説明

フミン質の処理方法、フミン質及びその誘導体並びにフミン質分散液

【課題】 本発明は、色調を安定化させることが可能なフミン質の処理方法、該フミン質の処理方法により得られるフミン質及びフミン質誘導体並びに該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が分散されているフミン質分散液を提供することを目的とする。
【解決手段】 フミン質の処理方法は、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を加熱処理する工程を少なくとも有する。フミン質の処理方法は、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を酸処理する工程を少なくとも有する。フミン質及びフミン質誘導体は、上記のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フミン質の処理方法、フミン質、フミン質誘導体及びフミン質分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
溜め池、釣堀、水族館の水槽等の貯水池、ゴルフ場、公園やテーマパーク用の用水路、人工池等に黄褐色から黒色の色調や濁りを付与し、自然な場の雰囲気を醸し出すためには、黒色酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ等の金属酸化物やブラックカーボン等の顔料を添加する方法が考えられる。しかしながら、金属酸化物は、一般に中性領域に等電点があることから、中性で凝集しやすく、また比重が大きいことから、沈降しやすい傾向にある。一方、ブラックカーボンは、疎水性が強いことから、水中に均一に分散させることが困難である。
【0003】
一方、黄褐色から黒色の色調を有する物質として、フミン質が知られている。フミン質は、その物理的及び/又は化学的性質を利用して、建材(特許文献1参照)、汚水の浄化剤(特許文献2参照)、土壌の浄化剤(特許文献3参照)、土壌改質剤(特許文献4参照)、化粧料(特許文献5及び6参照)等として、主に使用されている。
【0004】
フミン質は、水性溶媒に分散させると、水性溶媒中の含有量に依存して色調や濁度が変化し、自然な風合いを醸し出す。しかしながら、フミン質は、天然物であるため、採掘した場所や時期によってフミン質の組成が変動し、色調が安定しないという問題がある。
【特許文献1】特開平8−277174号公報
【特許文献2】特開平10−277586号公報
【特許文献3】特開2003−145127号公報
【特許文献4】特開平5−023047号公報
【特許文献5】特許第3370289号公報
【特許文献6】特開昭61−87609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、色調を安定化させることが可能なフミン質の処理方法、該フミン質の処理方法により得られるフミン質及びフミン質誘導体並びに該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が分散されているフミン質分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、フミン質の処理方法において、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を加熱処理する工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を加熱処理する工程を少なくとも有するので、色調を安定化させることが可能なフミン質の処理方法を提供することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフミン質の処理方法において、前記加熱処理の温度は、250℃以上500℃以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記加熱処理の温度は、250℃以上500℃以下であるので、色調をさらに安定化させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のフミン質の処理方法において、前記加熱処理は、空気の出入りを制限することが可能な容器の中又は不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記加熱処理は、空気の出入りを制限することが可能な容器の中又は不活性ガス雰囲気下で行われるので、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方の過剰な燃焼又は発火を抑制することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、フミン質の処理方法において、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を酸処理する工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を酸処理する工程を少なくとも有するので、色調を安定化させることが可能なフミン質の処理方法を提供することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のフミン質の処理方法において、前記酸処理に用いられる酸は、無機酸であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記酸処理に用いられる酸は、無機酸であるので、色調をさらに安定化させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、フミン質において、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて処理されているので