説明

フリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物

【課題】本発明は、塗装品と同等のフリップフロップ性メタリック感のある熱可塑性樹脂成形品を得るために、フリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】アスペクト比10〜100のアルミニウム粉0.5〜49.9重量%とアスペクト比10〜100の干渉パールマイカ0.1〜49.5重量%及び熱可塑性樹脂50〜99.4重量%の割合で配合してフリップフロップ性メタリック感を有する成形品に用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、車輌用、家電製品などの各種成形材料として塗装品と同等なフリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイカ製パール顔料を使用し単なる金属光沢を有する方法(特開平5−93091号公報)は知られている。
一方、通常のメタリック感を伴った塗装による製品は、単なる金属光沢に止まらず、視線の方向で色相が変化して見える。この視線の方向による異方性は干渉現象によって起こるものであり、これを一般にフリップフロップ性と呼ばれている。
特に、淡い有彩色着色を施したメタリック塗装品は独特のフリップフロップ性を有し、図1のような変角分光測色で測色した場合、ハイライト側、シェード側での有彩色発色が顕著で、中間角度では有彩色発色効果は低下する現象が見られる。しかしながら、熱可塑性樹脂の着色成形品の表面に塗装品と同様のフリップフロップ性を発現させることは非常に困難で、ハイライト側、シェード側どちらか一方の発色が顕著の場合が多く、塗装品と同様のフリップフロップ性メタリック感のある成形品を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平5−93091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、塗装品と同等のフリップフロップ性メタリック感のある熱可塑性樹脂成形品を得るために、フリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
塗装品において、フリップフロップ性メタリック感が現れるのは、塗装層にメタリック材が高含有量で配合されているためである。しかしながら、熱可塑性樹脂成形品の表面層にのみ、メタリック材を塗装品と同一高含有量で配合することは不可能である。本質的に熱可塑性樹脂成形品は表面層と内部の成分はほぼ同一である。成形品内部まで、メタリック材を高含有量にすると樹脂の物性が低下する。
本発明者らは、このような樹脂成分中のメタリック材の含有量を減少しても、フリップフロップ性メタリック感が現れる他の配合材料を鋭意研究の結果、干渉パールマイカがこの得意な作用を発揮することを見いだし、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の各項の発明よりなる。
(1)アスペクト比10〜100のアルミニウム粉0.5〜49.9重量%とアスペクト比10〜100の干渉パールマイカ0.1〜49.5重量%及び熱可塑性樹脂50〜99.4重量%の割合で配合し、さらに着色剤を配合してなる着色組成物であって、該着色組成物の成形品がフリップフロップ性メタリック感を有することを特徴とする成形品用熱可塑性樹脂組成物。
(2)アスペクト比10〜100のアルミニウム粉0.5〜49.8重量%、アスペクト比10〜100のマイカ0.1〜49.4重量%、アスペクト比10〜100の干渉パールマイカ0.1〜49.4重量%を熱可塑性樹脂50〜99.3重量%の割合で配合してなる着色組成物であって、該着色組成物の成形品がフリップフロップ性メタリック感を有することを特徴とする成形品用熱可塑性樹脂組成物。
(3)着色組成物を射出成形して得た50×90×2mmの色相評価プレートを、該色相評価プレートに対して垂直から45°の角度で光源を照射して該照射角度の正反射方向を0°として、光源側に15°、25°、45°、75°、110°の角度で受光したものをCIE(L*、a*、b*)表色系で変角分光側色計によって側色し、C*=(a*2+b*21/2式に基いて彩度C*を算出し、45°のC*が、15°及び110°のC*より、小さいフリップフロップ性メタリック感を有する(1)項又は(2)記載の成形品用熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0005】
本発明フリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物は、干渉パールマイカをアルミニウム粉と併用することにより、塗装品と同等のフリップフロップ性メタリック感のある成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ABS・PCアロイ、プロピレン−エチレン共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等を使用することができる。
本発明の樹脂組成物から成形品を得る方法は、射出成形、押出成形、圧空成形、プレス成形、ブロー成形で常法に従って成形することができる。
