説明

フレーバーの増強

消費組成物へ旨味の味を提供する方法であって、グルタミン酸ナトリウムの組成物への添加を含み、ここで、通常使用されるグルタミン酸ナトリウムの比率が、低減され、埋め合せとなる比率のγ−アミノ酪酸と置き換えられる、前記方法。MSG含量の実質的低減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旨味のフレーバーおよびその増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旨味は、一般にアジア料理と関連するフレーバーの感覚である。加えて、改善された旨味の味は、低塩製品をより良い味にする助けとなる。旨味のフレーバーは伝統的に、グルタミン酸ナトリウム(MSG)の食料品への添加により達成されてきた。しかしながら、食料品におけるMSGの存在は、広く歓迎されるわけではなく、通常の場合より低比率のMSGによる旨味の味の達成に関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0003】
低減された比率のMSGによって旨味の味を達成することが可能であることが今や見出された。したがって、消費組成物(consumable composition)へ旨味の味を提供する方法であって、グルタミン酸ナトリウムの組成物への添加を含み、ここで、通常使用されるグルタミン酸ナトリウムの比率が、低減され、埋め合せとなる比率(compensatory proportion)のγ−アミノ酪酸(GABA)と置き換えられる、前記方法を提供する。
【0004】
γ−アミノ酪酸(以下、「GABA」とする)は、多くの食品に一般にみられる既知の化合物である。多くの出願において、例えば、特許4128893号および特開2008−113565号公報において味の改善剤として記載されてきた。GABA自体は、旨味のフレーバーを有さないことから、MSGと組み合わせることにより、前者の比率を大幅に低減させるほどまでに旨味効果を大幅に増強させることを見出したのは驚きであった。
【0005】
「低減された比率のMSG」は、所望の質または量の旨味のフレーバーを提供するのに通常必要であろうMSGの比率よりも低いものを意味する。「埋め合せとなる比率」は、所望の質または量の旨味のフレーバーを提供するのにMSGと併せて必要なGABAの量を意味する。これは一般に、1モルのMSGあたり0.8〜1.2モルのGABAの範囲内にあり、最良の結果は、等モル比率により達成される。しかしながら、フレーバリストにとって、これらの指針外に定めることによる特定の効果を達成することは可能である。
【0006】
消費組成物において使用されるMSGおよびGABAの比率は、使用の性質および所望のフレーバーに生来依存するであろうし、当業者であれば、日常の非独創性な実験によって、あらゆる場合での関連比率を簡単に決定することができる。しかしながら、必要とされるMSGのレベルは、大幅に低減する。通常の使用において、消費製品は、300ppmまでのMSGを含有してもよい。埋め合せとなる比率のGABAと使用するとき、必要とされるGABAおよびMSGの量は、それぞれ5ppm、合計10ppmまで低量であり得る一方、300ppmのMSG単独と同じ旨味のフレーバーを与える。一般的指針として、GABAの比率は、5〜100ppm、とくに10〜50ppmであり得る。また、特定の効果を達成するために、フレーバリストは、これらの指針外で配合してもよい。
【0007】
旨味のフレーバーの増強は、旨味のフレーバーが望まれるあらゆる組成物に適用してもよい。したがって、製品ベースおよび旨味のフレーバーを提供する比率のMSGおよびGABAを含む旨味のフレーバーを有する消費組成物をまた、提供する。「製品ベース」は、特定の消費組成物に必要とされるMSGおよびGABA以外のすべての通常当該技術分野において承認されている成分の組合せを意味する。
【0008】
上述の当該技術分野において承認されている成分に加えて、旨味のフレーバーを付与する他の成分をも添加してもよい。上述の驚くべきMSG+GABA効果から恩恵を受けない一方、これらの成分は、実現した旨味のフレーバーの本来備わっている質を変えるために使用してもよく、したがって、さまざまな異なる旨味の味の感覚を提供する。この作業は十分、当該分野の技術範囲内であり、熟練したフレーバリストは、幅広い満足のいく効果を作り出すであろう。本願において有用な他の旨味化合物の特定の例は、式I
【化1】

