説明

フッ化ガスの分離及び精製回収方法

【課題】SF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収方法を提供する。
【解決手段】SF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収方法は、SF、HFCs又はPFCs以外の成分を含んだ気体のハイドレートを形成する段階を包含する。SF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収方法を利用する場合、従来の方法を利用することより著しく低いエネルギー費用でフッ化ガスを分離、回収することができるので、経済面での莫大な効果が得られるばかりでなく、地球温暖化指数の高いNon-COに該当するSF、HFCs又はPFCsの大気放出を防止することができ、地球温暖化を防止することができるという効果をさらに奏する。そのことから、より効果的なSF、HFCs又はPFCsの分離、回収方法として幅広く活用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収方法に係り、詳細にはSF、HFC又はPFCのガスを水と反応させ、ガスハイドレートの形態に高密度濃縮した後、固/液分離を介してSF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収する方法に係る。
【背景技術】
【0002】
SF、HFCs又はPFCsは、地球温暖化指数が高く、且つ、その寿命が非常に長いので、二酸化炭素(CO)、メタン(CH)、亜酸化窒素(N0)と共に6種の地球温暖化ガスとして指定されている代表的な環境汚染物質ともいえる。特にSFは、6種の地球温暖化ガスのうち、地球温暖化への影響力がもっとも強い物質であって、代表的な地球温暖化ガスの二酸化炭素より地球温暖化指数が2万3900倍も高く、最も深刻な環境汚染物質として注目を集めている。
【0003】
また、2007年12月15日、第13次UN気候変化協約当事国総会で採択された気候協約により、2013以降からは先進国、発展途上国を問わず、全世界が温室ガス減縮対象国に含まれることとなった。したがって、深刻な温室ガス効果を招くSFの分離、回収に対して、経済的であり且つ高効率を確保できる新しい対案が切実に要望されている。
【0004】
従来、SF、HFC又はPFCのフッ化ガスだけでなく、一般的な全種類のガスを分離及び精製回収する方法として、混合物ガス全体を液化した後、沸点によって蒸留させて分離するといった方法を主に用いた。
【0005】
しかしながら、公知のようにガスの液化温度は超低温であるため、液化するに困難性があり、莫大なエネルギー費用が費やされるといった短所があった。したがって、多成分混合ガスから特定成分を分離する工程において、低エネルギー消耗形工程の出現に対する研究が進められている。
【0006】
例えば、下記の特許文献1では、膜分離を用いて窒素とSFを分離するという方法を使った。
【0007】
【特許文献1】米国特許公開公報2002/0062734号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、SF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収するにあたり、新規であり且つより高効率の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した本発明の目的は、フッ化ガスをガスハイドレートの形態に高密度濃縮した後、分離、回収することを特徴とするフッ化ガスの分離、回収方法によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
フッ化ガスを、ガスハイドレートの形成原理を用いて、100倍以上の高密度に濃縮した後、ガスハイドレートの形態に分離することが可能であるので、既存の代表的な処理方法である液化方法に比して、エネルギー消耗を画期的に削減することができ、且つ、経済的である。また、地球温暖化指数がCOに比して略24000倍も高いSF、HFCs又はPFCsのNon- CO温室ガスの排出を極力低減することによって、国際的な環境規制に対応する能力を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成と実施例について添付図面を参照としながら詳しく説明する。
通常、ガスハイドレートは、高圧と低温の条件下で水分子間の水素結合から形成された3次元の格子構造に空洞(cavity)という空き空間が生じ、この空洞にガスが物理的に捕獲されて生成される。もっとも一般的に知られているガスハイドレートの一つは、メタンハイドレートである。メタンを水と反応させ、ハイドレートにする場合、通常、4℃で20気圧程度の高い気圧が要求される。
【0012】
しかし、本発明で分離しようとするフッ化ガスの場合、図1に示したように、4℃では約2.4気圧、常温の場合も、3.5気圧程度の比較的に簡単な条件下で結晶化が進められた。本発明の発明者らは、この点に着目し、フッ化ガスをハイドレート形態に分離、回収しようとした。
【0013】
