説明

フィン推進用の並進往復台

揺動フィン4を用いる海上推進機構。該機構は、推進力を推進力源10からフィン4に伝達する往復台3を備える。往復台3を揺動させるように第1の回転軸17を有する推進力源10によって駆動される、揺動手段が設けられる。フィン4は第2の回転軸6回りに回転可能であり、第1の回転軸12が第1の回転軸6と共に角度αを形成する。フィンは2つの接続点5、16を介して往復台3に接続される。揺動手段は、2つの往復台3間に介在させることができ、システムにフライホイール効果を与える。往復台にかけられる力は、往復台3を通じて伝達され、軸受け9によって負担される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用いる推進手段が羽ばたき式及び横方向並進式のフォイル又はフィンを含む、海上船舶用の推進システムに関する。
【0002】
一態様によると、本発明は、水と相互作用するフォイル又はフィンによって推進する海上船舶用の推進機構に関する。
【0003】
フィン又はフォイルは、海上船舶の長手方向軸に対して実質的に横方向に並進するように駆動される。
【0004】
この機構は特に、
第1の回転軸を形成する出力軸を有する少なくとも1つの推進力源と、
海上船舶の船体内に設けられ、推進力源から推進力をフィン又はフォイルに伝達する、少なくとも1つの往復台と、
特にクランクを含む、往復台の並進を行う手段と、
上記フィン又はフォイルを往復台に接続すると共に、該フィン又はフォイルを第2の回転軸回りに制御式回転させる、装置と、
を備える。
【0005】
往復台は好ましくは、船舶の船体内部に設けられ、揺動手段又は並進手段を介して、推進力の少なくとも一部を発生させる少なくとも1つのエネルギー源に接続される。
【0006】
船舶の船体は、水と相互作用するフォイル又はフィンの他に、必要な全ての技術的手段を含めた推進システムを収容していることを理解せねばならない。
【背景技術】
【0007】
[背景]
特にひれを揺動させることによって水中で移動及び遊泳する魚類及び海棲哺乳類は、現今の海上船舶よりも高い推進効率で動くことが認識されている。
【0008】
ひれによる推進の技術的な等価物は、これまで海上船舶において実施されていない。
【0009】
本発明は、船の下の1つ又は複数のフィンの、1つの周期的な並進運動と、できれば、1つの周期的な回転運動との組合せに基づいた、効率的且つ動作可能な羽ばたき式推進を容易に実現する重要な実用的要素である。
【0010】
魚尾の揺動の動きを、フィンの回転によって、又は、海棲哺乳類及びマグロ科の魚類の場合に当てはまるように、尾部のフィンの少なくとも1つの周期的な並進と1つの周期的な回転との組合せによって、シミュレートして発生させることができる。
【0011】
現今、ほとんど全ての水上船舶は、サイズ、航海速度及び用途にかかわらず、1つ又は複数の回転式の推進要素によって推進する。
【0012】
例えばプロペラ、ジェット、ダクトプロペラ又はポンプジェット等の推進要素は、各自の軸回りに回転する。より大きい船舶では、プロペラは約50rpm〜500rpmで回転する。
【0013】
プロペラは特定用途に対し入念に設計される。
【0014】
設計者の重要な一目的は、船舶の全体的な燃料消費を抑えることである。これは、船体の形態、推進プラント及び推進要素等の複数のパラメータの入念な設計によって達成される。
【0015】
現今の最も効果的なプロペラの効率が80%を超えることは稀であり、実際には、30%〜70%の効率が一般的に認められるが、不必要にパワープラントが大規模となり、燃料消費が増大する。
【0016】
したがって、上述の不都合点を踏まえ、十分に動作性があると共にローテクが改善されていながら高効率である海洋推進システムの有用性は明らかである。
【0017】
[背景技術]
揺動フィンによる推進は、回転式プロペラ及び本来のステアリングよりも効率が高いこと(これにより、関連するコスト及び関連する信頼性に問題のある別個の舵の必要性が排除される)等、魅力的な特徴を有し、さらに、荷物収容室の増加に備え船体内部の容積を遮るものがない。衝撃損失、流体力学的摩擦損失、誘導抗力の損失、及び、船体自体にかかる抗力が低くなることにより、より高い効率が達成され、その結果、燃料消費が低減し、原動機用の設置型の動力が小さくなるか、又は、同じ設置型の推進力及び燃料消費のままで航海速度が高くなる。
【0018】
フィンを揺動する重要な試みは、大幅な機械的摩擦損失を回避することにあり、且つ、回転式プロペラに匹敵する信頼性及び安全性を提供することにある。
