説明

フラッパの駆動装置

【課題】本発明は、回動駆動源の出力軸がロックされている状態でも、容易にフラッパを手動で回動させられるようにして、フラッパの手動操作が煩雑にならないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るフラッパの駆動装置は、フラッパ21の回動駆動源55の出力軸55kと一体で回転可能に構成された入力部562と、フラッパ21と一体で回転可能に構成された出力部564とを備え、入力部562と出力部564間でフラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルクを伝達可能なように構成された回転力伝達部材56を有しており、回転力伝達部材56は、入力部562と出力部564間にフラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルクを超える回転トルクが加わったときに、入力部562と出力部564とが相対回転可能なように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフタのプラットホームの端縁に起立位置と倒伏位置間で回動可能な状態で設置されているフラッパを回動させるフラッパの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するフラッパの駆動装置が特許文献1に記載されている。
このフラッパの駆動装置は、車両用の車椅子リフタのプラットホーム後端縁に設置されているフラッパを回動させる装置である。前記駆動装置100は、図10(A)(B)に示すように、モータの出力軸(図示省略)に取付けられたモータ側スプロケット102と、フラッパ110の回動中心部に設けられたフラッパ側スプロケット104と、両スプロケット102,104に掛けられたチェーン105とを備えている。さらに、フラッパ側スプロケット104とフラッパ110間には、フラッパ110を起立位置でロックするロック機構107が設けられている。
ロック機構107は、ロック解除レバー108を手動操作することで、ロック状態を解除できるように構成されている(図10(B)参照)。さらに、ロック機構107は、モータの回転力でフラッパ側スプロケット104がフラッパ110の倒伏方向に回転することで、自動的にロック状態が解除されるように構成されている。
【0003】
即ち、モータを起動させて、そのモータの回転力をモータ側スプロケット102、チェーン105、フラッパ側スプロケット104を介してフラッパ110に伝達することで、ロック機構107のロック状態を解除して前記フラッパ110を起立位置と倒伏位置間で回動させられるようになる。
また、前記モータの停止中であっても、ロック解除レバー108でロック機構107のロック状態を解除することで、手動によりフラッパ110を起立位置と倒伏位置間で回動させられるようになる。このとき、手動によるフラッパ110の回転力がフラッパ側スプロケット104、チェーン105、モータ側スプロケット102を介して前記モータに加わり、前記モータが外力により回転させられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−341409号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、前記フラッパの駆動装置では、手動でフラッパ110を起立位置と倒伏位置間で回動させる際に、フラッパ110の回転力がフラッパ側スプロケット104、チェーン105、モータ側スプロケット102を介して前記モータに加わり、前記モータが外力で回転させられるようになる。このため、フラッパ110の手動操作時にモータの回転音、スプロケット102,104とチェーン105との噛合音等が発生して耳障りである。また、スプロケット102,104とチェーン105との収納スペースを広く確保する必要があり、スプロケット102,104等の配置の自由度も低くなる。
この点を改善するため、スプロケット102,104やチェーン105を有しないモータと減速機とからなる回動駆動源であってモータの通電が解除された状態で出力軸が回転ロックされる構成の回動駆動源を使用することが考えられる。
