説明

フッ化成分を含有するオーバーコートされた光導電体

【課題】フルオロポリマー粒子含有したオーバーコート層は摩擦帯電により電荷の蓄積、フルオロポリマー粒子の破片が電子写真装置に悪い影響をおよぼした。
【解決手段】所望により設けてもよい支持基体、および電荷発生層、少なくとも1層の電荷輸送層および該電荷輸送層と接触かつ隣接しているオーバーコート層を含む光導電体であって、該オーバーコート層にフルオロアルキルエステルおよびポリマーが含まれている光導電体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、画像形成部材、装置、感光体、光導電体などに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,037,631号には、支持基体、及びその上に設けられた正孔ブロッキング層を有し、架橋した電荷発生層及び電荷輸送層を有する光導電性画像形成部材であって、該電荷発生層が電荷発生組成物と塩化ビニル、アリルグリシジルエーテル、水酸基含有ポリマーからなる光導電性画像形成部材が開示されている。開示されている内容は参照により本明細書中に取り込まれる。
【特許文献1】米国特許第4,265,990号
【特許文献2】米国特許第6、913、863号
【特許文献3】米国特許第7、037,631号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カール防止バックコート(ACBC)層、電荷輸送層、またはオーバーコート層において、フッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーを含有する光導電体を製造することは難しいとされ、これらの均一で安定した分散液は通常は得ることができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、基体などの支持媒体、電荷発生層、通常、基体と電荷発生層の間に配置される所望により設けてもよいアンダーコート層もしくは正孔ブロッキング層、および少なくとも一層の電荷輸送層から成る、硬質もしくは多層の可撓性ベルト型の画像形成部材、光導電体、または装置に関する。少なくとも一層の電荷輸送層の少なくとも一層とは、1層〜約5層、1層〜約3、2、1層のような範囲であり、第一の電荷輸送層および第ニの電荷輸送層、正孔ブロッキング層、所望により設けてもよい接着層、およびフルオロアルキルエステルを含有するオーバーコート層などの層から成る。これらの電荷輸送層の少なくとも一層は、少なくとも電荷輸送成分を一つ、およびポリマーもしくは樹脂バインダーを含む。実施の形態において、正孔ブロッキング層のために選択される樹脂バインダーは、塩化メチレンなどの多くの溶媒に実質的に不溶性のバインダーを含む公知の適切なバインダーであり、これらの例が、同時係属出願の米国特許出願番号第一1/593,658号(代理人名簿番号20060847−US−NP)に記載されている。
【0005】
実施の形態において、オーバーコート層は、樹脂バインダーポリマーに関して本明細書に記載したポリマー、フルオロアルキルエステル、および所望により選択できる電荷輸送化合物を含み、より詳細には、オーバーコート層は、適切なポリマー、フルオロアルキルエステル、および所望により設けてもよい電荷輸送成分の混合物を含む。
【0006】
上記のフルオロポリマーを含有する層は、例えば、電子写真印刷装置において、この層が、後面プレートおよびローラなどと擦れることにより、摩擦電気的に帯電しやすく、その結果、静電的牽引力となって印刷装置中の光導電体の処理速度に悪影響をおよぼし、フルオロポリマー粒子もしくは破片が印刷装置の他の関連システムにも悪影響をおよぼし、ACBC層の表面またはオーバーコート層上に電荷の蓄積が発生する。したがって、これまでオーバーコート層にフルオロポリマーを含有することでは容易に達成できなかった良好な耐摩耗性、乳剤凝集トナークリーニング性、および耐成膜性を光導電体によって実現可能とするには、表面エネルギーの低いオーバーコートが望ましい。さらに、フルオロポリマー(PTFE/界面活性剤ドーパント)から生じるLCM(横方向の電荷移動)は、ドラム型の光導電体とは違って、ベルト型の光導電体では、ブレードクリーニングの際に電荷輸送層が劣化もしくは磨耗して、導電性種が表面に蓄積やすくなり、結果的にLCMを生じるため可撓性ベルト型光導電体にとって望ましくない。
【0007】
以上の従来の技術における欠点は、本発明の光導電体がACBC層および/または電荷輸送層および/またはオーバーコート層にフルオロアルキルエステルを含むことによって回避または最小限化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
さらに、本発明の範囲には、本明細書中に記載されている光導電体による画像形成および印刷方法が含まれる。これらの方法は、一般に、画像形成部材に静電潜像を形成し、その後、例えば、熱可塑性樹脂、顔料などの着色剤、電荷添加剤、および表面添加剤から成るトナー組成物によって画像を現像し(米国特許第4,560,635号、第4,298,697号及び第4,338,390号参照)、次いで、画像を適切な基体へ転写し、この基体へ画像を永久定着させることを含む。光導電体が印刷モードで使用される環境においても、レーザ装置や画像形成バーによって露光されることを以外は、画像形成方法は、上記と同じ工程を含む。より具体的には、本明細書に開示されている可撓性光導電体ベルトは、毎分100部以上の速度で数版を作成することができるゼロックスコーポレーションのiGEN3(登録商標)装置のために選択され得る。本開示は、画像形成、特に、デジタルおよび/またはカラー印刷を含む電子写真画像形成および印刷を包含する。
【0009】
実施の形態において、本明細書中に記載されている感光体は、耐用年数が長く、多くの場合Vr(残留電位)が優れて低く、適切な場合、Vrサイクルアップを実質的に防止することができ、感度が高く、許容可能な低い画像ゴースト特性を有し、望ましいトナークリーニング性を備える。
【0010】
本明細書中に開示されている利点の多くを有する表面エネルギーの低い輸送層およびオーバーコート層から成る光導電体を開示する。表面エネルギーの低い輸送層およびオーバーコート層は、接触角を高くした結果、表面エネルギーを低く抑え、良好な耐摩耗特性、トナークリーニング性等が得られ、約2,000,000の画像形成サイクル運転の長寿命、良好な電子特性、安定した電気特性、画像ゴーストの発生の低下、特定の溶媒蒸気と接触した時の電荷輸送層の耐亀裂性、および、公知のPIDC(光誘導放電曲線)の生成によって示されるように、多数の画像形成サイクルがほぼ平坦で変わらない一貫したVrが示されるなどの本明細書に記載されている利点の多くを有する。可溶性のフルオロアルカリエステルを含有するオーバーコート層が有する具体的利点の例としては、オーバーコート層によって環境から保護されることで、光導電層の劣化の最小限化が可能であり、接着性が改良され、優れた耐摩耗性が得られ、長寿命を備えることができ、画像形成部材に生じるキズの防止または最小限化が可能である。キズがあると、望ましくないプリント欠陥が生じるおそれがあり、例えば、作成された最終印刷物にキズが目視される。さらに、多くの場合、Vr(残留電位)が優れて低く、適切な場合Vrサイクルアップを実質的に防止することができ、感度が高く、許容可能な低い画像ゴースト特性を有し、低いバックグラウンドおよび/または帯電不足領域(CDS)の最小限化が可能であり、望ましいトナークリーニング性などを備える。
【0011】
オーバーコート層のために選ばれるポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシ、およびこれらのランダムコポリマーもしくは交互コポリマーポリマーが挙げられ、より具体的には、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリジンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン-3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などのポリカーボネートが挙げられる。実施の形態において、電荷輸送には電気的に不活性なバインダーを含み、さらに、実施の形態において、電荷発生層は、分子量(Mw)約20,000〜約100,000、または、好ましくは、約50,000〜約100,000のポリカーボネート樹脂を含む。一般に、オーバーコート層は、約40〜約99.9重量%のポリマーバインダー、約0〜約59.9重量%の電荷輸送化合物、および約0.1〜約20重量%のフルオロアルキルエステルを含む。または、約80〜約99重量%のポリマーバインダー、約0〜約15重量%の電荷輸送化合物、および約0.5〜約5重量%のフルオロアルキルエステルを含む。3つの成分の合計は約100重量%である。
【0012】
オーバーコート層は、様々な適切な厚さであってよく、例えば電荷輸送層の先端に接触しかつ隣接するまでの厚さが、約0.5〜約10ミクロン、約1〜約12ミクロン、約1〜約5ミクロン、および約2〜約7ミクロンなど厚さであってよい。また、オーバーコート層は、本明細書中では電荷輸送層アリールアミンに関して記載しているように電荷輸送成分(複数を含む)を含んでいてもよいし、また、次式で表されるオーバーコート用の電荷輸送化合物を含んでいてもよい。
【化2】

