説明

フラーレン誘導体およびその製造方法

【課題】開放端電圧(Voc)を高めることができるフラーレン誘導体。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体。
【化1】



(式中、C及びCはフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。Rはアルキル基を表す。Rは1価の有機基を表す。aは1〜5の整数を表す。前記Rが複数個存在する場合には、該R同士は互いに異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体およびその製造方法、並びに有機光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電荷(電子、正孔)輸送性を有する有機半導体材料は、有機太陽電池、光センサといった有機光電変換素子などへの適用が検討されている。こうした有機半導体材料として、フラーレン誘導体が検討されている。有機半導体材料として用いられるフラーレン誘導体としては、例えば[6,6]−フェニルC61−酪酸メチルエステル([60]−PCBMという場合がある)が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Advanced Functional Materials Vol.13 (2003) p85
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来用いられている[60]−PCBMを有機半導体材料として含む有機光電変換素子では、特に光電変換効率という観点から重要な特性である、高い開放端電圧(Voc)を得ることができなかった。結果として有機光電変換素子の光電変換効率を高めることが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、有機光電変換素子の開放端電圧を十分に高くすることができ、ひいては有機光電変換素子の光電変換効率をより高めることができるフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々のフラーレン誘導体の物性、合成方法及び分離精製方法などについて鋭意研究を進めたところ、所定構造のフラーレン誘導体を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1] 下記式(1)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体。
【化1】


(式中、C及びCはフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。Rはアルキル基を表す。Rは1価の有機基を表す。aは1〜5の整数を表す。Rが複数個存在する場合には、R同士は互いに異なっていてもよい。)
[2] 下記式(2)で表される、[1]に記載のフラーレン誘導体。
【化2】


(式中、A環は炭素数が60以上であるフラーレン骨格を表す。C、C、R、R及びaは、前記式(1)における定義と同義である。2個存在するRは、互いに異なっていてもよい。)
[3] 前記式(1)で表される構造が下記式(3)で表される構造である、[1]または[2]に記載のフラーレン誘導体。
【化3】


(式中、C、C、R及びRは、前記式(1)における定義と同義である。)
[4] 前記Rがメチル基である、[1]〜[3]のいずれかに記載のフラーレン誘導体。
[5] 前記Rがアルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基及びハロゲン基からなる群から選ばれる基である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体。
[6] 前記Rがメトキシ基である、[5]に記載のフラーレン誘導体。
[7] [1]〜[6]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として含む組成物。
[8] [1]〜[6]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物。
[9] 前記電子供与性化合物が高分子化合物である、[8]に記載の組成物。
[10] 陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された[1]〜[6]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体を含む活性層とを備える有機光電変換素子。
[11] 陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持された[8]又は[9]に記載の組成物を含む活性層とを備える有機光電変換素子。
[12] 陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟持される活性層であって、[1]〜[6]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体を含む電子受容性層及び該電子受容性層に接合される電子供与性化合物を含む電子供与性層を有している前記活性層とを備える有機光電変換素子。
[13] フラーレンと、N−ヘキサデシルグリシン、N−オクチルグリシン、N−エチルグリシン及びN−メチルグリシンを含む群から選ばれるグリシン誘導体と、2−メトキシアルデヒド、2−メチルアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒドを含む群から選ばれるアルデヒド化合物とを、溶媒に加えて加熱還流して反応させる工程と、前記溶媒を除去し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ及び分取薄層クロマトグラフィにより分離精製する工程とを含む、[1]〜[6]のいずれか1つに記載のフラーレン誘導体の製造方法。
[14] 前記グリシン誘導体をN−エチルグリシンとし、前記アルデヒド化合物を2−メトキシベンズアルデヒドとする、[13]に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフラーレン誘導体を含む層を有機薄膜太陽電池、有機光センサといった有機光電変換素子に適用することにより、開放端電圧を高くすることができる。結果として有機光電変換素子の光電変換効率をより高めることができる。
また本発明のフラーレン誘導体の製造方法によれば、上記優れた特性を備えたフラーレン誘導体をより効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、有機光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。
【図2】図2は、有機光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお以下の説明において図を参照して説明する場合があるが、各図は発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また各図において、同様の構成成分については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
<フラーレン誘導体>
本発明のフラーレン誘導体は、下記式(1)で表される構造を2個以上有している。
【0012】
【化4】

