を通って拡散することを可能にする柔軟な不透水性透湿性接皮(skin facing)粘着剤の2層の粘着剤構成である。この構成は、更に、吸収性粒子を含有する不透水性透湿性の非接皮層を備え、水分が粒子に吸収されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
意外なことに、柔軟な粘着剤の容易に除去される能力を、柔軟な粘着剤の所定の位置に留まる能力と独立して制御できるように、前述の2つの状況を切り離す方法が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒトの皮膚に収集パウチを取り付けるための感圧接着剤構成物を備える身体排泄物収集器具に関し、この構成物は、少なくとも2つの柔軟な粘着剤層とフィルム層を含む。意外なことに、2つの柔軟な粘着剤層の間にフィルム層を導入することによって、容易に且つ独立して剥離力を制御できることが分かった。
【0008】
図面を参照して、本発明をより詳細に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】既知の積層粘着剤構成物の構成の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の構成の断面図である。
【図3】異なる粘着剤構成および粘着剤組成における剥離力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的は、粘着剤を除去するときの使用者の快適さを向上させると同時に、収集器具をヒトの皮膚に固定するための粘着剤の能力を低下させないように剥離力を調整することである。
【0011】
本発明の一実施形態では、身体排泄物収集器具は、
− 収集パウチと、
− 身体に取り付けるための粘着片であって、
− 支持体層
− 少なくとも1つの中間粘着剤層
− 接皮粘着剤層
− フィルム層、
を備える粘着片と、
を備え、中間粘着剤層と接皮粘着剤層が液不透過性透湿性の柔軟な粘着剤を含み、フィルム層が接皮粘着剤層と中間粘着剤層の間に配置されている。
【0012】
身体排泄物収集器具とは、所定の時間、収集用物品の中に排泄物を収集し、保持できる器具を意味する。器具を所定の位置に保持するのに皮膚粘着剤を用いてもよく、収集に袋を用いてもよい。
【0013】
粘着剤の理論では、剥離力は粘着剤の厚さの減少とともに低下する。
【0014】
「硬質の被着体から軟質の弾性粘着剤を剥離することを含む接着において、粘着剤の厚さを変化させると、粘着剤の厚さとともに剥離力が比例的に増大することが予測されることが理論的に分かる」。[Theory and Analysis of Peel Adhesion:Adhesive Thickness Effects,D.H.Kaelble,The Journal of Adhesion,vol.37,1992]
【0015】
従って、粘着剤系では、粘着剤の厚さを変化させることによって剥離力を制御することが可能である。粘着剤の厚さの減少とともに剥離力の顕著な低下が見られるように、系は柔軟でなければならない。剛性の高い硬質の粘着剤層は、粘着剤の厚さの調整後も依然として剛性が高く硬質である。従って、このような硬質の系は、柔軟な粘着剤をベースにする系と同じ効果を示さない可能性がある。
【0016】
粘着片の粘着剤は、粘着片全体が伸長できるように柔軟でなければならない。従って、柔軟な粘着剤層とは、本明細書で定義される複素弾性率Gが32℃および1hzで測定した時、50kPa未満である粘着剤層を意味する。
【0017】
粘着片の柔軟な粘着剤の剥離力は、粘着剤の厚さを変化させることによって制御できる。しかし、粘着片の他の機能に影響を及ぼすことなく粘着剤の厚さを変化させることはできない。例えば、厚さが薄過ぎると、粘着剤構成は吸収性を維持できないか、または皮膚に付着できない可能性がある。
【0018】
支持体層と薄い粘着剤層を有する設計で、剥離力を低下させる所望の効果を得ることもできる。しかし、このような構成は、貼付時および除去時、粘着片の取り扱いが困難な可能性がある。このような柔軟で薄い構成物は、被着体(皮膚)に適切に貼付することがほぼ不可能である。別の問題は、皮膚が発汗による水分で浸軟することにより損傷しないようにするために水分を調節することである。この問題は、粘着片がストーマ製品におけるような袋に取り付けられる場合、重要である。袋の中の湿度は100%に近くなるため、皮膚はこの薄い粘着剤構成を通して呼吸することができず、最終的に皮膚の軟浸が起こる。従って、水分調節層は重要である。
【0019】
意外なことに、粘着片にフィルム層を追加することによって柔軟なストーマ粘着片の剥離力を制御し、且つ依然として透過性および吸収性の要件を満たし、それによって皮膚に優しい粘着剤系を有することができることが分かった。
【0020】
