説明

フィン推進装置

流体中で推進を行う推進装置であって、フィン軸棒に固定される少なくとも1つの推進フィンと、推進フィンを駆動する手段であって、クランクシャフト、推進フィンをフィン軸の軸線回りに回転させるピッチ機構、及び、フィン軸棒の軸線に対してほぼ横方向に推進フィンを並進させるヒーブ機構を備え、クランクシャフトがピッチ機構及びヒーブ機構を駆動する推進フィンを駆動する手段とを備える推進装置が提供される。単純で信頼性高く且つ効率的な構造が、クランクシャフトの単一のクランク、又は、クランクシャフトの回転軸に対して実質的に同じ半径及び角度位置を有する2つの分離されたクランクに取り付けられるヒーブ機構及びピッチ機構の双方を有することによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用いられる推進手段が羽ばたき式又は揺動式の翼又はフィンを有する海上船舶用の推進システムに関する。
【0002】
一態様によれば、本発明は海上船舶の船体内に設けられる推進装置に関する。
【0003】
本装置は、フィン軸に固定される少なくとも1つの横方向並進推進フィンを備える。フィンを駆動する手段が、クランクシャフト、フィンをフィン軸の軸線回りに回転させるピッチ方向揺動機構、並びに、フィン軸の軸線及び船舶に対して実質的に横方向にフィンを並進させるヒーブ方向揺動機構を備える。
【背景技術】
【0004】
推進システムは、長年にわたり、特に、海上船舶を推進させることに用いられており、最も用いられている最近の推進システムは回転式のスクリュープロペラ推進である。しかしながら、回転式のスクリュープロペラ推進システムは、非常に信頼性高く且つ単純な構造を提供するとしても、通常条件下ではさほど高い効率を提供しないため、その不都合を解消するために代替的な推進システムが提案されている。
【0005】
この紹介において認識する類の機構は、効率増加、ノイズ低減等、種々の利点を得るために、以前から回転式のスクリュープロペラ推進の代替形態として提案されている。
【0006】
特許文献1は、特に、次のような推進システムを開示しており、すなわち1以上の推進フィンが配置され、選択された速度方向に推進を行うように操作される。フィンはヒーブ機構とピッチ機構を組み合わせて用いることによって操作され、その際、ヒーブ機構が選択方向に対して実質的に横方向に推進フィンを揺動させ、ピッチ機構が同じ速度方向に対してそのピッチ角を変えるようにピボットを中心にフィンを羽ばたかせる。
【0007】
特許文献1によれば、従来の回転式のスクリュープロペラ推進システムが提供するものに対しこのシステムを使用することによって、推進効率の著しい増加を得ることができる。この効率増加は、ヒーブ機構とピッチ機構の組合せ運動を最適化することによってもたらされ、そのため、フィンが魚のヒレに非常によく似たパターンで動くように操作される。
【0008】
著しい効率増加をもたらすために、特許文献1によって提案されているもののようなフィン推進システムが提案されているとしても、かかるシステムは、例えば推進機構の複雑性から、推進、特に海上船舶の推進には広く商用されていない。したがって、かかる推進システムを引き続きさらに開発する必要がある。
【0009】
特許文献2は、フィンの並進によって推進する水上自転車を教示しており、ここでは、並進機構及び/又はヒーブ機構がピッチ機構も含めて単一のクランクに取り付けられる。限られた対称性の下で動作する機構が周囲に露出し、さらに、機構の一部が水位線よりも下に沈む。
【0010】
特許文献3は、水平方向又は垂直方向に配置されたフィンによって動作するユニバーサルフィン駆動機構を教示している。
【0011】
特許文献4は、ボートの軸に平行である2つの平行な長手部材を有するベーンを揺動させるフレームを備えるボート推進システムを教示している。複数のベーンが長手方向に且つ位相を異にして動き、それらの端部が揺動リンクによって接続される。前方リンクが、エンジンに接続することができるレバーを有し、平行な長手部材の後方リンクが中間リンクによってパドル翼に接続される。中間リンク及びパドル翼は可撓性であってもよく、又は中間リンクを或る角度で移動させるバネ付きピボットがあってもよい。
【0012】
2003年4月3日に公開された特許文献5は、推進又はエネルギー回収に正弦波運動パターンを用いるシステムを提案している。このシステムは剛な複数の船体要素を備え、該船体要素は一列に配置されると共に、該船体要素の列の長手方向寸法にわたって、平行な回転軸回りに回転するように互いに回転可能に取り付けられる。このシステムはさらに、船体要素同士を互いに対して回転させる移動装置、又は、船体要素同士を互いに対して回転させる結果としてエネルギーを回収する移動装置を備える。
