説明

フラッシュタンクエコノマイザサイクルの制御

フラッシュタンクエコノマイザが、フラッシュタンクの圧力を示す条件を検出するためのセンサを備えており、検出された圧力が、使用される特定の冷媒の臨界圧力以上であるときに、コントローラが、エコノマイザを停止するようにエコノマイザ蒸気ラインの弁を応答によって閉じる。また、センサが、コンプレッサの中間段の圧力を検出するように設けられており、検出された圧力がフラッシュタンクの圧力を超過しているときに、コントローラは、コンプレッサの中間段からフラッシュタンクへ冷媒を通流させないように、流れ制御装置を機能する。さらに、フラッシュタンクの圧力を超臨界状態から亜臨界状態へ低下させるようにフラッシュタンクからの冷媒を選択的にドレインするための対応がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、エコノマイザ蒸気圧縮システムに関し、特に、フラッシュタンクエコノマイザ蒸気ライン内の流れを制御する方法および装置に関する。
【0002】
なお、本発明は、2008年9月29日に米国で出願された「フラッシュタンクエコノマイザサイクルの制御(Flash Tank Economizer Cycle Control)」という題名の仮特許出願(出願番号61/100,941)の優先権を有する。
【背景技術】
【0003】
蒸気圧縮システムは、コンプレッサ、冷媒放熱用熱交換器またはガスクーラ、膨張装置およびエバポレータから構成されている。また、エコノマイザサイクルが、システムの効率および/または容量を増加させるように用いられることもある。エコノマイザサイクルは、冷媒放熱用熱交換器を出た冷媒を中間圧力へと膨張し、冷媒流を2つの流れに分離することにより動作する。一方の流れは、吸熱用熱交換器へ輸送され、他方の流れは、2つの圧縮段の間の流れを冷却するように輸送される。エコノマイザサイクルの1つの形態では、フラッシュタンクが、分離を行うように用いられる。フラッシュタンクを有したエコノマイザサイクルでは、ガスクーラから吐出した冷媒は、第1の膨張装置を通過し、これにより、冷媒の圧力が低下する。冷媒は、液体部分および蒸気部分としてフラッシュタンク内に集まる。蒸気冷媒は、冷媒排出物が第1の圧縮装置を出たときに、該冷媒排出物を冷却するように用いられ、液体冷媒は、第2の膨張装置によってさらに膨張され、エバポレータへと流入する。上記のフラッシュタンクエコノマイザは、遷臨界条件で動作する場合、例えば、二酸化炭素冷媒が作動流体として用いられるときに特に有効であり、本発明の出願人に譲渡された特許文献1において説明されている。非エコノマイザモードでは、フラッシュタンクとコンプレッサの中間段とを接続する蒸気ラインは閉じており、フラッシュタンクへと流入する冷媒の質量流量の全てが第2の膨張装置へと向かう。
【0004】
システムがエコノマイザモードで動作する場合には、エコノマイザ蒸気ラインの流れ方向の逆転、例えば、コンプレッサからフラッシュタンクへの流れを防止することが望ましい。即ち、コンプレッサの中間段の圧力がフラッシュタンクの圧力よりも高いときに、エコノマイザ蒸気ラインの流れ方向が逆転し、コンプレッサからエコノマイザ蒸気ラインを通してフラッシュタンクへと向かう流れが生じる。エコノマイザ蒸気ラインの逆流によって、システムの冷却容量およびエネルギ効率が低下する。一般に、逆流は、コンプレッサの中間段の圧力がフラッシュタンクの圧力を超過しているときに生じ、ヒートシンクおよび熱源の温度や、システム設計の仕様、例えば、熱交換器の大きさおよびコンプレッサの大きさによって示される一定の動作条件で生じ得る。
【0005】
本発明の出願人の以前の子会社であるスクロール・テクノロジーズ(Scroll Technologies)によって出願された特許文献2には、コンプレッサからエコノマイザへの冷媒の逆流を防止するようにコンプレッサ内に配置された逆止弁を備えてなるエコノマイザ冷媒回路が開示されている。しかし、逆止弁は、この目的のためのみに用いられており、個別のエコノマイザ弁が、エコノマイザをオン・オフするように用いられている。さらに、エコノマイザは、フラッシュタンク形式とされておらず、エコノマイザの動作方法は、本発明のフラッシュタンクエコノマイザの動作方法とは異なる。
【0006】
