説明

フック

【課題】 開閉杆の開閉を、被掛止体に邪魔されることなく、かつ、簡単な操作で行うことができるフックを提供すること。
【解決手段】 被掛止体が通過可能な開放部3を有するフック本体2と、前記開放部3を開閉自在とする開閉杆4と、を備えるフック1であって、前記開閉杆4は、前記フック本体2に対してほぼ平行な姿勢で回動するように、一端が前記フック本体2における開放部3の一方の端部に回動自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIDカード(アイデンティティー・カード)等の物品を吊支したり、固定物に張設されたロープやベルト等に掛止する際に使用されるフックに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のフックとしては、例えば被掛止体に掛止されるU字状のフック本体に形成された開放部に、一端がフック本体の先端に枢着された開閉杆が設けられるとともに、該開閉杆を内向きに押圧することにより開放部が開放されるようにしたもの等がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平06−315406号公報(第3頁、第2図)
【特許文献2】特開2002−345987号公報(第3頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来のフックにおいては、開閉杆(閉鎖舌片20)が常時開放部を閉じる方向に付勢されており、開放部から被掛止体を挿通する際には、開閉杆をフック本体内部に向けて押圧する必要があり、開放部を開放している間は常時開閉杆を押圧していなければならず、操作性しにくいといった問題を有していた。
【0005】
また、特許文献1、2に記載のフックにおいては、開放部を大きく開放するには内部に向けて深く押し込む必要があり、押し込んだ開閉杆の先端がフック本体内面に当接すると、それ以上大きく開放することはできないばかりか、特に被掛止体をフック本体から取り出す際に、被掛止体が邪魔になって開閉杆を開放できなくなることがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、開閉杆の開閉を、被掛止体に邪魔されることなく、かつ、簡単な操作で行うことができるフックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のフックは、
被掛止体が通過可能な開放部を有するフック本体と、前記開放部を開閉自在とする開閉杆と、を備えるフックであって、
前記開閉杆は、前記フック本体に対してほぼ平行な姿勢で回動するように、一端が前記フック本体における開放部の一方の端部に回動自在に取り付けられている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、開閉杆をフック本体に対してほぼ平行な姿勢で回動して開放部を開放することで、開閉杆がフック本体の外側に退避するため、開放部を大きく開放した状態で被掛止体を通過させることができるばかりか、開放部を開放する際に、開閉杆が被掛止体やフック本体と干渉することがないため、開放操作を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の請求項2に記載のフックは、請求項1に記載のフックであって、
前記開閉杆の他端に、前記フック本体における開放部の一方の端部に形成された被係合部に係合可能な係合部が設けられている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、被掛止体を掛止しているときにおける開閉杆の回動を防止できる。
【0009】
本発明の請求項3に記載のフックは、請求項2に記載のフックであって、
前記係合部の前記被係合部に対する係脱は、前記開閉杆が該開閉杆の回動方向に対してほぼ直交する方向に弾性変形することで行われる、ことを特徴としている。
この特徴によれば、係合部と被係合部との係脱は、開閉杆を、回動方向とは異なる方向に弾性変形させることにより行われるため、開閉杆の不用意な回動を、簡単な機構で防止することができる。
【0010】
本発明の請求項4に記載のフックは、請求項1〜3のいずれかに記載のフックであって、
前記フック本体における開放部の一方の端部に、前記開閉杆を回動自在に支持する軸部が形成されるとともに、該軸部内に、前記フック本体を吊支可能な吊支帯を挿通可能な挿通口が形成されている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、吊支帯が挿通口に挿通されている状態でも、開閉杆が吊支帯の周囲を回動できるため、吊支帯が邪魔になって開閉杆の回動角度が制限されることがない。
