説明

フレキシブルダクト

【課題】断熱材としてグラスウールを用いた所定のフレキシブルダクトにおいて、グラスウールの繊維が、特に、フレキシブルダクトの端部において、ダクト内部へ漏れるのを防止する。
【解決手段】内装皮10の軸方向端部において、中間層として配設されたグラスウール20の軸方向の端部20aよりも軸方向外側の内装皮上にグラスウール20が存在しない内装皮延長部10aを設ける。該内装皮延長部10aにおいて、外装皮30を、グラスウール20を介することなく、直接に又は内装皮延長部10aに設けた発泡断熱材50を介して、内装皮10に密着状態に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備に用いられるフレキシブル(柔軟で屈曲自在な)ダクト、特にクリールーム等、塵埃の発生を嫌う場所での使用に適したフレキシブルダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調設備に用いられるダクトとして、中間層として配設されたグラスウール(断熱材)と、その内周及び外周にそれぞれ設けられた内装皮及び外装皮と、内装皮に固定された、螺旋状に巻かれた鋼線とを具備したフレキシブルダクトは知られている(例えば、特許文献1(図1)参照)。通常、内装皮としては、ポリエステルフィルム等が用いられている。断熱材としてグラスウールを用いたこのフレキシブルダクトは、伸縮性を有するとともに、柔軟でダクトをある程度任意の角度に屈曲することができるので融通性があり、空調設備において、ダクト同士あるいはダクトとボックスやチャンバー等とを接続するために広く使用されている。
【0003】
上記のような従来のフレキシブルダクトの軸方向の端部における代表的な具体的態様を図7に示して説明する。
鋼線15が固定された内装皮10の外側はグラスウール20で被覆され、グラスウール20の外側は外装皮30で被覆されている。
フレキシブルダクトの端部は、その外周側から中心に向けて圧縮され、軸方向中間部よりも縮径されるとともに、外装皮30は、グラスウール20の端面を覆って内装皮10の内面側へ折り返され、外装皮30とグラスウール20と内装皮10と外装皮の折返し部分30aとを貫通するステープラー70によって、内装皮10に固定されている。さらに、小径に圧縮した形を保持し、整えるために、縮径部分に粘着テープ40を巻き回して仕上げられている。
かかる従来のフレキシブルダクトにおいては、圧縮されたグラスウール20と内装皮10とをステープラー70が貫通しているため、内装皮10の貫通孔(針孔)を通してグラスウール20の繊維がダクト内部へ漏れ、飛散するおそれがある。また、グラスウール20がフレキシブルダクトの端部にまで位置していることから、端面部分の処理不良等があると、グラスウール20の繊維がダクト内部へ侵入しやすい。また、内装皮10は、経時使用等によりピンホールが発生したり、鋼線との接着部の剥離によって隙間が発生すると、グラスウールの漏れ、飛散を引き起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3021422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題を考慮してなされたもので、断熱材としてグラスウールを用いた所定のフレキシブルダクトにおいて、グラスウールの繊維がダクト内部へ漏れるのを防止することを課題とする。特に、フレキシブルダクトの端部において、グラスウールの繊維がダクト内部へ漏れるのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)内周及び外周にそれぞれ設けられた内装皮及び外装皮と、中間層として配設されたグラスウールと、内装皮に固定された鋼線からなる補強部材とを具備してなる、空調設備に用いられるフレキシブルダクトであって、
前記内装皮の軸方向端部において、前記グラスウールの軸方向の端部よりも軸方向外側の内装皮上に前記グラスウールが存在しない内装皮延長部を設け、
該内装皮延長部において、前記外装皮を、前記グラスウールを介することなく、直接に又は前記内装皮延長部に設けた発泡断熱材を介して、前記内装皮に密着状態に固定した、フレキシブルダクトである。
(2)さらに、前記内装皮と前記グラスウールとの間に気密性フィルムを有してなる、フレキシブルダクトである。
【発明の効果】
【0007】
(1)本発明によれば、フレキシブルダクトの端部に、グラスウールが存在しない内装皮延長部が形成され、繊維質であるグラスウールが存在しないこの部位において内装皮と外装皮とが密着状態で結合されるため、従来技術の下では生じるおそれがあった、フレキシブルダクトの端部においてステープラーの貫通孔等からグラスウールの繊維がダクト内部へ漏れるような事態を防止することができる。また、ステープラーを用いずに内装皮と外装皮とを固定することも可能である。外装皮を、内装皮延長部に設けた発泡断熱材を介して内装皮に密着状態に固定する場合は、より良好な断熱性、消音性を確保することができる。