二酸化炭素の熱物理特性のために、冷凍システムは、亜臨界モードおよび遷臨界モードの双方で動作し得る。亜臨界モードは、通常の冷媒を有したシステムの動作に似ている。遷臨界モードでは、放熱用熱交換器、および可能であれば、フラッシュタンクの冷媒圧力が臨界圧力よりも高いが、エバポレータは、亜臨界モードとして動作している。フラッシュタンクの圧力が臨界圧力よりも高いときには、超臨界の流体が液体と蒸気とからなる明確な相を形成しないので、冷媒が、液体および蒸気へと望ましいように分離することはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,385,980号明細書
【特許文献2】米国特許第6,202,438号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの特徴は、フラッシュタンクエコノマイザが、フラッシュタンクの圧力が冷媒の臨界圧力よりも高い期間の間に、エコノマイザの動作を停止させるためのコントローラを備えていることである。
【0009】
本発明の他の特徴は、コントローラが、コンプレッサの中間段の圧力がフラッシュタンクの圧力よりも高い期間の間にエコノマイザを停止させるように、フラッシュタンクとコンプレッサの中間段との間の圧力差にも応答することである。
【0010】
本発明の別の特徴は、フラッシュタンクの圧力が超臨界状態にあるときに、フラッシュタンクの圧力を機能的に低下させるための対応がなされていることである。
【0011】
本発明の別の特徴は、コンプレッサの中間段の圧力またはフラッシュタンクの圧力を直接的または間接的に測定するための対応がなされていることである。
【0012】
本発明の別の特徴は、冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、膨張装置およびエバポレータを有してなる蒸気圧縮システムが、冷媒が直列に流れる関係でもって、放熱用熱交換器と膨張装置との間に配置されたフラッシュタンクエコノマイザを備えていることである。フラッシュタンクエコノマイザは、フラッシュタンクと、放熱用熱交換器とフラッシュタンクとの間に配置された第1の流れ制御装置と、フラッシュタンクとコンプレッサの中間段とを連通させるエコノマイザ蒸気ラインと、エコノマイザ蒸気ラインに配置された第2の流れ制御装置と、フラッシュタンクの圧力が冷媒の臨界圧力以上であるときに、エコノマイザ蒸気ラインの流れを阻止するように、第2の流れ制御装置を制御するためのコントローラと、を備えている。
【0013】
本発明の別の特徴は、冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、第1の膨張装置、フラッシュタンク、流れ制御装置、第2の膨張装置およびエバポレータを有してなる蒸気圧縮システムにおいて、冷媒流を制御するための方法が、エコノマイザ蒸気ラインを用いて、フラッシュタンクとコンプレッサの中間段とを連通させるステップと、エコノマイザ蒸気ラインに流れ制御装置を設けるステップと、フラッシュタンクの圧力を決定するステップと、フラッシュタンクの圧力が冷媒の臨界圧力以上であるとき、またはコンプレッサの中間段の圧力がフラッシュタンクの圧力よりも高いときに、エコノマイザ蒸気ラインの流れを阻止するように第2の流れ制御装置を応答によって閉じるステップと、を含むことである。
【0014】
本発明の別の特徴は、冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、第1の膨張装置、フラッシュタンク、流れ制御装置、第2の膨張装置およびエバポレータを有した蒸気圧縮システムにおいて、冷媒流を制御するための方法が、エコノマイザ蒸気ラインを用いて、フラッシュタンクとコンプレッサの中間段とを連通させるステップと、エコノマイザ蒸気ラインに第2の流れ制御装置を設けるステップと、フラッシュタンクの圧力を決定するステップと、フラッシュタンクの圧力が冷媒の臨界圧力以上であるとき、またはコンプレッサの中間段の圧力がフラッシュタンクの圧力よりも高いときに、エコノマイザ蒸気ラインの第2の流れ制御装置を応答によって閉じるステップと、を含むことである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の蒸気圧縮システムを概略的に示した図である。