【0011】
本発明の請求項5に記載のフックは、請求項4に記載のフックであって、
前記開閉杆の一端には、前記軸部の周面に弾性変形により係合可能な略C字状のキャッチ片が形成されている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、開閉杆を軸部の周面に弾性係合させることで、開閉杆を軸部に簡単に取り付けできるとともに、開閉杆を回動しても吊支帯が捩れたりすることがない。
【0012】
本発明の請求項6に記載のフックは、請求項3〜5のいずれかに記載のフックであって、
前記係合部と前記被係合部とが係合されている状態において、前記開閉杆の外面と前記フック本体における開放部の他方の端部外面との間に、前記被係合部に対する前記係合部の係合深さとほぼ同寸の段部が形成されている、ことを特徴としている。
この特徴によれば、開閉杆の他端を、その外面がフック本体の端部外面と同高さ位置となるまで押圧することで係合部と被係合部との係合が解除される。これにより、フック本体の端部外面位置を押圧ストローク量の目安とすることができ、最小限の押圧ストロークで係合状態を解除して、開閉杆の回転操作にスムーズに移行することができるため、開放時の操作性が効果的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0014】
まず、図1は本発明の実施例としてのフックを示す斜視図であり、図2は図1のフックの使用状態を示す斜視図であり、図3は図1のA−A断面図であり、図4(a)は図3のB−B断面図であり、(b)は(a)のC−C断面図であり、図5(a)はフックにIDカードを掛止した状態を示す正面図であり、(b)は係合部の係脱状況を示す側面図である。なお、以下の説明において、図1における図中上側をフックの正面側、左斜め下側をフックの下側、右斜め上をフックの上側、左斜め上側を左側、右斜め下側を右側として説明する。
【0015】
本実施例のフック1は、図1に示されるように、側面視略J字状をなすフック本体2と、その一部に形成される対向端部間に形成され、被掛止体の一例であるIDカードC(図2参照)が通過可能な開放部3を開閉自在とする開閉杆4とを備え、これらは硬質の合成樹脂材により形成されている。なお、材質は合成樹脂材に限定されるものではなく、金属材等であってもよい。
【0016】
図1及び図3に示されるように、フック本体2の下部には、IDカードCを掛止可能な上向き鉤状の掛止部2aが形成されているとともに、上部には、円柱状の軸部2bが正面側に向けて突出するように形成されている。軸部2bには、前記開閉杆4の上端が回動自在に軸支されており、開閉杆4を軸部2bを中心として左右方向(横方向)に向けて回動させることにより、開放部3を開閉できるようになっている。
【0017】
また、軸部2bの中心部には、左右方向を向く長方形状の挿通口5(図4参照)が、正面から背面にかけて貫通するように形成されている。挿通口5には、フック1を吊支するための吊支帯の一例としてのストラップSが挿通されており、例えば図2に示されるように、フック1にIDカードC等を掛止し、このストラップSを首等に吊り下げることでIDカードCを携帯することができるようになっている。
【0018】
なお、本実施例においては、被掛止体の一例としてIDカードCが適用されているが、キーホルダー等の他の物品であってもよい。また、吊支帯の一例としてストラップSが適用されているが、ベルト、紐、ロープ等であってもよい。
【0019】
軸部2bの周面における軸心方向の中央位置には、図4に示されるように、開閉杆4の上端に突設された略C字状のキャッチ片4aが嵌合可能な環状凹溝6が形成されている。すなわち、中心に挿通口5が形成された軸部2bの周面に環状凹溝6が形成されていることで、図1や図3に示されるように挿通口5内にストラップSが挿通されている状態においても、ストラップSが邪魔になって開閉杆4の回動角度が制限されることがなく、開閉杆4を、軸部2bを中心として360度回動させることができるとともに、軸部2bの内部に挿通口5が形成されていることで、開閉杆4を回動させてもストラップSが捩れたりすることがない。
【0020】
また、前記キャッチ片4aは弾性変形可能に形成されており、互いに対向する先端部間に形成された挿通部を環状凹溝6の周面に当てた状態で強く押し込むことにより、キャッチ片4aが弾性変形により両先端部間が拡開して環状凹溝6の周囲に嵌合されるとともに、嵌合後に弾性復帰して軸部2bを挟持するように取り付けられる。
【0021】
