説明

フォトクロミック材料

フォトクロミック染料を開示する。フォトクロミック染料は、第1の光反応性基および第2の光反応性基を含むことができる。第1の波長を有する放射線によってフォトクロミック染料の第1の光反応性基中で第1のフォトクロミック反応を誘起することができ、第2の波長を有する放射線によってフォトクロック染料の第2の光反応性基中で第2のフォトクロミック反応を誘起することができる。第2の波長は、第1の波長より長くてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してフォトクロミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのフォトクロミック材料は、多くの産業分野で使用されている。フォトクロミック材料の吸収スペクトルおよび色は、電磁放射線(例えば、可視光またはUV光)の吸収の結果として変化し得る。
【0003】
多くのフォトクロミック材料は、フォトクロミズムの現象による色変化特性を有する。フォトクロミズムとは、化合物の少なくとも2種の形態間の可逆的な光誘起性変換を指す。少なくとも2種の形態は、異なる吸収スペクトルを固有に有するので、異なる色を示す。フォトクロミック染料は、光依存性色変化特性を示すフォトクロミック材料である。光線の吸収は、フォトクロミック染料を、異なる吸収スペクトルを有することによって異なる色を示す2種の形態間で可逆的に変換させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、フォトクロミック染料を記載する。フォトクロミック染料は、少なくとも2個の光反応性基を含むことができる。一態様では、第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている。
【0006】
別の実施形態によると、フォトクロミック染料が記載される。フォトクロミック染料は、互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を含むことができ、ここで第1の光反応性基および第2の光反応性基は、独立に、式IおよびII:
【0007】
【化1】

(式中、R〜R15は、独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C1〜12アルキル、置換もしくは非置換C1〜12アルコキシ、置換もしくは非置換C1〜12アルケニル、置換もしくは非置換C1〜12共役アルキル、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す、あるいは置換基は一緒になって、アリール基を完成するアルキレンまたはアルケニレン鎖を形成する)
からなる群から選択される少なくとも1つの構造である。
【0008】
さらに別の実施形態によると、フォトクロミック組成物が記載される。一態様では、フォトクロミック組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマーまたはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料、および前記材料の少なくとも一部に組み込まれた少なくとも1種のフォトクロミック染料を含むことができる。一態様では、少なくとも1種のフォトクロミック染料は、互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を含むことができ、ここで第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている。
【0009】
なおさらに別の実施形態によると、光学的物品が記載される。一態様では、光学的物品は、眼科的要素、ディスプレイ要素、窓、鏡、液晶セル要素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の光学的物品、ならびに前記光学的物品の少なくとも一部に組み込まれた少なくとも1種のフォトクロミック染料を含むことができる。一態様では、少なくとも1種のフォトクロミック染料は、互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を含むことができ、ここで第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている。
【0010】
前記概要は、例示に過ぎず、いかなる方法においても限定的であることが意図されていない。上記の例示的態様、実施形態および特徴に加えて、以下の詳細な説明を参照することにより、さらなる態様、実施形態および特徴が明らかとなるだろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.序論および定義
以下の詳細な説明では、添付の構造式を参照するが、これは本明細書の一部を形成している。構造式では、文脈がそうでないと指示しない限り、類似の記号は典型的には類似の成分を特定する。詳細な説明、構造式および特許請求の範囲に記載の例示的実施形態は、限定的なものではない。本明細書に示す主題の精神または範囲を逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、他の変更をすることができる。
【0012】
本開示によるフォトクロミック染料とは、照射の波長が変化すると、2種以上の色の変化を示すことができるフォトクロミック材料(例えば、化学染料)を指す。本明細書に記載するフォトクロミック染料は、単一分子中で異なる反応性を有する2個以上の光反応性基を互い連結することによって形成することができる。一態様では、2個以上の光反応性基は、非共役結合によって連結することができる。
【0013】
本明細書で使用する用語「非共役結合」とは、共役系を有さない、2個のフォトクロミック基を接続する化学結合を指す。2個のフォトクロミック基が非共役結合によって連結されているので、各フォトクロミック基は、特定の波長の光に反応してそれぞれのフォトクロミック反応を受け、特定の色の変化を示す。
【0014】
本明細書に記載するフォトクロミック染料は、光線の吸収によって、無色の異性体から少なくとも2色の異性体に変換され得る。したがって、本明細書で使用する用語「光線」とは、それだけに限らないが、光反応性クロミック基を1つの形態から別の形態へ変換させることができる紫外線および可視光線などの電磁放射線を指す。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「異性体」とは、同じ分子式を有するが異なる構造式を有する異性体化合物を指す。例えば、開環または閉環異性化反応は、結合構造を変化させ、一般的に、分子式を変化させることなく分子の電子的特性を変化させる。光誘起異性体の安定性は化合物によって異なるが、光誘起異性体は、一般的に、経時的におよび/または熱もしくは光線の吸収に反応して逆異性化する。
【0016】
本明細書で使用する用語「光反応性基」とは、光反応特性を有する任意の物質を意味する。光反応性基の1つの形態から別の形態への変換は、電磁放射線(例えば、UVまたは可視光線)の吸収によって誘起され得る。すなわち、光反応性基は、1つの形態から別の形態に変換することができ、各形態は、異なる吸収スペクトルを有するので、光線を吸収することによって異なる色を示す。
【0017】
一態様では、光反応性基は、フォトクロミック基を含むことができる。一態様では、フォトクロミック反応は、フォトクロミック基で起こる色変化反応であり得る。したがって、1つの形態から他の形態への変換は、染料の吸収スペクトルの変化を引き起こすまたは誘起して、2種の形態が異なる色を示すようにするフォトクロミック反応を含むことができる。
【0018】
本明細書で使用する用語「フォトクロミック部分」とは、フォトクロミック反応が起こり、1つの形態から別の形態への可逆性フォトクロミック変換を受ける、光反応性基の一部または部分を指す。
【0019】
本明細書で使用する用語「開環反応または閉環反応」とは、フォトクロミック基が光線を吸収すると起こる開環反応または閉環反応を指す。フォトクロミック基の種によって、開環反応または閉環反応が起こる。例えば、スピロピランおよびスピロオキサジンは光線に反応して開環反応を受ける一方で、ジアリールエテンおよびフルギドは、光線に反応して閉環反応を受ける。
【0020】
本明細書で使用する用語「共役系」とは、交互の単結合および二重結合によって原子が共有結合している系を指す。一態様では、本明細書に開示する第1のフォトクロミック反応は、第1の光反応性基中の第1の共役系の修飾を含むことができ、第2のフォトクロミック反応は、第2の光反応性基中の第2の共役系の修飾を含むことができる。例えば、所与の波長を有する光の光子の吸収は、第1の光反応性基中の共役系の、第1の共役結合距離を有する共役系から第2の一般的により長い共役結合距離を有する共役系への変換を誘起することができる。共役結合距離が変化すると、分子の吸収スペクトルおよびその色が変化するのが一般的である。一般に、8個未満の共役二重結合しか有さない共役系は、紫外領域の光しか吸収せず、ヒトの目には無色である。追加の共役二重結合を加えることにより(すなわち、共役結合距離の増加)、共役系は、より長波長(およびより低エネルギー)の光子を吸収し、最終的にヒトの目の視覚範囲の光子の吸収をもたらす。
【0021】
したがって、本明細書で論じるフォトクロミック反応は、少なくとも2個の光反応性基を有するフォトクロミック染料の、第1の共役結合距離を有する無色の異性体から、ヒトの目の可視範囲の光子を吸収することができる別のより長い共役結合距離系を有する少なくとも2種の別の異性体への変換を誘起することができる。したがって、フォトクロミック染料の無色の異性体は、第1の色を有する異性体へ変換され得る(例えば、無色から青)、またはフォトクロミック染料の無色の異性体は、第2の色を有する異性体へ変換され得る(例えば、無色から緑)。フォトクロミック染料の無色の異性体が、第3色を有する異性体へ変換されることも可能であり(例えば、無色からシアン)、ここで第1および第2の光反応性基によって生成される色は、第1および第2の光反応性基が多少同時に異性化されるのに反応してブレンドされている。
【0022】
例えば、以下のスキームIは、UV光照射に反応したスピロオキサジンの開環反応を示している。スキームIに示すスピロオキサジンは、UV照射に反応してその吸収特性およびその色を変化させるので、スピロオキサジンは光反応性基を含み、この化合物を「フォトクロミック」と呼ぶことができる。オキサジンのスピロ型は、共役オキサジンおよびsp3混成スピロ炭素(で表す)によって分離された別の共役芳香族部分を有する無色のロイコ染料である。UV光照射後、スピロ炭素とオキサジンとの間の結合が切断し、環が開く。結果として、スピロ炭素は、sp2混成状態に変わり、平面になり、芳香族基は回転し、拡張した共役系が形成される。拡張した共役系の形成は、分子が可視光の光子を吸収し、それゆえカラフルに見えるのを可能にする。UV光源を除去すると、分子は徐々にその基底状態になり、炭素−酸素結合が再形成し、スピロ−炭素は再度sp3混成になり、分子はその無色の状態に戻る。
【0023】
【化2】