【図2】本発明の動作を示したフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施例を概略的に示した図である。
【図4】種々のコンプレッサ吸込圧力に対するコンプレッサ吐出圧力の関数として、例示的なコンプレッサの中間段の圧力を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、蒸気圧縮システムが示されており、該蒸気圧縮システムは、冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ12、冷媒放熱用熱交換器13、膨張装置14および吸熱用熱交換器16を備えている。
【0017】
コンプレッサ12は、冷媒を圧縮し、冷媒回路を通して圧縮冷媒を循環させるように機能する。コンプレッサ12は、図示した低圧圧縮段17および高圧圧縮段18を有した1つの多段コンプレッサとすることができ、例えば、スクロールコンプレッサ、あるいは段状の圧縮ポケットを有したスクリューコンプレッサ、あるいは少なくとも第1のシリンダ列および第2のシリンダ列を有した往復動型コンプレッサ、あるいは多段コンプレッサとすることができる。また、コンプレッサ12は、冷媒が直列に流れる関係でもって接続された一対の単段コンプレッサとすることもできる。1つの実施例では、コンプレッサ12は、スクロールコンプレッサまたは多速度コンプレッサ(例えば、二速コンプレッサ)とすることができる。
【0018】
蒸気圧縮システム11が遷臨界サイクルで動作する場合、例えば、二酸化炭素冷媒が充填されていてコンプレッサの吐出側の圧力が二酸化炭素の臨界圧力を超過した状態で動作するときには、冷媒放熱用熱交換器13は、超臨界圧力で動作し、冷媒蒸気クーラとして機能し、したがって、冷媒蒸気を冷却するのみであり、冷媒蒸気を液体へと凝縮することはない。凝縮の熱プロセスについては、後述される。
【0019】
膨張装置14は、電子膨張弁、感温式膨張弁または固定オリフィス装置、例えば、キャピラリチューブとすることができ、これらの全ては、冷媒が吸熱用熱交換器16へ流入するときに、膨張装置14へ通流する液体冷媒を液体と蒸気とからなる混合物へと膨張するように動作する。
【0020】
吸熱用熱交換器16は、一般に、エバポレータと呼ばれており、亜臨界圧力で動作し、冷媒が加熱されて蒸発するときに、熱交換器を通過する気体や液体を冷却するように機能する。そして、加熱された蒸気は、コンプレッサ12の入口へと通流する。
【0021】
流れ制御装置19およびフラッシュタンク21が、流体が直列に流れる関係でもって、冷媒放熱用熱交換器13と膨張装置14との間に配置されている。流れ制御装置19およびフラッシュタンク21は、フラッシュタンクエコノマイザ23を備えるとともに、エコノマイザ蒸気ライン22と組み合わせることによってフラッシュタンク21とコンプレッサ12の中間段とを互いに連通させている。
【0022】
動作時には、冷媒放熱用熱交換器13を出た冷媒は、流れ制御装置19へと通流し、流れ制御装置19において、冷媒は膨張し、該冷媒の圧力が低下する。そして、これにより生じた液体と蒸気とからなる混合物は、フラッシュタンク21へ流入し、液体24は、フラッシュタンク21の底部に溜まり、蒸気26は、フラッシュタンク21の上部へ溜まる。液体冷媒24は、膨張装置14へ通流し、該膨張装置14において、液体冷媒は、上述したように膨張する。
【0023】
エコノマイザ動作として知られているプロセスでは、低圧圧縮段17を出た冷媒を冷却し、これにより、システムの冷却容量を増加させるように、蒸気26が、エコノマイザ蒸気ライン22に沿ってコンプレッサ12の中間段点27へと通流する。上記のフラッシュタンクエコノマイザの動作は、本発明の出願人に譲渡され、本願の参照となる特許文献1において、より詳細に説明されている。
【0024】