接皮粘着剤の剥離力を制御できるように、本発明は、接皮粘着剤層と中間粘着剤層の間に柔軟な透湿性フィルム層を導入する。このようにして、粘着片を2つの別々の層に分割し、接皮粘着剤層の厚さを使用して剥離力を制御し、しかも水分が透湿性フィルム層を透過して中間粘着剤層に入るようにし、それによって皮膚に優しい粘着片を維持することができる。
【0021】
このようにして、例えば、初期タック、保持力、および透過性のような他の接着性を著しく変化させることなく、剥離性を変化させることができる。配合を変化させると、必ず他の接着性が損なわれてしまう。
【0022】
剥離力の制御は、例えば、装着時間、使用の種類などの特定の用途に合うように粘着剤を調製するのに重要である。
【0023】
剥離力を制御するためにフィルム層を組み込むことによって、系の全体的な柔軟性を著しく損なうことなく、「変形」が少ない(less“lively”)粘着片が得られる。これは、粘着片に組み込まれたフィルムの曲率半径の差によるものである。変形が少ないとは、保護被覆または剥離ライナーを除去したとき、粘着片自体は曲がる、またはカールする傾向がないことを意味する。この変形が少ないという特徴は、粘着片を皮膚に貼付する場合、有用であり、そのため取り扱いが容易になる。粘着剤系間にフィルム層を導入する場合、製品を除去するために粘着片の伸長が小さいことが必要であることも分かる。使用者が除去中に伸長し過ぎない、柔軟な粘着片を有することが重要である。
【0024】
本発明の一実施形態では、フィルム層は透過性である。
【0025】
本発明のフィルム層は、皮膚からの発汗による水分が取り除かれ、このようにして皮膚に健康的な環境が得られるように、透過性でなければならない。皮膚が健康な状態を維持するように、フィルム層の透過性は500g/m/24時間より高くなければならず、好ましくは1000g/m/24時間より高くなければならない。
【0026】
フィルム層の透過性は、材料特性であってもよく、または、例えば、フィルム層を穿孔することによって誘導された特性であってもよい。
【0027】
本発明の別の実施形態では、フィルム層は穿孔されていてもよい。
【0028】
フィルム層の穿孔によって、フィルムを非透過性フィルムの群から選択することが可能になる。穿孔によってフィルム層は開放性になる。フィルム層の穿孔は、通常、フィルム層に穴または切れ目を長い線状にまたはある面積に形成することによって行われる。穿孔されたフィルム層は、前述の透過性基準を満たさなければならない。
【0029】
また、この文脈でフィルム層とは、不織布または発泡フィルム層を意味する。不織布は、高い透過度を有するように、従って本発明の目的に適しているように製造することができる。発泡フィルム層は、連続気泡発泡体で製造され、このようにして高透過性となっていてもよく、または高透過性材料から配合されてもよい。発泡フィルム層の材料の全厚が小さいため、発泡フィルム層は、材料特性が低透過性であっても発泡により高透過性にすることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、フィルム層は中間粘着剤層より弾性率が高い。好ましい実施形態では、フィルム層の弾性率は、中間粘着剤層の弾性率の10倍より高い。
【0031】
本発明の一実施形態では、フィルム層の厚さは100μm未満である。好ましくは、フィルム層の厚さは10〜50μmである。
【0032】
本発明の一実施形態では、フィルム層は、EVA、EBA、PUまたはPEを含む。
【0033】
EVA、EBA、PUまたはPEとは、EVA(エチレン酢酸ビニル(ethylene vinyle acetate))、EBA(エチレン酢酸ブチル)、EMA(エチレン酢酸メチル)、PU(ポリウレタン)またはPE(ポリエチレン)を意味する。
【0034】
柔軟な粘着剤系の場合、使用される材料は透湿性である。この材料特徴を使用して、皮膚から水分を逃がし、それによって健康的な環境と浸軟していない損傷のない皮膚が確実に保たれるようにする。
【0035】
液不透過性透湿性層は、液体は透過できないが、水蒸気は透過できる層である。この層は、液体状態の汗を汗腺の近傍に保持するが、汗が層を通ってゆっくり拡散できるようになっている。
【0036】
本発明の一実施形態では、液不透過性透湿性粘着剤組成物の接皮粘着剤層および/または中間粘着剤層の水蒸気透過度は、100g/m/24時間より高く、好ましくは200g/m/24時間より高い。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、接皮粘着剤層の厚さは200μm未満である。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、接皮粘着剤層は、厚さが少なくとも25μmであり、好ましくは厚さが50μmより大きい。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、接皮粘着剤層の厚さは80〜120μmであってもよい。
【0040】
本発明の一実施形態では、接皮粘着剤層は低吸収性である。
