説明

フレーム位置決め装置及び記録装置

【課題】位置決め精度が要求されるフレーム部材に対して、部品精度や組立て精度の影響によって生ずるフレームの変形を防止して、該フレームに取り付けられる動作部材の動作を安定させるフレーム位置決め装置を提供すること。
【解決手段】キャリッジ10のX方向への移動をガイドする主軸構成部材と副軸構成部材とを一体に備えるメインフレーム7と、メインフレーム7を所定の位置決め基準位置に位置決めした状態で支持する剛的ベースフレーム9と、メインフレームを剛的ベースフレームに位置決め固定するネジ締結手段15とを備え、ネジ締結手段15は剛的ベースフレームの副軸側の位置決め基準位置にメインフレームをY方向から位置決め固定する副軸側ネジ締結手段17,18と、剛的ベースフレームの主軸側の位置決め基準位置にメインフレームをZ方向から位置決め固定する主軸側ネジ締結手段21,22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジの移動方向となるX方向に延びる主軸構成部材と副軸構成部材とを一体に備えるメインフレームを剛的ベースフレームの所定の位置に位置決め固定するフレーム位置決め装置及び該フレーム位置決め装置を備えた記録装置に関する。ここで「記録装置」とは、プリンタ(シリアルプリンタ、ラインプリンタ等)、ファクシミリ、複写機等を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
以下、図10を用いて、記録装置の一例であるインクジェットプリンタを例に採って説明する。インクジェットプリンタには、記録ヘッド101を搭載して記録ヘッドを往復移動方向となるX方向に往復移動させるキャリッジ102と、該キャリッジ102の往復駆動手段(図示せず)及び往復移動案内手段108が設けられるメインフレーム103と、該メインフレーム103を支持するベースフレーム104と、該ベースフレーム104に前記メインフレーム103を位置決め固定するフレーム位置決め装置109とが備えられている。
【0003】
また、前記メインフレーム103に対して設けられる往復移動案内手段108には、主軸と副軸の2軸が設けられているものがあり、更に主軸構成部材と副軸構成部材を主軸用ガイドレール106と副軸用ガイドレール107によって構成したメインフレーム103と一体の下記の特許文献1、2に示すような往復移動案内手段108が存在する。図10はこのような往復移動案内手段108が設けられたメインフレーム103に対して適用されている従来のフレーム位置決め装置109を示している。
【0004】
キャリッジ102の背面には、上部中央に副軸構成部材を構成する副軸用ガイドレール107に対するキャリッジ102の副軸側の懸架部111が設けられている。またキャリッジ102の背面の下部両端には主軸構成部材を構成する主軸用ガイドレール106に対するキャリッジ102の主軸側の懸架部112、113が設けられている。また、前記メインフレーム103は、左右のサイドフレーム114、114(図10では一方のみ示されている)と、前記ベースフレーム104とに対して位置決め固定されており、前記従来のフレーム位置決め装置109は前記メインフレーム103と、サイドフレーム114、114と、ベースフレーム104と、前記メインフレーム103を前記サイドフレーム114、114及び前記ベースフレーム104に位置決め固定するネジ締結手段115とを備えることによって構成されている。
【0005】
前記ネジ締結手段115は、副軸側の位置決め固定をする2本の固定ネジ116、116と、主軸側の位置決め固定をする2本の固定ネジ117、117とから構成されている。そして、このうち副軸側の固定ネジ116、116は、メインフレーム103をX方向からサイドフレーム114、114に位置決め固定するように構成されており、一方、主軸側の固定ネジ117、117は、メインフレーム103を前記X方向と直交する垂直方向であるZ方向からベースフレーム104に位置決め固定するように構成されている。
【0006】
また、前記副軸側の固定ネジ116、116のネジ締結位置は、前記副軸側懸架部111から遠く離れたメインフレーム103の側端面と前記サイドフレーム114、114との接合位置に設けられており、当該接合位置が副軸側の位置決め基準位置になっていた。一方、主軸固定ネジ117、117のネジ締結位置は、外方(図10において右方)に位置する前記主軸側の懸架部112の内側におけるメインフレーム103のガイドレール106が形成されている下端面と前記ベースフレーム104との接合位置に設けられており、当該接合位置が主軸側の位置決め基準位置になっている。