しかし、通電解除時に回転駆動源の出力軸がロックされる構成では、フラッパ110を手動で回動させる際に回転駆動源の出力軸とフラッパ110とを切り離す機構が必要になる。即ち、フラッパ110の手動操作時にフラッパ110の起立ロック状態を解除する操作と、回転駆動源の出力軸とフラッパ110とを切り離す操作とが必要となり、前記フラッパの駆動装置100の取扱いが煩雑になる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、回動駆動源の出力軸がロックされている状態でも、容易にフラッパを手動で回動させられるようにして、フラッパの手動操作が煩雑にならないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、リフタのプラットホームの端縁に起立位置と倒伏位置間で回動可能な状態で設置されているフラッパを回動させるフラッパの駆動装置であって、前記フラッパの回動駆動源の出力軸と一体で回転可能に構成された入力部と、前記フラッパと一体で回転可能に構成された出力部とを備え、前記入力部と前記出力部間で前記フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクを伝達可能なように構成された回転力伝達部材を有しており、前記回転力伝達部材は、前記入力部と前記出力部間に前記フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクを超える回転トルクが加わったときに、前記入力部と前記出力部とが相対回転可能なように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によると、回転力伝達部材は、フラッパの回動に必要な大きさの回転トルク(以下、必要回転トルクという)を伝達可能なように構成されている。このため、フラッパの回動駆動源が動作して出力軸が回転すると、その回動駆動源の出力軸から回転力伝達部材の入力部と出力部を介してフラッパに必要回転トルクが伝達される。これにより、前記フラッパが起立位置と倒伏位置間で回動可能となる。
また、回転力伝達部材は、入力部と出力部間にフラッパの回動に必要な大きさの回転トルクを超える回転トルクが加わったときに、前記入力部と前記出力部とが相対回転可能なように構成されている。このため、フラッパの回動駆動源が停止して出力軸がロックされた状態では、フラッパに対して手動により必要回転トルクを超える回転力を加えることで、回転力伝達部材の入力部と出力部とが相対回転するようになる。即ち、前記フラッパを手動で回動させることができる。
このように、フラッパの回動駆動源の出力軸をロックさせた状態で、フラッパを手動で回動させる際に、前記フラッパと回動駆動源の出力軸との連結状態を解除する必要がないため、フラッパの手動操作が煩雑にならない。また、回動駆動源の出力軸をロックさせた状態でフラッパを手動で回動させることができるため、フラッパの手動操作時に回転音、噛合音等が発生することもない。
【0009】
請求項2の発明によると、フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクは、前記フラッパを回動途中位置に保持可能な保持トルクにほぼ等しいことを特徴とする。
このため、回動駆動源によりフラッパを回動させる際に、必要最小限の力でフラッパが回動させられるようになる。したがって、回動途中でフラッパが障害物に当たった場合、回動駆動源の駆動が継続されても、フラッパがその位置で停止するため、前記フラッパの損傷を防止できる。
また、フラッパを手動で回動させる際に、比較的小さな力でフラッパを回動させられるようになる。
【0010】
請求項3の発明によると、保持トルクは、フラッパの回動中心からそのフラッパの重心までの距離と、前記フラッパの重量との積に基づいて設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、フラッパの回動駆動源の出力軸がロックされている状態でも、容易にフラッパを手動で回動させられるようになるため、フラッパの手動操作が煩雑にならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の本実施形態1に係るフラッパの駆動装置を備える車椅子リフタの模式斜視図である。
【図2】前記フラッパの駆動装置の全体側面図である。
【図3】図2のIII-III矢視断面図である。
【図4】図2のIV-IV矢視断面図である。
【図5】図4のV-V矢視図である。
【図6】図3のVI-VI矢視図である。
【図7】図3のVII-VII矢視図である。
【図8】前記フラッパの駆動装置においてフラッパの回動ロック状態を解除する様子を表す側面図である。
【図9】前記フラッパの駆動装置においてフラッパの回動途中を表す側面図である。
【図10】従来のフラッパの駆動装置におけるフラッパの起立ロック状態を表す側面図(A図)、前記フラッパの起立ロック解除状態を表す側面図(B図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態1に係るフラッパの駆動装置について説明する。本実施形態に係るフラッパの駆動装置は、ワンボックス車両Cの後部に設けられた車椅子リフタのプラットホームに設置されているフラッパを回動させるための装置である。
