説明

フィルム貼合せ用接着剤組成物

【課題】 高温高湿度下に長期間放置されても白濁が無く透明性に優れ、また、接着強度の低下の少ないフィルムの貼合せ用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 (a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムを(b)ポリイソシアネートと(c)重合開始剤の存在下に反応させて得られる(A)変性ゴムと、(B)軟化点が100℃以上である粘着付与剤、(C)架橋剤を含む、フィルム貼合せ用接着剤組成物。(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムに対し、(b)ポリイソシアネートを、イソシアネート基の水酸基に対する比率(NCO/OH)が0.1〜0.9の間にあり(c)重合開始剤の存在下に反応させて得られる(A)変性ゴム100質量部に対し、(B)粘着付与剤を10〜150質量部、(C)架橋剤を2〜20質量部配合することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスティック系フィルムの貼合わせに良好なフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家電用途、建材外装用途、自動車用途など様々な用途に、安価で成形性が高いプラスティック系のフィルムを貼る工法が確立されている。これらは印刷などの表面加工されたフィルムを貼り合せて加飾したり、保護層としたりして、製品の意匠性、耐久性の向上の目的で使用される。これらの、貼り合せはプラスティック系フィルムに接着剤を塗布または塗工し、貼合せたり、熱可塑プラスティックフィルムを熱融着したりすることが多い。プラスティック系フィルムとしては、意匠性、耐久性、バリヤ性、耐光性、耐水性、耐薬品性、加工性などの様々な特性が要求されることから、複数の材料貼り合せで複合化したフィルムを使用する。貼り合せ用も接着剤としては、アクリル系粘着剤が粘着性を保持していることから比較的接着しにくいポリエステル系フィルムにも接着することが可能であり、またポリウレタン系接着剤は、架橋剤を併用することで、耐熱性を発現することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−145615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクリル系粘着剤は、モノマー組成を変更することで接着剤組成を工夫することが容易であり、様々な工夫が凝らされているものの、耐久性に問題があった。
さらに、アクリル系粘着剤は、常温(15〜30℃)での貼り合せを可能にした組成物では、温度50℃以下では高い接着強度を示すが、50℃以上での耐熱性が低いため、高温雰囲気に曝される用途においては剥がれが発生する可能性があり、耐熱性の高い用途への使用は不向きであった。また、イソシアネートを併用したポリウレタン系接着剤は耐熱性が発現するものの、高温高湿度下に長期間(例えば85℃、85%RH雰囲気中に1000時間)放置すると加水分解するため、接着強度は大幅に低下する問題がある。
本発明は、高温高湿度下に長期間放置されても接着強度の低下が少なく、また、複合化プラスティック系フィルムの貼合せ用に用いるフィルム貼合せ用接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究の結果、一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴムと、ポリイソシアネートを重合開始剤の存在下に加熱撹拌し、反応させて得られた合成物に粘着付与剤、架橋剤を配合することで、ポリエステル系フィルムなど汎用接着フィルムに対して接着し、且つ、粘着剤、イソシアネートを併用したポリウレタン系接着剤よりも優れた耐熱性、耐湿性を有する接着剤を得ることを見出した。
【0006】
本発明は、[1](a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムと、(b)ポリイソシアネートと、(c)重合開始剤を(d)有機溶剤存在下に反応させて得られる(A)変性ゴムと、(B)軟化点が100℃以上である粘着付与剤、(C)架橋剤を含む、フィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[2] (a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムに対し、(b)ポリイソシアネートをイソシアネート基の水酸基に対する比率(NCO/OH)が0.1〜0.9の間にあり、(c)重合開始剤を(d)有機溶剤存在下に反応させて得られる(A)変性ゴム100質量部に対し、(B)粘着付与剤を10〜150質量部、(C)架橋剤を2〜20質量部配合する上記[1]に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[3](a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムが、イソプレンまたはブタジエンのいずれか1以上である上記[1]または上記[2]に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[4](b)ポリイソシアネートおよび(C)架橋剤が、脂肪族イソシアネートを含むポリイソシアネートである上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[5]フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のいずれかである上記[1]ないし上記[4]のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[6](D)酸化防止剤を含む上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[7](D)酸化防止剤が、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤のいずれか2以上である上記[6]に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物を用いることで、高温高湿度下に長期間放置されても白濁が無く透明性に優れ、また、接着強度の低下の少ないポリエステル系フィルム同士の貼合せフィルムを得ることができる。得られたフィルム積層体は、建材外装用途、家電用途など様々な用途の特に耐候性が必要とされているものに特に適している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムは、ブタジエン、イソプレンが挙げられ、この中のいずれか1以上の種類を使用することが好ましい。ゴムの物性および性状は、目的とする諸物性により異なるため特に制限しないが、数平均分子量が5,000以下のものが好ましい。
