説明

フォーカス制御装置、内視鏡装置及びフォーカス制御方法

【課題】 撮像光学系の焦点モードを設定することにより、適切な状態においてオートフォーカスを実行可能なフォーカス制御装置、内視鏡装置及びフォーカス制御方法等を提供すること。
【解決手段】 フォーカス制御装置は、光学倍率を調整するズームレンズ240を少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部330と、撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部とを含み、焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有し、フォーカス制御部330は、広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、ズームレンズ240の位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、固定焦点モード及びAFモードの切り替え制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカス制御装置、内視鏡装置及びフォーカス制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ズームレンズにより対物レンズの画角及び光学倍率を調整し、広角(以下、WIDE)側では被写体となる消化管全体の観察(通常観察)を行い、望遠(以下、TELE)側では消化管の一部を拡大して観察(拡大観察)を行うズーム機能を備えた内視鏡装置が実用化されている。
【0003】
ズーム機能を備えた内視鏡装置では、TELE側で対物レンズの画角を狭くして光学倍率を大きくすると共に、ベスト被写体距離が短くなるようにレンズ設計を行うことで、拡大観察に必要な光学倍率を実現している場合が多い。ここでベスト被写体距離とは、被写体の像位置が撮像素子の撮像面に一致する場合の、対物レンズ先端から被写体までの距離である。TELE側でベスト被写体距離を短くすることで、被写体により近接して観察を行うことが可能になるため、拡大観察時の光学倍率をより大きくすることが可能になる。
【0004】
一方、ベスト被写体距離が短くなると、被写体位置の移動による像位置の移動量が大きくなるため、一般的に被写界深度が狭くなる。このため、近年のズーム機能を備えた内視鏡装置では、TELE側の被写界深度の幅が1mm以下となる場合もあり、ユーザーが被写体にピントを合わせることが難しくなってきている。このような問題を解決するために、例えば特許文献1〜3に示すようなオートフォーカス(以下、AF)機能を備えた内視鏡装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−258164号公報
【特許文献2】特開平8−106060号公報
【特許文献3】特開2002−253488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1では、通常観察と拡大観察のどちらの状態においてもAF(Auto-Focus)を行っている。しかし、内視鏡における通常観察では、図4(A)に示すように奥行きのある消化管を観察するため、取得される画像上の位置により、対応する被写体までの距離が大きく異なる。そこで、例えば図5に示すように画像の中心部分を評価領域としてAFを行うと、図4(A)に示すように画像の中心部分に対応する比較的遠い距離の被写体にピントが合ってしまい、比較的近い距離にユーザー観察したい病変部がある場合は、病変部にピントが合わずユーザーの観察に支障をきたす。一方、画像の周辺部分を評価領域としてAFを行う場合は、画像の周辺部分に対応する比較的近い距離の被写体にピントが合うため、遠い距離に病変部がある場合は病変部にピントが合わず、ユーザーの観察に支障をきたす。さらに、ユーザーが観察したい病変部の画像上の位置を、取得された画像から判別することは困難であるため、AFを用いた場合もユーザーが観察したい領域にピントを合わせることが難しいという課題があった。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、撮像光学系の焦点モードを設定することにより、適切な状態においてオートフォーカスを実行可能なフォーカス制御装置、内視鏡装置及びフォーカス制御方法等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、前記撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、を含み、前記焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有し、前記フォーカス制御部は、広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行うフォーカス制御装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様では、ズームレンズと基準点との位置関係に基づいて、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行う。これにより、適切な状態においてAFモードに移行し、AFを実行すること等が可能になる。
【0010】
また本発明の他の態様は、光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、前記撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、を含み、前記フォーカス制御部は、前記ズームレンズの位置が、広角端と望遠端の間に位置する基準点よりも広角側である場合には、コンティニュアスAFを行うモードに前記焦点モードを設定し、前記ズームレンズの位置が、前記基準点よりも望遠側である場合には、前記コンティニュアスAFを停止するフォーカス制御装置に関係する。
【0011】
また本発明の更に他の態様は、光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系と、前記撮像光学系で結像された被写体像に対応する画像を生成する撮像素子と、前記撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、を含み、前記焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有し、前記フォーカス制御部は、広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行う内視鏡装置に関係する。
【0012】
また本発明の更に他の態様は、光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系におけるフォーカス制御方法であって、前記撮像光学系の焦点モードが、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有する場合に、広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記焦点モードの設定制御として、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行い、設定された前記焦点モードに基づいて前記撮像光学系のフォーカス制御を行うフォーカス制御方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかる内視鏡装置のシステム構成例。
【図2】フォーカスレンズ制御部の構成例。
【図3】フォーカスレンズ制御部の他の構成例。
【図4】図4(A)はズームレンズが広角側にあるときの撮像部と被写体の関係図、図4(B)はズームレンズが望遠側にあるときの撮像部と被写体の関係図。
【図5】評価領域の設定によってはAFが効果的ではないことを説明する図。
【図6】図6(A)は固定焦点モードにおけるズームレンズ位置と被写界深度の関係図、図6(B)はAFモードにおけるズームレンズ位置と被写界深度の関係図。
【図7】操作部の構成例。
【図8】操作部の他の構成例。
【図9】対物レンズ系(撮像光学系)の構成例。
【図10】本実施形態にかかる内視鏡装置の他のシステム構成例。
【図11】第4の実施形態における内視鏡装置のシステム構成例。
【図12】モード切り替え制御についての説明図。
【図13】第5の実施形態における内視鏡装置のシステム構成例。
【図14】第6の実施形態における内視鏡装置のシステム構成例。
【図15】位相差検出用素子が設けられた撮像素子の構成例。
【図16】位相差AFの動作説明図。
【図17】位相差AFに用いるルックアップテーブルの第1の例。
【図18】位相差AFに用いるルックアップテーブルの第2の例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1.第1の実施形態
本発明の第1の実施形態に係る内視鏡システムについて、図1を用いて説明する。本実施形態に係る内視鏡システムは、光源部100と、撮像部200と、処理部300と、表示部400と、外部I/F部500と、操作部600を備えている。
【0016】
光源部100は、白色光を発生する白色光源110と白色光をライトガイドファイバ210に集光するための集光レンズ120を備えている。
【0017】
撮像部200は、例えば体腔への挿入を可能にするため細長くかつ湾曲可能に形成されている。撮像部200には、光源部で集光された光を導くためのライトガイドファイバ210と、該ライトガイドファイバにより先端まで導かれてきた光を拡散させて観察対象に照射する照明レンズ220と、観察対象から戻る反射光を結像する対物レンズ系230と、対物レンズ系230に含まれ光学倍率を調整するズームレンズ240と、対物レンズ系230に含まれ焦点位置を調整するフォーカスレンズ250と、ズームレンズ240を駆動するズームレンズ駆動部260と、フォーカスレンズ250を駆動するフォーカスレンズ駆動部270と、結像された反射光を光電変換して画像を生成する撮像素子280を備えている。ズームレンズ駆動部260及びフォーカスレンズ駆動部270は例えばボイスコイルモーター(以下、VCM)である。また、撮像素子280は例えばベイヤ配列の色フィルタを持つ撮像素子である。
【0018】
処理部300はAD変換部310と、ズームレンズ制御部320と、フォーカスレンズ制御部330(広義にはフォーカス制御部)と、画像処理部340と、制御部350を備えている。AD変換部310は、撮像素子280から出力されるアナログ信号をデジタルの画像信号に変換してフォーカスレンズ制御部330と、画像処理部340に出力する。
【0019】
ズームレンズ制御部320は、操作部600と、ズームレンズ駆動部260と、フォーカスレンズ制御部330とに接続されており、操作部600から出力される情報に従ってズームレンズ位置を制御する。さらにズームレンズ制御部320は、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ制御部330に出力する。フォーカスレンズ制御部330は、操作部600と、フォーカスレンズ駆動部270と、ズームレンズ制御部320とに接続されており、操作部600から出力される情報や、ズームレンズ制御部320から出力されるズームレンズの位置情報に従ってフォーカスレンズ位置を制御する。ここでフォーカスレンズ位置及びズームレンズ位置は、例えば図9に示すように、対物レンズ系230の先端を基準とした場合の、フォーカスレンズ及びズームレンズの先端の位置として定義する。操作部600、ズームレンズ制御部320、フォーカスレンズ制御部330の詳細については後述する。
【0020】
画像処理部340は、AD変換部310から出力された画像信号に対してホワイトバランス、補間処理(デモザイキング処理)、色変換、階調変換、ノイズリダクション等の画像処理を施し、表示部400に画像信号を出力する。表示部400は例えば液晶モニタであり、画像処理部340から出力される画像信号を表示する。制御部350は、白色光源110、画像処理部340、外部I/F部500と双方向に接続されており、外部I/F部500からの入力情報に従ってこれらを制御する。外部I/F部500は、内視鏡装置に対するユーザーからの入力等を行うためのインターフェースであり、撮影の開始/終了を行うためのスタートボタンや画像の明るさを調整するための露光量調整ボタン、その他の各種撮影条件や画像処理のパラメータを調整するための調整ボタンなどを含んで構成されている。