(2)さらに、前記内装皮と前記グラスウールとの間に気密性フィルムを有してなるものとすることにより、フレキシブルダクトの端部以外の箇所において内装皮にピンホールや破損が生じても、グラスウールの繊維がフレキシブルダクトの内部へ漏れることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】フレキシブルダクト1の(片側)縦断面図である。
【図2】フレキシブルダクト1の(片側)縦断面図である。
【図3】フレキシブルダクト1の(片側)縦断面図である。
【図4】フレキシブルダクト1の(片側)縦断面図である。
【図5】フレキシブルダクト1の(片側)縦断面図である。
【図6】補強部材15の内装皮10への固定構造を示す縦断面図である。
【図7】従来のフレキシブルダクトの(片側)縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るフレキシブルダクト1は、断面が円形の管状に形成されており、内周及び外周にそれぞれ設けられた内装皮10及び外装皮30と、中間層として配設されたグラスウール20と、内装皮に固定された鋼線からなる補強部材15とを具備してなる。全体として一定の内径を有する円筒状に形成されている。
【0010】
内装皮10は、フレキシブルダクトの内周面を形成するもので、ポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の可撓性を有する合成樹脂フィルムからなる。
鋼線からなる補強部材15は、チューブ形状を保持する骨組みとして内装皮10に固定されており、内装皮10と補強部材15とが一体化して内管を形成し、伸縮性と屈曲性を発揮する。補強部材15は、通常、螺旋状に巻かれた鋼線、あるいは所定間隔で複数個配列されたリング状の鋼線からなる。補強部材15は、例えば、図6(a)に示すように、帯状の内装皮10を螺旋状に巻き回して縁部で重ね合わせて接合するとともに、その接合される重ね合わせ部内に螺旋状の鋼線からなる補強部材15を位置させて補強部材15が内装皮に被覆されるようにすることができる。
図6(b)に示す例における補強部材15の内装皮10への固定構造は、所定幅の基材フィルムの一方の縁部分が螺旋状の補強部材15をくるんで外面に折り返され、折り返し部分12を形成しており、この折り返し部分12の上(外面)に、基材フィルムの他方の縁部分が重ね合わせられて、螺旋状に巻き回されており、縁部分が重ね合わせられた状態で、基材フィルムと補強部材15とが、同じく螺旋状に巻き回される断面C字状の係止部材17のC字部分内に挟み込まれ、これにより補強部材15と基材フィルム(内装皮10)とが一体化されている。もっとも、補強部材15の内装皮10への固定構造は何ら限定されない。
内装皮10は、中間層であるグラスウール20によって被覆される。グラスウール20は不燃性の断熱材であり、保温性、消音性を発揮する。マット状ないしシート状のグラスウールが好適に用いられる。
外装皮30は、グラスウール20の外面を被覆するもので、合成樹脂を用いた単層シート又は複合シートにより構成される。合成樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。外装皮30は、アルミニウム層を有するものとして構成してもよい。
内装皮10とグラスウール20、またグラスウール20と外装皮30は、フレキシブル性を確保するため、通常、互いに接着されないが、適宜接着部を設けてもよい。
【0011】
図1に示すフレキシブルダクト1において、補強部材15が固定された内装皮10は、その軸方向端部(両端部)において、グラスウール20の軸方向の端部20aよりも軸方向外側の内装皮上にグラスウール20が存在しない、距離Lを有する内装皮延長部10aを有している。
そして、この内装皮延長部10aにおいて、外装皮30は、グラスウール20を介することなく直接に内装皮10に密着状態に固定されている。
図示の例では、固定手段として、内装皮延長部10aの領域に外装皮30の端部を位置させ、外装皮30の外側から粘着テープ40を巻き付けて固定している。粘着テープ40は、内装皮10の端面を覆ってフレキシブルダクト1の内面側へと折り返し、その折返し部分を内装皮10に接着してもよい(図示省略)。外装皮30の内装皮10への固定は、接着剤を用いた接着、溶着等、他の固定手段を用いることもできる。
内装皮延長部10aの距離(幅)Lは、5mm以上であり、本発明の効果をより良好に発揮させる視点から、好ましくは、5〜100mmである。
最内装皮はポリエステルのほか、ポリエチレン、ポリプロピレンでもよい。
【0012】
図2に示すフレキシブルダクト1において、補強部材15が固定された内装皮10は、その軸方向端部において、グラスウール20の軸方向の端部20aよりも軸方向外側の内装皮上にグラスウール20が存在しない内装皮延長部10aを有している。