【0019】
1995年3月28日に公開の特許文献1(TRIANTAFYLLOU他)は、羽ばたきフォイルを用いる推進システムを開示している。少なくとも1つのフォイルを用いるシステムを教示しているこの特許は、フォイルが船舶の航行方向に対して横方向に揺動すると共に垂直軸回りに回転可能に揺動する推進システムを開示している。好ましくは、特許文献1によれば、推進システムは、位相を異にして揺動する結果として航行方向に対して横方向の推進要素の推力がわずかである複数のフォイルから形成される。
【0020】
偶数のフォイルを用いる場合、好ましくは、フォイルの半数がフォイルのもう半数と位相を180度異にして揺動する。例えば、3つのフォイルが用いられる場合、フォイルは互いに位相を120度異にして揺動する。
【0021】
特許文献1に開示されている推進システムの機械的実施の形態の主な特徴を以下に説明する。
【0022】
図4A、図4B、図5A、図5B及び図5Cが、特許文献1によるフォイル推進システムの一実施の形態を示している。推進システムは2つのフォイル(10)から形成され、フォイルはそれぞれ、シャフト(34)を介して船体(30)の後部のスリット(36)を通ってテーブル(40)に接続される。図4Aに見られると共に矢印(38)で示されるように、スリット(36)の範囲は、フォイルの全最大ヒーブ振幅よりも大きい。図4Bに最もよく見られるように、各テーブル(40)には2つ以上のホイール又はローラ(42)が前方下面及び後方下面に取り付けられており、ホイール又はローラは船体(32)に取り付けられている対応トラック(44)に載置される。したがって、テーブル(40)及び該テーブル(40)に取り付けられているフォイル(10)は1つの軸(38)に沿って両方向のどちらにも自由に動き、任意の他の方向への運動から固定されている。
【0023】
最終的に、特許文献1によるシステム機構は船体(32)内に形成されている複数のスリット(36)を通じて作動し、スリットはそれぞれ、航行前方方向へ船舶に対して横方向であり、スリット(36)の範囲はフォイルの横方向運動範囲を超えている。フィンはまた、船の移動方向に関して回転がフォイルの角度に実質的に影響を与えるように配置された軸の回りに動力下で回転する。開示されている回転軸は全て、実質的に垂直な軸として形成されている。さらに、フィンは別個のモータによって駆動され、モータもまた、実質的に垂直な軸の回りに回転する。
【0024】
ここまで、特許文献1による教示を海上船舶の推進における限られた実用的な用途に限って見てきた。
【0025】
2005年4月12日に公開の特許文献2(LIU)は、潜水艦用の推進システムを開示している。特許文献2は、フォイル部材の「マグロ型」の動きに基づいた推進を教示している。フォイル部材が船体に取り付けられ、互いに接離するように往復揺動することで、該フォイル部材間で水を圧縮することにより前方移動が生じるようになっている。特許文献2は、水上船舶用にフィン推進の採用を提案していない。
【0026】
特許文献3(R. R. SAIL INC)は、水線よりも下に延在している推進手段を有する船のための推進手段を教示している。推進手段は、船の中心長手軸線に対してほぼ横断方向に円弧軌道に沿って揺動運動するようになされた1対の羽根部材から成る。該推進手段に動力を入力するための(動力付与)手段が推進手段に動作可能に連結されている。羽根部材は、円弧軌道に沿っての両方向いずれの方向の運動中においても船の長手軸線に対して前方推力を発生するための迎え角を形成するようにねじれる。
【0027】
特許文献2(LIU PENGFEI他)は、無人潜水艦等の船舶の所望の方向移動を達成するのにフォイル部材の「マグロ型」の動きに基づいた推進システムを教示している。一対のフォイル部材が船体に取り付けられ、互いに接離する揺動運動を繰り返すことで、フォイル部材間の流体媒体の圧縮と該フォイル部材の後方の圧縮流体の排除により前方移動が生じるようになっている。各フォイル部材は船体に対する限られた回転運動のためにピボットシャフトに取り付けられる。推進システムの動作中、流体媒体によってフォイル部材にかけられた流動力学的負荷を制振トルクがオフセットするように制振手段がそれぞれピボットシャフトとその関連のフォイル部材との間に接続される。制振手段は動作中にフォイル部材のピッチ角を制御するが、このことは、ゼロの前進速度での移動の際に剛性フォイル部材に対し推力が生じることを意味する。
【0028】
