説明

フェンス乗越え具

【課題】 従来の携帯足場に比べてより持運びに容易なフェンス乗越え具を提供すること。
【解決手段】 フック部材2の載置部11がフェンス50の上縁部51に載置されると、当該上縁部51が各挟み部12により挟み込まれて、フック部材2がフェンス50の上縁部51に跨乗されて引っ掛けられる。このとき、ベルト部材3の両端部は、その一方側がフェンス50の手前側に、その他方側がフェンス50の向こう側に、それぞれ垂れ下げられる。さすれば、利用者は、フェンス50の手前側にある足掛環4に自分の一方の片足を載せ掛けて、フェンス50によじ登り、フェンス50の向こう側にある足掛環4に自分の他方の片足を載せ掛けて、よじ降りられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンスを乗り越える際に足場として使用することができるフェンス乗越え具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フェンスを乗り越える際の足場としては、主に脚立が使用されていたところ、脚立は大きく嵩張ることから、下記特許文献1に記載されたフェンス用携帯足場が提案されている。このフェンス用携帯足場(以下単に「携帯足場」という。)は、上端部にフックが設けられた一対の支柱間に踏み板を折畳み可能に連接したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3060018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の携帯足場は、従来の脚立に比べれば随分と小型化されていることから持運びに嵩張らないものではあるものの、携帯足場のほぼ全体が硬質かつ頑丈な金属材料で形成されているため、軽量のアルミ材を使用しているとはいえ、支柱や踏み板が未だ大きく嵩張ることも否めず、持ち運びに不便であり、その携帯性の面において問題点がある。
【0005】
また、フェンスの背が高い場合に、フェンスの上縁部にフックを引っ掛けたとき、支柱長が短いと、どうしても踏み板の高さが高くなり、踏み板に足を載せて乗り上がり難くなり、フェンスを乗り越えにくくなる。その一方で、逆に支柱長を長くしてしまうと、今度は、携帯足場自体が大型化してしまい、更に持ち運びに不便となるという問題点もある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、上記した従来の携帯足場に比べてより持運びに容易なフェンス乗越え具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1のフェンス乗越え具は、フェンスの上縁部に着脱自在に掛着可能に形成されるフック部材と、そのフック部材に係合され当該フック部材から延設されて垂下可能に形成される柔軟性を有したベルト部材と、そのベルト部材の先端部に設けられ環状に形成される足掛環とを備えている。
【0008】
なお、本発明における柔軟性とは、折る、曲げる、畳む、撓めるなどの作用により変形され、その変形により破壊又は破損することもなく、変形後も元どおりの形態に復元され、この復元後の機械的性質が変形前と実質的に変化しない程度の柔軟性であって、例えば、折り畳まれた紐、布、織物が、その機械的性質を劣化させることなく、元どおりの形態に復元可能な性質をいう。
【0009】
この請求項1のフェンス乗越え具によれば、フック部材がフェンスの上縁部に掛着されることによって、ベルト部材は、フェンスの上縁部から垂下される。このベルト部材の垂下によって、当該ベルト部材の下端部(先端部)に形成される足掛環がフェンスの上縁部と地面との間の高さに吊り下がって配置される。さすれば、足掛環の内周に足を掛けて、この足掛環を足場にしてフェンスを乗り越えられる。
【0010】
また、前もってフェンス乗越え具を2個携行しておき、各フェンス乗越え具のフック部材をフェンスの上縁部に引っ掛け、フェンスの手前側及び向こう側の双方にベルト部材を垂下させて足掛環をそれぞれ別々に吊り下げ配置させる。さすれば、フェンスの手前側にある一方の足掛環に足を掛けてフェンスによじ登った後、フェンスの向こう側にある他方の足掛環に足を掛けてフェンスからよじ降りることもできる。
【0011】