【0013】
2006年4月13日に公開された特許文献6は、少なくとも1個の横方向並進フィンを備える装置を提案している。この装置は、フィンのほぼ自由な振動を可能にする作動手段及び駆動手段を含む。この装置は、多くのサイクルの各々において、駆動手段によって確立される衝撃を利用して作動し、駆動手段によりもたらされるパルス状のエネルギーを蓄えるのにバネを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,401,196号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第1330218号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2849027号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102004004236号明細書
【特許文献5】国際公開第03/026954号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/038808号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、推進システムであって、その構造が信頼性高く且つ単純であると同時に該システムを従来の回転式のスクリュープロペラによって可能であるよりも高い効率に最適化するオプションを提供する、推進システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、推進装置は流体中で推進を行うように、特に海上船舶の推進用に提案される。推進システムは、少なくとも1つの推進フィンと該推進フィンを駆動する手段とを備える。
【0017】
推進フィンを駆動する手段は、クランクシャフト、推進フィンをフィン軸棒の軸線回りに回転させるピッチ機構、および船舶の長手方向軸に対してほぼ横方向に、かつフィン軸の軸線に対してほぼ横方向に推進フィンを並進させるヒーブ機構を備え、クランクシャフトがピッチ機構及びヒーブ機構の双方を駆動する。
【0018】
ヒーブ機構およびピッチ機構は双方ともクランクシャフトによって関節式に連結され、該クランクシャフトはその単一のクランク、または、その回転軸に対してほぼ同じ半径および角度位置を有する分離されたクランクによって、ヒーブ機構及びピッチ機構に接続される。
【0019】
したがって、ヒーブ機構とピッチ機構が双方ともクランクシャフトの同じクランク又はほぼ同一のクランクに接続されるため、本発明は、ヒーブ機構とピッチ機構が組み合わさることから非常に単純な構造を提供し、一方で、比較的少ない数の分離された部品から成る構造を有するオプション、他方で、その比較的対称な運動パターンにより、推進システムを、従来のプロペラ推進システムが提供するものよりも高い効率で動作するように最適化するオプションを提供する。
【0020】
好ましい実施の形態では、推進フィンはフィン軸棒によって往復台に取り付けられることで、フィン軸棒及びフィンがその軸線回りに往復台に対して回転することが可能となる。往復台はクランクシャフトに対して往復する方向に揺動することができるようにクランクシャフトに対して摺動可能に取り付けられる。
【0021】
ヒーブ機構は往復台をクランクシャフトのクランクに接続し、ピッチ機構はフィン軸棒をクランクシャフトのクランクに接続する。
【0022】
本発明は、ヒーブ機構とピッチ機構が双方とも共通のプッシュ/プルロッドによって提供される場合に特に有利であり、該プッシュ/プルロッドは、一端が駆動シャフトのクランクに接続され、他端が往復台に回転可能に接続されるフィンピッチ軸棒に剛に結合されると共に該軸に対してほぼ横方向に延在することで、クランクシャフトが回転すると往復台をクランクシャフトに対して往復するよう揺動させるように駆動すると同時にフィンピッチ軸棒を回転させるように駆動する。これにより、分離させるべき部品数を非常に少ない数まで削減できる。
【0023】