【0009】
本発明で用いる(b)ポリイソシアネートおよび(C)架橋剤は、脂肪族イソシアネートを含むポリイソシアネートであると好ましい。具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などの脂肪族ジイソシアネートまたは、脂肪族ジイソシアネートを2価または3価の多価アルコールと反応させたアダクト体、ビュレット体、ウレチジオン体、イソシアヌレート体などが挙げられる。目的とする諸物性に応じ、1種または2種以上の組み合わせを選択して使用することができる。
【0010】
本発明で用いる(c)重合開始剤として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーベンゾエード、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物、過酸化水素等の無機過酸化物、硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のジアゾ化合物が挙げられる。その他に、紫外線、電子線などを用い、ゴム中の2重結合を開き、ゴム同士を反応させることもできる。
【0011】
本発明で用いる(d)有機溶剤としては、汎用の有機溶剤が使用できる。
本発明においては、一分子中に水酸基を2個以上有する水酸基含有液状ゴムとイソシアネートの反応を、重合開始剤存在下で行うことによりフィルム貼り合わせに最適な接着剤組成物が得られる。
【0012】
本発明で用いる(B)軟化点が100℃以上である粘着付与剤は、ブタジエンゴムおよびイソプレンゴムのタッキファイヤーとして使われる粘着付与樹脂、具体的には石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、およびこれらの変性樹脂等から一種以上を選択し適量を配合する。
粘着付与剤は、一般的に、約70℃〜150℃間のASTM規格E28−58Tにより測定されるリングおよびボール軟化点を有するが、本発明では、耐熱性を上げるため粘着付与剤の軟化点が100℃以上である。例えば、ロジン系樹脂としてガム・ロジン、ウッド・ロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、2量化ロジン、樹脂酸塩、および重合ロジンなどを含む天然および改質ロジン、ウッド・ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、およびロジンのフェノール改質ペンタエリスリトールエステルなどを含む天然および改質ロジンのグリセロールおよびペンタエリスリトールエステル。 テルペン樹脂として、スチレン/テルペンおよびα-メチルスチレン/テルペンを含む天然テルペンのコポリマーおよびターポリマー、ポリテルペン樹脂の2環式テルペンおよびフェノールの酸性媒体中での縮合から得られる樹脂製品を含むフェノール改質テルペン樹脂およびそれらの水素化誘導体。脂肪族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体、脂環式石油炭化水素樹脂およびそれらの水素化誘導体。また、環式または非環式のC樹脂および芳香族改質非環式または環式樹脂が挙げられる。
【0013】
(b)ポリイソシアネートの配合量は、(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴムに対し、(b)ポリイソシアネートを、イソシアネート基の水酸基に対する比率(NCO/OH)が0.1〜0.9、好ましくは0.3〜0.6である。
(NCO/OH)の配合比率が0.1未満では、所望の初期接着強度が得られず、0.9を超えると反応制御しにくくゲル化しやすくなる。
【0014】
(c)重合開始剤の配合量は、(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴム100質量部に対して、0.1〜3.0質量部である。(c)の配合量が0.1質量部未満ではゴム同士が十分に反応しないため所望の初期接着強度が得られず、3.0質量部を超えると接着剤の貯蔵安定性が低下し、ゲル化などの問題を引き起こす。
【0015】
(B)粘着付与剤の配合は、一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴムを重合開始剤とポリイソシアネートの存在下に反応させて得られる(A)変性ゴム100質量部に対して10〜150質量部、好ましくは30〜100質量部である。(B)の配合量が10質量部未満では、十分なタックが発現しないため、特にポリエステル系フィルムへの接着性が低下し、150質量部を超えると硬化後の弾性率が高くなりポリエステル系フィルムへの接着性が低下する。また(B)の軟化点は、耐熱性を付与する必要があるため100℃以上の軟化点が必要である。
【0016】
(C)架橋剤の配合量は、一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴムを重合開始剤とポリイソシアネートおよび反応触媒の存在下に反応させて得られる変性ゴム(A)100質量部に対して、2〜20質量部、好ましくは5〜10質量部である。(C)の配合量が2質量部未満では、十分なタックが発現しないため、ポリエステル系フィルムへの接着性が低下し、20質量部を超えると硬化後の弾性率が高くなりポリエステル系フィルムへの接着性が低下する。
【0017】
本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物で用いるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のいずれかであることが好ましく、ポリエステル系フィルムは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される、結晶性の線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステル系フィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)などが挙げられる。
【0018】