ここで、特許文献1では、その明細書の記載ぶりから推測して、携帯足場が一台しかないような場合、携帯足場を手前側に掛けてフェンスによじ登った利用者がフェンスの上に跨ったまま、携帯足場をフェンスの手前側から向こう側に吊り下げ直すことを示唆しているように思料する。
【0012】
この従来の携帯足場は、脚立に比べれば小さいとは言うものの、支柱に対して踏み板が折り畳まれるに過ぎず、支柱及び踏み板自体がコンパクト化されるものではなく、全体としてはそれなりの大きさがあって嵩張るものでことから、これをバランスのとりにくいフェンスの上で抱えて上げて吊り下げ直すことは極めて困難と言わざるを得ない。
【0013】
したがって、フェンスにおける手前側と向こう側との双方に足場が必要な場合には、結局は、フェンスの両面にそれぞれ別々に従来の携帯足場を吊り下げる必要があり、そうなれば当然に携帯足場が2台必要となることから、更に嵩張ってしまい持ち運びに不便となる。
【0014】
これに対し、本フェンス乗越え具は、そのベルト部材が柔軟性を有していることから、当該ベルト部材を折り畳むことができ、携帯用のポーチやバッグに入れて携行移動することもでき、なおかつ、折り畳んだ後でも元どおり延ばしてフェンスの乗り越えに使用することができるものであるため、仮に2個のフェンス乗越え具を同時に持ち歩くとしても、嵩張ることなく容易に同時携行することができる。
【0015】
請求項2のフェンス乗越え具は、請求項1のフェンス乗越え具において、前記フック部材は、フェンスの上縁部に載置可能に形成される載置部と、その載置部の両端から延設されフェンス上縁部を挟み込む一対の挟み部とを備えており、前記ベルト部材は、そのフック部材の各挟み部の先端部から延設される。
【0016】
この請求項2のフェンス乗越え具によれば、請求項1のフェンス乗越え具と同様に作用する上、フック部材は、その載置部がフェンスの上縁部に載置され、その一対の挟み部によってフェンスの上縁部が挟み込まれる。そして、一対の挟み部の先端部からそれぞれベルト部材が延設されることによって、フェンスの手前側及び向こう側の双方に、ベルト部材が各々垂下され、かつ、足掛環がベルト部材を介して各々吊り下げ配置される。
【0017】
さすれば、フェンスの手前側に吊り下がっている一方の足掛環の内周に足を掛けて、この足掛環を足場にしてフェンスによじ登り、フェンスを跨いだ後、フェンスの向こう側に吊り下がっている他方の足掛環の内周に足を掛けて、この足掛環を足場にしてフェンスをよじ降りることができる。
【0018】
請求項3のフェンス乗越え具は、請求項2のフェンス乗越え具において、前記ベルト部材は、その長手方向中間部分が前記フック部材の載置部に跨る格好で掛けられて前記フック部材の各挟み部の先端部から延設される一本ものであって、その長手方向両端部に前記足掛環がそれぞれ設けられ、前記フック部材の各挟み部に対して係合されている。
【0019】
請求項4のフェンス乗越え具は、請求項1から3のいずれかのフェンス乗越え具において、前記足掛環は柔軟性を備えている。
【0020】
請求項5のフェンス乗越え具は、請求項1から4のいずれかのフェンス乗越え具において、前記足掛環は、前記ベルト部材の先端部に連接される頂角部分を有した二等辺三角形状又は正三角形状の三角環状体に形成されている。
【0021】
請求項6のフェンス乗越え具は、請求項5のフェンス乗越え具において、前記足掛環は、前記三角環状体の底辺部分が足裏を当接可能な面状の足踏み面となっている。
【0022】
請求項7のフェンス乗越え具は、請求項4に従属する請求項5に従属する請求項6のフェンス乗越え具において、前記足掛環のうち前記三角環状体の前記底辺部分は、その足掛環における他の部分に比べて肉厚に形成されて曲げ強さが補強されている。
【0023】
請求項8のフェンス乗越え具は、請求項7のフェンス乗越え具において、前記ベルト部材及び足掛環は、柔軟性を有する織物ベルトにより形成されており、その足掛環は、前記三角環状体の前記底辺部分が2枚以上の前記織物ベルトを重畳接合することにより肉厚に形成される。
【発明の効果】
【0024】
請求項1のフェンス乗越え具によれば、長くて嵩張るベルト部材を折り畳んだ状態にして、当該乗越え具を小振りの携帯用のポーチやバッグに入れて持ち運ぶことができるので、嵩張ることなく手軽に携行できるという効果がある。このため、仮に、上記したように2個のフェンス乗越え具を同時に持ち運ぶような状況にあっても、従来のように嵩張る携帯足場を2台持ち運ぶ場合に比べれば、嵩張ることなく極めて容易に同時携行できるという効果がある。
