説明

フレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法

【課題】フレーク状ジアリールカーボネートの保管・運搬・輸送に関するフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法を提供する。
【解決手段】溶融状ジアリールカーボネートをフレーク化して得られたフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法であって、フレーク状ジアリールカーボネートの温度が70℃以下となる条件で、フレーク状ジアリールカーボネートを所定の容器内に充填した後、容器を保管又は運搬もしくは輸送することを特徴とするフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機物質の固形化方法として、溶融状の有機物質をフレーカー上で冷却固化し、これを所定の粉砕機等により薄片状の造粒物(フレーク)を得る方法が知られている。
このような方法の例としては、例えば、難固化性エポキシ樹脂の140℃の液体をダブルベルトフレーカーまたはベルトドラムフレーカーに供給し、冷却固化後、粉砕する方法(特許文献1参照)、溶融状無水フタル酸を回転するドラムフレーカー上で冷却固化後、所定のナイフにより掻き取りフレーク状無水フタル酸を得る方法(特許文献2参照)、溶融状態の光学活性フェニル乳酸メチルをドラム型フレーカー等の造粒機によりフレーク化する方法(特許文献3参照)等が挙げられる。
また、フレーカードラム外周とスクレーパーとの間隙を微調整する方法(特許文献4参照)、さらに、スクレーパーによるフレーカードラムの削りを防止する方法(特許文献5参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−180751号公報
【特許文献2】特開2002−308865号公報
【特許文献3】特開2003−192640号公報
【特許文献4】特開平09−271656号公報
【特許文献5】特開昭55−054027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、炭酸ジエステル等のジアリールカーボネートは、ポリカーボネート樹脂の製造において、例えば、フェノールと塩化カルボニル(COCl)とによる合成反応操作の後、所定の洗浄・蒸留処理を経て、溶融状態で原料調整工程へ送られ、ポリカーボネート樹脂の原料として使用される。
しかし、炭酸ジエステル等を一定期間保管したり、遠隔地にある製造設備に運搬・輸送する必要が生じる場合がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、フレーク状ジアリールカーボネートの保管・運搬・輸送に関するフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は鋭意検討を進めた結果、回転ドラム式フレーカーを用いて溶融状炭酸ジエステルを冷却固化すると、効率良くフレーク状炭酸ジエステルが得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
かくして本発明によれば、溶融状ジアリールカーボネートをフレーク化して得られたフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法であって、フレーク状ジアリールカーボネートの温度が70℃以下となる条件で、フレーク状ジアリールカーボネートを所定の容器内に充填した後、容器を保管又は運搬もしくは輸送することを特徴とするフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法が提供される。
ここで、フレーク状ジアリールカーボネートにかかる圧力が0.5kgf/cm以下となる条件で、フレーク状ジアリールカーボネートを容器内で保管又は運搬もしくは輸送することが好ましい。
また、容器内に充填されたフレーク状ジアリールカーボネートの平均嵩密度が300kg/m〜700kg/mであることが好ましい
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フレーク状のジアリールカーボネートが効率良く製造される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】DPC製造プロセスの一例を説明する工程フロー図である。