ここで、本実施形態に係るフラッパの駆動装置50の説明を行う前に車椅子リフタ10の概要について簡単に説明する。
なお、図中に示す前後左右及び上下は車椅子リフタを備えるワンボックス車両Cの前後左右及び上下に対応している。
【0014】
<車椅子リフタ10の概要ついて>
ワンボックス車両Cは、図1に示すように、後側開口部Hを備えており、その後側開口部Hが上下回動式のバックドア(図示省略)によって開閉可能に構成されている。そして、ワンボックス車両Cの後部に、乗員を車椅子Kで後側開口部Hから乗降させるための車椅子リフタ10が設けられている。
車椅子リフタ10は、車椅子Kが載せられる水平なプラットホーム20と、そのプラットホーム20を前後スライドさせる左右一対の前後スライド機構30と、前記プラットホーム20を水平な状態で昇降させる左右一対の昇降リンク機構40とから構成されている。
【0015】
昇降リンク機構40は、車室フロアFLの左右の固定金具41に対して上下回動可能な状態で連結された四節リンク機構43と、その四節リンク機構43の先端側に同じく上下回動可能な状態で連結された起立状態の昇降アーム44と、前記四節リンク機構43を上下回動させて、昇降アーム44を昇降させる油圧シリンダ(図示省略)とから構成されている。
左右の昇降アーム44の下端部には、前後スライド機構30を介してプラットホーム20が前後スライド可能な状態で連結されている。前後スライド機構30は、プラットホーム20の左右側面に設けられたスライドレール35と、前記スライドレール35を車両前後方向にスライドさせるスライド機構本体部33とから構成されている。
プラットホーム20は、前後に長い長方形状に形成されており、そのプラットホーム20の後端縁に板状のフラッパ21が上下回動可能な状態で設置されている。フラッパ21は、プラットホーム20が地上の乗降位置にあるときにそのプラットホーム20と地面間の段差を無くすスロープ板として使用される部材である。フラッパ21は、スロープ板として使用される倒伏位置と起立位置間で回動できるように構成されており、起立位置で車椅子Kの後輪を後方から支えるストッパとして機能する。
【0016】
<フラッパの駆動装置50の概要について>
フラッパの駆動装置50は、フラッパ21を起立位置と倒伏位置間で回動させる装置であり、図1に示すように、ハウジング51に収納された状態で前後スライド機構30における左側のスライドレール35の車幅方向内側に設置されている。フラッパの駆動装置50は、図2等に示すように、フラッパ21の回動駆動源として使用されるモータ部52、及び歯車機構54と、ディスクダンパ56と、フラッパ起立ロック機構58(図3等参照)とから構成されている。
【0017】
<モータ部52と歯車機構54について>
モータ部52は、図2に示すように、モータ52mと減速機52xとから構成されており、モータ52mの通電が解除されてモータ52mが停止状態では減速機52xの出力軸52jが回転ロックされるように構成されている。モータ部52は、モータ部52の出力軸52jが車幅方向に延びるように位置決めされており、そのモータ部52の出力軸52jにピニオンギヤ52pが固定されている。そして、前記ピニオンギヤ52pが歯車機構54のアイドルギヤ54aと噛合しており、そのアイドルギヤ54aがドライブギヤ55と噛合している。
モータ部52とアイドルギヤ54aとは、ブラケット(図示省略)を介してスライドレール35に支持されている。
【0018】
歯車機構54のドライブギヤ55は、フラッパ21の回動中心CLと同軸に位置決めされており、図3、図4に示すように、スライドレール35の車幅方向内壁面に突出形成されたギヤ支持軸35jによって回転自在に支持されている。即ち、スライドレール35の車幅方向内壁面には、円筒形のギヤ支持軸35jが車幅方向に突出するように形成されており、そのギヤ支持軸35jがドライブギヤ55の中央に形成された円筒形凹部55hに嵌合している。これにより、ドライブギヤ55がスライドレール35の車幅方向内壁面に回転自在に支持されるようになる。
ドライブギヤ55の中央には円筒形凹部55hと反対側の面に角柱部55kが同軸に形成されており、その角柱部55kの先端側に円柱部55eが同軸に形成されている。そして、ドライブギヤ55の角柱部55kの位置にディスクダンパ56が配置されている。
即ち、モータ部52と歯車機構54とが本発明のフラッパの回動駆動源に相当する。また、ドライブギヤ55の角柱部55kが本発明の回動駆動源の出力軸に相当する。
【0019】
<ディスクダンパ56について>