【0007】
しかし、上述のようなネジ締結位置ないし位置決め基準位置で副軸側の固定ネジ116、116と主軸側の固定ネジ117、117を締め付けて行くと、部品精度や組立て精度が低いと、メインフレーム103が撓み変形して主軸用ガイドレール106及び副軸用ガイドレール107にうねりや捩れ等の変形を発生させてキャリッジ102の往復動作を不安定にし、摺動負荷抵抗を増大させることがあった。特に、位置決め基準位置が前記X方向と直交する水平方向であるY方向に設定されていなかったことと、メインフレーム103の支持部材であるサイドフレーム114、114及びベースフレーム104の剛性が低いことが前記キャリッジ102の往復動作を不安定にし、摺動負荷抵抗を増大させる大きな要因になっていた。
【特許文献1】特開2004−17422号公報
【特許文献2】特開2005−349776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、位置決め精度が要求されるフレーム部材に対して、部品精度や組立て精度の影響によって生ずるフレームの変形を防止して、該フレームに取り付けられる動作部材の動作を安定させ、良好な状態に保つことができるフレーム位置決め装置及び該フレーム位置決め装置を備えた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るフレーム位置決め装置は、キャリッジのX方向への移動をガイドする主軸構成部材と副軸構成部材とを一体に備えるメインフレームと、前記メインフレームを所定の位置決め基準位置に位置決めした状態で支持する剛的ベースフレームと、前記メインフレームを前記剛的ベースフレームに位置決め固定するネジ締結手段とを備え、前記ネジ締結手段は、前記剛的ベースフレームの副軸側の位置決め基準位置に前記メインフレームを前記X方向と直交するY方向から位置決め固定する副軸側ネジ締結手段と、前記剛的ベースフレームの主軸側の位置決め基準位置に前記メインフレームを前記X方向及びY方向と直交するZ方向から位置決め固定する主軸側ネジ締結手段、とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、主軸構成部材と副軸構成部材とを一体に備えるメインフレームの支持部材であるベースフレームの剛性を高くして剛的ベースフレームとすることによって、該剛的ベースフレームの寸法精度が向上し、当該剛的ベースフレームの変形量も小さくなる。これに伴って該剛的ベースフレームに取り付けられるメインフレームの位置決め精度が向上し、部品精度や組立て精度の影響によって生ずるメインフレームの撓み変形の影響を受けなくすることができる。また、剛的ベースフレームの副軸側の位置決めをY方向からネジ締結して行うように構成されているので、メインフレームのY方向への傾きが直接規制されて防止され、当該副軸構成部材のキャリッジガイド軸としての位置精度及びX方向への直線性を高め且つ安定させることができ、以てキャリッジの走行位置精度及び走行安定性を向上する。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係るフレーム位置決め装置において、前記メインフレームは、前記剛的ベースフレームの所定の位置決め基準位置にネジ締結手段によってネジ締結されることによってメインフレームの傾きと取付け位置が自動的に矯正される構成であることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、前記第1の態様の作用効果に加えて以下の作用効果が得られる。メインフレームに組み付け前においては撓みや捩れ等が存在しても、剛性が高く寸法精度の高い剛的ベースフレームに取り付けられることによって、前記メインフレームの撓みや捩れ等は自動的に矯正されて解消されるので、該メインフレームが一体的に備える前記主軸構成部材及び副軸構成部材のキャリッジガイド軸としての位置精度及び直線性を高め且つ安定させることができる。