代替的な好ましい実施の形態では、ヒーブ機構は往復台内のスロット、及び、該スロットに摺動可能に配置される、クランクシャフトのクランクを含み、ピッチ機構はピッチャロッドを含み、該ピッチャロッドは、一端がフィン軸棒の軸線に対してほぼ横方向にフィン軸棒に接続されると共に、他端がクランクシャフトのクランクに取り付けられ、また、該ピッチャロッドは入れ子式であるか、又は、フィンピッチ軸若しくはクランクにスライドブシュを介して接続されることで、フィン軸棒とクランクとの間の距離を変えるように補正し、また、クランクシャフトが回転するとヒーブ機構が往復台をクランクシャフトに対して往復するよう揺動させるように駆動すると同時にピッチ機構がフィンピッチ軸棒を揺動自在に回転させるように駆動する。これにより、フィンに伝達されるヒーブ力が主としてヒーブ機構によって伝達され、ピッチ力がピッチ機構によって伝達される。これにより、ピッチ力がヒーブ力に比して非常に小さい場合にピッチ機構の構造がより軽量となる可能性が提供される。
【0024】
さらなる実施の形態では、比較的少ない数の分離された部品からなる非常に単純な構造であれば、フィンピッチ軸棒及びフィン軸棒は共通である。
【0025】
好ましい代替的な実施の形態では、ピッチ機構はフィンピッチ軸棒をフィン軸棒に接続する同期リンクを含み、この同期リンクは、フィン軸棒の回転をフィンピッチ軸棒の回転と同期させるように配置される。これによって、より多くのフィンを同じフィンピッチ軸棒及びピッチ機構に接続することが可能であり、フィンの位置を特別の必要性に適合させる(例えば設計を海上船舶の船体内の限られたスペースに配置すべく適合させる)、より多くの自由も提供する。
【0026】
上述のプッシュ/プルロッド又はピッチャロッドをフィンピッチ軸棒に剛に結合してもよいが、有利な実施の形態では、プッシュ/プルロッド又はピッチャロッドとフィンピッチ軸棒との接続部が、フィンピッチ軸棒とプッシュ/プルロッド又はピッチャロッドとの間の角度を調整する手段を備える。これにより、操舵の場合に必要とされる推力方向の変更等、フィン角度を特別な必要性に合わせて調整する単純な方法が提供される。
【0027】
非常に単純な、したがって好ましい実施の形態では、フィン軸棒はフィンピッチ軸棒に平行である。
【0028】
代替的に、フィン軸棒を好ましくはフィンピッチ軸棒に対しほぼ横方向に配置することができ、そのため、駆動部の設計を特別な必要性に適合させる(例えば、設計を海上船舶の船体内の限られたスペースに配置すべく適合させる)可能性が提供される。
【0029】
さらに好ましい実施の形態では、推進システムは、同じフィンピッチ軸棒に単一の同期リンクを介して接続される2つ以上のフィンを備え、そのため、分離された部品の数が比較的少ない数に保たれる。
【0030】
本発明の別の目的によれば、本明細書の教示による推進装置によって船を推進させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるフィン推進システムを備える船の概略側面図である。
【図2】図1に示す船の概略上面図である。
【図3】図1及び図2による推進システムの単一のフィンの詳細側面図である。
【図4】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図5】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図6】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図7】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図8】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図9】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【図10】本発明による推進システム用の機械的駆動部の種々の好適な主要な実施形態の1つを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、推進を行うフィン2を有する船1の概略側面図を示す。かかるフィンは、船又は任意の他の海上船舶における推進システムだけでなく他の推進目的にも用いられることがよく知られており、フィン推進システムの一般的記載は、特に、参照により本明細書に援用される特許文献1の要約書に開示されている。
【0033】
図2は、図1による船の上面図を示し、ここでは、3つのフィン2から成る2つのセットが船1に対する推進を行うように配置される。フィン2の数及びフィン2のセット数は、本発明から逸脱しない限り、特別な船舶に必要とされる推進に適合すべく提案され得るが、これらの図面に示すように、推進中に船体に作用する横方向の力を相殺するために逆の位相で動作するフィンを対にして配置することが好ましい。