ディスクダンパ56は、回転力伝達部材であり、フラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルク(必要回転トルク)を伝達可能で、その必要回転トルクを超える回転トルクは伝達不能なように構成されている。ディスクダンパ56は、図4、図5等に示すように、ディスク部562とリング状ケース部564とから構成されており、そのディスク部562の中央以外の部分がリング状ケース部564に収納されている。ディスクダンパ56のディスク部562とリング状ケース部564とは、そのディスク部562とリング状ケース部564間に必要回転トルクを超える回転トルクが加わったときに相対回転するように構成されている。一方、ディスク部562とリング状ケース部564間に必要回転トルク以下の回転トルクが加わった場合には、ディスク部562とリング状ケース部564とが相対回転することがなく、ディスクダンパ56は前記回転トルクを伝達可能になる。
ディスクダンパ56のディスク部562の中心には、ドライブギヤ55の角柱部55kが嵌合する角穴562sが形成されている。即ち、ディスクダンパ56のディスク部562とドライブギヤ55とは相対回転不能な状態で連結される。また、ディスクダンパ56のリング状ケース部564の径方向両側には、そのリング状ケース部564を後記するフラッパ起立ロック機構58のカム板582にボルト止めするためのフランジ部564fが形成されている。
ここで、上記した必要回転トルクとは、フラッパ21を回動途中位置に保持するのに必要な保持トルクにほぼ等しく、フラッパ21の回動中心CLからそのフラッパの重心Gまでの距離Lと、前記フラッパ21の重量Wとの積(=L×W)に基づいて設定される。
即ち、ディスクダンパ56のディスク部562が本発明における回転力伝達部材の入力部に相当し、リング状ケース部564が本発明における出力部に相当する。
【0020】
<フラッパ起立ロック機構58について>
ディスクダンパ56とフラッパ21間には、図3等に示すように、フラッパ起立ロック機構58のカム板582とロック板584とが設けられている。フラッパ起立ロック機構58は、図2に示すように、フラッパ21が起立位置にあるときに、そのフラッパ21を起立位置でロックする機構である。フラッパ起立ロック機構58は、図6等に示すように、ロック爪588を備えるロックレバー586と、フラッパ21を自動で回動させる際にロック状態を解除するカム板582と、ロックレバー586のロック爪588が嵌合するロック板584(図7参照)とから構成されている。
【0021】
ロックレバー586は、図2等に示すように、そのロックレバー586の下端部に軸受孔586hが形成されており、その軸受孔586hにスライドレール35側に固定された連結横ピン35pが挿通されている。これにより、ロックレバー586は、連結横ピン35pを中心に、図2において左回り、あるいは右回りに回動可能な状態でスライドレール35に取付けられる。ロックレバー586の軸受孔586hの近傍位置には、図6等に示すように、そのロックレバー586に対して後下方に突出した略角形のロック爪588が設けられている。そして、ロックレバー586のロック爪588が後記するロック板584のロック溝584mに対して前上方から嵌合可能なように構成されている。ロックレバー586は、図2において右回動方向にロックバネ(図示省略)のバネ力を受けており、前記バネ力によりロック爪588とロック板584のロック溝584mとが嵌合状態に保持される(図6等参照)。また、ロックレバー586の上端部には、図2に示すように、ロック解除ハンドル586sが設けられており、このロック解除ハンドル586sを握ってロックレバー586を前記ロックバネのバネ力に抗してロック解除方向(左回動方向)に回動させられるように構成されている。
【0022】
カム板582は、図6〜図9に示すように、ロックレバー586のロック爪588の先端が当接する外周面を備える略円板状の厚板であり、図4に示すように、中央に貫通孔582hを備えている。そして、カム板582の貫通孔582hにドライブギヤ55の円柱部55eが相対回転可能な状態で通されている。また、カム板582の周縁がディスクダンパ56のリング状ケース部564のフランジ部564fにボルト止めされている。これにより、前記カム板582はディスクダンパ56のリング状ケース部564と一体でディスクダンパ56のディスク部562とドライブギヤ55に対して相対回転が可能になる。
また、カム板582の外周面の一部には、図6等に示すように、そのカム板582の右回転過程でロックレバー586のロック爪588を半径方向外側に移動させる切り欠き状のカム部582cが形成されている。