2003年4月3日に公開された特許文献4(Inocean)は、推進又はエネルギー回収に正弦波運動パターンを用いるシステムを提案している。このシステムは複数の剛性の船体要素を備え、該船体要素は一列に配置されると共に、該船体要素の列の長手方向寸法にわたって、平行な回転軸回りに回転するように互いに回転可能に取り付けられる。このシステムはさらに、船体要素同士を互いに対して回転させる運動機構、又は、船体要素同士を互いに対して回転させる結果としてエネルギーを回収する運動機構を備える。
【0029】
2006年4月13日に公開された特許文献5(Clavis Biopropulsion)は、少なくとも1個の横方向並進フィンを備える装置を提案している。この装置は、フィンの実質的に自由な振動を可能にする作動手段及び駆動手段を含む。装置は、サイクルの数だけ駆動手段によって確立される衝撃状の力によって動作し、駆動手段がもたらす振動のエネルギーを蓄えるのにバネを用いている。
【0030】
現今の既知のフィン推進システムには多数の根本的な不備が含まれ、それらのいくつかは以下である:
フィンに起因する反力、揺動部又は並進部に起因する加速力及び減速力、並びにシステムに誘引される船体の反力を含めた、揺動手段又は並進手段の作用力から生じる、横平面内の実質的な力が、最小限の摩擦損失で船体によって安全に且つ信頼性高く最小限にとどめられると共に吸収される、解決策を教示していないこと、また、
船体にかかる反力を含めた推進力から生じる、縦平面内の実質的な力が、摩擦損失が制限された安全且つ信頼性高い方法で船体に伝達される、解決策を教示していないこと。
【0031】
さらに、従来技術は、推進力源が海上船舶用の従来の機関であり、その機関が推進システムに直接又は間接に機械的に連結される、横方向並進フィン推進システムを提案していない。揺動式推進部材の所要の並進速度は高く、時に10m/秒に達する。特定用途に応じて、システムにかかる重力は、揺動式推進システムの動作用の非常に剛性の高い支持構造の必要性を実現する5Gに容易に達し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第5,401,196号明細書
【特許文献2】米国特許第6,877,692号明細書
【特許文献3】国際公開第99/06272号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/026954号パンフレット
【特許文献5】国際公開第06/038808号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、上記に開示したような既知の横方向並進式及び羽ばたき式のフォイル又はフィンを用いているが、本発明に従って、従来技術に比して異なる寄与及び利点をもたらす動作可能な機構である、推進機構を明示することである。利点のいくつかは以下である:
船舶の基線に実質的に平行に向いたクランクシャフトを有して配置されている典型的な2ストローク又は4ストローク船舶用機関を、フィン推進と共に適用することができるようにする単純な且つ信頼性高いシステムであって、フィンが船舶の長手方向軸に対して横方向に並進して駆動される、システムを提供すること、並びに、
以下:
a)水と推進相互作用する手段、
b)システム自体に起因する力、及び
c)船体の撓みに起因する力
の1つ又は複数に起因する実質的な力と協働することができるシステムを提供すること。
【0034】
本明細書の導入部分に記載の推進システムを構成することにより、特に推進力源の出力軸の第1の回転軸がフィン又はフォイルの第2の回転軸と角度(α)を形成することで、上述の明らかな利点がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0035】
さらに、一実施の形態によると、推進力源の第1の回転軸は、上記船舶の上記長手方向軸に対して実質的に平行であり、フィン又はフォイルの第2の回転軸は、角度(α)が90度+/−45度以下、例えば10度+/−30度、さらには90度+/−20度であるように配向される。
【0036】
一実施の形態によると、フィン又はフォイルは、少なくとも2つの接続点を介して往復台に接続されることで、フィン又はフォイルを第2の回転軸回りに回転させる。
【0037】
一実施の形態によると、推進機構は、一方が他方の前に配置される少なくとも2つの往復台を備え、1つ又は複数の往復台の並進を行う手段は、少なくとも2つの往復台間に少なくとも部分的に介在される。
【0038】
一実施の形態によると、往復台の並進を行う手段の少なくとも一部は、推進機構にフライホイール効果を与える。