【0024】
各フォトクロミック基は、フォトクロミック反応を誘起することができる特有の吸収極大を有する。本明細書で使用する場合、用語「吸収極大」とは、物質の吸光度が最大である特定の波長を指す。共役距離の拡張は、一般的に、吸収極大のより長波長へのシフトをもたらす。物質の吸光度(または物質によって吸収される放射の量)は、分光光度計を使用して、物質を特定の波長および強度を有する入射光に曝露し、物質によって透過された光の強度を入射光の強度と比較することによって、測定することができる。各試験波長について、物質の吸光度(「A」)は、以下の等式によって与えられる:
A=logI/I
(式中、「I」は、入射光の強度であり、「I」は透過光の強度である)。物質の吸収スペクトルは、物質の吸光度対波長をプロットすることによって得ることができる。同一条件下で試験した、すなわち同一濃度およびサンプルを通過する電磁放射線の経路長(例えば、同一セル長またはサンプル厚さ)を使用した、フォトクロミック材料の吸収スペクトルを比較することにより、所与の波長での材料の1つの吸光度の増加を、その波長でのその材料についてのスペクトルピークの強度の増加として見ることができる。
【0025】
前記議論から認識することができるように、本明細書で開示するフォトクロミック染料を、適当な波長を有する放射線に暴露すると、第1または第2の光反応性基は、構造転位、例えば、開環反応もしくは閉環反応および/またはシス−トランス異性化を受けて、第1または第2の光反応性基中の共役系を変化させることができる。第1または第2のフォトクロミックに反応した共役系の拡張は、染料が、より長波長の光子を吸収することを可能にし、それにより染料に色がもたらされる。
【0026】
以下に示すスキームIIは、本開示の一実施形態による2種のフォトクロミック反応の例を表している。スキームIIに示すフォトクロミック染料は、非共役結合によって接続された2個の光反応性基を含む。スキームIIに示すフォトクロミック反応は、異なる波長の光(λおよびλ)の光吸収に反応して起こる開環反応である。
【0027】
【化3】

【0028】
スキームII−1に示すように、太線によって示される染料の2個の別の共役系は、それぞれ6個の共役二重結合を含み、したがって、スキームII−1に示す異性体が可視光を吸収するには短すぎる。上記のように、8個未満の共役二重結合しか有さない共役系は、紫外領域の光しか吸収せず、ヒトの目には無色であるのが一般的である。しかしながら、共役結合距離が変化すると、分子の吸収スペクトルおよびその色は変化する。すなわち、共役系中の追加の二重結合が、分子がより長波長(およびより低エネルギー)の光子を吸収するのを可能にし、最終的にヒトの目によって見ることができる色を有する化合物をもたらす。
【0029】
ここで、スキームII−1およびII−2を参照すると、第1の波長(λ)を有する光が第1の化合物(スキームII−1)によって吸収されると、第1の波長に対応する吸収極大を有する第1のフォトクロミック基が第1のフォトクロミック反応を受ける。共役系が10個の共役二重結合に拡張しているので(スキームII−2、太線)、染料は、可視光を吸収して色を示すことができる。
【0030】
ここで、スキームII−1およびII−3を参照すると、第2の波長(λ)を有する光が第2の化合物(スキームII−1)によって吸収されると、第2の波長に対応する吸収極大を有する第2のフォトクロミック基が第2のフォトクロミック反応を受ける。共役系が11個の共役二重結合に拡張しているので(スキームII−3、太線)、染料は、可視光を吸収して色を示すことができる。第2のフォトクロミック基の共役結合距離は第1のフォトクロミック基と異なるので(すなわち、11個の共役二重結合対10個の共役二重結合)、スキームII−3に示す異性体は、スキームII−2に示す異性体によって示される色とは異なる、異なる色を示す。
【0031】
以下に示すスキームIIIは、本開示の一実施形態による2種のフォトクロミック反応の別の例を表している。スキームIIIに示すフォトクロミック染料は、非共役結合によって接続された2個の光反応性基を含む。スキームIIIに示すフォトクロミック反応は、異なる波長の光(λおよびλ)の光吸収に反応して起こる閉環反応である。
【0032】
【化4】

【0033】
スキームIIIに示すように、2個のジアリールエテン光反応性基は、非共役結合によって互いに結合している。スキームIIのように、太線によって示される染料の2個の別の共役系は、スキームIII−1に示す異性体が可視光を吸収するには短すぎる。しかしながら、異なる波長(λまたはλ)を有する光が染料(スキームIII−1)によって吸収されると、各波長に対応する吸収極大を有する各フォトクロミック基がフォトクロミック反応を受ける。共役系が8個以上の共役二重結合に拡張しているので(スキームIII−2およびIII−3、太線)、染料は、可視光を吸収して色を示すことができる。2個のフォトクロミック基の共役結合距離は互いに異なるので(すなわち、スキームIII−2の8個の共役二重結合対スキームIII−3の12個の共役二重結合)、スキームIII−3に示す異性体は、スキームIII−2に示す異性体によって示される色とは異なる、異なる色を示す。
【0034】
II.フォトクロミック染料
本開示の実施形態は、フォトクロミック染料に関する。フォトクロミック染料は、電磁放射線の吸収に反応して、可逆的に色を変化させる能力を示す染料である。本明細書に開示するフォトクロミック染料は、少なくとも2個の光反応性基を有し、フォトクロミック染料が、少なくとも2種の異なる色を有する少なくとも2種の形態間で可逆的に変換することを可能にする。
【0035】
一実施形態では、本明細書に開示するフォトクロミック染料は、少なくとも2個の光反応性基を含むことができる。一態様では、第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている。
【0036】
一態様では、第1および第2の光反応性基は、非共役結合によって互いに結合している。第1および第2の光反応性基を結合するために使用することができる非共役結合の非限定的な例には、それだけに限らないが、C1〜12アルキレン、C1〜12ヘテロアルキレン、C1〜6アルキレンオキシ化合物およびC1〜6アルキレンジオキシ化合物が含まれる。
【0037】
本明細書に開示するフォトクロミック染料の一態様では、第1のフォトクロミック反応は、第1の光反応性基中の第1の共役系の修飾を含むことができ、第2のフォトクロミック反応は、第2の光反応性基中の第2の共役系の修飾を含むことができる。すなわち、例えば、第1のフォトクロミック反応は、第1の光反応基中の共役系の共役結合距離を、第1の光反応性基が可視光の光子を吸収することができる程度に延長することを含むことができる。同様に、第2のフォトクロミック反応は、第2の光反応基中の共役系の共役結合距離を、第2の光反応性基が可視光の光子を吸収することができる程度に延長することを含むことができる。いくつかの態様では、共役系の修飾は、例えば、有色化合物が無色になるような共役結合距離の短縮を含むことができる。
【0038】
したがって、一態様では、第1の共役系は、第1の共役結合距離を有することができ、第2の共役系は、第1の共役結合距離とは異なる第2の共役結合距離を有することができる。
【0039】
第1の光反応性基中の第1の共役系を修飾することができるおよび/または第2の光反応性基中の第2の共役系を修飾することができる異性化反応のいくつかの非限定的な例には、独立に、それだけに限らないが、ペリ環状反応、シス−トランス異性化、分子内水素移動、分子内基移動、解離過程、電子移動反応、開環反応または閉環反応の少なくとも1つが含まれる。
【0040】
分子がカラフルに見えるのを可能にする共役系の形成を説明するために、スキームIを以下で参照する。
【0041】
【化5】

