説明

フィンを螺旋階段状に配置したシェルアンドチューブ式の熱交換器

【課題】シェルの内部に流体を流す場合であっても、シェル内に設けられたフィンの表面に熱を滞留させないようにした熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換の対象となる第一流体6を通す複数の伝熱管4と、当該伝熱管4の外周部分に取り付けられる複数のフィン5と、当該複数の伝熱管4とフィン5を収容する円筒状のシェル2とを有し、当該シェル2で囲まれた胴内空間Sに第二流体7を通して前記伝熱管4内の第一流体6と熱交換させるシェルアンドチューブ式の熱交換器1において、前記フィン5をシェル2の中心軸CLを中心として放射状に分割し、扇形状となるフィン5をシェル2の中心軸CLに沿って螺旋階段状に配置する。これにより回転方向の流れ成分を形成し、シェル2とフィン5の境界部分の熱を取り除くことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管の外周にフィンを取り付けた熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シェルアンドチューブ式の熱交換器は、筒状をなすシェルと、このシェルに収容された複数の伝熱管とを有するように構成されている。そして、このような熱交換器を用いて熱交換させる場合は、伝熱管の内側に第一流体を通すとともに、シェルで囲まれた胴内空間に第二流体を通し、この第二流体によって伝熱管内の第一流体と熱交換させるようにしている。また、このようなシェルアンドチューブ式の熱交換器において、伝熱管に複数のフィンを取り付けて熱交換の効率を向上させるようにした構造のものも提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図7に示すように、シェルで囲まれた胴内空間にフィン80u、80dを上下交互に配置して第二流体を蛇行させるようにした構造のものが開示されている。また、下記の特許文献2には、図8の側面図に示すように、円筒状のシェルで囲まれた胴内空間に、リング状のフィン80oと、そのリングの中空部分に対応する円形のフィン80iを交互に配置して第二流体を蛇行させるようにした構造のものも開示されている。なお、図7や図8において太い実線で示された流れは、第二流体の流れを示すものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−310577号公報(図1)
【特許文献2】特表2002−525552号公報(図2および図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなフィンを用いて第二流体を蛇行させる場合、次のような問題を生じる。
【0006】
すなわち、上述のようにフィンを交互に設けて第二流体を蛇行させる構造では、フィンの先端部分では第二流体を流通させて熱を拡散させることができるが、フィンとシェルの境界部分S1では第二流体の流れを形成することができないため、熱が滞留してしまう。
【0007】
また、熱の拡散面積を大きくするためにフィンの枚数を多くすると、軸方向のフィンの隙間が狭くなるため、その境界部分S1の領域に第二流体が流れにくくなってしまい、余計に熱交換の効率が悪くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、シェルの胴内空間に流体を流す場合であっても、シェル内に熱を滞留させないようにした熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、熱交換の対象となる第一流体を通す複数の伝熱管と、当該伝熱管の外周に取り付けられる複数のフィンと、当該複数の伝熱管とフィンを収容するシェルとを有し、当該シェルで囲まれた胴内空間に第二流体を通して前記伝熱管内の第一流体と熱交換させる熱交換器において、前記複数のフィンをシェルの中心軸に沿って螺旋階段状に配置したものである。
【0010】
このようにすれば、第二流体をシェルの軸方向に沿って回転させることができ、その回転方向の流れ成分によってフィンとシェルの境界部分の熱を取り除くことができるようになる。
【0011】
また、このような発明において、フィンを構成する場合、シェルの中心軸を中心としてシェルの断面を放射状に分割するようなものを用いるとよい。
【0012】
さらに、フィンを螺旋階段状に配置する場合、伝熱管の軸方向に沿って互いにオーバーラップさせないようにする。
【0013】
このようにすれば、隣接するフィンとフィンの隙間を狭くした場合であっても、第二流体の流れを阻害するようなことがなくなる。
【0014】
加えて、シェルを円筒状に構成するとともに、フィンを扇形に構成する。
