説明

フィルム

【課題】カップ状容器等の包装の内側に虫や虫の幼虫等が侵入することを未然に防止できるフィルム及びこのフィルムを用いた食品包装方法並びに食品包装体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の単層またはこれらの多層の熱収縮フィルム等から成るフィルム1に、孔径1μm〜200μmの脱気用の貫通孔を全面に亘り500個/cm以上の密度で形成し、ロール状にされたフィルム1を順次筒状に形成してその両縁部をヒートシールし、乾燥麺などの食品を収容した複数の容器13を所定の間隔毎に筒状のフィルム1の内側に搬送し、容器13を被覆するフィルム1の前後端部をヒートシールカッタ17により適当な寸法に切断すると同時にヒートシールし、その後フィルム1全体を加熱収縮して容器13の包装を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器入り食品の外装に使用される熱収縮性のフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカップラーメン、カップうどんやカップ焼きそばといったカップ入りインスタント食品等の包装は、通常発泡ポリスチレンや紙等から成る蓋付きのカップ状容器内に食品が収容され、容器全体が熱収縮フィルムで被覆され、このフィルムが加熱収縮されることによって行われる。
【0003】
このとき使用される熱収縮フィルムには、加熱収縮の際の脱気用の微小な貫通孔が多数穿設されており、内部の空気を効率よく外部に排出するために、従来は孔径0.5mm〜2mmの貫通孔を1個の食品の包装につき数個〜数十個程度形成している。
【0004】
【特許文献1】特開昭47−017583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したように、容器が発泡ポリスチレンや紙等により形成されており、蓋も単に嵌合しただけというものもあって、容器内部に収容されている食品の匂いが外部に漏れやすい状況にあるため、小さな虫や虫の幼虫等が漏れた匂いに惹かれて外装フィルムの脱気用の貫通孔からフィルム内側に容易に侵入するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明の課題は、カップ状容器の包装の内側に虫や虫の幼虫等が侵入することを未然に防止できる食品包装用のフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、熱収縮性を有し、容器入り食品の外装に使用される食品包装用のフィルムにおいて、孔径1μm〜400μmの貫通孔が100個/cm以上の密度で形成されていることを特徴とするフィルムを提供するものである。
【0008】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明のフィルムにおいて、前記貫通孔の孔径が1μm〜200μmであり、前記貫通孔の形成密度が500個/cm以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、請求項1にかかる発明のフィルムには、孔径1μm〜400μmの貫通孔が100個/cm以上の密度で形成されているので、貫通孔の孔径が従来の孔径0.5mm〜2mmに比べて小さいことから、容器入り食品の外装に使用した場合に、虫や虫の幼虫等がこの貫通孔を通って容器の包装の内側に侵入することを防止でき、しかも加熱収縮の際における十分な脱気効果を確保することができる。
【0010】
また、貫通孔は、脱気性能だけを考慮すると、その孔径が大きくなるほど、その形成密度を小さくすることができるので、例えば、孔径が200μm〜400μm程度の貫通孔であれば、100個/cm程度の密度で形成しておけば十分な脱気性能を確保することができる。但し、貫通孔の孔径が小さければ小さいほど、虫等の侵入防止機能が向上するため、特に、請求項2にかかる発明のフィルムのように、孔径1μm〜200μmの貫通孔を、500個/cm以上の密度で形成しておくことが望ましく、かかる構成を採用することによって、十分な脱気効果を維持しつつ、虫や虫の幼虫等の侵入をより確実に阻止することができる。
【0011】
特に、請求項2にかかる発明のフィルムを使用した場合は、貫通孔の孔径が1μm〜200μmと非常に微小であるため、これらの貫通孔を視認することは不可能であり、貫通孔の存在によって食品包装体の外観を損ねることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。ここで、図1はフィルムの斜視図、図2は図1のフィルムの断面図、図3は図1のフィルムの製造工程の説明図、図4は容器入り食品の包装状態の斜視図、図5は図4の容器入り食品の包装工程の説明図である。
【0013】