【0034】
例えば、特許文献1に開示されているようなフィン推進の一般原理に従って、フィン2は船から水中に延在するように配置され、図示の実施形態では、フィン2は船1の船体から開口部7を通って水線4よりも下に延在している(図3)。しかしながら、他の実施形態(これらの図面に示さず)では、フィン2は代替的に船から水線4よりも上のどこかの水面に延在していてもよい。図2及び図3によれば、フィン2はそれぞれ、該フィン2から往復台5内に延在するフィン軸棒6によって往復台5に取り付けられることで、各フィン2がフィン軸棒6回りに往復台5内で回転することができることが示されている。各往復台5は、該往復台を摺動させると共に船の中心線8に対しほぼ横方向に往復運動させるスライドによって船の船体2に摺動可能に取り付けられる。
【0035】
図2に示すように、各往復台は複数のフィン2に対応し得る。
【0036】
フィン2を船の中心線に対して横方向に往復運動させることと同時に各フィン2をそのフィン軸棒6回りに回転させるように駆動することを組み合わせた動きによって、船に対する推進効果を得ることができ、船の中心線8に対するその横方向運動に比してフィン角を制御することによって、船の非常に効率的な且つ/又は静かな推進の可能性が提供される。
【0037】
図3は、船1の船体から水中に延在している1つのフィン2を詳細に示す。上述したように、フィン2は本発明のこの好ましい実施形態では水位線4よりも下に配置されるため、往復台5が、船体の開口部7をシールするシール板又はシール往復台5を含む。
【0038】
本発明によれば、フィン2の駆動システムの複数の種々の主要な実施形態が図4から図10中に開示される。
【0039】
これらの実施形態の全てに共通していることは、該実施形態が全て、その長手方向軸線13回りに回転すると共に、ヒーブ駆動機構及びピッチ駆動機構の双方をそれぞれ駆動するクランク10を有する、クランクシャフト9を有することである。
【0040】
クランク10は、本発明によれば、単一のクランク、又は、クランクシャフト9の中心軸13に対する角度位置及び半径に関してほぼ同一の2つのクランクを含み得る。
【0041】
本発明によれば、種々の実施形態は全て、スライド12に摺動可能に配置される往復台5と、少なくとも1つのフィン2とをさらに有する。
【0042】
推進効果により、図示の実施形態に従って、矢印すなわちマーク17で示した方向に船が押されるか又は推進する。
【0043】
図4は、本発明による推進システムの特に単純な且つ信頼性高い構造を示し、ここでは、往復台5の往復運動14とフィン2のピッチングが双方とも単一のプッシュ/プルロッド15によって行われ、該プッシュ/プルロッド15は、一端がクランクシャフト9のクランク10に接続されると共に他端がフィン軸棒6に剛に結合される。
【0044】
クランクシャフト9が矢印16で示すように回転すると、プッシュ/プルロッド15が、従来の燃焼機関のピストンロッドと同様の往復台5に作用すると同時にフィン2をそのフィン軸棒6を介して回転させる。これにより、ヒーブ駆動機構とピッチ駆動機構が双方ともプッシュ/プルロッドによって駆動される。
【0045】
図5は、本発明の代替的な実施形態を示し、ここでは、図4によるプッシュ/プルロッドの代わりにピッチロッド18が配置される。
【0046】
ピッチロッド18は、クランク10にスライド接続部19を介して取り付けられることで、クランクシャフト9及びクランク10が回転するとスライド接続部19内で摺動することが可能となる。この実施形態では、ピッチロッド18はピッチ駆動機構だけを駆動し、それによって、フィン軸棒6へのその剛な結合を介してフィン2のピッチングだけを行う。
【0047】
ヒーブ駆動機構はこの実施形態ではクランク10に摺動可能に接続されるスロット21によって提供され、そのため、クランクシャフト9が回転すると往復台5が矢印14で示すように往復運動するようになっている。
【0048】
図6から図8は全て、図5に示すのと同じ主要な駆動機構を示すが、これらの代替的な実施形態では、フィン2の位置及び/又はフィン2の数はヒーブ駆動機構及びピッチ駆動機構の設計を変えずに変更することができる。これは、同期リンク22、23をピッチ駆動機構に加えることによって達成され、そのため、ピッチ軸棒20に剛に結合されているピッチロッド18が同期リンク22、23を強制してフィン軸棒6を回転させ、それによって、フィン2を回転させる。
