説明

フライバックトランス

【課題】 フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランスを得る。
【解決手段】 フライバックトランス1は、2次側コイル1bの多分割された各高圧コイル3a〜3gの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオード4a〜4gを接続している。2次側コイル1bのコイル巻き始め端(2次側コイル1bの低電位側)には第2高圧整流ダイオード6が接続されている。中段の高圧コイル3dと第1高圧整流ダイオード4cのカソードとの第1中段接続点2aには、ブリーダ抵抗R1,R2が接続されている。さらに、高圧コイル3dと第1中段接続点2aとの間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオード7を接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライバックトランス、特にテレビジョン受像機の受像管などに使用されるフライバックトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビジョン受像機の受像管などに使用されるフライバックトランスとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。図7に示すように、このフライバックトランス51は、2次側コイル51bの多分割された各高圧コイル53a〜53gの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオード54a〜54gを接続している。
【0003】
2次側コイル51bの低電位端(コイル巻き始め端)には第2高圧整流ダイオード56が接続されている。コイル巻き始め端に第2高圧整流ダイオード56を接続することにより、2次側コイル51bの分布容量が小さくなり、コイル部の発熱を抑えて小型化することができる。さらに、中段の高圧コイル53dと第1高圧整流ダイオード54cのカソードとの中段接続点52には、ブリーダ抵抗R1,R2が接続されている。
【0004】
このフライバックトランス51では、中段接続点52に出力される電圧を、ブリーダ抵抗R1,R2で分圧することでフォーカス出力電圧が得られ、受像管のフォーカスなどへ出力される。なお、2次側コイル51bの巻き始め端に第2高圧整流ダイオード56が接続された方式の場合、2次側コイル51bの巻き始め端とグランドとの間は交流的に絶縁されており、1次側コイル51aと2次側コイル51bとの間の分布容量は各部で均一となる。そのため、2次側コイル51bの各高圧コイル53a〜53gの両端に同一容量を接続した集中定数回路と考えることができ、各高圧コイル53a〜53gの中央部が交流的に接地された交流0点となる。これにより、2次側コイル51bの各高圧コイル53a〜53gの両端に正負のパルスが発生する。
【0005】
しかしながら、中段接続点52に出力される電圧からフォーカス出力電圧を得る方式の場合、中段接続点52の直上の高圧コイル53dに発生した正パルスと負パルスがそのままフォーカス出力電圧にリップル成分として重畳されるため、リップルが大きくなるという問題があった。図8は、フライバックトランス51のフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフである。図8では、リップル電圧が約1200Vであった。
【特許文献1】特開平8−273953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係るフライバックトランスは、
2次側コイルの多分割された各高圧コイルの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオードを接続すると共に、2次側コイルの低電位端に第2高圧整流ダイオードを設け、中段の高圧コイルと第1高圧整流ダイオードのカソードとの第1中段接続点に接続したブリーダ抵抗の途中からフォーカス電圧を取り出す方式のフライバックトランスであって、
前記中段の高圧コイルと前記第1中段接続点との間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオードを接続したり、あるいは、前記ブリーダ抵抗と前記第1中段接続点との間に、カソードを前記ブリーダ抵抗側にして第4高圧整流ダイオードを接続したりしたことを特徴とする。
【0008】
以上の構成により、第1中段接続点の真下の第1高圧整流ダイオードが、第1中段接続点の直下の高圧コイルのリップル成分を平滑し、かつ、第3高圧整流ダイオードまたは第4高圧整流ダイオードが第1中段接続点の直上の高圧コイルに発生した負パルス成分をカットする。
【0009】
また、本発明に係るフライバックトランスは、
2次側コイルの多分割された各高圧コイルの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオードを接続すると共に、2次側コイルの低電位端に第2高圧整流ダイオードを設け、中段の高圧コイルと第1高圧整流ダイオードのアノードとの第2中段接続点に接続したブリーダ抵抗の途中からフォーカス電圧を取り出す方式のフライバックトランスであって、