本発明に樹脂組成物に配合するアルミニウム粉は、金属アルミニウム粉をボールミル等により粉砕したもので、粒径10〜200μm、好ましくは20〜100μmのものを使用することができる。
本発明に用いるアルミニウム粉は、アスペクト比10〜100、好ましくは20〜60の形状のアルミニウム粉を使用することができる。
一般に、パールマイカ顔料はその色調効果によって、(a)シルバータイプ、(b)干渉タイプ及び(c)着色タイプの3つのグループに大別されている。
シルバータイプは、雲母を二酸化チタンで被覆したものであり、この二酸化チタンの厚みを次第に増加していくと、厚みの増加とともに、色相が金色、赤色、紫色、青色及び緑色の順で反射してくる光の色が変化する。このようにチタン層の厚みを増して行く途中で、反射光の色が干渉する状態のものが干渉タイプ(虹彩色タイプ)である。二酸化チタン以外の金属酸化物であっても、夫々の種類に応じた適度の厚さのコーティングによって、干渉タイプのパールマイカ顔料を形成することができる。
また、着色タイプは、干渉性がなく雲母を酸化鉄、酸化チタン+酸化鉄で被覆して、黄色もしくは金色に着色したものである。
本発明樹脂組成物に用いる干渉パールマイカとしては、天然マイカや合成マイカの表面に、二酸化チタン、酸化鉄その他クロム、コバルト、錫、ジルコニウム等の金属酸化物の薄膜をコーティングして干渉色効果を付与したパールマイカを使用することができる。特に、本発明の樹脂組成物において使用される干渉パール顔料は、雲母の表面に二酸化チタンを210〜400μmの薄膜状に被覆したものが特に望ましい。
本発明に用いる干渉パールマイカの粒径範囲は、アスペクト比10〜100、好ましくは20〜60で、平均粒径1〜80μm、好ましくは、5〜30μmのものを使用することができる。なお、これらの干渉パールマイカはシランカップリング剤やチタンカップリング剤等で予め表面処理したものが均一に樹脂内部に分散する点で望ましい。
また、本発明に所望によって用いる干渉性のないマイカ顔料は、マイカ粉末、シルバータイプマイカ顔料又は着色パールマイカ顔料を使用することができる。すなわち、微細な雲母粉末若しくは光沢を発現させるために雲母表面をチタン処理したパールマイカ顔料である。
本発明に用いるマイカ顔料は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等で予め処理することができる。
本発明の樹脂組成物では、熱可塑性樹脂50〜99.4重量%、干渉パールマイカ顔料0.1〜49.5重量%及びアルミニウム粉0.5〜49.9重量%、好ましくは、熱可塑性樹脂60〜94重量%、干渉パールマイカ顔料3〜30重量%及びアルミニウム粉3〜30重量%を配合することができる。
また、本発明樹脂組成物のマイカ及び干渉パールマイカを併用する場合は、熱可塑性樹脂50〜99.3重量%、アルミニウム粉0.5〜49.8重量%、マイカ0.1〜49.4重量%及び干渉パールマイカ0.1〜49.4重量%、好ましくは、熱可塑性樹脂60〜91重量%、アルミニウム粉3〜30重量%、マイカ3〜30重量%及び干渉パールマイカ3〜30重量%の割合で配合することができる。
これらの配合物の添加量が、上記の範囲未満の場合は、フリップフロップ性メタリック感が不十分となり、範囲を超えると、樹脂成形品の物性が低下するので好ましくない。
これらの樹脂配合物以外に本発明樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、有機顔料、無機顔料、無機充填剤、内部潤滑剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤等の他の物質も添加することができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、インダンスレン系顔料、ペリレン系顔料等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、弁柄、鉄黒、黄鉛、コバルトブルー、カーボンブラック等が挙げられる。
【実施例】
【0007】
本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
実施例1〜2
粒径30μm、平均アスペクト比43のアルミニウム粉、平均粒径33μmのブルー干渉パールマイカ顔料及び大日精化工業(株)製ポリオレフィン用無機系着色剤である群青を第1表に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合した。この組成物を押出機により220〜240℃の温度で溶融混練して樹脂中にアルミニウム粉と干渉パールマイカ顔料を十分に分散し、ペレット状熱可塑性樹脂着色組成物を作成した。さらに、この着色組成物を平板金型を装着した射出成形機で220〜240℃で射出成形して50×90×2mmの成形品を作成し、色相評価プレートとした。
比較例1
鋼板に、アルミニウム粉、青顔料を混合した塗料で塗装して淡いブルー色に着色された塗装板を作成した。塗装板の色相評価をして、実施例と比較した。
比較例2