さらに、カム板582には、図6、図7等に示すように、ロック板584との接触面に凸条582tが形成されている。
【0023】
ロック板584は、図7〜図9に示すように、ロックレバー586のロック爪588の先端が当接する外周面を備える略円板状の厚板であり、フラッパ21と一体で回転可能なように構成されている。ロック板58の外周面には、円周方向における一ヶ所にロックレバー586のロック爪588が嵌合可能な角形のロック溝584mが形成されている。ロック溝584mは、フラッパ21が起立位置にあるときに、ロックレバー586のロック爪588が嵌合可能なように位置決めされている。
ロック板584の中央には、図4、図7に示すように、貫通孔584hが形成されており、その貫通孔582hにドライブギヤ55の円柱部55eが相対回転可能な状態で通されている。また、ロック板584には、図7等に示すように、カム板接触面に円弧状の長穴584xが形成されている。円弧状の長穴584xの円弧中心はロック板584の回転中心と一致しており、その長穴584xにカム板582の凸条582tが挿入されている。これにより、ロック板584は、長穴584xと凸条582tとの長さ寸法差だけカム板582に対して相対回転が可能になる。
【0024】
ロック板584のカム板接触面と反対側には、図3、図4に示すように、フランジ部584fが形成されており、このフランジ部584fがフラッパ21の回動中心部に設けられた連結板部21c(図6〜図9参照)に連結されている。これにより、ロック板584はフラッパ21と一体で回転できるようになる。
ここで、図3に示すように、前記ロック板584と反対側に位置するフラッパ21の連結板部21c(車幅方向右側の連結板部21c)には、支持部60の固定フランジ61が連結されている。そして、前記固定フランジ61に設けられた連結軸63が左側のスライドレール35のギヤ支持軸35jと同軸に形成された右側のスライドレール35の軸受部65に支持されている。
【0025】
<車椅子リフタ10及びフラッパ21の動作について>
次に、車椅子リフタ10とフラッパ21の動作について説明する。
車椅子リフタ10のプラットホーム20がワンボックス車両Cの車室内に格納されている状態では、図2に示すように、フラッパ21は起立位置に保持されてフラッパ起立ロック機構58により起立ロック状態に保持されている。即ち、図6、図7に示すように、ロックレバー586のロック爪588がバネ力でフラッパ21と一体で回転するロック板584のロック溝584mと嵌合している。
ワンボックス車両Cのバックドアが開かれた状態で、車椅子リフタ10の下降スイッチが操作されると、昇降リンク機構40の四節リンク機構43が回動動作し、昇降アーム44、及びプラットホーム20が一定量上昇する。さらに、昇降アーム44に設けられた前後スライド機構30(スライド機構本体部33)が動作してプラットホーム20が昇降アーム44に対して後方(車室外)にスライドする。次に、四節リンク機構43が引き続き回動動作することで、昇降アーム44、及びプラットホーム20がほぼ水平の状態で下降するようになる。そして、プラットホーム20が地上から予め決められた高さ位置(ほぼ地上位置)まで下降した段階で(図1参照)、昇降リンク機構40が停止する。
【0026】
このように、プラットホーム20が地上から予め決められた高さ位置まで下降すると、フラッパの駆動装置50のモータ52mへの通電が行われる。そして、フラッパの駆動装置50のモータ52mが動作すると減速機52xの出力軸52jが、図2に示すように、右回転し、その回転力がピニオンギヤ52p、アイドルギヤ54aを介してドライブギヤ55に伝達される。そして、ドライブギヤ55の右回りの回転力が、図3、図4に示すように、そのドライブギヤ55の角柱部55kを介してディスクダンパ56のディスク部562に伝達される。
前述のように、ディスクダンパ56のディスク部562とリング状ケース部564とは、フラッパ21の回転に必要な回転トルク(必要回転トルク)が加わる場合には相対回転不能に構成されている。即ち、ディスクダンパ56のディスク部562とリング状ケース部564とは一体で回転するようになる。
このため、ドライブギヤ55とディスクダンパ56のディスク部562の回転力がディスクダンパ56のリング状ケース部564を介してフラッパ起立ロック機構58のカム板582に伝達される。
【0027】
これにより、フラッパ起立ロック機構58のカム板582がロック板584に対して、図6の状態から図8の状態まで長穴584xと凸条582tとの長さ寸法差だけ相対的に右回転する。この結果、カム板582のカム部582cが、図8に示すように、カム板582の相対回転中にロックレバー586のロック爪588を半径方向外側に押圧し、そのロック爪588とロック板584のロック溝584mとの嵌合を解除する。これにより、フラッパ21の起立ロック状態が解除される。