例えば、窒素とSFを7対3のモル比で包含する気体混合物を液化方法を介して分離した場合、圧縮工程に莫大なエネルギーが費やされる。しかし、ハイドレート形成原理を用いて分離すれば、ハイドレート生成過程で発熱制御費用としてエネルギーの消耗はあり得るが、液化方法に比して20%以上少なく消耗されるので、経済性に極めて優れている。
【0014】
本発明において、高圧と低温の条件下でフッ化ガスと水が反応し、ハイドレートを形成させるために、反応に参加するガス分子と水分子との接触面積を増加させるための気/液接触過程としてインペラーを用いた攪拌を可能とする。また、微細液滴発生装置を介して微細液滴を噴射し、ハイドレートを形成する場合は、液滴のサイズが小さいほど単位ガス体積当り水分子とガス分子の接触面積が増加することになり、革新的に生成能率の向上を図ることができる。
【0015】
また、ハイドレート形成にプロモーター(promoter)として働くナノ物質の添加によりガスハイドレート形成速度促進(Kinetic promoter)とハイドレート形成条件緩和機能(Thermodynamic promotion)を奏することになり、フッ化ガス分離、回収方法に使われるエネルギー費用をさらに削減することができる。
【0016】
主体(host)の水に安定して分散されたナノサイズの無機物は、客体(guest)のガス吸着サイトを提供し、水中のガス濃度が増加するように誘導する。また、大きい比表面積により同時多発的な核形成サイトを提供し、ハイドレートがクラスター形態に一緒に育てられるような環境をも提供するばかりでなく、熱伝導度が大きいプロモーターそれ自体は、ハイドレート形成時に潜熱を効果的に分散するので、ハイドレート結晶成長に役立つという効果を期待することができる。
【0017】
プロモーターの効果を奏する陰イオン又は陽イオン界面活性剤の種類としては、LABS(linear alkyl benzene sulfonate)、SDS(sodium dodecyl sulfate)、TMA(trimethyl amine)、THF(tetrahydrofuran)、TFT(trifluorotoluene)、CuCl、2.2-bipyridine、1.1.2-trichlorotrifluoroethane、ether、ethanol、chloroform、CHCl(methylene dichloride)、TEA(trietylamine)、MPEO(methoxy polyethylene glycol)、TBABB(tetrabutyl ammonium bibenzoate)、MTSDA(methyl trimethyl silyl dimethyl ketene acetal)、BBB(2-bromoisobutyryl bromide)、DMAP(4-(dimethylamino)pyridine)、1H,1H-FOMA(1H,1H-Perfluorooctyl methacrylate)、1H,1H,2H,2H-FOMA(1H,1H,2H,2H-perfluorooctyl methacrylate)、PEPECOOH(perfluoropolyether carboxylic acid)及びTTIP(titanium(IV)triisopropoxide)である。
【0018】
これに係る研究方向や概念は、世界最初の試みであって、客体密度の増加や同時成長機会、さらに潜熱の効果的な分散機能などが調和し、ハイドレートの形成を促進(Kinetic promoter)させるという効果を奏する。
【0019】
ナノプロモーターを使うようになると、図2に示したように、高密度のガスハイドレートが迅速に形成される。即ち、ナノ粒子は比表面積が大きいので、吸着サイトを提供することになり、客体の密度が増加し、核形成サイトを提供すると同時に成長することになるので、高密度のガスハイドレートが迅速に形成される。また、ナノ炭素粒子などのナノ粒子は、熱伝導度が大きいので、潜熱を分散させ、結晶の成長に役立つことになる。
【0020】
本発明は、次の実施例でよりよく理解できるが、これら実施例と実験例に本発明が制限されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0021】
[実施例1]
SF+混合ガスの分離及び精製回収率実験
反応器に125mlの純水(HPLC grade、99.999%)を注入し、SF50%(N Balance)気体を用いて反応器内部をパージ(purge)する過程を数回繰り返した。圧力7.8bar、温度276K、攪拌速度500rpmに設定し、ハイドレートを形成させた。ハイドレート形成反応が完了された後、反応器を低温に充分冷却させた。次いで反応器の内部からハイドレートに転換されていないSF+Nガスを外部に吐き出した。ハイドレートだけが存在している反応器内部を7bar、温度293Kに設定し、ハイドレートを解離させた。解離させられたガスに対して、GC(Varian CP3800 Gas Chromatograph、TCD)を用いて定性/定量分析を行った。その結果を、図3及び図4に示した。
【0022】
[実施例2]
プロモーターによる効果比較実験
反応器に125mlの純水(HPLC grade、99.999%)を注入し、SF99.9%気体を用いて反応器内部をパージする過程を経てから、ハイドレート形成条件として、圧力7.8bar、温度276Kに設定し、ハイドレート形成速度を分析した。その結果を、図5に示した。
【0023】
[実施例3]