【図2】フレークDPCが製造されるDPC固化工程の一例を説明する工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0010】
(ジアリールカーボネート)
本実施の形態において使用するジアリールカーボネートとしては、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
ここで、一般式(1)中、A’は、置換されていてもよい1価のフェニル基である。2つのA’は、同一でも相互に異なるものでもよい。
【0013】
ジアリールカーボネートの具体例としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)が好ましい。これらのジアリールカーボネートは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
また、上記のジアリールカーボネートは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。
【0015】
(ジアリールカーボネートの製造方法)
次に、ジアリールカーボネートの製造方法について説明する。
本実施の形態で使用するジアリールカーボネートは、フェノール等の芳香族モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を原料としてアルカリ系触媒の存在下の合成反応により製造される。
カルボニル化合物としては、ジアリールカーボネートのカルボニル基を形成するものであれば特に限定されず、例えば、塩化カルボニル(ホスゲン、以下、CDCと記載することがある。)、一酸化炭素、炭酸ジアルキル等が挙げられる。中でも塩化カルボニル(ホスゲン)が好ましい。
また、アルカリ系触媒としては、ピリジン等が挙げられる。
【0016】
合成反応の条件は特に限定されないが、芳香族モノヒドロキシ化合物としてフェノールを使用する場合は、常圧下でフェノールが溶融状態にある50℃〜180℃が好ましい。また、芳香族モノヒドロキシ化合物とカルボニル化合物との混合比(モル比)は、芳香族モノヒドロキシ化合物1モルに対して、通常、カルボニル化合物0.40モル〜0.49モルが好ましい。
本実施の形態で使用するジアリールカーボネートは、上述したように芳香族モノヒドロキシ化合物及びカルボニル化合物を原料としてアルカリ系触媒存在下の合成反応が行われる反応工程後、反応液を脱塩化水素処理及び除去しきれない塩化水素をアルカリ性水溶液により中和処理して水洗する洗浄工程と、さらに、蒸留工程を経て製造される。以下、塩化水素を塩酸と称することがある。
以下、芳香族モノヒドロキシ化合物としてフェノール(以下、PLと略記する。)を使用し、カルボニル化合物として塩化カルボニル(CDC)を用い、ジアリールカーボネートであるジフェニルカーボネート(DPC)を製造するプロセスについて説明する。
【0017】
[DPC製造工程]
図1は、DPC製造プロセスの一例を説明する工程フロー図である。図1に示すように、DPCは、PL及びCDCとの反応を行わせるDPC反応工程と、DPC反応工程で得られた反応液から塩酸ガスを除く脱塩酸工程と、脱塩酸処理された反応液を中和及び水洗処理するDPC洗浄工程と、中和及び水洗処理された反応液を蒸留しDPCを留出させるDPC蒸留工程と、を経て製造される。
また、図1には、DPC蒸留工程における蒸留残渣を再び蒸留する回収蒸留工程と、DPC蒸留工程から得られたDPCをフレーク状に成形するDPC固化工程と、脱塩酸工程で生じた塩酸ガスを回収処理する塩酸吸収工程とが示されている。
【0018】
(DPC反応工程)
図1に示すように、DPC反応工程においては、原料であるPL及びCDCと、アルカリ系触媒としてピリジン(PRD)とが反応器11に導入され、DPC合成反応が行われる。PLは、予め加熱装置を備えた貯留タンク10で溶融状態に調製される。CDCは、一酸化炭素及び塩素を用いた合成反応により合成されている。PRDは、PLの供給配管の中途に供給される。
反応器11におけるDPC合成反応の反応条件は特に限定されないが、通常、PLが溶融状態にある50℃〜180℃、常圧下で行われる。また、PLとCDCの混合比(モル比)は、CDCの完全消費の観点から、通常、PL1モルに対して、CDC0.40モル〜0.49モルが好ましい。
【0019】
(脱塩酸工程)