そして、フラッパ起立ロック機構58のカム板582とロック板584とが長穴584xと凸条582tとにより回転方向に連結されることで、前記カム板582の右回転がロック板584を介してフラッパ21に伝達されるようになる。即ち、フラッパ21はフラッパの駆動装置50の回転力を受けて後側に倒伏する方向(右方向)に回動するようになる。なお、このとき、フラッパ起立ロック機構58のロックレバー586のロック爪588は、図9に示すように、カム板582とロック板584の外周面を摺動するようになる。
そして、フラッパ21が倒伏位置まで回動した段階でフラッパの駆動装置50が停止する(図1参照)。これにより、プラットホーム20の後端部と地上との段差がスロープ状のフラッパ21によって塞がれるようになる。
ここで、フラッパ21、及びプラットホーム20を車室内に格納する場合には、車椅子リフタ10の上昇スイッチを操作する。これにより、上記した順番と逆の順番でフラッパの駆動装置50、及び昇降リンク機構40が動作するようになる。なお、フラッパ21が起立位置まで回動するとロックレバー586のロック爪588はロックバネのバネ力でロック板584のロック溝584mと嵌合して、フラッパ21が起立位置でロックされる。
【0028】
また、車椅子リフタ10の下降スイッチが操作された状態で、プラットホーム20が地上から予め決められた高さ位置まで下降することができない場合には、フラッパの駆動装置50のモータ52mに対して通電が行われない。しかし、この場合には、フラッパ21を手動で倒伏位置まで回動させることが可能である。
即ち、この状態では、モータ52mが停止しているため、モータ部52(減速機52x)の出力軸52jは回転ロックされている。したがって、モータ部52の出力軸52jとピニオンギヤ52p、アイドルギヤ54aを介して連結されているドライブギヤ55と、そのドライブギヤ55の角柱部55kと嵌合しているディスクダンパ56のディスク部562とが回転ロックされている。
フラッパ21を手動で回動させる場合には、先ず、ロック解除ハンドル586sを握ってロックレバー586をバネ力に抗してロック解除方向(図2において左回動方向)に回動させ、ロックレバー586のロック爪588とロック板584のロック溝584mとの嵌合を解除する。
次に、この状態で、必要回転トルクを超える回転力でフラッパ21を倒伏方向に回動させる。これにより、ディスクダンパ56のディスク部562とリング状ケース部564との間に必要回転トルクを超える回転トルクが加わり、ディスク部562とリング状ケース部564とが相対回転可能になる。即ち、回転ロック状態のドライブギヤ55、ディスクダンパ56のディスク部562に対し、そのディスクダンパ56のリング状ケース部564、カム板582、ロック板584、及びフラッパ21が回動するようになる。これにより、フラッパ21を倒伏位置まで回動させられるようになる。
なお、手動状態では、起立位置のフラッパ21を後方に倒伏させるだけではなく、前方に倒伏させることも可能になる。このように、フラッパ21を前方に倒すことで、車椅子Kをプラットホーム上に乗せた後、介助者がプラットホーム上に乗り込み易くなる。
【0029】
<本実施形態に係るフラッパの駆動装置50の長所について>
本実施形態に係るフラッパの駆動装置50によると、回転力伝達部材であるディスクダンパ56は、フラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルク(必要回転トルク)を伝達可能なように構成されている。このため、モータ部52が動作してドライブギヤ55の角柱部55kが回転すると、そのドライブギヤ55の角柱部55kからディスクダンパ56のディスク部562、リング状ケース部564を介してフラッパ21の回動中心軸(カム板582、ロック板584)に必要回転トルクが伝達される。これにより、フラッパ21が起立位置と倒伏位置間で回動可能となる。
また、ディスクダンパ56は、ディスク部562とリング状ケース部564間にフラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルクを超える回転トルクが加わったときに、ディスク部562とリング状ケース部564とが相対回転可能なように構成されている。このため、モータ部52が停止してドライブギヤ55の角柱部55kがロックされた状態では、フラッパ21に対して必要回転トルクを超える回転力を加えることで、ディスクダンパ56のディスク部562とリング状ケース部564とが相対回転可能になり、前記フラッパ21を手動で回動させることができる。