【0041】
低吸収性とは、本明細書で定義する場合、吸水度が8%未満、好ましくは4%未満であることを意味する。
【0042】
薄い接皮層用の感圧接着剤は、十分な蒸気透過性を有する任意の疎水性粘着剤であってもよい。このような粘着剤は、典型的には、粘着剤に凝集力を付与する1種類以上のポリマー、ならびに、任意選択により、接着性を調整する油および粘着付与剤を含有する粘着剤である。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、液不透過性透湿性粘着剤組成物の接皮層は、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、ポリアクリレート、およびこれらの混合物の群から選択される透過性ポリマーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書で使用する場合、透湿性ポリマーは、本明細書に記載の方法を使用して材料の150μmのフィルムで測定したとき、透湿度が100g/m/24時間より大きい、好ましくは300g/m/24時間より大きいポリマーを意味する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、透過性ポリマーは、低吸収性であり、平衡状態で8重量%未満、好ましくは4重量%未満を吸収する。
【0046】
本発明の一実施形態では、接皮感圧接着剤は架橋されている。
【0047】
本明細書で使用する場合、架橋は、高分子(ポリマー鎖構造)中の3つ以上の鎖が出ている小部位を意味する。結合は、共有結合、物理的結合、またはイオン結合であってもよい。
【0048】
本発明の別の実施形態では、接皮感圧接着剤はブロック共重合体を含む。
【0049】
本明細書で使用する場合、ブロック共重合体は、主鎖の繰り返し単位がブロック状に、例えば、−(a)m−(b)n−(a)p−(b)q−(式中、aおよびbは繰り返し単位を示し、n、m、p、qは数字である)のように現れる共重合体を意味する。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、接皮感圧接着剤はポリプロピレンオキサイドを含む。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、接皮感圧接着剤はポリウレタンを含む。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、接皮感圧接着剤はエチレン酢酸ビニルを含む。
【0053】
エチレン酢酸ビニルを含む粘着剤組成物は、好適には、例えば、国際出願PCT/DK2008/050146号明細書に開示されている粘着剤組成物などの当該技術分野で既知の粘着剤であってもよい。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、接皮感圧接着剤はシリコーンを含む。
【0055】
本発明の好ましい実施形態では、接皮感圧接着剤はポリアクリレートを含む。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、液不透過性透湿性粘着剤組成物の接皮層は、粘着片の接皮面全体を被覆する。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、液不透過性透湿性粘着剤組成物の接皮層は、粘着片の接皮面を部分的に被覆する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、液不透過性透湿性粘着剤組成物の接皮層は、粘着片の接皮面の少なくとも75%を被覆する。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、中間粘着剤層は吸収性である。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、中間層は、本明細書で定義する場合、吸水能が15%より大きい。
【0061】
中間粘着剤層は、吸収性粒子を含むことが有利な場合がある。本発明の一実施形態によれば、中間粘着剤層は吸収性粒子を含む。
【0062】
層が皮膚からの水分を吸収するために、粒子は、塩、ハイドロコロイド、マイクロコロイド、または高吸収体などの吸収性粒子であってもよい。
【0063】
吸収性粒子が肉眼では比較的見え難く、比較的見た目がよい製品が得られるように、吸収性粒子の好ましい粒径は比較的小さい。粒径の上限は、層の最小の寸法の大きさである。従って、厚さ300μmの層は、直径が300μmより大きい粒子を含有すべきではない。吸湿性粒子は凝集する傾向があり、この効果は粒径が小さくなるにつれ大きくなる。従って、好ましい粒径は10〜300μmである。また、小さい粒子の凝集を低減するため、粒子は凝集防止剤を含有してもよい。
【0064】
