説明

フロアポリッシュ組成物

【課題】良好なレベリング性能を提供し、かつ植物ベースのまたは他の再生可能な原料から全体的にもしくは部分的に製造されるレベリング剤を含むフロアポリッシュ組成物の提供。
【解決手段】(a)酸官能性残基を有する1種以上の水不溶性ポリマーの懸濁物または分散物;および(b)下記式(I)を有する1種以上のレベリング剤;


(式中、xは0.5〜10の範囲内の実数であり;yは2〜20の範囲内の実数であり;および、Rは2種以上の線状アルキル部分の混合を表し、その線状アルキル部分はそれぞれ、4〜20の偶数個の炭素原子を有する1以上の線状アルキル基を含む)を含む水性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
レベリングはフロアポリッシュを特徴づける鍵となる性能特性である。液体フロアポリッシュ組成物が床に適用された後で、乾燥したフロアポリッシュが滑らかで光沢のある表面を有し、隆起、渦または他の印がないことが望まれる。このような印は、通常、液体組成物において、床に組成物を適用するために使用されるストリングモップアプリケーターまたは他の道具によって形成される。この目的を達成するために、多くの場合フロアポリッシュ組成物中にレベリング剤が含まれる。
【0002】
一般的なレベリング剤の1つはトリス−ブトキシエチルホスファート(TBEP)であり、これは高価であってかつ水性フロアポリッシュ組成物中に組み込むのが困難である。過剰量のTBEPは、乾燥したフロアポリッシュを永続的に可塑化することができ、このことは耐摩耗性を低減させ、かつ汚れを増大させる。TBEPは、場合によっては、フロアポリッシュが黄変する傾向を増大させる。TBEPはホスファート基を含み、そのような化合物が最終的に環境中に入るのは望ましくない。他の一般的に使用される成分は、フタル酸ジオクチル(DOP)であり、これはおそらくレベリング剤として機能しうる可塑剤である。DOPおよびTBEPは両方とも石油ベースの原料から製造される。
【0003】
米国特許第4,460,734号は、合成ポリアルコキシ化線状脂肪族アルコールを含むレベリング剤を開示する。第4,460,734号に記載されるこのレベリング剤における脂肪族基のいくつかは、奇数個の炭素原子を有し、これはその物質が石油ベースの原料から製造されたことを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,460,734号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
良好なレベリング性能を提供し、同時に本明細書において上述された欠点の一以上を克服する、フロアポリッシュ組成物のためのレベリング剤を提供することが望まれる。例えば、良好なレベリング性能を提供し、かつ植物ベースのまたは他の再生可能な原料から全体的にもしくは部分的に製造されるフロアポリッシュ組成物のためのレベリング剤を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態においては、
(a)酸官能性残基を有する1種以上の水不溶性ポリマーの懸濁物または分散物;および
(b)下記式(I)を有する1種以上のレベリング剤;
【化1】

(式中、xは0.5〜10の範囲内の実数であり;yは2〜20の範囲内の実数であり、およびRは2種以上の線状アルキル部分の混合を表し、その線状アルキル部分はそれぞれ、4〜20の偶数個の炭素原子を有する1以上の線状アルキル基を含む)
を含む水性ポリマー組成物が提供される。
本発明の第2の形態においては、このような水性組成物を含む水性フロアポリッシュが提供される。
本発明の第3の形態においては、このようなフロアポリッシュを適用することによって床をコーティングする方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願における範囲の各出現は、他のことが示されない限りは、その範囲を画定する両方の端点を含む。言い換えれば、2〜10の範囲は、他のことが示されない限りは、必然的に2および10の双方を含む。
【0008】
本明細書において、組成物中の具体的な化合物の量が、その化合物が「ほとんどまたは全くない」量として記載される場合には、その組成物中にその化合物が全く存在しないか、またはその組成物中にその化合物が幾分か存在する場合には、その量は組成物の乾燥重量を基準にして0.1重量%以下のその化合物である。
【0009】
本明細書において使用される場合には、「(メタ)アクリラート」および「(メタ)アクリル」は、それぞれ、「アクリラートまたはメタクリラート」および「アクリルまたはメタクリル」を意味する。
【0010】
本明細書において使用され、FWビルメイヤー(Billmeyer)JR.によってポリマー科学のテキストブック(Textbook of Polymer Science)第2版、1971に定義されるように、「ポリマー」はより小さな化学繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きな分子である。ポリマーは線状、分岐、星形、ループ、超分岐、架橋またはこれらの組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは単一の種類の繰り返し単位を有することができ(ホモポリマー)またはポリマーは1種より多い繰り返し単位を有することができる(コポリマー)。コポリマーは、ランダムに、シークエンスで、ブロックで、他の配置で、またはこれらの何らかの混合もしくは組み合わせで配置された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0011】
ポリマー分子量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC、ゲル透過クロマトグラフィーまたはGPCとも称される)などの標準的な方法によって測定されうる。一般的に、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極端に高いMwを有することができ;あるポリマーは1,000,000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋されており、架橋されたポリマーは無限のMwを有するものとみなされる。あるポリマーはMnすなわち数平均分子量によって特徴づけられる。
【0012】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの重量」とはポリマーの乾燥重量を意味する。
【0013】
本明細書においては、互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成できる分子は「モノマー」と称される。モノマーから形成されるポリマーの繰り返し単位は、本明細書においては、そのモノマーの重合残基と称される。
【0014】
本明細書において使用される場合、ある物質がその物質の全重量を基準にして少なくとも25重量%の水を含む場合には、その物質は「水性」である。
本明細書において使用される場合、「分散物」は場合によっては、いくつかある成分の中で、連続媒体中に懸濁されている別々になっている粒子を含む。連続媒体が、連続媒体の重量を基準にして、少なくとも50重量%の水を含む場合には、その分散物は「水性分散物」であると称され、そしてその連続媒体は「水性媒体」であると称される。分散物中で懸濁されて別々になっている粒子の少なくとも幾分かが1種以上のポリマーを含む場合には、その分散物は、本明細書において、「ポリマー分散物」と称される。よって、「水性ポリマー分散物」は、少なくとも50%が水である連続媒体中に懸濁されているポリマー含有粒子を含む。
【0015】
本明細書において使用される場合、「エマルションポリマー」は乳化重合によって製造されたポリマーであり;このようなポリマーは「ラテックス」とも称される。
【0016】
本明細書において使用される場合、「フロアポリッシュ」は、床上にコーティングを形成するのに有用な液体組成物である。
【0017】
本発明の実施は水性ポリマー分散物の使用を伴う。水性ポリマー分散物は任意の方法によって製造されうる。ある実施形態においては、任意の手段によって1種以上のポリマーが製造され、次いで非ポリマー化合物(例えば、溶媒、キャリア、重合媒体など)の大部分を除去して、1種以上のポリマーを粒子の形態にする方法で処理され;このような実施形態においては、その粒子は、次いで、水中に分散されうる。ある実施形態においては、ポリマーは、水性ポリマー分散物の形態のポリマーを作成する方法によって製造され;このような方法には、例えば、水性懸濁重合および水性乳化重合が挙げられる。天然に存在する水性ポリマー分散物、例えば、天然ゴムラテックスなどもいくつかの実施形態に好適である。
【0018】
本発明のポリマー組成物は、1種以上の水不溶性ポリマーの水性分散物を含む。すなわち、このポリマー粒子は水中で粒子のままであり、かつ水中に分子レベルで溶解しない。この不溶性ポリマー粒子は水と接触したときに膨潤しても良いし、膨潤しなくても良い。本発明のポリマーは酸官能性残基も含む。本発明の水非感受性酸官能性ポリマーは、本明細書において、「WIAF」ポリマーと称される。
【0019】
ポリマーの重要な特徴の1つは、フォックス式(T.G.フォックス(Fox)、Bull.Am.Phys.Soc.1,123(1956))によって計算されるガラス転移温度(Tg)である。
【0020】
本発明のある実施形態は、−60℃〜150℃のTgを有する1種以上のWIAFポリマーを使用する。ある実施形態においては、本発明のポリマー組成物は0℃〜110℃のTgを有する少なくとも1種のWIAFポリマーを含む。ある実施形態においては、本発明のポリマー組成物は、フォックス式を用いて計算して、少なくとも10℃の、好ましくは少なくとも40℃のTgを有する少なくとも1種のWIAFポリマーを含む。
【0021】
WIAFポリマーは酸官能性残基を含む。すなわち、ポリマーに結合した酸官能基が存在する。好適な酸官能基には、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホアルキル基(すなわち、構造−ROP(=O)(OH)、(式中、Rはアルキル基である)を有する基)、およびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、カルボキシル基が存在する。
【0022】
酸官能基は任意の方法でポリマーに結合されることとなりうる。ある実施形態においては、ポリマーが製造され、次いで、重合後に起こる化学反応によって酸官能基がそのポリマーに結合させられる。別の実施形態においては、酸官能基を有するモノマーが使用され、そして重合プロセスが酸官能基をそのまま残す。
【0023】
ポリマー上の酸官能基の量は、酸官能基が結合している重合されたモノマー残基からなる、ポリマー重量のパーセンテージによって特徴づけられる。酸官能基が重合前にモノマーに結合していたかどうかにかかわらず、重合されたモノマー単位の重量は酸官能基を含む。例えば、ポリマーが、モノマー混合物の重量を基準にして5重量%の酸官能性モノマーを含むモノマー混合物から製造される場合には、そのポリマーは5重量%の酸官能性残基を有すると称される。
【0024】
本発明のポリマー組成物中に使用されるWIAFポリマーは任意の組成を有することができる。ある実施形態においては、ビニルモノマーの重合により製造される1種以上のWIAFポリマーが使用される。ある好適なビニルモノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸、他のエチレン性不飽和酸、アルキル基が1〜20の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリルアミド、他の(メタ)アクリルモノマー、およびこれらの混合物が挙げられる。また、好適なのは、置換アクリルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシアルキル、(メタ)アクリル酸ホスホアルキル、およびこれらの混合物などである。また、好適なのは、例えば、ビニル芳香族モノマー、酢酸ビニル、アセト酢酸アリル、(メタ)アクリロニトリル、およびこれらの混合物である。好適なモノマーの混合物も好適である。
【0025】
好適なビニル芳香族モノマーには、例えば、アルファ,ベータエチレン性不飽和芳香族モノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、p−クロロスチレン、o−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、アリルフェニルエーテル、アリルトリルエーテル、アルファ−メチルスチレンおよびこれらの混合物などが挙げられる。ある実施形態においては、スチレンが使用される。
【0026】
ある実施形態においては、ビニル芳香族モノマーは使用されない。ビニル芳香族が使用される実施形態においては、その量はゼロを超えるあらゆる量であることができる。ある実施形態においては、ポリマー中のビニル芳香族モノマーの残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして、10重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、ポリマー中のビニル芳香族モノマーの残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして、70重量%以下、または50重量%以下である。
【0027】
好適な酸性モノマーには、例えば、アルファ,ベータモノエチレン性不飽和酸、例えば、メタクリル酸ホスホエチル、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、クロトン酸、シトラコン酸、アクリルオキシプロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびこれらの混合物などが挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸およびそれらの混合物が好ましい。メタクリル酸が最も好ましい。他の好適な酸官能性モノマーは、例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸の部分エステル、およびこのような酸のアルキルハーフエステルである。例えば、アルキル基が1〜6個の炭素原子を含む、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のアルキルハーフエステル、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、およびマレイン酸モノメチルなど。
【0028】
ある実施形態においては、WIAFポリマー中の酸官能性モノマーの残基の量は、ポリマーの重量を基準にして1重量%以上;または3重量%以上;または5重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、WIAFポリマー中の酸官能性モノマーの残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして50重量%以下;または20重量%以下である。
【0029】
好適な(メタ)アクリル酸アルキルモノマーには、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸シクロプロピル、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
ある実施形態においては、ポリマー中の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして10重量%以上;または20重量%以上;または30重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、WIAFポリマー中の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーの残基の量は、ポリマーの重量を基準にして97重量%以下;または70重量%以下である。
【0031】
ある実施形態においては、WIAFポリマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、少なくとも1種の酸性モノマー、および少なくとも1種の(メタ)アクリル酸(C−C20)アルキルモノマーの組み合わせの重合残基を含む。
【0032】
ある実施形態においては、WIAFポリマーは1種以上の架橋剤モノマーの重合残基を含む。架橋剤モノマーは、2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーである。ある好適な架橋剤モノマーには、例えば、ジビニル芳香族モノマー;ジ−、トリ−およびテトラ−(メタ)アクリラートエステル;ジ−、トリ−およびテトラ−アリルエーテルもしくはエステル化合物;並びに(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。ある実施形態においては、架橋剤モノマーの量はゼロである。ある実施形態においては、架橋剤モノマーの量はゼロを超える任意の量である。架橋剤モノマーの量がゼロを超える実施形態においては、架橋剤モノマーの重合残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして0.3重量%以上;または0.5重量%以上である。独立して、架橋剤モノマーの量がゼロを超える実施形態においては、架橋剤モノマーの重合残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして3.5重量%以下;または3重量%以下;または2.5重量%以下である。
【0033】
ある実施形態においては、WIAFポリマーは1種以上のアミノモノマーの重合残基を含む。好適なアミノモノマーには、第一級、第二級および第三級アミノ官能性モノマーが挙げられる。ある好適なアミノモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、およびこれらの混合物である。ある実施形態においては、アミノモノマーの量はゼロである。別の実施形態においては、アミノモノマーの重合残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして、ゼロを超えて20重量%までである。ある実施形態においては、アミノモノマーの重合残基の量は、WIAFポリマーの重量を基準にして、5重量%以上である。
【0034】
本発明のポリマー組成物中のWIAFポリマーの量は、ゼロを超える任意の量であることができる。ある実施形態においては、WIAFポリマーの量は、ポリマー組成物の全乾燥重量を基準にして、20重量%以上;または40重量%以上のWIAFポリマーである。独立して、ある実施形態においては、WIAFポリマーの量は、ポリマー組成物の全乾燥重量を基準にして、90重量%以下;または75重量%以下のWIAFポリマーである。
【0035】
ある実施形態においては、本発明の実施は、少なくとも1種の多価金属カチオンの使用を伴い、本明細書においては、多価金属カチオンは、+2以上の電荷を有する金属カチオンを意味する。好適な多価金属カチオンは、例えば、アルカリ土類金属の多価カチオンおよび遷移金属の多価カチオンである。その多価カチオンが本発明の使用に好適である好適な金属としては、例えば、マグネシウム、ヒ素、水銀、コバルト、鉄、銅、鉛、カドミウム、ニッケル、クロム、アルミニウム、タングステン、スズ、亜鉛、ジルコニウムおよびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、1種以上の遷移金属が使用される。ある実施形態においては、カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウムおよびこれらの混合物の1種以上が使用される。ある実施形態においては、亜鉛が使用される。ある実施形態においては、マグネシウムが使用される。ある実施形態においては、カルシウムが使用される。ある実施形態においては、カルシウムとマグネシウムとのブレンドが使用される。
【0036】
ある実施形態においては、少なくとも1種の多価金属イオンが錯体の形態で使用される。ある好適な錯体には、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、およびグリシン酸塩が挙げられる。ある実施形態においては、このような錯体を水性ポリマー分散物に添加する前にこの錯体を可溶化することが有用である。このような錯体を可溶化する方法の1つは、この錯体を希水性アンモニアに添加することであり;結果物は元の錯体の名前に「アンモニア」を挿入することにより名付けられる。例えば、グリシン酸カドミウムが水性アンモニアに添加することによって可溶化される場合には、その結果物は「グリシン酸カドミウムアンモニア」と名付けられる。さらなる好適な可溶化された錯体は、例えば、グリシン酸亜鉛アンモニアおよび炭酸水素亜鉛アンモニアである。
【0037】
ある実施形態においては、多価金属カチオンは、組成物へのその添加の前に、不溶性金属化合物の形態である。本明細書において使用される場合、「不溶性」とは、水100g中に化合物4.2g未満の水中溶解度を有する化合物を意味する。好適な不溶性金属化合物には、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩およびこれらの混合物が挙げられる。好適な不溶性金属化合物の1つは酸化亜鉛である。
【0038】
ある実施形態においては、多価金属カチオンは使用されない。
【0039】
多価金属カチオンが使用される実施形態のいくつかにおいては、多価金属カチオンの当量は、ポリマー中の酸官能性残基の当量の25%〜110%であることができる。ある実施形態においては、多価金属イオンの当量は、ポリマー中の酸官能性残基の当量の30%以上;または50%以上である。独立して、ある実施形態においては、多価金属イオンの当量は、ポリマー中の酸官能性残基の当量の100%以下である。
【0040】
本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、乾燥したフロアポリッシュにおいては、乾燥したフロアポリッシュを、それが架橋されているかのように挙動させるように、多価金属イオンは酸官能性残基と相互作用することが考えられる。すなわち、多価金属イオンの存在は、例えば、乾燥したフロアポリッシュの靱性を向上させることが考えられる。
【0041】
本発明のポリマー組成物は1種以上のレベリング剤を含む。本発明のレベリング剤組成物は少なくとも1種の、好ましくは1種より多い、下記式(I)で表される非イオン性界面活性剤を含む:
【化2】

式中、各−A−は
【化3】

であり、および、各−D−は
【化4】

である。
【0042】
式(I)においては、各A部分はポリ(オキシプロピレン)またはPO部分とも称されることができ、各D部分はポリ(オキシエチレン)またはEO部分とも称されうる。このAおよびD部分は式(I)において示されるように、2つのブロックとして配置されうる。ある実施形態においては、このAおよびD部分は別の配置、例えば、R−O−に隣接したDを有するブロック、複数のブロック、ランダム分布または交互などを有することができる。式(I)においては、xは0.5〜10の範囲内の実数であり、yは2〜20の範囲内の実数である。また、式(I)においては、Rは2種以上の線状アルキル部分の混合を表し、この線状アルキル部分はそれぞれ、4〜20の偶数個の炭素原子を有する1以上の線状アルキル基を含む。
【0043】
場合によっては一般的にアルコキシラートと称される、本発明の界面活性剤は、POブロックを形成する、アルコールまたはアルコールの混合物のプロポキシ化(POすなわちポリ(オキシプロピレン)付加)部分、続いて、POブロックに結合するが、R(Rはアルコールまたはアルコールの混合物からのアルキル部分を表す)から間隔を開けてEOブロックを形成するエトキシ化(EOすなわちポリ(オキシエチレン)付加)部分を含む逐次的な様式で好ましくは製造される。アルキル部分のある分布を提供するアルコールの混合物で開始させ、次いでその混合物を逐次的にプロポキシ化およびエトキシ化することができ、または、選択したアルコールを別々にプロポキシ化およびエトキシ化し、次いでこのアルコキシラート(プロポキシ化およびエトキシ化アルコール)を、例えば、以下の表1に示されるようなある分布を提供するのに充分な比率で組み合わせることもできる。
【0044】
好ましくは、Rは種子油由来のアルコールのアルキル部分である線状アルキル部分の混合を表す。ある実施形態においては、Rは表1におけるようなアルキル部分分布を有する。
【0045】
【表1】

【0046】
本明細書において使用される場合、「C16−18」は「C16、C18またはこれらの混合」を意味する。
【0047】
、C14およびC16−18アルキル部分のいずれか1種以上は、必須ではないが、本発明のレベリング剤中に存在することができる。存在する場合には、C、C14およびC16−18アルキル部分の量は、全重量パーセンテージが合計で100重量%になる限りは、表1に示されるようなそのそれぞれの範囲のいずれかを満足させることができる。ある実施形態においては、C、C14およびC16−18アルキル部分の1種以上はゼロより多い量で存在する。ある実施形態においては、CおよびC14はそれぞれゼロより多い量で存在し、かつゼロより多い量のC16−18も存在する。
【0048】
ある実施形態においては、Rは表2におけるようなアルキル部分分布を有する。
【表2】

【0049】
表2におけるような界面活性剤混合物は少なくとも4種のアルキル部分:C、C10、C12およびC14:を含んでいるはずである。CおよびC16−18アルキル部分のいずれか1種以上は、必須ではないが、この本発明の好ましいサブセットの界面活性剤組成物中に存在しても良い。存在する場合には、CおよびC16−18アルキル部分の量は、全ての重量パーセンテージが合計で100重量%になる限りは、表1に示されるようなそのそれぞれの範囲のいずれかを満足させることができる。
【0050】
ある実施形態においては、R中のCの量はゼロである。独立して、ある実施形態においては、R中のC16−18の量はゼロではない。
【0051】
上記式(I)は変数「x」および「y」を含み、それらは一緒になって、オリゴマー分布におけるアルコキシ化度を特定させる。独立して、「x」および「y」は、それぞれ、平均のプロポキシ化度およびエトキシ化度を表す。ある実施形態においては、プロポキシ化度すなわち「x」は0.5〜7の範囲内、好ましくは0.5から4未満の範囲内、より好ましくは0.5〜3の範囲内、さらにより好ましくは2〜3の範囲内、さらにより好ましくは2.5〜3の範囲内である。エトキシ化度すなわち「y」は、好ましくは、2〜10の範囲内、より好ましくは2〜8の範囲内、さらにより好ましくは4〜8の範囲内、さらにより好ましくは6〜8の範囲内である。
【0052】
ある実施形態においては、xとyとの合計は1〜15である。ある実施形態においては、xとyとの合計は1〜7である。
【0053】
独立して、ある実施形態においては、yはxよりも大きい。独立して、ある実施形態においては、yはxの2倍以上大きい。
【0054】
ある実施形態においては、xは2.5〜3の範囲内にあり、yは2〜10の範囲内にあり、かつRは表2におけるようなアルキル部分分布を有する。
【0055】
ある実施形態においては、R中のCの量はゼロであり、R中のC16−18の量はゼロではなく、かつxとyとの合計は1〜7である。
【0056】
本発明のレベリング剤の量はゼロより多い任意の量であることができる。ある実施形態においては、レベリング剤の量は、本発明のポリマー組成物の乾燥重量を基準にして、1重量%以上;または2重量%以上;または5重量%以上である。独立して、ある実施形態においては、レベリング剤の量は、本発明の組成物の乾燥重量を基準にして、15重量%以下;または10重量%以下である。
【0057】
独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物はフタラート基を含む化合物をほとんどまたは全く含まない。
【0058】
独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物は、構造(II)を有する化合物をほとんどまたは全く含まない。構造(II)を有する化合物は、本明細書において、構造(I)の定義に該当せず、かつ式:
【化5】

でさらに定義される化合物として定義される。
【0059】
構造(II)においては、Rは偶数個の炭素原子を有するアルキル基であり;AおよびDは構造(I)におけるように定義され;wは0〜10の実数であり;zは1〜20の実数である。ある実施形態においては、本発明の組成物は構造(II)を有する化合物を含まない。
【0060】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、本発明のフロアポリッシュを製造するのに使用される。本発明のフロアポリッシュは、本発明の上記ポリマー組成物に加えて、本明細書において、「アジュバント」と称される1種以上の追加の成分を含む。アジュバントとしては、存在する場合には、例えば、ワックス(例えば、ポリオレフィンワックス、例えば、ポリエチレンワックスエマルションおよびポリプロピレンワックスエマルション;並びに天然ワックス、例えば、カルナウバをはじめとする)、造膜助剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助溶媒、増粘剤(例えば、アルカリ膨潤性樹脂、およびアルカリ可溶性樹脂など)、防腐剤、香料およびこれらの混合物が挙げられる。アジュバントは、存在する場合には、本発明の組成物の配合の任意の時点で添加されうる。例えば、あるアジュバントは、水性ポリマー分散物を形成するプロセスの一部として添加されることができ、そして組成物中に残存しうる。あるアジュバントは、例えば、1種以上の材料または1種以上の混合物に添加されることができ、組成物の特性を向上させることができる。これらアジュバントのいくつかは下記の位置のいずれか1つまたはいずれかの組み合わせにおいて存在することができる:水性ポリマー分散物の懸濁粒子の内側、水性ポリマー分散物の懸濁粒子の表面上、または連続媒体中。
【0061】
フロアポリッシュが完成したときに上記ポリマー組成物の成分の全てを含むのであれば、本発明のフロアポリッシュは任意の順に成分を一緒にすることによって製造されうる。例えば、本明細書においては、あるフロアポリッシュが1種以上のアジュバント、1種以上のポリマー(a)、および1種以上のレベリング剤(b)を含む場合には、(a)および(b)がアジュバントの添加の前に互いに一緒にされたかどうかにかかわらず、そのフロアポリッシュは本発明のフロアポリッシュであるとみなされる。
【0062】
本発明のフロアポリッシュ中に多価カチオンが存在する場合には、多価カチオンは、さらなるアジュバントと混合する前に、それと同時に、またはその後で、(a)および(b)と混合されうる。
【0063】
本発明のフロアポリッシュは顔料を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュは顔料を含まない。顔料は粉体形態の無機物質である。顔料粒子は、通常、10マイクロメートル以下のメジアン粒子サイズを有する。
【0064】
ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュは、構造(I)を有するレベリング剤以外のレベリング剤をほとんどまたは全く含まない。他の実施形態においては、本発明のフロアポリッシュは、構造(I)を有する1種以上のレベリング剤に加えて、構造(I)を有しない1種以上のレベリング剤を含む。
【0065】
本発明のフロアポリッシュにおいては、ポリマー(a)の量は、フロアポリッシュの全重量を基準にしたポリマー(a)の乾燥重量で、8%以上、または10%以上、または12%以上である。独立して、本発明のフロアポリッシュにおいては、ポリマー(a)の量は、フロアポリッシュの全重量を基準にしたポリマー(a)の乾燥重量で、25%以下、または20%以下、または18%以下、または16%以下である。
【0066】
ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュはホスファート基を含むレベリング剤をほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュはホスファート基を含むレベリング剤を含まない。
【0067】
ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュはホスファート基を含む化合物をほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュはホスファート基を含む化合物を含まない。
【0068】
ある実施形態においては、本発明のフロアポリッシュは耐洗剤性かつ除去可能である。「除去可能性」とは、コーティングが、乾燥しかつ(もしあれば)硬化反応が起こった後で、酢酸(または同等の弱酸)の水溶液との、またはアンモニア(またはアミン)の水溶液との接触により除去されうることを意味する。耐洗剤性および除去可能性の特性は、本明細書において記載される本発明の特定と一致する何らかの方法によってフロアポリッシュに導入されうる。
【0069】
例えば、フロアポリッシュは1種以上の多価金属イオンを含むことができる。次いで、乾燥コーティングは、アンモニアのまたはアミンの水溶液との接触によって除去されうる。
【0070】
他の例については、フロアポリッシュはアミノモノマーの重合残基を含むポリマーを含むことができる。乾燥したコーティングは、次いで、酢酸(または同等の弱酸)の水溶液との接触によって除去されうる。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲の目的のために、本明細書に開示される各操作は、他に特定されない限りは、25℃で行われることが理解される。
【実施例】
【0072】
以下の実施例では、以下の物質が使用された。「活性」とは、供給される形態での材料の濃度を意味する。
【0073】
【表3】

注(1):2.5重量部のZn(+2)および0.7重量部のK(+1)を含む、35重量部のアクリル酸n−ブチル/9重量部のメタクリル酸メチル/40重量部のスチレン/16重量部のメタクリル酸から製造された乳化重合樹脂。この樹脂は、亜鉛およびカリウムを含み、米国特許第4,517,330号に記載されるように製造された。
【0074】
実施例1:サンプルフロアポリッシュの配合
下記の順に材料を添加することによりサンプルフロアポリッシュが製造された:水、防腐剤(使用される場合には)、湿潤剤、造膜助剤(使用される場合には)、および溶媒、可塑剤(使用される場合には)、分散剤(分散されたポリマーを含む)、および樹脂、アルカリ可溶性樹脂およびポリオレフィン分散物。配合物は下記の表において示されるように製造された。示される量は、供給されたままの物質の重量部である。サンプル番号に「C」が付いているサンプルは比較例サンプルである。
【0075】
【表4】