脱塩酸工程では、DPC反応工程で得られたDPC含有反応液aが脱塩酸塔12に送られて脱塩酸処理され、得られた脱塩酸処理液bはDPC洗浄工程に送られる。
尚、反応器11及び脱塩酸塔12で生じた塩酸ガス(D1)は、それぞれ、反応器11の気相部と脱塩酸塔12の塔頂とから回収され、塩酸吸収工程に送られる。さらに、塩酸吸収工程では、反応器11及び脱塩酸塔12で生じた塩酸ガス(D1)は、吸収塔31で水又は希塩酸に吸収されて濃塩酸の状態で貯留タンク32に貯蔵される。
【0020】
(DPC洗浄工程)
DPC洗浄工程は、中和工程及び水洗工程から構成される。即ち、脱塩酸工程で得られた脱塩酸処理液bは、混合槽13に送られ、次いで、アルカリ中和槽14に送られる。アルカリ中和槽14では、アルカリ性水溶液(E1)を用いて脱塩酸塔12で除去しきれなかった塩酸が中和される(中和工程)。アルカリ中和槽14から排出される中和排水(D2)は、排水処理工程(図示せず)に送られ、含有する有効な有機成分を回収した後、活性汚泥処理に付される。
アルカリ中和槽14で中和処理された中和処理液eは、水洗槽15に送られ、水(W)で水洗され(水洗工程)、続いて蒸留工程に送られる。尚、水洗槽15から排出される排水(D3)は、アルカリ中和槽14に供給されるアルカリ性水溶液(E1)を調整する際のアルカリ希釈剤として再利用することが可能である。
【0021】
(DPC蒸留工程)
DPC蒸留工程では、先ず、水洗槽15で水洗処理された水洗処理液fが第1DPC蒸留塔16に送られ、水、PL及びアルカリ系触媒を含有する混合ガス(F)と、蒸留残渣gとに分離される。続いて、第1DPC蒸留塔16の蒸留残渣gが第2DPC蒸留塔17で再蒸留され、製品である精製されたDPCが第2DPC蒸留塔17の塔頂から蒸留分として回収される。
第2DPC蒸留塔17の塔頂から回収されたDPCは溶融タンク19に貯蔵された後、溶融DPCがフレーカー20に供給され、フレーク状DPCとして回収される。DPC固化工程については、後述する。
尚、混合ガス(F)は、第1DPC蒸留塔16の塔頂から回収され、各成分を分離して、反応系に再利用することができる。
【0022】
第1DPC蒸留塔16における蒸留条件は、水、アルカリ系触媒、PLが蒸留され、DPCが残留する条件であれば特に限定されるものではなく、通常、圧力1.3kPa〜13kPaの範囲である。蒸留温度は、前述した圧力下での沸点となる。また、第2DPC蒸留塔17における蒸留条件としては、DPCが蒸留され、DPCより高沸の不純物が残留する条件であれば特に限定されるものではなく、通常、圧力1.3kPa〜6.5kPa、温度150℃〜220℃が好ましい。
【0023】
(回収蒸留工程)
回収蒸留工程では、第2DPC蒸留塔17におけるDPC蒸留残渣X1が、DPC回収蒸留塔18を用いて蒸留され、DPC含有回収液dが蒸留回収される。また、DPCのメチル置換体が濃縮されたDPC回収蒸留残渣(X1’)が蒸留釜残側から回収される。
第2DPC蒸留塔17でのDPC蒸留残渣X1には、フェノール含有不純物であるメチルフェノール等が反応したDPCのメチル置換体等の他、DPCそのものも含まれる。このため、このDPC蒸留残渣X1を再び蒸留することにより、ジフェニルカーボネート(DPC)が回収される。
【0024】
DPC回収蒸留塔18の蒸留条件としては、DPCが蒸留され、DPCより高沸の不純物が残留する条件であれば特に限定されるものではなく、通常、圧力1.3kPa〜6.5kPa、温度150℃〜220℃の範囲である。
DPC回収蒸留塔18からの留出物であるDPC含有回収液dは、DPCを多く含むため、これを、混合槽13に送ることにより、ジフェニルカーボネート(DPC)の回収効率をより向上させることができる。
【0025】
(DPC固化工程)
次に、DPC固化工程について説明する。本実施の形態では、第2DPC蒸留塔17の塔頂から回収されたDPCは、DPC固化工程においてフレーク状ジアリールカーボネート(以下、フレークDPCと記すことがある。)として回収される。
図2は、フレークDPCが製造されるDPC固化工程の一例を説明する工程フロー図である。図2に示すように、DPC固化工程においては、第2DPC蒸留塔17(図1参照)から回収されたDPC(蒸留DPC)は、溶融状態のDPC(溶融DPC)をフレーク化するフレーカー20(回転ドラム式フレーカー)と、フレーク化されたフレークDPCをフレーカー20から移送する移送配管22と、移送されたフレークDPCを回収するホッパー23と、ホッパー23に移送されたフレークDPCを、所定の容器、例えば、フレキシブルコンテナ(F/C)24bに充填する充填機24を経て、製品として出荷される。