【0042】
照射がない場合には、スキームIの左側部分に示すスピロオキサジンは、共役二重結合を有する2個の分離された部分を含む。すなわち、分子の一端のオキサジンおよび分子の他端のベンゼン環の共役系は、「スピロ」炭素(で示す)によって分離されている。共役系間のスピロ結合の存在は、分子の一端から6個の共役二重結合を含む最長共役系を有する他端までのπ軌道の重なりの拡張を妨げる。結果として、スピロオキサジンの非照射形態は無色である。
【0043】
しかしながら、照射(hγ)に反応して、スピロ−炭素とオキサジンとの間の結合は切断され、共役系は、分子の一端から他端までの拡張を形成する。スピロオキサジンの光活性化変種は、10個の共有二重結合を含む共役系を有し、オキサジンが可視光を吸収し、カラフルに見えるのを可能にする。
【0044】
上記スピロオキサジンと対照的に、本明細書に開示するフォトクロミック染料は、第1の共役系を有する第1の光反応性基および第2の共役系を有する第2の光反応性基を含むことができる。一態様では、第1の共役系は、第1のフォトクロミック反応が誘起されると形成され、第2の共役系は、第2のフォトクロミック反応が誘起されると形成され得る。一態様では、第1の共役系は、第1の共役結合距離を有し、第2の共役系は、第1の共役結合距離よりも長い第2の共役結合距離を有する。
【0045】
一態様では、第1の光反応性基および第2の光反応性基は、異なる吸収極大を有する。例えば、非限定的な実施形態によると、第1の光反応性基と第2の光反応性基との間の吸収極大の差は、50nmを超えるもしくはこれと等しい、100nmを超えるもしくはこれと等しい、または150nmを超えるもしくはこれと等しくてよい。フォトクロミック基間の吸収極大の差が50nmを超える場合、第1のフォトクロミック反応と第2のフォトクロミック反応は、波長の変化によって明確に区別することができる。例えば、第1のフォトクロミック基が250〜350nm、250〜340nm、250〜330nm、250〜320nm、250〜310nmまたは250〜300nmの吸収極大を有する場合、第2のフォトクロミック基は、400〜500nm、410〜500nm、420〜500nm、430〜500nm、440〜500nmまたは450〜500nmの吸収極大を有し得る。
【0046】
非限定的な実施形態によると、本開示によるフォトクロミック染料試料が液相の場合、照射の強度は、10〜30mW/cmであり得る。しかしながら、フォトクロミック染料試料がフィルムであり、フィルムの厚さが約1μmである場合、照射の強度は、100〜200mW/cmであり得る。フィルムの厚さが増加するにつれて、より強い強度の照射を使用すべきである。
【0047】
一態様では、第1のフォトクロミック反応は、第1の色を生成し、第2のフォトクロミック反応は、第2の色を生成する。例えば、第1のフォトクロミック反応は、フォトクロミック染料の無色から青色への変換を誘起することができ、第2のフォトクロミック反応は、フォトクロミック染料の無色から緑色への変換を誘起することができる。
【0048】
非限定的な実施形態によると、フォトクロミック基は、独立に、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物およびフルギド化合物からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0049】
フォトクロミック基を選択することができるフォトクロミックジアリールエテンの非限定的な例には、チオフェンパーフルオロペンテン;ベンゾチオフェンパーフルオロペンテン;ベンゾチオフェンマレイン酸無水物;ベンゾチオフェンシアノエテン;およびベンゾチオフェンスルホンパーフルオロペンテンが含まれる。
【0050】
フォトクロミック基を選択することができるフォトクロミックフルギドの非限定的な例には、3−フリルおよび3−チエニルフルギドならびにフルギミドが含まれる。
【0051】
一態様では、本明細書に開示するフォトクロミック染料は、互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を有することができ、ここで第1の光反応性基および第2の光反応性基は、独立に、式IおよびII:
【0052】
【化6】

(式中、R〜R15は、独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C1〜12アルキル、置換もしくは非置換C1〜12アルコキシ、置換もしくは非置換C1〜12アルケニル、置換もしくは非置換C1〜12共役アルキル、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す;または置換基は一緒になって、アリール基を完成するアルキレンもしくはアルケニレン鎖を形成する)
からなる群から選択される少なくとも1つの構造である。
【0053】
一態様では、式Iおよび式IIの群から選択される構造は、非共役結合によって結合してフォトクロミック染料を形成する。非共役結合のいくつかの非限定的な例には、それだけに限らないが、C1〜12アルキレン、C1〜12ヘテロアルキレン、C1〜12アルコキシ、C1〜6アルキレンオキシ化合物、およびC1〜6アルキレンジオキシ化合物、C1〜6フェニレンオキシ化合物、およびC1〜6フェニレンジオキシ化合物が含まれる。フォトクロミック基が分子内で自己会合することができる場合、フォトクロミック反応が阻害され得るので、非共役結合の距離を限定することが望ましいだろう。
【0054】
「アルキレン」とは、直鎖または分枝鎖飽和二価炭化水素基を指す。アルキレン基の例には、それだけに限らないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが含まれる。
【0055】
「ヘテロアルキレン」とは、1個または複数のC−原子が、各場合で、酸素、硫黄および窒素(NH)を含む群から相互に独立に選択されるヘテロ原子によって置換された上記アルキレン鎖を指す。ヘテロアルキレン基は、鎖員(chain member)として、酸素、硫黄および窒素(NH)を含む群から選択される1、2または3個のヘテロ原子、特に1個のヘテロ原子を有することができる。ヘテロアルキレン基は、2〜12員、特に2〜6員、さらに特に2または3員であり得る。
【0056】
「アルキレンオキシ」とは、式−(アルキレン)−O−によって表される二価基を指し、例えば、メチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、ジメチレンジオキシなどを含む。
【0057】
「アルキレンジオキシ」とは、式−O−(アルキレン)−O−によって表される二価基を指し、例えば、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、プロピレンジオキシ、ジメチレンジオキシなどを含む。
【0058】
別段の指定がない限り、本開示は、以下に提供する定義を使用する。
【0059】
「置換された」基とは、原子価要件を満たし、置換により化学的に安定な化合物が得られるとの条件で、1個または複数の水素原子が、1個または複数の非水素基によって置換されたものである。
【0060】
「アルキル」とは、直鎖および分枝鎖飽和炭化水素基を指し、一般的に、指定した数の炭素原子を有する(すなわち、C1〜6アルキルとは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル基を指し、C1〜12アルキルとは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を有するアルキル基を指す)。アルキル基の例には、それだけに限らないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンタ−1−イル、ペンタ−2−イル、ペンタ−3−イル、3−メチルブタ−1−イル、3−メチルブタ−2−イル、2−メチルブタ−2−イル、2,2,2−トリメチルエタ−1−イル、n−ヘキシルなどが含まれる。
【0061】
「アルコキシ」とは、アルキル−O−、アルケニル−Oおよびアルキニル−Oを指す。アルコキシ基の例には、それだけに限らないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペントキシ、s−ペントキシなどが含まれる。
【0062】
「アルケニル」とは、1個または複数の不飽和炭素−炭素結合を有する直鎖および分枝鎖炭化水素基を指し、一般的に、指定した数の炭素原子を有する。アルケニル基の例には、それだけに限らないが、エテニル、1−プロペン−1−イル、1−プロペン−2−イル、2−プロペン−1−イル、1−ブテン−1−イル、1−ブテン−2−イル、3−ブテン−1−イル、3−ブテン−2−イル、2−ブテン−1−イル、2−ブテン−2−イル、2−メチル−1−プロペン−1−イル、2−メチル−2−プロペン−1−イル、1,3−ブタジエン−1−イル、1,3−ブタジエン−2−イルなどが含まれる。
【0063】
「アリール」とは、それぞれ、窒素、酸素および硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を含む5員および6員単環芳香族基を含む一価および二価芳香族基を指す。単環アリール基の例には、それだけに限らないが、フェニル、ピロリル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミニジルなどが含まれる。アリール基にはまた、上記縮合5員および6員環を含む二環基、三環基等が含まれる。多環アリール基の例には、それだけに限らないが、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、ピレニル、カルバゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェネイル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾフラニル、プリニル、インドリジニルなどが含まれる。アリールおよびアリーレン基は、付着が原子価要件を破らない限り、親基または任意の環原子の基質に付着していてよい。同様に、アリール基は、置換が原子価要件を破らない限り、1個または複数の非水素置換基を含んでよい。有用な置換基には、それだけに限らないが、上で定義したアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルカノイル、シクロアルカノイル、シクロアルケノイル、アルコキシカルボニル、シクロアルコキシカルボニルおよびハロ、ならびにヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、アミノおよびアルキルアミノが含まれる。
【0064】
非限定的な一実施形態では、式IのRおよびRは、独立に、水素、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す;あるいはRおよびR、またはRおよびR10は、一緒になって、アリール基を完成するアルキレンまたはアルケニレン鎖を形成する。
【0065】
非限定的な一実施形態では、前記RおよびRは、独立に、水素またはフェニルを表す;あるいはRおよびR、またはRおよびR10は、一緒になって、ベンゼンまたはナフチルを形成する。
【0066】
非限定的な一実施形態では、式Iのフォトクロミック基は、以下の式I−1〜I−9:
【0067】
【化7】