【0021】
次に操作部600、ズームレンズ制御部320、フォーカスレンズ制御部330の詳細について説明する。図7に本実施形態における操作部600の一例を示す。本実施形態において、操作部600は例えば撮像部200と一体化して構成されており、ズームレバー610とAFボタン620を備えている。ズームレバー610は、例えば一定の範囲を連続的に動作させることが可能であり、ユーザーはズームレバー610を動かすことで、ズームレンズ位置をWIDE端からTELE端まで連続的に調整することができる。具体的には、例えば操作部600は、ズームレバー610の位置情報をズームレンズ制御部320に出力する。ズームレンズ制御部320は予め設定されたルックアップテーブル等を用いてズームレバー610の位置情報をズームレンズの位置情報に対応付け、ズームレンズの位置情報をズームレンズ駆動部260に出力する。ズームレンズ駆動部260は、ズームレンズ制御部320から出力されたズームレンズの位置情報に基づいて、ズームレンズ240を駆動する。さらにズームレンズ制御部320は、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ制御部330に出力する。また、操作部600は例えばAFボタン620が押されるたびに、AFの開始/終了信号を交互にフォーカスレンズ制御部330に出力する。
【0022】
図2に本実施形態におけるフォーカスレンズ制御部330の一例を示す。フォーカスレンズ制御部330(広義にはフォーカス制御部)は、観察モード判定部331と、フォーカスレンズ位置決定部332と、AF制御部333を備えている。観察モード判定部331は、ズームレンズ制御部320から出力されたズームレンズの位置情報と、操作部600から出力されたAFの開始/終了情報に基づいて、観察モード(焦点モード)を決定する。具体的には、観察モード判定部331はズームレンズの位置が所定の位置DよりもWIDE側に位置する場合は固定焦点モードを選択し、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ位置決定部332に出力する。また、観察モード判定部331は、ズームレンズの位置が所定の位置DよりもTELE側にあり、操作部600からAFの開始信号が出力されていない場合も、固定焦点モードを選択し、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ位置決定部332に出力する。フォーカスレンズ位置決定部332は、ズームレンズの位置情報に基づいてフォーカスレンズ位置を決定し、フォーカスレンズの位置情報をフォーカスレンズ駆動部270に出力する。フォーカスレンズ駆動部270は、フォーカスレンズ位置決定部332から出力されたフォーカスレンズの位置情報に基づいて、フォーカスレンズ250を駆動する。
【0023】
また、観察モード判定部331は、ズームレンズ位置が所定の位置DよりもTELE側にあり、操作部600からAFの開始信号が出力された場合は、AFモードを選択し、AFの開始信号をAF制御部333に出力する。さらに観察モード判定部331は、ズームレンズ位置が所定の位置DよりもTELE側にあり、操作部600からAFの終了信号が出力された場合は、AFの終了信号をAF制御部333に出力する。AF制御部333は、観察モード判定部331から出力されたAFの開始信号に従って、AF動作を開始する。ここでAF制御部333は、例えばAD変換部310から出力される画像信号からコントラスト値を算出し、公知のコントラストAF技術に基づいてフォーカスレンズを駆動すればよい。さらにAF制御部333は、算出されたコントラスト値から合焦状態となったか否かの判定を行い、合焦状態と判定された場合はAF動作を終了してもよいし、観察モード判定部331からAFの終了信号が出力されるまではAFを継続するように、公知のコンティニュアスAF技術に基づいて、フォーカスレンズを駆動してもよい。また本実施形態は、例えば撮像素子280に図示しない位相差情報取得用のセンサを備えてもよい。この場合、AD変換部310は撮像素子280から出力されるアナログ信号からデジタルの位相差情報を生成してAF制御部333に出力し、AF制御部333はこの位相差情報に基づいて、公知の位相差AF技術を用いてフォーカスレンズを駆動すればよい。
【0024】
次にフォーカスレンズ位置決定部332における、フォーカスレンズ位置の決定方法の詳細について説明する。図6(A)は本実施形態において固定焦点モードが選択されている場合の、ズームレンズ位置とそれに対応するベスト被写体距離、及び被写界深度範囲を示した図である。なお本実施形態では、ズームレバー610を操作することでズームレンズ位置を連続的に移動させることが可能であるが、ここでは説明を分かりやすくするため、ズームレンズ位置を段階的に移動させた場合を示している。本実施形態においてフォーカスレンズ位置決定部332は、観察モード判定部331から出力されるズームレンズの位置情報に基づいて、図6(A)に示すようにズームレンズ位置がWIDE端からTELE端に移動するに従って、ベスト被写体距離が短くなるようにフォーカスレンズ位置を決定する。ここでズームレンズ位置とその時に実現したいベスト被写体距離が決まれば、対物レンズ系230の設計データから、フォーカスレンズ位置は一義的に算出される。このためフォーカスレンズ位置決定部332は、例えば予め設定されたズームレンズ位置とフォーカスレンズ位置を対応付けるルックアップテーブル等を用いて、ズームレンズ位置からフォーカスレンズ位置を決定すればよい。
【0025】
図9に本実施形態における対物レンズ系230の一例を示す。この対物レンズ系は、フォーカスレンズ位置を一定の基準位置に固定し、ズームレンズ位置をWIDE端からTELE端に移動させた場合に、画角が狭くなる(光学倍率が大きくなる)と共にベスト被写体距離が短くなるような設計がなされている。このような対物レンズ系を使用する場合、フォーカスレンズ位置決定部332は、ズームレンズ位置によらずフォーカスレンズ位置を常に基準位置に固定することで、図6(A)に示すようなベスト被写体距離及び被写界深度範囲を実現することができる。また、例えば図示しない一般的なデジタルカメラの対物レンズ系では、ズームレンズ位置により画角を調整した場合も、ベスト被写体距離がほぼ一定になるような設計がなされている場合が多い。このような対物レンズ系を使用する場合、フォーカスレンズ位置決定部332は、ズームレンズ位置がWIDE端からTELE端に移動するに従ってベスト被写体距離が短くなるように、フォーカスレンズ位置を調整することで、図6(A)に示すようなベスト被写体距離及び被写界深度範囲を実現することが可能である。
【0026】
ここで、本実施形態において通常観察及び拡大観察を行う場合のユーザーの操作について、図6(A)、(B)を用いて説明する。まず、ユーザーはズームレバー610をWIDE端に移動させ、病変部を発見するための通常観察を行う(図6(A)のズームレンズ位置A)。この時、撮像部200では図4(A)に示すように、画角及び被写界深度が広い画像を取得することができる。本実施形態において、この時の被写界深度範囲は図6(A)に示すように約10〜50mmである。
【0027】
次にユーザーは、発見した病変部に対して撮像部200を徐々に近づけながら、病変部を拡大していく。本実施形態では病変部までの距離が10mm以下になると、病変部が被写界深度から外れてボケはじめる。この時、ユーザーはズームレバー610をTELE側に移動させ、被写界深度範囲を撮像部に近づける(図6(A)ズームレンズ位置B〜C)。これにより病変部が被写界深度内に入るため、ユーザーは病変部の観察を継続することができる。ここではズームレバー610と撮像部200の位置の両方をユーザーが操作することで、病変部が被写界深度内に入るように調整を行ってもよい。
【0028】
本実施形態においては、ズームレンズ位置がCの場合でも被写界深度範囲は約4〜7mmであり、ある程度の被写界深度が維持されている。このような条件下では、図4(A)に示したように、ユーザーは被写体となる消化管の壁面に対して撮像部200を平行もしくは少し斜めに傾けた状態で観察する場合が多い。この時、前述したように取得される画像上の位置によって、対応する被写体までの距離が大きく異なる。さらに、ユーザーが観察したいと考えている病変部の画像上の位置を、取得された画像から判別することは困難であるため、AFを行うことで病変部に正確にピントを合わせることは困難である。一方、ここではある程度の被写界深度が維持されているため、観察モード判定部331では固定焦点モードが選択され、ユーザーがズームレバー610や撮像部200の位置を操作することで、ユーザーが容易に病変部にピントを合わせることが可能になる。
【0029】
次にユーザーは、撮像部200をさらに病変部に近づけながら、ズームレバー610をTELE側に移動させ、病変部をより拡大する。本実施形態においては、ズームレンズ位置がDよりもTELE側にあると、図6(A)に示すように固定焦点モードが選択されている場合の被写界深度の幅は1mm前後かそれ以下となる。このような条件下では、図4(B)に示すようにユーザーは被写体となる消化管の壁面に対して撮像部200をほぼ正対させた状態で観察を行う場合が多い。これは被写界深度の幅が狭い場合、被写体に対して撮像部200を正対させないと、画像中のピントが合う領域が狭くなるからである。このような場合においては、ユーザーがズームレバー610や撮像部200の位置を操作することで被写体にピントを合わせることが難しくなる。このため、ユーザーはAFボタン620を押してAFを開始する。この時、観察モード判定部331でAFモードが選択されることで、図6(B)に示すように被写体までの距離に合わせてフォーカスレンズ位置が制御され、ユーザーが容易に被写体にピントを合わせることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態においては、ズームレンズ位置DからTELE端(ズームレンズ位置F)の範囲でAFが動作するように制御を行っている。しかし例えばズームレンズ位置Dにおいて、フォーカスレンズ位置を移動することでベスト被写体距離を最も短くした場合の光学倍率が拡大観察に十分であれば、ズームレンズ位置DをTELE端としてもよい。この場合、観察モード判定部331は、ズームレンズ位置がTELE端にあり、操作部600からAFの開始/終了信号が出力された場合は、AFモードを選択し、AFの開始/終了信号をAF制御部333に出力すればよい。
【0031】
以上の本実施形態では、焦点位置制御装置(フォーカス制御装置)は図1に示したように、フォーカスレンズ250の位置制御及び撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカスレンズ制御部330と、撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部(例えばAD変換部310に対応)とを含む。撮像光学系は、光学倍率を調整するズームレンズ240と、焦点位置を調整するフォーカスレンズ250とを含む。また、焦点モードは固定焦点モードと、AF(Auto-Focus)モードを有する。そして、ズームレンズ位置の広角端と望遠端の間の位置に基準点を設定した場合に、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240の位置が基準点に対して広角側に位置するか或いは望遠側に位置するかに応じて、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行う。
【0032】
