説明

フラッシュランプ

【課題】ミスフラッシュ動作を防止するとともに、トリガ入力信号に機敏に追随して点灯するフラッシュランプを得る。
【解決手段】放電ガスが封入されるバルブ(11)内に、陰極(12)の先端(12c)と陽極(13)の先端(13c)とが放電間隔(G)を保持して対向配置され、前記陰極(12)及び陽極(13)間でアーク放電を行なわせてなるフラッシュランプにおいて、前記陰極(12)に該陰極(12)よりも細い導電性のトリガ電極(15)が接続され、該トリガ電極(15)の先端は、バルブ(11)内にて前記陰極(12)及び陽極(13)の対向軸線(M)から側方に偏倚されるとともに、前記陰極(12)の先端(12c)を越えない位置で該陰極(12)に接近配置する。また、バルブ(11)内にアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属からなる電離促進金属の金属蒸気を封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロボ用光源、分光分析用光源などに用いられるフラッシュランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストロボ、高速画像機器、分光分析機器、あるいは発光分析機器等の光源としてフラッシュランプが多用されている。ところで、従来のフラッシュランプは、図4に示すようになっていた。図4において、1はフラッシュランプであり、キセノンが封入されるバルブ2内に2つの対向する電極3,4が配置され、バルブ2の外側に細い外部トリガ線5が設けられている。
【0003】
前記電極3,4に、電源E1、コンデンサC1及びスイッチSWを有する主放電回路6、と電源E2、抵抗Rを有するシマー電流回路7とが並列に接続され、前記外部トリガ線5はパルストランスPTを介して主放電回路6に接続される。そして、パルストランスPTからトリガ線5に高電圧パルスが印加されると、バルブ2内の放電ガスが電離して電気抵抗が低下し、主放電回路6のコンデンサーC1のエネルギーが電極3,4間を通して放出され、該電極間で発生するアーク放電によってフラッシュランプ1が点灯するようになっている。
【0004】
前記従来のフラッシュランプは、トリガ線5がバルブ2の外側に設けられていたため、トリガ線5に高電圧パルスが印加された際に、放電ガスの電離がトリガ線5に近いバルブ2内の外側周辺で生成された後、電極3,4周辺の放電ガスが電離されることになる。このため、放電ガスの電離が不安定となり、宇宙線や外来光等の影響を受け易く、主アーク放電にミスフラッシュが生じたり、放電が不規則になったりするものであった。また、シマー電流回路7を用いて放電を補助するようにしていたので、回路が複雑になるものであった。
【特許文献1】特開2007−109508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ミスフラッシュ動作を防止し、かつトリガ入力信号に機敏に追随して点灯するフラッシュランプを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、放電ガスが封入されるバルブ内に、陰極の先端と陽極の先端とが放電間隔を保持して対向配置され、前記陰極及び陽極間でアーク放電を行なわせてなるフラッシュランプにおいて、前記陰極に該陰極よりも細い導電性のトリガ電極が接続され、該トリガ電極の先端は、バルブ内にて前記陰極及び陽極の対向軸線から側方に偏倚されるとともに、前記陰極の先端を越えない位置で該陰極に接近配置する構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記トリガ電極の先端を先鋭に形成したものである。
請求項3に係る発明は、前記バルブ内にアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属からなる電離促進金属の金属蒸気を封入したものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明は、トリガ電極の先端がバルブ内の電極部に位置しているので、該トリガ電極に高電圧パルスが印加されると、電極の近接部で予備電離・放電が発生し、該予備電離・放電に誘発されて両電極による主アーク放電が発生することになる。このため、主アーク放電が宇宙線や外来光等の影響を受けることなく安定して発生し、ミスフラッシュ動作がなくなるとともに、フラッシュランプがトリガ入力信号に機敏に追随して点灯することになる。
請求項2に係る発明は、トリガ電極の先端を先鋭にしたので、トリガ電極に高電圧パルスが印加されると、トリガ電極の先端部で電界が集中し、電極部での予備電離・放電が安定して発生することになる。
請求項3に係る発明は、トリガ電極に高電圧パルスが印加されると、バルブ内に分散している仕事関数の小さい金属蒸気が早めに予備電離・放電し、主アーク放電がより安定することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図面において、図1は本発明が適用されるフラッシュランプの断面図、図2は図1の要部拡大断面図、図3はフラッシュランプの点灯回路図である。
【0009】
図1において、10はフラッシュランプであり、高速画像機器、分光分析機器、あるいは発光分析機器等の光源として利用されるものである。該フラッシュランプ10は、バルブ(放電容器)11、陰極12、陽極13、及びトリガ電極15を主要部品として構成される。前記バルブ11は石英ガラスにより左右に長い密閉された円筒状に形成され、内部にキセノン(Xe)が封入(図2)されている。前記トリガ電極15はタングステン、モリブデン等の高融点金属材により形成される。
【0010】
前記陰極12及び陽極13は、棒状の軸部12a,13aの対向側に、バリウム等の易電子放射性物質が含浸されたタングステン焼結体からなる頭部12bを一体的に有するとともに、該頭部12b,13bは円錐状に形成されてその先端12c,13cが先鋭となっている。前記各陰極12及び陽極13は、バルブ11の右端部及び左端部から内方に向けて同軸に挿通され、両者の頭部12b、13bの先端12c,13cはバルブ11の左右中心部にて所定のギャップGを保持して対向している。