マイクロコロイド粒子は、例えば、国際公開第WO02/066087号パンフレットから当該技術分野で周知であり、この文献はマイクロコロイド粒子を含む粘着剤組成物を開示している。マイクロコロイド粒子の粒径は20ミクロン未満であってもよい。
【0065】
中間粘着剤層は、ハイドロコロイド(HC)または高吸収性粒子(SAP)を1〜40%w/w、より好ましくは粒子を5〜30%w/w含んでもよい。
【0066】
塩は、本発明の器具の吸収体として使用するのに有利な可能性がある。塩化ナトリウムのような塩は、皮膚温度で平衡蒸気圧が約75%RHであり、蒸気圧の差があるため皮膚や排泄物から水を吸収する。
【0067】
本発明の一実施形態では、中間粘着剤層は無機塩類の粒子を含む。塩は、1〜50%w/wの量で、より好ましくは5〜25%の量で存在してもよい。
【0068】
塩は無機塩であっても、または有機塩であってもよい。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、中間粘着剤層は、NaCl、CaCl、KSO、NaHCO、NaCO、KCl、NaBr、NaI、KI、NHCl、AlCl、およびこれらの混合物の群からの水溶性無機塩、好ましくはNaClを含むが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、中間粘着剤層は、CHCOONa、CHCOOK、HCOONa、HCOOKおよびこれらの混合物の群からの水溶性有機塩を含むが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、液不透過性透湿性粘着剤組成物の中間粘着剤層は、ポリアルキレンオキサイド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、ポリアクリレート、およびこれらの混合物の群から選択される透過性ポリマーを含む。
【0072】
好ましくは、接皮粘着剤および中間粘着剤層の疎水性マトリックスは、2層間の種の移動を防止するために、組成が同一であるか、または同一に近い。
【0073】
本発明の一実施形態によれば、中間層は、接皮層に使用される透過性粘着剤組成物と同じ種類のポリマー成分をベースにする。このようにして、中間粘着剤層の成分は、以下に限定されるものではないが、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、ポリアクリレート、およびこれらの混合物の群から選択されてもよく、任意選択により、粒子を添加することによって吸収性にされてもよい。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、接皮粘着剤層および中間粘着剤層の弾性率Gは、1hzおよび32℃で測定した場合、50,000Pa未満、好ましくは20,000Pa未満である。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、中間粘着剤層は接皮粘着剤層より厚い。
【0076】
本発明の別の実施形態によれば、接皮粘着剤層は中間粘着剤層の厚さの33%未満である。
【0077】
本発明の器具の支持体層は、好ましくは、ポリマーフィルム、コーティング、積層品、テキスタイル、または不織布の形態である。支持体層は、好ましくは可撓性の高いフィルムであり、例えば、連結具および/またはパウチを取り付けるのに、および一体の器具を取り外すのに十分な強度があるが、身体の動きに追従するのに十分な柔軟性もある。
【0078】
一実施形態では、支持体層はポリウレタンフィルム、任意選択により、積層品または共押出フィルムまたはキャストフィルムである。
【0079】
好ましくは、支持体層は、例えば、パウチまたは連結リングを粘着片に溶着することを可能にする熱可塑性要素を有する。粘着片の柔軟性を維持するために好ましい支持体層の厚さは15〜60μmである。
【0080】
本発明の一実施形態では、支持体層は蒸気不透過性である。
【0081】
別の実施形態によれば、支持体層は多層フィルムである。フィルムの各層は支持体層に特定の性質を付与する。薄い溶着可能な層によって確実に袋または連結具にしっかりと接合され、比較的厚い柔軟な層によって機械的特性が確保される。
【0082】
別の実施形態によれば、支持体層は、厚さが15〜500μmの発泡体である。好適な発泡体支持体層は、例えば、ポリエチレンフォーム、エチレン酢酸ビニルフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリアルキレンオキサイドおよび/またはポリアルキレンオキサイドシロキサンフォームである。
【0083】
本発明の粘着片は、任意選択により、貼付前または貼付時に除去される1つ以上の剥離ライナーまたは被覆フィルムで部分的にまたは完全に被覆される。保護被覆または剥離ライナーは、例えば、シリコーン処理された紙であってもよい。それは粘着片と同じ形状を有する必要はない。剥離ライナーは医療器具用の剥離ライナーとして有用であることが知られている任意の材料であってもよい。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、収集パウチは着脱自在である。
