説明

フィルム用巻芯

【課題】 本発明は、保管時あるいは搬送時に加わる衝撃に対して耐久性を備える堅牢なフィルム用巻芯を提供することにある。
【解決手段】 アルミ押出形材からなる管1と、アルミ鍛造品からなるボス2とを備え、管1は、長手方向両端部にボス2をそれぞれ取り付けるものであり、ボス2は、支持部3と管1との取付部4を有しており、支持部3と取付部4との境界部8にはRが設けてあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶フィルムなどを巻き取って保管するフィルム用巻芯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5(a)に示すものは、液晶フィルムなどを巻き取るための巻芯であり、この種の巻芯は、長尺な管21と、その管21の長手方向両端部に取り付けるボス22とから構成してある。そして、両側の各ボス22の支持部23を支持台25のボス受け26にそれぞれ置くことにより、フィルム27を巻き出し可能な状態で支持するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フィルム27を巻いた状態でボス受け26に乗せたとき、その荷重によりボス22の支持部23と取付部24との境界部28に相当の応力が発生するものであった(図5(b)参照)。ボス22を支持台25のボス受け26に置いた状態で巻芯を搬送したときには、揺れや衝撃によってボス22が境界部28で破損する問題点があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、保管時あるいは搬送時に加わる衝撃に対して耐久性を備える堅牢なフィルム用巻芯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のうち請求項1記載の発明は、アルミ押出形材からなる管と、アルミ鍛造品からなるボスとを備え、管は、長手方向両端部にボスをそれぞれ取り付けるものであり、ボスは、支持部と管との取付部を有しており、支持部と取付部との境界部にはRが設けてあることを特徴とする。
【0005】
本発明のうち請求項2記載の発明は、ボスの支持部の長手方向の寸法が40〜60であり、ボスの支持部の外径が160〜180であり、支持部と嵌合部との境界部が10〜20Rであることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項3記載の発明は、管をアルミニウム合金6N01で成形し、ボスをアルミニウム合金6061で成形していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、ボスがアルミ鍛造成形してあることで耐久性が向上するとともに、ボスの支持部と取付部との境界部にRが設けてあることにより、応力が分散できるころから堅牢なフィルム用巻芯が提供できる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、ボスの支持部の長手方向の寸法が40〜60であることから、支持部と支持台とのかかりが浅くならず、ボスの支持部と取付部の境界部で発生する応力に対応したRを設けることができる。さらに、支持部に耐久値を超える曲げモーメントも発生しない。ボスの支持部の外径が160〜180であることから、支持部のせん断耐力が確保されると共に、ボスに凹み発生することもない。支持部と嵌合部との境界部が10〜20Rであることにより、ボスの支持部と取付部の境界部に発生する応力を分散できることでフィルムの荷重によるボスの破損が防がれる。
【0009】
本発明のうち請求項3記載の発明によれば、ボスをアルミニウム合金6061で成形し、管をアルミニウム合金6N01で成形しているので、いずれのアルミニウム合金についても加工性や引張強度を有する素材であり、さらに、押出性やコスト面でもフィルム用巻芯として最適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、本実施によるフィルム用巻芯を示す縦断面図であり、(b)は、要部を拡大した縦断面図である。
【図2】(a)は、本実施によるフィルム用巻芯をボス受けに載置した状態を示す正面図であり、(b)は、側面図である。
【図3】本実施によるボスの製造手順を示す簡略化した正面図である。
【図4】本実施によるフィルム用巻芯の製造手順を示す簡略化した斜視図である。