即ち、モータ部52を停止してドライブギヤ55の角柱部55kをロックさせた状態で、フラッパ21を手動で回動させる際に、そのフラッパ21とドライブギヤ55の角柱部55kとの連結状態を解除する必要がないため、フラッパ21の手動操作が煩雑にならない。また、ドライブギヤ55の角柱部55kをロックさせた状態でフラッパ21を手動で回動させることができるため、フラッパ21の手動操作時に回転音、噛合音等が発生することもない。
【0030】
また、フラッパ21の回動に必要な大きさの回転トルクは、フラッパ21を回動途中位置に保持可能な保持トルクにほぼ等しく、フラッパ21の回動中心部CLからそのフラッパ21の重心Gまでの距離Lと、前記フラッパ21の重量Wとの積に基づいて設定される。
このため、モータ部52によりフラッパ21を回動させる際に、必要最小限の力でフラッパ21が回動させられるようになる。したがって、回動途中でフラッパ21が障害物に当たった場合、モータ部52の駆動が継続されても、フラッパ21がその位置で停止する。このため、前記フラッパの損傷を防止できる。
また、フラッパを手動で回動させる際に、比較的小さな力でフラッパを回動させられるようになる。
【0031】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、モータ部52の出力軸52jの回転力を歯車機構54によって回転力伝達部材であるディスクダンパ56に伝達する例を示した。しかし、歯車機構54の代わりにチェーンとスプロケット等を使用することも可能であるし、モータ部52の出力軸52jのピニオンギヤ52pを直接的にドライブギヤ55と噛合させることも可能である。
また、本実施形態では、ディスクダンパ56の伝達可能トルクをフラッパ21の保持トルク(回動途中位置に保持可能なトルク)にほぼ等しく設定する例を示した。しかし、ディスクダンパ56の伝達可能トルクを何段階かに調整できるようにすることも可能である。
また、本実施形態では、車椅子リフタ10のフラッパ21に本発明を適用する例を示したが、車椅子リフタ10以外のリフタのフラッパに本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10・・・車椅子リフタ
20・・・プラットホーム
21・・・フラッパ
50・・・フラッパの駆動装置
52・・・モータ部(回転駆動源)
54・・・歯車機構(回転駆動源)
55・・・ドライブギヤ(回転駆動源)
55k・・角柱部(出力軸)
56・・・ディスクダンパ(回転力伝達部材)
562・・ディスク部(入力部)
564・・リング状ケース部(出力部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフタのプラットホームの端縁に起立位置と倒伏位置間で回動可能な状態で設置されているフラッパを回動させるフラッパの駆動装置であって、
前記フラッパの回動駆動源の出力軸と一体で回転可能に構成された入力部と、前記フラッパと一体で回転可能に構成された出力部とを備え、前記入力部と前記出力部間で前記フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクを伝達可能なように構成された回転力伝達部材を有しており、
前記回転力伝達部材は、前記入力部と前記出力部間に前記フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクを超える回転トルクが加わったときに、前記入力部と前記出力部とが相対回転可能なように構成されていることを特徴とするフラッパの駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたフラッパの駆動装置であって、
前記フラッパの回動に必要な大きさの回転トルクは、前記フラッパを回動途中位置に保持可能な保持トルクにほぼ等しいことを特徴とするフラッパの駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたフラッパの駆動装置であって、
前記保持トルクは、前記フラッパの回動中心からそのフラッパの重心までの距離と、前記フラッパの重量との積に基づいて設定されていることを特徴とするフラッパの駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52761(P2013−52761A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192393(P2011−192393)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)