【0085】
本発明の別の実施形態によれば、収集パウチは粘着片と一体化されている。
【0086】
収集パウチは、連結系により粘着片から着脱自在であってもよく、またはパウチと粘着片は、粘着片と、例えば溶着により一体化されていてもよい。この2つの形態は、ワンピース型ストーマ装具またはツーピース型ストーマ装具として知られている。
【0087】
粘着剤の皮接面とは、皮膚に接着する側を意味する。
【0088】
袋側の面または非接皮面とは、皮膚に背く方を向いている粘着剤または支持体の側(非結合側)を意味する。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、収集器具はストーマ装具である。
【0090】
本発明の別の実施形態によれば、収集器具は糞便収集器具である。
【0091】
本発明の別の実施形態によれば、収集器具はフィステル収集器具である。
【0092】
好ましい実施形態の説明
本発明の好ましい実施形態を示す図1〜図3の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0093】
図1は、支持体層(11)、中間粘着剤層(12)および接皮粘着剤層(13)を含む既知の積層粘着剤構成物の構成1の側面図を示す。2つの粘着剤層を分離するフィルムは存在しない。
【0094】
図2は、支持体層(21)、中間粘着剤層(22)、接皮粘着剤層(23)およびフィルム層(24)を含む、本発明の一実施形態の構成2の側面図を示す。
【0095】
図3は、異なる粘着剤構成および粘着剤組成における剥離力を示す図を示す。
【0096】
材料および方法
方法
吸水量の測定
測定された吸水量と人体様の環境における実際の性能をより適切に補正するために、ISO 62標準の変更版を使用した:両面粘着剤を使用して1×25×25mmの粘着剤片をガラス片に固定し、この構成物を32℃の食塩水(脱塩水中0.9%のNaCl)に浸漬した。24時間後にサンプルを取り出し、注意して吊り下げて乾かし、重量を測定した。重量の変化を記録し、元の粘着剤の乾燥重量のパーセントでの重量増加として報告した。以下でこの値をw24hと称する。
【0097】
透湿度(MVTR)の測定
MVTRは、逆さPaddingtonカップ法(British Pharmacopoeia,1993,Addendum 1996,page 1943.HMSO London)を使用して24時間にわたる一平方メートル当たりのグラム(g/m)で測定した:開口部を有する水および水蒸気不透過性の容器またはカップを使用した。20mlの食塩水(脱塩水中0.9%のNaCl)を容器に入れ、開口部を試験粘着フィルムで密封した。容器をデュプリケートで電熱式湿潤箱に入れ、水が粘着剤と接触するように容器またはカップを逆さまにして入れた。湿潤箱を37℃、相対湿度(RH)15%に維持した。約1時間後、容器は周囲環境と平衡状態になったものと見なし、重量を測定した。1回目の重量測定の24時間後に、再度容器の重量を測定した。重量の差は、粘着フィルムを透過した蒸気の蒸発によるものであった。この差を使用して透湿度またはMVTRを算出した。MVTRは、24時間後の重量損失をカップの開口部の面積で割ったもの(g/m/24時間)として算出した。粘着フィルムが水の重量を支持できなかった場合、透過性が非常に高い支持フィルムを支持体として使用した。
【0098】
の測定
“Dynamics of polymeric liquids”,Vol.1,sec.ed.1987,Bird,Armstrong and Hassager,John Wiley and Sons inc.に定義されているパラメータGまたは複素弾性率を粘着剤の硬度の尺度として使用した。混同を避けるため、ここではGは複素Gの絶対値を意味することに留意されたい。32℃および1HzにおけるGは以下のように測定した:非発泡粘着材料のプレートを厚さ1mmのプレートに加圧成形した。直径25mmの円形のサンプルを切り取り、Thermo Electron製のRheoStress RS600レオメータに入れた。測定値が線形領域(linear regime)にあることを確実にするため、使用した幾何学的形態は平行板25mmであり、歪みは1%に固定された。測定は32℃で行った。
【実施例】
【0099】
実施例1
実施例1では、異なる粘着剤系でフィルム層がある場合またはフィルム層がない場合の剥離力の低下を測定した。
【0100】
剥離試験用の25×100mmの粘着剤ストリップを厚さ1mmに作製した。下記の表1に粘着剤構成を示す。構成中の中間粘着剤層配合物および接皮層配合物は同じであった。
【0101】
【表1】

【0102】
1myは、1μmを意味する。表1のデータは層の厚さを示す。
【0103】
各粘着剤系について2つの構成を作製した。