ここで、固定焦点モードとは、ズームレンズ240の位置が決定された場合に、当該ズームレンズ位置に応じて決定される位置にフォーカスレンズ250の位置を設定するモードのことである。例えば図6(A)に示したモードであり、ズームレンズ位置が決定されると、その際のベスト被写体距離(合焦被写体距離、詳細については後述)が一意に決定される。フォーカスレンズ250の位置に応じてベスト被写体距離は変化するものであることに鑑みれば、ズームレンズ位置に応じてフォーカスレンズ位置が決定されるということに他ならない。
【0033】
これに対して、AFモードとは、オートフォーカスが行われるモードのことである。オートフォーカスの手法は既知の手法を用いるものとし、例えばコントラストAFであってもよいし、位相差AFであってもよい。AFモードとは例えば図6(B)に示したモードであり、特にズームレンズ位置がD〜Fの場合に対応する。図6(B)に示されているように、AFモードではズームレンズ位置が決定されたとしても、その際のベスト被写体距離は一意には決定されない。例えばコントラストAFであれば、取得した画像に設定される評価領域(コントラスト値を算出する対象となる領域)に対して、フォーカスが合うようなベスト被写体距離が設定されることになる。ベスト被写体距離の設定は、フォーカスレンズ250の位置を調整することにより行われる。
【0034】
また、焦点位置とは、被写体の像位置が撮像素子の撮像面に一致する場合の、対物レンズ先端に対する被写体の位置である。像平面に対応する被写体側の平面(合焦物体面)内では被写体は合焦状態にあり、焦点位置は、例えば対物レンズ先端から合焦物体面までの距離で表される。即ち、本明細書における焦点位置は、レンズに入射した平行光の収束点であるいわゆる「焦点」や、レンズからその「焦点」までの距離である「焦点距離」とは異なる用語である。本実施形態のフォーカス制御では、レンズ二群駆動におけるフォーカスレンズの位置、あるいはレンズ一群駆動におけるズームレンズの位置を調整することにより焦点位置を調整する。
【0035】
これにより、基準点とズームレンズ240との位置関係に基づいて、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行うことが可能になる。ここで切り替え制御とは、少なくともズームレンズ240と基準点との位置関係に基づいて、固定焦点モードとAFモードとを切り替える制御のことである。具体的には、第3の実施形態において後述するように、ズームレンズ240が広角側にあるときには固定焦点モードに設定し、望遠側にあるときにはAFモードに設定するように、ズームレンズ240と基準点との位置関係に基づく切り替えの制御であってもよい。また、第1の実施形態において述べたように、ズームレンズ240が広角側にあるときには固定焦点モードを設定し、望遠側にあるときには固定焦点モードとAFモードを切り替え可能(例えばAF開始信号の有無により切り替える)にするように、ズームレンズ240と基準点との位置関係に加えて、他の条件(例えばAF開始信号)を考慮した切り替えの制御であってもよい。このようにすることで、AFを実行可能な焦点位置制御装置、内視鏡装置等において、常にAFを行うのではなく、適切な状態においてAFを行うことが可能になる。特に内視鏡装置では、図4(A)のように管空状の被写体を観察するケースが想定され、この場合、取得された画像上の位置に応じて対応する被写体までの距離が大きく異なる(例えば画像周縁部では被写体距離が小さく、画像中心部では被写体距離が大きい)。このようなときにAFを実行したとしても、焦点が合うのは画像上の一部の領域に限られてしまうため、AFの効果が薄く、逆にユーザーの観察を妨げる要因となりうる。よって、例えば図4(B)のように画像上の位置が異なっても被写体距離がさほど変化しない状況等、AFが有効な状態において、AFを実行する。
【0036】
また、フォーカスレンズ制御部330は、焦点モードとして固定焦点モードが選択された状態において、ズームレンズ240の位置が広角側から望遠側に移動した場合には、合焦被写体距離が単調減少するようにフォーカスレンズの位置を決定してもよい。
【0037】
ここで、合焦被写体距離とは、撮像素子280において、撮像光学系を介した光が結像することによる被写体像が合焦状態にある場合の、撮像光学系からの被写体までの距離のことである。ただし、光が撮像素子280上において一点に収束しなかったとしても、その大きさが許容錯乱円よりも小さければ合焦状態にあると見なせることから、合焦被写体距離はある程度の幅を持つことになる。本実施形態における合焦被写体距離は、このような幅を持つ値であってもよいが、狭義にはベスト被写体距離であるものとし、ベスト被写体距離とは、撮像光学系を介した光が、撮像素子280上において一点に収束した場合における、撮像光学系からの被写体までの距離を表すものとする。
【0038】
これにより、図6(A)に示したような撮像光学系を実現することが可能になる。つまり、ズームレンズ位置を広角側から望遠側に移動させるほど、合焦被写体距離(ベスト被写体距離)は小さくなる。つまり、被写界深度範囲はより撮像光学系に近い位置に設定される(つまり撮像光学系に近い位置に焦点が合う)ことになる。特に内視鏡装置等では、ズームレンズ240を望遠側に移動させる(ズーム倍率を上げる)場合には、拡大観察を行うことが想定され、その場合には、挿入部(撮像部200)の先端も観察対象となる被写体に近づけることが一般的である。つまり、ズームレンズ240を望遠側に移動させるほど、撮像光学系と被写体との距離が小さくなることが想定されるため、図6(A)に示したような光学系を用いることで、ピントが合いやすくなるという利点がある。
【0039】
なお、本実施形態において用いる光学系は、レンズ二群駆動を想定している。レンズ二群駆動とは、ズームレンズとフォーカスレンズの両方が駆動可能な光学系の構成となる。この場合、ズームレンズ240の特性として、ズームレンズ位置を広角側から望遠側に移動させたとしても、ズーム倍率が変化するだけでベスト被写体距離が変化しないような構成にすることも可能である(一般的なデジタルスチルカメラ等で用いられる構成)。この場合には、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ位置が望遠側に移動した場合に、ベスト被写体距離を小さくするようにフォーカスレンズ250の位置を移動させる制御を行うことになる。
【0040】
また、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合には、焦点モードとして、ズームレンズ位置に応じた所定位置にフォーカスレンズ250を設定する固定焦点モードを選択し、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合には、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行ってもよい。
【0041】
これにより、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合、つまり、内視鏡装置等においては病変部の発見等(スクリーニング)を行っていることが想定される場合には、固定焦点モードに設定し、AFを実行しないようにする。スクリーニング時等は、図4(A)のように、画像上の位置によって被写体距離が大きく異なることが想定される他、病変部を発見するために挿入部の先端を移動、回転させることにより、観察領域が大きく変化することも考えられるため、AFが効果的でないためである。それに対して、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合には、内視鏡装置における拡大観察等の場合であるため、固定焦点モードの他、AFモードも選択可能にする。ここで、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御とは、例えばユーザーの指示による切り替えが考えられる。つまり、ユーザーの意志によりAFを用いない従来の固定焦点モードに設定してもよいし、AFモードに設定してもよい。AFモードを選択した場合には、AFが実行されるため、ピント合わせを容易に行うことができ、また、固定焦点モードを選択可能にすることで従来の観察手法を用いることもできるため、ユーザーの選択の幅を広げることが可能になる。
【0042】
また、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する状態において、AF開始信号が入力された場合には、焦点モードをAFモードに設定し、AF開始信号が入力されなかった場合には、焦点モードを固定焦点モードに設定してもよい。
【0043】
これにより、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合に、AF開始信号が入力されたか否かに基づいて、焦点モードを設定することが可能になる。AF開始信号とは、AFの開始を指示する信号であり、例えば操作部600のAFボタン620が押下されることにより、フォーカスレンズ制御部330に対して入力されるものである。AFボタン620を用いる手法であれば、ユーザーの意志を明確に反映することが可能である。ただし、これに限定されるものではなく、例えば画像処理部340における画像処理に基づく判定により、画像処理部340からフォーカスレンズ制御部330に対してAF開始信号が出力されてもよく、また、他の手法であってもよい。このようにすることで、ズームレンズ240と基準点との位置関係だけでなく、AF開始信号も考慮した上で、焦点モードを設定することが可能になる。
【0044】
また、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合には、AF開始信号が入力された場合にも、焦点モードを固定焦点モードに設定してもよい。
【0045】
これにより、ズームレンズ位置が広角側の場合には、AF開始信号が入力された場合にも固定焦点モードに設定することが可能になる。ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合とは、上述したように内視鏡装置におけるスクリーニング等の場合であり、AFが効果的でないことが想定される。そのような場合には、AFモードに移行しても、画像の狭い領域にしかピントが合わない等、ユーザーの観察を妨げることになりかねない。よって、ズームレンズ位置が広角側の場合には、AF開始信号が入力された場合にも、固定焦点モードに設定することが望ましい。
【0046】
また、焦点位置制御装置は、図1に示したようにズームレンズ240の位置を制御するズームレンズ制御部320を含んでもよい。そして、ズームレンズ制御部320は、ズームレンズ240の位置を連続的に制御する。
【0047】
これにより、ズームレンズ位置の連続的な制御が可能になる。これは例えば、図7に示したように、連続的な位置を設定可能なズームレバー610等により実現できる。このようにすることで、ズームレンズ240の位置を細かく設定することが可能になる。
【0048】
また、フォーカスレンズ制御部330は、焦点モードとしてAFモードが選択された場合には、シングルAFを実行してもよいし、コンティニュアスAFを実行してもよい。
【0049】
ここで、シングルAFとは一回だけピントを合わせるモードであり、例えばデジタルスチルカメラ等であればシャッターボタンを半押しした際等にピントが合うことになる。ピント合わせは一回であるため、ピント合わせ後に被写体の移動等により被写体距離が変化すればピントは合わなくなる。コンティニュアスAFとはピント合わせを継続するモードであり、被写体が動けば、動いた被写体にあわせて再度ピント合わせを実行する。
【0050】
これにより、AFのモードとして、シングルAFを用いることもできるし、コンティニュアスAFを用いることもできる。シングルAFを用いるかコンティニュアスAFを用いるかは、システムにより決定されてもよいし、操作部600等からユーザーが決定してもよい。
【0051】
また、以上の本実施形態は、図1に示したように、光学倍率を調整するズームレンズ240及び焦点位置を調整するフォーカスレンズ250を含む撮像光学系と、撮像光学系で結像された被写体像に対応する画像を生成する撮像素子280と、フォーカスレンズ250の位置を制御するとともに、撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカスレンズ制御部330と、を含む内視鏡装置に関係する。