これにより、キャリッジの往復動作は安定し滑らかになり、キャリッジに作用する摺動負荷抵抗も小さくなる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様または第2の態様に係るフレーム位置決め装置において、前記メインフレームは、金属製平板材料を所定の形状に打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されており、前記主軸構成部材は、前記メインフレームの下端縁をU字状に折り曲げ加工することによって形成される主軸用ガイドレールであり、前記副軸構成部材は、前記メインフレームの上端縁を逆U字状に折り曲げ加工することによって形成される副軸用ガイドレールであることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、金属製平板材料を所定の形状に打ち抜き、その下端縁をU字状に折り曲げ加工することによって主軸用ガイドレール(主軸構成部材)を設け、またその上端縁を逆U字状に折り曲げ加工することによって副軸用ガイドレール(副軸構成部材)を設けているので、主軸用ガイドレールおよび副軸用ガイドレールとしての剛性は高められていると共に、前記剛的ベースフレームに押し付けられて矯正されるメインフレームの柔軟性は、両ガイドレールを繋ぐ部分で発現される。従って、前記第1の態様または第2の態様の作用効果に加えて、構造簡単にして当該ガイドレール構造のメインフレームの位置決め精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1の態様から第3の態様に係るフレーム位置決め装置において、前記剛的ベースフレームは、プラスチック成形材料を射出成形することによって形成され、補強リブを備えたボックス状構造体であることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、剛的ベースフレームをプラスチック成形材料によって形成することによって軽量化と複雑な形状の成形が可能になる。また剛的ベースフレームを多数の補強リブを備えたボックス状構造体によって構成することによって剛的ベースフレームの剛性が容易に高まり、剛的ベースフレームの寸法精度が向上し、剛的ベースフレームの変形量を小さくなる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様に係るフレーム位置決め装置において、前記主軸側の位置決め基準位置と副軸側の位置決め基準位置は、それぞれ主軸構成部材と副軸構成部材の近傍位置あるいは主軸構成部材又は副軸構成部材を成している部分に設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、主軸構成部材と副軸構成部材の傾きと位置ずれを防止するのに最も効果的な位置に主軸側の位置決め基準位置と副軸側の位置決め基準位置が設けられることになるので、メインフレームの位置決め精度が向上し、部品精度や組立て精度の影響を極めて小さくすることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様に係るフレーム位置決め装置において、前記キャリッジの背面側上部の中央に、前記副軸構成部材に対するキャリッジの懸架部がそれぞれ形成され、前記キャリッジの背面側下部の両端に、前記主軸構成部材に対するキャリッジの懸架部がそれぞれ形成され、前記主軸側ネジ締結手段のネジ締結位置は、前記主軸構成部材を成している部分に設けられていると共に、当該主軸構成部材に対するキャリッジの前記懸架部の前記X方向における外側に設定されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、前記主軸側ネジ締結手段のネジ締結位置は、前記主軸構成部材を成している部分に設けられていると共に、当該主軸構成部材に対するキャリッジの前記懸架部の前記X方向における外側に設定されているので、主軸構成部材の位置決めにおいて最も効果的な位置に主軸側の位置決め基準位置を設けるに際して、そのネジ締結部分に発生する主軸構成部材の変形の影響をキャリッジガイド軸としては全く受けないようにすることができる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る記録装置は、記録ヘッドを搭載してX方向に往復移動させるキャリッジと、前記キャリッジの往復移動を案内する主軸構成部材と副軸構成部材とが設けられるメインフレームと、前記メインフレームを支持する記録装置本体のベース構造部材である剛的ベースフレームと、前記剛的ベースフレームに前記メインフレームを位置決め固定するフレーム位置決め装置とを備えた記録装置であって、前記フレーム位置決め装置は前記第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様のフレーム位置決め装置であることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、インクジェットプリンタ等の記録装置において、前記各態様のフレーム位置決め装置と同様の作用効果が得られるようになる。