LABSプロモーターの効果実験
線形アルキルベンゼンスルホナート(Linear Alkyl Benzene Sulfonate、LABS、Aldrich)を包含する水溶液を濃度によって製造し、充分に混合し、さらに純水(HPLC grade、99.999%)に完全に溶けるようにして、前記実施例2と同じ反応器に濃度別に製造したLABS水溶液を125ml注入し、SF99.9%気体を用いて反応器内部をパージする過程を経た後、ハイドレート形成条件として圧力7.8bar、温度276Kに設定し、時間に応じてSFハイドレート形成速度を分析した。その結果を図5に示した。
【0024】
図3と図4を通じて確認し得るように、SF50%(N Balance)気体を利用し、ハイドレート形成解離を通じて得られた気体の分析結果、SFの組成が約80%、Nの組成が約20%程度に表れた。即ち、本発明による実験を通じてSF及びHFCsの分離及び精製回収が行われていることがわかった。
【0025】
図5から分かるように、純水(HPLC grade、99.999%)でSFハイドレート形成時には時間が経過してもSFの消費量、即ちSFハイドレートの生成量は0.02モル以下であって、その形成速度が非常に遅い。しかし、線形アルキルベンゼンスルホナート(Linear Alkyl Benzene Sulfonate、LABS、Aldrich)のような陰イオン界面活性剤をプロモーターとして添加したときには、濃度による差はあるものの、時間の経過によるSFの消費量、即ちSFハイドレートの生成量は比例的に増えていく。つまり、本発明による実験を介して高効率、高濃度のSFハイドレートの生成がなされ得るということがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
SF、HFCs又はPFCsは温室ガスとして、韓国国内で生じるSF発生量の10%を分離及び精製回収し得る場合、年間15万億ウォン(韓国貨幣単位)以上の環境費用を削減できる経済効果を期待し得る。
【0027】
本発明のSF、HFCs又はPFCsの分離及び精製回収方法は、温暖化防止のための温室ガスの回収及び他の混合ガスからSF、HFCs又はPFCsの分離、回収時に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】SFガスのハイドレート相平衡図である。
【図2】ナノ粒子プロモーターのメカニズムを示した図面である。
【図3】SF50%(N Balance)ハイドレート形成率のグラフである。
【図4】SF50%(N Balance)を利用して造られたハイドレートの解離による解離ガスのGCを用いた分析グラフである。
【図5】ガスハイドレート促進剤(promoter)として線形アルキルベンゼンスルホナート(Linear Alkyl Benzene Sulfonate、LABS、Aldrich)を使って、添加濃度によるSFハイドレートキネティック(Kinetic)実験結果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化ガスを包含するガス混合物で、フッ化ガスと水を反応させ、ガスハイドレートを形成させることにより、分離及び精製回収することを特徴とするフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項2】
前記フッ化ガスは、SF(Hexafluorosulfide)、HFCs (Hydrofluorocarbons)又はPFCs(Perfluorocarbons)であることを特徴とする請求項1に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項3】
前記フッ化ガスのハイドレート形成は、−15℃乃至25℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項4】
前記フッ化ガスのハイドレート形成は、1乃至25気圧の圧力で行われることを特徴とする請求項1に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項5】
前記ハイドレート形成速度及び分離/精製効率を促進するためにプロモーター(promoter)を使用することを特徴とする請求項1に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項6】
前記プロモーターは、ナノサイズで使用することを特徴とする請求項5に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。
【請求項7】
前記プロモーターは、陰イオン又は陽イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項5に記載のフッ化ガスの分離及び精製回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−114055(P2009−114055A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280992(P2008−280992)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(505216302)株式会社 柳成 (2)