【0013】
前記式(1)の構造において、C及びCはフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。
前記式(1)の構造において、Rはアルキル基を表す。Rは1価の有機基を表す。aは1〜5の整数を表す。Rが複数個存在する場合には、それらは互いに異なっていてもよい。1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン基又は1価の複素環基であることが好ましい。
【0014】
前記式(1)の構造において、Rで表されるアルキル基、またはRがアルキル基である場合には、アルキル基の炭素数は通常1〜20であり、アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、シクロアルキル基であってもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、3−メチルブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基が挙げられる。前記アルキル基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、具体的には、モノハロメチル基、ジハロメチル基、トリハロメチル基、ペンタハロエチル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0015】
前記式(1)の構造において、Rがアルコキシ基である場合には、アルコキシ基の炭素数は通常1〜20であり、アルコキシ基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、シクロアルキルオキシ基であってもよい。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基が挙げられる。前記アルコキシ基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0016】
前記式(1)の構造において、Rがアリール基である場合には、アリール基の炭素数は通常6〜60であり、アリール基は置換基を有していてもよい。アリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数が1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられ、炭素数が6〜20であるアリール基が好ましく、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基がより好ましい。前記アリール基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。アリール基が有していてもよい置換基としては、炭素数が1〜20である直鎖状或いは分岐状のアルキル基又は炭素数が1〜20であるシクロアルキル基、炭素数が1〜20である直鎖状或いは分岐状のアルキル基又は炭素数が1〜20であるシクロアルキル基をその構造中に含むアルコキシ基があげられる。
【0017】
前記式(1)の構造において、Rがハロゲン基である場合には、ハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。
【0018】
前記式(1)の構造において、Rが1価の複素環基である場合には、1価の複素環基としては、1価の芳香族複素環基が好ましい。1価の複素環基としては、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基が挙げられる。
【0019】
本発明のフラーレン誘導体は、前記式(1)で表される構造を2〜4個有することが好ましい。合成の容易さの観点からは、前記式(1)で表される構造を2個有することがより好ましい。
【0020】
本発明のフラーレン誘導体としては、下記式(2)で表されるフラーレン誘導体が好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
前記式(2)中、A環は炭素数が60以上であるフラーレン骨格を表す。C、C、R、R及びaは、前記式(1)における定義と同義である。2個存在するRは、互いに異なっていてもよい。
【0023】
前記式(1)で表される構造が、下記式(3)で表される構造であるフラーレン誘導体がさらに好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
式中、C、C、R及びRは、前記式(1)における定義と同義である。
【0026】
前記式(1)〜式(3)のフラーレン誘導体において、Rはメチル基であることが好ましい。
【0027】
前記式(1)〜式(3)のフラーレン誘導体において、Rはメトキシ基であることが好ましい。
【0028】
本発明のフラーレン誘導体の好ましい一形態としては、前記式(3)のフラーレン誘導体において、前記A環は炭素数が60以上であるフラーレン骨格であり、Rはメチル基であり、Rがメトキシ基であるフラーレン誘導体が挙げられる。
【0029】
前記式(2)のフラーレン誘導体において、A環を構成するフラーレンの炭素数は特に限定されない。A環を構成するフラーレンとして、C60フラーレン、C70フラーレン、C74フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレンといった炭素数の異なる種々のフラーレンのうちいずれを選択したとしても、前記本発明の効果を得ることができる。原料の入手しやすさの観点からは、A環はC60フラーレン、C70フラーレンであることが好ましい。
【0030】
本発明のフラーレン誘導体において、C60フラーレンの誘導体の具体例としては、下記の化合物(a)〜化合物(f)が挙げられる。
【0031】
【化7】

【0032】
化合物(a)〜化合物(f)おいて、C60と付記されている環は、炭素数が60であるフラーレン環を表す。Meはメチル基を表す。
【0033】
本発明のフラーレン誘導体において、C70フラーレン誘導体の具体例としては、下記化合物(g)が挙げられる。
【0034】
【化8】