【0015】
このように構成すれば、第二流体を螺旋状に通していく場合に、円筒状のシェルとフィンの境界部分における熱をシェルの内壁に沿って流すことができるようになる。
【0016】
また、フィンを配置する場合、第二流体の螺旋状の流れ方向に沿って傾斜させるように配置させる。
【0017】
もしくは、当該フィンの一部に、第二流体の流れ方向に沿って傾斜させた傾斜部を設けるようにすることもできる。
【0018】
このように構成すれば、傾斜したフィンや傾斜部によって第二流体をスムーズに流すことができ、シェルとフィンの境界部分における熱の滞留を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、熱交換の対象となる第一流体を通す複数の伝熱管と、当該伝熱管の外周に取り付けられる複数のフィンと、当該複数の伝熱管とフィンを収容するシェルとを有し、当該シェルで囲まれた胴内空間に第二流体を通して前記伝熱管内の第一流体と熱交換させる熱交換器において、前記複数のフィンをシェルの中心軸に沿って螺旋階段状に配置したので、第二流体をシェルの軸方向に沿って回転させることができ、その回転方向の流れ成分によってフィンとシェルの境界部分の熱を取り除くことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における熱交換器の側面概略図
【図2】図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、D−D断面図
【図3】同形態における概略斜視図
【図4】同形態におけるフィン表面の第二流体の流れを示す図
【図5】他の実施の形態における傾斜したフィンを示す図
【図6】他の実施の形態における熱交換器と胴内流入口との関係を示す図
【図7】従来例におけるシェルアンドチューブのフィンを示す側面図
【図8】従来例におけるシェルアンドチューブのフィンを示す側面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。この実施の形態における熱交換器1は、図1に示すように、シェルアンドチューブ式の熱交換器1であって、円筒状をなすシェル2と、そのシェル2の内部に収納された複数の伝熱管4と、その伝熱管4の軸を横切るように設けられる複数のフィン5とを有して成るものである。そして、特徴的には、シェル2の断面において中心軸CLを中心としてフィン5を扇形に分割し、そのフィン5をシェル2の中心軸CLの方向に沿って螺旋階段状に配置したものである。以下、本実施の形態におけるシェルアンドチューブ式の熱交換器1の構成について詳細に説明する。
【0022】
この熱交換器1を構成するシェル2は、円筒状をなすものであって、その両端に熱交換の対象となる第一流体6を流入させるための第一流入口33や、熱交換された第一流体6を排出させるための第一排出口34を設けている。この第一流入口33や第一排出口34の奥方にはヘッダ壁面31が設けられており、そのヘッダ壁面31と第一流入口33との空間、および、ヘッダ壁面31と第一排出口34との空間でヘッダ3を構成するようにしている。
【0023】
一方、伝熱管4は、熱交換の対象となる第一流体6を内側に軸方向に流通させるようにしたものであって、熱伝導率の高い金属部材で構成される。この伝熱管4は、ヘッダ壁面31に設けられた複数の孔部32に挿入されて溶着されており、これによって、ヘッダ3に流入した第一流体6を伝熱管4内に分岐して流入させるようにしている。なお、この実施の形態では、伝熱管4として円筒状の部材を用いるようにしているが、その外側表面に凹凸を設けたり、あるいは、内側壁面に凹凸を設けたりすることによって、表面積を確保するようにしてもよい。
【0024】
これら左右のヘッダ壁面31とシェル2によって囲まれた領域には、図1に示すように、密閉された胴内空間Sが形成されている。この胴内空間Sは、伝熱管4内の第一流体6と熱交換をさせるための第二流体7を流通させるようにしたもので、シェル2の一方に設けられた胴内流入口21から第二流体7を流入させ、シェル2の軸方向にその第二流体7を流通させた後、他方側の胴内排出口22から排出させるようにしている。
【0025】
このような構成において、シェル2内の伝熱管4の外周には複数枚のフィン5が取り付けられる。このフィン5は、熱伝熱性の高い金属板などによって構成されるもので、この実施の形態では、図2や図3に示すように、シェル2の中心軸CLを中心としてシェル2の内壁で囲まれた断面を放射状に分割した扇形に構成されている。このフィン5には、伝熱管4を通すための複数の孔部51が形成されており、この孔部51に伝熱管4を挿入させて、伝熱管4に溶着できるようになっている。伝熱管4にフィン5を溶着する場合は、フィン5の孔部51と伝熱管4との隙間をロウ付けし、高温で加熱することによって溶着される。なお、ここではフィン5の形状として、シェル2の断面を四分割した形状(すなわち、中心角が約90度の扇形状)のものを用いるようにしているが、螺旋階段状に配置できるようなものであればどのような形状(例えば、三分割もしくは五分割以上の扇形状)であってもよい。