【0052】
これにより、基準点とズームレンズ240との位置関係に基づいて、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行うことが可能な内視鏡装置を実現することが可能になる。内視鏡装置においては、上述したように、固定焦点モードではズームレンズ位置が広角側から望遠側に移動した場合に、合焦被写体距離(ベスト被写体距離)が単調減少するようにフォーカスレンズ250の位置を決定するような制御を行うことによる利点が大きい。ズームレンズ位置を望遠側に移動させる拡大観察時には、挿入部の先端を被写体に近づけることによる拡大操作も行われることが想定されるため、合焦被写体距離が小さいほどピントをあわせやすくなるためである。
【0053】
また、内視鏡装置のフォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合には、焦点モードとして、ズームレンズ位置に応じた所定位置にフォーカスレンズ250を設定する固定焦点モードを選択し、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合には、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行ってもよい。
【0054】
これにより、本実施形態において上述したような、広角側では固定焦点モードを選択し、望遠側では固定焦点モードとAFモードを切り替え可能に設定する内視鏡装置を実現することが可能になる。
【0055】
2.第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡システムについて説明する。図8は本実施形態における操作部600の一例を示した図である。本実施形態において、操作部600は例えば撮像部200と一体化して構成されており、AFボタン620とズームボタン630を備えている。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0056】
本実施形態において、操作部600は例えばズームボタン630が押されると、ズームレンズ位置情報をズームレンズ制御部320に出力する。具体的には操作部600は、ズームボタン630が押されるたびに、例えば図6(A)に示したズームレンズ位置A,B,C,Dに対応する情報を順番にズームレンズ制御部に出力する。ズームレンズ制御部320は、操作部600から出力されたズームレンズの位置情報を、ズームレンズ駆動部260に出力する。ズームレンズ駆動部260は、ズームレンズ制御部320から出力されたズームレンズの位置情報に基づいて、ズームレンズを駆動する。さらにズームレンズ制御部320は、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ制御部330に出力する。また、操作部600は例えばAFボタン620が押されるたびに、AFの開始/終了信号を交互にフォーカスレンズ制御部330に出力する。
【0057】
フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ制御部320から出力されたズームレンズの位置情報と、操作部600から出力されたAFの開始/終了情報に基づいて、第1の実施形態と同様に観察モードを決定し、フォーカスレンズ位置を制御する。この結果、ユーザーがズームボタン630を繰り返し押すことで、観察モード判定部331では固定焦点モードが選択され、ベスト被写体距離及び被写界深度範囲もズームレンズ位置A,B,C,Dに対応して図6(A)のように切り替わることになる。これによりユーザーは、第1の実施形態で説明したズームレバー610の替わりにズームボタン630を押すことで、被写体にピントを合わせることが可能になる。
【0058】
一方、ズームレンズ位置がDにある場合は被写界深度の幅が狭くなるため、ユーザーが被写体にピント合わせることが難しくなる。このような場合、ユーザーはAFボタン620を押すことでAFを開始する。この時、観察モード判定部331ではAFモードが選択され、図6(B)に示すように被写体までの距離に合わせてフォーカスレンズ位置が制御されることで、ユーザーが容易に病変部にピントを合わせることが可能になる。
【0059】
なお本実施形態では、ズームレンズ位置Dにおいて、フォーカスレンズ位置を移動することでベスト被写体距離を最も短くした場合の光学倍率が、拡大観察に十分であると仮定している。この場合の光学倍率が、拡大観察に不足する場合は、例えばズームレンズ位置がA〜EもしくはA〜Fの範囲で切り替わるようにすることで光学倍率を大きくすればよい。
【0060】
また、例えばズームレンズ位置をA〜Dの範囲で切り替える場合も、ズームレンズ位置Bを省略し、ユーザーがズームボタン630を繰り返し押すことで、ズームレンズ位置A,C,Dが順番に切り替わるような設定にしてもよい。ズームレンズ位置A〜C付近では被写界深度範囲が比較的広いため、ズームレンズ位置AとCのように被写界深度範囲が連続せずに切り替わるような設定を行ったとしても、ユーザーは撮像部200の位置を調整することで容易に被写体にピントを合わせることができる。
【0061】
以上の本実施形態では、焦点位置制御装置は、ズームレンズ240の位置を制御するズームレンズ制御部320を含む。そして、ズームレンズ制御部320は、ズームレンズ240の位置を離散的に制御する。
【0062】
これにより、ズームレンズ位置の離散的な制御が可能になる。これは例えば、図6(A)、図6(B)におけるA〜Fの6箇所のうちのいずれかを選択する制御等である。第1の実施形態のような連続的な制御に比べて、ズームレンズ位置の選択の幅は狭まるものの、ユーザーによるズームレンズ位置の微調整が不要になるため、ズームレンズ位置の設定操作を容易にすることができる。なお、離散的な制御は例えば上述したように、ズームボタン630等を用いることで実現できる。
【0063】
また、ズームレンズ制御部320は、離散的なズームレンズ位置として、基準点よりも広角側の位置である第1のズームレンズ位置及び基準点よりも望遠側の位置である第2のズームレンズ位置のいずれかを選択する制御を行ってもよい。そして、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が、第1のズームレンズ位置にあるか第2のズームレンズ位置にあるかに応じて、固定焦点モード及びAFモードの切り替え制御を行う。
【0064】
これにより、2つのズームレンズ位置の切り替えによる観察が可能になる。固定焦点モードとAFモードの切り替え制御としては、広角側である第1のズームレンズ位置においては固定焦点モードを選択し、望遠側である第2のズームレンズ位置においては固定焦点モードとAFモードを選択可能にすることが考えられる。このようにすることで、ズームレンズ位置を少なく限定することができるため、ユーザーの操作を容易にすることが可能になる。上述の例であれば、AFを用いない広角モード(第1のズームレンズ位置)と、AFを用いることが可能な望遠モード(第2のズームレンズ位置)の2つの切り替えを考慮すればよいため、連続的なズームレンズ位置制御や、選択可能なズームレンズ位置が多数存在する離散的ズームレンズ位置制御に比べて、ユーザーの負担が軽くなる。
【0065】
3.第3の実施形態
次に、第3の実施形態に係る内視鏡システムについて、図10をもちいて説明する。図示しない本実施形態の操作部600は、例えばズームレバー610を備えており、AFボタン620が省略された構成になっている。操作部600から出力された情報は、ズームレンズ制御部320に出力され、フォーカスレンズ制御部330には出力されない。その他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0066】
本実施形態におけるフォーカスレンズ制御部330の詳細について、図3を用いて説明する。フォーカスレンズ制御部330(広義にはフォーカス制御部)は、観察モード判定部331と、フォーカスレンズ位置決定部332と、AF制御部333を備えている。観察モード判定部331は、ズームレンズ制御部320から出力されたズームレンズの位置情報に基づいて、観察モードを決定する。具体的には、観察モード判定部331はズームレンズの位置が所定の位置DよりもWIDE側に位置する場合は固定焦点モードを選択し、ズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ位置決定部332に出力する。フォーカスレンズ位置決定部332は、ズームレンズの位置情報に基づいてフォーカスレンズ位置を決定し、フォーカスレンズの位置情報をフォーカスレンズ駆動部270に出力する。フォーカスレンズ駆動部270は、フォーカスレンズ位置決定部332から出力されたフォーカスレンズの位置情報に基づいて、フォーカスレンズを駆動する。本実施形態における、固定焦点モードが選択された場合のフォーカスレンズ位置の決定方法は、第1の実施形態と同様である。
【0067】
また、観察モード判定部331は、ズームレンズ位置が所定の位置DよりもTELE側にある場合はAFモードを選択し、AFの開始信号をAF制御部333に出力する。AF制御部333は、観察モード判定部331から出力されたAFの開始信号に従って、AF動作を開始する。本実施形態においては、ズームレンズ位置が所定の位置DよりもTELE側に移動して被写界深度幅が狭くなると、自動的にAFが開始される。これにより、ユーザーはAFボタン620を使用することなく、ズームレバー610の操作だけでAFを開始することができるため、快適に観察を行うことができる。さらにAF制御部333は、算出されたコントラスト値から合焦状態となったか否かの判定を行い、合焦状態と判定された場合はAF動作を終了してもよいし、観察モード判定部331からAFの終了信号が出力されるまではAFを継続するように、公知のコンティニュアスAF技術に基づいて、フォーカスレンズを駆動してもよい。ここで観察モード判定部331は、例えばズームレンズの位置が所定の位置DよりもWIDE側に位置し、なおかつコンティニュアスAF動作が継続されている場合は、固定焦点モードを選択してズームレンズの位置情報をフォーカスレンズ位置決定部332に出力すると共に、AF制御部333にコンティニュアスAFの終了信号を出力すればよい。これにより、例えばAF制御部333によりコンティニュアスAFが継続されている場合も、ユーザーはズームレバー610をWIDE側に移動させることでコンティニュアスAFを終了することができる。
【0068】
以上の本実施形態では、フォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合には、焦点モードとして、ズームレンズ位置に応じた所定位置にフォーカスレンズ250を設定する固定焦点モードを選択し、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合には、AFモードを選択する制御を行う。
【0069】
これにより、第1の実施形態とは異なり、ズームレンズ位置が望遠側にある場合には、AF開始信号等の他の情報を用いることなく、AFモードを選択することが可能になる。ズームレンズ位置が望遠側にある場合には、ズーム倍率が大きいこと及びベスト被写体距離が小さいことにより、被写界深度の幅が非常に狭くなっている。さらに、被写体の移動(内視鏡装置による生体観察であれば拍動等によるものが考えられる)や光学系の移動(手ぶれ等)があるため、手動によるピント合わせが困難であり、AFを実行するAFモードを選択することは自然である。このようにすることで、図7におけるAFボタン620等の操作を行うことなく、AFモードを実行することができるため、ユーザーにとって利便性の高いシステムを提供することが可能になる。
【0070】
また、フォーカスレンズ制御部330は、焦点モードとしてAFモードが選択された状態において、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に移動した場合には、AFモードを終了し、焦点モードを固定焦点モードに設定してもよい。
【0071】