(式中、mは0または1であり、Zは次式の少なくとも一つから成る群から選択される。)
【化3】

(式中、nは0または1であり、Arは次式の少なくとも一つから成る群から選択される。)
【化4】

(式中、Rは−CH3、−C25、−C37、およびC49のアルキルの少なくとも一つから成る群から選択され、Ar´は、次式の少なくとも一つから成る群から選択される。)
【化5】

(Xは、次式の少なくとも一つから成る群から選択される。)
【化6】

(式中、Sは、0、1または2である。)
【0013】
本発明の態様は、支持基体に接触しているフルオロアルキルエステル含有カール防止バックコート(ACBC)層、該支持基体上に、樹脂またはポリマーバインダー中に必要に応じて分散される電荷発生成分を含む電荷発生層、および少なくとも一層の、例えば1〜約7層、1〜約5層、1〜約3層、2層、もしくは1層の電荷輸送層を含む光導電体に関する。
また、支持基体、電荷発生層、正孔輸送分子および樹脂バインダーを含む少なくとも一つの電荷輸送成分を含む少なくとも一層のフルオロアルキルエステルオーバーコート層または電荷輸送層、および、例えば、アミノシランと塩化メチレンおよび多数の他の同様の溶媒に不溶性もしくは実質的に不溶性であるハロゲン化、例えば、塩素化されたポリマー樹脂を含む所望により選択してよい正孔ブロッキング層、をこの順に含む可撓性光導電体に関する。
また、ACBC層または少なくとも一層の電荷輸送層中にフルオロエステルを含有し、電荷発生層の厚さが約0.1〜約10ミクロンであり、少なくとも一層の輸送層のそれぞれの厚さが約5〜約100ミクロンである光導電性部材に関する。
また、帯電手段、現像手段、転写手段、及び定着手段を含む画像形成方法及び画像形成装置であって、該画像形成装置が本明細書中に記載した光導電性画像形成部材を含む、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
また、電荷発生層がポリカーボネートなどのバインダーを含む画像形成部材に関する。
また、電荷発生層の厚さが約0.1〜約4ミクロンである画像形成部材に関する。
また、正孔ブロッキング層のポリマーバインダーが約0.1〜約90、1〜約50、2〜約25、および5〜約10重量%の量で存在し、ブロッキング層の全成分の合計が約100重量%である画像形成部材に関する。
また、電荷発生成分が約370〜約950nmの波長の光を吸収するヒドロキシガリウムフタロシアニンである画像形成部材に関する。
また、支持基体が金属を含む導電性基体からなる画像形成部材または光導電体に関する。
また、導電性基体が、アルミニウム、アルミニウム処理ポリエチレンテレフタレート、またはチタン処理ポリエチレンテレフタレートである画像形成部材に関する。
また、電荷発生顔料が無金属フタロシアニンである光導電体または画像形成部材に関する。
また、電荷輸送層のそれぞれが次式で表される化合物を含む画像形成部材(または光導電体)である。
【0014】
【化7】