、安定した色調を得ることが可能なフミン質を提供することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、フミン質誘導体において、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られるので、安定した色調を得ることが可能なフミン質誘導体を提供することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のフミン質及び請求項7に記載のフミン質誘導体の少なくとも一方が分散媒に分散されているフミン質分散液であって、該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を少なくとも粉砕することにより得られることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、請求項6に記載のフミン質及び請求項7に記載のフミン質誘導体の少なくとも一方が分散媒に分散されているフミン質分散液であって、該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を少なくとも粉砕することにより得られるので、安定した色調を得ることが可能なフミン質分散液を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、色調を安定化させることが可能なフミン質の処理方法、該フミン質の処理方法により得られるフミン質及びフミン質誘導体並びに該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が分散されているフミン質分散液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
本発明のフミン質の処理方法の第1の実施形態は、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を加熱処理する工程を少なくとも有する。
【0025】
フミン質は、一般に、植物等の微生物の最終分解生成物であり、直鎖炭化水素と多環芳香族化合物を分子中に有する、分子量が数千〜1万程度である難分解性物質の混合物である。フミン質は、地中より採掘することにより得られ、市販のフミン質粉末を原料として用いることができる。また、フミン質誘導体としては、特開昭61−87609号公報、特開昭61−87610号公報、特開昭61−87611号公報、特開昭61−87612号公報に記載されているニトロ化されたフミン酸、フミン酸やニトロ化フミン酸の塩、エステル等が挙げられる。
【0026】
さらに、フミン質の主成分としては、比較的分子量が高く、塩基性水溶液にのみ可溶で、比較的濃色(褐色〜黒色)であるフミン酸と、比較的分子量が低く、酸性水溶液に可溶で、比較的淡色(赤色〜黄色)であるフルボ酸とが挙げられる。しかし、フミン質は、天然物であるため、採掘した場所や時期の違いによって、フミン質中のフルボ酸とフミン酸の組成比が変動することが知られている。特に、淡色成分であるフルボ酸の含有量が多くなると、フミン質を溶媒に分散させたときに、その赤色〜黄色の色調が強調されるため、色調が変動する。
【0027】
そこで、産地や採掘時期が変化した場合でも安定した色調のフミン質を得るため、鋭意検討を行った結果、分子量の小さいフルボ酸が分解又は燃焼しやすい性質を利用し、フミン質を加熱処理することにより、淡色成分であるフルボ酸の含有量を減少させることができ、色調を安定化させることができることがわかった。なお、同様にして、フミン質誘導体を加熱処理することにより、フルボ酸誘導体の含有量を減少させることができ、フミン質誘導体の色調を安定化させることができる。
【0028】
加熱処理の温度は、250℃以上500℃以下であることが好ましい。250℃未満であると、フルボ酸及びフルボ酸誘導体の少なくとも一方の分解反応又は燃焼反応が十分進行せず、加熱処理に長時間を要することがある。一方、500℃を超えると、燃焼反応が進行し過ぎて、フルボ酸及びフルボ酸誘導体の少なくとも一方を選択的に分解又は燃焼させることが困難になることがある。加熱時間は、特に限定されないが、1時間以上5時間以下であることが好ましい。
【0029】
加熱処理は、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方の過剰な燃焼又は発火を抑制するために、空気の供給を制限して行うことが好ましい。具体的には、加熱装置の加熱炉と、フミン質を入れる容器の二重構造にして、機密性を持たせて空気の出入りを制限して加熱処理を行う方法、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。これにより、均一な処理状態に制御することができる。
【0030】
また、加熱処理されるフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方は、予め公知の粉砕方法で粉砕されていることが好ましい。これにより、処理時間を短縮することができる。公知の粉砕方法としては、乾式粉砕法、湿式粉砕法及びこれらの組み合わせが挙げられるが、加熱工程での操作を簡便にするため、乾式粉砕法を用いることが好ましい。粉砕後のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方のメジアン径は、特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下がさらに好ましい。
【0031】
ここで、メジアン径とは、粒子体のひとつの集団の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積曲線が50%となる点の粒子径(累積平均径)であり、粒度分布を評価するパラメーターのひとつとして、一般的に利用されている。なお、メジアン径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック9320−HRA(日機装株式会社製)等を用いて測定することができる。