【0104】
構成1は、40μmの柔軟なポリウレタントップフィルム(Scapa Medical製のBioflex 180)を有する厚さ1mmの薄片であった。中間粘着剤層と接皮粘着剤層が厚さ960μmの1つの粘着剤として機能するように、それらを単に貼り合わせた。
【0105】
構成2は、25μmの柔軟なポリウレタン支持体層(Scapa Medical製のBioflex 180)と粘着剤を2つに分割する15μmの柔軟なポリウレタンフィルム層(Scapa Medical製のBioflex 180)を有する厚さ1mmの薄片であった。接皮粘着剤層は200μmであり、中間粘着剤層は760μmであった。
【0106】
構成1および2で、フィルム層の全厚は40μm(40μmまたは25+15μm)であった。
【0107】
3種類の粘着剤を試験した。各構成で中間粘着剤層と接皮粘着剤層は同じであった。
【0108】
%は%(w/w)を意味する。
【0109】
【表2】

【0110】
材料をカップ内で1分間手動で混合し、金型内で30分、90℃で硬化させ、所望の構成を得た。剥離試験用の25×100mmの粘着剤ストリップを粘着片から切り取った。構成1および2に望ましいフィルムを選択した。
【0111】
【表3】

【0112】
Zブレードで材料を120℃で1時間混合することにより粘着剤を製造した。系を可塑化するために、γ線照射材料をまずグリコールと混合しなければならなかった。1および2の構成は、粘着剤Cの手順と類似の加熱プレスで作製した。
【0113】
C−標準的なハイドロコロイド粘着剤系(25%Kraton D−1161、35%Arkon P90樹脂、5%アジピン酸ジオクチル可塑剤および35%Blanose 9H4X、Aqualonハイドロコロイド)を標準粘着剤として使用した。
【0114】
次のようにして構成1を得た:全ての原材料をZブレード混合装置内で140℃で1時間混合した。深さ1mmの金型(1×150×150mm)内で、90℃で10秒間加熱プレスすることによって、厚さ1mmのプレートの薄片を製造した。
【0115】
粘着剤組成物を2つのシリコーン処理フィルム間でそれぞれ200μmと760μmに加熱プレスすることによって、構成2を作製した。2つのシリコーン処理フィルム間でプレスすることにより、粘着剤を破壊することなくシリコーン処理フィルムを除去することが可能になる。好適なシリコーン処理フィルムは、Huhtamaki製のシリコーンコーティング1808を有する110myPPライナーである。25μmの支持体層と15μmのフィルム層を有する所望の構成は、深さ1mmの金型内で10秒間90℃で加熱プレスすることにより材料を積層することによって得られる。構成は両方とも、加熱プレスの前に、シリコーン処理された保護フィルムで被覆された。次いで、構成を25×100mmのストリップに切断して、試験の準備をする。
【0116】
Instron 5564で100Nのロードセルを用い、100m/分、25℃で剥離力の測定を行った。剥離被着体は、柔軟な粘着剤構成では紙であり、ハイドロコロイド粘着剤では鋼であった。二層粘着テープを使用して紙を固体表面に固定した。紙剥離被着体として新聞紙を使用する。各構成について3つのサンプルを試験した。
【0117】
結果
図3は、異なる粘着剤構成および粘着剤組成物における剥離力を示す図を示す。剥離力はAVG剥離荷重[N]として測定した。
【0118】
柔軟な粘着剤AおよびBにおける顕著な剥離力の低下(剥離部前面(peel front)が1,000μmから200μmになった)が見られた。保持力、水分調節および初期タックなどの他の接着性を損なうことなく剥離力の低下が得られた。剥離力を低下させる典型的な方法は、除去が容易であるように粘着剤を再配合することである。フィルム層を追加しても、フィルム層ではなく比較的剛性の高い粘着剤が剥離力を制御する傾向があるため、比較的剛性の高い粘着剤Cを使用する場合、剥離力の変化は見られない。その場合、フィルム層が皮膚の近くにあっても、剥離力に影響を及ぼさない。
【0119】
粘着剤Aまたは粘着剤Bを使用する柔軟な粘着剤系の場合、粘着剤構成2の伸びの低下が見られた。これは、剥離力の低下によるものである。粘着剤Cでは、剥離力が低下しないため、伸びの低下は見られなかった。
【0120】
実施例に示す粘着剤の剥離力の低下時には、被着体から粘着剤を除去する時、その粘着剤では伸長も小さくなる。過度に伸長することなく粘着剤を除去し、しかも、本発明の柔軟で快適な粘着片構成の装着時の安定性を維持することが望ましいため、この効果は問題に対処するのに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体排泄物収集器具であって、
− 収集パウチと、
− 身体に取り付けるための粘着片であって、
− 支持体層
− 少なくとも1つの中間粘着剤層
− 接皮粘着剤層
− フィルム層、
を備える粘着片と、