(式中、Xは、アルキル、アルコキシ、アリール、およびこれらの置換された誘導体など適切な炭化水素、ハロゲン、およびこれらの混合物から成る群から選択され、または、Xは、四つの末端環上に含まれていてもよい。)
また、アルキルおよびアルコキシが約1〜約12個の炭素原子を含む画像形成部材に関する。
また、アルキルが約1〜約5個の炭素原子を含む画像形成部材に関する。
また、アルキルがメチルである画像形成部材に関する。
また、電荷輸送層の各層または少なくとも一層が次式で表される化合物を含む画像形成部材に関する。
【0015】
【化8】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立にアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲンまたはこれらの混合物を表す。)
また、テルフェニルアミンアルキルおよびアルコキシがそれぞれ約1〜約12個の炭素原子を含む画像形成部材に関する。
また、アルキルが約1〜約5個の炭素原子を含む画像形成部材に関する。
また、電荷発生層中に存在する電荷発生顔料が、クロロガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニン、または、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンを含む画像形成部材に関し、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、ガリウムフタロシアニンを強酸中に溶解させてガリウムフタロシアニン前駆体を加水分解し、次に、得られた溶解後の前駆体を塩基性水溶性媒体中に再沈殿させ、水洗により形成されたイオン種を除去し、水とヒドロキシガリウムフタロシアニンを含む得られた水性スラリーを濃縮してウェットケーキとし、ウェットケーキを乾燥させて水分を除去し、得られた乾燥顔料に第ニの溶媒を添加して混合し、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを形成することによって調製される。
また、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンはX線回折計で測定すると、ブラッグ角(2θ+/−0.2°)7.4、9.8、12.4、16.2、17.6、18.4、21.9、23.9、25.0、28.1度に強いピークを有し、7.4度に最も強いピークを有する画像形成部材または光導電体に関する。
また、画像形成部材に静電潜像を形成し、該潜像を現像し、現像された静電画像を適切な基体に転写することを含む画像形成方法に関する。
また、画像形成部材が約370〜約950nmの波長の光に露光される画像形成方法に関する。
また、電荷発生層が基体と電荷輸送層の間に備えられた部材に関する。
また、電荷輸送層が基体と電荷発生層の間に備えられた部材に関する。
また、電荷発生層が約0.1〜約50ミクロンの厚さを有する部材に関する。
また、電化発生成分が約0.05〜約95重量%の量で存在し、電荷発生顔料が約96〜約5重量%のポリマーバインダー中に分散され、正孔ブロッキング層が塩素化ポリマーバインダーを含む部材に関する。
また、電荷発生層の厚さが約0.2〜約12ミクロンである部材に関する。
また、電荷輸送層の樹脂性バインダーが、ポリエステル、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリカーボネートとポリシロキサンのコポリマーポリマー、ポリスチレン−b−ポリビニルピリジン,およびポリビニルホルマールから成る群から選択される画像形成部材に関する。
また、電化発生成分がV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン、チタニルフタロシアニンまたはクロロガリウムフタロシアニンであり、電荷輸送層が、正孔輸送物質を含む画像形成部材に関し、正孔輸送物質としては、N,N’−ジフェニル−N,N−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−mまた、トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス−(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン分子が含まれる。
また、電荷発生層がアルコキシガリウムフタロシアニンを含む画像形成部材に関する。
また、基体上のコーティングアミノシランと塩素化ポリマーを含有するブロッキング層を含み、該ブロッキング層上に接着層がコーティングされた光導電性像形成部材に関する。
また、画像形成部材上に静電潜像を形成し、該潜像を現像し、適切な基体に現像後の静電画像を転写し定着させることを含む着色画像形成方法に関する。
また、支持基体と、その下に、本明細書中に記載のフルオロアルキルエステル含有ACBC層と、本明細書中に記載の正孔ブロッキング層もしくはアンダーコート層と、電荷発生層と、正孔輸送層と、該正孔輸送層、または、実施の形態においては、上記電荷発生層と接触しているトップオーバーコート層を含む光導電性画像形成部材であって、複数の電荷輸送層が例えば、2〜約10層から選択され、より具体的には、2層としてよい光導電性画像形成部材に関する。
また、フルオロアルキルエステル含有ACBC層と、支持基体と、正孔ブロッキング層と、電荷発生顔料を含む電荷発生層と、第一、第ニまたは第三の電荷輸送層とをこの順に含む光導電性画像形成部材に関する。
また、基体と、正孔ブロッキング層もしくはアンダーコート層と、電荷発生顔料層と、必要に応じてフルオロアルキルエステルを含有し、少なくとも一種の電荷輸送成分を更に含む電荷輸送層と、樹脂バインダーとをこの順に含む光導電体に関する。
また、ポリマーとフルオロアルキルエステルを含有する層と、その上に、支持基体と、電荷発生層と、少なくとも一層の電荷輸送層とを含む光導電体に関する。
また、フルオロアルキルエステル層がカール防止バックコート層である光導電体に関する。
また、フルオロアルキルエステルがフルオロアルコールとカルボン酸のエステル化生成物から得られる光導電体に関する。
また、電荷発生層が少なくとも1つ、例えば、1〜約4の電荷発生顔料(複数を含む)、およびポリマーバインダーを含む光導電体に関する。
また、カルボン酸が一塩基酸および多塩基酸の少なくとも一つであり、それぞれが、例えば、約2個〜約48個、より具体的には、約10個〜約25個の炭素原子を有する光導電体に関する。
また、カルボン酸が、酢酸、オクタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼリン酸、ドデカンニ塩基酸、クエン酸、およびこれらの混合物から成る群から選択される光導電体に関する。
また、フルオロアルコールが次式で表される光導電体に関する。
【0016】
【化9】

(式中、mが、約1〜約18、約2〜約12、より具体的には、約2〜約4であり、nが、約1〜約10、約1〜約7、より具体的には、1〜約5である)
また、ACBCフルオロアルキルエステルが、例えば、フルオロアルキルアセテート、オクタン酸フルオロアルキル、ラウリン酸フルオロアルキル、ステアリン酸フルオロアルキル、マロン酸フルオロアルキル、アジピン酸フルオロアルキル、アゼリン酸フルオロアルキル、ドデカン二塩基酸フルオロアルキル、クエン酸フルオロアルキル、およびこれらの混合物から成る群から選択される光導電体に関する。
また、電荷輸送層が次式で表される化合物の少なくとも一つを含む光導電体に関する。
【0017】
【化10】

(式中、Xは、適切な炭化水素であって、より具体的には、アルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲンの少なくとも一つから成る群から選択される)
また、電荷輸送層が次式で表される化合物の少なくとも一つを含む光導電体に関する。
【0018】
【化11】

(式中、X、Y、およびZはそれぞれ適切な炭化水素であり、より具体的には、アルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲン、およびこれらの混合物から成る群から独立に選択され、Y及びZの少なくとも一つが存在している)また、所望により設けてもよい支持基体、および電荷発生層と、少なくとも一層のフルオロアルキルエステル含有電荷輸送層とを含む光導電体に関する。
および、所望により設けてもよい支持基体、および電荷発生層と、少なくとも一層の電荷輸送層と、該電荷輸送層に接触かつ隣接しており、本明細書に記載のフルオロアルキルエステルおよびポリマーを含むオーバーコート層とを含む光導電体に関する。
【0019】
ACBC層、電荷輸送層、および/またはオーバーコート層に選択されるフルオロアルキルエステルは、フルオロアルコールとカルボン酸のエステル化生成物であり、カルボン酸は、例えば、約2〜約48個または約4〜約30個の炭素原子を有する一塩基酸または多塩基酸であってよい。カルボン酸の例としては、酢酸、オクタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの一塩基性カルボン酸、マレイン酸、アジピン酸、アゼリン酸、ドデカン二塩基酸などの二塩基性カルボン酸、およびクエン酸などの三塩基酸を含む。
【0020】
フルオロアルコールの例は、一般に次式によって表される。
【化12】