【0025】
請求項2のフェンス乗越え具によれば、請求項1のフェンス乗越え具の奏する効果に加え、従来のように嵩張る携帯足場を2台持ち歩かずとも、当該乗越え具を1個携えることによって、フェンスの手前側及び向こう側の双方に足場となる足掛環をそれぞれ吊り下げることができ、フェンスのよじ登り及びよじ降りの双方の場面においてより安全にフェンスの乗り越え動作を行えるという効果がある。
【0026】
請求項3のフェンス乗越え具によれば、請求項2のフェンス乗越え具の奏する効果に加え、ベルト部材は、その長手方向中間部分がフック部材の載置部に跨って掛けられる一本ものであることから、フック部材との繋ぎ部分でベルト部材がちぎれることを防止できるという効果がある。
【0027】
また、ベルト部材は、単純にフック部材の載置部に掛けられるだけではなく、各挟み部に対して係合されているので、足掛環に足を掛けた際に加わる荷重や衝撃で、ベルト部材がフック部材からずり落ちて外れることを防止でき、より一層安全性を向上できるという効果がある。
【0028】
請求項4のフェンス乗越え具によれば、請求項1から3のいずれかのフェンス乗越え具の奏する効果に加え、ベルト部材のみならず足掛環も柔軟性を備えるので、ベルト部材及び足掛環の双方とも折り畳んでコンパクトに纏めることができ、より一層嵩張らせずに持ち運びできるという効果がある。
【0029】
請求項5のフェンス乗越え具によれば、請求項1から4のいずれかのフェンス乗越え具と同様に作用する上、二等辺三角形状又は正三角形状の三角環状体である足掛環は、その頂角部分がベルト部材の先端部に連接されることから、ベルト部材が垂直に垂れ下がった場合に、足掛環の底辺部分が横向きに延びた格好となり、そこに足を掛け易くなるという効果がある。
【0030】
請求項6のフェンス乗越え具によれば、請求項5のフェンス乗越え具の奏する効果に加え、足掛環の底辺部分が面状の足踏み面となっているので、足裏を足掛環の底辺部分に載せやすく、足掛環に足を掛ける際の安定性が向上されるという効果がある。
【0031】
請求項7のフェンス乗越え具によれば、請求項4に従属する請求項5に従属する請求項6のフェンス乗越え具の奏する効果に加え、足掛環は、折畳み可能な柔軟性を備えるとともに、その三角環状体の底辺部分を他の部分に比べて肉厚に形成して曲げ強さを補強することによって、当該三角環状体の形を保持し易くなっている。このため、足掛環がベルト部材を介してフェンスから吊り下げられた場合に、足掛環が窄まって足が掛け辛くなることを防止できるという効果がある。
【0032】
請求項8のフェンス乗越え具によれば、請求項7のフェンス乗越え具の奏する効果に加え、ベルト部材及び足掛環は、いずれも柔軟性のある織物ベルトで形成されるので、コンパクトに折り畳んで纏めることができ、持ち運びに嵩張らないという効果がある。
【0033】
しかも、足掛環の底辺部分は、織物ベルトを2枚以上重畳接合するすることで肉厚に形成されているので、曲げ強さが他の部分に比べて多少大きくはあるものの、足掛環を折り畳む場合にあっても特段支障となることもないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例であるフェンス乗越え具の正面図である。
【図2】フック部材の拡大図であって、(a)は、その正面図であり、(b)は、その右側面図であり、(c)は、(b)のC−C線における縦断面図である。
【図3】(a)は、ベルト部材及び一方の足掛環の拡大図であり、(b)は、(a)のB−B線における縦断面図である。
【図4】フェンス乗越え具をフェンスに取付状態を示した図であり、(a)は、フェンス乗越え具を正面視し、(b)は、フェンス乗越え具を右側面視し、(c)は、フェンス乗越え具を平面視したものであり、(d)は、フック部材がフェンスに対して傾いた状態を示した図である。
【図5】第2実施例のフェンス乗越え具の正面図である。
【図6】第2実施例のフェンス乗越え具のフック部材の拡大図であり、(a)は、その正面図であり、(b)は、その左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。ここで、図1は、本発明の一実施例であるフェンス乗越え具1の正面図である。
【0036】