【0035】
前記化合物(g)において、C70と付記されている環は、炭素数が70であるフラーレン環を表す。Meはメチル基を表す。
前記式(2)のフラーレン誘導体及び前記化合物(a)〜化合物(g)において、各フラーレン環に付加されている複数個の構造(付加基)がそれぞれ結合する炭素原子の位置、すなわち付加基同士の相対的な位置関係は、特に限定されない。
【0036】
<フラーレン誘導体の製造方法>
本発明のフラーレン誘導体は、例えばグリシン誘導体とアルデヒド類(アルデヒド化合物)から生成するイミンから脱炭酸して生じるイミニウムカチオンと、フラーレンとの1,3−双極子環化付加反応(Prato反応)として知られる方法(Accounts of Chemical Research Vol.31 1998 p519-526参照)により合成(製造)することができる。
【0037】
用いられるグリシン誘導体としては、N−ヘキサデシルグリシン、N−オクチルグリシン、N−エチルグリシン、N−メチルグリシン(サルコシン)などが例示される。
この製造方法で用いられるグリシン誘導体の量は、フラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モルの範囲であり、好ましくは0.5〜3モルの範囲である。
【0038】
もう1つの原料であるアルデヒド類としては、2−メトキシアルデヒド、2−メチルアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒドなどが例示される。
アルデヒド類の使用量は、フラーレン1モルに対して、通常0.1〜10モルの範囲であり、好ましくは0.5〜4モルの範囲である。
【0039】
本発明のフラーレン誘導体の合成反応は、通常、溶媒中で行なわれる。該溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、クロルベンゼンなど、合成反応において不活性な溶媒が用いられる。該溶媒の使用量は、フラーレンの重量に対して、通常1〜100000倍量の範囲である。
【0040】
合成反応に際しては、例えば溶媒中でグリシン誘導体とアルデヒド類とフラーレンとを混合し、加熱して反応させればよい。合成反応の温度は、通常50〜350℃の範囲である。合成反応の時間は、通常30分間から50時間である。
加熱による合成反応が終了した後、得られた反応混合物を室温まで放冷し,溶媒をロータリーエバポレータで減圧留去する。得られた固形物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ及び分取薄層クロマトグラフィにより分離精製する。以上の工程により目的とするフラーレン誘導体を得ることができる。
【0041】
原料であるグリシン誘導体、アルデヒド類の使用量、反応時間といった反応条件等を適宜調整し、また分離精製条件を適宜調整することにより、フラーレンに付加する付加基(構造)の数を調節し、所望の数の付加基が付加されたフラーレン誘導体を選択的に得ることができる。
【0042】
<組成物>
本発明のフラーレン誘導体は、電子受容性化合物としても電子供与性化合物としても用いることができるが、特に電子受容性化合物として用いるのが好適である。また本発明のフラーレン誘導体は、特に塗布法により形成される活性層の材料として好適に用い得る。
本発明のフラーレン誘導体を含有する組成物の性状は特に限定されない。例えば塗布法に用いられる塗工用の組成物とする場合には、本発明のフラーレン誘導体を任意好適な溶媒と混合して液体状(溶液状)とすればよい。
【0043】
(第1の組成物)
詳細は後述するが、光電変換素子において、活性層が電子受容性化合物を含有する層(電子受容性層)と電子供与性化合物を含有する層(電子供与性層)とが接合された積層構造として構成される場合には、本発明のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として含有し、かつ電子供与性化合物を不含とした組成物(第1の組成物)を、電子受容性層の構成成分として用いることができる。
【0044】
(第2の組成物)
本発明のフラーレン誘導体が、光電変換素子において、電子受容性化合物及び電子供与性化合物の双方を含有する活性層に用いられる場合には、本発明の組成物(第2の組成物)は、本発明のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む。
【0045】
また前記第1の組成物及び第2の組成物は、使用態様に応じて選択された任意好適なその他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0046】
前記電子供与性化合物は、塗布性の観点から高分子化合物であることが好ましい。なお、本明細書でいう高分子化合物とは、好ましくはポリスチレン換算の数平均分子量が、10以上であり、通常ポリスチレン換算の数平均分子量が10以下であり得る。
高分子化合物としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。
【0047】
有機光電変換素子に用いる電子供与性化合物は、光電変換効率の観点から下記式(4)及び式(5)からなる群から選ばれる繰り返し単位を有する、重量平均分子量がおよそ5×10〜10の範囲の高分子化合物であることが好ましく、下記式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であることがより好ましい。
【0048】
【化9】