(式中、R’およびR’’は、独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C1〜6アルキルまたは置換もしくは非置換C1〜6アルコキシを表す)
からなる群から選択され得る。
【0068】
非限定的な一実施形態では、式IIのR13およびR14は、独立に、水素を表し;R12およびR15は、独立に、水素、置換もしくは非置換C6〜12共役アルキル、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す。
【0069】
非限定的な一実施形態では、前記R13およびR14は、独立に、水素を表し;R12およびR15は、独立に、水素、フェニルまたは置換もしくは非置換ジチエノチオフェニルを表す。
【0070】
非限定的な一実施形態では、式IIのフォトクロミック基は、以下の式II−1〜II−7:
【0071】
【化8】

(式中、RおよびR’’’は、独立に、水素または置換もしくは非置換C1〜12アルキルを表す)
からなる群から選択される。
【0072】
III.フォトクロミック染料を組み込む物品
本開示はまた、フォトクロミック組成物を提供する。フォトクロミック組成物は、本明細書に前記のフォトクロミック染料の1つまたは複数を含むことができ、染料(単数または複数)は、第1の材料の一部に組み込まれている。例示的実施形態では、第1の材料には、それだけに限らないが、ポリマー、DNA/RNAもしくはタンパク質などのバイオポリマー、オリゴマー、モノマーまたはこれらの混合物もしくは組み合わせが含まれ得る。
【0073】
フォトクロミック染料を、ポリマー、オリゴマーまたはモノマーなどの材料の少なくとも一部に組み込んで、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック物品を形成するために使用することができるフォトクロミック組成物を形成することができる。本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」とは、ホモポリマーおよびコポリマーならびにこれらのブレンドおよび他の組み合わせを指す。本明細書で使用する場合、用語「オリゴマー」とは、ホモオリゴマーおよびコオリゴマー、ならびに追加のモノマー単位と反応することができる2種以上のモノマー単位のブレンドおよび他の組み合わせを指す。本明細書で使用する場合、用語「組み込まれる」とは、物理的および/または化学的に結合することを意味する。例えば、本明細書に開示する種々の非限定的な例によるフォトクロミック染料は、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック染料を材料中に、混合する、結合させる、含浸させる、挿入するまたは吸収させることによって、材料の一部と物理的に結びつけることができる;ならびに/あるいは例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック染料と材料との共重合または他の共有もしくは非共有結合によって、材料の一部と化学的に結合させることができる。
【0074】
本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック染料は、フォトクロミック染料と材料とのブレンドおよび結合の少なくとも1つによって、材料の一部に組み込むことができる。材料へのフォトクロミック染料の組み込みに関連して本明細書で使用する場合、用語「ブレンドする」および「ブレンドされる」とは、フォトクロミック染料が、材料の一部と入り混じるまたは混ざり合うが、材料に結合していないことを意味する。さらに、材料へのフォトクロミック染料の組み込みに関連して本明細書で使用する場合、用語「結合する」または「結合される」とは、フォトクロミック染料が材料の一部に連結していることを意味する。例えば、本明細書で限定的ではないが、フォトクロミック染料を、反応性置換基を通して材料に連結することができる。
【0075】
一実施形態によると、フォトクロミック染料を、約0.01wt%〜約50wt%、または約0.1wt%〜約45wt%、または約1wt%〜約40wt%、または約2wt%〜約35wt%、または約5wt%〜約30wt%、または約10wt%〜約20wt%、または約12wt%〜約17wt%、または約15wt%の割合で材料の一部に組み込むことができる。
【0076】
特定の非限定的な一実施形態によると、材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C1〜12)アルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群の構成員からなるポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料であり得る。
【0077】
一般に、ガラス転移温度(T)とは、ポリマーまたは別の材料が剛直な固体状態から柔軟な状態へ転移する温度を指す。例えば、室温よりもずっと低いガラス転移温度を有するポリマーは、エラストマーおよび/または粘性液体として特徴づけることができる一方で、室温よりもずっと高いガラス転移温度を有するポリマーは、剛直な構造ポリマーとして特徴づけることができる。
【0078】
フォトクロミック染料の1つの状態から別の状態への転移は、一般的に、1種または複数の構造転位を伴うので、フォトクロミック染料の転換速度は、染料周囲環境の剛直性に影響されやすいと考えられる。結果として、フォトクロミック染料は、溶液中で最も速く転換し、剛直ポリマー中のような剛直環境中で最も遅く転換する。転換速度を増加させることができる1つの方法は、染料を低Tポリマー(例えば、室温よりもずっと低いガラス転移温度を有するポリマー)に組み込むことである。次いで、非剛直材料によって転換速度の減少から保護しながら、低Tポリマーを、構造のために剛直材料に組み込むことができる。可撓性低Tポリマーをフォトクロミック染料に付着させることによって、フォトクロミック染料が剛直基質中ではるかに速く転換することが可能になる。例えば、シロキサンポリマーが付着しているいくつかのスピロオキサジンは、剛直基質に組み込まれているにもかかわらず、ほぼ溶液様の速度で転換することができる。
【0079】
したがって、一実施形態では、染料を、約0℃未満、または約−5℃未満、または約−10℃未満、または約−15℃未満、または約−20℃未満、または約−25℃未満、または約−30℃未満、または約−35℃未満、または約−40℃未満、または約−45℃未満、または約−50℃未満、または約−55℃未満、または約−60℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種の材料に組み込むことができる。
【0080】
別の実施形態では、第2の材料が約0℃未満、または約−5℃未満、または約−10℃未満、または約−15℃未満、または約−20℃未満、または約−25℃未満、または約−30℃未満、または約−35℃未満、または約−40℃未満、または約−45℃未満、または約−50℃未満、または約−55℃未満、または約−60℃未満のガラス転移温度を有する場合には、染料を第2の材料に組み込むことができ、次いでそれを上記第1の材料に組み込むことができる。
【0081】
さらに別の実施形態では、フォトクロミック染料を、約0℃未満、または約−5℃未満、または約−10℃未満、または−15℃未満、または約−20℃未満、または約−25℃未満、または約−30℃未満、または約−35℃未満、または約−40℃未満、または約−45℃未満、または約−50℃未満、または約−55℃未満、または約−60℃未満のガラス転移温度を有する、ポリシロキサンおよび/またはポリアクリレートからなる群から選択される第2の材料に組み込むことができる。上記のように、染料を含む第2の材料を、第1の材料に組み込むことができる。
【0082】
約0℃未満のガラス転移温度を有するポリアクリレートの非限定的な例は、ポリ(ブチルアクリレート)であり、これは−49℃のガラス転移温度を有する。有機側鎖(R≠H)を有する重合シロキサンは、シリコーンまたはポリシロキサンとして一般的に知られている。代表的な例には、それだけに限らないが、[SiO(CH(ポリジメチルシロキサン)(「PDMS」)および[SiO(C(ポリジフェニルシロキサン)が含まれる。これらの化合物は、有機化合物および無機化合物の両者のハイブリッドとみなすことができる。有機鎖が疎水性を与える一方で、−Si−O−Si−O−主鎖は純粋に無機である。
【0083】
PDMSは、広く使用されているケイ素ベースの有機ポリマーである。その用途は、コンタクトレンズおよび医療機器からエラストマーにまで及ぶ。PDMSは、粘弾性である。これは、長いフロー時間(または高温)で、はちみつと同様に、粘性液体のようにふるまうことを意味する。しかしながら、短いフロー時間(または低温)で、ゴムと同様に、弾性固体としてふるまう。その独特の機械的、化学的および光学的特性のために、PDMSは、多くの光学機器に組み込まれている。PDMSは、広範囲の波長で光学的に透明である。さらに、(一般的にメチルトリクロロシランとの)架橋結合中に使用する硬化時間および温度が、バルクの屈折率(RI)を決定することができる。ポリマーを容易に成形することができるので、PDMSはレンズおよび導波管を形成するために使用されてきた。また、有機化合物がポリマー中に物理的に吸収されると、PDMSの実効RIおよび吸収スペクトルは変化する。
【0084】
別の実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるフォトクロミック染料もしくは組成物の1種または複数から作られるならびに/あるいはこれを組み込む光学的物品を提供する。一態様によると、光学的物品は、少なくとも1種の光学的物品、および光学的物品の少なくとも一部に組み込まれた少なくとも1種のフォトクロミック染料を含むことができる。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「光学的」とは、光および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態による光学要素には、それだけに限らないが、眼科的要素、ディスプレイ要素、窓、鏡および液晶セル要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「眼科的」とは、目および視覚に関係または関連することを意味する。眼科的要素の非限定的な例には、分割複眼レンズ(segmented multivision lens)もしくは非分割複眼レンズ(それだけに限らないが、二焦点レンズ、三焦点レンズおよび多重焦点レンズなど)のいずれかであり得る、矯正レンズ、および単焦点レンズもしくは複眼レンズを含む非矯正レンズ、コンタクトレンズ、ならびにそれだけに限らないが、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学機器用(例えば、カメラおよび望遠鏡)のレンズを含む、視覚を(美容的にもしくは他の方法で)矯正、保護または増強するために使用される他の要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「ディスプレイ」とは、単語、数字、記号、設計もしくは図面における情報の可視表示または機械可読表示を意味する。ディスプレイ要素の非限定的な例には、スクリーン、モニター、およびセキュリティマークなどの安全要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「窓」とは、そこを通して放射線の透過を可能にするように適合した開口部を意味する。窓の非限定的な例には、自動車および航空機の透明体(transparency)、風よけ、フィルター、シャッターおよび光学スイッチが含まれる。本明細書で使用する場合、用語「鏡」とは、大部分の入射光を鏡面反射する表面を意味する。本明細書で使用する場合、用語「液晶セル」とは、整列させることができる液晶材料を含む構造を指す。液晶セル要素の非限定的な一例は、液晶ディスプレイである。
【0086】
一実施形態では、光学的物品に組み込まれたフォトクロミック染料は、第1の光反応性基および第2の光反応性基を含むことができる。一態様では、第1の強度を有する放射線によって第1の光反応性基中で第1のフォトクロミック反応を誘起することができ、第2の強度を有する放射線によって第2の光反応性基中で第2のフォトクロミック反応を誘起することができる。本明細書に記載の他のフォトクロミック染料のいずれかを、組成物に関して限定することなく、光学的物品に組み込むことができる。
【0087】
