説明

フロアカーペット用クリップ

【課題】現場での作業性が良好であり、しかも、車両解体の際にも簡単にワイヤハーネスを取り出すことが可能なフロアカーペット用クリップを提供する。
【解決手段】フロアカーペット5にある開口及びフロアパネル4にある穴4aにステム部15を挿通させて中空ホルダー11をフロアパネル4に固定した際に、水平突出部14とフロアパネル4がフロアカーペット5を狭持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車のような車両のフロアに敷設されるフロアカーペットを固定するためのクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアパネル上にはフロアカーペットが敷設されるのが一般的であるが、単にフロアパネルの上面にフロアカーペットを敷設したのでは端がめくれる、あるいはフロアパネル上をフロアカーペットが動いてしまうので、何らかの固定手段を用いてカーペットを固定するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−279907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者の知見によると、そのような固定手段の一例として、ワイヤハーネスを保持するホルダーの上部に突片を設け、それをフロアカーペットの端部に形成された開口に引っ掛けることにより固定するクリップがあった。
【0005】
その一例は、図7に示す通りであり、ワイヤハーネス(図示せず)が内部を軸方向に引き回される略筒状のホルダー1から構成されている。該ホルダー1は、上方に延びる突片2を上部に有すると共に、下方に延びるステム部3を下部に有している。ホルダー1のステム部3はフロアパネル4に形成された穴に嵌合し、突片2はフロアカーペット5に形成された開口6に係合するようになっている。
【0006】
しかしながら、敷設前のフロアカーペット5、特にその車両幅方向の端部は必ずしも平坦な状態にはなっていないため、該端部に形成された開口をホルダー1の突片2に確実に引っ掛けることがそれほど容易ではなく、しかも、引っ掛けた後に外れ易いということがあり、現場での作業性に問題があった。
【0007】
また、車両解体時にホルダー1内のワイヤハーネスを車両から取外し回収する際には、車両の長手方向に離間して配置された幾つかのホルダー1を覆うトリム(内装)を先ず外し、次いでフロアカーペット5をホルダー1から除去してからワイヤハーネスを取り外すという面倒な手順で回収が行われていた。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、現場での作業性が良好であり、しかも、車両解体の際にも簡単にワイヤハーネスを取り出すことが可能なフロアカーペット用クリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るフロアカーペット用クリップは、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 車両のフロアパネルに敷設されるフロアカーペットを固定するために内部にワイヤハーネスが引き回される中空ホルダーと、
前記フロアカーペットにある開口及び前記フロアパネルにある穴を通るように前記中空ホルダーの下半部から下方に延びるフランジ付きのステム部と、
前記中空ホルダーの下半部に設けられた、前記フロアカーペットを上方から押さえ付けるカーペット押え手段と、
を備え、
前記フロアカーペットにある開口及び前記フロアパネルにある穴に前記ステム部を挿通させて前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記カーペット押さえ手段と前記フロアパネルが前記フロアカーペットを狭持すること。
(2) 上記(1)の構成のフロアカーペット用クリップであって、
前記カーペット押え手段は、前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記フロアパネルが形成する平面に対して平行に、前記中空ホルダーから延びる水平突出部によって形成され、
前記水平突出部は、下面で前記フロアカーペットと面接触すること。
(3) 上記(2)の構成のフロアカーペット用クリップであって、
前記ステム部のフランジは可撓性を有し、該フランジの下面と前記水平突出部の下面との間の前記フロアパネルが形成する平面に対して垂直な方向の距離は、前記フロアカーペットの自由状態の厚さよりも小さいこと。
(4) 上記(2)または(3)の構成のフロアカーペット用クリップであって、
前記水平突出部は、前記ホルダーの長手方向軸心に沿って全長にわたり延びていること。
(5) 上記(1)から(4)のいずれか一つの構成のフロアカーペット用クリップであって、
前記中空ホルダーの下半部の一部は、該中空ホルダーが固定された前記フロアパネルに対して垂直に立設しており、前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記フロアカーペットにある開口を画成するカーペットの縁部に接触すること。
【0010】
上記(1)の構成によれば、ホルダーのステム部に設けられたフランジの助成の下に、フロアカーペットをホルダーのカーペット押え手段でフロアパネルに対して上から押え付けて固定するので、フロアカーペットがホルダーから外れ易いということがない。しかも車両の解体時にワイヤハーネスを取り外す際にはフロアカーペットを除去する手順が不要となり、作業性の良いクリップを提供することができる。