【図5】(a)は、従来のフィルム用巻芯を示す縦断面図であり、(b)は、要部を拡大した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面に基づいて本実施によるフィルム用巻芯について説明する。本実施によるフィルム用巻芯(以下、巻芯と記す)は、管1と、管1の長手方向両端部に取り付けられるボス2とを備えており、図2(a)(b)のように、支持台9のボス受け10に置かれている。管1は、図1(a)のように、A6N01S−T5(アルミニウム合金6N01を押出し成形したもの)であり、本実施のものでは、管の外径が250mmに設定されている。ボス2は、図1(b)のように、筒状をなす支持部3と、その支持部3よりも径が大きく且つ管1の長手方向両端部に嵌入して取り付ける取付部4とからなっており、A6061FD−T6(アルミニウム合金6061を型鍛造で成形したもの)を使用している。また、支持部3は、長手方向の長さが50mmとしてあり、外径が175mm、内径が155mmである。さらに、取付部4の径は、外径が250mmであり、内径が238mmであり、管1内に飲み込まれる長さは50mmとしてある。また、管1とボス2は、管1の外周側から直交方向に差し込まれるピン6を連通して抜け止めするものであり、そのピン6を嵌入するためのピン孔7a,7bが管1とボス2の取付部にそれぞれ設けてある。
【0012】
図3(a)(b)は、本実施によるボス2の製造方法を示すものである。
上型12aと下型12bとを有し、上型12aが上下動する態様のプレス機を使用するものであり、上型12aには、ボスの取付部4に相当する形状をなす上側凹部13aが設けてあり、また、下型12bには、ボス2の支持部3に相当する形状をなす下側凹部13bが設けてある。そして、図3(a)のように、下型12bにアルミニウム合金材2aを置き、上型12aにより複数回プレスすることにより、アルミニウム合金材2aを鍛錬していく。このとき、下型12bではボス2の支持部3と取付部との境界部にRを形成するが、そのRについては20Rとなるように設定されている。その後、図3(b)のように、アルミニウム合金材2aの内部を切削して筒状にするとともに、取付部4を切削で形成し、ボス2を製造する。
【0013】
管1の製造方法については、図4(a)のように、管材1aの外周面に対し、半円弧状の凹部が設けてある管成形用上型14aおよび下型14bにより管材1aを回しながら切削していき、切削後に得られる管1の外径が所定の径となるように成形する。図4(b)のように、管1外周面とボス2取付部4の嵌入部を管1を回転させながら切削する。そして、製造された管1の長手方向両端部の開口のそれぞれに上記工程で製造されたボス2を嵌入して取り付ける。図4(c)にように、ボス2の取付部4を張出部が当接するまで管1の長手方向両端部の開口に嵌入させて差し込み、図4(d)のように、管1とボス2の120°間隔の三箇所に、管1とボス2の取付部4とを連通するピン孔7a,7bを設ける。そして、図4(e)のように、すべてのピン孔7a,7bにピン6を嵌入して連通し、管1とボス2とを離脱不能に固定し、図4(f)のように、管1外周面を回転しながら仕上げ切削加工を施すことで本実施によるフィルム巻芯が完成する。
【0014】
上記のように形成した本実施によるフィルム用巻芯は、管1にフィルム11を巻いた状態で支持台9のボス受け10に置いたとき、ボス2の支持部3で管1とフィルム11の荷重を受けることになる。このとき、ボス2の支持部3と取付部4との境界部8で応力が発生することになるが、ボス2の寸法の設定については、支持部3の長手方向の寸法が40〜60mmに設定してある。この範囲内とするのは、40mm未満としたときに、ボス2の支持部3と支持台9のボス受け10とのかかりが浅くなって単位面積あたりの荷重が大きくなり、ボス2に変形のおそれがある。さらに、上記寸法で支持部3のかかりを確保しようとすれば、境界部8にRが設けられなくなるので、ボス2の耐久性の確保が難しくなる。これとは反対に、ボス2の支持部3の長手方向の寸法を60mmよりも長くしたときには、支持部3で発生する曲げモーメントが大きくなり、支持部3が破損するが懸念があると共に、支持台9から外に突出した支持部3が保管時や搬送時の邪魔になってしまう。また、60mmよりも長く形成した支持部3は、ボス受け10で受ける範囲を大きくして支持台9を大型化すれば、巻芯の収納性が悪くなってしまう。さらに、巻芯搬送中に加わる揺れや不意の衝撃により、巻芯が格納スペース内で不規則に動いたときには支持部3が他の搬送品等に引掛かる問題点も考えられる。