一態様では、光学的物品は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群の構成員からなるポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーから作ることができるまたはこれをさらに含むことができる。
【0088】
上記のように、光学的物品に組み込まれた染料を、約0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種の材料に組み込むことができる。別の態様では、染料を、第2の材料に組み込むことができ、次いで、これを上記第1の材料に組み込むことができ、ここで第2の材料は約0℃未満のガラス転移温度を有する。さらに別の実施形態では、フォトクロミック染料を、約0℃未満のガラス転移温度を有するポリシロキサンおよび/またはポリアクリレートからなる群から選択される第2の材料に組み込むことができる。
【0089】
本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態は、基材および基材の一部に接続した上記非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック染料を含むフォトクロミック物品を提供する。本明細書で使用する場合、用語「接続している」とは、直接的にまたは別の材料もしくは構造を通して間接的に結びついていることを意味する。
【0090】
本明細書に開示する非限定的な実施形態は、フォトクロミック組成物を、インモールドキャスティング、コーティングおよび積層の少なくとも1つによって基材の少なくとも一部に接続することを含む、光学要素を調製する方法を提供する。
【0091】
例えば、非限定的な一実施形態によると、フォトクロミック組成物を、インモールドキャスティングによって基材の少なくとも一部に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得るフォトクロミック組成物を含むコーティング組成物を、金型の表面に塗布する。その後、コーティングした基材を、金型から取り出す。本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物を使用することができる粉末コーティングの非限定的な例は、開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,068,797号に示されている。
【0092】
別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を、コーティングによって基材の一部に接続することができる。適当なコーティング法の非限定的な例には、スピンコーティング、スプレーコーティング(例えば、液体または粉末コーティングを使用する)、カーテンコーティング、ロールコーティング、スピンおよびスプレーコーティング、オーバーモールディングならびにこれらの組み合わせが含まれる。例えば、非限定的な一実施形態によると、フォトクロミック組成物を、オーバーモールディングによって基材に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物(前記のように液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得る)を含むコーティング組成物を、金型に塗布することができ、次いで、基材がコーティングと接触して、コーティングを基材の表面上に広がらせるように基材を金型に入れることができる。その後、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させる(set)ことができ、コーティングした基材を金型から取り出すことができる。本明細書で使用する場合、用語「硬化(set)」とは、それだけに限らないが、キュアリング(curing)、重合、架橋、冷却および乾燥を含む。あるいは、基材と金型との間に開いた領域が規定されるように基材を金型に入れ、その後、フォトクロミック組成物を含むコーティング組成物を開いた領域に射出することによって、オーバーモールディングを行うことができる。その後、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させることができ、コーティングした基材を金型から取り出すことができる。
【0093】
さらにまたはあるいは、コーティング組成物(フォトクロミック組成物を含むまたは含まない)を、(例えば、前記方法のいずれかによって)基材に塗布することができ、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させることができ、そしてその後、(前記のように)フォトクロミック染料をコーティング組成物に吸収させることができる。
【0094】
基材が高分子材料またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を、積層によって、基材の少なくとも一部に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を含むフィルムを、接着剤ならびに/あるいは熱および圧力の適用を用いてまたは用いずに、基材の少なくとも一部に接着させるかまたは接続することができる。その後、所望であれば、第2の基材を第1の基材の上に適用することができ、2つの基材を共に積層して(すなわち、熱および圧力の適用によって)、要素を形成することができ、ここでフォトクロミック組成物を含むフィルムは、2つの基材間に挿入されている。フォトクロミック組成物を含むフィルムを形成する方法は、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック組成物を高分子溶液またはオリゴマー溶液または混合溶液と混ぜ合わせ、そこからフィルムをキャストしまたは押出し、必要に応じて、少なくとも部分的にフィルムを硬化させることを含むことができる。さらにまたはあるいは、フィルムを形成し(フォトクロミック組成物を含むまたは含まない)、(上記のように)フォトクロミック組成物を吸収させることができる。
【0095】
さらに、本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物および物品は、前記組成物もしくは物品の加工および/または性能を助ける他の添加物をさらに含むことができることが当業者によって認識されよう。このような添加物の非限定的な例には、光開始剤、熱開始剤、重合抑制剤、溶媒、光安定剤(それだけに限らないが、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの光安定剤など)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤(rheology control agent)、均染剤(それだけに限らないが、界面活性剤など)、フリーラジカル捕捉剤、定着剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤など)、ならびにこれらの組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0096】
本開示はまた、ポリマー、オリゴマー、モノマーまたはこれらの混合物である有機材料の少なくとも一部に組み込まれた本明細書に上記のフォトクロミック染料を含むフォトクロミック組成物を提供する。
【0097】
フォトクロミック染料を、ポリマー、オリゴマーまたはモノマーなどの有機材料の少なくとも一部に組み込んで、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック物品を形成するために使用することができるフォトクロミック組成物を形成することができる。本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」とは、ホモポリマーおよびコポリマーならびにこれらのブレンドおよび他の組み合わせを指す。本明細書で使用する場合、用語「オリゴマー」とは、追加のモノマー単位と反応することができる2種以上のモノマー単位の組み合わせを指す。本明細書で使用する場合、用語「組み込まれる」とは、物理的におよび/または化学的に結合することを意味する。例えば、本明細書に開示する種々の非限定的な例によるフォトクロミック染料は、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック染料を有機材料中に、混合するまたはブレンドすることによって、有機材料の一部と物理的に結合させることができる;ならびに/あるいは例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック染料と有機材料との共重合または他の結合によって、有機材料の一部と化学的に結合させることができる。
【0098】
本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック染料を、フォトクロミック染料と有機材料とのブレンドおよび結合の少なくとも1つによって、有機材料の一部に組み込むことができる。有機材料へのフォトクロミック染料の組み込みに関連して本明細書で使用する場合、用語「ブレンドする」および「ブレンドされる」とは、フォトクロミック染料が、有機材料の一部と入り混じるまたは混ざり合うが、有機材料に結合していないことを意味する。さらに、有機材料へのフォトクロミック染料の組み込みに関連して本明細書で使用する場合、用語「結合する」または「結合される」とは、フォトクロミック染料が有機材料の一部に連結していることを意味する。例えば、本明細書で限定的ではないが、フォトクロミック染料を、反応性置換基を通して有機材料に連結することができる。
【0099】
特定の非限定的な一実施形態によると、有機材料は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群の構成員からなるポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーであり得る。
【0100】
別の実施形態では、本開示は、本開示によるフォトクロミック組成物を用いる光学的物品を提供する。本明細書で使用する場合、用語「光学的」とは、光および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態による光学要素には、それだけに限らないが、眼科的要素、ディスプレイ要素、窓、鏡および液晶セル要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「眼科的」とは、目および視覚に関係または関連することを意味する。眼科的要素の非限定的な例には、分割複眼レンズもしくは非分割複眼レンズ(それだけに限らないが、二焦点レンズ、三焦点レンズおよび多重焦点レンズなど)のいずれかであり得る、矯正レンズ、および単焦点レンズもしくは複眼レンズを含む非矯正レンズ、ならびにそれだけに限らないが、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学機器用(例えば、カメラおよび望遠鏡)のレンズを含む、視覚を(美容的にもしくは他の方法で)矯正、保護または増強するために使用される他の要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「ディスプレイ」とは、単語、数字、記号、設計もしくは図面における情報の可視表示または機械可読表示を意味する。ディスプレイ要素の非限定的な例には、スクリーン、モニター、およびセキュリティマークなどの安全要素が含まれる。本明細書で使用する場合、用語「窓」とは、そこを通して放射線の透過を可能にするように適合した開口部を意味する。窓の非限定的な例には、自動車および航空機の透明体、風よけ、フィルター、シャッターおよび光学スイッチが含まれる。本明細書で使用する場合、用語「鏡」とは、大部分の入射光を鏡面反射する表面を意味する。本明細書で使用する場合、用語「液晶セル」とは、整列させることができる液晶材料を含む構造を指す。液晶セル要素の非限定的な一例は、液晶ディスプレイである。
【0101】
本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態は、基材および基材の一部に接続した上記非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック組成物を含むフォトクロミック物品を提供する。本明細書で使用する場合、用語「接続している」とは、直接的にまたは別の材料もしくは構造を通して間接的に結びついていることを意味する。
【0102】