(式中、mとnは繰返し単位の数を表し、より具体的には、mは、約1〜約18または約3〜約10であり、nは、約1〜約10または約2〜約4であり、あるいはnは2である)
【0021】
フルオロアルキルエステルの例としては、次式で表されるフルオロアルキルモノエステルが含まれる。
【化13】

(式中、mとnは繰返し単位の数を表し、より具体的にはmは約1〜約18または約3〜約10であり、nは約1〜約10または約2〜約4であり、あるいはnは2である。Rは、約2〜約30個、2〜約15個、2〜約10個、1〜約20個の炭素原子を有するアルキルである)。フルオロアルキルモノエステルの具体例としては、フルオロアルキルアセテート、オクタノン酸フルオロアルキル、ラウリン酸フルオロアルキル、ステアリン酸フルオロアルキルなど、およびこれらの混合物の少なくとも一つから成る群から選択され得る。市販されているフルオロアルキルモノエステルの例としては、ZONYL(登録商標)FTS(平均分子量703のステアリン酸フルオロアルキル)、ZONYL(登録商標)TM(平均分子量534のメタクリル酸フルオロアルキル)、およびZONYL(登録商標) TA−N(平均分子量569のフルオロアルキルアクリレート)が挙げられ、全て、E.I.デュポン社(E.I.DuPont)から入手可能である。
【0022】
フルオロアルキルエステルの例としてはさらに、マロン酸フルオロアルキル、アジピン酸フルオロアルキル、アゼリン酸フルオロアルキル、フルオロアルキルドデカンニ塩基酸およびこれらの混合物のようなフルオロアルキルジエステル、フルオロアルキルクエン酸などのフルオロアルキルトリエステル、およびデュポン社から入手可能なフルオロアルキルモノエステルである、ZONYL (登録商標)TBC(重量平均分子量が1,563のクエン酸フルオロアルキル)が挙げられる。
【0023】
実施の形態において、フルオロアルキルエステルは、従来の感光体表面層、即ち、カール防止バックコート層、電荷輸送層および/または、必要に応じてオーバーコート層に組み込まれる。コーティング組成物は、必ずしも含まなくてもよいが、主にこの層の機械的特性を改良するために選択されるPTFE、シリカ、または他の同様の従来の粒子を含んでいてもよい。これらの従来の粒子のACBC層成分中に存在する量は、例えば、約1〜約20重量%または約4〜約10重量%である。カール防止バックコート(ACBC)層は、さらに電荷輸送層のために通常選択されるポリマーと同じポリマーの少なくとも一つを含む。これらのポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシ、およびこれらのランダムコポリマーまたは交互コポリマーポリマーを含み、より具体的には、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリジンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン-3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などのポリカーボネートが挙げられる。実施の形態において、ポリマーバインダーは、分子量が約20,000〜約100,000、より具体的には、約50,000〜約100,000のポリカーボネート樹脂を含む。様々な実施の形態において、カール防止バックコート層は、約1〜約100ミクロン、約5〜約50ミクロン、より具体的には、約10〜約30ミクロンの厚さを有する。
【0024】
実施の形態において、フルオロアルキルエステルは、カール防止コート層成分、電荷輸送層または必要に応じて画像形成部材に最終的な表面層を形成するために使用されるオーバーコート層などの表面層塗布液もしくは分散液中に物理的に混合され、溶解され、または分散され得る。フルオロアルキルエステルは、カール防止コート層、電荷輸送層、および/またはオーバーコート層などの光導電体層中に、約0.01〜約20重量%、約0.01〜約10重量%、約0.1〜約5重量%、および、より具体的には、約0.5〜約2重量%などの様々な好適で有効な量で含まれる。
【0025】
光導電体基体層の厚さは、経済的な考慮や電気的特性を含む多数の要因によって決まる。従って、この層は、例えば、約1,000〜3,300ミクロン、約1,000〜約2,000ミクロン、約500〜約1,200ミクロン、または約300〜約700ミクロンなどの3,000ミクロン以上の厚さであってもよく、または、最小の厚さであってもよい。実施の形態において、この層は、約75ミクロン〜約300ミクロン、または約100ミクロン〜約150ミクロンの厚さを有する。
【0026】
基体は、多数の公知の物質を含んでいてよく、不透明または実質的に透明であってよく、正孔ブロッキング層、接着層、電荷発生層および電荷輸送層のための支持層として機能する、どのような適切な材料も含んでいてよく、基体は適切な機械的特性を有していなくてはならない。従って、基体は、電気的に非伝導性または伝導性の材料、例えば、無機または有機組成物を含んでいてよい。電気的に非伝導性の材料として、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタンなど(これらは、薄いウエブとして可撓性である)を含む、この目的のために公知である種々の樹脂を使用することができる。電気的に伝導性の基体は、どのような適切な金属、例えば、アルミニウム、ニッケル、スチール、銅など、または導電性物質、例えば、炭素、金属粉末などもしくは有機導電性材料が充填されている、前記のようなポリマー材料であってもよい。電気的に絶縁性または伝導性の基体は、エンドレス可撓性ベルト、ウエブ、硬質シリンダー、シートなどの形であってよい。基体層の厚さは、所望される強度および経済的考慮を含む多数の要因に依存する。ドラム光導電体について、この層は、例えば、多cm以下の実質的厚さのものまたは1mm未満の最小の厚さのものであってよい。同様に、可撓性ベルトは、例えば、約250μmの実質的厚さのものまたは約50μm以下、例えば、約5〜約45μm、約10〜約40μm、約1〜約25μm、約3〜約45μmの最小の厚さのものであってよい。基体層が導電性ではない実施の形態において、その表面は、導電性皮膜によって導電性にすることができる。導電性皮膜の厚みは、光学的透明度、所望される可撓性の程度および経済的要因に依存して、実質的に広い範囲に亘って変化させることができる。
【0027】
基体の代表的例は、本明細書中に示すようなものであり、更に特に、本明細書の開示の画像形成部材のために選択された層であり、この基体は、不透明または実質的に透明であってよく、無機もしくは有機ポリマー材料、例えば、MYLAR(登録商標)市販のポリマー、チタンを含有するMYLAR(登録商標)を含む絶縁材料の層、半導性表面層、例えば、インジウムスズ酸化物もしくはその上に配置されたアルミニウムを有する有機もしくは無機材料の層またはアルミニウム、クロム、ニッケル、真鍮などを含む導電性材料を含んでいる。基体は、可撓性、シームレスまたは硬質であってよく、多数の多くの異なった形状、例えば、板、円筒形ドラム、スクロール、エンドレス可撓性ベルトなどを有していてよい。実施の形態において、基体は、シームレス可撓性ベルトの形であってよい。幾つかの状況において、特に、基体が可撓性有機ポリマー材料であるとき、基体の裏側に、カール防止層、例えば、MAKROLON(登録商標)などの市販のポリカーボネート材料をコートすることが望ましいであろう。
【0028】
実施の形態において、電荷発生層には、多数の公知の電荷発生顔料、例えば、通常、樹脂バインダー中に分散されている、金属フタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンまたはクロロガリウムフタロシアニンが含まれている。一般的に、電荷発生層は、公知の電荷発生顔料、例えば、金属フタロシアニン、金属非含有フタロシアニン、アルキルヒドロキシルガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ペリレン、特に、ビス(ベンゾイミダゾ)ペリレン、チタニルフタロシアニンなど、更に特に、バナジルフタロシアニン、V型ヒドロキシガリウムフタロシアニンならびに無機成分、例えば、セレン、セレン合金および三方晶セレンを含有していてよい。一般的に、電荷発生層の厚さは、他の層の厚さおよび電荷発生層中に含有されている電荷発生材料の量を含め、多数の要因に依存する。従って、この層は、例えば、電荷発生組成物が、約30〜約75体積%の量で存在するとき、例えば、約0.05ミクロン〜約10ミクロン、更に特に、約0.25ミクロン〜約4ミクロンの厚さのものであってよい。実施の形態におけるこの層の最大厚さは、主として、感光度、電気特性および機械的考慮のような要因に依存性である。
【0029】