【0076】
実施例2:タイルへの適用
材料が混合された後、配合物は一晩静置された。各配合物は次のようにタイルに適用された。タイルは手作業でエタノールおよび紙を用いて清浄化された。タイルの表面は2つの等しい部分に隣同士で分けられた。配合物は綿球を用いて手作業で適用された。2ミリリットルの配合物が各半分のタイルに適用され、その半分のタイルの表面全体を覆うように注意を払った。タイルは25℃、60%大気湿度で少なくとも1時間の間、乾燥させられて、膜を形成させた。
【0077】
光沢測定のために、配合物は黒色ポリ塩化ビニルタイルに適用された。光沢は、60度の角度で測定され;10の測定が行われ、平均された。
【0078】
適用および測定のプロセス全体が全部で5つの層について繰り返された。
【0079】
黄色度を測定するために、5つの層が、白色ポリ塩化ビニルタイルに上述のように適用されて、そのタイルは30日間貯蔵され、次いでコーティングが目視で評価された。黄色度を記録するために評定スケールが使用された:白色外観は「1」であり、充分に黄色の外観は「5」であった。10人がコーティングを評定し、そして平均が出された。
【0080】
結果は次の通りであった:
【表5】

【0081】
本発明のフロアポリッシュは、比較例サンプルよりも良好な光沢および黄変を示した。光沢は乾燥したコーティングの滑らかさに依存すると考えられ;よって、光沢はレベリング剤のレベリング効果の有効性の尺度であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸官能性残基を有する1種以上の水不溶性ポリマーの懸濁物または分散物;および
(b)下記式(I)を有する1種以上のレベリング剤;
【化1】

(式中、xは0.5〜10の範囲内の実数であり;yは2〜20の範囲内の実数であり;および、Rは2種以上の線状アルキル部分の混合を表し、その線状アルキル部分はそれぞれ、4〜20の偶数個の炭素原子を有する1以上の線状アルキル基を含む)
を含む水性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記xが0.5から4未満の範囲内の実数であり、前記yが2〜10の範囲内の実数であり、並びに前記Rが以下のようなアルキル部分分布を有する種子油ベースの線状アルキル部分の混合である、請求項1に記載の組成物:
(i)0重量%〜40重量%のCアルキル部分、
(ii)20重量%〜40重量%のCアルキル部分、
(iii)20重量%〜45重量%のC10アルキル部分、
(iv)10重量%〜45重量%のC12アルキル部分、
(v)0重量%〜40重量%のC14アルキル部分、および
(vi)0重量%〜15重量%のC16アルキル部分、C18アルキル部分またはこれらの混合;
ここで、各重量%はこの分布中に存在する全てのアルキル部分の重量に基づいており、かつ各分布についての全ての重量%は合計で100重量%になる。
【請求項3】
前記(i)、前記(v)および前記(vi)の1種以上の量がゼロより多い、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記xが3以下の実数である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記yが前記xの2倍以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記xが2.5〜3であり、かつ前記アルキル部分分布が以下の通りである、請求項1に記載の組成物:
(i)0重量%〜36重量%のCアルキル部分、
(ii)22重量%〜40重量%のCアルキル部分、
(iii)27重量%〜44重量%のC10アルキル部分、
(iv)14重量%〜35重量%のC12アルキル部分、
(v)5重量%〜13重量%のC14アルキル部分、および
(vi)0重量%〜5重量%のC16アルキル部分、C18アルキル部分またはこれらの混合。
【請求項7】
1種以上の多価金属カチオンをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1の組成物を含み、並びにワックス、造膜助剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助溶媒、増粘剤、防腐剤、香料およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアジュバントをさらに含む、フロアポリッシュ。
【請求項9】
請求項1の組成物の層を床に適用することを含む、床をコーティングする方法。

【公開番号】特開2011−148986(P2011−148986A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−271789(P2010−271789)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【出願人】(509079695)ダウ ブラジル スデステ インダストリアル エルティデイエイ. (3)