上記のフラッシュタンクエコノマイザを使用することについては、様々な問題が生じる。第1に、コンプレッサの中間段点27の圧力がフラッシュタンク21の圧力よりも高い場合には、冷媒は、コンプレッサ12からフラッシュタンク21へと通流することになり、これにより、システムの効率が実質的に低下する。第2に、フラッシュタンク21の圧力が冷媒の臨界圧力(例えば、二酸化炭素の臨界圧力は、1070psiつまり7.38MPaである)を超過している場合には、上述したようなフラッシュタンク21内の液体と蒸気との分離は生じることはなく、エコノマイザは、適切に機能しなくなる。図示したように、エコノマイザライン22上に流れ制御装置28を配置することにより、上記の問題の双方に取り組むことができる。
【0025】
流れ制御装置28は、1つの形態では、電子制御型流れ制御装置、例えば、ソレノイド弁であり、フラッシュタンク21およびコンプレッサ12の検出条件に応答してコントローラ29によって制御される。例えば、センサS1は、フラッシュタンク21の動作条件を検出し、センサS2は、コンプレッサ12の中間段点27の動作条件を検出する。そして、検出条件によって、エコノマイザを動作させるように流れ制御装置28を開くか、もしくはエコノマイザを動作させないように流れ制御装置28を閉じる。
【0026】
1つの実施例では、センサS1は、フラッシュタンク21の圧力を検出し、ライン31に沿ってコントローラ29へ信号を送信する。そして、コントローラ29は、この検出された圧力と使用される冷媒の臨界圧力とを比較し、検出圧力が臨界圧力よりも高いときに、流れ制御装置28を閉じるように機能する。
【0027】
他の実施例では、センサS1は、フラッシュタンク21の冷媒温度を検出し、温度信号が、ライン31に沿ってコントローラ29へと送信される。コントローラ29が、冷媒温度が特定の冷媒の臨界温度(例えば、二酸化炭素の臨界温度は、31.1℃つまり88°Fである)よりも低いと判断した場合には、対応した冷媒蒸気圧力(これは、フラッシュタンクの冷媒が二相状態であると仮定しており、この仮定は実際の目的のために適当な仮定である)から、フラッシュタンクの圧力を推定することができ、流れ制御装置28は、上述したように、開位置または閉位置へと移動する。
【0028】
他の実施例では、フラッシュタンク21の動作条件(例えば、圧力)および/またはコンプレッサ12の中間段点27の動作条件(例えば、圧力)を、蒸気圧縮システムの他の動作条件から間接的に検出するか、または計算することができる。したがって、(例えば、センサによって検出される)直接的な測定値、または(例えば、構成要素の特性やセンサの示数(reading))等の関連したパラメータによって計算される間接的な測定値により、フラッシュタンク21の圧力を決定することができる。
【0029】
また、上述した第2の問題を考慮して、コントローラは、エコノマイザ蒸気ライン22の冷媒の逆流を防止するように使用される。つまり、センサS2は、コンプレッサの中間段点27の圧力を検出し、ライン32に沿ってコントローラ29へ圧力信号を送信する。そして、コントローラ29は、フラッシュタンク21の圧力とコンプレッサの中間段点27の圧力とを比較する。コンプレッサの中間段点27の圧力がフラッシュタンク21の圧力よりも高いと判断された場合には、流れ制御装置28は、逆流を生じさせないか、もしくは実質的に低減するように、動作するかまたは閉じる。
【0030】
例示として、コンプレッサの中間段の圧力を間接的に決定することについて説明する。図4には、種々のコンプレッサ吸込圧力に対するコンプレッサ吐出圧力の関数として、コンプレッサの中間段の圧力が示されている。図4に示したように、コンプレッサ12の吸込圧力および吐出圧力により、コンプレッサの中間段の圧力を決定することができる。同じ情報を、以下の例示的な二次元ルックアップテーブルの形態として示すことができる。
【0031】
【表1】

【0032】
吸込圧力、吐出圧力および中間段圧力が、コンプレッサの設計条件および動作条件について一定のものであることを理解されたい。所定の機械の動作条件が変化した場合、例えば、吸込側の過熱が変化した場合には、吸込圧力および吐出圧力の特定の組み合わせに対する中間段圧力の値が変化し得る。これは、例えば、異なるモータによって2つの段を駆動することにより、コンプレッサの設計によって2つの圧縮段の速度を互いに独立して制御し、各速度を調整することができる場合に、より顕著になる。この場合、グラフまたはルックアップテーブルに付加的な次元を加えることができる。例えば、付加的に変動する一定値の各々に対して付加的なグラフまたはテーブルを設けることにより、付加的な次元を達成することができる。