電荷発生層例は、真空蒸着によって製造された、セレンおよびセレンとヒ素、テルル、ゲルマニウムなどとの合金、水素化された無定形ケイ素およびケイ素とゲルマニウム、炭素、酸素、窒素などとの化合物の無定形フィルムを含んでいてよい。電荷発生層は、また、フィルム形成性ポリマーバインダー中に分散され、溶媒コーティング技術によって製造される、結晶性セレンおよびその合金の無機顔料;第II族〜VI族化合物;ならびに有機顔料、例えば、キナクリドン、多環式顔料、例えば、ジブロモアンタントロン顔料、ペリレンおよびペリノンジアミン、多核芳香族キノン、ビス−、トリス−およびテトラキス−アゾなどを含むアゾ顔料を含んでいてよい。
【0030】
本明細書の開示の実施の形態における電荷発生層のコーティングは、電荷発生層の最終乾燥厚さが本明細書中に示すようなものであり、例えば、約40℃〜約150℃で、約1〜約90分間乾燥した後、例えば、約0.01〜約30ミクロンとすることができる。更に特に、例えば、約0.1〜約30ミクロンまたは約0.2〜約5ミクロンの厚さの電荷発生層を、基体上に、基体と電荷輸送層との間の他の表面上などに、付与し、または付着させることができる。
【0031】
電荷発生層の付着のために、デバイスの他の前もってコートされた層を実質的に妨害しないまたはこの層に悪影響を与えないコーティング溶媒を選択することが望ましい。電荷発生層のためのコーティング溶媒の例は、ケトン、アルコール、芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、エーテル、アミン、アミド、エステルなどである。具体的な溶媒例は、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコール、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メトキシエチルなどである。
【0032】
実施の形態において、適切な公知の接着層が、光導電体中に含まれていてよい。典型的な接着層材料は、例えば、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。接着層厚さは変えることができ、実施の形態において、例えば、約0.05ミクロン(500オングストローム)〜約0.3ミクロン(3,000オングストローム)である。接着層は、正孔ブロッキング層の上に、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、線巻きロッドコーティング、グラビアコーティング、バード(Bird)アプリケーターコーティングなどによって付着させることができる。付着したコーティングの乾燥は、例えば、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥などによって実施することができる。
【0033】
所望により設けてもよい接着層としては、通常、正孔ブロッキング層および電荷発生層に接触しているかまたはこれらの間に配置されており、コポリエステル、ポリアミド、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタンおよびポリアクリロニトリルを含め種々の公知の基体を選択することができる。この層は、例えば、約0.001ミクロン〜約1ミクロンまたは約0.1〜約0.5ミクロンの厚さのものである。所望により、この層は、例えば、本明細書の開示の実施の形態において、更に望ましい電気的性質および光学的性質を付与するために、有効な適切量、例えば、約1〜約10重量%の、導電性粒子または非導電性粒子、例えば、酸化亜鉛、二酸化チタン、窒化ケイ素、カーボンブラックなどを含んでいてよい。
【0034】
電荷輸送層(この層は、一般的に、約5ミクロン〜約90ミクロンの厚さ、更に特に、約10ミクロン〜約40ミクロンの厚さのものである)のために、多数の適切な公知の電荷輸送成分、分子または化合物、例えば、ここに示すような式/構造のアリールアミンを選択することができる。
【化14】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立にアルキル、アルコキシ、アリール、ハロゲンまたはこれらの混合物を表す。)
【0035】
約20〜約90重量%の量で存在するアリールアミンの具体例は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−1,1−ビフェニル−4,4’−ジアミン(但し、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群から選択される)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(ハロフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(但し、ハロ置換基は、クロロ置換基である)、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−p−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−m−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジ−o−トリル−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(4−イソプロピルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2−エチル−6−メチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス−(2,5−ジメチルフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−クロロフェニル)−[p−テルフェニル]−4,4’’−ジアミンなどが挙げられる。
【0036】
電荷輸送層のために選択されるバインダー材料の成分例は、例えば、ポリカーボネート、ポリアクリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシおよびこれらのランダムまたは交互コポリマー、より具体的には、ポリカーボネート、例えば、ポリ(4,4’−イソプロピリデンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−A−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−シクロヘキシリデンジフェニレン)カーボネート(ビスフェノール−Z−ポリカーボネートとも呼ばれる)、ポリ(4,4’−イソプロピリデン−3,3’−ジメチル−ジフェニル)カーボネート(ビスフェノール−C−ポリカーボネートとも呼ばれる)などが挙げられる。実施の形態において、電気的に不活性なバインダーは、約20,000〜約100,000の分子量または好ましくは約50,000〜約100,000の分子量Mwを有するポリカーボネート樹脂を含む。一般的に、輸送層は、約10〜約75重量%の電荷輸送材料、より具体的には、約35%〜約50%の電荷輸送材料を含有する。
【0037】
電荷輸送層または層群、より具体的には、電荷発生層と接触している第一電荷輸送層およびその上のトップまたは第二電荷輸送オーバーコート層は、フィルム形成性の電気的に不活性のポリマー、例えば、ポリカーボネート中に溶解または分子的に分散された電荷輸送小分子を含んでいてよい。実施の形態において、「溶解された」とは、例えば、小さい分子がポリマー中に溶解して、均一相を形成する溶液を形成することを指し、実施の形態において「分子的に分散された」とは、例えば、ポリマー中に分散された電荷輸送分子を指し、小さい分子が、分子スケールでポリマー中に分散されていることを指す。電荷輸送層または層群のために、種々の電荷輸送性または電気的に活性の小さい分子を選択することができる。実施の形態において、「電荷輸送」は、例えば、電荷発生層中で発生した遊離電荷を、輸送層を越えて輸送することを可能にするモノマーとしての、電荷輸送分子を指す。
【0038】
実施の形態における電荷輸送層のそれぞれの厚さは、約10〜約70ミクロンであるが、この範囲外の厚さも、実施の形態において選択することができる。電荷輸送層は、正孔輸送層に置かれた静電荷が、照明の不存在下で、その上の静電潜像の形成および保持を防止するために十分な速度で伝導されない程度まで絶縁体でなくてはならない。一般的に、電荷輸送層の厚さの電荷発生層の厚さに対する比は、約2:1〜約200:1、或る例においては400:1であってよい。電荷輸送層は、意図する用途の領域における可視光または放射線に対して実質的に非吸収性であるが、それが、光導電層または電荷発生層からの光発生した正孔の注入を可能にし、これらの正孔を層内を介して輸送し、活性層の表面上の表面電荷を選択的に放電することを可能にする点で、電気的に「活性」である。
【0039】