そしてキャリッジの往復動作が円滑になることに伴って記録品質も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明に係るフレーム位置決め装置及び該フレーム位置決め装置を備えた記録装置について説明する。最初に本願発明の記録装置を実施するための最良の形態としてインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明に係る実施例のフレーム位置決め装置を適用したインクジェットプリンタのプリンタ本体におけるフレーム構造を示す斜め前方からの斜視図、図2は同上、斜め後方からの斜視図である。また図3は同上、斜め前方からの分解斜視図、図4は同上、斜め後方からの分解斜視図である。
【0025】
インクジェットプリンタ100は、記録装置本体の一例であるプリンタ本体3を備えている。プリンタ本体3内には図1〜図4に示すようなフレーム構造5が設けられており、該フレーム構造5に対して後述する本発明の実施例に係るフレーム位置決め装置1が適用されている。フレーム構造5は、メインフレーム7と、該メインフレーム7を支持する支持構造部材である剛的ベースフレーム9とを備えることによって構成されている。そして、図示のメインフレーム7には、主軸構成部材となる主軸用ガイドレール11と、副軸構成部材となる副軸用ガイドレール13とが一体に形成されており、前記主軸用ガイドレール11と副軸用ガイドレール13を利用してキャリッジ10が往復移動方向となるX方向に往復移動可能に設けられている。
【0026】
剛的ベースフレーム9の後部中央には、図示しない自動給送装置が設けられる。自動給送装置は、多数枚の被記録材(以下、用紙ともいう)を積載する図示しない給送用トレイと、該給送用トレイ上の用紙を上方に押し上げる図示しないホッパと、該ホッパとの挟圧送り作用によって給送用トレイ上の上位の用紙を引き出して給送する図示しない給送用ローラ等を備えることによって構成されている。
【0027】
また、前記ホッパと給送用ローラとによる挟圧送り作用によって給送された用紙は、図示しない搬送経路に導かれ、一対のニップローラによって構成される図示しない搬送用ローラよって搬送力が付与されて記録ポジションに導かれる。記録ポジションには記録実行手段である図示しない記録ヘッドと、該記録ヘッドの移動手段である上述したキャリッジ10と、用紙の下面を支持して記録ヘッドとの間のギャップを規定する図示しないプラテンとが設けられている。そして、記録が実行された用紙は、一対のニップローラによって構成される図示しない排出用ローラによって用紙搬送方向下流端の図示しない排出用スタッカの載置面上に排出され、積畳状態でスタックされるようになっている。
【0028】
[実施例]
次に、このようにして構成されるインクジェットプリンタ100の前記フレーム構造5に対して適用される本実施例のフレーム位置決め装置1について図面に基づいて具体的に説明する。
【0029】
図5は本発明のフレーム位置決め装置のホームポジション側での作用(a)と、リターンポジション側での作用(b)を説明するための正面図である。図6はキャリッジがリターンポジションに位置している時のリターンポジション周辺の背面図である。図7はフレーム構造のリターンポジション側端部を拡大して示す斜め前方からの斜視図、図8は同上、側面図である。また図9はフレーム構造のホームポジション側端部を拡大して示す斜め後方からの斜視図である。
【0030】
本実施例のフレーム位置決め装置1は、上述したメインフレーム7と、剛的ベースフレーム9と、前記メインフレーム7を前記剛的ベースフレーム9に位置決め固定するネジ締結手段15とを備えることによって基本的に構成されている。メインフレーム7は、キャリッジ10の往復移動方向となるX方向に延びる前記主軸用ガイドレール11と副軸用ガイドレール13とを一体に備えるフレーム部材である。メインフレーム7は、一般的に用いられている金属製平板材料を、図示のような所定の形状に打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。
【0031】
メインフレーム7は、図1〜図4に示すように、剛的ベースフレーム9の上方空間を前後に仕切るように衝立状に設けられている。メインフレーム7の上端縁は、前方、そして下方に向けて逆U字状に折り曲げ加工されており、該折り曲げ加工部が副軸用ガイドレール13になっている。同様にメインフレーム7の下端縁は、前方、そして上方に向けてU字状に折り曲げ加工されており、該折り曲げ加工部が主軸用ガイドレール11になっている。尚、図8に示すように、下方の主軸用ガイドレール11の方が上方の副軸用ガイドレール13よりU字部の幅が大きくなるように形成されている。