式中、
は、H、メチルおよびエチルから選択され、
は、H、OH、フッ素、C〜C直鎖状または分枝状のアルキル、C〜Cアルコキシ、ここで、アルキル基は、直鎖状または分枝状であるか、またはC〜Cシクロアルキル部分を含むまたはからなる、から選択され、
は、H、メトキシ、メチルおよびエチルから選択されるか、
あるいはRおよびRは一緒に、それらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成し、
は、OHおよびメトキシから選択され、および
およびRは独立して、Hおよびメチルから選択され、
、R、R、R、RおよびRは、
(i)RおよびRが一緒にそれらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成するとき、R、R、RはHであり、およびRはOHであり、および
(ii)RがOHであり、およびR〜RがHであるとき、R、Rの少なくとも1つはメチルである、
ように選択される、
で表される化合物(その塩を含む)である。
【0009】
かかる化合物は、英国特許出願第0913804号および国際出願PCT/EP2010/059916に記載されている。旨味のフレーバー付与および増強化合物の他の非限定の例は、欧州特許第1642886号、国際公開パンフレットWO2005/015158、欧州特許第1312268号、国際公開パンフレットWO2003/088768、欧州特許第1291342号および国際公開パンフレットWO2006/003107に記載されているものを含む。
【0010】
かかる他の旨味成分は典型的に、0.01〜100ppmの濃度で消費組成物に添加される。
【0011】
「消費組成物」は、最終的に吐き出されるか摂取される、口に取り入れられるあらゆる組成物を意味する。組成物は、固体、液体または気体のあらゆる物理的形状であってもよい。非限定の例は、すべての食品製品、食品添加物、栄養補助食品、薬剤および口の中に入れるあらゆる製品を含み、チューイングガム、オーラルケア製品および口腔衛生製品を含み(しかしこれらに限定されず)、穀物製品、米製品、タピオカ製品、サゴ製品、パン屋の製品、ビスケット製品、ペストリー製品、パン製品、菓子製品、デザート製品、ガム、チューインガム、フレーバーまたはフレーバーで被覆した食品/飲料用容器、酵母製品、ベーキングパウダー、塩およびスパイス製品、スナック食品、風味製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、スープ、香辛料、インスタント食品、グレイビー、ナッツおよびナッツ製品、煙草製品、葉巻、たばこ、加工食品、野菜製品、肉および肉製品、卵製品、牛乳および乳製品、ヨーグルト、チーズ製品、バターおよびバター代用製品、ミルク代用製品、大豆製品、食用油製品および食用脂製品、薬剤、飲料、炭酸飲料、ビール、ワインおよび蒸留酒などのアルコール飲料、ソフトドリンクなどのノンアルコール飲料を含むが、これらに限定されず、粉末飲料、ミルクベースの粉末飲料、無糖の粉末飲料、飲料用シロップ、濃縮飲料、コーヒーおよび茶、食用抽出物、植物抽出物、肉抽出物、調味料、ゼラチン、薬用のガムおよび薬用ではないガム、錠剤、トローチ剤、あめ玉、エマルジョン、エリキシル剤、シロップおよび飲料を作るための他の調製品を含むがこれらに限定されない再構成が必要な形状を含み、またそれらの組合せを含む。
【0012】
本開示を、特定の態様を描写する以下の非限定の例を参照にさらに記載する。
【0013】
例1
以下のものを含有するモデル風味溶液
塩化ナトリウム 6000ppm
グルタミン酸ナトリウム(MSG) 300ppmおよび
イノシン一リン酸(IMP)およびグアノシン一リン酸(GMP)の1/1混合物 150ppm
を、参照として使用した。
【0014】
この溶液を、以下のものを含有する溶液と比較した。
塩 6000ppm
MSG 300ppm
イノシン一リン酸(IMP)およびグアノシン一リン酸(GMP)の1/1混合物 150ppm
アスパラギン酸 15ppm
アルギニン 10ppmおよび
ガンマアミノ酪酸(GABA) 20ppm
【0015】
2つの溶液を、小さなグループの経験あるテイスター(男性3名、女性1名)が比較した。グループの全員が、第2の溶液を好み、それを「より旨味がある」、「ジューシーである」、「豊かである」、「より風味がある」および「長く残る」と表現した。
【0016】
例2
5000ppmの食卓塩、150ppmのMSGおよび75ppmのIMP/GMPを含有するモデル風味溶液を、ベースとして使用した。
10ppmのGABAを含有する別の溶液を調製した。
第3の溶液において、10ppmのGABAをベース溶液に添加した。
溶液を、小さなグループの経験あるテイスター(男性3名、女性1名)が比較した。ベース溶液を、塩味および旨味があると表現した。GABA溶液は無味であった。グループの全員が、第3の溶液を第1の溶液よりも好み、ベースから著しく異なると判断した。味は、より満ち足り、より長続きする旨味であると表現した。
【0017】
例3
市販のチキンブイヨンを調製した(参照)(塩分0.5%)。
1部のブイヨンに、30ppmの1−(2−ヒドロキシ−4−イソブトキシフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オンを添加した(溶液1)。
別の1部に、20ppmのGABAを添加した(溶液2)。
そして、別の1部に、30ppmの1−(2−ヒドロキシ−4−イソブトキシフェニル)−3−(ピリジン−2−イル)プロパン−1−オンおよび20ppmのGABAを添加した(溶液3)。
溶液を、小さなグループの経験あるテイスター(男性3名、女性1名)が比較した。ベースブイヨンを、塩味および旨味があると表現した。溶液1、2および3すべてを、参照より良く、「より味の増強がある」、「より旨味がある」と表現した。すべてのテイスターが、溶液3が最も良いことに同意し、「最も満ち足りた」、「最も豊かである」と表現した。
【0018】
例4
5000ppmの食卓塩、15ppmのMSGおよび75ppmのIMP/GMPを含有する参照溶液を調製した。この溶液の異なる部に、5、10、15、20および25ppmのGABAを添加した。溶液を、小さなグループの経験あるテイスター(男性3名、女性1名)が味見した。最良の旨味増強は、5、10および15ppmのGABAを含有する溶液においてみられた。15ppmのGABAは、目的物と比較するフレーバーを付与したサンプルであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費組成物へ旨味の味を提供する方法であって、グルタミン酸ナトリウムの組成物への添加を含み、ここで、通常使用されるグルタミン酸ナトリウムの比率が、低減され、埋め合せとなる比率のγ−アミノ酪酸(GABA)と置き換えられる、前記方法。
【請求項2】
1モルのMSGあたり0.8〜1.2モルのGABA、好ましくは等モル比率のGABAおよびMSGがある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
組成物中に存在するGABAの比率が、5〜100ppm、とくに10〜50ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
製品ベースおよび旨味のフレーバーを提供する比率のMSGおよびGABAを含む、旨味のフレーバーを有する消費組成物。
【請求項5】
1モルのMSGあたり0.8〜1.2モルのGABA、とくに等モル比率のGABAおよびMSGがある、請求項4に記載の消費組成物。
【請求項6】
組成物中に存在するGABAの比率が、5〜100ppm、とくに10〜50ppmである、請求項4に記載の消費組成物。
【請求項7】
式I
【化1】

式中、
は、H、メチルおよびエチルから選択され、
は、H、OH、フッ素、C〜C直鎖状または分枝状のアルキル、C〜Cアルコキシ、ここで、アルキル基は、直鎖状または分枝状であるか、またはC〜Cシクロアルキル部分を含むまたはからなる、から選択され、
は、H、メトキシ、メチルおよびエチルから選択されるか、
あるいはRおよびRは一緒に、それらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成し、
は、OHおよびメトキシから選択され、および
およびRは独立して、Hおよびメチルから選択され、
、R、R、R、RおよびRは、
(i)RおよびRが一緒にそれらが連結するフェニル炭素原子間に架橋部分−O−CH−O−を形成するとき、R、R、RはHであり、およびRはOHであり、および
(ii)RがOHであり、およびR〜RがHであるとき、R、Rの少なくとも1つはメチルである、
ように選択される、
で表される化合物(その塩を含む)がさらに存在する、旨味のフレーバーを有する消費組成物。

【公表番号】特表2013−506408(P2013−506408A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531439(P2012−531439)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064622
【国際公開番号】WO2011/039340
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】