このように、弾性変形可能なキャッチ片4aを介して、開閉杆4を軸部2bの周面に対して外側から取り付けることができることで、開閉杆4を軸部2bに簡単に取り付けることができるとともに、軸部2bをフック本体2に一体的に成型できることで、部品点数を少なくして製造コストを低減できるばかりか、構造を簡素化できる。
【0022】
開閉杆4の下端には、図1及び図4に示されるように、フック本体2における開放部3下部側の端部に形成された被係合部としての係合凸部8を、左右側から狭持するように係合する係合凹部7aを有する係合部としての係合片7が突設されている。特に図4(a)に示されるように、係合片7における係合凹部7aの左右側の端面7b、7bは、他端側に形成されたキャッチ片4aにおける回動中心Oを中心とする円弧状に形成されており、回動時におけるフック本体2の端部との干渉が回避されている。
【0023】
左右側の端面7c、7cは、特に図4(b)に示されるように、左右側から中央に向けて傾斜する傾斜面状に形成されており、開閉杆4を回動させて開放部3を閉鎖する際、すなわち、係合凹部7aを係合凸部8に係合させる際において、係合片7の左右いずれかの端面7cが係合凸部8の左右いずれかの端面と当接したときに、係合片7を係合凸部8の内面側に向けて案内する案内面として形成されている。
【0024】
これにより、開閉杆4が弾性変形して(図5(b)参照)係合凸部8の内面側にスムーズに案内され、係合凸部8と係合凹部7aとが合致したときに、開閉杆4の弾性復帰力により係合凹部7a内に係合凸部8が嵌合されるため、開閉杆4を、開放部3を閉鎖する閉鎖位置まで回転させるだけで簡単に係合する。
【0025】
また、係合凸部8に対する係合凹部7aの係脱は、後述するように、開閉杆4の回動方向に対してほぼ直交する方向、つまりフック本体2の内側に向けて押圧し、開閉杆4を弾性変形させることで行われることで、開閉杆4の不用意な回動を簡単な機構で防止することができるため、IDカードCのフック本体2からの逸脱を防止できる。
【0026】
さらに、係合凹部7aと係合凸部8との係合状態において、特に図3に示されるように、フック本体2の端部外面と、開閉杆4の下端外面との間に、所定高さの段部Pが形成されるようになっており、この段部Pの高さは、係合凹部7aと係合凸部8との係合深さとほぼ同寸に形成されている。よって、開閉杆4の下端を、その外面がフック本体2の端部外面と同高さ位置となるまで押圧することで係合凹部7aと係合凸部8との係合が解除される。これにより、フック本体2の端部外面位置を押圧ストローク量の目安とすることができるため、必要以上に押圧することなく、最小限の押圧操作で係合状態を解除して、開閉杆4の回転操作にスムーズに移行することができるため、開放部3の開放時の操作性が効果的に向上する。
【0027】
また、開閉杆4の外面は、図1に示されるように凹面形状に形成されており、左右方向への回転時において、左右辺部に指が掛りやすくなっているため、指一本で簡単に開閉(回動)操作を行うことができる。
【0028】
次に、このように構成されたフック1の使用状況を説明すると、まず、フック1にIDカードCを掛止する場合、図5(a)に示されるように、開放部3を閉鎖する閉鎖位置に位置している開閉杆4の下端側を、図中矢印方向、すなわち、フック本体2の内側に向けて若干押し込み、係合凸部8に対する係合凹部7aの係合を解除した状態のまま、開閉杆4を軸部2bを中心として右側(または左側)、つまりフック本体2の長手方向に対して横方向に向けて回転させる。
【0029】
このように、フック本体2に対して平行な姿勢のまま、例えば開閉杆4がフック本体2の長手方向に対してほぼ横向きとなるまで回転させ、図5(b)に示されるように、開放部3を開放した状態で、掛止部2aにIDカードCに形成された掛止穴9を挿通する。
【0030】
この状態で、軸部2bを中心として開閉杆4を逆回転させて、開放部3を閉鎖する閉鎖位置に戻す。ここで、係合片7の左右いずれかの端面7cが係合凸部8の左右いずれかの端面と当接したとき、傾斜面として形成された端面7cにより、係合片7全体が係合凸部8の内面側にスムーズに案内され、開閉杆4が内側に向けて若干弾性変形した状態でさらに回転させると、係合凸部8と係合凹部7aとが合致したときに、弾性復帰力により係合凹部7a内に係合凸部8が嵌合して係合し、開閉杆4の回転が規制されるため、IDカードCの不用意な逸脱が防止される。
【0031】
また、フック本体2の掛止部2aに掛止されているIDカードCをフック本体2から取り出すには、前述したように、開閉杆4をフック本体2の内側に向けて若干押し込んで係合状態を解除した状態のまま、軸部2bを中心としてフック本体2の長手方向に対して横方向に向けて回転させる。