本明細書に開示する非限定的な実施形態は、フォトクロミック組成物を、インモールドキャスティング、コーティングおよび積層の少なくとも1つによって基材の少なくとも一部に接続することを含む、光学要素を調製する方法を提供する。
【0103】
例えば、非限定的な一実施形態によると、フォトクロミック組成物を、インモールドキャスティングによって基材の少なくとも一部に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得るフォトクロミック組成物を含むコーティング組成物を、金型の表面に塗布する。その後、コーティングした基材を、金型から取り出す。本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物を使用することができる粉末コーティングの非限定的な例は、これによって開示が具体的に参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,068,797号の第7欄50行目〜第19欄42行目に示されている。
【0104】
別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を、コーティングによって基材の一部に接続することができる。適当なコーティング法の非限定的な例には、スピンコーティング、スプレーコーティング(例えば、液体または粉末コーティングを使用する)、カーテンコーティング、ロールコーティング、スピンおよびスプレーコーティング、オーバーモールディングならびにこれらの組み合わせが含まれる。例えば、非限定的な一実施形態によると、フォトクロミック組成物を、オーバーモールディングによって基材に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物(前記のように液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得る)を含むコーティング組成物を、金型に塗布することができ、次いで、基材がコーティングと接触して、コーティングを基材の表面上に広がらせるように基材を金型に入れることができる。その後、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させることができ、コーティングした基材を金型から取り出すことができる。本明細書で使用する場合、用語「硬化」とは、それだけに限らないが、キュアリング、重合、架橋、冷却および乾燥を含む。あるいは、基材と金型との間に開いた領域が規定されるように基材を金型に入れ、その後、フォトクロミック組成物を含むコーティング組成物を開いた領域に射出することによって、オーバーモールディングを行うことができる。その後、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させることができ、コーティングした基材を金型から取り出すことができる。
【0105】
さらにまたはあるいは、コーティング組成物(フォトクロミック組成物を含むまたは含まない)を、(例えば、前記方法のいずれかによって)基材に塗布することができ、コーティング組成物を、少なくとも部分的に硬化させることができ、そしてその後、(前記のように)フォトクロミック染料をコーティング組成物に吸収させることができる。
【0106】
基材が高分子材料またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を、積層によって、基材の少なくとも一部に接続することができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物を含むフィルムを、接着剤ならびに/あるいは熱および圧力の適用を用いてまたは用いずに、基材の少なくとも一部に接着させるかまたは接続することができる。その後、所望であれば、第2の基材を第1の基材の上に適用することができ、2つの基材を共に積層して(すなわち、熱および圧力の適用によって)、要素を形成することができ、ここでフォトクロミック組成物を含むフィルムは、2つの基材間に挿入されている。フォトクロミック組成物を含むフィルムを形成する方法は、例えば、それだけに限らないが、フォトクロミック組成物を高分子溶液またはオリゴマー溶液または混合溶液と混ぜ合わせ、そこからフィルムをキャストしまたは押出し、必要に応じて、少なくとも部分的にフィルムを硬化させることを含むことができる。さらにまたはあるいは、フィルムを形成し(フォトクロミック組成物を含むまたは含まない)、(上記のように)フォトクロミック組成物を吸収させることができる。
【0107】
さらに、本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物および物品は、前記組成物もしくは物品の加工および/または性能を助ける他の添加物をさらに含むことができることが当業者によって認識されよう。このような添加物の非限定的な例には、光開始剤、熱開始剤、重合抑制剤、溶媒、光安定剤(それだけに限らないが、紫外線吸収剤およびヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの光安定剤など)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、均染剤(それだけに限らないが、界面活性剤など)、フリーラジカル捕捉剤、定着剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤など)、ならびにこれらの組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0108】
本開示は、本出願に記載の特定の実施例に関して限定されるべきではない。当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形をすることができる。本明細書に列挙するものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等な方法および装置が、前記記載から当業者に明らかであろう。このような修正および変形は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図されている。本開示は、添付の特許請求の範囲に与えられる同等物の完全な範囲に沿って、特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物または生物学的システムに限定されるべきではなく、当然、変化することができることを理解すべきである。本明細書で使用する専門用語は、特定の実施例を説明するためのものに過ぎず、限定的であることが意図されていないことも理解すべきである。
【0109】
本明細書中の実質的に任意の複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または用途に適当なように、複数から単数におよび/または単数から複数に翻訳することができる。種々の単数/複数の置き換えが、分かりやすいように本明細書に明確に示されている。
【0110】
一般に、本明細書中、特に添付の特許請求の範囲内(例えば、添付の特許請求の範囲の要部)で使用する用語は、一般的に「非限定的な(open)」用語として意図されている(例えば、用語「含んでいる」は、「〜を含んでいるがそれに限らない」と解釈されるべきであり、用語「有している」は、「少なくとも〜を有している」と解釈されるべきであり、用語「含む」は「〜を含むがそれに限らない」と解釈されるべきである等)ことが当業者によって理解されるだろう。さらに、導入された請求項記載の特定の数が意図される場合、このような意図は当該請求項中に明確に記載され、このような記載がない場合には、このような意図が存在しないことが当業者によって理解されるだろう。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」を使用し、請求項記載を導入することがある。しかしながら、このような句の使用は、不定冠詞「a」または「an」による請求項記載の導入が、たとえ同一請求項が導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」ならびに「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合でも、このような導入された請求項記載を含む特定の請求項をこのような記載を1つのみ含む実施形態に限定することを示唆すると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。定冠詞を使用して請求項記載を導入する場合にも同様のことが当てはまる。さらに、導入された請求項記載の特定の数が明確に記載されている場合であっても、このような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが当業者によって認識されるだろう(例えば、他の修飾語のないただの「2つの記載」という記載は、少なくとも2つの記載または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC等の少なくとも1つ」に類似の表現(convention)が使用される例では、一般に、このような構造は、当業者がその表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、BおよびCの少なくとも1つを有するシステム」は、それだけに限らないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBの両者、AおよびCの両者、BおよびCの両者、ならびに/あるいはA、BおよびCの全て等を有するシステムを含むだろう)。さらに、2つ以上の選択的用語を示す事実上任意の離接語および/または離接句は、明細書内であろうと、特許請求の範囲内であろうと、または図面内であろうと、その用語のうちの1つ、その用語のうちのいずれか、またはその用語の両方を含む可能性を意図することを理解すべきであることが、当業者によって理解されるだろう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0111】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループによって記載される場合、それにより本開示がマーカッシュグループの任意の個々の構成員または構成員のサブグループによっても記載されることを当業者は認識するだろう。
【0112】
当業者によって理解されるように、全ての目的のために、例えば、明細書の提供に関して、本明細書に開示する全ての範囲は、任意の全ての可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の記載された範囲は、少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等へ分解される同一の範囲を十分に記載し、および可能にしていることを容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に記載する各範囲は、下部3分の1、中部3分の1および上部3分の1等に容易に分解することができる。また、当業者によって理解されるように、「〜まで」、「少なくとも〜」、「〜を超える」、「〜未満」などの全ての用語は、記載される数を含み、後で上記の部分範囲に分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、個々の構成員を含む。したがって、例えば、1〜3個のセルを有する群とは、1、2または3個のセルを有する群を指す。同様に、1〜5個のセルを有する群とは、1、2、3、4または5個のセル等を有する群を指す。
【0113】
種々の態様および実施形態を本明細書で開示してきたが、別の態様および実施形態が当業者に明らかであろう。本明細書に開示する種々の態様および実施形態は、例示のためのものであり、限定的であることが意図されておらず、その真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示されている。
【0114】
実施例
本明細書に開示する種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック染料を製造するために使用する合成手順を実施例1〜3に示す。
[実施例1]
【0115】
1,3,3−トリメチル−6−(2−(1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[b][1,4]オキサジン−2,2’−インドリン]−6−イルオキシ)エトキシ)スピロ[インドリン−2,3’−ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]の合成
【0116】
【化9】