図1に示すように、フェンス乗越え具1は、フェンス50の上縁部51に対して着脱自在に掛着可能に形成されるフック部材2と、そのフック部材2から延設されてフェンス50から垂下可能に形成されるベルト部材3と、そのベルト部材3により吊下される一対の環状の足掛環4,4と、上記フック部材2及びベルト部材3のスリップを防止する防滑部材5とを備えている。
【0037】
<フック部材>
図2は、フック部材2の拡大図であって、図2(a)は、その正面図であり、図2(b)は、その右側面図であり、図2(c)は、図2(b)のC−C線における縦断面図である。なお、フェンス乗越え具1は、その背面図が正面図と同一に、その左側面図が右側面図と同一に、それぞれ現われる。
【0038】
図2に示すように、フック部材2は、フェンス50の上縁部51に載置可能に形成される載置部11と、その載置部11の両端に連設形成されて互いに所定の間隔を隔てて対向配置される一対の挟み部12,12と、その載置部11及び各挟み部12により囲まれた内周凹部であってフェンス50の上縁部51を挿入可能に形成される挿入凹部13とを備えている。
【0039】
載置部11は、その断面形状が半円弧状に湾曲した半円筒板状に形成されており、各挟み部12は、載置部11の湾曲方向両端部から直線状に延設される平板状に形成されている。このため、フック部材2は、その挿入凹部13における載置部11側が閉塞されて各挟み部12の先端側が開放されたU字形状又は馬蹄形状に形成され、それ全体としてアーチ状に形成されている。
【0040】
なお、載置部11の形状は、必ずしも半円筒板状に限定されるものではなく、フェンス50の上縁部51に跨乗して載置可能な形状であれば、その他の形状、例えば、平板状や山形板状であっても良い。
【0041】
一対の挟み部12,12は、互いの対向面間の間隔W1,W2(図2(c)参照。)がフェンス50の上縁部51の厚みWに比べて大きくなっており、フェンス50の上縁部51がフック部材2の挿入凹部13内へ挿入され易くなっている。しかも、一対の挟み部12,12は、その載置部11側(上端部)から各挟み部12の先端部(下端部)へ向けて対向面間距離が広がる正面視ハの字状(W1<W2)となっているため、挿入凹部13内へフェンス50の上縁部51が更に挿入され易くなっている。
【0042】
また、各挟み部12には、その側面に水平方向に細長い穿孔である係合孔12aが上下に間隔を隔てて穿設されており、フック部材2全体で合計4個の係合孔12aが設けられている。各係合孔12aは、ベルト部材3の素材となる織物ベルトが通過可能となっている。
【0043】
そのうえ、このフック部材2は、耐荷性及び耐食性を有するステンレス鋼などの金属製の金具であり、特に、耐食性があることから、雨水や降雪等に曝される屋外にあるフェンス50に引っ掛けられるために水分が付着し易い状況で使用されても腐食され難くなっている。
【0044】
<防滑部材>
防滑部材5には、主に、フック部材2がフェンス50の上縁部51に掛着した場合に当該フック部材2がフェンス50の上縁部51でスリップすることを防止するフック防滑材5Aと、利用者の体重が足掛環4及びベルト部材3に作用した場合に当該ベルト部材3がフック部材2に対してスリップすることを防止するベルト防滑材5Bとがある。
【0045】
<フック防滑材>
ここで、フック防滑材5Aは、フック部材2に比べて静摩擦係数及び動摩擦係数が大きな可撓性材料で形成される薄手のシート状体であり、例えば、黒ゴム板で形成されている。このフック防滑材5Aは、フック部材2の内周面の一部であって、一方の挟み部12における基端側(図2(c)右上側)よりに位置する係合孔12aの手前から、その挟み部12の内側面、載置部11の内周面、他方の挟み部12の内周面に沿って、当該他方の挟み部12における基端側(図2(c)左上側)よりに位置する係合孔12aの手前までの範囲に固着されている。
【0046】
<ベルト防滑材>
これに対し、ベルト防滑材5Bは、フック部材2に比べて静摩擦係数及び動摩擦係数が大きな可撓性材料で形性されるシート状体であり、例えば、シリコンゴムシートで形成されている。このベルト防滑材5Bは、フック部材2の外周面及び内周面に貼着されており、そのフック部材2とベルト部材3との間に介在して当該ベルト部材3のスリップを防止している。
【0047】