【0049】
前記式(4)及び式(5)の繰り返し単位において、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、互いに異なっていてもよい水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。
【0050】
前記式(4)の繰り返し単位において、R及び/又はRがアルキル基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアルキル基があげられる。R及び/又はRがアルコキシ基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアルコキシ基があげられる。R及び/又はRがアリール基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアリール基があげられる。
【0051】
前記式(4)の繰り返し単位において、光電変換効率の観点からは、R及びRのうちの少なくとも一方は、炭素数が1〜20であるアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜8のアルキル基であることがより好ましい。
前記式(4)の繰り返し単位からなる好適な高分子化合物としては、例えばRがHであり、RがC13であるP3HTが挙げられる。
【0052】
前記式(5)の繰り返し単位において、R〜R11のいずれか、これらの組み合わせ又はこれらすべてがアルキル基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアルキル基が挙げられる。R〜R11のいずれか、これらの組み合わせ又はこれらすべてがアルコキシ基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアルコキシ基が挙げられる。R〜R11のいずれか、これらの組み合わせ又はこれらすべてがアリール基である場合の具体例としては、前述の通り説明し例示したRと同じアリール基が挙げられる。
【0053】
前記式(5)の繰り返し単位において、モノマーの合成の行いやすさの観点から、R〜R11は水素原子であることが好ましい。また、光電変換効率の観点からは、R及びRは炭素数が1〜20であるアルキル基であるか、又は炭素数が6〜20であるアリール基であることが好ましく、炭素数が5〜8であるアルキル基であるか、又は炭素数が6〜15であるアリール基であることがより好ましい。
【0054】
本発明の前記第2の組成物に含まれる電子受容性物質であるフラーレン誘導体は、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部とすることが好ましく、50〜500重量部とすることがより好ましい。
本発明の第2の組成物を上述のように構成することにより、有機光電変換素子に用いた場合に、特に開放端電圧を高めることができ、ひいてはこの第2の組成物を含む層を備える有機光電変換素子の光電変換効率をより高めることができる。
【0055】
<有機光電変換素子>
図1及び図2を参照して、本発明の有機光電変換素子の構成例につき説明する。
図1は、有機光電変換素子の構成例(1)を示す概略的な断面図である。図2は、有機光電変換素子の構成例(2)を示す概略的な断面図である。
【0056】
本発明の有機光電変換素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持されたフラーレン誘導体を含む層とを備える。
【0057】
この一対の電極のうち、少なくとも光が入射する側の電極、すなわち少なくとも一方の電極は、入射光を透過させる透明又は半透明の電極とされる。
【0058】
構成例(1)
図1に示すように、構成例(1)の有機光電変換素子10は、例えば陽極である第1電極32及び例えば陰極である第2電極34からなる一対の電極と、該一対の電極間に挟持されたフラーレン誘導体を含む活性層40とを備えている。第1電極32及び第2電極34の極性は素子構造に対応した任意好適な極性とすればよく、第1電極32を陰極とし、かつ第2電極34を陽極とすることもできる。
【0059】
有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。すなわち有機光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。
【0060】
この基板20の材料は、電極を形成し、有機物を含有する層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板20の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。
【0061】
基板20が不透明である場合には、第1電極32と対向する、基板側とは反対側に設けられる第2電極34(すなわち基板20から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0062】
活性層40は、第1電極32と第2電極34とに接して挟持されている。活性層40は、例えば電子受容性化合物である本発明のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含有する有機層であって、光電変換機能にとって本質的な機能を有する層である。
【0063】
基板20の主面上には、第1電極32が設けられている。活性層40は、第1電極32を覆って設けられている。第2電極34は、活性層40の表面に接触させて設けられている。
【0064】
構成例(2)
図2に示すように、構成例(2)の有機光電変換素子は、陽極32及び陰極34からなる一対の電極と、前記一対の電極間に挟持される活性層40であって、本発明のフラーレン誘導体を含有する電子受容性層44、及び該電子受容性層に接合される、電子供与性化合物を含む電子供与性層42を有している前記活性層40とを備えている。
【0065】
有機光電変換素子10は、基板20の主面上に設けられている。基板20の主面上には第1電極32が設けられている。
【0066】
活性層40は、第1電極32と第2電極34との双方に接して挟持されている。構成例2の活性層40は、例えば本発明のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として含有する電子受容性層44と電子供与性化合物とを含有する電子供与性層42とが接合された積層構造とされている。
【0067】
電子供与性層42は、第1電極32を覆って設けられている。電子受容性層44は、電子供与性層32の全面を覆って設けられている。第2電極34は、電子受容性層44の表面に接触させて設けられている。
【0068】
なお、構成例(1)及び(2)では、本発明のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として説明したが、本発明のフラーレン誘導体を電子供与性化合物として、構成例(1)の活性層40又は構成例(2)の電子供与性層42に含有させることもできる。
【0069】
前記構成例(1)の有機光電変換素子10は、活性層40が電子受容性化合物と電子供与性化合物とを単一の層に含有する構成を備えているため、ヘテロ接合界面をより多く含み、光電変換効率がより向上するという観点から好ましい。
【0070】
有機光電変換素子10には、第1電極32及び第2電極34のうちの少なくとも一方の電極と本発明のフラーレン誘導体を含む活性層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、正孔又は電子を輸送する電荷輸送層(正孔輸送層、電子輸送層)が挙げられる。
【0071】
電荷輸送層を構成する材料としては、従来公知の任意好適な材料を用いることができる。電荷輸送層が電子輸送層である場合には、材料として2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリン(BCP)が例示される。電荷輸送層が正孔輸送層である場合には、材料としてポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が例示される。
【0072】
第1電極32及び/又は第2電極34と、フラーレン誘導体を含む層との間に設けてもよい付加的な層は、バッファ層であってもよく、バッファ層として用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物等が挙げられる。また、無機半導体を用いる場合には、微粒子の形態で用いることもできる。
【0073】
ここで本実施の形態の有機光電変換素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/活性層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/活性層/陰極
c)陽極/活性層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/活性層/電子輸送層/陰極
e)陽極/電子供給性層/電子受容性層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/電子供給性層/電子受容性層/陰極
g)陽極/電子供給性層/電子受容性層/電子輸送層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/電子供給性層/電子受容性層/電子輸送層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む層同士が隣接して積層されていることを示す。)
【0074】
上記層構成は、陽極が基板により近い側に設けられる形態、及び陰極が基板により近い側に設けられる形態のいずれであってもよい。
前記構成例(1)の有機光電変換素子10において、電子受容性化合物としてのフラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する活性層40におけるフラーレン誘導体の割合は、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部とすることが好ましく、50〜500重量部とすることがより好ましい。
【0075】
前記構成例(1)の有機光電変換素子10において、フラーレン誘導体及び電子供与性化合物を含有する活性層40は、フラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物を用いて製造することができる。
【0076】
有機光電変換素子10に用いることができるフラーレン誘導体を含む層(活性層40、電子供与性層42、電子受容性層44)は、該フラーレン誘導体を含む有機薄膜として形成されていることが好ましい。該有機薄膜の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0077】
第1電極32及び/又は第2電極34を透明又は半透明とする場合の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESAや、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化スズが好ましい。電極(第1電極32及び第2電極34)の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0078】
第1電極32及び第2電極34のうちの一方の電極の電極材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。仕事関数の小さい材料を含む電極は、透明又は半透明であってもよい。該材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0079】
次に、有機光電変換素子の動作機構について説明する。透明又は半透明の電極を透過して入射した光のエネルギーが電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子と正孔の結合した励起子を生成する。生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接(接合)しているヘテロ接合界面に達すると界面でのそれぞれのHOMOエネルギー及びLUMOエネルギーの違いにより電子と正孔とが分離し、独立に動くことができる電荷(電子と正孔と)が発生する。発生した電荷は、それぞれ電極へ移動することにより外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。
【0080】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜の製造方法は特に制限されない。製造方法としては、例えば、本発明に用いられるフラーレン誘導体を含む溶液(組成物)を調製し、この溶液を用いる成膜方法が挙げられる。
【0081】
前記溶液に用いられる溶媒は、本発明のフラーレン誘導体を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、ブチルベンゼン、sec−ブチルベゼン、tert−ブチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が挙げられる。前記フラーレン誘導体は、通常前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0082】
前記溶液は、既に説明した高分子化合物をさらに含んでいてもよい。この場合の溶液に用いられる溶媒の具体例としては、前述と同じ溶媒が挙げられるが、高分子化合物の溶解性の観点からは、芳香族の炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレンがより好ましい。
【0083】
前記溶液を使用する成膜方法には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0084】
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極を透過するように太陽光等の光を照射することにより、活性層を挟持する電極間に光起電力を発生させ、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0085】
また、有機光電変換素子の電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極を透過するように光を照射すると、光電流が流れる。このようにして、有機光電変換素子を有機光センサとして動作させることができる。有機光センサを複数集積することにより有機イメージセンサとして用いることもできる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
合成(製造)に用いた試薬及び溶媒は、市販品をそのまま使用するか、乾燥剤存在下で蒸留精製して使用した。C60フラーレンはフロンティアカーボン社製を使用した。NMRスペクトルはJEOL社製 MH500を用いて測定し、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準に使用した。MALDI−TOF MSスペクトルはBRUKER社製 AutoFLEX−T2を用いて測定した。
【0088】
<実施例1>ビス付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(A))の合成
ジムロートコンデンサを装着した2口フラスコ(100mL)にフラーレンC60(250mg、0.35mmol)、サルコシン(46mg、0.52mmol)、2−メトキシベンズアルデヒド(94mg、0.694mmol)をとり、クロロベンゼン(50mL)を加えて3時間加熱還流した。室温まで放冷後、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;二硫化炭素:酢酸エチル=1:0から30:1(体積比))、及び分取薄層クロマトグラフィ(展開溶媒;二硫化炭素)で分離精製し、モノ付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(M))を37mg(0.04mmol、収率12%)、及び褐色粉末であるビス付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(A))を95mg(0.09mmol、収率26%)得た。
【0089】
モノ付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(M))
MALDI-TOF-MS (matrix: SA) found 882 (calcd for C70H13NO、Exact Mass: 883)。
ビス付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(A))
MALDI-TOF-MS (matrix: SA) found 1045 (calcd for C80H26N2O2、Exact Mass: 1046)。
【0090】
【化10】