【0117】
化合物2の調製:2,3,3−トリメチル−3H−インドールおよびヨードメタンのジクロロエタン中溶液を、4時間攪拌することにより還流する。次いで、反応混合物を室温で1時間撹拌し、沈殿した固体を濾過により回収する。
【0118】
化合物3の調製:化合物2の粗製固体をアセトンで洗浄した後、固体の一部をNaOH水溶液(1M)に溶解させる。結果として生じる1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドリンをクロロホルムで抽出する。有機層を無水NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させた。
【0119】
化合物5の調製:化合物3および4−ブロモ−2−ニトロソフェノールをエタノールに溶解し、混合物を90℃で3時間攪拌する。混合物を冷却した後、濾過によって固体生成物5を得る。
【0120】
化合物7の調製:6−ブロモ−2,3,3−トリメチル−3H−インドールおよびヨードメタンのジクロロエタン中溶液を、6時間攪拌することにより還流する。次いで、反応混合物を室温で1時間撹拌し、沈殿した固体7を濾過により回収する。
【0121】
化合物8の調製:化合物7の固体をアセトンで洗浄した後、固体の一部をNaOH水溶液(1M)に溶解させる。結果として生じる6−ブロモ−1,3,3−トリメチル−2−メチレンインドリン、8をクロロホルムで抽出する。有機層を無水NaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発させる。生成物がかなり高収率で得られる。
【0122】
化合物10の調製:化合物8および1−ニトロソナフタレン−2−オールをエタノールに溶解し、混合物を90℃で3時間攪拌する。混合物を冷却した後、濾過によって固体生成物、6−ブロモ−1, 3,3−トリメチルスピロ[インドリン−2,3’−ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]を得る。
【0123】
化合物11の調製:化合物5および10を、1,2−エタンジオールおよびHCl(0.1M溶液)が存在する状態でトルエンに溶解し、混合物を2時間還流する。シリカゲルクロマトグラフィー(EA:ヘキサン=1:4)により、最終化合物1,3,3−トリメチル−6−(2−(1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[b][1,4]オキサジン−2,2’−インドリン]−6−イルオキシ)エトキシ)スピロ[インドリン−2,3’−ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]を得る。結果として生じる化合物を、THF/エーテル中で再沈殿により精製する。
[実施例2]
【0124】
1,3,3−トリメチル−6−(4−((1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[b][1,4]オキサジン−2,2’−インドリン]−6−イルオキシ)メチル)ベンジルオキシ)スピロ[インドリン−2,3’−ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]の合成
【0125】
【化10】