選択された連続電荷輸送オーバーコート層の厚さは、使用するシステムにおける、帯電(バイアス帯電ロール)、クリーニング(ブレードまたはウエブ)、現像(ブラシ)、転写(バイアス転写ロール)などの摩耗に依存し、約10ミクロン以下であってよい。実施の形態において、それぞれの層についてのこの厚さは、約1ミクロン〜約5ミクロンである。電荷輸送層およびオーバーコート層コーティング混合物を混合し、その後、電荷発生層に付与するために、種々の適切なおよび従来の方法を使用することができる。典型的な付与技術は、スプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、線巻きロッドコーティングなどが挙げられる。付着したコーティングの乾燥は、どのような適切な従来の技術、例えば、オーブン乾燥、赤外線乾燥、空気乾燥などによっても実施することができる。この開示の乾燥したオーバーコート層は、実施の形態において、画像形成の間に正孔を輸送することができ、高すぎる遊離キャリア濃度を有してはならない。オーバーコート中の遊離キャリア濃度は、暗減衰を増加させる。オーバーコーティング、例えば、PASCOの例は、同時係属特許出願(これらの開示は、ここに参照して全部取り込まれる)中に示されている。
【0040】
本明細書の開示の画像形成部材のための所望により設けてもよい正孔ブロッキング層またはアンダーコート層は、公知の正孔ブロッキング成分、例えば、アミノシラン、ドープされた金属酸化物、TiSi、チタン、クロム、亜鉛、スズなどのような金属酸化物;フェノール系化合物およびフェノール系樹脂の混合物または2種のフェノール系樹脂の混合物ならびに所望によりSiO2のようなドーパントなど、ここに例示されたような多数の成分を含有していてよい。フェノール系化合物は、通常、少なくとも2個のフェノール基を含み、例えば、ビスフェノールA(4,4’−イソプロピリデンジフェノール)、E(4,4’−エチリデンビスフェノール)、F(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、M(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール)、P(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール)、S(4,4’−スルホニルジフェノール)、Z(4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール);ヘキサフルオロビスフェノールA(4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール)、レゾルシノール、ヒドロキシキノン、カテキンなどが挙げられる。
【0041】
正孔ブロッキング層は、例えば、約20重量%〜約80重量%、より具体的には、約55重量%〜約65重量%の金属酸化物、例えば、TiO2などの適切な成分、約20重量%〜約70重量%、より具体的には、約25重量%〜約50重量%のフェノール系樹脂、約2重量%〜約20重量%、より具体的には、約5重量%〜約15重量%の、好ましくは少なくとも2個のフェノール基を含有するフェノール系化合物、例えば、ビスフェノールSおよび約2重量%〜約15重量%、より具体的には、約4重量%〜約10重量%の合板圧縮ドーパント(plywood suppression dopant)、例えば、SiO2を含んでいてよい。正孔ブロッキング層コーティング分散液は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、分散液中の金属酸化物のメジアン粒子径が、約10nm未満、例えば、約5〜約9nmになるまで、ボールミル粉砕またはダイノミル粉砕(dynomilling)することによって、金属酸化物/フェノール系樹脂分散液を製造する。上記の分散液に、フェノール系化合物およびドーパントを添加し、続いて混合する。この正孔ブロッキング層コーティング分散液を、ディップコーティングまたはウエブコーティングによって付与することができ、層をコーティング後に、熱的に硬化させることができる。得られる正孔ブロッキング層は、例えば、約0.01ミクロン〜約30ミクロン、より具体的には、約0.1ミクロン〜約8ミクロンの厚さのものである。フェノール系樹脂の例は、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、クレゾールとのホルムアルデヒドポリマー、例えば、VARCUM(登録商標)29159および29101(オキシケム社(OxyChem)から入手可能)およびDURITE(登録商標)97(ボルデンケミカル社(Borden Chemical)から入手可能)、アンモニア、クレゾールおよびフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えば、VARCUM(登録商標)29112(オキシケム社から入手可能)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えば、VARCUM(登録商標)29108および29116(オキシケム社から入手可能)、クレゾールおよびフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えば、VARCUM(登録商標)29457(オキシケム社から入手可能)、DURITE(登録商標)SD−423A、SD−422A(ボルデンケミカル社から入手可能)またはフェノールおよびp−tert−ブチルフェノールとのホルムアルデヒドポリマー、例えば、DURITE(登録商標)ESD 556C(ボルデンケミカル社から入手可能)が挙げられる。
【0042】
所望により設けてもよい正孔ブロッキング層は、電荷発生層と接触している頂部基体表面に付与することができる。隣接する光導電層(または電子写真画像形成層)と下にある基体の導電性表面との間の正孔に対して、電子バリヤーを形成することができる、いずれの好適な従来のブロッキング層をも選択することができる。
【0043】
正孔ブロッキング層成分は、アミノシラン、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチレンジアミン、トリメトキシシリルプロピルエチレンジアミン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリス(エチルエトキシ)シラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N,N’−ジメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、メチル[2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ]−3−プロプリオネート、(N,N’−ジメチル−3−アミノ)プロピルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミンなどおよびこれらの混合物を含んでいてよい。具体的なアミノシラン材料は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(γ−APS)、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N’−ジメチル−3−アミノ)プロピルトリエトキシシランおよびこれらの混合物である。
【0044】
電荷輸送層群または少なくとも1層の電荷輸送層に、例えば、改良された横方向の電荷移動(LCM)耐性を可能にするため、所望により含有してもよい成分または材料の例は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、テトラキスメチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタン(IRGANOX(登録商標)1010、チバ・スペシャル・ケミカルズ社から入手可能)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられ、その他のヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、SUMILIZER(登録商標)BHT−R、MDP−S、BBM−S、WX−R、NW、BP−76、BP−101、GA−80、GMおよびGS(住友化学株式会社から入手可能)、IRGANOX(登録商標)1035、1076、1098、1135、1141、1222、1330、1425WL、1520L、245、259、3114、3790、5057および565(チバ・スペシャル・ケミカルズ社から入手可能)ならびにADEKA(登録商標)STAB AO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−70、AO−80およびAO−330(旭電化工業株式会社から入手可能);ヒンダードアミン酸化防止剤、例えば、SANOL(登録商標)LS−2626、LS−765、LS−770およびLS−744(SNKYO CO.、Ltd.から入手可能)、TINUVIN(登録商標)144および622LD(チバ・スペシャル・ケミカルズ社から入手可能)、MARK(登録商標)LA57、LA67、LA62、LA68およびLA63(旭電化工業株式会社から入手可能)ならびにSUMILIZER(登録商標)TPS(住友化学株式会社から入手可能);チオエーテル酸化防止剤、例えば、SUMILIZER(登録商標)TP−D(住友化学株式会社から入手可能);ホスファイト酸化防止剤、例えば、MARK(登録商標)2112、PEP−8、PEP−24G、PEP−36、329KおよびHP−10(旭電化工業株式会社から入手可能);他の分子、例えば、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン(BDETPM)、ビス−[2−メチル−4−(N−2−ヒドロキシエチル−N−エチル−アミノフェニル)]フェニルメタン(DHTPM)などが挙げられる。少なくとも1層の電荷輸送層中の酸化防止剤の重量%は、約0〜約20重量%、約1〜約10重量%または約3〜約8重量%である。