前記ブリーダ抵抗と前記第2中段接続点との間に、カソードを前記ブリーダ抵抗側にして第5高圧整流ダイオードを接続したことを特徴とする。
【0010】
以上の構成により、第2中段接続点の真上の第1高圧整流ダイオードが、第2中段接続点の直上の高圧コイルに発生した負パルス成分をカットする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中段の高圧コイルと第1中段接続点との間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオードを接続したり、あるいは、ブリーダ抵抗と第1中段接続点との間に、カソードをブリーダ抵抗側にして第4高圧整流ダイオードを接続したりすることによって、第1中段接続点の真下の第1高圧整流ダイオードが、第1中段接続点の直下の高圧コイルのリップル成分を平滑し、かつ、第3高圧整流ダイオードまたは第4高圧整流ダイオードが第1中段接続点の直上の高圧コイルに発生した負パルス成分をカットする。
【0012】
また、ブリーダ抵抗と第2中段接続点との間に、カソードをブリーダ抵抗側にして第5高圧整流ダイオードを接続することによって、第2中段接続点の真上の第1高圧整流ダイオードが、第2中段接続点の直上の高圧コイルに発生した負パルス成分をカットする。この結果、フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るフライバックトランスの実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0014】
[第1実施例、図1および図2]
図1に示すように、フライバックトランス1は、2次側コイル1bの多分割された各高圧コイル3a〜3gの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオード4a〜4gを接続している。
【0015】
2次側コイル1bのコイル巻き始め端(2次側コイル1bの低電位側)には第2高圧整流ダイオード6が接続されている。コイル巻き始め端に第2高圧整流ダイオード6を接続することにより、2次側コイル1bの分布容量が小さくなり、コイル部の発熱を抑えて小型化することができる。中段の高圧コイル3dと第1高圧整流ダイオード4cのカソードとの第1中段接続点2aには、ブリーダ抵抗R1,R2が接続されている。さらに、高圧コイル3dと第1中段接続点2aとの間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオード7を接続している。
【0016】
このフライバックトランス1では、第1中段接続点2aに出力される電圧を、ブリーダ抵抗R1,R2で分圧することでフォーカス出力電圧が得られ、受像管のフォーカスなどへ出力される。2次側コイル1bの巻き始め端に第2高圧整流ダイオード6が接続された方式の場合、2次側コイル1bの巻き始め端とグランドとの間は交流的に絶縁されており、1次側コイル1aと2次側コイル1bとの間の分布容量は各部で均一となる。そのため、2次側コイル1bの各高圧コイル3a〜3gの両端に同一容量を接続した集中定数回路と考えることができ、各高圧コイル3a〜3gの中央部が交流的に接地された交流0点となる。これにより、2次側コイル1bの各高圧コイル3a〜3gの巻き終わり端には正パルスが発生し、巻き始め端には負パルスが発生する。
【0017】
こうして得られたフライバックトランス1は、高圧コイル3dと第1中段接続点2aとの間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオード7を接続しているので、第1中段接続点2aの真下の第1高圧整流ダイオード4cが、第1中段接続点2aの直下の高圧コイル3cのリップル成分を平滑し、かつ、第3高圧整流ダイオード7が第1中段接続点2aの直上の高圧コイル3dに発生した負パルス成分をカットする。この結果、フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランス1を得ることができる。
【0018】
図2は、フライバックトランス1のフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフである。図2では、フォーカス出力のリップル電圧が約150Vであった。
【0019】
[第2実施例、図3および図4]
第2実施例は、前記第1実施例のフライバックトランス1を変形したものであり、その詳細な構成、動作の説明は省略する。図3に示すように、フライバックトランス1Aは、ブリーダ抵抗R1と第1中段接続点2aとの間に、カソードをブリーダ抵抗R1側にして第4高圧整流ダイオード8を接続している。
【0020】
このフライバックトランス1Aは、ブリーダ抵抗R1と第1中段接続点2aとの間に、カソードをブリーダ抵抗R1側にして第4高圧整流ダイオード8を接続しているので、第1中段接続点2aの真下の第1高圧整流ダイオード4cが、第1中段接続点2aの直下の高圧コイル3cのリップル成分を平滑し、かつ、第4高圧整流ダイオード8が第1中段接続点2aの直上の高圧コイル3dに発生した負パルス成分をカットする。この結果、フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランス1Aを得ることができる。
【0021】