本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物には、(D)酸化防止剤を含むことが好ましく、(D)酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられ、本発明では、これらのいずれか2種類以上を併用することが好ましい。併用した場合は、耐久特性の低下、接着剤の貯蔵安定性の低下などの問題をより改善することができる。
【0019】
(D)酸化防止剤として、前記のようにフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。具体的に、フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール誘導体、2−メチル−6−t−ブチルフェノール誘導体、オクタデシル3(3,5−ジブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ペンタエリスリチル・テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2{1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−エチル}−4,6ジ−t−ペンチルフェニルアクリレートなどが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトラビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、リン酸2水素ナトリウムなどが挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、3,3−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、3,3−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス−(3−ラウリルプロピオネート)などが挙げられる。
【0020】
本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物は、一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有する液状ゴムを、重合開始剤、ポリイソシアネートの存在下に加熱撹拌することにより、相互に架橋、相溶化し、更に粘着付与樹脂、架橋剤、酸化防止剤を溶剤に溶解ないし分散させることにより、特異な効果が得られるものと考える。加熱撹拌時の加熱温度および加熱時間は使用する開始剤等によって異なるが、例えば、70〜110℃で、1〜24時間、窒素置換下で、例えばトルエン等の有機溶剤の溶液中で反応すればよい。更にこの反応後に粘着付与剤、架橋剤、酸化防止剤を溶解ないし分散することで所望の特性が得られる。
【0021】
この他に、必要に応じ、触媒、着色剤、充填剤等を添加することが可能である。
【0022】
以上述べたように、本発明は、フィルムに接着可能なフィルム貼合せ用接着剤組成物であり、建材外装用途、家電用途など様々な用途の特に耐候性が必要とされているフィルム積層に特に適している。
【0023】
この他に、本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物は、ポリエステル系フィルム以外にも、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂などを主成分とするフィルム同士の接着などにも使用することができる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明し、これらの具体例の結果を表1として示すが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。なお文中に部とあるのは全て質量部を示す。
【0025】
(実施例1)
窒素置換したフラスコ内で水酸基変性ブタジエンゴム(G−3000;日本曹達株式会社製)100部を、トルエン300部に80℃で加熱撹拌し溶解した後、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5部、脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL;日本ポリウレタン工業株式会社製)5部を配合し加熱撹拌を行った。フラスコ内を80±2℃に保ったままで3時間加熱撹拌し、約40℃に放冷後、トルエン200部、粘着付与剤(ネオポリマー120、軟化点120℃;新日本石油株式会社製)80部、フェノール系酸化防止剤(トミノックスTT;株式会社エーピーアイコーポレーション製)1部、リン系酸化防止剤(トミホス202;株式会社エーピーアイコーポレーション製)1部を加え、約1時間撹拌混合した。貼合せ直前に(C)架橋剤として脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL;日本ポリウレタン工業株式会社製)10部を混合しフィルム貼合せ用接着剤組成物(I)を得た。
【0026】
(実施例2)
窒素置換したフラスコ内で水酸基変性イソプレンゴム(Poly ip;出光興産株式会社製)100部を、トルエン300部に80℃で加熱撹拌し溶解した後、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5部、脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL)5部を配合し加熱撹拌を行った。フラスコ内を80±2℃に保ったままで3時間加熱撹拌し、約40℃に放冷後、トルエン200部、粘着付与剤(ネオポリマー120)80部、フェノール系酸化防止剤(トミノックスTT)1部、リン系酸化防止剤(トミホス202)1部を加え、約1時間撹拌混合した。貼合せ直前に脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL;日本ポリウレタン工業株式会社製)10部を混合しフィルム貼合せ用接着剤組成物(II)を得た。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様にして、窒素置換したフラスコ内で水酸基変性ブタジエンゴム(G−3000)100部を、トルエン300部に80℃で加熱撹拌し溶解した後、脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL)5部を配合し加熱撹拌を行った。フラスコ内を80±2℃に保ったままで3時間加熱撹拌し、約40℃に放冷後、トルエン200部、粘着付与剤(ネオポリマー120)80部、フェノール系酸化防止剤(トミノックスTT)1部、リン系酸化防止剤(トミホス202)1部を加え、約1時間撹拌混合した。貼合せ直前に脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL)10部を混合しフィルム貼合せ用接着剤組成物(III)を得た。