【0091】
<合成例1>モノ付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(B))の合成
ジムロートコンデンサを装着した2口フラスコ(100mL)にフラーレンC60(250mg、0.35mmol)、サルコシン(46mg、0.52mmol)、4−メトキシベンズアルデヒド(94mg、0.694mmol)をとり、溶媒であるクロロベンゼン(50mL)を加えて3時間加熱還流した。室温まで放冷後、ロータリーエバポレータで溶媒を除去し、ついでシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;二硫化炭素:酢酸エチル=1:0から30:1(体積比))、及び、分取薄層クロマトグラフィ(展開溶媒;二硫化炭素)で分離精製し、褐色粉末であるモノ付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(B))を124mg(0.14mmol、収率39%)得た。
【0092】
モノ付加フラーレン誘導体(フラーレン誘導体(B))
1H NMR (500 MHz, ppm, CDCl3, J= Hz) δ 2.76(3H, s), 3.77 (3H, s), 4.22(1H, d, J=9.15 Hz), 4.92 (1H, s), 4.93(1H, d, J=9.15 Hz), 6.87 (2H, d, J=8.7 Hz), 7.64(2H, brs);
MALDI-TOF-MS (matrix: SA) found 882 (calcd for C70H13NO、Exact Mass: 883.0997).
【0093】
【化11】