【0049】
リンク22、23の長さを選択することによって、特定の目的のためにギア接続を得ることができる。
【0050】
同期リンク22、23をピッチ駆動機構に加えるという原理は、本発明から逸脱することなく、図4に示す実施形態に用いることもでき、これも同じ結果を有する。
【0051】
図9は、本発明のさらなる代替的な実施形態を示し、ここでは、角度のヒーブ駆動部及びピッチ駆動部は図4に示すのと同じであるが、フィン2とプッシュ/プルロッド15との間の角度をリニアモータ24、例えば、フィン軸棒6に剛に結合されるプッシュ/プルロッド15とピッチングロッド25との間に配置される油圧ピストンによって調整することができる。この配置を、プッシュ/プルロッド15の代わりにピッチャロッド25を有することによって上述の実施形態に適合させることも可能であることは明らかである。これにより、特定の目的のために一又は複数のフィン2とピッチャロッド又はプッシュ/プルロッドとの間の角度を最適化することができ、そのため、特に、一又は複数のフィン2を往復台5の動きに並行するように位置付けすることで、著しい推進効果を達成しないようにすることもできる。
【0052】
プッシュ/プルロッド15又はピッチャロッド25の角度に対するフィン2の角度位置を調整する他の代替形態が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0053】
図10は、本発明の別の代替的な実施形態を示し、ここでは、ギア接続部26がフィン軸6とフィンピッチ軸棒20との間に配置されることで、フィン2がフィンピッチ軸20に対して或る角度で延在することが可能となる。かかるギア接続部は種々の実施形態で設けることができるが、図10はもっぱらギア接続部を密閉ギアボックスとして開示する。図10は、フィン軸棒6がフィンピッチ軸棒20に対して横方向に配置されることを示すが、ギア接続部をフィン軸棒6とフィンピッチ軸棒20との間に他の角度をもたらすように配置することができることは明らかである。この実施形態では、速度方向17は図4から図9に示すものとは異なる。
【0054】
上記の説明では、本発明をその推進効果に関して説明している。しかしながら、任意のフィン推進システム、したがって本発明によるフィン推進システムもまた、発電に用いることもできることは当業者には明らかである。この理由は、所定の流速/船速で、システム機構がクランクシャフトの臨界速度以下で発電機として、また、クランクシャフトの臨界速度以上でプロペラとして挙動するであろうことによる。これにより、システムによる発電の可能性が提供される。
【0055】
さらに、ヒーブ方向は、意図する主要な推力方向に対して十分な角度である限り、例えば水平方向(魚類のように)及び鉛直方向(イルカのように)を含め、任意の方向であってもよいが、垂直方向が若干有利である。ピッチ軸は述べた方向のどちらの場合にも十分な角度を有するものとするが、垂直方向が若干有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上船舶の船体(1)内に設けられる推進装置であって、
フィン軸棒(6)に固定される少なくとも1つの横方向並進推進フィン(2)と、
前記フィン(2)を駆動する手段であって、クランクシャフト(9)と、前記フィン(2)を前記フィン軸(6)の軸線回りに回転させるピッチ機構と、前記フィン軸棒(6)の前記軸線及び前記船舶に対してほぼ横方向に前記フィン(2)を並進させるヒーブ機構とを備え、前記クランクシャフト(9)は前記ピッチ機構および前記ヒーブ機構を駆動する前記フィン(2)を駆動する手段とを備え、
前記ヒーブ機構および前記ピッチ機構の両方は、前記クランクシャフト(9)上の単一のクランク(10)または前記クランクシャフト(9)の回転軸棒(13)に対してほぼ同じ半径および角度位置を有する2つの分離されたクランクに接続されることを特徴とする推進装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推進装置であって、
前記フィン軸棒(6)は往復台(5)に取り付けられ、該往復台(5)により該フィン軸棒(6)と共に前記フィン(2)をその軸線回りに前記往復台(5)に対して回転させ、および前記往復台(5)は前記クランクシャフト(9)に対して摺動可能に取り付けられ、その際に前記ヒーブ機構は前記往復台(5)を前記クランクシャフト(9)のクランク(10)に接続し、前記ピッチ機構は前記フィン軸棒(6)を前記クランクシャフト(9)の前記クランク(10)に接続することを特徴とする推進装置。