【0039】
一実施の形態によると、船体、フィン又はフォイル、及び、往復台の並進を行う手段によって、少なくとも1つの往復台にかけられる力と、力の結果として得られるモーメントとが、往復台を通じて少なくとも部分的に伝達又は送達され、少なくとも2つのベアリングによって負担される。
【0040】
一実施の形態によると、往復台はフィン又はフォイルの回転運動を適用する手段を収容する。
【0041】
一実施の形態によると、フィン又はフォイルを回転させる手段は、フィン又はフォイルと水との間に、船舶を推進させる最適な又は所望の迎え角が得られるように制御される。
【0042】
一実施の形態によると、1つ又は複数の往復台は1つの、好ましくは単一の推進力源から動力を与えられる。
【0043】
一実施の形態によると、往復台はフィン又はフォイルを収容せずに設けられる。
【0044】
本発明の別の態様によると、本明細書の教示による推進機構によって海上船舶を推進させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】羽ばたき式のフィン又はフォイルによる推進用に製造された海上船舶の主要断面側面図である。
【図2】図1による海上船舶の主要上面図である。
【図3】本発明による推進機構を組み込んでいる海上船舶の主要横断面図である。
【図4】本発明による推進機構を組み込んでいる海上船舶の推進プラントの主要断面側面図である。
【0046】
上記図面に開示されている要素は相互に且つ都合上縮尺されており、例示目的だけを果たす。
【発明を実施する形態】
【0047】
[図を参照しながらの発明の詳細な説明]
図1は、船体2内に設けられる機関室又は推進プラント20を備える、海上船舶1の側面断面図を示す。フィン又はフォイル2の形態の推進手段が推進プラント20よりも下の領域から延在していることが分かる。推進手段の少なくとも一部は、通常動作条件下では水線30よりも下に沈んでいる。
【0048】
図2は、図1による海上船舶の断面上面図を示す。
【0049】
図3は、海上船舶1の機関室又は推進プラント20中の横断面図である。揺動式又は並進式の往復台3が船体2に設けられ、フィン又はフォイル4の形態の推進手段に接続されている。
【0050】
図4は、本発明による推進機構を示す主要断面側面図である。
【0051】
往復台3は一方の部分において、該往復台3を揺動又は横方向並進させることができる手段を介して、第1の回転軸17を画定する出力軸を有する推進力源10に接続される。
【0052】
往復台3は別の部分が、既に上述したようにフィン又はフォイル4に接続される。
【0053】
フィン又はフォイル4は少なくとも2つの接続点5、16を介して往復台3に接続される。接続点5、16は軸受けを構成することで、フィン又はフォイル4を第2の回転軸6回りに回転させることができる。
【0054】
第1の回転軸17は第2の回転軸6と共に角度α(図4に示す)を形成する。
【0055】
実施形態に応じて、角度は鈍角、鋭角又は平角とすることができる。角度αは、推進力を発生させる機関10のクランクシャフトによって画定される実質的に水平な線17に対するフィン又はフォイル4の傾斜によって実質的に画定される。
【0056】
伝達される回転式の推進力の軸17とフィン又はフォイル4との間の角度形成により、慣例的且つ経済的に立証された信頼性高い利用可能なエネルギー源から動力を与えられるフィン又はフォイルによって推進を実現する上での強い要望が果たされる。
【0057】
推進力は、1つ又は複数の機関、例えば低速機関又は中速機関に起因し得る。さらに、ガス、蒸気又はさらには核エネルギーによって動力を与えられるあらゆる種類のタービンを用いる発明を実現することも可能である。
【0058】
推進手段4は、上記で既に提案したように、揺動式又は横方向並進式のフィン又はフォイルを用いるフィン推進による推進に適したフィン又はフォイルを構成する。
【0059】
推進手段4の特性は、本明細書の導入部分のとおりに動作した場合に推力の最適な発生が達成されるように選択することができる。
【0060】
往復台3は、推進手段4を枢動又は回転させる手段7を収容し得る。手段7は複数の異なる構成の形態、例えば電動モータ又は油圧モータ、ラム、ばねを含めた機械的リンク等とすることができる。
【0061】
往復台3は、該往復台3を揺動又は横方向並進させることができる手段8の一部を形成してもよく、例えば、回転可能な伝達要素に接続されるクランク構成の一部を形成してもよい。
【0062】