まず、図1において、1は長尺状を呈してロール状に巻回された熱収縮性を有する食品包装用のフィルムで、このフィルム1は、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の単層またはこれらの多層の熱収縮フィルム等から成り、厚さは5μm〜100μmで特に孔開加工適性からは10μm〜30μmの厚さが好ましい。
【0014】
このフィルム1には、図1,図2に示すような孔径1μm〜200μmの脱気用の貫通孔2が全面に亘り500個/cm以上の密度で形成され、これらの貫通孔2は、特公平6−61858号公報等に記載のような周知の構成の装置によって形成される。
【0015】
この種の装置は、基本的には例えば図3に示すように構成され、同図において、5は金属ロールの表面に高硬度の高分子樹脂層が被覆されて成る受けロール、6は表面に粒子径のほぼ揃った多数の合成ダイヤモンドが電着されたダイヤモンドロールで、受けロール5とダイヤモンドロール6とにより孔開前のロール状のフィルム1を挟圧しつつ両ロール5、6間を通過させると共に、受けロール5と当てロール7によりフィルム1を挟圧しつつ両ロール5、7間を通過させ、このときのフィルム1の送りは送りロール8の回転によって行われる。
【0016】
このように、受けロール5とダイヤモンドロール6とによりフィルム1を挟圧することによって、ダイヤモンドロール6の表面の合成ダイヤモンドがフィルム1に押し当てられ、フィルム1に多数の未貫通孔を含む微細孔が形成される。
【0017】
さらに、図3において、10は多数の微細な凹凸が形成された誘電体ロール、11は電極で、上記したように多数の未貫通孔を含む微細孔が形成されたフィルム1を、誘電体ロール10と電極11との間を通過させ、このときフィルム1は、誘電体ロール10から所定のギャップ長だけ離間すると同時に電極11とのギャップはゼロになるようにして誘電体ロール10、電極11間を通過させ、電極11、誘電体ロール10間にアーク放電を発生させてフィルム1の未貫通の微細孔が貫通され、多数の貫通孔2がフィルム1の全面に亘って形成されるのである。
【0018】
このとき、形成された貫通孔2の孔径が1μm〜200μmになるように、ダイヤモンドロール6に電着すべき合成ダイヤモンドの粒径、及びアーク放電の放電電圧が設定されるのは言うまでもない。
【0019】
つぎに、このようにして多数の貫通孔2が形成されたフィルム1によって、図4に示すようにカップラーメン等のカップ状容器13に収容された食品を包装するのであるが、この包装には周知のピロー包装装置が用いられ、図5に示すような工程を経て行われる。
【0020】
まず、図5に示すように、多数の貫通孔2が形成されたロール状のフィルム1が順次繰り出されてフォーマ15により筒状に形成され、この筒状のフィルム1の両縁部がヒートシールされる。一方、乾燥麺、粉末スープ及びかやくといった食品を収容し且つ蓋体によって開口を閉塞された発泡ポリスチレン等から成る複数の容器13が、所定の間隔毎に筒状のフィルム1の内側にフィルム1の送りに同期して搬送される。
【0021】
次いで、図5に示すように、容器13を被覆するフィルム1の前後端部がヒートシールカッタ17により適当な寸法に切断されると同時にヒートシールされ、その後フィルム1全体が熱風の送風等により加熱収縮されて多数の貫通孔2を有するフィルム1から成る食品包装体18による容器13の包装が完了する。ここで、フィルム1の加熱収縮の際、フィルム1の形成された多数の貫通孔2を通して容器13とフィルム1との間の空気がフィルム1の外部に排出される。
【0022】
尚、このようなカップラーメンの包装における好適な例としては、フィルム1に、孔径1μm〜80μmの貫通孔2が1000個/cm以上の密度で形成された厚さ15μmのポリプロピレン製熱収縮フィルムを使用するのが好ましい。
【0023】
ところで、貫通孔2の孔径が1μmより小さいと、フィルム1の加熱収縮時に貫通孔2を通してフィルム1と容器13との間の空気を外部に排出しにくくなる一方、貫通孔2の孔径が400μmより大きいと、貫通孔2を通して虫や虫の幼虫がフィルム1の内側に侵入し易くなるという不都合が生じる。また、貫通孔2の形成密度が100個/cmより小さいと、孔径の設定条件とも相まってフィルム1の加熱収縮時に十分な脱気効果を得ることができなくなる。
【0024】
さらに実用的には、即ち実際の食品の生産ライン上においてラインスピードの低下を招くことなく生産できる条件としては、孔径が3μm〜200μmの貫通孔2が1000個/cm以上の形成密度であることが好ましい。
【0025】
従って、上記した実施形態によれば、従来に比べて貫通孔2の孔径が1〜200μmと非常に小さいため、容器入り食品の外装に使用した場合に、虫や虫の幼虫等が貫通孔2を通ってフィルム1の内側に侵入することを防止できる上、貫通孔2を外部から視認することはほとんど不可能であり、外観を損ねることもない。