【0033】
図2には、コントローラ29によって実施されるプロセスが、フローチャートの形態で示されている。ブロック33において、フラッシュタンクの圧力が決定され(例えば、検出または計算され)、ブロック34において、この圧力が、関連した特定の冷媒の臨界圧力と比較される。フラッシュタンクの圧力が臨界圧力よりも低い場合には、コントローラ29は、ブロック36へと移行し、フラッシュタンクの圧力が臨界圧力以上である場合には、コントローラ29は、ブロック37へと移行する。
【0034】
ブロック36において、フラッシュタンクの圧力が、ブロック35におけるコンプレッサの中間段の圧力と比較され、フラッシュタンクの圧力がコンプレッサの中間段の圧力よりも高い場合には、コントローラはブロック38へと移行し、エコノマイザ蒸気ライン22は開く。コンプレッサの中間段の圧力を直接的または間接的に再び決定することができる(ブロック35)。フラッシュタンクの圧力がコンプレッサの中間段の圧力よりも高くない場合には、コントローラ29はブロック37へと移行する。ブロック37において、ブロック34またはブロック36からの「いいえ」の信号を受けた場合には、ブロック39において、エコノマイザ蒸気ライン22は閉じる。
【0035】
流れ制御装置28を種々の形式とすることができることを理解されたい。例えば、上述の例示的な機能を実施するために、フラッシュタンクの絶対圧力と、フラッシュタンクの圧力とコンプレッサ中間段の圧力との間の圧力差との双方に応答して制御される電気制御型流れ制御装置として、流れ制御装置28を構成することができる。代替的に、フラッシュタンクの絶対圧力のみに応答する電気制御型流れ制御装置や、フラッシュタンクの圧力とコンプレッサ中間段の圧力との間の圧力差に応答し、逆流を制御または防止する個別の流れ制御装置、例えば、逆止弁として、流れ制御装置28を構成することができる。また、フラッシュタンク圧力と、フラッシュタンクの圧力とコンプレッサ中間段の圧力との間の圧力差の双方に応答して制御される、電気制御と一方向制御とを組み合わせた流れ制御装置(つまり、ソレノイド弁と逆止弁とを組み合わせた弁)として、流れ制御装置28を構成することもできる。
【0036】
図3には、フラッシュタンク圧力が機能的に制御される、本発明の他の実施例が示されている。即ち、フラッシュタンク圧力が超臨界状態にある期間の間、例えば、システムが高い周囲温度で起動するときに、フラッシュタンクから(蒸気および/または液体の形態とされ得る)冷媒質量の一部をドレインすることによって、フラッシュタンク圧力を亜臨界状態へと低下させることができる。これは、ライン42および流れ制御装置43を用いて、エコノマイザ蒸気ライン22と低圧圧縮段17の入口41とを選択的に連通させることによって達成される。したがって、超臨界状態のフラッシュタンク21の圧力を低下させることが望ましいときには、流れ制御装置28および流れ制御装置43が、フラッシュタンク21からの冷媒の一部を入口41へとドレインするように開かれる。このドレインモードでは、流れ制御装置44は、超臨界の冷媒がコンプレッサの中間段点27へと流入しないように閉じられる。フラッシュタンク21の圧力が亜臨界状態へと低下した後には、上述の動作のために、流れ制御装置43を閉じ、流れ制御装置44を開くことができる。
【0037】
上記のドレイン手順によって液体冷媒の一部をコンプレッサの入口へ流入させることができることを理解されたい。これは、一般に望ましいことではないが、コンプレッサに著しい損傷を与えることなく、短い期間の間、実施され得る。
【0038】
数個の特定の実施例について本発明を説明してきたが、本発明の明細書によって支持することができる特許請求の範囲についてのみ、本発明の真意および範囲を決定すべきであることを理解するであろう。さらに、本明細書の多くの場合において、システム、装置および方法が、一定の数の構成要素を備えるものとして説明されているが、上述した一定の数の構成要素よりも少なくして上記のシステム、装置および方法を実施することができる。また、数個の特定の実施例を説明したが、特定の実施例の各々について説明した特徴が、残余の特定の実施例についても用いることができることを理解できるであろう。例えば、図1または図2の特徴を、図3の実施例に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、膨張装置およびエバポレータを有してなる蒸気圧縮システムであって、