図3及び図4は、特に、被駆動ホイール11の上に位置する駆動ホイール8を含む、揺動又は横方向並進手段を示す。揺動又は横方向並進手段は、駆動ホイール8が被駆動ホイール11の下、内側又はさらには側面に位置する実施形態において等しく有益であることを立証している。
【0063】
駆動ホイール8及び被駆動ホイール11は、歯付きホイール(相互接続しているか又はしてない)、摩擦ドライブ、ベルト/チェーンドライブ又は任意の他の適した駆動機構
を構成してもよい。
【0064】
さらに、往復台3の揺動又は横方向並進手段と推進力源10との間にオフセットギア(図示せず)を介在させることで、所望の箇所に推進力源を配置することが可能となる。
【0065】
往復台3は、シール構造がシール及び仕切り、すなわち船体2の内部を船体2の外部の環境から分離する手段として動作する、シール構造の一部を形成してもよい。
【0066】
往復台3は、一体部品若しくは部材として又は相互接続される部品として、軟鋼、高張力鋼、ステンレス鋼又は任意の他の適した材料(繊維強化プラスチック若しくは繊維強化金属等)で製造することができる。さらに、往復台3は任意の適したプロファイル、例えば管状部材の溶接構造、開口ウェブ、又はさらには、非鋼材料で製造されるハニカム構造で製造することができる。
【0067】
一実施形態によれば、2つの推進システム、すなわちそれぞれ左舷側と右舷側が海上船舶の船体内に設けられる。
【0068】
システムは、横方向並進又は揺動手段の一部を形成し得るトランスミッションに直接又は間接に連結される2ストローク低速主機関を構成することができる1つの推進力源10によって駆動され得る。
【0069】
システムは、図2に示すように、船舶1において長手方向にオフセット配置され得る。システムのオフセットは、シール手段を横方向並進又は揺動させる空間の提供を含め、往復台5のヒーブ運動のための空間を提供し得る。
【0070】
1つの往復台3にそれぞれ作用する2つのクランクをさらに備え得る揺動手段が、図4に見られるように往復台3間に介在される。さらに、揺動手段は該機構にフライホイール効果を与え得る。
【0071】
追加のフライホイール(個別であるか又は個別でない)を、システムにさらに設けてもよい。
【0072】
任意のフライホイールを、適宜1つ又は複数のギアによって駆動し、1つ又は複数の継手又はクラッチを介してシステムに連結してもよい。
【0073】
システムが作動すると、推進力源が第1の歯付きホイール8(第2の歯付きホイール11と係合している)を回転させる。
【0074】
2つのホール8、11は共に、その適性が種々のパラメータ、例えば、選択主機関の特性及び推進要素の選択特性等、から決定され得るギアを形成することができる。
【0075】
第2の歯付きホイール11には、摺動装置13に接続することができるジャーナル12を後側及び前側に180度の角変位を有して設けてもよい。
【0076】
摺動装置13は、往復台3に堅く結合される摺動バー14と摺動可能に相互接続される。
【0077】
第2の歯付きホイール11が回転すると、摺動装置13が摺動バー14に沿って長さ方向に操作されると共に、結果として起こる横断は、往復台3を揺動又は並進させ、それによって推進力が推進手段4を介して周囲に伝達される。
【0078】
上記の好ましい実施形態は、本発明自体の範囲を限定するものと決して見なされ得るものではない。
【0079】
船体2、推進手段4及び揺動又は横方向並進手段が往復台3にかける力は、結果として得られるそのモーメントを含め、往復台3を通じて少なくとも部分的に伝達され、少なくとも2つの軸受け9によって負担される。軸受け9は便宜上、少なくとも2つの制限された自由度を有し得る。
【0080】
船体2及び推進要素4が往復台3にかける力の成分は、縦平面内で、往復台3のいかなる構造も基準モーメントの1/5未満の関連モーメントを受けるように、往復台3を通じて伝達され得る。縦平面内の力は、船体に比して少なくとも2つの制限された自由度を有する少なくとも2つの軸受けによって負担される。
【0081】
本発明による推進システムは、複数の構成下で海上船舶の船体2内に配置されるか又は設けられることができ、それらの複数の構成のいくつかは以下である:
A.図2に示すように、左舷側のシステム及び右舷側のシステムが長手方向にオフセットされ、
B.上記2つのシステムは並置されるか、又は一方が他方の前に全体的又は部分的に長手方向に配置され、
C.一つの単一システムが船舶の長手中心線8に実質的に配置される。
【0082】