具体的には、まず、ベルト防滑材5Bは、フック部材2の外周面であって、一方の挟み部12における基端側よりに位置する係合孔12aの手前から、その挟み部12の外側面、載置部11の外周面、他方の挟み部12の外周面に沿って、当該他方の挟み部12における基端側よりに位置する係合孔12aの手前までの範囲に固着され、かつ、各挟み部12の内側面であって2つの係合孔12aの間部分に固着されている。
【0048】
<ベルト部材及び一対の足掛環>
図1に示すように、ベルト部材3は、その長手方向中央部分がフック部材2に掛けられており、一対の足掛環4,4は、そのベルト部材3の両端部をそれぞれに折り返して環状となるように重ね合わせて重畳縫合することにより形成されている。
【0049】
このベルト部材3及び一対の足掛環4,4は、シートベルト等と同種の織り方によりおられた一本ものの織物ベルトで形成されており、シートベルト等の広幅ベルトに比べて横幅が小さな細幅ベルトが用いられている。また、この細幅ベルトは、その全体が幅及び厚みが均一に形成されたものである。
【0050】
ベルト部材3は、フック部材2の載置部11の外周面に跨る格好で掛けられている。このベルト部材3は、フック部材2の載置部11の外周に沿って各挟み部12の外側面に沿って各挟み部12の先端へ延び、各挟み部12の先端部にある係合孔12aを貫通して各挟み部12の内側面を通って、その係合孔12aより更に各挟み部12の先端側にある別の係合孔12aを貫通して各挟み部12の外側面へ導出されている。
【0051】
そして、このベルト部材3は、この各係合孔12aに通されることによってフック部材2の各挟み部12に係合されるとともに、更に、この各挟み部12の先端を越えて更に遠方へと延設されている。
【0052】
図3(a)は、ベルト部材3及び一方の足掛環4の拡大図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線における縦断面図である。
【0053】
図3に示すように、足掛環4は、頂角部分から延びる二辺4a,4bの長さが等しい二等辺三角形状の三角環状体であり、特に、本実施例では二等辺三角形の一種である正三角形状の三角環状体とされている。また、この足掛環4は、その頂角部分にベルト部材3の先端部が連接されており、その三角環状体の底辺部分4cが足裏を当接可能な面状の足踏み面4dとなっている。
【0054】
このように足掛環4は、その頂角部分にベルト部材3が連接される正三角形状又は二等辺三角形状の三角環状体となって左右対称に形成されており、かつ、その素材である織物ベルトの密度が全体的に均一であることから、ベルト部材3が垂直に垂れ下がった場合、その底辺部分4cが横向きに延びた格好となって、そこに足が掛け易くなる。しかも、足掛環4は、その足踏み面4dが面状であるので、利用者が足を掛ける際に足先が載せ易くなっている。
【0055】
さらに、この足踏み面4dとなっている足掛環4の底辺部分4cは、同種の編物ベルトを2枚又はそれ以上重畳させて縫合されたものであり、この重畳縫合による編物ベルトの厚み増しによって足掛環4の曲げ強さが補強されて、当該足掛環4が三角環状の形態を維持できるようになっている。このため、ベルト部材3がフェンス50から垂れ下げられた場合でも、当該足掛環4が窄まってその内周部へ足先を入れて掛け難くなるのが防止される。
【0056】
しかも、このように足掛環4の足踏み面4dは、上記したように織物ベルトが重畳縫合されることから、足が載せ掛けられても損傷し難く易く、その耐久性も向上されている。
【0057】
次に、上記のように構成されたフェンス乗越え具1の使用方法について説明する。ここで、図4は、上記のように構成されたフェンス乗越え具1をフェンス50に取付状態を示した図である。特に、図4(a)は、フェンス乗越え具1を正面視し、図4(b)は、フェンス乗越え具1を右側面視し、図4(c)は、フェンス乗越え具1を平面視したものであり、図4(d)は、フック部材2がフェンス50に対して傾いた状態を示した図である。
【0058】
図4に示すように、利用者がフェンス50を乗越えたい場合、まず、フェンス乗越え具1のフック部材2が、フェンス50の上縁部51に掛着される。その場合には、フック部材2がフェンス50の上縁部51まで持ち上げられ、そのフェンス50の上縁部51にフック部材2の挿入凹部13の開放側(図1下側)を向けつつ、フック部材2を下方へ移動させる。この移動に伴って、フェンス50の上縁部51がフック部材2の挿入凹部13内へ向けて相対的に移動され、挿入凹部13内にフェンス50の上縁部51が挿入される。