【0026】
さらに、500個/cm以上の密度で貫通孔2を形成していることから、貫通孔2の孔径の設定条件とも相まって、フィルム1の加熱収縮時に十分な脱気効果を確保することができ、フィルム1と容器13との間に空気が残存することを防止できる。
【0027】
また、この発明の他の実施形態として、フィルム1の全面にではなく、図6に示すように、フィルム1の長尺方向に沿う帯状の領域にのみ貫通孔2を形成してもよく、この場合貫通孔2の帯状領域は図6に示すような2箇所に限るものではなく、1箇所であっても或いは3箇所以上であってもよい。
【0028】
そして、このように部分的に貫通孔2を形成したフィルム1により容器を包装する場合、図7中の1点鎖線で示すように容器の上下面及び側面の各面に貫通孔2の形成領域が配置されるように包装するのが望ましい。
【0029】
このようにすると、フィルム1の加熱収縮時に容器の上下面及び側面の各面とフィルム1との間の空気を効果的に外部に排出することができ、しかもフィルム1に印刷を施す場合に、貫通孔2が形成されている部分以外に印刷を施すことによって、貫通孔2が印刷の際の支障となることもなく、良好な印刷を行うことが可能になるのである。
【0030】
なお、上記実施形態では、孔径1μm〜200μmの貫通穴2を、500個/cm以上の密度で形成しているが、貫通孔2の孔径や形成密度はこういった範囲に限定されるものではなく、孔径は1μm〜400μmの範囲内、形成密度は100個/cm以上であれば、上述したような十分な脱気効果及び防虫効果を確保することができる。例えば、貫通孔2の孔径が200μm〜400μmと比較的大きい場合は、貫通孔2の形成密度を100個/cm程度に設定しておいても十分な脱気性能を確保することができる。
【0031】
また、上記実施形態では、フィルム1の貫通孔2を形成する場合に、合成ダイヤモンドを表面に電着したダイヤモンドロール6に未加工のフィルムを押し当てることにより未貫通孔を含む微細孔を形成してアーク放電によりこの未貫通孔を貫通して1μm〜200μmの孔径の貫通孔2を形成したが、アーク放電なしに貫通孔2が得られる場合には特にアーク放電を施す必要はない。
【0032】
また、合成ダイヤモンドに代えて、その他の微細硬質粒子を用いてもよく、多数の微細な針状体によってフィルム1に貫通孔2を形成するようにしてもよい。
【0033】
特に、貫通孔2の孔径を200μm〜400μmと比較的大きく設定した場合は、ダイヤモンドロールを有する孔開部やアーク放電部を備えた孔開装置を用いることなく、針状体のみによって確実に貫通孔を形成することができるので、このような針状体によって貫通孔2を形成する場合は、フィルムに貫通孔を形成しながら容器を包装する、既存の包装装置を若干改良することで簡単に対応することができるといった効果がある。
【0034】
さらに、上記実施形態では、カップラーメンを例にとってこれを包装する場合について説明したが、この発明を適用するのに好適な例は特にカップラーメンに限られるものではなく、中身の匂いが漏れやすい材質の容器に収容される食品であるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施形態の一部の斜視図である。
【図2】同上の一部の断面図である。
【図3】同上の一部の製造工程の説明図である。
【図4】同上の包装状態の斜視図である。
【図5】同上の包装工程の説明図である。
【図6】この発明の他の実施形態の一部の斜視図である。
【図7】同上の包装状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 フィルム
2 貫通孔
13 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮性を有し、容器入り食品の外装に使用される食品包装用のフィルムにおいて、
孔径1μm〜400μmの貫通孔が100個/cm以上の密度で形成されていることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記貫通孔の孔径が1μm〜200μmであり、前記貫通孔の形成密度が500個/cm以上である請求項1に記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−107017(P2007−107017A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6637(P2007−6637)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【分割の表示】特願平10−14852の分割
【原出願日】平成10年1月8日(1998.1.8)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】