本発明による推進機構は、別の構成をさておき1つの構成に決して限定されない。
【0083】
船体に作用する力、例えば、推進システムの部材の加速(すなわち振動)に起因する力を、周囲に伝達される推進力の横成分(すなわち水力)と共に、相殺又は平衡させることができることが好ましいため、2つ以上のシステムを含む実施形態は、いくつかの特定の実施形態で、1つの推進システムしか含まないシステム(上記の項目C)に比して好ましいであろう。
【0084】
上記の項目Cによる実施形態では、船体にかかる力をいくつかの特定の構成により相殺/平衡させることができる。
【0085】
平衡の問題は、2つの要素に分割し得る2つの局面を含む:
質量(すなわち、推進システムの部材)の加速に起因する横方向の力を平衡/相殺させること、及び
水力に起因する横方向の力を平衡/相殺させること。
【0086】
さらに、平衡の問題は、往復台3に必要とされるエネルギーサイクル(制御式に与えられ得る)が一定の成分と大きな振幅の揺動成分とを有するため、エネルギー的な局面も含み得る。
【0087】
振動の問題は、質量、位相ずれ、振幅及びできれば水力の入念な選択により、不都合な横方向の力を大幅に相殺する、第2の並進要素又は往復台(フィンを有するか又は有さない)を設けることによって解決することができる。
【0088】
エネルギー的な局面に関する問題は、フィン又はフォイル4と水との相互作用によって生じる横方向の力を相殺することができる下記の2つの提案によって解決することができる:
質量のある2つの並進要素を設けることであって、該並進要素は、互いに振動を平衡させることで、高調波エネルギー特性を有するシステムを構成し、そのエネルギーサイクルがシステム(往復台及び衝撃カウンターウェイト)のエネルギーサイクルと逆の位相になるようにその位相ずれを選択し、それにより、一サイクルの全体を通してエネルギー供給の際に振動が制限される必要がある大規模なシステムを構成し、また、したがって、ディーゼルエンジン、電気ドライブ等のような従来の動力源によって駆動されることができる、2つの並進要素を設けること、又は
スライダにより往復台3に接続されるクランクシャフトに接続され得るシステムに少なくとも1つのフライホイールを設けることであって、該フライホイールは必要に応じてシステム(往復台+衝撃カウンターウェイト+電源)にエネルギーを貯蔵又は供給することで、往復台の調和した並進を伴うクランクシャフトの実質的に一定の回転速度を確実にする、少なくとも1つのフライホイールを設けること。
【0089】
衝撃が大きいであろう際に平衡させることが同様に好ましい振動は、フィンを逆に動かすことによるのではなく質量によって平衡させることができる。
【0090】
振動の局面に関する問題は、往復台/並進要素の加速/減速によって生じる力を相殺する、第2の並進要素又は往復台によって解決することができる。この並進要素又は往復台は或る質量を有し、質量加速と入念に選択した往復台3との位相ずれとに起因する横方向の力を揺動させることを実証し、この揺動により、収容された推進手段4を含めた上記往復台5から発生する横方向力を少なくとも部分的に相殺する。
【0091】
さらに、振動の問題は平衡の問題と同様に、種々の質量及び種々の半径のような種々の機械的特性を有する装置によって相殺してもよい。
【0092】
上述の通り、推進要素4の回転又は枢動は手段7によって達成することができる。手段7は、羽ばたき式のフォイル又はフィンを、効果的な推進のためにフィンが平均して船体の周りの水の流れと並進要素又は往復台5の並進速度とによって生じる見かけの流れ角よりも小さくピッチングするように制御し、それにより、フィンに対する流れによって生じる揚力が前方推進の場合に平均して前方に向けられるようにすることができる。
【0093】
定義
横平面:フィンの回転軸と往復台の平均揺動方向とによって画定される平面。この平面は、前方又は後方に傾いていてもよく、左舷側又は右舷側にわずかに面していてもよい。
【0094】
縦平面:上下方向と横平面の法線方向とによって画定される平面。
【0095】
基準モーメント:揺動手段によってかけられる最大力にフィンのスパンを乗算することから得られる値。
【0096】