【0059】
このように一対の挟み部12,12の対向面間の間隙である挿入凹部13内にフェンス50の上縁部51が挿入されることによって、その載置部11がフェンス50の上縁部51に載置される。すると、一対の挟み部12,12によってフェンス50の上縁部51がフェンス50両側面を挟み込むように配置され、このフック部材2がフェンス50の上縁部51に跨乗されて引っ掛けられる。
【0060】
このとき、フック部材2の各挟み部12から延びるベルト部材3の両端部は、その一方側がフェンス50の手前側(図4(a)右側。以下同じ。)に、その他方側がフェンス50の向こう側(図4(a)左側。以下同じ。)に、それぞれ垂れ下げられる。
【0061】
ここで、地面から足掛環4までが低すぎたり、或いは、高すぎたりする場合は、挟み部12の係合孔12aに対するベルト部材3の係合位置をずらして、ベルト部材3がフック部材2から垂れ下がる長さを調節して、地面から足掛環4までの高さを調節することもできる。
【0062】
なお、このベルト部材3の長さ調節は、フック部材2をフェンス50に引っ掛けたまま、又は、これを一度引っ掛けてから高さ当否を確認した後にフェンス50から一旦取り外して行うようにしても良いが、フック部材2をフェンス50に引っ掛ける前に行っても良い。
【0063】
フェンス乗越え具1が上記のようにしてフェンス50に掛着されれば、利用者が、フェンス50の手前側にある足掛環4に自分の一方の片足を載せ掛けて、足掛環4の上に一方の片足で立ち上がるようにして自分の両手でフェンス50の上縁部51を掴みながら、他方の片足を地面から浮かせて、フェンス50によじ登る。なお、他方の片足を地面から浮かせる際には、他方の片足で地面を蹴るようにしても良い。
【0064】
利用者が一方の片足を足掛環4に掛けてフェンス50によじ登ったら、次は、当該利用者がその一方の片足を足掛環4に載せたまま、その他方の片足をフェンス50の手前側から向こう側へ移すと、利用者がフェンス50を跨いだ格好となる。フェンス50を跨いだ後は、フェンス50の向こう側に垂れ下がるベルト部材3の先端部に他方の足掛環4があるので、この足掛環4に利用者が他方の片足を載せ掛けて、フェンス50をよじ降りて、当該フェンス50を乗り越えることができる。
【0065】
また、このフック部材2は、その一対の挟み部12,12によってフェンス50の上縁部51を挟み込んだ状態で、そこに跨乗状態で引っ掛けられるので、図4(d)に示すように、利用者がフェンス50をよじ登る際にその一方の片足を一方の足掛環4に載せてその体重を掛けることによってフェンス50の上縁部51でフック部材2が回転して傾けば、その傾いた側の挟み部12の先端部がフェンス50に突き当たってそれ以上の回転が抑止されるので、フェンス50の上縁部51から外れてずり落ちてることが防止される。
【0066】
次に、図5を参照して、上記実施例の変形例について説明する。図5は、第2実施例のフェンス乗越え具20の正面図であり、図6は、第2実施例のフェンス乗越え具20のフック部材22の拡大図であり、図6(a)は、その左側面図であり、図6(b)は、その正面図である。なお、図5及び図6では、フェンス乗越え具20がフェンス50の上縁部に取り付けられた状態を図示している。
【0067】
この第2実施例のフェンス乗越え具20は、上記した第1実施例のフェンス乗越え具1に対して、正面視アーチ状であったフック部材の形状を変更したものである。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0068】
第2実施例のフェンス乗越え具20は、フェンス50の上縁部51に着脱自在に掛着可能なフック部材22を備えており、このフック部材22は、その先端部22aが正面視かぎ状又は釣り針状に屈曲した逆J字状に形成されている。また、このフック部材22の基端部22bにはベルト部材23の上部23aが係合されている。
【0069】
このベルト部材23は、フック部材22の基端部22bの側面に水平方向に細長い穿孔である係合孔22cが1箇所穿設されており、この係合孔22cには、ベルト部材23の素材となる織物ベルトが通過可能となっている。ベルト部材23は、その上部23aがフック部材22の基端部22bにある係合孔22cを貫通して折り返されている。