また、ボス2の支持部3の外径を160mm未満としたときには、上記のように長さが40〜60mmとすれば、せん断応力が弱くなるため、支持部3の変形を防ぐためにはボス2の肉厚を厚くしなければならなくなる。さらに、外径を180mmよりも大きくしたときには、支持部3に垂直荷重が加わればボス2が凹みやすくなるため、この変形を防ぐためには、同じようにボス2の肉厚を厚くする必要がある。このことからボス2の支持部3は、長さが40〜60mmの範囲とし、外径を160〜180mmの範囲とするものである。さらに、ボス2の支持部3と取付部4との境界部8に設けられるRは、上記したボス2の支持部3の長さ寸法と外径寸法を考慮したとき、10〜20Rの範囲とするものであり、フィルム11を巻いた状態の巻芯を支持台9のボス受け10で支持したときに、支持部2と取付部3の境界部8に設けてあるRにより応力が分散する。
なお、ボス2がフィルム11の荷重や衝撃で破損しないものであるのはもちろん、鍛造性やコスト面も考慮する必要があり、このことから、ボス2の材質選定については、アルミニウム合金2000系、6000系、7000系のうちのいずれかが望ましい。このうち、アルミニウム合金2000系と7000系は、耐食性が悪く、本実施によるフィルム用巻芯のように屋外使用が想定されるものでは、汚れを落とすために水洗浄が行われることから一定の耐食性を有する必要がある。さらに、本実施では、ボス2のアルミニウム合金材2aとして径が200mmを超える押出し棒材を使用することから、強度の高いアルミニウム2000系と7000系では押出し性が悪く製造が難しい。また、アルミニウム合金2000系と7000系は、変形抵抗値が高いことから鍛造成形には適さず、このことからアルミニウム合金6000系が選定される。アルミニウム合金6000系のうち、アルミニウム合金6N01やアルミニウム合金6063は、成形性は良いが強度不足になるため、A6061FD−T6(アルミニウム合金6061)とするものである。
【0015】
管1は、径が大きいため、変形抵抗値の大きな2000系、7000系では押出しが困難であることから、アルミニウム合金6000系が選択され、その中で押出性、コスト、強度を鑑みたときにA6N01S−T5を選定するものである。ボス2と同様にA6061FD−T6で成形したときには、押出し性が悪いためにコスト高になり、また、押出し性の良好なA6063S−T5としたときには、耐力値が想定される使用環境では満たされないことから管1としては適さない。
【0016】
ボス2の取付部4は、上記実施形態では管1の長手方向両端部に嵌入してピン6で固定するものが示されたが、取付部4を雄ネジ部、管の内周に雌ネジ部とし、互いをネジ式に螺合するものなど、管1から抜け出さないように取り付けできるものであればよい。
【符号の説明】
【0017】
1 管
2 ボス
3 支持部
4 取付部
8 境界部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ押出形材からなる管と、アルミ鍛造品からなるボスとを備え、管は、長手方向両端部にボスをそれぞれ取り付けるものであり、ボスは、支持部と管との取付部を有しており、支持部と取付部との境界部にはRが設けてあることを特徴とするフィルム用巻芯。
【請求項2】
ボスは、支持部の長手方向の寸法が40〜60であり、支持部の外径が160〜180であり、支持部と嵌合部の境界部が10〜20Rであることを特徴とする請求項1記載のフィルム用巻芯。
【請求項3】
管をアルミニウム合金6N01で成形し、ボスをアルミニウム合金6061で成形していることを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム用巻芯。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−236663(P2012−236663A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105628(P2011−105628)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000175560)三協立山株式会社 (529)
【Fターム(参考)】