【0011】
前記陰極12のバルブ11内に位置する軸部12aの挿通部にトリガ電極15が固着されている。該トリガ電極15は細い線状に形成され、前記陰極12の軸部12aの挿通部から陰極12の頭部12bの半径方向外方に向けて延長した後、その先端部15aがバルブ11の軸心方向に屈曲され、その先端15bは、図2に示すように、陰極12及び陽極13の対向軸線Mから側方に偏倚して陰極12の頭部12bに接近している。また、前記トリガ電極15の先端15bは陰極12の先端12cの突出線Tに対し、若干後退Sしている。
【0012】
前記バルブ11内には、キセノン(Xe)の予備電離を促進させる金属蒸気16a(本例ではバリウム蒸気)が分散(図2)されている。該金属蒸気16aは、仕事関数の小さいLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、あるいは、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属等の電離促進金属16をバルブ11内の端部(本例では左端部)に真空蒸着し、この部からバルブ11内に分散されるようになっている。
【0013】
前記フラッシュランプ10は、図3に示す点灯回路20によって点灯されるようになっている。該点灯回路20は、直流500V〜1KVの容量を持つ充電回路21のプラスラインL1とマイナスラインL2間に充電用の主コンデンサC1を接続し、前記プラスラインL1を、コイルP1、ダイオードD1を介してフラッシュランプ10の陽極13に接続し、前記マイナスラインL2をフラッシュランプ10の陰極12に接続する。
【0014】
また、パルス信号を発するトリガ回路22の電圧を10KV〜15KVに昇圧するトリガトランス23を設け、該トリガトランス23の二次側の一端側をダイオードD2を介して前記プラスラインL1の下流側(陽極13)に、他端側を前記マイナスラインL2の下流側(陰極12)に接続する。
【0015】
前記実施例によれば、トリガ回路22からパルス信号が発せられると、トリガトランス23を介してトリガ電極15に高電圧パルスが印加され、トリガ電極15の先端15bに電界が集中し、先ず該先端15b近傍の仕事関数の小さい浮遊したBa金属が励起電離し、それが種となって初期の予備電離を生じさせる。次いで、電離によって発生した電子は加速しながら近接した陽極13に向かい、イオンは陰極12に向かい、封入した放電ガス(キセノン)をイオン化する。そして、さらに、陰極12と陽極13間で電離が生じ、電気抵抗が低下して陰極12と陽極13間でアーク放電が起こり、フラッシュランプ1が点灯することになる。
【0016】
このように、トリガ電極15に高電圧パルスが印加されると、陰極12の前面で予備電離・放電が発生し、該予備電離・放電に誘発されて陰極12、陽極13によるアーク放電が発生することになる。このため、アーク放電が宇宙線や外来光等の影響を受けることなく安定して発生し、ミスフラッシュ動作がなくなるとともに、フラッシュランプ1がトリガ入力信号に機敏に追随して点灯することになる。また、トリガ電極15の先端15aを先鋭にして高電圧パルスが印加された際にこの部で電界が集中するようにし、また、バルブ11内に電離し易い金属蒸気を分散させたので、放電ガスの電離が促進され、安定したアーク放電を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されるフラッシュランプの断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】本発明によるフラッシュランプの点灯回路図である。
【図4】従来例を示すフラッシュランプの断面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 フラッシュランプ
11 バルブ
12 陰極
12a 軸部
12b 頭部
12c 先端
13 陽極
13a 軸部
13b 頭部
13c 先端
15 トリガ電極
15a 先端部
15b 先端
20 点灯回路
21 充電回路
22 トリガ回路
23 トリガトランス
M 陰極と陽極とのの対向軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスが封入されるバルブ(11)内に、陰極(12)の先端(12c)と陽極(13)の先端(13c)とが放電間隔(G)を保持して対向配置され、前記陰極(12)及び陽極(13)間でアーク放電を行なわせてなるフラッシュランプにおいて、前記陰極(12)に該陰極(12)よりも細い導電性のトリガ電極(15)が接続され、該トリガ電極(15)の先端は、バルブ(11)内にて前記陰極(12)及び陽極(13)の対向軸線(M)から側方に偏倚されるとともに、前記陰極(12)の先端(12c)を越えない位置で該陰極(12)に接近配置されてなることを特徴とするフラッシュランプ。
【請求項2】
トリガ電極(15)の先端(15b)は先鋭に形成されてなる請求項1記載のフラッシュランプ。
【請求項3】
バルブ(11)内にアルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属からなる電離促進金属の金属蒸気を封入したことを特徴とする請求項1又は2記載のフラッシュランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−104830(P2009−104830A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273647(P2007−273647)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(504383704)ランプテクノロジー株式会社 (3)
【出願人】(503442640)ヒメジ理化株式会社 (7)
【Fターム(参考)】