冷媒が直列に流れる関係でもって、前記放熱用熱交換器と前記膨張装置との間に配置されたフラッシュタンクエコノマイザを備え、
前記フラッシュタンクエコノマイザは、
フラッシュタンクと、
前記放熱用熱交換器と前記フラッシュタンクとの間に配置された第1の流れ制御装置と、
前記フラッシュタンクと前記コンプレッサの中間段とを連通させるエコノマイザ蒸気ラインと、
前記エコノマイザ蒸気ラインに配置された第2の流れ制御装置と、
前記フラッシュタンクの圧力が冷媒の臨界圧力以上であるときに、前記エコノマイザ蒸気ラインの流れを阻止するように、前記第2の流れ制御装置を制御するためのコントローラと、
を備えることを特徴とする蒸気圧縮システム。
【請求項2】
前記フラッシュタンクの圧力を示す条件を検出するためのセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項3】
前記センサは、圧力センサまたは温度センサであることを特徴とする請求項2に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項4】
前記フラッシュタンクの圧力は、周囲温度、供給空気温度および戻り空気温度を用いて間接的に決定または計算されることを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記コンプレッサの中間段の圧力を決定し、該コンプレッサの中間段の圧力と前記フラッシュタンクの圧力とを比較することを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記コンプレッサの中間段の圧力が前記フラッシュタンクの圧力よりも高いと判断されたときに、流れが前記エコノマイザ蒸気ラインに生じないように、前記第2の流れ制御装置を動作させることを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項7】
前記コンプレッサの中間段の圧力を検出するための第2のセンサを備えることを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項8】
前記コンプレッサの中間段の圧力を間接的に測定することを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項9】
前記第2の流れ制御装置は、電気制御型流れ制御装置を備え、該電気制御型流れ制御装置は、前記フラッシュタンクの絶対圧力が前記冷媒の臨界圧力以上であるとき、または前記コンプレッサの中間段の圧力が前記フラッシュタンクの圧力よりも高いときに閉じられることを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項10】
前記第2の流れ制御装置は、電気制御型流れ制御装置および一方向流れ制御装置の双方を備え、前記電気制御型流れ制御装置は、前記フラッシュタンクの絶対圧力のみに応答して制御され、前記一方向流れ制御装置は、前記フラッシュタンクの圧力と前記コンプレッサの中間段の圧力との間の圧力差によって制御されることを特徴とする請求項5に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項11】
第3の流れ制御装置を備え、該第3の流れ制御装置は、前記フラッシュタンクの圧力が前記冷媒の臨界圧力以上である期間の間に、前記第2の流れ制御装置および前記第3の流れ制御装置を開いて前記フラッシュタンクから冷媒をドレインし、前記フラッシュタンクの圧力を亜臨界状態へと低下させることができるように、前記エコノマイザ蒸気ラインと前記コンプレッサの入口とを連通させることを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項12】
第4の流れ制御装置を備え、該第4の流れ制御装置は、前記冷媒のドレインプロセスの間に、前記冷媒を前記コンプレッサの中間段へ流入させないように閉じることができるように、前記エコノマイザ蒸気ラインにおいて、前記コンプレッサの中間段と、前記第3の流れ制御装置が前記エコノマイザ蒸気ラインと連通している点との間の箇所に配置されることを特徴とする請求項11に記載の蒸気圧縮システム。