【0026】
フレーカー20には、溶融DPCと接触して回転する回転ドラム20aと、溶融タンク19から供給される溶融DPCを貯留する槽(パン)20bと、回転ドラム20aの内側を冷却する冷却媒体(CW)の散水孔を備える中心軸20cとが設けられている。さらに、回転ドラム20aの表面において固化した固形状DPCを剥離させるスクレーパー21と、スクレーパー21により剥離されたフレークDPCを後工程に移送させるために取り付けられた移送配管22とを備えている。
【0027】
ここで、蒸留DPCは、一旦、溶融タンク19に貯蔵され、DPCの融点より20℃程度高温(具体的には100℃程度)に加熱されて溶融DPCに調製され、その後、フレーカー20の槽20bに供給される。槽20bに供給された溶融DPCは、加熱媒体である蒸気(SM2)により溶融状態が保たれている。
回転ドラム20aは、冷凍機27から供給される冷却媒体(CW)により内側から冷却されている。冷却媒体(CW)の温度は、通常、0℃〜30℃、好ましくは、10℃〜20℃である。冷却媒体(CW)の温度が過度に低いと、回転ドラム20aに付着した溶融DPCが直ぐに固化し、回転途中で剥離するためフレーク化が困難になる傾向がある。また、冷却媒体(CW)の温度が過度に高いと、冷却効率が低下するため、フレーカーを大型化する必要がある。
尚、冷却媒体(CW)は、回転ドラム20aの冷却に使用された後、水槽26に回収され、ポンプ26aにより冷凍機27に送られ、再び回転ドラム20aを冷却するために再使用される。
【0028】
槽20bに供給された溶融DPCは、回転ドラム20aの表面上で冷却固化し、固形状DPCとなる。ここで、回転ドラム20a表面の固形状DPCの温度は、前述した冷却媒体(CW)(温度0℃〜30℃)により回転ドラム20aが冷却されることにより、温度60℃以下、好ましくは、50℃以下、さらに好ましくは40℃以下に冷却されている。
尚、フレーカー20は、通常、窒素等の不活性ガス2NPによりシールされており、外部からの異物混入を防止すると同時に、DPC粉体の粉塵爆発を回避している。一方、供給された不活性ガス2NPはVENTとして系外に排出され、必要に応じてガスに同伴されたDPCを除去し(図示せず)、大気に放出される。また、回転ドラム20aの内側から冷却媒体CWを散水した後、ドラム内に溜まった水を圧送するために所定の圧力の空気APが供給されている。
【0029】
次に、回転ドラム20a表面の固形状DPCは、スクレーパー21により回転ドラム20a表面から剥離され、剥離されてフレーク状になったフレークDPCは移送配管22によりホッパー23へ移送される。
ここで、スクレーパー21は、スクレーパー21の先端と回転ドラム20a表面との間隔が0.5mm以下、好ましくは0.01mm〜0.1mmの範囲内で調整可能に取り付けられている。スクレーパー21の先端と回転ドラム20a表面との間隔を調整する方法は特に限定されないが、例えば、粗動台(図示せず)上に組み込まれた微動調整装置(図示せず)にスクレーパー21が連結された2段式調整機構を有する調整装置(図示せず)を使用する方法が好ましい。
具体的には、スクレーパー21と連結した微動調整装置(図示せず)を載せた粗動台(図示せず)を適当な位置まで移動し、次いで、微動調整装置(図示せず)を調整してスクレーパー21の先端を回転ドラム20aの表面に接触させ、続いて、ダイヤルゲージ等を用いて所定の位置までスクレーパー21の先端を戻す方法等が好適に採用される。
スクレーパー21の先端と回転ドラム20a表面との間隔が過度に広いと、回転ドラム20a表面で固化したDPCの剥離が困難となりフレークDPCが得られない傾向がある。また、スクレーパー21の先端を回転ドラム20a表面に圧着させると、スクレーパー21の先端が回転ドラム20a表面を傷つける虞がある。
また、回転ドラム20a表面は、溶融DPCが均一に付着し、さらに固形状DPCが剥離しやすいように表面仕上げがされていることが好ましい。具体的には、硬質クロム(Cr)メッキ及びバフ仕上げ等が好適に用いられる。
【0030】
上述した条件で溶融DPCを調製し、回転ドラム20aを冷却し、且つ、スクレーパー21の先端と回転ドラム20a表面との間隔を上述した範囲内に設定することにより、大型フレーク又は二重フレークの発生が防止され、フレークの微粉化が回避される。その結果、フレークDPCの形状安定化が図られる。