【0028】
(比較例2)
ポリウレタン樹脂(パンデックスT−5205;DIC株式会社製)100部と、メチルエチルケトン500部を常温(20℃)で撹拌し、溶解した。貼合せ直前に脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL)10部を混合しフィルム貼合せ用接着剤組成物(IV)を得た。
【0029】
(比較例3)
水酸基変性ブタジエンゴム(G−3000)100部と、アクリルポリマー(LA2250;株式会社クラレ製)10部をトルエン300部に溶解した後、シクロヘキサン200部、粘着付与剤(ネオポリマー120)80部、フェノール系酸化防止剤(トミノックスTT)1部、リン系酸化防止剤(トミホス202)1部を加え、約1時間撹拌混合した。貼合せ直前に脂肪族系ポリイソシアネート(コロネートHL)50部を混合しフィルム貼合せ用接着剤組成物(V)を得た。
【0030】
実施例1及び2、並びに比較例1〜3で得られた接着剤を用いて、次の通り試験片を作製し、はく離接着強度及び耐熱クリープ測定を行った。
【0031】
(1)試験片作製方法
得られた接着剤を、塗工機を使用し、ポリエステル系フィルム(PET、厚み50μm)上に塗布(塗布量;100g/m−wet)し、80℃に設定した乾燥炉により2分間乾燥した。接着剤付きのポリエステル系フィルムとポリエステル系フィルムを60℃に加熱したラミネーター(ラミネート速度;2m/分)に通して貼合せ接着品を得た。
【0032】
(2)初期はく離接着強度
接着品を23℃、50%RH雰囲気中に5分間養生し、20℃雰囲気中での引張試験機による180゜はく離接着強度を測定した。
【0033】
(3)高温高湿後はく離接着強度
接着品を20℃、65%RH雰囲気中に1日養生後、85℃、85%RHに設定した恒温恒湿槽に1000時間放置後、試験片を20℃、65%RH雰囲気中に1日放置した後、同雰囲気中での引張試験機による180゜はく離接着強度を測定した。
これらの試験結果をまとめて表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
比較例1は、本発明で使用する(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を1個以上含有するゴムを(b)ポリイソシアネートと(c)重合開始剤の存在下に反応させて得られる変性ゴムの、(c)重合開始剤を除いた場合であり、高温高湿後はく離接着強度は実施例と同等であるが、架橋前の分子量が低いため初期はく離接着強度が大幅に低下した。また、比較例2は、ポリエステルウレタン系接着剤を使用した場合であり、高温高湿後のはく離接着強度が著しく低下した。
比較例3は、水酸基含有ブタジエンゴムとアクリルポリマーを配合した場合であり、アクリルポリマーとスチレンブロック共重合体が均一に混合せず、外観が悪く、また初期、高温高湿はく離接着強度も低い。
これらに対して、本発明のフィルム貼合せ用接着剤組成物を用いた接着品は、初期はく離強度、高温高湿はく離強度が同等程度に高くすることが出来た。このように本発明では、高温高湿度下に長期間放置されても白濁が無く透明性に優れ、ポリエステル系フィルムの貼合わせ用に用いる接着剤組成物を提供することができる。
【0036】
(実施例3〜5)
実施例1で用いた酸化防止剤の効果を見るため、実施例1の酸化防止剤の配合のみ変化させ、表2に示すように配合し貼り合わせ接着品を得た。そして、初期はく離接着強度と高温高湿はく離接着強度を測定し、その結果をまとめて表2に示した。
【0037】
【表2】

【0038】
表2から酸化防止剤は、フェノール系、リン系のいずれでも単独では、高温高湿後のはく離接着強度を維持するのに不十分であり、2種類以上を組み合わせて用いると好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムと、(b)ポリイソシアネートと、(c)重合開始剤を(d)有機溶剤存在下に反応させて得られる(A)変性ゴムと、(B)軟化点が100℃以上である粘着付与剤、(C)架橋剤を含む、フィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項2】
(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムに対し、(b)ポリイソシアネートを、イソシアネート基の水酸基に対する比率(NCO/OH)が0.1〜0.9の間にあり(c)重合開始剤の存在下に反応させて得られる(A)変性ゴム100質量部に対し、(B)粘着付与剤を10〜150質量部、(C)架橋剤を2〜20質量部配合する請求項1に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項3】
(a)一分子中に水酸基を2個以上と2重結合を含有する液状ゴムが、イソプレンまたはブタジエンのいずれか1以上である請求項1または請求項2に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項4】
(b)ポリイソシアネートおよび(C)架橋剤が、脂肪族イソシアネートを含むポリイソシアネートである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項5】
フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のいずれかである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項6】
さらに(D)酸化防止剤を含む請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。
【請求項7】
(D)酸化防止剤が、フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤のいずれか2以上である請求項6に記載のフィルム貼合せ用接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−248439(P2010−248439A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101918(P2009−101918)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】