【0032】
乾式粉砕法に用いられる粉砕機としては、ジェットミル、振動ミル、パルベライザー、アトマイザー等が挙げられる。
【0033】
湿式粉砕法には、媒体撹拌ミルを用いることができ、具体的には、ビーズミル、サンドグラインダーミル、ボールミル、マイクロス等が挙げられる。媒体撹拌ミルでは、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ等の媒体を用いることができる。具体的には、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方と、溶媒の混合物と、媒体を有する粉砕容器を回転ディスク又はローターを用いて回転させることにより、粉砕することができる。なお、溶媒としては、水;リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、乳酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝液;エタノール、ブタノール等のアルコール;アセトン等の水性溶媒を用いることができる。なお、水性溶媒は、単独又は二種以上混合して用いることができる。上記混合物中のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方の含有量は、特に限定されないが、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。また、媒体の直径は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。粉砕温度は、特に限定されないが、50℃以下であることが好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明のフミン質の処理方法の第2の実施形態は、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を酸処理する工程を少なくとも有する。
【0035】
フミン質を酸処理すると、淡色成分であるフルボ酸は、溶解するが、濃黒色成分であるフミン酸は、酸に不溶であるため、沈殿する。このため、酸処理後に、ろ過することにより、フルボ酸を分離することができる。このとき、酸処理に用いられた酸は、水洗することにより、除去することができる。このように、フミン質を酸処理し、淡色成分のフルボ酸を分離することにより、色調を安定化することができる。なお、同様にして、フミン質誘導体を酸処理し、フルボ酸誘導体を分離することにより、色調を安定化させることができる。
【0036】
酸処理に用いられる酸は、無機酸であることが好ましく、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、ホウ酸等が挙げられる。中でも、塩酸、硫酸、硝酸を用いることが好ましく、塩酸を用いることがさらに好ましく、色調を安定化させる効果が大きくなる。なお、無機酸を用いて加熱してもよく、60℃以上95℃以下に加熱することが好ましい。これにより、処理時間を短縮することができる。このとき、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方に対する塩酸の比は、特に限定されないが、5N塩酸500gに対して、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が100g程度であることが好ましい。
【0037】
また、酸処理されるフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方は、予め公知の粉砕方法で粉砕されていることが好ましい。これにより、酸と、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方の接触面積が増加するため、処理時間を短縮することができる。粉砕方法としては、前述の乾式粉砕法、湿式粉砕法及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
なお、本発明のフミン質の処理方法は、加熱処理する工程及び酸処理する工程の両方を有する場合も含む。
【0039】
本発明のフミン質及びフミン質誘導体は、本発明のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られる。なお、本発明のフミン質誘導体は、本発明の処理方法を用いて、フミン質を処理した後に、誘導体化することにより得られるものであってもよいし、本発明の処理方法を用いて、フミン質誘導体を処理することにより得られるものであってもよい。フミン質誘導体としては、前述の通り、ニトロ化されたフミン酸、フミン酸やニトロ化フミン酸の塩、エステル等が挙げられる。
【0040】
本発明のフミン質分散液は、本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が分散媒に分散されているフミン質分散液であって、本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を少なくとも粉砕することにより得られる。分散媒としては、前述した水性溶媒を用いることが好ましく、このようなフミン質分散液は、水系組成物に色調や濁りを付与する添加剤として用いることができる。このとき、本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を粉砕することにより、水性溶媒に分散させることができる。
【0041】
本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を粉砕する方法としては、公知の粉砕方法を用いることができる。具体的には、乾式粉砕法、湿式粉砕法及びこれらの組み合わせが挙げられるが、湿式粉砕法を用いることが好ましい。これにより、粒子径分布を狭くすることができる。なお、粉砕機及び粉砕条件は、前述と同様のものを用いることができる。
【0042】
また、湿式粉砕する際の、本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方と、水性溶媒の混合物中の、本発明のフミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方の含有量は、特に限定されないが、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、5重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。含有量が1重量%未満であると、水系組成物に添加して用いる場合に、色調や濁りを付与する効果が小さくなることがあり、50重量%を超えると、粘度が高くなり、湿式粉砕に適さないことがある。水性溶媒は、前述したものであることが好ましい。これにより、水系組成物の添加剤として用いることができる。
【0043】
湿式粉砕に用いられる粉砕機として、媒体撹拌ミルを用いる場合には、媒体の直径は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0044】
一般的に、微粒子を水性溶媒中に分散させて分散液を調製する際には、凝集や沈降を抑制するため、微粒子と水性溶媒以外に、分散剤が添加されるが、水性溶媒に分散剤が含まれていると、撹拌されたり流動したりする際に、気泡が発生することがある。また、分散剤の多くは、一定以上の濃度になると、環境や人体に対して好ましくない影響を与えることが懸念されている。このため、本発明のフミン質分散液は、環境や人体への安全性を向上させると共に、気泡の発生を抑制するために、分散剤を含有しないことが好ましく、この場合、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方と水性溶媒のみからなる構成とすることができる。
【0045】
なお、気泡の発生や環境や人体への安全性が問題とならない場合は、凝集や沈降に対する安定性を向上させるために、分散剤を含有する構成としてもよく、分散剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、水溶性高分子、高分子電解質等が挙げられる。
【0046】
本発明のフミン質分散液において、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方のメジアン径は、特に限定されないが、0.05μm以上10μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下がさらに好ましい。また、メジアン径が0.05μm以上5μm以下であるときには、粒子径が0.1μm以上8μm以下である粒子を90体積%以上100体積%以下含有することが好ましい。フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方のメジアン径が0.05μm未満であると、水系組成物に添加して用いる場合に、色調や濁りを付与する効果が小さくなることがあり、10μmを超えると、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方が沈降しやすくなり、フミン質分散液の分散安定性が低下することがある。
【0047】
本発明のフミン質分散液は、分散状態を良好に保つために、コロイドミル、ホモミキサー、高圧ホモゲナイザー、超高圧ホモゲナイザー等の装置を用いて均質化処理を施してもよい。
【0048】
なお、本発明のフミン質分散液は、水系組成物に色調や濁りを付与する添加剤として用いることができるが、この他に、繊維や布、紙、木材、建材等の着色や風合い調整等の用途に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明による実施例を示す。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
(参考例)
パルベライザーを用いて、メジアン径が50μmになるように、中国ハルビン産フミン質(Lot1)を乾式粉砕した。粉砕したフミン質50gにイオン交換水100gを加え、直径1mmのジルコニアビーズを充填したサンドグラインダーミルを用いて、30分間湿式粉砕した。分布測定装置マイクロトラック9320−HRA(日機装社製)を用いて、得られたフミン質分散液のメジアン径を測定したところ、2.0μmであった。この分散液の固形分が5重量ppmになるようにイオン交換水で希釈して、透過型色差計CE−7000(ドイツGRETAGMACBETH社製)で測色したところ、ハンターのLab表色系で、L=95.0、a=0.20、b=1.0であった。さらに、製造した水分散液を人工池に放水したところ、自然な雰囲気を醸し出す理想的な淡い褐色の色調と濁りを呈していた。以後、この色調と濁りを基準として、フミン質分散液を調製することを目標とした。
(比較例1)
中国ウイグル産フミン質(Lot1)を用いた以外は、参考例と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。なお、色差ΔEは、参考例を基準色として、次式で計算した。
【0050】
ΔE=(ΔL+Δa+Δb1/2
測色の結果、L=95.0、a=0.40、b=2.5であり、色差ΔE=1.51となり、フミン質分散液の5重量ppm希釈液(固形分換算)の目視で観察した外観色は、目標の色調より明らかに赤色〜黄色にずれていた。
(実施例1)
パルベライザーを用いて、メジアン径が50μmとなるように、中国ウイグル産フミン質(Lot1)を乾式粉砕した。粉砕したフミン質を、電気炉を用いて、250℃で3時間加熱処理した後、室温まで放冷した。加熱処理したフミン質を、参考例と同様に、湿式粉砕して、フミン質分散液を調製し、比較例1と同様に、色差を測定した。
(実施例2〜15)
加熱温度を275℃(実施例2)、300℃(実施例3)、325℃(実施例4)、350℃(実施例5)、375℃(実施例6)、400℃(実施例7)、425℃(実施例8)、450℃(実施例9)、475℃(実施例10)、500℃(実施例11)、200℃(実施例12)、225℃(実施例13)、525℃(実施例14)、550℃(実施例15)にした以外は、実施例1と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。
【0051】
実施例1〜15及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

表1から、本発明のフミン質の処理方法(加熱処理)により、フミン質の色調を安定化できることがわかる。一方、実施例12、13では、色調を安定化する効果が小さくなる傾向にあり、加熱温度が低いためであると考えられる。また、実施例14、15では、色調を安定化する効果があるものの、フミン質の収率が低下する傾向にあり、燃焼反応が進行するためであると考えられる。
(比較例2)
中国ハルビン産フミン質(Lot2)を用いた以外は、比較例1と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。
(実施例16、17)
中国ハルビン産フミン質(Lot2)を用いた以外は、実施例5、9と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。
【0053】
実施例16、17及び比較例2の評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

比較例2のフミン質分散液の5重量ppm希釈液(固形分換算)の目視で観察した外観色は、目標の色調よりわずかに赤色〜黄色にずれていたが、この程度のわずかに色調がずれた場合でも、本発明のフミン質の処理方法(加熱処理)により、フミン質の色調を安定化できることがわかる。
【0055】
実施例1〜17から、本発明のフミン質の処理方法(加熱処理)により、採掘した場所や時期の違いによって生じるフミン質の色調の変動を抑制できることがわかった。
(実施例18)
パルベライザーを用いて、メジアン径が50μmとなるように、中国ウイグル産フミン質(Lot1)を乾式粉砕した。粉砕したフミン質100gに5規定塩酸500gを加え、80℃で5時間加熱した。フミン質をろ過した後、洗浄水のpHが4〜5になるまで水洗し、フミン質(塩酸処理品)を得た。なお、ろ液は、フルボ酸由来の黄色〜橙色を呈していた。
【0056】
次に、フミン質(塩酸処理品)の含有量が30重量%になるようにイオン交換水を加え、直径1mmのジルコニアビーズを充填したサンドグラインダーミルを用いて、1時間湿式粉砕して、フミン質分散液を調製した。実施例1と同様に、色差を測定した。
(実施例19、20)
塩酸の替わりに濃硝酸(実施例19)、濃硫酸(実施例20)を用いた以外は、実施例18と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。
(実施例21〜23)
中国ハルビン産フミン質(Lot2)を用いた以外は、実施例18〜20と同様に、フミン質分散液を調製し、色差を測定した。
【0057】
実施例18〜23の評価結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

実施例18〜23から、本発明のフミン質の処理方法(酸処理)により、採掘した場所や時期の違いによって生じるフミン質の色調の変動を抑制できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を加熱処理する工程を少なくとも有することを特徴とするフミン質の処理方法。
【請求項2】
前記加熱処理の温度は、250℃以上500℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のフミン質の処理方法。
【請求項3】
前記加熱処理は、空気の出入りを制限することが可能な容器の中又は不活性ガス雰囲気下で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のフミン質の処理方法。
【請求項4】
フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を酸処理する工程を少なくとも有することを特徴とするフミン質の処理方法。
【請求項5】
前記酸処理に用いられる酸は、無機酸であることを特徴とする請求項4に記載のフミン質の処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られることを特徴とするフミン質。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフミン質の処理方法を用いて、フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を処理することにより得られることを特徴とするフミン質誘導体。
【請求項8】
請求項6に記載のフミン質及び請求項7に記載のフミン質誘導体の少なくとも一方が分散媒に分散されているフミン質分散液であって、
該フミン質及びフミン質誘導体の少なくとも一方を少なくとも粉砕することにより得られることを特徴とするフミン質分散液。

【公開番号】特開2007−84512(P2007−84512A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278333(P2005−278333)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】