【0094】
<実施例2>有機薄膜太陽電池の作製
電子供与性化合物としてレジオレギュラーP3HT(アルドリッチ社製、ロット番号:09007KH)を1%(重量%)の濃度でクロロベンゼンに溶解させた。その後、フラーレン誘導体(A)を電子供与性化合物の重量に対して等倍重量となるように電子受容性化合物として混合して溶液とした。その後、吸着剤として溶液100重量部に対し1重量部のシリカゲル(和光純薬製 Wakogel C−300 粒径45〜75μm)を添加し、12時間攪拌した。ついで、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルタで濾過し、塗布溶液を作製した。
【0095】
スパッタ法によりITO膜(第1電極)が150nmの厚みとして形成されたガラス基板(基板)を、オゾンUV処理して表面処理を行った。次に、前記塗布溶液を用いてスピンコート法によりガラス基板上に形成されたITO膜上に塗布し、光電変換素子(有機薄膜太陽電池)の活性層(膜厚約100nm)を得た。その後、窒素雰囲気下、130℃の条件で10分間ベークを行った。その後、まず真空蒸着機によりフッ化リチウムを4nmの厚さで蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さで蒸着した(第2電極)。蒸着における真空度は、すべて1〜9×10-3Paとした。また、得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池に、ソーラシミュレータ(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII、AM1.5Gフィルタ)を用いて、放射照度100mW/cmとして一定照度の光を照射することにより、太陽電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
<比較例1>
P3HTの重量に対して100重量%となるように、フラーレン誘導体(A)の代わりに[60]-PCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、アメリカンダイソース社製、商品名ADS61BFB)を溶液に混合した以外は、実施例2と同様にして太陽電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
<比較例2>
P3HTの重量に対して100重量%となるように、フラーレン誘導体(A)の代わりにフラーレン誘導体(B)を溶液に混合した以外は、実施例2と同様にして太陽電池特性を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1から明らかなように、本発明のフラーレン誘導体(フラーレン誘導体(A))を活性層に含有している実施例2の有機薄膜太陽電池は、従来技術に相当する比較例1及び比較例2の有機薄膜太陽電池と比較して、開放端電圧がより高くなっていた。さらに実施例2の有機薄膜太陽電池は、従来技術に相当する比較例1及び2の有機薄膜太陽電池と比較して、光電変換効率がより高くなっていた。
【0100】
上述の説明から明らかなように、本発明のフラーレン誘導体を含む層を有機薄膜太陽電池、有機光センサといった有機光電変換素子の活性層として用いれば、特に光電変換効率という観点から極めて重要な特性である開放端電圧をより高めることができる。よって本発明のフラーレン誘導体は、有機光電変換素子の光電変換効率をより高めるのに大いに寄与する。
【符号の説明】
【0101】
10 有機光電変換素子
20 基板
32 第1電極
34 第2電極
40 活性層
42 電子供与性層
44 電子受容性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を2個以上有するフラーレン誘導体。
【化1】