本明細書において使用されている場合の「含む(comprises/comprising/comprised of)」という語は、述べられている特徴、整数、ステップ又は部材の存在を具体的に挙げるために用いられているのであって、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、部材又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことを強調しておく。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上船舶の長手方向軸に対して実質的に横方向に並進するように駆動される、水と相互作用するフィン又はフォイル(4)、によって推進する前記海上船舶用の推進機構であって、特に、
第1の回転軸(17)を形成する出力軸を有する少なくとも1つの推進力源(10)と、
前記海上船舶の船体(2)内に設けられ、前記推進力源(10)から前記推進力を前記フィン又はフォイル(4)に伝達する、少なくとも1つの往復台(3)と、
特にクランクを含む、前記往復台(3)の並進を行う手段(8)と、
前記フィン又はフォイル(4)を前記往復台(3)に接続すると共に、該フィン又はフォイル(4)を第2の回転軸(6)回りに制御式回転させる、装置と、
を備え、
前記第1の回転軸(17)と、前記フィン又はフォイル(4)の前記第2の回転軸(6)は、角度(α)をなしていることを特徴とする、推進機構。
【請求項2】
前記推進力源(10)の前記第1の回転軸(17)は、前記船舶の前記長手方向軸に対して実質的に平行であり、前記フィン又はフォイル(4)の前記第2の回転軸(6)は、前記角度(α)が90度+/−45度であるように配向される、請求項1に記載の推進機構。
【請求項3】
前記フィン又はフォイル(4)は、少なくとも2つの接続点(5)、(16)を介して前記往復台(3)に接続されることで、該フィン又はフォイル(4)を前記第2の回転軸(6)回りに回転させる、請求項1又は2に記載の推進機構。
【請求項4】
少なくとも2つの往復台(3)を備え、一方の往復台(3)が他方の往復台(3)の前に配置される、請求項1に記載の推進機構。
【請求項5】
前記往復台(3)の並進を行う前記手段(8)は、2つの往復台(3)間に少なくとも部分的に介在される、請求項4に記載の推進機構。
【請求項6】
前記往復台(3)の並進を行う前記手段(8)の少なくとも一部は、前記推進機構にフライホイール効果を与える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の推進機構。
【請求項7】
前記船体(2)、前記フィン又はフォイル(4)、及び、前記往復台(5)の並進を行う前記手段(8)によって、少なくとも1つの往復台(3)にかかる力と、前記力の結果として得られるモーメントが、前記往復台(3)を通じて少なくとも部分的に伝達又は送達され、少なくとも2つのベアリング(9)によって負担される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の推進機構。
【請求項8】
前記往復台(3)は前記フィン又はフォイル(4)の回転運動を適用する手段(7)を収容する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の推進機構。
【請求項9】
前記フィン又はフォイル(4)を回転させる前記手段(7)は、該フィン又はフォイル(4)と水との間の迎え角であって、前記船舶を推進させる最適な又は所望の迎え角が得られるように制御される、請求項8に記載の推進機構。
【請求項10】
1つ又は複数の前記往復台(3)は1つの推進力源(10)から動力を与えられる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の推進機構。
【請求項11】
少なくとも1つの往復台は前記フィン又はフォイル(4)を収容せずに設けられる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の推進機構。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の推進機構によって、海上船舶を推進させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506172(P2011−506172A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537421(P2010−537421)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067125
【国際公開番号】WO2009/074578
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507094902)