これにより、ズームレンズ240の位置が基準点よりも広角側に移動したことを、AFモードの終了条件として用いることが可能になる。シングルAFにおいては、ピント合わせが一回のため、終了条件を考慮する必要性は高くないが、コンティニュアスAFにおいては、ピント合わせを継続するため、適切な終了条件を設定し、条件を満たした場合にピント合わせを終了する必要があるためである。
【0072】
また、以上の本実施形態は、以下の内視鏡装置に関係する。内視鏡装置のフォーカスレンズ制御部330は、ズームレンズ240が基準点よりも広角側に位置する場合には、焦点モードとして、ズームレンズ位置に応じた所定位置にフォーカスレンズ250を設定する固定焦点モードを選択し、ズームレンズ240が基準点よりも望遠側に位置する場合には、AFモードを選択する制御を行う。
【0073】
これにより、本実施形態において上述したような、広角側では固定焦点モードを選択し、望遠側ではAFモードを選択する内視鏡装置を実現することが可能になる。
【0074】
4.第4の実施形態
以上でも述べたように、内視鏡装置では被写体に近づいて拡大させて観察する場面が多く、拡大観察時には生体の動きやスコープ先端のブレにより静止した画像を得ることが難しい。そこで、内視鏡装置においてもオートフォーカス(AF)が必要とされるようになってきた。
【0075】
例えば特許文献2には、対物光学系のフォーカスを駆動するフォーカス駆動部を撮像部に設け、被写体に対してAFを行う内視鏡装置が開示されている。
【0076】
しかしながら、特許文献2では、AF停止/起動の切り替えを操作部に設けられたスイッチで制御する。このため、ユーザーは従来の内視鏡操作に加えて、AF停止/起動の操作を行う必要があり、煩雑性が増してしまう。
【0077】
また、特許文献3には、被写体までの距離を検出して、その距離に応じてAFを行い、更に一定時間以上その距離が一定範囲内にあることを条件としてAFのオン/オフを切り替えるスイッチを有する内視鏡装置が開示されている。
【0078】
しかしながら、通常、ユーザーは、先端に撮像部が配置された内視鏡のスコープを生体に挿入すると、最初は病変候補等の注目する箇所を見つけるために広視野でスクリーニングを行う。その際にオートフォーカスがコンティニュアス(逐次的)に行われてしまうと、視野が短時間の間に大きくなったり小さくなったりと定まらず、観察に悪影響を与えてしまう。また、フォーカスしている被写体までの距離が頻繁に変わってしまうとユーザーはピントの合う距離感をつかめない。一方、スクリーニングを行って注目する箇所が見つかると、ユーザーはその箇所へスコープの先端を近づけて、大きく表示させて観察する。その際には、じっくりと観察したいので、オートフォーカスがコンティニュアスに行われブレのない画像を提供することが望ましい。
【0079】
そこで、本実施形態では、観察状態に応じて自動的に焦点モードを設定する。即ち、拡大観察時にはコンティニュアスなAF動作を行うモードを設定し、広視野での観察を行う場合にはコンティニュアスなAF動作を行うモードを設定しない。
【0080】
これにより、スクリーニングを行っている際には、フォーカスしている被写体までの距離が変わらないため、ユーザーはピントの合う距離感を把握することができる。また、AF動作による視野の変動がなく、観察への悪影響がない。拡大観察を行っている際には、コンティニュアスにAF動作が行われるため、ユーザーが見たい被写体にピントが合った画像を提供できる。
【0081】
なお以下では、第4、第6の実施形態において、レンズ一群駆動及び位相差AFを行う内視鏡装置を説明し、第5の実施形態において、レンズ二群駆動及びコントラストAFを行う内視鏡装置を説明するが、本実施形態では、レンズ駆動方式とAF方式の組み合わせは、これらに限定されない。
【0082】
図11に、コンティニュアスAFモードとシングルAFモードの切り替え制御を行う第4の実施形態における内視鏡装置の構成例を示す。図11に示す内視鏡装置は、撮像部10(挿入部)、A/D変換部20、信号処理部30(画像処理部)、フォーカス制御部35、出力部70(表示部)、制御部80、I/F部90(操作部、外部インターフェース部)を含む。撮像部10は、光学倍率を調整するズームレンズ12と、被写体の画像を撮像する撮像素子14と、を含む。フォーカス制御部35は、位相差を算出する位相差算出部40と、ズームレンズ12を駆動する駆動部50と、モード切り替えを行う切り替え部60と、を含む。
【0083】
ズームレンズ12及び撮像素子14を介した撮影により得られたアナログの信号は、A/D変換部20によりデジタルの信号へ変換される。A/D変換部20は信号処理部30と位相差算出部40へ接続されている。信号処理部30は出力部70へ接続されている。位相差算出部40は駆動部50へ接続されている。駆動部50は、ズームレンズ12の位置を移動させる機構である図示しない駆動機構へ接続されている。駆動部50は切り換え部60と双方向に接続されている。また、例えばマイクロコンピュータなどで構成される制御部80は、A/D変換部20、信号処理部30、位相差算出部40、駆動部50、切り替え部60、出力部70と双方向に接続されている。また、例えば電源スイッチや、変数設定を行うためのインターフェースなどを備えた外部I/F部90は、制御部80と双方向に接続されている。
【0084】
第4の実施形態における内視鏡装置の動作について説明する。被写体から反射した反射光がズームレンズ12(ズームレンズ12を含む図示しない結像レンズ群)により撮像素子14上に結像される。撮像素子14は、結像の光電変換を行い、光電変換で得られたアナログ信号をA/D変換部20に出力する。A/D変換部20は、入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を信号処理部30に出力する。また、撮像素子14には、分割された瞳に対応する2つの結像の位相差を検出するための位相差検出用素子が配置されている。位相差検出用素子を含む撮像素子14については、後で詳細に説明する。A/D変換部20は、位相差検出用素子により取得されたアナログ信号をデジタル信号へ変換し、そのデジタル信号を位相差算出部40に出力する。
【0085】
位相差算出部40は、位相差検出用素子により取得されA/D変換部20により変換されたデジタル信号に基づいて、位相差(位相差情報)を算出する。位相差算出部40は、算出された位相差に基づいて、被写体が合焦するズームレンズ12の位置(以下では適宜、「合焦レンズ位置」と呼ぶ)を決定する。
【0086】
駆動部50は、ズームレンズ12が今どの位置に設定されているかを表す現在位置の情報を保持する。駆動部50は、コンティニュアスAF(逐次的なAF)を行うモードであるコンティニュアスAFモードがオンである場合には、位相差算出部40により逐次に決定された合焦レンズ位置の情報に基づいて、現在位置から合焦レンズ位置へ逐次にズームレンズ12を移動させる。即ち、コンティニュアスAFモードがオンである場合には、合焦レンズ位置が変化する毎にズームレンズ12の位置が移動され、被写体に対して常にピントが合った状態となる。
【0087】
一方、コンティニュアスAFモードがオフ(シングルAFモードがオン)である場合には、駆動部50は、合焦レンズ位置の情報に基づいてシングルAF動作を行う。即ち、合焦レンズ位置が変化する毎に逐次にズームレンズ12の位置を移動させるのではなく、所定間隔で、各回において1回ずつズームレンズ12を合焦レンズ位置に移動させる。
【0088】
切り換え部60は、コンティニュアスAFモードのオン/オフを切り換える。即ち、コンティニュアスAFモードとシングルAFモードを切り替える。具体的には、切り替え部60は、ズームレンズ12の現在位置情報を駆動部50から取得する。図12に示すように、切り替え部60は、ズームレンズ12の現在位置が所定の位置Dwより広角側にある場合には、コンティニュアスAFモードをオフにする。また、切り替え部60は、ズームレンズ12の現在位置が所定の位置Dtより望遠側にある場合には、コンティニュアスAFモードをオンにする。なお、DwとDtは同一であってもよいし、異なってもよい。切り替え部60は、コンティニュアスAFモードのオン/オフの情報を駆動部50へ送信する。
【0089】
信号処理部30は、A/D変換部20からの画像(デジタル信号)に対して、例えば階調変換処理などの画像処理を行う。出力部70は、信号処理部30により画像処理された画像を、例えばメモリカードなどの記録媒体に保存し、あるいは不図示の表示装置に出力する。
【0090】
次に、本実施形態の具体的な動作について、実際の使用状況を想定して説明する。まずユーザーは、先端に撮像部10が配置された内視鏡のスコープを生体に挿入し、診断を開始する。診断の最初は、注目する箇所(例えば病変候補など)を見つけるために広視野でスクリーニングを行う。このように広視野の観察で始まるので、切り換え部60は、初期設定としてコンティニュアスAFモードをオフに設定する。
【0091】
撮像素子14の位相差検出用素子により信号が取得され、その信号はA/D変換部20によりデジタル信号に変換され、そのデジタル信号に基づいて位相差算出部40により位相差が算出され、その位相差に基づいて合焦レンズ位置が逐次的に決定される。
【0092】
コンティニュアスAFモードがオフであるので、駆動部50は、一定時間間隔ごとに、位相差算出部40からの合焦レンズ位置へ、ズームレンズ12を各回につき一回だけ駆動する。
【0093】
切り換え部60は、駆動部50からズームレンズ12の現在位置情報を取得し、モード切り替えの判定を行う。現在位置は所定位置Dwよりも広角側の場合には、コンティニュアスAFモードの設定を維持する。
【0094】
ユーザーがスクリーニングを行って注目する箇所が見つかると、ユーザーはその箇所へスコープの先端を近づけて、大きく表示させて観察する。駆動部50では一定時間毎に一度だけズームレンズ12を合焦レンズ位置へ駆動しているが、拡大観察を行うため、ある時点でそのズームレンズ12の位置が所定の位置Dtより望遠側に駆動されることになる。切り換え部60は、駆動部50から取得している現在位置情報が所定位置Dtより望遠側にあると判定した場合、コンティニュアスAFモードをオンに切り換え、駆動部50へコンティニュアスAFモードがオンであるという情報を伝達する。
【0095】
位相差算出部40は逐次的に合焦レンズ位置を決定しており、駆動部50は、コンティニュアスAFモードがオンになったことから、位相差算出部40から伝達される合焦レンズ位置へ逐次的にズームレンズ12を駆動する。即ちコンティニュアスAF動作を行う。
【0096】
ユーザーは注目する箇所を見終わると、再度スクリーニングを始め、広視野での観察を行う。駆動部50は逐次的に合焦レンズ位置へズームレンズ12を駆動しているが、広視野での観察に移行するとズームレンズ12は広角側へ駆動される。切り換え部60は、駆動部50から取得するズームレンズ12の現在位置が所定位置Dwよりも広角側にきたと判定した場合、コンティニュアスAFモードをオフに切り換え、駆動部50は、シングルAF動作を行う。
【0097】
なお、コンティニュアスAFモードがオンからオフに切り替わった場合に、ズームレンズ12を深度の深い所定の固定位置Dz(図12に示す位置Dz)に移動させてもよい。このようにすれば、位置Dzは、所定位置Dwよりも広角側の位置であり被写界深度が広いため、コンティニュアスAFが行われなくなったときに、被写体にピントが合っている状態を得られやすくなる。
【0098】
以上の実施形態によれば、図11で説明したように、フォーカス制御装置は、光学倍率を調整するズームレンズ12を少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部35と、撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、を含む。図12で説明したように、フォーカス制御部35は、ズームレンズ12の位置が、広角端と望遠端の間に位置する基準点Dwよりも広角側である場合には、コンティニュアスAFを行うモードに焦点モードを設定し、ズームレンズ12の位置が、基準点Dtよりも望遠側である場合には、コンティニュアスAFを停止する。
【0099】