【0126】
化合物12の合成は、化合物11の合成に非常に類似している。
【0127】
化合物5および10を、1,4−フェニレンジメタノールが存在する状態でジメチルホルムアミドに溶解する。反応混合物を一晩還流する。シリカゲルクロマトグラフィー(EA:ヘキサン=1:4)により、最終化合物、1,3,3−トリメチル−6−(4−((1’,3’,3’−トリメチルスピロ[ベンゾ[b][1,4]オキサジン−2,2’−インドリン]−6−イルオキシ)メチル)ベンジルオキシ)スピロ[インドリン−2,3’−ナフト[2,1−b][1,4]オキサジン]を得る。結果として生じる化合物を、THF/ヘキサン中で再沈殿により精製する。
[実施例3]
【0128】
スキームIII−1によるフォトクロミック染料の合成。
【0129】
【化11】

【0130】
3,5−ジブロモ−2−メチルチオフェン2の合成:酢酸中臭素を、0℃で2−メチルチオフェンの酢酸(100mL)中攪拌溶液にゆっくり添加する。反応混合物をこの温度で一晩攪拌する。反応を水30mLの添加によりクエンチする。混合物を、NaCO固体によりpH9.0に中和し、エーテルで抽出する。エーテル抽出物を乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣を、真空中で蒸留により精製する。化合物5が沸点100℃の無色油として得られる。
【0131】
3−ブロモ−2−メチル−5−チエニルボロン酸3の合成:ヘキサン中n−ブチルリチウムを、アルゴン雰囲気下−78℃で、化合物2の乾燥エーテル(150mL)中攪拌溶液に添加する。30分攪拌した後、ホウ酸トリブチルエステルを、反応混合物に素早く添加する。混合物を4%NaOH水溶液(100mL)で抽出し、抽出物を回収し、10%HClにより中和する。固体残渣を洗浄し、濾過し、乾燥させる。化合物3が融点229℃の黄色がかった固体として得られる。
【0132】
3−ブロモ−2−メチル−5−(4−ヒドロキシチエニル)チオフェン5の合成:化合物3を、80℃で24時間、テトラヒドロフラン(THF)中テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)[Pd(PPh]およびNaCOの存在下で5−ブロモチオフェン−2−オールと混合する。粗製生成物を真空中で蒸留し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製する。化合物5(5.01g)が、黄色がかった固体として得られる。
【0133】
化合物9の合成:合成は、化合物5についての合成に非常に類似している。カップリング反応で、化合物4の代わりに化合物8を使用する。
【0134】
4’−(2−(5’−ブチル−5−メチル−2,2’−ビチオフェン−4−イル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンタ−1−エニル)−5’−メチル−2,2’−ビチオフェン−5−オール7の合成:無水THF中化合物5を、アルゴン雰囲気下−78℃で、2.4モル/L n−BuLiヘキサン溶液に滴加する。混合物を1時間攪拌し続け、5’−ブチル−5−メチル−4−(ペルフルオロシクロペンタ−1−エニル)−2,2’−ビチオフェン、6を−78℃で反応混合物にゆっくり添加し、4時間攪拌する。反応を50mLの水でクエンチする。混合物を室温に加温し、エーテルで抽出する。有機層をMgSOで乾燥させ、濾過し蒸発させる。粗製生成物を、溶離液としてヘキサンを使用して、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0135】
化合物11の合成:合成は、化合物5についての合成に非常に類似している。カップリング反応で、化合物6の代わりに化合物11を使用する。
【0136】
化合物12の合成:化合物7および11を、ジブロモエタンおよび炭酸カリウムの存在下、室温で、THF中で混合する。反応混合物を、一晩還流させる。粗製生成物を中和し、濾過する。濾液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の光反応性基を含むフォトクロミック染料であって、
第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、
第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている、
フォトクロミック染料。
【請求項2】
前記少なくとも2個の光反応性基が、C1〜12アルキレン、C1〜12ヘテロアルキレン、C1〜12アルコキシ、C1〜6アルキレンオキシ、C1〜6アルキレンジオキシ、C1〜6フェニレンオキシおよびC1〜6フェニレンジオキシからなる群から選択される非共役結合によって互いに結合している、請求項1に記載のフォトクロミック染料。
【請求項3】
前記第1のフォトクロミック反応が、前記第1の光反応性基中の第1の共役系の修飾を含み、前記第2のフォトクロミック反応が、前記第2の光反応性基中の第2の共役系の修飾を含む、請求項1に記載のフォトクロミック染料。
【請求項4】
前記第1の光反応性基および前記第2の光反応性基が、異なる吸収極大を有する、請求項1に記載のフォトクロミック染料。
【請求項5】
前記第1の光反応性基と前記第2の光反応性基との間の吸収極大の差が、約50nm以上である、請求項4に記載のフォトクロミック染料。
【請求項6】
前記少なくとも2個の光反応性基が、独立に、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物およびフルギド化合物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のフォトクロミック染料。
【請求項7】
第1の光反応性基および第2の光反応性基が、独立に、式Iおよび式II:
【化1】

(式中、R〜R15は、独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C1〜12アルキル、置換もしくは非置換C1〜12アルコキシ、置換もしくは非置換C1〜12アルケニル、置換もしくは非置換C1〜12共役アルキル、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す、または
置換基は一緒になって、アリール基を完成するアルキレンもしくはアルケニレン鎖を形成する)
からなる群から選択される少なくとも1つの構造である、互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を有するフォトクロミック染料。
【請求項8】
およびRが、独立に、水素、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す、
あるいは
およびR、またはRおよびR10が、一緒になって、アリール基を完成するアルキレンまたはアルケニレン鎖を形成し、
13およびR14が、独立に、水素を表し、
12およびR15が、独立に、水素、置換もしくは非置換C6〜12共役アルキル、置換もしくは非置換アリール基または置換もしくは非置換ヘテロアリール基を表す、
請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項9】
およびRが、独立に、水素もしくはフェニルを表す、または
およびR、もしくはRおよびR10が、一緒になって、ベンゼンもしくはナフチルを形成し、
13およびR14が、独立に、水素を表し、
12およびR15が、独立に、水素、フェニルまたは置換もしくは非置換ジチエノチオフェニルを表す、
請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項10】
式Iの前記フォトクロミック基が、式I−1〜I−9:
【化2】


(式中、R’およびR’’は、独立に、水素、ハロゲン、置換もしくは非置換C1〜6アルキルまたは置換もしくは非置換C1〜6アルコキシを表す)
からなる群から選択される、請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項11】
式IIの前記フォトクロミック基が、式II−1〜II−7:
【化3】


(式中、RおよびR’’’は、独立に、水素または置換もしくは非置換C1〜12アルキルを表す)
からなる群から選択される、請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項12】
前記第1の光反応性基および前記第2の光反応性基が、C1〜12アルキレン、C1〜12ヘテロアルキレン、C1〜6アルキレンオキシおよびC1〜6アルキレンジオキシからなる群から選択される非共役結合によって互いに結合している、請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項13】
前記第1の光反応性基が、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、前記第2の光反応性基が、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている、請求項7に記載のフォトクロミック染料。
【請求項14】
ポリマー、オリゴマー、モノマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料と、
互いに結合している少なくとも2個の光反応性基を有する、前記材料の少なくとも一部に組み込まれた少なくとも1種のフォトクロミック染料と
を含むフォトクロミック組成物であって、
第1の光反応性基は、第1の波長を有する放射線に反応して第1のフォトクロミック反応を受けるよう構成されており、第2の光反応性基は、第2の波長を有する放射線に反応して第2のフォトクロミック反応を受けるよう構成されている、フォトクロミック組成物。
【請求項15】
前記材料が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびにポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群の構成員からなるポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項14に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の材料が、約0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種の第2の材料をさらに含む、請求項14に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項17】
前記染料が、前記第2の材料に結合している、請求項16に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の材料が、約0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリシロキサンおよび/または少なくとも1種のポリアクリレートをさらに含む、請求項14に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項19】
前記第1の光反応性基および前記第2の光反応性基が、C1〜12アルキレン、C1〜12ヘテロアルキレン、C1〜6アルキレンオキシおよびC1〜6アルキレンジオキシからなる群から選択される非共役結合によって互いに結合している、請求項14に記載のフォトクロミック組成物。
【請求項20】
前記少なくとも2個の光反応性基が、独立に、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物およびフルギド化合物からなる群から選択される少なくとも1つの構造である、請求項14に記載のフォトクロミック組成物。

【公表番号】特表2013−515089(P2013−515089A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544402(P2012−544402)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009128
【国際公開番号】WO2011/096643
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)