【0032】
また、メインフレーム7の上方に位置する副軸用ガイドレール13における近傍位置の左右両端部付近には、副軸側ネジ締結手段を構成する2本の固定ネジ17、18を受け入れるネジ孔19、20が形成されている。一方、メインフレーム7の下方に位置する主軸用ガイドレール11の底面の左右両端部には、主軸側ネジ締結手段を構成する2本の固定ネジ21、22を受け入れる取付け穴23、24が最端部の近傍に形成されている。該取付け穴23、24の内方近傍には位置決め用の嵌合長穴25と嵌合穴26とがそれぞれ形成されている。
【0033】
また、メインフレーム7におけるホームポジション寄りの上下方向における中間付近の位置に、取付け穴27が設けられている。該取付け穴27は、メインフレーム7に対して取り付けられる搬送用ローラの軸受等を介して伝達される搬送用ローラのニップ荷重の反力等の作用部位に位置しており、該外力の影響を受けないように(メインフレーム7の変位を防ぐ)設けられる補強用の固定ネジ28を受け入れる取付け穴になっている。詳しくは後述する。
【0034】
また、図7に示したように、メインフレーム7におけるリターンポジション側の下部の側端縁29は、後方に向けて折り曲げられており、該側端縁29にはネジ孔30が形成されている。該ネジ孔30はモータブラケット31に対して形成されている取付け穴32側から挿入されるモータブラケット31取付用の固定ネジ33と螺合するネジ孔になっている。
【0035】
また、図6に示すように、キャリッジ10の背面側上部の中央には、前記副軸用ガイドレール13と係合する副軸側懸架部36が設けられている。また、キャリッジ10の背面側下部の両端には、前記主軸用ガイドレール11と係合する2つの主軸側懸架部34、35が設けられている。そして、前記副軸側の固定ネジ17、18のネジ締結位置は、前記副軸側懸架部36の移動範囲の外側に位置するように設定されている。また、前記主軸側の固定ネジ21、22のネジ締結位置は、キャリッジ10の背面側の下部両端部に位置する前記主軸側懸架部34、35の移動範囲の外側に位置するように設定されている。
【0036】
剛的ベースフレーム9は、前記メインフレーム7を所定の位置決め基準位置に位置決めした状態で支持する支持構造部材である。具体的には、ポリスチレン樹脂(PS)等のプラスチック成形材料を射出成形することによって形成されており、図1〜図4に示すように多数の補強リブ37、37、・・・を備えたボックス状構造体38によって剛的ベースフレーム9は構成されている。
【0037】
剛的ベースフレーム9には、前記メインフレーム7に対してキャリッジ10の往復移動方向となるX方向と直交する水平方向であるY方向から位置決め固定される副軸固定台39、40と、前記X方向とY方向と直交する垂直方向であるZ方向から位置決め固定される主軸固定台41、42とが上方に向けて立ち上げられている。
【0038】
副軸固定台39、40の上部前端面43、44には、U字状をした取付け凹部45、46が設けられており、後方側から挿入される前記固定ネジ17、18が前記取付け凹部45、46を通って前記メインフレーム7に形成されているネジ孔19、20にそれぞれ螺合するようになっている。
【0039】
一方、リターンポジション側の主軸固定台41の上面部47は平坦に形成されており、図示しない取付け穴が該上面部47に形成されている。上面部47には、図3、図4に示すような金属製の補強金具48が上面部47の下方から前記図示しない取付け穴を介して挿入される図示しない固定ネジによって取り付け固定されている。補強金具48の上面の一部には、キャリッジ移動範囲における外方にネジ孔49が形成されており、該ネジ孔49の近傍内方に位置決め軸50が上方に向けて立ち上げられている。尚、前記ネジ孔49には、上方から挿入される固定ネジ21がメインフレーム7の取付け穴23を通ってネジ締結される。また、この時、前記位置決め軸50はメインフレーム7の嵌合長穴25に進入し係合状態になる。
【0040】
他方のホームポジション側に位置する主軸固定台42は、図3に示したように、直接メインフレーム7に固定される構造になっている。即ち、主軸固定台42の上面にはキャリッジ移動範囲の外方にネジ孔51が刻設されているボス52が上方に向けて立ち上げられており、その近傍内方に位置決め軸53が同じく上方に向けて立ち上げられている。尚、前記ネジ孔51には、上方から挿入される固定ネジ22がメインフレーム7の取付け穴24を通ってネジ締結される。またこの時、前記位置決め軸53は、メインフレーム7の嵌合穴26に進入して係合状態になる。