【0045】
実施の形態におけるフルオロアルキルエステルは、物理的に混合し、オーバーコート溶液の中に溶解または分散させることができる。フルオロアルキルエステルは、種々の有効で適切な量、例えば、オーバーコート層成分の約0.01〜約10重量%、約0.1〜約5重量%、より具体的には、約0.5〜約2重量%で存在する。
(比較例1)
【0046】
画像形成部材または光導電体を、3.5ミルの厚さを有する二軸延伸したポリエチレンナフタレート基体(KALEDEX(登録商標)2000)上にコートした(コーターデバイス)0.02μm厚さのチタン層を設け、その上に、グラビアアプリケーターによって、50gの3−アミノ−プロピルトリエトキシシラン(ブロッキング層またはアンダーコート層)、41.2gの水、15gの酢酸、684.8gの変性アルコールおよび200gのヘプタンを含有する溶液を付与することによって作成した。次いで、この層を、コーターの強制空気乾燥機内で135℃で約5分間乾燥させた。得られたブロッキング層は、500オングストロームの乾燥厚さを有していた。次いで、接着層を、グラビアアプリケーターを使用して、接着層湿潤コーティングをブロッキング層の上に付与することによって作成した。この接着剤は、テトラヒドロフラン/モノクロロベンゼン/塩化メチレンの60:30:10体積比混合物中に、溶液の全重量基準で0.2重量%のコポリエステル接着剤(Toyota Hsutsu Inc.から入手可能なARDEL(登録商標)D100)を含有していた。次いで、接着層を、上記のコーターの強制空気乾燥機内で135℃で約5分間乾燥させた。得られた接着層は、200オングストロームの乾燥厚さを有していた。
【0047】
電荷発生層分散液を、4オンスのガラス瓶の中に、0.45gの、三菱ガス化学株式会社から入手可能な公知の重量平均分子量20,000のポリカーボネート「ユーピロン(IUPILON)」(登録商標)200(PCZ−200)またはPOLYCARBONATE Z(登録商標)、および50mlのテトラヒドロフランを導入することによって調製した。この溶液に、2.4gのヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)および300gの1/8インチ(3.2mm)直径のステンレススチールショットを添加した。次いで、この混合物をボールミルに8時間投入した。続いて、2.25gのPCZ−200を、46.1gのテトラヒドロフラン中に溶解し、ヒドロキシガリウムフタロシアニン分散液に添加した。次いで、このスラリーを、振盪機上に10分間投入した。その後、得られた分散液を、バードアプリケーターによって、上記接着剤界面に付与して、0.25ミルの湿潤厚さを有する電荷発生層を形成した。ブロッキング層と接着層を有する基体ウエブの一端に沿った約10mm幅のストリップは、意図的に電荷発生層材料の何れもコートしない状態のままにしておき、後で付与される接地ストリップ層との適切な電気的接触を容易にさせるようにした。電荷発生層を、強制空気オーブン内で135℃で5分間乾燥させて、0.4μmの厚さを有する乾燥電荷発生層を形成させた。
【0048】
次いで、得られた画像形成部材ウエブに、二層の電荷輸送層をオーバーコートした。具体的には、電荷発生層に、この電荷発生層と接触する電荷輸送層(ボトム層)をオーバーコートした。電荷輸送層のボトム層は、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびファルベンファブリケン・バイエル社(Farbenfabriken Bayer A.G.)から入手可能な、平均分子量が約50,000〜100,000の公知のポリカーボネート樹脂であるMAKROLON(登録商標)5705とを褐色ガラス瓶の中に、1:1の重量比で導入することによって作成した。次いで、得られた混合物を、塩化メチレン中に溶解して、固形物を15重量%含有する溶液を形成させた。この溶液を、2ミルのバードバーを使用して、電荷発生層に付与して、ボトム層コーティングを形成した。これは乾燥(120℃、1分間)すると、14.5ミクロンの厚さを有していた。このコーティング工程の間、湿度は15%以下であった。
【0049】
次いで、第二パスにおいて電荷輸送層(CTL)のボトム層に、トップ電荷輸送層をオーバーコートした。トップ層の電荷輸送層溶液は、ボトム層について前記した方法と同様の方法で作成した。この溶液を、2ミルのバードバーを使用して、電荷輸送層のボトム層に付与して、コーティングを形成した。これは乾燥(120℃、1分間)すると、14.5ミクロンの厚さを有していた。このコーティング工程の間、湿度は15%以下であった。CTL全体の厚さは29ミクロンであった。
(実施例II)
【0050】
光導電体を、ファルベンファブリケン・バイエル社から入手可能な、平均分子量約50,000〜100,000の公知のポリカーボネート樹脂であるMAKROLON(登録商標)5705を99重量%と、E.I.デュポン社から入手可能な、重量平均分子量約703、46.7%のフッ素を含有する、黄褐色固体である、ステアリン酸フルオロアルキルである、フルオロアルキルエステルZONYL(登録商標)FTSを1重量%含有するオーバーコートを1/8ミルのバードバーを使用して、トップ電荷輸送層に付与した以外は、比較例1の工程を繰り返すことによって製造した。得られたフィルムを、強制空気オーブン内で120℃で1分間乾燥させて、3ミクロン厚さのオーバーコートを得た。このオーバーコートは、メタノールまたはエタノール中に実質的に不溶性であった。
(実施例III)
【0051】
光導電体を、オーバーコート層に、重量平均分子量約703を有し、46.7%のフッ素を含有する、黄褐色固体である、E.I.デュポン社から入手可能なステアリン酸フルオロアルキルである、フルオロアルキルエステルZONYL(登録商標)FTSを2重量%添加した以外は、実施例IIの工程を繰り返して作成した。
(実施例IV)
【0052】
光導電体を、オーバーコート層に、重量平均分子量約534を有し、60.4%のフッ素を含有する、黄色半固体である、E.I.デュポン社から入手可能なメタクリル酸フルオロアルキルである、フルオロアルキルエステルZONYL(登録商標)を5重量%添加した以外は、実施例IIの工程を繰り返して作成した。
(電気特性試験)
【0053】
上記作成した光導電体を、スキャナ装置で試験し、1回の帯電−消去サイクル、続く1回の帯電−露光−消去サイクルの順に光誘導放電サイクルを得た。光強度を順次サイクル毎に増加させて、一連の光誘導放電特性(PIDC)曲線を作成し、そこから様々な露光強度における感光性および表面電位が測定された。さらなる電気特性は、表面電位が順次増加する一連の帯電−消去サイクルを行い、いくつかの電圧対電荷密度曲線を作成することによって得られた。前記スキャナは、種々の表面電位で一定電圧帯電を行うためにスコロトロン装置を具備する。露光強度を一連の中性濃度フィルターを調節することによって順次増加させ、表面電位500でデバイスの試験を行う。露光源は780nmの発光ダイオードであった。ゼログラフィーシミュレーションは、環境的に制御された光を通さないチャンバー内で、環境条件(40%相対湿度および22℃)で完結させた。
【0054】
比較例1の画像形成部材に比較して、実施例IIおよびIIIの開示された部材は、フルオロアルキルエステルオーバーコート層が、実施例IIおよびIIIの画像形成部材または光導電体の電気特性に、悪影響を与えなかったことを示す、ほぼ同一の光誘導放電特性曲線(PIDC)を示した。
(接触角測定)
【0055】
オーバーコート層上の水の前進接触角を、接触角測定装置OCA(データフィジックス社製(Dataphysics Instruments GmbH)モデルOCA15)を使用して、環境温度(約23℃)で測定した。脱イオン水を使用した。少なくとも10回の測定を実施し、それらの平均値を、比較例1、実施例IIおよびIIIの光導電体について、表1に報告する。
【表1】

【0056】
このように、実施例IIおよび実施例IIIのオーバーコート層の中に上記の可溶性フルオロアルキルエステルを含有させることによって、これらの層の接触角が増加した。これにより、これらの層の表面エネルギーが低下し、優れた耐磨耗性特性および許容されるトナー清浄性特性が得られることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基体、電荷発生層、少なくとも1層の電荷輸送層ならびに該電荷輸送層と接触かつ隣接しているオーバーコート層を含む光導電体であって、該オーバーコートがフルオロアルキルエステルおよびポリマーを含む光導電体。
【請求項2】
前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、セルロースポリマー、ポリエステル、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(シクロオレフィン)、エポキシおよびこれらのランダムまたは交互コポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の光導電体。
【請求項3】
前記エステルが、酢酸フルオロアルキル、オクタン酸フルオロアルキル、ラウリン酸フルオロアルキル、ステアリン酸フルオロアルキル、マロン酸フルオロアルキル、アジピン酸フルオロアルキル、アゼライン酸フルオロアルキル、ドデカンジオン酸フルオロアルキル、クエン酸フルオロアルキルおよびこれらの混合物からなる群から選択され、該エステルが前記オーバーコート層中に0.01〜20重量%の量で存在する、請求項1に記載の光導電体。
【請求項4】
前記電荷輸送層が、
【化1】

の少なくとも一つを含み(式中、XおよびYは、アルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲンの少なくとも一つからなる群から選択される)、前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリエステルの少なくとも一つからなる群から選択される、請求項1に記載の光導電体。
【請求項5】
順番に、支持基体層、
電荷発生層、
少なくとも1種の電荷輸送成分および樹脂バインダーを含む少なくとも一層の電荷輸送層、
ならびにポリマー、フルオロアルキルエステルおよび電荷輸送成分を含むオーバーコート層、
を含む可撓性光導電体であって、該オーバーコート層が、40〜99.9重量%のポリマー、0〜59.9重量%の電荷輸送成分および0.1〜20重量%のフルオロアルキルエステルを含有し、該エステル、該ポリマーおよび該電荷輸送成分の合計が100重量%である光導電体。

【公開番号】特開2008−242456(P2008−242456A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71269(P2008−71269)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】