さらに、回転ドラム20a表面の破損が防止されることにより、フレークDPC内の金属コンタミが回避され、品質の安定化を図ることができる。
【0031】
移送配管22は、回転ドラム20a表面から剥離されたフレークDPCがホッパー23内に移送されるように、垂直方向に対して45°以内、好ましくは、30°以内の傾斜を有してフレーカー20に取り付けられている。移送配管22の取付け角度が過度に大きいと、回転ドラム20a表面から剥離されたフレークDPCが移送配管22内に滞留し、場合によってはブリッジング現象を生ずる傾向がある。
また、移送配管22の内面は、フレークDPCの詰まりが生じない程度に滑らかであることが必要である。具体的には、移送配管22の内面の表面粗さ(Ra)が1μm以下、好ましくは、0.5μm以下であることが好ましい。移送配管22の内面の表面粗さ(Ra)を1μm以下にするための方法は特に限定されないが、例えば、公知のバフ研磨、電解研磨等が挙げられる。
【0032】
尚、図示しないが、異常時の安全対策として、移送配管22の中途に所定の粉面計を設けることが好ましい。移送配管22の中途に粉面計を設けることにより、回転ドラム20a表面からスクレーパー21により剥離されたフレークDPCが移送配管22を閉塞させた場合にこれを検知し、この検知信号に基づき、溶融タンク19からの溶融DPCの供給停止、回転ドラム20aの停止等の処置を行うことができる。
また、図示しないが、移送配管22は、マグネットハンマーを備えることが好ましい。移送配管22がマグネットハンマーを備えることにより、移送配管22内でのフレークDPCの滞留、閉塞を回避することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態では、DPC固化工程の工程中の少なくとも1箇所にマグネットキャッチャー(図示せず。)を設け、スクレーパー21等の摩耗により製品中に混入した金属を捕集することが好ましい。マグネットキャッチャーを設ける箇所は特に限定されないが、例えば、移送配管22内でフレークDPCの移送速度が遅い箇所が好ましい。
【0034】
次に、ホッパー23に移送されたフレークDPCは、充填機24により所定の容器(F/C)24b内に一定量毎充填される。
フレークDPCの充填操作は、先ず、カットゲート弁24aを閉じ、空の容器(F/C)24bに不活性ガス4NPを圧入し、容器(F/C)24bを瞬間的に膨満させる。次に、カットゲート弁24aを開け、ホッパー23内に一時的に溜まったフレークDPCと、その後連続的に剥離され移送されてくるフレークDPCを容器(F/C)24b内に充填する。この際、容器(F/C)24b内の不活性ガス4NPは、フィルター25aを経由してブロアー25bにより吸引排気されることで、フレークDPCの充填が効率的に行われる。上述した操作は、容器(F/C)24bに所定量のフレークDPCを充填する毎に繰り返して行われる。また、カットゲート弁24aの開閉操作や不活性ガス4NPの供給停止を自動化することにより、さらに、フレークDPCを充填する作業性が向上し、充填操作の効率化が図られる。
フレークDPCを充填するために使用する容器(F/C)24bとしては特に限定されないが、例えば、内側の材質がポリエチレンからなるフレキシブルコンテナであることが好ましい。
【0035】
ここで、充填機24により所定の容器(F/C)24b内にフレークDPCを充填する際に、フレークDPCの温度は、通常、60℃以下に冷却されていることが好ましい。フレークDPCの温度が過度に高い場合は、充填後にフレーク同士が融着して塊状になったり、容器(F/C)24bの内袋が破損する等が懸念される。
また、フレークDPCに含まれるフェノール等の芳香族モノヒドロシキ化合物の含有量が1重量%以下であることが好ましい。フレークDPCに含まれる芳香族モノヒドロシキ化合物の含有量が過度に多い場合は、フレークDPCの塊状化現象がみられる。一般的に、芳香族モノヒドロシキ化合物の融点は、ジアリールカーボネートの融点より低いため、フレークDPCに含まれる芳香族モノヒドロシキ化合物の含有量が多いと、充填後の取扱い次第ではフレークの再溶融、塊状化が生じやすくなり、製品の品質低下を招く傾向がある。
【0036】