【0041】
また、図5に示したように、剛的ベースフレーム9のホームポジション寄りの前後方向の中間位置には、ネジ孔54が刻設されており、該ネジ孔54と螺合する固定ネジ55によって、補強金具56が、図9に示すように取り付けられている。補強金具56は、図示のように上方に向かって延びる形状を有しており、その先端部には、ネジ孔57が形成されていて、メインフレーム7の取付け穴27側から挿入される前記固定ネジ28によってネジ締結されるように構成されている。
【0042】
この他、図7に示したように、剛的ベースフレーム9のリターンポジション側の端面には、前記モータブラケット31を剛的ベースフレーム9に固定するための2つのネジ孔58、58が設けられている。そして、モータブラケット31に設けられている2つの取付け穴59、59を介して挿入される2本の固定ネジ60、60と螺合してネジ締結されるように構成されている。
【0043】
ネジ締結手段15は、前記剛的ベースフレーム9の副軸側の位置決め基準位置(副軸固定台39、40に形成されている取付け凹部45、46が設けられている位置)に、前記メインフレーム7をY方向から位置決め固定する副軸側ネジ締結手段である前記固定ネジ17、18と、前記剛的ベースフレーム9の主軸側の位置決め基準位置(補強金具48に形成されているネジ孔49と主軸固定台42の上面に形成されているネジ孔51の位置)に、前記メインフレーム7をZ方向から位置決め固定する主軸側ネジ締結手段である前記固定ネジ21、22とを備えることによって基本的に構成されている。
【0044】
そして、本実施例では、補強金具56を介して剛的ベースフレーム9とメインフレーム7とを接続し、モータブラケット31を介して剛的ベースフレーム9とメインフレーム7とを接続しており、これらの接続手段として使用されている固定ネジ28、33、55、60もネジ締結手段15に含まれる。尚、このうち固定ネジ28は、前記固定ネジ17、18と同様、Y方向からメインフレーム7を位置決め固定するのに使用され、固定ネジ55は、固定ネジ21、22と同様、Z方向からメインフレーム7を位置決め固定するのに使用されている。これに対して、固定ネジ33と2本の固定ネジ60、60は、X方向からメインフレーム7を位置決め固定するのに使用されている。
【0045】
次に、このように構成される本実施例のフレーム位置決め装置1の作用を、(1)キャリッジがホームポジション側に位置している場合と、(2)キャリッジがリターンポジション側に位置している場合に分けて説明する。
【0046】
(1)キャリッジがホームポジション側に位置している場合(図5(a)参照)
図5(a)に示すように、キャリッジ10がホームポジション側に位置している場合には、主軸側の位置決め基準位置であるネジ孔51の位置は、主軸用ガイドレール11を成している当該位置に設けられている。また、副軸側の位置決め基準位置である取付け凹部46の位置は、副軸用ガイドレール13の近傍位置に設けられている。更に、主軸側の固定ネジ22のネジ締結位置である取付け穴24及びネジ孔51の位置は、キャリッジ10の移動範囲の外方(図5(a)において右方)端部に位置する主軸側懸架部35の外方(右側)に設定されている。また、副軸側の固定ネジ18のネジ締結位置である取付け凹部46及びネジ孔20の位置は、キャリッジ10の副軸側懸架部36の外側(右側)に設定されている。
【0047】
従って、剛的ベースフレーム9の採用と、副軸側の位置決め基準位置をY方向に設定したことによるメインフレーム7の撓み変形量の減少と、メインフレーム7のY方向への傾きの防止と相俟ってホームポジション側でのメインフレーム7の位置決め精度を向上させ、キャリッジ10の安定した円滑な往復動作を実現することが可能になる。また、ホームポジション側では、図示しない搬送用ローラの軸受部61等にニップ荷重がかかるので、経時的に剛的ベースフレーム9の前記軸受部61を下方に変位させるような下向きの力が作用する。そして、前記ニップ荷重の反力によってメインフレーム7を上方に変位させるような上向きの力がメインフレーム7に作用するようになる。しかし上述したようにホームポジション側には補強金具56が設けられているので、前記上向きの力によって生ずるメインフレーム7の上方への変位は防止されている。
【0048】
(2)キャリッジがリターンポジション側に位置している場合(図5(b)参照)
図5(b)に示すように、キャリッジ10がリターンポジション側に位置している場合には、主軸側の位置決め基準位置であるネジ孔49の位置は主軸用ガイドレール11が設けられている当該位置に設けられている。また副軸側の位置決め基準位置である取付け凹部45の位置は副軸用ガイドレール13の近傍位置に設けられている。更に主軸側の固定ネジ21のネジ締結位置である取付け穴23及びネジ孔49の位置は、キャリッジ10の移動範囲の外方(図5(b)において左方)端部に位置する主軸側懸架部34の外側(左側)に設定されている。また、副軸側の固定ネジ17のネジ締結位置である取付け凹部45及びネジ孔19の位置は、キャリッジ10の副軸側懸架部36の外側(左側)に設定されている。
【0049】
従って、剛的ベースフレーム9の採用と、副軸側の位置決め基準位置をY方向に設定したことによるメインフレーム7の撓み変形量の減少と、メインフレーム7のY方向への傾きの防止と相俟ってリターンポジション側でのメインフレーム7の位置決め精度を向上させ、キャリッジ10の安定した円滑な往復動作を実現するこが可能になる。また、リターンポジション側には、上述したようにモータブラケット31が設けられており、該モータブラケット31をメインフレーム7に固定している固定ネジ33と、該モータブラケット31を剛的ベースフレーム9に固定している2本固定ネジ60、60がX方向に作用するように設けられているから、メインフレーム7のX方向の位置決め精度の向上も図られている。
【0050】
また、前記モータブラケット31は、前記補強金具56と同様、外力によって生ずるメインフレーム7の上方への変位の発生を防止する作用も有している。また、リターンポジション側では、主軸固定台41とメインフレーム7との間に補強金具48を介在している。従って、当該補強金具48を介在させることによってメインフレーム7と主軸固定台41との間の取付け強度が大幅に増強されている。
【0051】
[他の実施例]
本願発明に係るフレーム位置決め装置1、該フレーム位置決め装置1を備えた記録装置100は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0052】
例えば、前記実施例においては、メインフレーム7は前記剛的ベースフレーム9の所定の位置決め基準位置にネジ締結手段15によってネジ締結されることによって、メインフレーム7の傾きと取付け位置が自動的に矯正されるように構成されるようになっているが、前記ネジ締結手段15と併用して、あるいはネジ締結手段15とは別に矯正用の位置決めピンと位置決め穴を設けておき、これらを嵌合させることによってメインフレーム7の位置決めと矯正とを同時に実行するようにすることが可能である。
【0053】
また、主軸構成部材と副軸構成部材は、双方をガイドレールで構成する他、いずれか一方をガイド軸によって構成したり、これらの双方をガイド軸によって構成することも可能である。また、本発明のフレーム位置決め装置1は、インクジェットプリンタ100以外の他の記録装置や他の種々の電子機器等に対して適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例に係るフレーム位置決め装置を適用したフレーム構造を示す前方からの斜視図。
【図2】同フレーム位置決め装置を適用したフレーム構造を示す後方からの斜視図。
【図3】同フレーム位置決め装置を適用したフレーム構造を示す前方からの分解斜視図。
【図4】同フレーム位置決め装置を適用したフレーム構造を示す後方からの分解斜視図。
【図5】同フレーム位置決め装置の作用を示す正面図。
【図6】同フレーム位置決め装置を示すリターンポジションでの背面図。
【図7】同フレーム構造のリターンポジション側端部を示す拡大斜視図。
【図8】同フレーム構造のリターンポジション側端部を示す側面図。
【図9】同フレーム構造のホームポジション側端部を示す拡大斜視図。
【図10】従来のフレーム位置決め装置を示すリターンポジションでの背面図。
【符号の説明】
【0055】
1 フレーム位置決め装置、3 プリンタ本体(記録装置本体)、5 フレーム構造、7 メインフレーム、9 剛的ベースフレーム、10 キャリッジ、11 主軸用ガイドレール(主軸構成部材)、13 副軸用ガイドレール(副軸構成部材)、15 ネジ締結手段、17 固定ネジ(副軸側ネジ締結手段)、18 固定ネジ(副軸側ネジ締結手段)、19 ネジ孔、20 ネジ孔、21 固定ネジ(主軸側ネジ締結手段)、22 固定ネジ(主軸側ネジ締結手段)、23 取付け穴、24 取付け穴、25 嵌合長穴、26 嵌合穴、27 取付け穴、28 (補強用の)固定ネジ、29 側端縁、30 ネジ孔、31 モータブラケット、32 取付け穴、33 固定ネジ、34 主軸側懸架部、35 主軸側懸架部、36 副軸側懸架部、37 補強リブ、38 ボックス状構造体、39 副軸固定台、40 副軸固定台、41 主軸固定台、42 主軸固定台、43 上部前端面、44 上部前端、45 取付け凹部、46 取付け凹部、47 上面部、48 補強金具、49 ネジ孔、50 位置決め軸、51 ネジ孔、52 ボス、53 位置決め軸、54 ネジ孔、55 固定ネジ、56 補強金具、57 ネジ孔、58 ネジ孔、59 取付け穴、60 固定ネジ、61 軸受部、100 インクジェットプリンタ(記録装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリッジのX方向への移動をガイドする主軸構成部材と副軸構成部材とを一体に備えるメインフレームと、
前記メインフレームを所定の位置決め基準位置に位置決めした状態で支持する剛的ベースフレームと、
前記メインフレームを前記剛的ベースフレームに位置決め固定するネジ締結手段とを備え、
前記ネジ締結手段は、
前記剛的ベースフレームの副軸側の位置決め基準位置に前記メインフレームを前記X方向と直交するY方向から位置決め固定する副軸側ネジ締結手段と、
前記剛的ベースフレームの主軸側の位置決め基準位置に前記メインフレームを前記X方向及びY方向と直交するZ方向から位置決め固定する主軸側ネジ締結手段、とを備えていることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフレーム位置決め装置において、
前記メインフレームは、前記剛的ベースフレームの所定の位置決め基準位置にネジ締結手段によってネジ締結されることによってメインフレームの傾きと取付け位置が自動的に矯正される構成であることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフレーム位置決め装置において、
前記メインフレームは、金属製平板材料を所定の形状に打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されており、
前記主軸構成部材は、前記メインフレームの下端縁をU字状に折り曲げ加工することによって形成される主軸用ガイドレールであり、
前記副軸構成部材は、前記メインフレームの上端縁を逆U字状に折り曲げ加工することによって形成される副軸用ガイドレールであることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレーム位置決め装置において、
前記剛的ベースフレームは、プラスチック成形材料を射出成形することによって形成され、補強リブを備えたボックス状構造体であることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のフレーム位置決め装置において、
前記主軸側の位置決め基準位置と副軸側の位置決め基準位置は、それぞれ主軸構成部材と副軸構成部材の近傍位置あるいは主軸構成部材又は副軸構成部材を成している部分に設けられていることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項6】
請求項5に記載のフレーム位置決め装置において、
前記キャリッジの背面側上部の中央に、前記副軸構成部材に対するキャリッジの懸架部がそれぞれ形成され、
前記キャリッジの背面側下部の両端に、前記主軸構成部材に対するキャリッジの懸架部がそれぞれ形成され、
前記主軸側ネジ締結手段のネジ締結位置は、前記主軸構成部材を成している部分に設けられていると共に、当該主軸構成部材に対するキャリッジの前記懸架部の前記X方向における外側に設定されていることを特徴とするフレーム位置決め装置。
【請求項7】
記録ヘッドを搭載してX方向に往復移動させるキャリッジと、
前記キャリッジの往復移動を案内する主軸構成部材と副軸構成部材とが設けられるメインフレームと、
前記メインフレームを支持する記録装置本体のベース構造部材である剛的ベースフレームと、
前記剛的ベースフレームに前記メインフレームを位置決め固定するフレーム位置決め装置とを備えた記録装置であって、
前記フレーム位置決め装置は請求項1〜6のいずれか1項に記載のフレーム位置決め装置であることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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