図4は、フライバックトランス1Aのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフである。図4では、フォーカス出力のリップル電圧が約150Vであった。
【0022】
[第3実施例、図5および図6]
第3実施例も、前記第1実施例のフライバックトランス1を変形したものであり、その詳細な構成、動作の説明は省略する。図5に示すように、フライバックトランス1Bは、中段の高圧コイル3cと第1高圧整流ダイオード4cのアノードとの第2中段接続点2bに接続したブリーダ抵抗R1,R2の途中からフォーカス電圧を取り出している。さらに、ブリーダ抵抗R1と第2中段接続点2bとの間に、カソードをブリーダ抵抗R1側にして第5高圧整流ダイオード9を接続している。
【0023】
このフライバックトランス1Bは、ブリーダ抵抗R1と第2中段接続点2bとの間に、カソードをブリーダ抵抗R1側にして第5高圧整流ダイオード9を接続しているので、第2中段接続点2bの真上の第1高圧整流ダイオード4cが、第2中段接続点2bの直上の高圧コイル3dに発生した負パルス成分をカットする。この結果、フォーカス出力電圧のリップルが小さいフライバックトランス1Bを得ることができる。
【0024】
図6は、フライバックトランス1Bのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフである。図6では、フォーカス出力のリップル電圧が約350Vであった。
【0025】
なお、本発明に係るフライバックトランスは前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るフライバックトランスの第1実施例の構成を示す電気回路図。
【図2】図1に示したフライバックトランスのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフ。
【図3】本発明に係るフライバックトランスの第2実施例の構成を示す電気回路図。
【図4】図3に示したフライバックトランスのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフ。
【図5】本発明に係るフライバックトランスの第3実施例の構成を示す電気回路図。
【図6】図5に示したフライバックトランスのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフ。
【図7】従来のフライバックトランスの構成を示す電気回路図。
【図8】図7に示したフライバックトランスのフォーカス出力リップル電圧波形、1次側電流波形および1次側電圧波形を示すグラフ。
【符号の説明】
【0027】
1,1A,1B…フライバックトランス
1a…1次側コイル
1b…2次側コイル
3a〜3g…高圧コイル
4a〜4g…第1高圧整流ダイオード
6…第2高圧整流ダイオード
7…第3高圧整流ダイオード
8…第4高圧整流ダイオード
9…第5高圧整流ダイオード
R1,R2…ブリーダ抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次側コイルの多分割された各高圧コイルの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオードを接続すると共に、2次側コイルの低電位端に第2高圧整流ダイオードを設け、中段の高圧コイルと第1高圧整流ダイオードのカソードとの第1中段接続点に接続したブリーダ抵抗の途中からフォーカス電圧を取り出す方式のフライバックトランスにおいて、
前記中段の高圧コイルと前記第1中段接続点との間に、順方向に直列に第3高圧整流ダイオードを接続したことを特徴とするフライバックトランス。
【請求項2】
2次側コイルの多分割された各高圧コイルの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオードを接続すると共に、2次側コイルの低電位端に第2高圧整流ダイオードを設け、中段の高圧コイルと第1高圧整流ダイオードのカソードとの第1中段接続点に接続したブリーダ抵抗の途中からフォーカス電圧を取り出す方式のフライバックトランスにおいて、
前記ブリーダ抵抗と前記第1中段接続点との間に、カソードを前記ブリーダ抵抗側にして第4高圧整流ダイオードを接続したことを特徴とするフライバックトランス。
【請求項3】
2次側コイルの多分割された各高圧コイルの出力側に直列に、第1高圧整流ダイオードを接続すると共に、2次側コイルの低電位端に第2高圧整流ダイオードを設け、中段の高圧コイルと第1高圧整流ダイオードのアノードとの第2中段接続点に接続したブリーダ抵抗の途中からフォーカス電圧を取り出す方式のフライバックトランスにおいて、
前記ブリーダ抵抗と前記第2中段接続点との間に、カソードを前記ブリーダ抵抗側にして第5高圧整流ダイオードを接続したことを特徴とするフライバックトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−108534(P2006−108534A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295792(P2004−295792)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】