【0026】
この分割されたフィン5を伝熱管4に取り付ける場合、図2に示すように、まず、扇形のフィン5(第一のフィン5)を伝熱管4に取り付ける。このとき、シェル2の中心軸CLを中心とした任意の角度に第一のフィン5を取り付ける。そして、第二のフィン5を、第一のフィン5の位置から一方向に回転させた状態で取り付ける。第二のフィン5を取り付ける場合は、第一のフィン5と若干オーバーラップさせるようにしてもよく、あるいは、第一のフィン5とオーバーラップさせないようにしてもよい。第一のフィン5とオーバーラップさせないようにした場合は、第一のフィン5と第二のフィン5との間隔を狭くした場合であっても、第一のフィン5と第二のフィン5との間に僅かな隙間を形成することができ、そこから多くの第二流体7を通すことができる。これによって、フィン5の枚数を多くすることができるとともに、熱の拡散面積を大きくすることによって熱交換の効率を向上させることができる。この第二のフィン5を取り付けた状態では(図2のB−B断面)、軸方向に見た場合に、半円状をなすように第一のフィン5および第二のフィン5が取り付けられており、残る半円状の部分が開口した状態となっている。なお、図2では、フィン5とフィン5の間には極僅かな隙間が設けられている。
【0027】
次に、このように第二のフィン5を取り付けた後、第三のフィン5を伝熱管4に取り付ける。この第三のフィン5を取り付ける場合も同様に、第二のフィン5と同一方向に90度回転させた角度で伝熱管4に取り付ける。第三のフィン5を取り付けた状態では、軸方向に見た場合に、シェル2の胴内空間Sの3/4の部分に第一から第三のフィン5が取り付けられており、残る1/4の部分が開口した状態となっている(図2のC−C断面)。
【0028】
以下、同様に、同一方向に第四のフィン5以降のフィン5を回転させて(図2のD−D断面)螺旋階段状に取り付けていく(図3)。このようにすれば、胴内流入口21から第二流体7を流入させた場合、螺旋状に第二流体7を流通させることができる。このように螺旋状に第二流体7を流通させた場合の状態を図4に示す。
【0029】
第二流体7をシェル2の胴内流入口21から流入させると、伝熱管4の軸方向に沿って螺旋状に流れていく。このとき、その螺旋状に流れる第二流体7によって、伝熱管4の軸方向への流れ成分と、回転方向への流れ成分が形成される。このとき、回転方向の流れ成分によって、フィン5とシェル2と境界部分に蓄積された熱をそのフィン5の表面方向に沿って移動させて取り除くことができる。これに対して、従来のように(図7や図8)、シェルの軸方向にのみ第二流体を流す場合は、フィンとシェルの境界部分S1に流れを形成することができず、熱が蓄積してしまうというデメリットがある。
【0030】
<第二の実施の形態>
【0031】
上記実施の形態では、フィン5を伝熱管4の軸方向に対して直角に取り付けるようにしているが、図5(a)に示すように、伝熱管4の軸方向に対して傾斜させるようにフィン5を取り付けてもよい。このようにフィン5を傾斜させる場合、フィン5の孔部51を若干大きく形成しておき、伝熱管4を挿入した後、そのフィン5を流れ方向に沿って傾斜させて固定するとよい。このようにフィン5を傾斜させて固定すると、その傾斜方向に沿ってよりスムーズに第二流体7を螺旋状に流すことができる。
【0032】
あるいは、図5(b)に示すように、フィン5の端部(半径をなす辺)にのみ流れ方向に沿って傾斜させた傾斜部52を設けるようにしてもよい。このような傾斜部52を設けることによっても、その傾斜部52によって第二流体7をスムーズに螺旋状に流すことができるようになる。
【0033】
このように上記実施の形態によれば、熱交換の対象となる第一流体6を通す複数本の伝熱管4と、当該伝熱管4の外周部分に取り付けられる複数のフィン5と、当該複数の伝熱管4とフィン5を収納するシェル2とを有し、当該シェル2の胴内空間Sに第二流体7を通して前記第一流体6と熱交換させる熱交換器1において、前記フィン5をシェル2の中心軸CLを中心として放射状に分割し、当該フィン5を伝熱管4の軸方向に沿って螺旋階段状に配置したので、第二流体7をシェル2の軸方向と回転方向に流すことができ、回転方向の流れ成分によってフィン5とシェル2の境界部分の熱を取り除くことができる。
【0034】