そして、この内装皮延長部10aには非繊維質である発泡断熱材50が設けられており、外装皮30は、グラスウール20を介することなく、内装皮延長部10aに設けた発泡断熱材50を介して内装皮10に密着状態に固定されている。発泡断熱材50としては、ポリエチレン系、ウレタン系、ゴム系等のものを用いることができる。発泡断熱材50は、
粘着材付きのものを使用することができる。
図示の例では、外装皮30の固定手段として、内装皮延長部10a上に固定した発泡断熱材50の上に、外装皮30の端部を位置させ、その上から粘着テープ40を巻き付けることにより、外装皮30を発泡断熱材50に固定している。外装皮30の発泡断熱材50への固定は、接着剤を用いた接着、溶着等、他の固定手段を用いることもできる。
発泡断熱材50の幅Wは、例えば20〜100mm程度とされる。
【0013】
図3に示すフレキシブルダクト1は、図1に示したフレキシブルダクト1の変形例を示すもので、図1に示すものとの相違点は、内装皮10とグラスウール20との間に別途、気密性フィルム(太い実線で表示)60を有してなる点にある。補強部材15が固定された内装皮10の外側に、内装皮10全体を被覆する態様で、気密性フィルム60が配設されている。したがって、グラスウール20の内側には少なくとも2枚のフィルムが存在する二重構造が形成されているため、内装皮10にピンホール等が発生しても、気密性フィルム60によって、グラスウール20の繊維がフレキシブルダクトの内部へ漏れることが防止される。
【0014】
気密性フィルム60としては、二軸延伸ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができる。
【0015】
図4に示すフレキシブルダクト1は、図2に示したフレキシブルダクト1の変形例を示すもので、図2に示すものとの相違点は、内装皮10とグラスウール20との間に別途、気密性フィルム(太い実線で表示)60を有してなる点にある。補強部材15が固定された内装皮10の外側に、内装皮10全体を被覆する態様で、気密性フィルム60が配設されている。したがって、グラスウール20の内側には少なくとも2枚のフィルムが存在する二重構造が形成されているため、内装皮10にピンホール等が発生しても、気密性フィルム60によって、グラスウール20の繊維がフレキシブルダクトの内部へ漏れることが防止される。
気密性フィルムとしては、図3に示した例と同様であるため、その説明を省略する。
【0016】
図5に示すフレキシブルダクト1は、図1に示したフレキシブルダクト1の変形例を示すもので、図1に示すものとの相違点は、外装皮30の軸方向の端部に余剰部分30aを形成し、この余剰部分30aを、内装皮10の端面を覆ってフレキシブルダクト1の内面側へと折り返すとともに、その折返し部分を粘着テープ41で内装皮10に固定した点にある。
【0017】
以上、説明したフレキシブルダクト1は、ボックスやチャンバー又は空調ダクトに、直接に又は接続具を介して接続され、使用される。
以上、発明を実施するための形態を説明したが、本発明は上記したものに限定されるものではなく、本発明の範囲で適宜変更、付加等して実施することができるものである。
【符号の説明】
【0018】
1 フレキシブルダクト
10 内装皮
10a 内装皮延長部
15 補強部材
20 グラスウール
20a グラスウールの軸方向の端部
30 外装皮
60 気密性フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周及び外周にそれぞれ設けられた内装皮及び外装皮と、中間層として配設されたグラスウールと、内装皮に固定された鋼線からなる補強部材とを具備してなる、空調設備に用いられるフレキシブルダクトであって、
前記内装皮の軸方向端部において、前記グラスウールの軸方向の端部よりも軸方向外側の内装皮上に前記グラスウールが存在しない内装皮延長部を設け、
該内装皮延長部において、前記外装皮を、前記グラスウールを介することなく、直接に又は前記内装皮延長部に設けた発泡断熱材を介して、前記内装皮に密着状態に固定した、フレキシブルダクト。
【請求項2】
前記内装皮と前記グラスウールとの間に気密性フィルムを有してなる、請求項1に記載のフレキシブルダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−72943(P2012−72943A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217153(P2010−217153)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(591029921)フジモリ産業株式会社 (65)
【出願人】(000176763)三菱化学エンジニアリング株式会社 (85)
【Fターム(参考)】