より具体的には、フォーカス制御部35は、ズームレンズ12の位置が基準点Dtよりも望遠側である場合、シングルAFを行うモードに焦点モードを設定する。
【0100】
このようにすれば、拡大観察ではコンティニュアスAFモードに設定できるため、被写界深度が狭い高倍率の観察においても、被写体に合焦した見やすい画像をユーザーに提供することができる。また、通常観察ではシングルAFモードに設定できるので、フォーカスが一定時間維持され、短時間で変わることがない。そのため、スクリーニングなどにおいてユーザーがピントの合う距離を判断しやすくなる。また、一定時間ごとにAF動作が行われるため、ユーザーが自らフォーカス調整を行う手間が軽減され、ユーザーの負担を減らすことができる。
【0101】
5.第5の実施形態
次に、レンズ二群駆動でありコントラストAFを行う第5の実施形態について説明する。図13に、第5の実施形態における内視鏡装置の構成例を示す。
【0102】
図13の内視鏡装置は、撮像部10、A/D変換部20、信号処理部30、フォーカス制御部35、出力部70、制御部80、I/F部90を含む。撮像部10は、フォーカス調整を行うフォーカスレンズ11と、光学倍率を調整するズームレンズ12と、撮像素子14と、を含む。フォーカス制御部35は、コントラスト値を算出するコントラスト算出部42と、合焦レンズ位置を決定する合焦位置決定部44と、フォーカスレンズ11及びズームレンズ12を駆動する駆動部50と、切り替え部60と、を含む。制御部80は、ズーム倍率設定部82を含む。
【0103】
なお以下では、第4の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して適宜説明を省略し、第4の実施形態と異なる構成及び動作について説明する。
【0104】
フォーカスレンズ11、ズームレンズ12及び撮像素子14を介して撮影されたアナログの信号は、A/D変換部20によりデジタルの信号へ変換される。A/D変換部20は信号処理部30へ接続されている。信号処理部30はコントラスト算出部42と出力部70へ接続されている。コントラスト算出部42は合焦位置決定部44へ接続されている。合焦位置決定部44は駆動部50へ接続されている。駆動部50は、フォーカスレンズ11の位置を移動させる機構である図示しない駆動機構と、ズームレンズ12の位置を移動させる機構である図示しない駆動機構と、へ接続されている。駆動部50は切り換え部60と双方向に接続されている。また、例えばマイクロコンピュータなどで構成される制御部80は、A/D変換部20、信号処理部30、コントラスト算出部42、合焦位置決定部44、駆動部50、切り替え部60、出力部70と双方向に接続されている。また、例えば電源スイッチや、変数設定を行うためのインターフェースなどを備えたI/F部90は、制御部80と双方向に接続されている。なお、I/F部90は更に、ユーザーがズームレンズの位置を手動で動作させることができるレバー等が設けられてもよい。
【0105】
第5の実施形態における内視鏡装置の動作について説明する。被写体から反射した反射光は、フォーカスレンズ11及びズームレンズ12(フォーカスレンズ11及びズームレンズ12を含む図示しない結像レンズ群)により撮像素子14上に結像される。A/D変換部20によりA/D変換された画像は、信号処理部30により画像処理され、その画像処理後の画像がコントラスト算出部42に出力される。
【0106】
駆動部50は、フォーカスレンズ11を光軸上の複数の位置(少なくとも3つ以上)に移動させ(ウォブリング)、信号処理部30は、その各位置における画像を取得する。コントラスト算出部42は、各位置に対応するコントラスト値を算出する。即ち、コントラスト算出部42は、信号処理部30からの画像に対してハイパスフィルタ処理又はバンドパスフィルタ処理を行い、その処理結果を画像内で積算することでコントラスト値を算出する。
【0107】
合焦位置決定部44は、コントラスト算出部42からの複数のコントラスト値と、各コントラスト値に対応するフォーカスレンズ11の位置に基づいて、被写体に対して合焦するフォーカスレンズ11の位置(合焦レンズ位置)を決定する。具体的には、合焦位置決定部44は、複数のレンズ位置に対応して取得された複数のコントラスト値から、コントラスト値がピーク(最大)となる位置を算出し、その位置を合焦レンズ位置とする。
【0108】
なお、本実施形態では、上記のような山登り方によるコントラストAFに限定されず、他の手法によるAFを行ってもよい。例えば、フォーカスレンズ11を2つの位置で切り替える2焦点切り替えの場合に、現在のレンズ位置においてコントラスト値が所定値よりも小さくなったと判断したら、もう一つのレンズ位置にフォーカスレンズ11を移動させる手法を採用してもよい。
【0109】
駆動部50は、ズームレンズ12及びフォーカスレンズ11が今どの位置に設定されているかを表す現在位置情報を保持する。切り替え部60は、現在位置情報に基づいてコンティニュアスAFモードのオン/オフを切り換え、駆動部50は、そのオン/オフ情報に基づいてコントラストAF動作あるいはシングルAF動作を行う。この切り替え動作についは、第4の実施形態と同様である。
【0110】
駆動部50は、フォーカスレンズ11の位置を移動させる制御を行うフォーカスレンズ制御部52と、ズームレンズ12の位置を移動させる制御を行うズームレンズ制御部54を含む。フォーカスレンズ制御部52は、上記のAF動作においてフォーカスレンズ11を駆動する。ズームレンズ制御部54は、制御部80のズーム倍率設定部82が設定した光学倍率に対応する位置に、ズームレンズ12を移動させる。なお、I/F部90に含まれる操作部(例えば図7のズームレバー610)をユーザーが操作することで、ズーム倍率設定部82に光学倍率が設定される。
【0111】
実際の使用状況を想定した、本実施形態の具体的な動作については、AF動作がコントラストAFである点とレンズ二群駆動である点が第4の実施形態と異なる。
【0112】
即ち、第5の実施形態では、スクリーニングにおいて、切り替え部60がフォーカスレンズ11の位置が所定の位置Dwよりも広角側であると判断した場合、コンティニュアスAFモードをオフに設定する。コンティニュアスAFモードがオフのときには、フォーカス制御部35は、一定時間間隔毎に、コントラストAFを1回ずつ行う。即ち、フォーカス制御部35は、ウォブリング動作により合焦レンズ位置を決め、その位置にフォーカスレンズ11を移動させる一連の動作を、一定時間間隔毎に1回ずつ行う。
【0113】
また、拡大観察において、切り替え部60は、フォーカスレンズ11の位置が所定の位置Dtよりも望遠側であると判断した場合、コンティニュアスAFモードをオンに設定する。コンティニュアスAFモードがオンのときには、フォーカス制御部35は、コントラストAF動作を逐次的に行う。即ち、フォーカス制御部35は、ウォブリング動作を逐次行って合焦レンズ位置を決め、その逐次に求められる合焦レンズ位置に、そのつどフォーカスレンズ11を移動させる。
【0114】
以上の実施形態によれば、コントラストAFやレンズ二群駆動を用いた場合にも、拡大観察においてコンティニュアスAFを行い、通常観察においてシングルAFを行うことができ、ユーザーに見やすい画像を提供できる。
【0115】
6.第6の実施形態
次に、コンティニュアスAFモードがオフの場合に固定焦点となる第6の実施形態について説明する。図14に、第6の実施形態における内視鏡装置の構成例を示す。
【0116】
図14の内視鏡装置は、撮像部10、A/D変換部20、信号処理部30、フォーカス制御部35、出力部70、制御部80、I/F部90を含む。撮像部10は、ズームレンズ12、撮像素子14を含む。フォーカス制御部35は、位相差算出部40、駆動部50、切り替え部60を含む。制御部80は、ズーム倍率設定部82を含む。
【0117】
なお以下では、第4の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して適宜説明を省略し、第4の実施形態と異なる構成及び動作について説明する。
【0118】
位相差算出部40は切り換え部60に接続している。他の構成要素の接続関係については、第4の実施形態と同様である。
【0119】
位相差算出部40は、撮像素子14の位相差検出用素子からの信号に基づいて位相差を算出し、被写体が合焦するズームレンズ12の位置(合焦レンズ位置)を位相差に基づいて算出する。
【0120】
切り替え部60は、コンティニュアスAFモードがオンの場合には、ズームレンズ12の現在位置情報を駆動部50から取得し、その現在位置情報に基づいてコンティニュアスAFモードをオフにするか否かを判断する。また切り替え部60は、コンティニュアスAFモードがオフの場合には、位相差算出部40から合焦レンズ位置を取得し、その合焦レンズ位置に基づいてコンティニュアスAFモードをオンにするか否かを判断する。コンティニュアスAFモードがオフの場合には、光学倍率を変えない限りズームレンズ12は移動しないが、合焦レンズ位置を見ることで、ピントが合うレンズ位置が広角側にあるのか望遠側にあるのかを判定できるからである。
【0121】
なお、コンティニュアスAFモードがオンの場合において、切り替え部60は、位相差算出部40からの合焦レンズ位置情報に基づいてコンティニュアスAFモードをオフにするか否かを判断してもよい。また、コンティニュアスAFモードがオフの場合において、切り替え部60は、光学倍率に応じて設定されたズームレンズ12の現在位置情報を駆動部50から取得し、その現在位置情報に基づいてコンティニュアスAFモードをオンにするか否かを判断してもよい。例えばコントラストAFを用いる場合、固定焦点モードでウォブリング動作を行うのは適切でないと考えられるため、ズームレンズ12の現在位置から判定を行えばよい。
【0122】
駆動部50は、コンティニュアスAFモードがオフ(固定焦点モード)に設定された場合には、ズーム倍率設定部82により設定された光学倍率に対応する位置(又は所定の固定位置)にズームレンズ12を設定し、AF動作は行わない。なお、I/F部90に含まれる操作部(例えば図7のズームレバー610)をユーザーが操作することで、ズーム倍率設定部82に光学倍率が設定される。他の構成要素の動作については、第4の実施形態と同様である。
【0123】
本実施形態の具体的な動作について、実際の使用状況を想定して説明する。まずユーザーは、先端に撮像部10が配置された内視鏡のスコープを生体に挿入し、診断を開始する。診断の最初は、注目する箇所(例えば病変候補など)を見つけるために広視野でスクリーニングを行う。このように広視野の観察で始まるので、切り換え部60は、初期設定としてコンティニュアスAFモードをオフに設定する。
【0124】
撮像素子14の位相差検出用素子により信号が取得され、その信号はA/D変換部20によりデジタル信号に変換され、そのデジタル信号に基づいて位相差算出部40により位相差が算出され、その位相差に基づいて合焦レンズ位置が逐次的に決定される。
【0125】
切り換え部60は、位相差算出部40から合焦レンズ位置の情報を取得し、モード切り替えの判定を行う。合焦レンズ位置が所定位置Dw(図12)よりも広角側の場合、コンティニュアスAFモードをオフに設定する(オフを維持する)。このように、スクリーニングでは、固定焦点モードとなり、光学倍率に応じた固定位置にズームレンズ12が設定される。
【0126】
ユーザーがスクリーニングを行って注目する箇所が見つかると、ユーザーはその箇所へスコープの先端を近づけて、大きく表示させて観察する。切り換え部60は、位相差算出部40から取得した合焦レンズ位置(又は、光学倍率に応じたズームレンズ12の現在位置を用いる場合には、駆動部50から取得したズームレンズ12の現在位置)が所定位置Dtより望遠側にあると判定した場合、コンティニュアスAFモードをオンに切り換え、駆動部50へコンティニュアスAFモードがオンであるという情報を伝達する。
【0127】
駆動部50は、コンティニュアスAFモードがオンになったことから、位相差算出部40から伝達される合焦レンズ位置へ逐次的にズームレンズ12を駆動する。即ちコンティニュアスAF動作を行う。
【0128】