また、伝熱管4の軸方向に沿って隣接するフィン5を、伝熱管4の軸方向に沿って互いにオーバーラップさせないように配置すれば、隣接するフィン5とフィン5の隙間を狭くした場合であっても、第二流体7の流れを阻害するようなことがなくなる。
【0035】
さらに、シェル2を円筒状に構成するとともに、フィン5を扇形に構成したので、シェル2の内壁に沿って螺旋状に第二流体7を流すことができ、円筒状のシェル2とフィン5の境界部分における熱の滞留を防止することができる。
【0036】
また、フィン5を螺旋状の流れ方向に沿って傾斜させ、あるいは、フィン5の一部に、螺旋状の流れ方向に沿って傾斜させた傾斜部52を設けるようにすれば、よりスムーズに第二流体7を螺旋状に流すことができるようになる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、シェル2を円筒状に形成したが、断面矩形状をなす筒状にしてもよい。
【0039】
また、上記実施の形態では、扇形状のフィン5を用いるようにしているが、正方形状や長方形状をなすフィン5を螺旋階段状に配置するようにしてもよい。あるいは、シェル2の中心軸CLを中心として放射状に分割するのではなく、シェル2の中心軸CLを中心として螺旋状に流れを形成できるような形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0040】
さら、上記実施の形態では、胴内流入口21をシェル2における中心軸CLの真上に設けるようにしているが、図6に示すように、中心軸CLから離れた位置に設けるようにしてもよい。このようにすれば、胴内流入口21から第二流体7を入れる際に、自然に螺旋状の渦を形成することができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・熱交換器
2・・・シェル
21・・・胴内流入口
22・・・胴内排出口
3・・・ヘッダ
31・・・ヘッダ壁面
32・・・孔部
33・・・第一流入口
34・・・第一排出口
4・・・伝熱管
5・・・フィン
51・・・孔部
S・・・胴内空間
6・・・第一流体
7・・・第二流体
8u、8d、8o、8i・・・フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換の対象となる第一流体を通す複数の伝熱管と、当該伝熱管の外周部分に取り付けられる複数のフィンと、当該複数の伝熱管とフィンを収容するシェルとを有し、当該シェルで囲まれた胴内空間に第二流体を通して前記伝熱管内の第一流体と熱交換させる熱交換器において、
前記複数のフィンをシェルの中心軸に沿って螺旋階段状に配置したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
熱交換の対象となる第一流体を通す複数の伝熱管と、当該伝熱管の外周部分に取り付けられる複数のフィンと、当該複数の伝熱管とフィンを収納するシェルとを有し、当該シェルで囲まれた胴内空間に第二流体を通して前記第一流体と熱交換させる熱交換器において、
前記フィンをシェルの中心軸を中心として放射状に分割して構成し、当該フィンを伝熱管の軸方向に沿って螺旋階段状に配置したことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
前記螺旋階段状をなす方向に沿って隣接するフィンを、伝熱管の軸方向に沿って互いにオーバーラップさせないように配置した請求項1もしくは2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記シェルが円筒状に構成されるものであり、前記フィンが扇形に構成されるものである請求項1もしくは2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記フィンが、前記第二流体の螺旋状の流れ方向に沿って傾斜させるように配置されるものである請求項1もしくは2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記フィンが、前記第二流体の螺旋状の流れ方向に沿って傾斜した傾斜部を設けるようにしたものである請求項1もしくは2に記載の熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−172907(P2012−172907A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35272(P2011−35272)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(508345081)株式会社CKU (17)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】