【請求項13】
冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、第1の膨張装置、フラッシュタンク、流れ制御装置、第2の膨張装置およびエバポレータを有してなる蒸気圧縮システムにおいて、冷媒流を制御するための方法であって、
エコノマイザ蒸気ラインを用いて、前記フラッシュタンクと前記コンプレッサの中間段とを連通させるステップと、
前記エコノマイザ蒸気ラインに第2の流れ制御装置を設けるステップと、
前記フラッシュタンクの圧力を決定するステップと、
前記フラッシュタンクの圧力が前記冷媒の臨界圧力以上であるときに、前記エコノマイザ蒸気ラインの流れを阻止するように前記第2の流れ制御装置を応答によって閉じるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記決定するステップは、前記フラッシュタンクの圧力を計算することを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記決定するステップは、前記フラッシュタンクの冷媒温度を検出すること、または前記フラッシュタンクの圧力を検出することを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コンプレッサの中間段の圧力を決定し、該コンプレッサの中間段の圧力と前記フラッシュタンクの圧力とを比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記コンプレッサの中間段の圧力を検出すること、または前記コンプレッサの中間段の圧力を間接的に測定することを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コンプレッサの中間段の圧力が前記フラッシュタンクの圧力よりも高いときに決定し、前記エコノマイザ蒸気ラインの流れを応答によって制御することを含み、前記コンプレッサの中間段の圧力は、前記コンプレッサの吸込圧力および吐出圧力によって決定されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記フラッシュタンクの絶対圧力が前記冷媒の臨界圧力以上であるとき、または前記コンプレッサの中間段の圧力が前記フラッシュタンクの圧力よりも高いときに、前記第2の流れ制御装置を閉じることを含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
冷媒が直列に流れる関係でもって、コンプレッサ、放熱用熱交換器、第1の膨張装置、フラッシュタンク、流れ制御装置、第2の膨張装置およびエバポレータを有した蒸気圧縮システムにおいて、冷媒流を制御するための方法であって、
エコノマイザ蒸気ラインを用いて、前記フラッシュタンクと前記コンプレッサの中間段とを連通させるステップと、
前記エコノマイザ蒸気ラインに第2の流れ制御装置を設けるステップと、
前記フラッシュタンクの圧力を決定するステップと、
前記フラッシュタンクの圧力が前記冷媒の臨界圧力以上であるとき、または前記コンプレッサの中間段の圧力が前記フラッシュタンクの圧力よりも高いときに、前記エコノマイザ蒸気ラインの前記第2の流れ制御装置を応答によって閉じるステップと、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504220(P2012−504220A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529060(P2011−529060)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055358
【国際公開番号】WO2010/036480
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(591003493)キャリア コーポレイション (161)
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION