説明

フリーラジカル重合方法

【目的】 高い重合転化率で、経済的に、狭い多分散性を有する熱可塑性樹脂を製造するために好適なフリーラジカル重合方法を提供する。
【構成】 例えば過酸化ベンゾイルのようなフリーラジカル開始剤と、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシのような安定フリーラジカル作用剤と、少なくとも1つの例えばスチレンのような重合モノマーとの混合物を加熱し、熱可塑性樹脂を得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリマーの製造方法に関し、特に、重合方法及びそれによって形成されるポリマーに関する。実施例においては、本発明は、単数又は複数の熱可塑性ポリマー樹脂を合成するための安定フリーラジカルで調節された方法に関し、全ての重合鎖形成がほぼ同時に開始されるような条件下において、フリーラジカル開始剤と、安定フリーラジカル作用剤と、少なくとも1つの重合性モノマー化合物との混合物を、効果的な時間で加熱すること;重合を効果的に停止するために混合物を冷却すること;熱可塑性樹脂生成物を単離すること;並びに任意的にはこのポリマー樹脂を洗浄及び乾燥することを含む、少なくとも1つのモノマー化合物から得られるこの樹脂は、狭い多分散性(polydispersity)即ちMw:Mn比(ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)によって規定される狭い分子量分布及び、容易にコントロールできるモード性(modality)を有する。実施例において、本発明の方法により合成されるポリマー樹脂は、本質的に単一モード性(monomodal) であり、加熱工程即ち組み合わされた開始及び重合工程の繰り返しは、単一モード性樹脂の混合物を得る手段を提供し、この樹脂は、狭い多分散性並びに既知又は選択可能なモード性の両特性を有する組成的に同一の樹脂タイプである。他の実施例において、本発明の方法は、数キログラム若しくは大規模で、バルク又はニートフリーラジカル重合方法を行う手段を提供する。前述の実施例は、1つの若しくは単一ポット反応器条件において実施し得る。他の実施例では、重合鎖生長は擬似リビング機構によって進行し、分子量分布若しくは多分散性は狭く維持される一方で、例えば10,000未満から約200,000 まで、かなり低くからかなり高い様々な分子量の樹脂を提供することができる。他の実施例では、ブロック共重合体は、前述の安定フリーラジカルで調節されたフリーラジカル重合方法によって合成されることができ、ここで形成される各ブロックは、反応モノマーにより長さが十分に規定され、形成された各ブロックは、狭い分子量分布を備えている。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】既知の重合方法の中で、分子量分布若しくは多分散性の狭い重合体又は共重合体を製造する好ましいやり方はアニオン方法によるものである。アニオン重合方法が、酸素雰囲気及び水分の非存在下において行わなければならず、また、操作が難しく危険な開始剤試薬を必要とし、従って、このような重合方法は、一般に小さいバッチ反応器に制限されてしまうため、工業的適用における狭い多分散性を有する樹脂の使用及び有効性は制限される。更に、使用されるモノマー及び溶媒は、高い純度及び無水物のものでなければならず、これらの必要性を有しない場合よりもアニオン方法をより高価にさせる。従って、アニオン重合方法は困難で且つ高価である。前述のアニオン重合方法の欠点及び不利益を解決する狭い分子量分布の樹脂を提供するフリーラジカル重合方法が必要とされている。
【0003】フリーラジカル重合方法は、典型的に用いられるモノマー又は溶媒における不純物に対して化学的に感受性が低く、水に対しては完全に感受性がない。懸濁、溶液、バルク若しくはニート、乳化並びに関連方法による狭い多分散性樹脂を製造するために好適な、経済的なフリーラジカル重合方法が、長い間必要とされてきた。
【0004】フリーラジカル重合方法によって製造される共重合体は、元来、一般に約5以上の広い分子量分布若しくは多分散性を有する。その1つの理由は、フリーラジカル開始剤は数分から多時間の比較的長い半減期を有し、また、重合鎖は全て、同時に開始することはないからであり、このような開始剤は、重合工程の間のどの時期においても様々な長さの生長鎖を提供する。他の理由としては、フリーラジカル方法における生長反応鎖が、カップリング及び不均化反応として知られる工程において互いに反応することができるからである。この両工程は、連鎖停止反応である。このような反応において、長さが変化している鎖は、反応工程の間の異なる時期に停止され、非常に小さい長さから非常に大きい長さに亘って広く変化した重合鎖を含む樹脂となる。フリーラジカル重合方法が狭い分子両分布を生成することが可能となる場合、それから全ての重合鎖が殆ど同時に開始されなければならず、また、カップリング又は不均化反応工程による早期停止を避けることができなければならない。
【0005】オーツら、Makromol Chem., 速報,3,127(1982)では、フリーラジカル重合方法によるブロック共重合体の生成手段としてのイニファタ(iniferter) の使用が紹介された。この反応に提案された機構は、疑似リビング生長フリーラジカル鎖が存在すること及び時間と共に生長し続けることを示唆した。イニファタの使用に関連して、2つの主な欠点がある。イニファタは、かなりゆっくりと反応する傾向があり、モノマーからポリマーへの重合転化率若しくは重合の度合は低く、例えば20時間の反応時間後であっても約40%である。他方の欠点は、生長鎖の末端をキャップするフリーラジカルトラップが反応過程の間の如何なる時においても、新しい鎖の開始能を有することであり、これは、例えばS.R.ターナー(Turner)、R.W.ブレビンス(Blevins) の Polymer Reprints,29(2) 9月1988年を参照のこと。この開始は、重合期間の様々な時で開始される新しい鎖を得ることに繋がり、その結果、多分散性の拡大を引き起こす。前述のオーツの参考文献にあるこの手法は、疑似リビングフリーラジカル生長鎖を用いる点で新規であるが、狭い分子量分布樹脂、特に高分子量の重合体の合成には適用できなかった。
【0006】安定フリーラジカルの使用は、フリーラジカル重合の禁止剤としてよく知られている。例えばG.モード(Moad)ら、Polymer Bulletin 6,589 (1982) を参照のこと。例えば、G.モード(Moad)ら、J.Macromol.Sci.-Chem.,A17(1),51,(1982)による研究は、低温度例えば90℃未満で且つモノマーからポリマーへの低い転化率で行われた、フリーラジカル重合の禁止剤としての安定フリーラジカルの使用について報告している。
【0007】鎖が重合過程において連続して開始され、カップリング工程による鎖停止もまた起こるというスチレンの仮定的なフリーラジカル重合において、例えばG.G.オディアン(Odian) 、Principles of Polymerization,280〜281 ページ、第2版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社、1981年に記述されたような計算は、論理的に可能性的に得ることができる最も狭い多分散性が1.5 であると示した。実際には、1.5 よりもかなり大きい多分散性が確実に得られる。2.0 と2.4 の間の多分散性は、スチレンのフリーラジカル単独重合に典型的である。共重合体系の場合では、4より大きい多分散性が一般に得られる。
【0008】本発明の安定フリーラジカル重合系は、ポリスチレンでは1.15と1.25の間及び種々の共重合体系では1.5 程度の低さの多分散性を迅速に提供し得る。本発明の安定フリーラジカル重合系により、アニオン重合において得られる場合に匹敵する多分散性がもたらされる。
【0009】1986年4月8日発行のソロモン(Solomon) らの米国特許第 4,581,429号は、短連鎖又はオリゴマー的単独重合体並びにブロック及びグラフト共重合体を含む共重合体を生成するために重合体鎖の生長を制御するフリーラジカル重合方法を開示する。この方法は、式(部分)=N−O−Xを有する開始剤を用いる。ここでXは、不飽和モノマーの重合可能なフリーラジカル種である。得られた重合体産物の分子量は、約 2,500〜7,000 であり、モノマーからポリマーへの低い転化率において一般的には約 1.4〜1.8 の多分散性を有する。反応は、典型的には、低い転化率であり、約100 ℃未満の比較的低い反応温度を用い、多段階で用いられる。
【0010】1991年10月22日発行のデュルリナー(Druliner)らの米国特許第 5,059,657号は、ジアゾテート、サイアネート若しくは次亜硝酸塩と、N−クロロサクシンイミド、N−ブロモサクシンイミド若しくはジアゾニウム塩と、モノマーとを接触させることによるアクリル酸及びマレイミドモノマーの重合方法を開示する。生成されたポリマーは、更に重合を開始することができ、これにはブロック共重合体形成における使用も含まれる。
【0011】従来の技術におけるフリーラジカル重合反応方法は、種々の重大な問題が存在した。例えば生成される重合体の多分散性及びモード性の予想及び制御が困難である。これらのフリーラジカル重合方法は、一様に、高い重量平均分子量(Mw)と低い数平均分子量(Mn)を有し、広い多分散性となる重合体を生成する。更に、従来の技術におけるバルク又はニートフリーラジカル重合方法は、重合反応が発熱反応なので、過剰な発熱量を発生する傾向があり、反応媒体の粘度が増加する場合には、熱の放散がより困難になる。これは、Principles of Polymerization, G.オディアン、第2版、ウィリー・インターサイエンス社、ニューヨーク州、1981年、272 頁に開示され説明されているようなトロムスドルフ効果と呼ばれる。更にまたフリーラジカル重合方法の発熱性は、しばしば、スケールアップ時の反応物の濃度又は反応器の大きさを厳しく制限する限定要素となる。
【0012】1991年12月23日に出願された同時継続出願 USSN 07/812,082号(D/90515)では、フリーラジカル懸濁重合反応が、更に、攪拌器、邪魔板、加熱コイル及び反応壁におけるポリマーの好ましくない沈着物を生じるということを説明している。ある条件下では、懸濁物は、反応の間に凝集し、反応器から取り除くことが困難、高価及び危険である好ましくない重合ゲル物質の大きな沈着物が生成される。
【0013】その上、慣用のフリーラジカル重合方法におけるゲル体形成は、広い分子量分布及び/又は生成樹脂のろ過、乾燥及び操作において遭遇する困難性をもたらし得る。
【0014】
【課題を解決するための手段】これら及び他の不利益は、本発明の方法によって排除又は最小化される。
【0015】従って、経済的でスケールアップ可能なフリーラジカル重合技術による狭い多分散性重合樹脂の製造に対する要求が残されており、またこれは、ポリマーがそれらの多く又は全ての所望の物理的特性、例えば、硬度、低ゲル含量、加工性、透明度、高グロス耐久性等を維持し、一方では、従来のフリーラジカル重合方法論に関連したポリマー樹脂生成物のゲル形成、発熱性、容量制限及び多段階反応系、精製、性能特性等における問題を排除する。
【0016】本発明の重合方法及び熱可塑性樹脂生成物は、多くの適用、例えば電子写真画像形成プロセスにおいて用いられるトナー樹脂又は、単一モデル若しくは単一モデルの混合物の狭分子量樹脂若しくは、各ブロック成分において狭い分子量分布を有するブロック共重合体が、熱可塑性樹脂及びコーティング技術として好適である場合を含む多くの特別な適用として有効である。
【0017】本発明は、例えば、フリーラジカル開始剤と、安定フリーラジカル作用剤と、少なくとも1つの重合性モノマー化合物との混合物を、高い重合転化率を有する単数又は複数の該熱可塑性樹脂を形成するために、加熱すること;該混合物を冷却すること;任意的には、単数又は複数の該熱可塑性樹脂を単離すること;並びに、任意的には、単数又は複数の該熱可塑性樹脂を洗浄及び乾燥し、またここで、単数又は複数の熱可塑性樹脂が狭多分散性を備えていることによって、狭い多分散性ポリマー樹脂を形成することによる従来の技術の問題及び不利益を克服する。
【0018】本発明の他の態様では、フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第1の混合物を第1の中間生成物樹脂を形成するために加熱すること;任意的には、該第1の混合物を冷却すること;フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第2の混合物を第1の中間生成物樹脂へ結合混合物を形成するために加えること、ここで、第2の混合物の重合性モノマー化合物は第1の混合物の重合性モノマー化合物と同一であり、第2の混合物のフリーラジカル開始剤及び安定フリーラジカル作用剤は第1の混合物のフリーラジカル開始剤及び安定フリーラジカル作用剤と、同一又は異なっている;第1の中間生成物樹脂と添加された第2のモノマーから形成された第1の生成物樹脂と第2のモノマーから形成された第2の生成物樹脂とを含む熱可塑性樹脂を含む第3の混合物を形成するために、該結合混合物を加熱すること;該第3の混合物を冷却すること;任意的には、第3の混合物から熱可塑性生成物樹脂の混合物を単離すること;並びに、任意的には、熱可塑性樹脂の混合物を洗浄し乾燥すること、を含む熱可塑性樹脂の製造のためのフリーラジカル重合方法であり、ここで、第1の生成物樹脂及び第2の生成物樹脂は、各々狭い多分散性を備え、熱可塑性樹脂の混合物は、2に等しいモード性を有する。例えば3〜約20の高いモード性は、最終冷却及び単離ステップの前に、モノマー、フリーラジカル開始剤及び安定フリーラジカル作用剤の新しい混合物の連続した添加によって、所望により、簡便に達成され得る。
【0019】本発明の他の態様では、フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第1の混合物を第1の中間生成物樹脂を形成するために加熱すること;任意的には、該第1の混合物を冷却すること;任意的には、第1の中間生成物樹脂を単離すること;少なくとも1つの重合性モノマー化合物を含む第2の混合物を第1の中間生成物樹脂へ結合混合物を形成するために加えること、ここで、第2の混合物の重合性モノマー化合物は第1の混合物の重合性モノマー化合物と異なっている;第1の中間生成物樹脂及び添加された第2のモノマーから形成された第1の生成物樹脂を含むブロック共重合体熱可塑性樹脂を含む第3の混合物を形成するために、該結合混合物を加熱すること;該第3の混合物を冷却すること;任意的には、第3の混合物から熱可塑性生成物樹脂の混合物を単離すること;並びに、任意的には、該ブロック共重合体熱可塑性樹脂を洗浄し乾燥すること、を含む単数又は複数のブロック共重合体熱可塑性樹脂の製造のためのフリーラジカル重合方法であり、ここで、ブロック共重合体は、狭い多分散性と1に等しいモード性とを有する。最も高い純度及びブロック結合性若しくは均質性が所望される場合、即ち、第1の混合物の単数又は複数の未反応モノマー残留物が、重合性モノマー化合物の第2の混合物から形成される生長重合鎖と連続して反応し、これに組み込まれ得る場合に、中間生成物樹脂の単離が望ましい。従って、本発明の方法のよるブロック共重合体の製造において、単離例えば重合反応の中間生成物の沈殿による単離は、高い純度が所望される場合又は重合の度合がブロック若しくはマルチブロック重合反応における約70〜90%より少ない場合に、望ましい。
【0020】本発明の更に他の態様では、モノマーからポリマーへの高い転化率で熱可塑性樹脂を形成するために、過酸化物フリーラジカル開始剤と窒素酸化物(nitroxide) の安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物の水懸濁混合物を有効期間で加熱すること;該混合物を冷却すること;熱可塑性樹脂を単離すること;並びに、任意的には該熱可塑性樹脂を洗浄し乾燥することを含む熱可塑性樹脂の製造のためのフリーラジカル重合方法であり、ここで、該熱可塑性樹脂は約 1.1〜約 1.5の狭い多分散性及び1のモード性を有する。
【0021】前述の方法の態様では、重合体及び共重合体樹脂組成物が得られ、ここで単数及び複数の樹脂は約10,000〜200,000 の重量平均分子量(Mw)及び約9000〜約100,000 の数平均分子量(Mn)並びに約 1.1〜 2.0の多分散性を有する。
【0022】理論によって限定されることを望まないが、本発明の重合反応方法が、約100℃又はそれ以上の、用いられる開始剤に依存する特定の温度で実施される場合、全ての重合鎖は、ほぼ同時に重合開始されると予想される。これは、狭い多分散性を有する重合鎖生成物を形成可能にする第1の理由である。
【0023】従来技術のフリーラジカル重合系の条件下において多く見受けられる前述の望ましくない連鎖カップリング又は不均化停止反応は、リビングフリー連鎖の有効濃度や利用度が極めて小さいので、本発明の条件下において抑制される。更に、本発明の安定フリーラジカル作用剤は重合を開始せず、新しい鎖は、全重合鎖が略同時に重合開始される初期の後では重合を開始しない。
【0024】本発明の生長鎖は、安定フリーラジカル作用剤が生長鎖に添加され、該鎖が一時的だが可逆的に停止されるので、擬似リビングと呼ばれる。下記の反応スキームに示されているように、生長重合鎖は、一時的に停止若しくは中断される場合と生長する若しくはリビングである場合との間において、変動するか又はその平衡状態にある。熱エネルギーが生長重合鎖と安定フリーラジカル(●SFR)作用剤を連結している結合部即ち、例えば安定フリーラジカル作用剤(●SFR)が生長鎖に共有結合している該スキームのアダクトに反応系から供給される場合、例えば置換スチレンはホモリティカルに開裂し、それによって、[ ] で囲まれて表されているリビング鎖末端ラジカル種を一時的に生成し、他のモノマー単位を該鎖に挿入又は添加可能にし、更に、約80〜 100℃を越える熱に不安定なアダクト若しくは潜在フリーラジカル鎖となるよう安定フリーラジカル作用剤によって、拡散調節による測定で短命的に、とはいえ即座に、再び停止又は保護される。フリーラジカル開始剤、例えば過酸化ベンゾイルは、●INITとしてスキームに表されている。ここで用いられる "保護されている”という語は、鎖ラジカル種が、無差別よりもむしろ選択的なモノマーとの後続反応に有効であることを示唆することを意味している。対照的に、非調節フリーラジカル重合鎖即ち、安定フリーラジカル作用剤の非存在下でのフリーラジカル重合方法は、全反応を通して、反応性若しくは "オープン”鎖末端を有する。
【0025】
【化1】


【0026】本発明の方法は、十分に確定された熱可塑性樹脂の混合物を提供するために、モノマー添加若しくは重合ステップ並びに、追加安定フリーラジカル及びフリーラジカル開始剤の添加を、連続的にN回反復する方法を、その態様に更に含み、ここで、該混合物の各樹脂は、別個の且つ狭い多分散性を有するポリマーを含み、また該混合物はN+1に等しいモード性を有し、ここで、Nは開始剤、安定フリーラジカル作用剤及びモノマーの添加ステップが反復される回数である。
【0027】本発明は、下記の態様において特定のいくつかの利益を提供する。本発明の方法によって、ポリマー生成物の多分散性は、約 1.1〜約 2.0の間で安定フリーラジカル作用剤のフリーラジカル開始剤モル濃度に対する割合の変化によるモノマー/コモノマー系に依存して変化することができる。本発明の重合方法条件がSFR添加物を用いることなく行われる場合、広い分子量の樹脂が得られる。
【0028】安定フリーラジカル作用剤調節重合反応は、種々の媒質、例えば、懸濁、エマルジョン、ニート若しくは溶媒の非存在下におけるバルク、又は水性若しくは非水性溶液において、トルエン及びキシレンのような高沸点溶媒を好ましく用いることによって実施され得る。
【0029】ポリマー形成のためにモノマー又は混合モノマーの反応において、反応時間は、約1以上から60時間、好ましくは約2〜10時間の間及び最適には約4〜7時間で変えることができる。最適反応時間は、温度、反応の容量及びスケール並びに、選択される重合開始剤及び安定フリーラジカル作用剤の量及び型に依存して変え得る。
【0030】重合反応温度は、調節可能外部熱源を提供することによって、加熱ステップを通して比較的一定に保たれ、また、該温度は、約60〜約 160℃であり、好ましくは 100℃と 150℃の間、実施例において最も好ましいのは、約 120〜 140℃である。 160℃を越えて実施された反応は、多分散性の拡大を生じる傾向がある。反応容量は、経済的又は都合のよいスケールにおける添加、混合、反応及び生成樹脂の単離を簡単に可能にする如何なる大きさをも選択し得る。
【0031】フリーラジカル開始剤は、フリーラジカル重合方法を開始できる如何なるフリーラジカル重合開始剤とすることができ、過酸化ベンゾイルのような過酸化物開始剤及びアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤等を含む。用いられる開始剤濃度は、重合される全モノマー量の約 0.2〜 2.5重量%であり、樹脂の所望の分子量によって規定される。開始剤濃度が用いられるモノマーの重量モル等量に比例して減少された場合、熱可塑性樹脂生成物の分子量は増加する。
【0032】安定フリーラジカル作用剤は、如何なる安定フリーラジカルにもすることができ、窒素酸化物フリーラジカル例えば、PROXYL(2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニロキシ)及びその誘導体並びにTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ)及びその誘導体等が含まれる。これらの安定フリーラジカル作用剤物質は、例えばG.モード(Moad)ら、Tetrahedron Letters,22,1165 (1981)のような文献に、フリーラジカル重合開始剤としてよく知られている。しかし、本発明の重合条件下では、安定フリーラジカル作用剤は、通常の高反応性及び無差別中間フリーラジカル種を利用するために調節剤として機能する。
【0033】フリーラジカル開始剤(INIT)に対する安定フリーラジカル(SFR)作用剤のモル比は、約 0.4〜 2.5であり、好ましくは約 0.9〜 1.6の範囲内である。理論による制限を受けるように望まないとしても、実施例において、例えばTEMPOである安定フリーラジカル作用剤のフリーラジカル開始剤例えば過酸化ベンゾイルに対する約 1.3のモル比〔SFR:INIT〕は、この方法を成功させるために重要であると思われる。該〔SFR:INIT〕が高過ぎると、反応速度は著しく阻害される。該〔SFR:INIT〕が低過ぎると、反応生成物は所望していない増加された多分散性を有する。スチレンが本方法の安定フリーラジカル作用剤を用いずにポリスチレンへ重合される場合、単離された生成ポリマーは 2.0以上の多分散性を有する。
【0034】実施例において、モノマー濃度対安定フリーラジカル作用剤対フリーラジカル開始剤のモル比は、約 100: 0.2:1〜約10,000: 2.5:1であり、好ましくは約 300: 1.3:1〜約 7,000: 1.3:1の範囲内である。
【0035】実施例において、本発明の方法は、例えば約90重量%以上の、モノマーからポリマーへの高い転化率若しくは重合の度合を提供する。
【0036】実施例において、本発明の方法は、約10,000〜約200,000 の大きさの範囲の重量平均分子量のような、比較的高い重量平均分子量を提供する。
【0037】使用することができるモノマーは、フリーラジカル重合を行うことができる全てのモノマーであり、安定フリーラジカル反応アダクトと例えばイソプレン及びミルセンの高分子量重合生成物とをもたらす特定の安定フリーラジカル調節重合反応条件下で十分に反応的な、スチレン、置換スチレン及びその誘導体、例えばメチルスチレン、アクリレート、メタクリレート、ブタジエン及び全ての共役ジエンモノマーを含むが、これらに制限されない。
【0038】実施例において、モノマーの重合反応速度はプロトン放出酸(protic acid) を触媒量で添加することによって促進され得、反応時間は16時間を越える時間から約4〜7時間に減少され得る。このプロトン放出酸は、カチオン重合をも開始することはなく、有機スルホン酸及びカルボン酸からなる群より選ばれ、ここで樟脳スルホン酸が好ましい酸であり、またここで酸に対する安定フリーラジカルのモル比は、約1:1〜11:1であり、好ましい範囲は約 1.5:1と5:1との間である。前述の量を越える有機酸の過剰添加は、樹脂の多分散性を広げることになる。
【0039】実施例において、フリーラジカル開始剤、安定フリーラジカル作用剤及び重合性モノマーの混合物に、例えば3級アミン化合物を含む促進剤を添加することによって、フリーラジカル開始剤例えば有機過酸化物開始剤の解離速度が増加し、全重合鎖が殆ど同時に又は概ね同じ時に開始されることを確実にする。
【0040】本発明の安定フリーラジカル調節重合方法は、単一モード性樹脂の混合物を形成するために開始剤及び安定フリーラジカル作用剤の量を変えて、追加の単数又は複数のモノマーを遅延及び逐次添加することによって、同一反応容器内において、多数回繰り返され得る。ここで各成分は、特定の分子量を有し、狭い分子量分布を有し、またここで該混合物はN+1のモード性を有し、Nは、モノマー、開始剤及び安定フリーラジカル作用剤が添加された追加回数の数を表す。
【0041】60〜80℃以下まで重合反応を冷却することによって、安定フリーラジカル調節反応は効率よく急冷され又は停止される。モノマー、安定フリーラジカル及び開始剤は、新しい又は次の添加毎に加熱され、狭い分子量多分散性を有する新規な重合種を提供し、各新規な重合種は既に確立された他の重合種に依存しないで生長し続ける。
【0042】或いは、ブロック共重合体樹脂は、各所望のブロックが形成された後に、新規な単数又は複数のモノマーが新しいブロックを形成するために追加の開始剤又は安定フリーラジカル作用剤を伴わずに添加されることによって、また製造され得る。ここで各ブロック成分は長さを十分に規定され、狭い分子量分布を有し、繰り返しシークエンス及び組み込みのために選ばれたモノマーに依存した性質を有する。
【0043】追加の任意な既知の添加物は、妨害されない重合反応において用いられ得、例えば着色剤、滑剤、剥離剤又は移動剤、界面活性剤、安定剤、消泡剤等の、得られる生成物に対する更なる性能強化を提供し得る。
【0044】別々の単一モード性の混合物即ち十分明確なマルチモード分子量分布を有するポリマー樹脂は、その実施例において、改良された流れ及び弾性を含むメルトレオロジー特性;並びに、摩擦帯電、添加速度及び保存寿命安定性のような、特に電子写真トナー組成物にとって、いくつかの利益を提供する。
【0045】本発明の方法は、広範な様々なポリマーを形成するために選択されることができる。例えばポリスチレンを形成するためのスチレンモノマー又は、ポリブタジエンを形成するためのブタジエンを重合するために用いることができる。本発明の方法は、2以上の異なる重合性モノマーの混合物の重合を、共重合体を形成させるために選択することができる。このモノマー混合物には、例えばポリ(スチレン−ブタジエン)を形成するためのスチレン及びブタジエン、ポリ(スチレン−イソプレン)を形成するためのスチレン及びイソプレン、ポリ(スチレン−アクリレート)を形成するためのスチレン及びアクリレート、ポリ(スチレン−メチルメタクリレート)を形成するためのスチレン及びメチルメタクリレート等、並びに共重合体及び三元共重合体を含むこれらの組合せを挙げることができる。
【0046】図1は、 130℃におけるスチレンのバルク即ち無溶媒安定フリーラジカル作用剤調節重合により得られたポリスチレン単独重合体産物の転化率対分子量のプロットである。
【0047】このプロットは、この本発明の安定フリーラジカル作用剤調節方法を用いたバルク重合及び他の前述の反応媒質において略直線関係が維持されることを示している。例えば、20%転化率でのポリスチレン重合産物の数平均分子量は約4,000であり、65%転化率での数平均分子量は約10,000である。プロットの実線部は、既知の完全一致直線回帰方法によって得られ、既知のトロムスドルフ効果即ち非調節フリーラジカル重合反応において見られる既知のモノマー転化反応の発熱又は自動促進並びに分子量のランダム化から生じる複雑さを伴うことなく、本発明の重合方法が起こるという前述の確信を支持する。
【0048】実施例において、約1,000 〜約20,000の間の低い分子量を有する蝋質成分例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びそれらの混合物のようなアルキレン類をモノマーに取り込ませることができる。このような成分の使用は、特定のトナー用途において所望され得る。好適な低分子量ワックスは、米国特許第 4,659,641号に開示されている。
【0049】トナー組成物は、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体のような本発明の方法によって得られた樹脂粒子と、マグネタイト、カーボンブラック若しくはそれらの混合物並びに、シアン、イエロー、マゼンタ、グリーン、ブラウン、レッド若しくはこれらの混合物のような顔料粒子と、好ましくは約 0.5〜約5%の電荷増加添加剤とを、例えばワーナー・プライダーラ(Werner Pfleiderer) 社製のZSK53のようなトナー押出装置において添加及び加熱し、この装置から形成されたトナー組成物を取り出す多くの既知の方法によって製造され得る。冷却に続き、トナー組成物は、コルター・カウンタにより測定された直径として約25μm未満、好ましくは約6〜約12μmの体積メジアン直径を有するトナー粒子を得るために、例えばスターテバント(Sturtevant)・マイクロナイザを用いた粉砕に付される。次いで該トナー組成物は、トナー微粒子即ち約4μm未満の体積メジアン直径であるトナー粒子を除くために、例えばドナルドソン・モデルB分級機を用いて分級され得る。
【0050】本発明のトナー及び現像液組成物に選択された好適なトナー樹脂の説明例には、ポリアミド、スチレンアクリレート、スチレンメタクリレート、スチレン−ブタジエン、単独重合体及び2以上のビニルモノマーの共重合体を含むビニル樹脂が含まれ;ビニルモノマーはスチレン、p−クロロスチレン、ブタジエン、イソプレン及びミルセンを含み;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びブチルメタクリレートを含むモノカルボン酸のエステルのようなビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等が含まれる。好適なトナー樹脂は、スチレン−ブタジエン共重合体、その混合物等を含む。他の好適トナー樹脂は、スチレン/メタクリレート共重合体PLIOLITES(登録商標);米国特許第 4,558,108号の懸濁重合スチレン−ブタジエンを含む。
【0051】トナー組成物において、樹脂粒子は、十分であり有効な量、例えば約70〜約90重量%で存在する。従って、1重量%の電荷増加添加剤が存在し、10重量%の顔料又は着色剤例えばカーボンブラックがそこに含まれる場合、約89重量%の樹脂が選択される。また、電荷増加添加剤は顔料粒子上にコートされ得る。コーティングとして用いられる場合は、電荷増加添加剤は約 0.1〜約5重量%、好ましくは約 0.3〜約1重量%で存在する。
【0052】多くのよく知られた好適顔料及び染料は、トナー粒子に対する着色剤として選択されることができ、例えばREGAL330(登録商標)のようなカーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、マグネタイト又はそれらの混合物が含まれる。該顔料はカーボンブラックが好ましく、強く着色されたトナー組成物を与えるために十分な量で存在させるべきである。一般に、該顔料粒子は、該トナー組成物の全量を基本として、約1〜約20重量%、好ましくは約2〜約10重量%の量で存在する;しかし、これより少ない又はこれを越える量の顔料粒子も選択され得る。
【0053】顔料粒子がマグネタイトを含み、それによって、ある場合では一成分トナーとなり、ここでマグネタイトがマピコブラック(Mapico Black)として入手可能なものを含む鉄酸化物(FeO・Fe2 3 )の混合物である場合は、それらはトナー組成物中に約10〜約70重量%、好ましくは約10〜約50重量%で存在する。カーボンブラックとマグネタイトの混合物の場合は、約1〜約15重量%、好ましくは約2〜約6重量%のカーボンブラック及び、例えば約5〜約60、好ましくは約10〜約50重量%のMAPICO BLACK(登録商標)のようなマグネタイトが選択され得る。
【0054】本発明のトナー組成物には、流れ助剤を含む外添粒子もブレンドされ得る。この添加剤は、通常、その表面上に存在する。これらの添加剤の例には、AEROSIL(登録商標)のようなコロイダルシリカ、ステアリン酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セレン及びそれらの混合物を含む金属塩及び脂肪酸の金属塩が含まれ、これらの添加剤は、通常、約 0.1〜約5重量%、好ましくは約 0.1〜約1重量%の量で存在する。前述の添加剤のいくつかは、米国特許第 3,590,000号及び同3,800,588 号に説明されている。
【0055】本発明の更に他の態様では、AEROSIL(登録商標)のようなコロイダルシリカは、約1〜約30重量%、好ましくは10重量%で電荷剤によって表面処理され得、その後、これらはトナーへ 0.1〜10重量%、好ましくは 0.1〜1重量%で添加される。
【0056】また、該トナー組成物には、アライド・ケミカル・アンド・ペトロライト社(Allied Chemical and Petorolite Corporation)製のポリプロピレン及びポリエチレンのような低分子量ワックス、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社(Eastman Chemical Products,Inc.)製のEPOLENE N−15(登録商標)、サンヨウ化成株式会社製の低重量平均分子量ポリプロピレン及び同様の物質が含まれる。選択される購入可能ポリエチレンは約1,000 〜約1,500 の分子量を有し、一方、トナー組成物として有効な購入可能ポリプロピレンは、約 4,000〜約 5,000の分子量を有する。本発明に有効な多くのポリエチレン及びポリプロピレン組成物は、英国特許第 1,442,835号に説明されている。
【0057】低分子量ワックス物質は、本発明のトナー組成物又はポリマー樹脂ビーズに様々な量で存在するが、一般に、これらのワックスは約1〜約15重量%、好ましくは2〜10重量%で、該トナー組成物中に存在し、実施例においては、溶融ロール離型剤として機能し得る。
【0058】本発明の範囲内には、トナー樹脂粒子、キャリアー粒子、ここで説明された電荷増加添加剤及び顔料若しくは染料を含むカラートナー及び現像液組成物が包含される。特に、電荷増加添加剤を有する現像液組成物を用いたカラー画像の生成に関しては、顔料として選択され得るマゼンタ物質の説明例には、例えば、カラーインデックスにおいてCI 60710、CIディスパーズドレッド15として同定されている2,9−ジメチル置換キナクリドン及びアントラキノン染料、カラーインデックスにおいてCI 26050、CIソルベントレッド19として同定されているジアゾ染料等が含まれる。顔料として用いられ得るシアン物質の説明例には、カラーインデックスにおいてCI 74160、CIピグメントブルーとして挙げられている銅テトラ−4−(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、X−銅フタロシアニン顔料、カラーインデックスにおいてCI 69810、スペシャルブルーX−2137として同定されているアントラスレンブルー等が含まれる;一方、選択され得るイエロー顔料の説明例には、カラーインデックスにおいてCI12700、CIソルベントイエロー16として同定されているモノアゾ顔料であるジアリリドイエロー3,3−ジクロロベンジジンアセトアセトアニリド、カラーインデックスにおいてフォロンイエローSE/GLN、CIディスパーズドイエロー33として同定されているニトロフェニルアミンスルホンアミド、2,5−ジメトキシ−4−スルホンアニリドフェニルアゾ−4′−クロロ−2,5−ジメトキシアセトアセトアニリド及び、パーマネントイエローFGLがある。前述の顔料は、種々の好適な有効量でこのトナー組成物へ組み込まれる。ある実施例において、これらの着色顔料粒子は、トナー樹脂粒子の重量に対して、約2〜約15重量%の量で、トナー組成物に存在する。
【0059】現像液組成物の形成において、トナー粒子キャリアー成分、特にトナー組成物と静電的に反対の極性を有することができる成分と混合される。従って、該キャリアー粒子は、正に帯電しているトナー粒子をキャリアー粒子に接着し、これを包囲することを可能にする負の極性を有するように選択される。キャリアー粒子の説明例には、鉄粉末、スチール、ニッケル、鉄、銅亜鉛フェライトを含むフェライト等が含まれる。更に、米国特許第 3,847,604号に説明されているようなニッケルベリーキャリアーがキャリアー粒子として選択され得る。この選択されたキャリアー粒子は、コーティングされ又はされずに用いられ得、該コーティングは、一般に、スチレン、メチルメタクリレート及びトリエトキシシランのようなシランの三元共重合体を含み(米国特許第 3,526,533号、同 4,937,166号及び同4,935,326号に参照のこと)、例えばKYNAR(登録商標)及びポリメチルメタクリレート混合物(40/60)が含まれる。コーティング重量は、ここで示されたように変えることができる;しかし一般には、約 0.3〜約2重量%、好ましくは約 0.5〜約 1.5%のコーティング重量が選択される。
【0060】更に、キャリアー粒子は好ましくは球形の形状を採り、その直径は、一般に約50〜約 1,000μmであり、実施例においては約 175μmであり、それによって現像工程において、十分な密度及び、静電像に対する接着の阻害に対する十分な慣性を備えることができる。このキャリアー成分は、トナー組成物と種々の好適な組合せで混合されることができるが、最もよい結果は、トナーに対して1〜5重量部から10〜 200重量部までのキャリアーが選択される場合に得られる。
【0061】本発明のトナー組成物は、ここで示されたような多くの公知の方法によって製造されることができ、これには該トナー樹脂粒子、顔料粒子若しくは着色剤並びに電荷増加添加剤をブレンドする押出溶融、その後の磨砕が含まれる。他の方法は、スプレー乾燥、溶融分散及び押出加工のような当業でよく知られているものを含む。また、ここで示されているように、バルクトナー中に電荷増加添加剤を有しないトナー組成物が製造され、それから電荷添加表面処理コロイダルシリカが添加され得る。
【0062】トナー及び現像液組成物は、正又は負に帯電することができる慣用の受光体(photoreceptor) をその中に含む静電写真画像形成装置における使用に選択され得る。従って、該トナー及び現像液組成物は、米国特許第 4,265,990号に記載されているような、負に帯電することができる積層受光体と共に用いられ得る。画像形成及び印刷工程において選択され得る無機受光体の説明例には、セレン;砒素−セレン、テルル−セレン等の様なセレン合金;ハロゲンドープセレン物質;及びハロゲンドープセレン合金が含まれる。
【0063】トナー組成物は、通常、噴出及び分級され、次いで、約5〜約25μm、好ましくは約8〜約12μmの好適平均直径を有するトナー粒子となるように調製される。また、トナー組成物は、好ましくは、既知の電荷スペクトログラフによる測定としてμmあたり約 0.1〜約2フェムトクーロンの摩擦電荷を有する。トナーの混合時間は、既知の電荷スペクトログラフによる測定として、好ましくは、約5秒〜1分間であり、特には約5〜約15秒である。迅速な混合特性を有するこれらのトナー組成物は、例えば、電子写真画像形成装置において画像を現像することができ、この画像は、ある例において例えば20g毎分を越える場合の高いトナー投与速度であっても、実質的にその上にバックグラウンドの汚れがなく;更に、このようなトナー組成物は70コピー毎分を越えるような高速電子写真装置において選択され得る。
【0064】また、本発明の樹脂によって製造されたトナー組成物は、ある実施例における約 0.1〜約5重量%の電荷増加添加剤と共に、所望の狭い電荷分布、既知のファラデーケージ法の測定によるグラム当たり好ましくは10〜約40、より好ましくは約10〜約35マイクロクーロンの最適帯電摩擦電気量;及び、15秒未満、ある実施例においてより好ましくは約1〜約14秒の電荷スペクトログラフの測定による迅速な混合帯電時間を有する。
【0065】
【実施例】後述の実施例は、本発明の様々なスペシイズを更に規定するために提供され、これらの実施例は本発明の範囲を説明するものであって制限するのもではない。部及び%は、特に示していない場合を除き、重量換算である。
【0066】〔比較例I〕
安定フリーラジカル作用剤を用いないスチレンの懸濁フリーラジカル重合デュ・ポン社から購入したナフタレンスルホンネートであるアルカノール(48mg)の水溶液(100ml)中のリン酸三カルシウム(3.0g)懸濁物は、改変パール(Parr)反応器へ添加され、該反応器は、窒素によってパージされている間、30分にわたって80℃で加熱された。スチレン(78g、0.75mol )中の過酸化ベンゾイル(2.0g、0.008mol)の溶液は、窒素60ポンド毎平方インチ下で反応器へ添加され、該反応は、3時間20分間80℃で継続された。この反応は、それから95℃に加熱され、更に2時間20分間その温度で継続された。試料は、表1に示された時間間隔又は反応時間で反応器より取り出され、冷却され、懸濁化剤を溶解するために濃硝酸で処理され、水でリンスされ、乾燥された。中間物質及び最終ポリスチレン生成物の分子量特性は表1に示されている。多分散性(Mw/Mn)はPDと書かれた列に示されている。
【0067】〔実施例I〕
安定フリーラジカル作用剤(TEMPO)を用いたスチレンの懸濁フリーラジカル重合アルカノール(48mg)の水溶液(100ml)中のリン酸三カルシウム(3.0g)懸濁物は、改変パール反応器へ添加され、該反応器は、窒素によってパージされている間、30分にわたって80℃で加熱された。スチレン(78g、0.75mol )中の過酸化ベンゾイル(3.2g、0.013mol)及び安定フリーラジカル剤であるTEMPO(1g、0.0064mol )は、窒素60ポンド毎平方インチ下で反応器へ添加され、該反応は、3時間30分間80℃に維持された。この反応は、それから95℃まで加熱され、更に1時間20分間その温度で継続された。試料は、表2に示された時間間隔で反応器より取り出され、冷却され、懸濁化剤を溶解するために濃硝酸で処理され、水でリンスされ、乾燥された。中間物質及び最終ポリスチレン生成物の分子量特性は表2に示されている。
【0068】
【表1】


【0069】表1は、典型的な懸濁フリーラジカル重合反応(コントロール反応)の時間に伴う分子量の変化を示している。重合鎖が開始され、ミリ秒の間に生長して長くなり、それから停止されるので、高分子量重量体はすぐに得られる(Ia)。反応が継続し、モノマーが消費され、反応の後期に開始された重合鎖には、生長を続けることを可能にする遊離のモノマーが殆どなく、短い鎖長で停止するので、Mn及びMwが減少する。反応が進行し反応媒体の粘度が増加すると、樹脂の分子量分布(Mw/Mn)である多分散性(PD)が1.75から2.36に増加する。
【0070】
【表2】


【0071】表2は、安定フリーラジカル作用剤の存在下におけるフリーラジカル重合の分子量変化を示している。反応の最初(Ia)では、分子量はかなり低いが、反応が進行する場合に増加し続け、これは擬似リビング鎖がモノマー単位を付加し続けること示している。比較例Iでは、ある場合にモノマーが、得られた重合鎖にわずかな時間、付加するのみであり、次いで停止が起こる。安定フリーラジカル作用剤の存在下では、モノマーは数時間にわたって得られた鎖に付加し続け、反応混合物にモノマーが存在する限り、モノマー単位を付加し続けるであろう。最終産物の多分散性は、比較例I(Id)よりも、実施例I(Id)の安定フリーラジカル調節重合においてより小さい又は更に小さい分散である。実施例Iの反応が 100℃より低い温度で行われた場合、及びBPOに対するTEMPO(TEMPO/BPO)モル率が実施例Iの場合よりも低い場合は、約2.36〜1.87の多分散性のような適度な改良が得られるに過ぎない。
【0072】〔実施例II〕
安定フリーラジカル作用剤(TEMPO)を用いたスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.385g、0.0016mol )及びTEMPO(0.292g、0.0019mol )の溶液は、アルゴン雰囲気下で、95℃3.5 時間加熱された。過酸化ベゾイル(BPO)の半減期及びTEMPOが過酸化ベンゾイルの分解の促進剤として働くことが知られていることに基づいて、過酸化ベンゾイルが、この時点以降では反応混合物中に残存していないということが推測される。該反応混合物は、45分間にわたって 123℃まで加熱され、該反応は、69時間この温度で継続された。試料は、指示されたように、この一連の反応の後に該反応混合物から取り出され、ポリスチレン生成物の分子量特性及びこれらの試料の転化率の値は表3にまとめられている。
【0073】
【表3】


【0074】実施例IIは、この反応が溶媒の非存在下で又はバルクで簡便に実施され得ることを示した。分子量の増加分の増大によって示されるように、該反応が、擬似リビング機構を通して進行していることは明らかである。TEMPO/BPOモル比は、 0.5である実施例Iに比較して 1.3であった。95℃の加熱期間後に、重合物質はゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によって認められなかった。 123℃での混合物を反応させることは、かなり狭い多分散性(1.26)を生じさせる。実施例IIにおいて、スチレンのフリーラジカル重合における前述の理論的計算値である 1.5の値よりも低い多分散性が達成された。また、ポリスチレン生成物の多分散性が転化率と共に増加していないことも注目される。この実施例では、また、重合性樹脂生成物における狭い多分散性を維持する一方で、モノマーからポリマーへの高い転化率の達成を証明している。
【0075】〔実施例III 〕
安定フリーラジカル作用剤を用いたトルエンにおけるスチレンの溶液重合スチレン(7.5g、0.072mol)、過酸化ベンゾイル(0.150g、0.0006mol )及びTEMPO(0.097g、0.0006mol )の溶液は、アルゴン雰囲気下で、 125℃に維持されたオイルバスにおいて7時間加熱された還流トルエン(10ml)に添加された。この溶液は、冷却され、16時間室温で維持された。この溶液は、その後、更に5.75時間加熱された。試料は、示されたように反応混合物から引き出され、それらのポリスチレン中間体及び生成物の分子量特性は表4に示されている。該実施例は、安定フリーラジカル作用剤調節反応が溶液中において実施され得ることを示している。分子量は、増大又は直線的に時間と共に増加し、狭い多分散性が得られる。
【0076】
【表4】


【0077】反応温度が低く(95℃)、TEMPO/BPOモル比が例えば実施例III の 1.0に対して 0.5と低い他のコントロール反応が行われた。より低い温度及びより低いTEMPO/BPOモル比が用いられる反応は、擬似リビング機構によって進行せず、慣用のフリーラジカル重合機構によって進行するらしく、その結果、高分子量ポリスチレン物質が反応初期に得られ、多分散性はコントロールよりも十分に狭くならなかった。即ち、より低い反応温度及びより低いTEMPO/BPOモル比において、生成ポリスチレンの多分散性は、スチレンの安定フリーラジカル調節重合に用いられる条件によるよりも高くなった。
【0078】〔実施例IV〕
150℃におけるスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.150g、0.00062mol)及びTEMPO(0.125g、0.00080mol)の溶液は、アルゴン雰囲気下で、 150℃に維持されたオイルバスにおいて 6.5時間加熱された。得られたポリスチレン重合体の分子量特性は表5に示されている。 125℃から 150℃へオイルバス温度を上げることによって、この反応時間を劇的に減少することができた。実施例IIにおいて、オイルバスの温度は 123℃であり、90%転化率における反応時間は、約69時間必要であった。 150℃のオイルバス温度を用いることによって、86%転化率が6.5時間で得られることができた。実施例IIに対比して、95℃での前反応は必要でなく、全反応剤及び試薬が高い温度で共にすぐに反応させた場合であっても、多分散性の拡大はない。
【0079】
【表5】


【0080】〔実施例V〕
150℃におけるスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.075g、0.00031mol)及びTEMPO(0.063g、0.00040mol)の溶液は、アルゴン雰囲気下で、150 ℃に維持されたオイルバスにおいて7時間加熱された。得られたポリスチレン重合体の分子量特性は表6に示されている。
【0081】〔実施例VI〕
150℃におけるスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.075g、0.00031mol)及びTEMPO(0.073g、0.00047mol)の溶液は、アルゴン雰囲気下で、150 ℃に維持されたオイルバスにおいて7時間加熱された。得られたポリスチレン重合体の分子量特性は表6に示されている。
【0082】〔実施例VII 〕
150℃におけるスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.075g、0.00031mol)及びTEMPO(0.087g、0.00056mol)の溶液は、アルゴン雰囲気下で、150 ℃に維持されたオイルバスにおいて7時間加熱された。得られたポリスチレン重合体の物理特性は表6に示されている。
【0083】
【表6】


【0084】実施例V、VI及びVII において、スチレンに対する過酸化ベンゾイルの割合は一定に維持されているが、過酸化ベンゾイルに対するTEMPOのモル比は変えている。反応が 150℃において維持されたオイルバス中で実施されている場合には、TAMPO/BPOモル比は、転化率に対して殆ど影響しないことを示すことができた。86%及び92%の転化率における差異は、スペルコ(Supelco) 製のカルボワックス(Carbowax)20Mカラムにおけるガスクロマトグラフィーによる測定の転化率を計算するために用いられた方法の実験誤差の範囲であると思われる。
【0085】得られた重合体の分子量のおいて、TEMPO/BPOモル比の明白な効果が認められる。TEMPO/BPOモル比が増加するに従って、得られた重合体の分子量が減少し、これは存在するTEMPOが多くなると、フリーラジカル開始剤の効果が増すこと、即ち、同量のフリーラジカル開始剤は、TEMPO/BPOモル比が低い場合よりも、より速やかに多くの重合鎖の開始能を有することを示す。従って、フリーラジカル開始効率は、用いられる安定フリーラジカル作用剤の量に影響され得ることが明らかである。
【0086】〔実施例VIII〕
高分子量ポリスチレンのためのスチレンのバルク重合スチレン(15g、0.144mol)、過酸化ベンゾイル(0.025g、0.00010mol)及びTEMPO(0.021g、0.00013mol)の溶液は、アルゴン雰囲気下で、 150℃に維持されたオイルバスにおいて 2.5時間加熱された。得られたポリスチレン重合体の分子量特性は表7に示されている。この実験は、生成ポリマー樹脂の分子量が用いられるBPOの量を変えることによって制御されることができること及び、狭い多分散性を維持する一方で、高分子量樹脂が得られ得ることを示している。
【0087】
【表7】


【0088】〔実施例IX〕
安定フリーラジカル作用剤を用いないスチレン及びミルセンの懸濁重合アルカノール(48mg)の水溶液(100ml)中のリン酸三カルシウム(3.0g)の懸濁液が、この残留懸濁化剤を溶解するために改変パール反応器へ添加され、該反応器は、窒素によってパージされている間、30分にわたって95℃で加熱された。スチレン (46.8g、0.45mol )及びミルセン (10.6g、0.08mol )中の過酸化ベンゾイル(5.0g、0.021mol)及びTAEC〔O,O−t−アミル−O−(2−エチルヘキシル)モノパーオキシカルボネート〕(0.2ml)は、窒素60ポンド毎平方インチ下で反応器へ添加され、該反応器は、 192分間95℃で加熱され、40分間に亘って 125℃で加熱され、1時間 125℃に維持された。この反応器は、それから冷却され、この共重合体は該反応器より取り出され、濃硝酸で処理され、水でリンスされ、メタノール中にメチレンクロライド溶液から沈殿した場合にわずかにオフ・ホワイトの固体となる濃縮オイルを得た。スチレン−ミルセン共重合物質の分子量特性は表8に示されている。
【0089】〔実施例X〕
安定フリーラジカル作用剤(TEMPO)を用いたスチレン及びミルセンの懸濁共重合アルカノール (48mg)の水溶液(100ml)中のリン酸三カルシウム(3.0g)の懸濁液が、改変パール反応器へ添加され、該反応器は、窒素によってパージされている間、30分にわたって95℃で加熱された。スチレン(60g、0.58mol )及びミルセン(10g、0.07mol )中の、過酸化ベンゾイル(0.30g、0.012mol)及びTEMPO (0.20g、0.0031mol )の溶液は、窒素圧下で該反応器に添加され、該反応器は15分間 143℃まで加熱され、それから 7.5時間その温度で維持された。該反応器は冷却され、共重合体は該反応器より取り出され、濃硝酸で処理され、水でリンスされ、メタノール中にメチレンクロライド溶液から沈殿した場合に、わずかにオフ・ホワイトの固体となる濃縮オイルを得た。スチレン−ミルセン共重合物質の分子量特性は表8に示されている。試料の 1H−NMRは、スチレンとミルセンとの共重合体の生成物であることを確認した。
【0090】
【表8】


【0091】実施例IX及びXは、本発明の方法を用いて、共重合体を得られ得ること及び狭い多分散性が維持されることを示した。コントロール反応である実施例IXは、典型的なフリーラジカル懸濁重合方法であり、実施例XのようなTEMPOの存在下で製造された共重合体と殆ど同様のMwを有する共重合体が得られる。TEMPOの存在下で行われた実施例Xの反応は、1.6の多分散性を有する共重合体を生じ、これは安定フリーラジカル作用剤の存在ない場合に得られた4.4の多分散性よりも明らかに低かった。
【0092】実施例Xでは、TEMPOの存在下におけるモノマー対BPOのモル比は、54.2:1であったが、実施例IXのコントロール反応では、この比は25:1であった。TEMPOが開始効率に対して効果的であり、大きく改良することが明らかである。この促進効率特性は、安定フリーラジカル作用剤を用いないフリーラジカル重合方法と比較して、かなり少ない開始剤の使用で所定の分子量の共重合体を調製することを可能にする。
【0093】〔実施例XI〕
磁気性トナーの製造及び評価実施例Iの安定フリーラジカル重合方法によって得られた重合体樹脂(全混合物の74重量%)は、10重量%のREGAL330(登録商標)カーボンブラック及び16重量%のMAPICO BLACK(登録商標)マグネタイトと共に 120℃において溶融押出され得る。この押出物は、ワーリング・ブレンダにおいて粉砕され、8μmの数平均サイズの粒子に噴出される。正帯電磁気トナーは、0.12gのAEROSIL R972(登録商標)(Degussa)及びTP−302ナフタレンスルホンネートの1:1重量比と第四級アンモニウム塩(Nachem/Hodogaya SI) 電荷調整剤と共に噴出トナー(2g)を表面処理することによって製造され得る。
【0094】現像液組成物はそれから3.34重量部の前述のトナー組成物を、70重量%のKYNAR(登録商標)即ちポリビニリデンフルオライドと30重量%のポリメチルメタクリレートとを含有するポリマー混合物をその上に有するスチールコアを含む96.66重量部のキャリアーと混合することによって製造され得;そのコーティングは約0.9%の重量である。カスケード現像は、 "負の”ターゲットを用いてゼロックス・モデルD受光体を現像することに用いられ得る。露光は5秒と10秒との間にセットされ得、負のバイアスが、受光体から紙へ正のトナー画像を暗転写するために用いられ得る。
【0095】融着評価は、3インチ毎秒で操作されるゼロックス5028(登録商標)ソフトシリコンロール融着を用いて実行され得る。
【0096】トナーとして狭い多分散性を有する安定フリーラジカル重合ポリマーの最低定着及びホットオフセット温度(°Fによる)は、広い多分散性を可能にする安定フリーラジカル作用剤を用いないフリーラジカル重合方法によって合成される樹脂により製造されたトナーに関して改良されると期待される。実際の融着ロール温度は、オメガ高温計を用いて測定され得、ワックス紙インジケータによってチェックされた。現像されたトナー画像が融着の後に紙へ接着された度合いは、スコッチ(登録商標)テープテストを用いて評価された。定着レベルは、高分子量及び狭い多分散性の樹脂を有するトナーの他の製造方法によって製造されたトナー組成物を用いて得られた定着に対して、優れていること及び匹敵することが予想される。典型的には、濃度計によって測定した場合で、トナー画像の95%以上が、テープストリップを取り除いた後にコピー用紙に固定されて残る。
【0097】画像は、アルミニウムの支持基体、三方晶セレンの光発生層及び、55重量%のポリカーボネートMAKROLON(登録商標)に分散された45重量%のアリールアミン−N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′−ビフェニル−4,4′−ジアミンの電荷輸送層を含む負帯電積層画像形成部材を用いたゼログラフィック画像形成テストフィクスチュアにおいて現像され得る。これは米国特許第 4,265,990号に参照され、これは全面的に援用して本文の一部としている;例えば実施例XIから誘導される共重合体から製造されたトナー組成物のための画像は、背景の汚れがない優れた品質のものであり、約75,000と思われる増え続ける多くの画像形成サイクルにおいて、高い解像度のものであることが期待される。
【0098】他のトナー組成物は、着色トナー、一成分トナー、多成分トナー、特殊性能の添加剤を含むトナー等を包含する本発明の重合体及び共重合体樹脂による慣用手段によって容易に製造され得る。
【0099】前述の安定フリーラジカル作用剤調節重合方法は、所望の電子写真特性を有する新規なトナー樹脂物質を提供するために、広範の有機モノマーに適用され得る。例えば、ブロック共重合体は、受光体顔料に対する分散媒として適用される。マルチモード性樹脂は低溶融樹脂に適用され、特定の単一モード性樹脂は、ホスト重合体又は分散媒質と、顔料粒子をより混ぜ合わせるためにカーボンブラック及び顔料粒子の表面を改変することに用いられ得る。例えばポリ(スチレン−ブタジエン)のような狭い分子量樹脂は、汎用の改良されたトナー樹脂に適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】130℃におけるスチレンのバルク即ち無溶媒の安定フリーラジカル作用剤調節重合により得られたポリスチレン単独重合体産物の添加率対分子量のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 単数又は複数の熱可塑性樹脂の製造におけるフリーラジカル重合方法であって、フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物との混合物を、狭い多分散性を有する単数又は複数の熱可塑性樹脂を形成するために約100〜160℃で加熱すること;を含む、フリーラジカル重合方法。
【請求項2】 前記混合物の加熱期間に有機スルホン酸又は有機カルボン酸を添加することを更に含み、それによって、前記モノマー化合物の前記重合による前記単数又は複数の熱可塑性樹脂の形成速度が増加する請求項1記載のフリーラジカル重合方法。
【請求項3】 前記混合物に3級アミン化合物を添加することを更に含み、それによって前記フリーラジカル開始剤の解離速度が増加し、ここで該フリーラジカル開始剤が有機過酸化物である請求項1記載のフリーラジカル重合方法。
【請求項4】 フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第1の混合物を第1の中間生成物樹脂を形成するために加熱すること;該第1の中間生成物樹脂に、フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第2の混合物を加えること、ここで該第2の混合物の該重合性モノマー化合物は該第1の混合物の該重合性モノマー化合物と同一成分を含み、該第2の混合物の該フリーラジカル開始剤及び該安定フリーラジカル作用剤は該第1の混合物の該フリーラジカル開始剤及び該安定フリーラジカル作用剤と同一又は異なっており、またここで結合混合物が形成される;該第1の中間生成物樹脂及び添加された該第2のモノマーから形成された第1の生成樹脂と該第2のモノマーから形成された第2の生成物樹脂を含む2に等しいモード性を有する熱可塑性樹脂混合物を含む第3の混合物を形成するために、該結合混合物を加熱すること、ここで該第1の生成物樹脂及び該第2の生成物樹脂は各々狭い多分散性を有する;並びに、N+1に等しいモード性を有するマルチモード性混合物の熱可塑性樹脂を含む第4の混合物を形成するために、連続的にN回、添加及び加熱ステップを繰り返すこと、ここでNは、開始剤、安定フリーラジカル作用剤及びモノマーの添加ステップを繰り返した全回数であり、またここで各生成物樹脂は、狭い多分散性を有する、を更に含む請求項1記載のフリーラジカル重合方法。
【請求項5】 フリーラジカル開始剤と安定フリーラジカル作用剤と少なくとも1つの重合性モノマー化合物とを含む第1の混合物を、第1の中間生成物樹脂を形成するために加熱すること;該第1の中間生成物樹脂に、少なくとも1つの重合性モノマー化合物を含む第2の混合物を、結合混合物を形成するために加えること、ここで、該第2の混合物の該重合性モノマー化合物が該第1の混合物の該重合性モノマー化合物と異なっている;該第1の中間生成物樹脂及び添加された第2のモノマーから形成された第1の生成物樹脂を含むブロック共重合体熱可塑性樹脂を含む第3の混合物を形成するために、該結合混合物を加熱すること;該第3の混合物を冷却すること;並びに、N+2のブロックを有する単数又は複数のマルチブロック共重合体熱可塑性樹脂を含む第4の混合物を形成するために、連続的にN回、添加、加熱及び冷却ステップを繰り返すこと、ここでNは、該シークエンスが繰り返された回数であり、またここで該マルチブロック共重合体熱可塑性樹脂は、狭い多分散性及び1のモード性を有すること、を更に含む請求項1記載のフリーラジカル重合方法。
【請求項6】 前記単数又は複数の熱可塑性樹脂が、モノマーからポリマーへの高い転化率で形成される請求項1記載のフリーラジカル重合方法。

【図1】
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