ユーザーは注目する箇所を見終わると、再度スクリーニングを始め、広視野での観察を行う。駆動部50は逐次的に合焦レンズ位置へズームレンズ12を駆動しているが、広視野での観察に移行するとズームレンズ12は広角側へ駆動される。切り換え部60は、駆動部50から取得するズームレンズ12の現在位置(又は位相差算出部40から取得する合焦レンズ位置)が所定位置Dwよりも広角側にきたと判定した場合、コンティニュアスAFモードをオフに切り換え、駆動部50は、AF動作を停止する。
【0129】
なお、コンティニュアスAFモードがオンからオフに切り替わった場合に、ズームレンズ12を深度の深い所定の固定位置Dz(図12に示す位置Dz)に移動させてもよい。このようにすれば、位置Dzは、所定位置Dwよりも広角側の位置であり被写界深度が広いため、コンティニュアスAFが行われなくなったときに、被写体にピントが合っている状態を得られやすくなる。
【0130】
以上に述べた第6の実施形態によれば、拡大観察ではコンティニュアスAFモードに設定されるため、被写界深度が狭い高倍率の観察においても、被写体に合焦した見やすい画像をユーザーに提供することができる。また、通常観察では固定焦点モードに設定されるため、ユーザーが操作しない限りフォーカスが変更されないため、スクリーニングなどにおいてユーザーがピントの合う距離を判断しやすくなる。
【0131】
以上の実施形態によれば、フォーカス制御装置は、光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、を含む。焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有する。フォーカス制御部は、広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、固定焦点モード及びAFモードの切り替え制御を行う。
【0132】
なお、フォーカス制御部は、例えば図1のフォーカスレンズ制御部330(第1、第2の実施形態)、又は図10のフォーカスレンズ制御部330(第3の実施形態)、又は図14のフォーカス制御部35(第6の実施形態)に対応する。フォーカス制御は、図9等で説明したように、レンズ二群駆動であってもよいし、レンズ一群駆動であってもよい。AFモードでは、第1の実施形態等で説明したように、シングルAFを行ってもよいし、コンティニュアスAFを行ってもよい。
【0133】
ここで、ズームレンズの位置とは、撮像光学系において実際にズームレンズが設定された位置、又は、ズームレンズの移動により合焦を行うレンズ一群駆動において、被写体が合焦するレンズ位置(合焦レンズ位置)として算出した位置である。例えば、第1の実施形態等で説明したように、図7のズームレバー610をユーザーが操作し、その操作情報に基づいて図1のズームレンズ制御部320がズームレンズ240を移動させ、その実際に設定されたズームレンズ240の位置に基づいてフォーカスレンズ制御部330がモード切り替えを判定する。あるいは、第6の実施形態で説明したように、固定焦点モードにおいて位相差算出部40が位相差に基づいて合焦レンズ位置を算出し、その合焦レンズ位置に基づいてコンティニュアスAFモードに切り替えるか否かを判定する。
【0134】
このようにすれば、少なくとも基準点とズームレンズとの位置関係に基づいて、固定焦点モードとAFモードの切り替え制御を行うことが可能になる。例えば、第3の実施形態や第6の実施形態で説明したように、ズームレンズが広角側にあるときには固定焦点モードに設定し、望遠側にあるときにはAFモードに設定してもよい。また、第1の実施形態で説明したように、ズームレンズが広角側にあるときには固定焦点モードを設定し、望遠側にあるときには、更に他の条件(例えばAF開始信号)を考慮し、固定焦点モードとAFモードを切り替えてもよい。これにより、常にAFを行うのではなく、適切な状態においてAFを行うことが可能になる。第1の実施形態等で説明したように、特に内視鏡装置では、図4(A)のようにAFの効果が薄い管空状の被写体ではAFを行わず、図4(B)のようにAFが有効な状態においてAFを実行することが可能となる。
【0135】
また本実施形態では、フォーカス制御部は、固定焦点モードにおいて、ズームレンズの位置に応じた所定の距離に合焦被写体距離を設定する。
【0136】
例えば、図6(A)で説明したように、ズームレンズが広角端の位置Aから望遠端の位置Fに移動するに従って合焦被写体距離が短くなるように、ズームレンズの位置と合焦被写体距離が対応付けられている。レンズ二群駆動の場合には、ズームレンズ位置が設定されると、それに応じてフォーカスレンズが移動され、所定の合焦被写体距離が実現される。またレンズ一群駆動の場合には、ズームレンズの移動により合焦被写体距離が調整されるので、ズームレンズの位置が移動されると、それに応じた所定の合焦被写体距離が設定される。
【0137】
また本実施形態では、図14(第6の実施形態)等で説明したように、フォーカス制御部35は、AFモードにおいて、位相差に基づくAF制御を行う。具体的には、撮像光学系は、位相差を検出するための位相差検出用素子を更に有する。フォーカス制御部35は、位相差検出用素子からの信号に基づいて位相差を算出する位相差算出部40を有する。フォーカス制御部35は、算出された位相差に基づいて、被写体像を合焦させる制御を行う。
【0138】
例えば第6の実施形態では、位相差検出用素子は、図15で説明したように撮像素子14に設けられている。そして、位相差算出部40が位相差に基づいて合焦レンズ位置を算出し、駆動部50が合焦レンズ位置にズームレンズ12を移動させ、フォーカス制御を行う。
【0139】
このようにすれば、AFモードにおいて位相差AFを行うことができる。位相差AFでは、位相差を検出するだけで合焦レンズ位置を算出できるため、レンズを移動させる必要があるコントラストAFよりも一般に高速なAF動作を実現できる。
【0140】
また本実施形態では、図12等で説明したように、フォーカス制御部35は、AFモードを終了するときに、広角側の所定の位置Dzにズームレンズ12を設定する。
【0141】
このようにすれば、AFモードを終了するときに、被写界深度が広い状態に設定できる。即ち、AFモードを終了すると固定焦点モードとなってAFが行われないため、被写界深度が狭いままだとピントが外れやすくユーザーにとって不便なことが予想される。この点、広角側の所定の位置Dzにズームレンズ12を設定することで、被写界深度が自動的に広くなり、ユーザーの利便性が向上する。
【0142】
7.位相差AF
位相差検出用素子が設けられた撮像素子14、及びその撮像素子14を用いた位相差AF手法について説明する。なお、本実施形態が行う位相差AFは、以下で述べる手法に限定されず、例えば眼鏡レンズにより瞳分割を行う手法など種々の位相差AF手法を採用できる。
【0143】
図15に、位相差検出用素子が設けられた撮像素子の構成例を示す。図15に示す撮像素子は、ベイヤ配列のカラーフィルターを有する通常の画素R、G、Bと、画素の一部に設置された位相センサS1群及びS2群(位相差検出用素子)と、を含む。
【0144】
位相センサS1群及びS2群を構成する各画素S1及びS2は、例えば特開2000−156823号公報の段落[0074]〜[0083]にS1及びS2として記載された機能画素であり、それぞれが画素中心から左右に偏った開口部を持っている。これにより撮像光学系の瞳を左右に分割した場合と同様の効果が得られるため、図15で水平方向に複数配置されたS1群からの像信号とS2群からの像信号をそれぞれの瞳を通った光線の位相信号とみなすことができる。例えば撮像光学系で結像された被写体の像位置が撮像素子の撮像面に一致する(ピントが合っている)場合は、S1群からの位相信号とS2群からの位相信号は一致し、像位置が撮像面の前方又は後方にある(ピントが合っていない)場合は、S1群からの位相信号とS2群からの位相信号に位相差が生じることになる。本実施形態において、位相センサS1群及びS2群はたとえば撮像部の中央に一組だけ設置してもよいし、必要に応じて撮像部の任意の場所に複数組設置してもよい
【0145】
次に、位相差算出部40における可動レンズの移動量の算出方法について、図16を用いて説明する。可動レンズは、レンズ一群駆動におけるズームレンズ12、又はレンズ二群駆動におけるフォーカスレンズ11である。
【0146】
図16は、像位置が撮像面の後方に位置する場合の、分割された瞳を通る光線を示した図である。光線1はS1群に対応する瞳を通った光線であり、光線2はS2群に対応する瞳を通った光線である。ここでは像位置が撮像面とは異なる位置(後方)にあるため、S1群から出力される位相信号とS2群から出力される位相信号にはSの位相差が存在する。ここで、Sは正負の値を持つベクトルであり、図16に矢印で示した方向が正である。なお、位相差Sの算出には公知の位相差AFの技術を用いればよい。さらに撮像面から射出瞳位置までの距離をF、分割された瞳の重心間の距離をG、デフォーカス量をdとする。ここで、dは正負の値を持つベクトルであり、図16に矢印で示した方向が正である。この時、下式(1)が成立するため、これを変形した下式(2)を用いてデフォーカス量dを算出することができる。なお、像位置が撮像面の前方にある場合も同様である。さらにここでは、例えば、前出の特開2000−156823号公報の段落[0108]〜[0110]に記載された手法でデフォーカス量dを算出してもよい。
G/(F+d)=S/d (1)
d=F・S/(G−S) (2)
【0147】
本実施形態における位相差算出部40は、例えば画像信号と同じ周期で位相差センサS1群及びS2群から順次出力される位相信号に対して、上式(2)で算出したデフォーカス量dから合焦状態を実現するために必要な可動レンズの移動量を算出し、算出した移動量を駆動部50に順次出力する。あるいは、位相差算出部40は、可動レンズの移動量及び可動レンズの現在位置情報から合焦レンズ位置を算出し、算出した合焦レンズ位置の情報を駆動部50(又は図14の切り替え部60)に順次出力してもよい。移動量の算出は、例えば予め撮像光学系の設計データから、可動レンズの移動量と像位置の移動量の比Rを下式(3)で算出しておき、下式の(4)で移動量Dを算出すればよい。
R=可動レンズの移動量/像位置の移動量 (3)
D=−R・d (4)
【0148】
また、例えば可動レンズの位置xにより、可動レンズの移動量と像位置の移動量の比Rの値が変化する場合は、可動レンズの位置xn(nは自然数)とこれに対応するRnの値を図17に示すようなLUT(ルックアップテーブル)として予め作成しておき、位相センサS1群及びS2群から位相信号が出力されたタイミングにおける可動レンズの位置xnに対応するRnを上式(4)のRとして使用することで移動量Dを算出することができる。
【0149】
さらに、例えば可動レンズの位置xにより図16に示した撮像面と射出瞳の距離Fや瞳の重心間の距離Gも変化する場合は、図18に示すように、可動レンズの位置xnに対応するFn及びGnの値を加えたLUTを予め作成しておく。そして、まず位相センサS1群及びS2群から位相信号が出力されたタイミングにおける可動レンズの位置xnに対応するFn及びGnの値を、上式(2)のF及びGとして使用することでデフォーカス量dnを算出する。その後、算出したdnと可動レンズの位置xnに対応するRnを上式(4)のdとRとして使用することで移動量Dを算出することができる。なお、図18にテーブルで示したパラメータのうち、可動レンズの位置による変化が無視できるほど小さいものについては、考慮する必要がないことは言うまでもない。また、ここでは述べていない移動量を算出するためのパラメータについても、可動レンズの位置による変化が大きい場合は、前述の各パラメータ同様にLUTに追加して使用してもよい。
【0150】
ここで位相差算出部40は、例えば位相センサS1群及びS2群から順次出力される位相信号のすべてに対して移動量の算出及び出力を行ってもよいし、例えば任意の周期で位相信号をサンプリングしたうえで移動量の算出及び出力を行ってもよい。後者の場合、画像信号が出力されるよりも長い周期で、位相差算出部40から移動量が出力されることになる。
【0151】