【0032】
このように、開閉杆4をフック本体2に対してほぼ平行な姿勢で回転して開放部3を開放することで、開閉杆4がフック本体2の外側に退避することになるため、開放部3を大きく開放した状態でIDカードCを通過させることができるばかりか、開放部3を開放する際に、開閉杆4がIDカードCやフック本体2の内面と干渉することがないため、開放操作を容易に行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明してきたが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【0034】
例えば、前記実施例のフック本体2にあっては、開閉杆4の軸部2b内にストラップSが挿通される挿通口5が形成されていたが、挿通口5と開閉杆4の軸部2bとがそれぞれ別箇所に形成されていてもよい。
【0035】
また、開閉杆4は、一端がフック本体2における開放部3の上部側の端部に形成された軸部2bを中心に回動自在に取り付けられていたが、他方側の端部に回動自在に取り付けられていてもよい。
【0036】
また、開閉杆4は、係合凸部8と係合凹部7aとの係合により不用意な回動が規制されるようになっていたが、例えばこのような係合手段の代わりに、軸部2bの周面とキャッチ片4aの内面との間にゴムパッキン等を設け、摩擦抵抗力にて不用意な回動を防止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例としてのフックを示す斜視図である。
【図2】図1のフックの使用状態を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】(a)は図3のB−B断面図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。
【図5】(a)はフックにIDカードを掛止する状態を示す正面図であり、(b)は係合部の係脱状況を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 フック
2 フック本体
2a 掛止部
2b 軸部
3 開放部
4 開閉杆
5 挿通口
6 環状凹溝
7 係止片(係合部)
8 係合凸部(被係合部)
9 掛止穴
C IDカード(被掛止体)
S ストラップ(吊支帯)
P 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被掛止体が通過可能な開放部を有するフック本体と、前記開放部を開閉自在とする開閉杆と、を備えるフックであって、
前記開閉杆は、前記フック本体に対してほぼ平行な姿勢で回動するように、一端が前記フック本体における開放部の一方の端部に回動自在に取り付けられている、ことを特徴とするフック。
【請求項2】
前記開閉杆の他端に、前記フック本体における開放部の一方の端部に形成された被係合部に係合可能な係合部が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のフック。
【請求項3】
前記係合部の前記被係合部に対する係脱は、前記開閉杆が該開閉杆の回動方向に対してほぼ直交する方向に弾性変形することで行われる、ことを特徴とする請求項2記載のフック。
【請求項4】
前記フック本体における開放部の一方の端部に、前記開閉杆を回動自在に支持する軸部が形成されるとともに、該軸部内に、前記フック本体を吊支可能な吊支帯を挿通可能な挿通口が形成されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフック。
【請求項5】
前記開閉杆の一端には、前記軸部の周面に弾性変形により係合可能な略C字状のキャッチ片が形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のフック。
【請求項6】
前記係合部と前記被係合部とが係合されている状態において、前記開閉杆の外面と前記フック本体における開放部の他方の端部外面との間に、前記被係合部に対する前記係合部の係合深さとほぼ同寸の段部が形成されている、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−54233(P2007−54233A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242215(P2005−242215)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(591070831)株式会社マーゼンプロダクツ (24)
【Fターム(参考)】