【請求項3】
請求項2に記載の推進装置であって、
前記ヒーブ機構及び前記ピッチ機構は共通のプッシュ/プルロッド(15)、(18)によって提供され、該プッシュ/プルロッド(15)、(18)は一端で前記駆動シャフトの前記クランク(10)に接続され、その他端で前記往復台(5)に回転可能に接続されるフィンピッチ軸棒(20)に取り付けられると共に該フィンピッチ軸棒(20)からほぼ横方向に延在し、前記クランクシャフト(9)が回転すると該プッシュ/プルロッド(15)、(18)は前記往復台(5)を前記クランクシャフト(9)に対して往復するよう揺動または並進させ、それと同時に前記フィンピッチ軸棒(20)を回転させるように駆動することを特徴とする推進装置。
【請求項4】
請求項2に記載の推進装置であって、
前記ヒーブ機構は、前記往復台(5)内のスロット(21)と、該スロット(21)に摺動可能に配置される前記クランクシャフト(9)の前記クランク(10)とを有し、
前記ピッチ機構は一端で前記フィンピッチ軸棒(20)に取り付けられると共に該フィンピッチ軸棒(20)からほぼ横方向に延在し、他端で前記クランクシャフト(9)の前記クランク(10)に取り付けられるピッチャロッド(18)を有し、
前記ピッチャロッド(18)は伸縮自在であるか、または前記フィンピッチ軸棒(20)若しくは前記クランクにスライドブシュ(19)を介して接続され、前記フィン軸棒(6)と前記クランク(10)との間の距離を変えるように補正し、前記クランクシャフト(9)が回転すると前記ヒーブ機構が前記往復台(5)を前記クランクシャフト(9)に対して往復するよう揺動または並進させるように駆動すると同時に前記ピッチ機構が前記フィンピッチ軸棒(20)を回転させるように駆動することを特徴とする推進装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の推進装置であって、
前記フィンピッチ軸棒(20)と前記フィン軸棒(6)は共通であることを特徴とする推進装置。
【請求項6】
請求項3または4に記載の推進装置であって、
前記ピッチ機構は、前記フィンピッチ軸棒(20)を前記フィン軸棒(6)に接続する同期リンク又はギア接続部(22)を有し、該同期リンク(22)は前記フィン軸棒(6)の回転を前記フィンピッチ軸棒(20)の回転と同期させるように配置されることを特徴とする推進装置。
【請求項7】
請求項2または4に記載の推進装置であって、
前記装置は、前記フィンピッチ軸棒(20)と前記プッシュ/プルロッド(15)、(18)又は前記ピッチャロッド(15)、(18)との間の角度を調整する手段を備えることを特徴とする推進装置。
【請求項8】
請求項6に記載の推進装置であって、
前記フィン軸棒(6)は前記フィンピッチ軸(20)に平行であることを特徴とする推進装置。
【請求項9】
請求項6に記載の推進装置であって、
ギア接続部が前記フィン軸棒(6)と前記フィンピッチ軸棒(20)との間に配置され、前記フィン軸棒(6)がゼロから前記フィンピッチ軸棒(20)までの角度で配置されることを特徴とする推進装置。
【請求項10】
請求項6に記載の推進装置であって、
同じ前記フィンピッチ軸棒(20)に1つ以上の同期リンク(22)を介して接続される2つ以上のフィンを備えることを特徴とする推進装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の推進装置であって、
前記ヒーブ機構及び前記ピッチ機構は、前記クランクシャフト(9)の単一のクランク(10)、または該クランクシャフト(9)の前記回転軸(13)に対してほぼ同じ半径および角度位置を有する2つの分離されたクランクに接続される推進装置によって船を推進させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−506173(P2011−506173A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537422(P2010−537422)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067127
【国際公開番号】WO2009/074580
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507094902)