【0070】
この折り返されたベルト部材23の上部23aは、フック部材22の基端部22bよりも当該ベルト部材23の下部23bよりの部分に重畳縫合されており、これによって当該フック部材22に係合されている。
【0071】
また、このベルト部材23は、フック部材22の基端部22bから更に遠方へと延設されており、足掛環4は、当該ベルト部材23の下部23bが折り返して環状となるように重ね合わせて重畳縫合されることにより三角環状体に形成されている。
【0072】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0073】
例えば、上記実施例では、ベルト部材3,23の端部が折り返されて環状となるように重ね合わせられて重畳縫合されることにより足掛環4が形成されたが、足掛環を形成するために織物ベルトを重畳接合する手段は、必ずしも縫合に限定されるものではなく、この縫合に代えてリベット継手や接着剤等によって織物ベルトを重畳接合するようにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
1,20 フェンス乗越え具
2,22 フック部材
3,23 ベルト部材
4 足掛環
4c 足掛環の底辺部分
4d 足踏み面
11 載置部
12 一対の挟み部
13 挿入凹部
50 フェンス
51 フェンスの上縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンスの上縁部に着脱自在に掛着可能に形成されるフック部材と、
そのフック部材に係合され当該フック部材から延設されて垂下可能に形成される柔軟性を有したベルト部材と、
そのベルト部材の先端部に設けられ環状に形成される足掛環とを備えていることを特徴とするフェンス乗越え具。
【請求項2】
前記フック部材は、フェンスの上縁部に載置可能に形成される載置部と、その載置部の両端から延設されフェンス上縁部を挟み込む一対の挟み部とを備えており、
前記ベルト部材は、そのフック部材の各挟み部の先端部から延設されることを特徴とする請求項1記載のフェンス乗越え具。
【請求項3】
前記ベルト部材は、その長手方向中間部分が前記フック部材の載置部に跨る格好で掛けられて前記フック部材の各挟み部の先端部から延設される一本ものであって、その長手方向両端部に前記足掛環がそれぞれ設けられ、前記フック部材の各挟み部に対して係合されていることを特徴とする請求項2記載のフェンス乗越え具。
【請求項4】
前記足掛環は柔軟性を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフェンス乗越え具。
【請求項5】
前記足掛環は、前記ベルト部材の先端部に連接される頂角部分を有した二等辺三角形状又は正三角形状の三角環状体に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフェンス乗越え具。
【請求項6】
前記足掛環は、前記三角環状体の底辺部分が足裏を当接可能な面状の足踏み面となっていることを特徴とする請求項5記載のフェンス乗越え具。
【請求項7】
前記足掛環のうち前記三角環状体の前記底辺部分は、その足掛環における他の部分に比べて肉厚に形成されて曲げ強さが補強されていることを特徴とする請求項4に従属する請求項5に従属する請求項6記載のフェンス乗越え具。
【請求項8】
前記ベルト部材及び足掛環は、柔軟性を有する織物ベルトにより形成されており、
その足掛環は、前記三角環状体の前記底辺部分が2枚以上の前記織物ベルトを重畳接合することにより肉厚に形成されることを特徴とする請求項7記載のフェンス乗越え具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172366(P2012−172366A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34561(P2011−34561)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(391007460)中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社 (47)
【Fターム(参考)】