を備え、前記中間粘着剤層と前記接皮粘着剤層が液不透過性透湿性の柔軟な粘着剤を含み、前記フィルム層が前記接皮粘着剤層と前記中間粘着剤層の間に配置されている、身体排泄物収集器具。
【請求項2】
前記接皮粘着剤層の厚さが200μm未満である、請求項1に記載の収集器具。
【請求項3】
前記フィルム層が透過性であり、好ましくは前記フィルム層の透過性が500g/m/24時間より高い、請求項1または2に記載の収集器具。
【請求項4】
前記フィルム層が穿孔されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項5】
前記フィルム層は前記中間粘着剤層より弾性率が高く、好ましくは前記フィルム層の弾性率は前記中間粘着剤層の弾性率の10倍より高い、請求項1〜4のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項6】
前記フィルム層の厚さが100μm未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項7】
前記フィルム層が、EVA、EBA、PUまたはPEを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項8】
前記中間粘着剤層が吸収性である、請求項1に記載の収集器具。
【請求項9】
前記接皮層および前記中間粘着剤層の弾性率Gは、1hzおよび32℃で測定した場合、50,000Pa未満、好ましくは20,000Pa未満である、請求項1に記載の収集器具。
【請求項10】
前記液不透過性透湿性粘着剤組成物の前記接皮粘着剤層が、ポリアルキレンオキサイド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、ポリアクリレート、およびこれらの混合物の群から選択される透過性ポリマーを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項11】
前記液不透過性透湿性粘着剤組成物の前記中間粘着剤層が、ポリアルキレンオキサイド、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、ポリアクリレート、およびこれらの混合物の群から選択される透過性ポリマーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項12】
前記透過性ポリマーの透湿度が100g/m/24時間より高く、好ましくは200g/m/24時間より高い、請求項10または11に記載の収集器具。
【請求項13】
前記透過性ポリマーが低吸収性であり、平衡状態で8重量%未満、好ましくは4%未満を吸収する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項14】
前記液不透過性透湿性粘着剤組成物の前記接皮粘着剤層および/または前記中間粘着剤層の水蒸気透過度が100g/m/24時間より高く、好ましくは200g/m/24時間より高い、請求項1〜13のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項15】
前記中間層が、前記接皮層に使用される前記透過性粘着剤組成物と同じ種類のポリマー成分をベースにする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項16】
前記中間粘着剤層が前記接皮粘着剤層より厚い、請求項1〜15のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項17】
前記接皮粘着剤層が前記中間粘着剤層の厚さの33%未満である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項18】
前記収集器具がストーマ装具である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項19】
前記収集器具が糞便収集器具である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の収集器具。
【請求項20】
前記収集器具がフィステル収集器具である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の収集器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−510834(P2012−510834A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538839(P2011−538839)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050322
【国際公開番号】WO2010/066254
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】