上記(2)の構成によれば、前記カーペット押え手段は水平突出部であり、その水平な下面で前記フロアカーペットの端部と面接触するので、フロアカーペットの位置ズレを一層確実に防止することができる。
上記(3)の構成によれば、前記フランジは可撓性であり、前記フロアカーペットの固定前の前記フランジの下面と前記水平突出部の下面との間の垂直方向の距離が特別な値に設計されているので、フロアカーペットの位置ズレを更に一層確実に防止することができる。
上記(4)の構成によれば、フロアカーペットの端部を押える前記水平突出部が前記ホルダーの長手方向軸心に沿って全長にわたり延びているので、フロアカーペットの安定的な保持に大きく寄与することができる。
上記(5)の構成によれば、構造を複雑にすることなくホルダーによる固定前のフロアカーペットを所定位置に保持することができる。これはホルダーによるフロアカーペットの固定作業を容易にする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホルダーのステム部に設けられたフランジの助成下に、フロアカーペットをホルダーのカーペット押え手段でフロアパネルに対して上から押え付けて固定するので、フロアカーペットがホルダーから外れ易いということがなく、しかも車両の解体時にワイヤハーネスを取り外す際にはフロアカーペットを除去する手順が不要となる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な実施形態によるフロアカーペット用クリップを示す、使用状態の断面図である。
【図2】図1に示したクリップ単体の斜視図である。
【図3】図2のクリップの横断面図である。
【図4】図3の底面図である。
【図5】図1に示したクリップの使用状態の斜視図である。
【図6】フロアパネルに形成した穴とフロアカーペットに形成した開口の位置関係を示す斜視図である。
【図7】従来のクリップを示す使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図5において、本発明の好適な実施形態によるクリップ10は、ほぼ筒状の本体部を形成する、筒状形状が上下に分割された上半部11a及び下半部11bから構成される樹脂製ホルダー11である。該ホルダー11は、種々の部分を有するが、フロアカーペット5の固定に直接関与していない部分については説明を省略する。
【0015】
ホルダー11の上半部11a及び下半部11bは、ヒンジ11cにより互いに結合されており、ヒンジ11cを介して揺動することにより、図示しない開放状態と図1に示す閉止状態とに切り替えることができる。弧状に湾曲した上半部11aは、ヒンジ11cを介して結合された部分とは反対側のその端部に、閉止状態にある下半部11bに向けて垂直下方に延びる延長部12を有しており、該延長部12の下端外側には爪状の突起12a(図3参照)が形成されている。
【0016】
同様に弧状に湾曲した下半部11bには、上半部11aに対する上述の閉止状態において延長部12を受け入れうる位置に、上端が開放したほぼ縦コ字状もしくはU字状の受容部13が設けられている。該受容部13の内部には、上半部11aの爪状の突起12aに組み合う爪状の突起13aが設けられている。上半部11aを下半部11bに向かって押し込むと、上半部11aの延長部12が下半部11bの受容部13に入って延長部12の突起12aが受容部13の突起13aの下方に入って互いに組み合い、ホルダー11の組立てが完了する。上半部11aから垂直下方に延びる延長部12と下半部11bに設けられた受容部13とは上半部11a及び下半部11bの嵌合手段を構成する。
【0017】
また、ホルダー11の下半部11bにある上述の受容部13を構成する側壁13b,13c及び底壁13dのうち、ホルダー11の長手方向軸心に関して外側にある側壁13cの外面はフロアパネル4に関して垂直に立ち上がっており、底壁13dの下面はフロアパネル4に沿って平行に延びている。従って、上半部11aの延長部12のための受容部13は下半部11bの嵌合手段となるだけでなく、フロアパネル4によって形成される平面と同一方向へのフロアカーペット5の位置ズレを規制する手段ともなる。
【0018】
更に、下半部11bは、この受容部13とは反対側にフロアカーペット5の押え手段を構成する水平突出部14を備えている。該水平突出部14の下面14aは、フロアカーペット5が敷設されるフロアパネル4と平行に延びるように水平に形成されている。この水平突出部14は、ホルダー11の長手方向軸心に沿って全長にわたり延びていることがフロアカーペット5の安定的な保持のために好ましい。
【0019】
更に、ホルダー11の下半部11bは、その最下部から下方に延びる長円形横断面のステム部15を備えている。該ステム部15は、下半部11bの底部に近い位置に若干の可撓性を有するフランジ15aを有すると共に、該フランジ15aの直下にある対のバヨネットピン15bを有している。フロアパネル4には該ステム部15を受け入れる長円形の開口が形成されている。フランジ15aの下面と水平突出部14の下面14aとの間の垂直方向の距離は、ホルダー11によるフロアカーペット5の固定状態において、水平突出部14の下面14aがフロアカーペット5の端部を若干圧縮状態で押え付けられるように選択されていることが好ましい。
【0020】
バヨネットピン15bの上端(クリップ10がフロアパネル4に固定された際の該フロアパネル4に接触する端部)とフランジ15aの下面とは垂直方向に離間しており、その離間距離はフロアパネル4の厚さにほぼ相当している。ホルダー11によるフロアカーペット5の固定状態においては、バヨネットピン15bがフロアパネル4の下方に入り込むことにより、ホルダー11はフロアパネル4に保持される。
【0021】
次に、フロアパネル4へのホルダー11の搭載過程について説明する。先ず、図6に示すようにフロアカーペット5にある開口5aをフロアパネル4にある長円形の穴4aに位置合わせしてから、ワイヤハーネスを組み付けた状態の該ホルダー11のステム部15をフロアパネル4の穴4aに半挿入状態で嵌合する。その際、ホルダー11の下半部11bにある受容部13の側壁13cの垂直面がフロアカーペット5の開口5aを画成する縁部に当たると共に、ホルダー11のステム部15がフロアパネル4の穴4aに嵌合する。
【0022】
この結果、本発明の実施の形態のクリップによれば、受容部13の側壁13cによりフロアカーペット5のフロアパネル4と平行な方向への移動が規制され、フロアカーペット5の位置ズレが防止される。また、ホルダー11の下半部11bにある水平突出部14の下面14aがフロアカーペット5の上面を押え付けることにより、従来のようなカーペットのクリップからの浮き上がりを防止することができる。
【0023】
さらに、ホルダー11のステム部15がフロアパネル4の穴4aに全挿入状態で嵌合することにより、ステム部15に設けられたフランジ部15aがフロアパネル4の上面を押え付けると共に、ホルダー11の下半部11bにある水平突出部14の下面14aがフロアカーペット5の上面を押え付けることにより反発力が発生し、ホルダー11はフロアパネル4に強固に固定される。しかも、水平突出部14の下面14aがフロアカーペット5の端部と面接触するので、フロアカーペット5の位置ズレは更に確実に防止される。
【0024】
また、本発明の実施の形態のクリップによれば、フロアカーペット5の上方にワイヤハーネスを保持するクリップが位置するため、車両解体時にワイヤハーネスを取り出す際に、フロアカーペット5を取り外す必要がなくなり、車両解体時のフロアカーペットの取り外しに伴う手間を省くことができる。このように車両解体に伴う手間が軽減されることは、ワイヤハーネスのリサイクルの促進に寄与する。
【0025】
また、クリップの上半部にフロアカーペットが乗り上げた状態で該フロアカーペットを固定する構成と比較すると、本発明の実施の形態のクリップ10にはフロアカーペット5が乗り上げない分、フロアカーペット5のサイズを小さくすることができる。
【0026】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0027】
4 フロアパネル
4a フロアパネルにある穴
5 フロアカーペット
5a フロアカーペットにある開口
10 クリップ
11 ホルダー
11a 上半部
11b 下半部
11c ヒンジ
12 延長部
12a 爪状の突起
13 受容部
13a 爪状の突起
13c 受容部の側壁
13d 受容部の底壁
14 水平突出部
14a 水平な下面
15 ステム部
15a フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに敷設されるフロアカーペットを固定するために内部にワイヤハーネスが引き回される中空ホルダーと、
前記フロアカーペットにある開口及び前記フロアパネルにある穴を通るように前記中空ホルダーの下半部から下方に延びるフランジ付きのステム部と、
前記中空ホルダーの下半部に設けられた、前記フロアカーペットを上方から押さえ付けるカーペット押え手段と、
を備え、
前記フロアカーペットにある開口及び前記フロアパネルにある穴に前記ステム部を挿通させて前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記カーペット押さえ手段と前記フロアパネルが前記フロアカーペットを狭持することを特徴とするフロアカーペット用クリップ。
【請求項2】
前記カーペット押え手段は、前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記フロアパネルが形成する平面に対して平行に、前記中空ホルダーから延びる水平突出部によって形成され、
前記水平突出部は、下面で前記フロアカーペットと面接触することを特徴とする請求項1に記載のフロアカーペット用クリップ。
【請求項3】
前記ステム部のフランジは可撓性を有し、該フランジの下面と前記水平突出部の下面との間の前記フロアパネルが形成する平面に対して垂直な方向の距離は、前記フロアカーペットの自由状態の厚さよりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のフロアカーペット用クリップ。
【請求項4】
前記水平突出部は、前記ホルダーの長手方向軸心に沿って全長にわたり延びていることを特徴とする請求項2または3に記載のフロアカーペット用クリップ。
【請求項5】
前記中空ホルダーの下半部の一部は、該中空ホルダーが固定された前記フロアパネルに対して垂直に立設しており、前記中空ホルダーを前記フロアパネルに固定した際に、前記フロアカーペットにある開口を画成するカーペットの縁部に接触することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフロアカーペット用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173475(P2010−173475A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18355(P2009−18355)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】