さらに、所定の容器(F/C)24b内にフレークDPCを充填し、これを保管又は運搬もしくは輸送する際に、フレークDPCにかかる圧力が0.5kgf/cm以下となる条件が好ましく、0.3kgf/cm以下となる条件がさらに好ましい。フレークDPCにかかる圧力が過度に大きいと、フレーク自身が圧着され、ブロック化する傾向があり、フレークの抜き出しや使用時のトラブルを招くことになる。従って、容器(F/C)24bを2段又は3段等の山積み状態で保管することは避けるほうが好ましい。
また、フレークDPCの平均嵩密度は、通常、300kg/m〜700kg/m、好ましくは、400kg/m〜600kg/mの範囲である。フレークDPCの平均嵩密度が過度に大きい場合、換言すれば、フレークの厚みが厚い場合は、スクレーパー21による剥離時の負荷が大きくなり、スクレーパー21の異常摩耗、金属コンタミ等の問題がある。また、フレークを溶解使用する際に、溶解速度が低下する傾向がある。また、フレークDPCの平均嵩密度が過度に小さい場合は、輸送コストの面で不利になる。
【0037】
さらに、フレークDPCを充填した容器(F/C)24bを保管又は運搬もしくは輸送する場合は、容器(F/C)24b内に充填されたフレークDPCの温度が70℃以下、好ましくは、60℃以下のできるだけ低温条件下で、容器(F/C)24bを取り扱うことが好ましい。容器(F/C)24b内に充填されたフレークDPCの温度を70℃以下に保持する方法は特に限定されないが、例えば、直射日光を避け、通風環境の良い条件で取り扱うことが好ましく、例えば、夏場に赤道付近を輸送する場合は特に注意が必要である。
容器(F/C)24b内に充填されたフレークDPCの温度が過度に上昇すると、フレークDPCがDPCの融点(80℃)より高温状態になり、DPCが融解する傾向がある。
【0038】
以上詳述したように、本実施の形態が適用されるフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法によれば、溶融DPCから効率良くフレークDPCを製造することができる。
【符号の説明】
【0039】
10,32…貯留タンク、11…反応器、12…脱塩酸塔、13…混合槽、14…アルカリ中和槽、15…水洗槽、16…第1DPC蒸留塔、17…第2DPC蒸留塔、18…DPC回収蒸留塔、19…溶融タンク、20…フレーカー、20a…回転ドラム、21…スクレーパー、22…移送配管、23…ホッパー、24…充填機、24a…カットゲート弁、24b…容器、25a…フィルター、25b…ブロアー、26…水槽、27…冷凍機、31…吸収塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融状ジアリールカーボネートをフレーク化して得られたフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法であって、
前記フレーク状ジアリールカーボネートの温度が70℃以下となる条件で、当該フレーク状ジアリールカーボネートを所定の容器内に充填した後、当該容器を保管又は運搬もしくは輸送することを特徴とするフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法。
【請求項2】
前記フレーク状ジアリールカーボネートにかかる圧力が0.5kgf/cm以下となる条件で、当該フレーク状ジアリールカーボネートを前記容器内で保管又は運搬もしくは輸送することを特徴とする請求項1に記載のフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法。
【請求項3】
前記容器内に充填された前記フレーク状ジアリールカーボネートの平均嵩密度が300kg/m〜700kg/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフレーク状ジアリールカーボネートの取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−166559(P2012−166559A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97168(P2012−97168)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2007−76436(P2007−76436)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】