以上、本発明を適用した実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、各実施形態及び変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施の形態及び変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0152】
10 撮像部、11 フォーカスレンズ、12 ズームレンズ、14 撮像素子、
20 A/D変換部、30 信号処理部、35 フォーカス制御部、
40 位相差算出部、42 コントラスト算出部、44 合焦位置決定部、
50 駆動部、52 フォーカスレンズ制御部、54 ズームレンズ制御部、
60 切り替え部、70 出力部、80 制御部、82 ズーム倍率設定部、
90 I/F部、
100 光源部、110 白色光源、120 集光レンズ、200 撮像部、
210 ライトガイドファイバ、220 照明レンズ、230 対物レンズ系、
240 ズームレンズ、250 フォーカスレンズ、260 ズームレンズ駆動部、
270 フォーカスレンズ駆動部、280 撮像素子、300 処理部、
310 AD変換部、320 ズームレンズ制御部、330 フォーカスレンズ制御部、
331 観察モード判定部、332 フォーカスレンズ位置決定部、
333 AF制御部、340 画像処理部、350 制御部、400 表示部、
500 外部I/F部、600 操作部、610 ズームレバー、
620 AFボタン、630 ズームボタン、
Dt,Dw,Dz 所定の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、
前記撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、
を含み、
前記焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有し、
前記フォーカス制御部は、
広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記フォーカス制御部は、
前記焦点モードとして前記固定焦点モードが選択された状態において前記ズームレンズの位置が広角側から望遠側に移動した場合には、合焦被写体距離が単調減少するように前記フォーカス制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも広角側である場合には、前記焦点モードとして、前記ズームレンズの位置に応じた所定の距離に前記合焦被写体距離を設定する前記固定焦点モードを選択し、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である場合には、前記固定焦点モードと前記AFモードの切り替え制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも広角側である場合には、前記焦点モードとして、前記ズームレンズの位置に応じた所定の距離に前記合焦被写体距離を設定する前記固定焦点モードを選択し、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である場合には、前記焦点モードとして、前記AFモードを選択する制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である状態においてAF開始信号が入力された場合には、前記焦点モードを前記AFモードに設定し、前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である状態において前記AF開始信号が入力されなかった場合には、前記焦点モードを前記固定焦点モードに設定する制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも広角側である場合には、前記AF開始信号が入力された場合にも、前記焦点モードを前記固定焦点モードに設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記フォーカス制御部は、
前記焦点モードとして前記AFモードが選択された状態において前記ズームレンズが前記基準点よりも広角側に移動した場合には、前記AFモードを終了し、前記焦点モードを前記固定焦点モードに設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項8】
請求項3又は4において、
前記フォーカス制御部は、
前記焦点モードとして前記AFモードが選択された場合には、シングルAFを実行する制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項9】
請求項3又は4において、
前記フォーカス制御部は、
前記焦点モードとして前記AFモードが選択された場合には、コンティニュアスAFを実行する制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記フォーカス制御部は、
前記AFモードにおいて、位相差に基づくAF制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記撮像光学系は、
前記位相差を検出するための位相差検出用素子を更に有し、
前記フォーカス制御部は、
前記位相差検出用素子からの信号に基づいて前記位相差を算出する位相差算出部を有し、
前記フォーカス制御部は、
算出された前記位相差に基づいて、被写体像を合焦させる制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記フォーカス制御部は、
前記AFモードを終了するときに、前記広角側の所定の位置に前記ズームレンズを設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記撮像光学系は、
フォーカスレンズを更に有し、
前記フォーカス制御部は、
前記フォーカスレンズの位置を調整することで前記フォーカス制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記フォーカス制御部は、
前記固定焦点モードにおいて、前記ズームレンズの位置に応じた所定の位置に前記フォーカスレンズを設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項15】
請求項13において、
前記ズームレンズの位置を制御するズームレンズ制御部を含み、
前記ズームレンズ制御部は、
前記ズームレンズの位置を連続的に制御することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項16】
請求項13において、
前記ズームレンズの位置を制御するズームレンズ制御部を含み、
前記ズームレンズ制御部は、
前記ズームレンズの位置を離散的に制御することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記ズームレンズ制御部は、
離散的な前記ズームレンズの位置として、前記基準点よりも広角側の位置である第1のズームレンズ位置及び前記基準点よりも望遠側の位置である第2のズームレンズ位置のいずれかを選択する制御を行い、
前記フォーカスレンズ制御部は、
前記ズームレンズが前記第1のズームレンズ位置にあるか或いは前記第2のズームレンズ位置にあるかに応じて、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項18】
請求項1において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置を調整することで前記フォーカス制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項19】
請求項18において、
前記光学倍率を設定するズーム倍率設定部を含み、
前記フォーカス制御部は、
前記固定焦点モードにおいて、前記ズームレンズの位置を、前記光学倍率に対応する位置に設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項20】
光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、
前記撮像光学系を介して画像を取得する画像取得部と、
を含み、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が、広角端と望遠端の間に位置する基準点よりも広角側である場合には、コンティニュアスAFを行うモードに前記焦点モードを設定し、前記ズームレンズの位置が、前記基準点よりも望遠側である場合には、前記コンティニュアスAFを停止することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項21】
請求項20において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも前記望遠側である場合、シングルAFを行うモードに前記焦点モードを設定することを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項22】
光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系と、
前記撮像光学系で結像された被写体像に対応する画像を生成する撮像素子と、
前記撮像光学系のフォーカス制御を行うとともに、前記撮像光学系の焦点モードの設定制御を行うフォーカス制御部と、
を含み、
前記焦点モードは、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有し、
前記フォーカス制御部は、
広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行うことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項23】
請求項22において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも広角側である場合には、前記焦点モードとして、前記ズームレンズの位置に応じた所定の距離に合焦被写体距離を設定する前記固定焦点モードを選択し、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である場合には、前記固定焦点モードと前記AFモードの切り替え制御を行うことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項24】
請求項22において、
前記フォーカス制御部は、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも広角側である場合には、前記焦点モードとして、前記ズームレンズの位置に応じた所定の距離に合焦被写体距離を設定する前記固定焦点モードを選択し、
前記ズームレンズの位置が前記基準点よりも望遠側である場合には、前記焦点モードとして、前記AFモード選択する制御を行うことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項25】
光学倍率を調整するズームレンズを少なくとも含む撮像光学系におけるフォーカス制御方法であって、
前記撮像光学系の焦点モードが、固定焦点モード及びAF(Auto-Focus)モードを有する場合に、
広角端と望遠端の間に位置する基準点に対して、前記ズームレンズの位置が広角側であるか望遠側であるかに応じて、前記焦点モードの設定制御として、前記固定焦点モード及び前記AFモードの切り替え制御を行い、
設定された前記焦点モードに基づいて前記撮像光学系のフォーカス制御を行うことを特徴とするフォーカス制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−61618(P2013−61618A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30545(P2012−30545)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】