粒径30μm、平均アスペクト比43のアルミニウム粉及び大日精化工業(株)製ポリオレフィン用無機系着色剤である群青を第1表に示す割合で配合し、他は実施例と同様にして色相評価プレートを作成した。
このようにして形成した色相評価プレートを、下記の測定方法によりCIE(L*、a*、b*)表色系における色相の光学測定を評価し、その結果を第1表に示す。
色相:変角分光測色計[X−Rite社製、MA68型、D65光源、10度視野]を用い、図1に示すように色相評価プレートに対し垂直から45°の角度で光源を照射し、その照明角度の正反射方向を0°とし、そこから光源側に15°、25°、45°、75°、110°の角度で受光したものをCIE(L*、a*、b*)表色系で測色し、明度(L*)及び彩度(C*)の値を測定した。
なお、彩度C*は{(a*)2+(b*)21/2で計算した。
【0008】
【表1】

【0009】
実施例3
粒径30μm、平均アスペクト比43のアルミニウム粉、平均粒径33μmのゴールド干渉パールマイカ顔料及び大日精化工業(株)製ポリオレフィン用無機系着色剤である焼成黄を第2表に示す割合でポリプロピレン樹脂に配合した。この組成物を押出機により220〜240℃の温度で溶融混練して樹脂中にアルミニウム粉と干渉パールマイカ顔料を十分に分散し、ペレット状熱可塑性樹脂着色組成物を作成した。さらに、この着色組成物を平板金型を装着した射出成形機で220〜240℃で射出成形して50×90×2mmの成形品を作成し、色相評価プレートとした。
比較例3
鋼板に、アルミニウム粉、黄顔料を混合した塗料で塗装して淡いイエロー色に着色された塗装板を比較例として提示した。
比較例4〜5
粒径30μm、平均アスペクト比43のアルミニウム粉及びゴールド干渉パールマイカ顔料、または大日精化工業(株)製ポリオレフィン用無機系着色剤である焼成黄を第2表に示す割合で配合し、他は実施例と同様にして色相評価プレートを作成し、前記と同様の色相評価を行った。その評価結果を第2表に示す。
【0010】
【表2】

【0011】
実施例の結果より、本発明は、樹脂組成物に干渉パールマイカを配合することにより、成形品の表面のハイライト側での発色を促し、彩度C*の値は15°及び110°のC*より小さく、45°の変角角度において極小値を示していて、各変角角度において、着色メタリック塗装品と同等のフリップフロップ性メタリック感を有する成形品用熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
一方比較例の場合は、各変角角度の彩度C*の数値には、中間に極小値はなく、変角角度の増加とともに、彩度C*の数値は増加又は減少している。
【産業上の利用可能性】
【0012】
塗装品と同等のフリップフロップ性メタリック感を有する成形品が要求される自動車、車輌用、家電製品などの成形品に利用可能性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例の色相の測定方法を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比10〜100のアルミニウム粉0.5〜49.9重量%とアスペクト比10〜100の干渉パールマイカ0.1〜49.5重量%及び熱可塑性樹脂50〜99.4重量%の割合で配合し、さらに着色剤を配合してなる着色組成物であって、該着色組成物の成形品がフリップフロップ性メタリック感を有することを特徴とする成形品用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
アスペクト比10〜100のアルミニウム粉0.5〜49.8重量%、アスペクト比10〜100のマイカ0.1〜49.4重量%、アスペクト比10〜100の干渉パールマイカ0.1〜49.4重量%を熱可塑性樹脂50〜99.3重量%の割合で配合してなる着色組成物であって、該着色組成物の成形品がフリップフロップ性メタリック感を有することを特徴とする成形品用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
着色組成物を射出成形して得た50×90×2mmの色相評価プレートを、該色相評価プレートに対して垂直から45°の角度で光源を照射して該照射角度の正反射方向を0°として、光源側に15°、25°、45°、75°、110°の角度で受光したものをCIE(L*、a*、b*)表色系で変角分光側色計によって側色し、C*=(a*2+b*21/2式に基いて彩度C*を算出し、45°のC*が、15°及び110°のC*より、小さいフリップフロップ性メタリック感を有する請求項1又は請求項2記載の成形品用熱可塑性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−9034(P2006−9034A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270119(P2005−270119)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【分割の表示】特願平11−134795の分割
【原出願日】平成11年5月14日(1999.5.14)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】