(式中、C及びCはフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。Rはアルキル基を表す。Rは1価の有機基を表す。aは1〜5の整数を表す。前記Rが複数個存在する場合には、該R同士は互いに異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記式(2)で表される、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【化2】


(式中、A環は炭素数が60以上であるフラーレン骨格を表す。C、C、R、R及びaは、前記式(1)における定義と同義である。2個存在する前記Rは、互いに異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)で表される構造が、下記式(3)で表される構造である、請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
【化3】


(式中、C、C、R及びRは、前記式(1)における定義と同義である。)
【請求項4】
前記Rがメチル基である請求項1〜3のいずれかに記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
前記Rがアルキル基、アルコキシ基、アリール基、1価の複素環基及びハロゲン基からなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項6】
前記Rがメトキシ基である、請求項5に記載のフラーレン誘導体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を電子受容性化合物として含む組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体と電子供与性化合物とを含む組成物。
【請求項9】
前記電子供与性化合物が高分子化合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、
前記一対の電極間に挟持された請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含む活性層と
を備える有機光電変換素子。
【請求項11】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、
前記一対の電極間に挟持された請求項7又は8に記載の組成物を含む活性層と
を備える有機光電変換素子。
【請求項12】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、
前記一対の電極間に挟持される活性層であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体を含む電子受容性層及び該電子受容性層に接合される電子供与性化合物を含む電子供与性層を有している前記活性層と
を備える有機光電変換素子。
【請求項13】
フラーレンと、N−ヘキサデシルグリシン、N−オクチルグリシン、N−エチルグリシン及びN−メチルグリシンを含む群から選ばれるグリシン誘導体と、2−メトキシアルデヒド、2−メチルアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒドを含む群から選ばれるアルデヒド化合物とを、溶媒に加えて加熱還流して反応させる工程と、
前記溶媒を除去し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ及び分取薄層クロマトグラフィにより分離精製する工程と
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体の製造方法。
【請求項14】
前記グリシン誘導体をN−エチルグリシンとし、前記アルデヒド化合物を2−メトキシベンズアルデヒドとする、請求項13に記載のフラーレン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−181719(P2011−181719A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44972(P2010−44972)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】