説明

フロンガスの回収方法及び回収装置

【目的】 カークーラーの冷媒等として用いられるフロンガスを野外で簡単に回収し、再利用できるようにする。
【構成】 フロンガスを自動車のエンジン8により駆動されるコンプレッサ7により圧縮し、圧縮されたフロンガスをコンデンサ7により液化し、タンク15により液状の形でフロンを回収する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、クーラー、冷蔵庫等の解体時に冷媒としてクーラー内に存在しているフロンガスを回収する方法及びその実施に用いるフロンガスの回収装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クーラー、例えばカークーラー等には冷媒としてフロンガスが多く用いられている。このフロンガスは、一般に、大気中に放出されると生物を紫外線から保護しているオゾン層を破壊する性質を有している。
【0003】そして、クーラーを解体するとき冷媒を通す管からそのフロンガスが漏れてしまい、大気中に放出されてしまう。従ってフロンガスを大気中に放出しないようにクーラーを解体することが必要である。
【0004】また、フロンガスは比較的高価格であり、それを再利用せず大気中に放出することは資源の無駄使いになり、大きな経済的損失になる。そのため、フロンガスの回収装置の開発が為された。従来のフロンガス回収装置は、電動機によりコンプレッサを駆動してフロンガスを圧縮しコンデンサにより液化し、液化フロンの形で回収するものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のフロンガス回収装置は、高価なコンプレッサ、高価な駆動モーター、高価なコンデンサ及びファンモータ等を別々に購入して組立てたものであり、価格が高いという問題があった。また、電力で駆動モーターを駆動しなければならないので、野外でのフロンガス回収が難しいという問題があった。特に、クーラー付き自動車の解体数は全国で年数百万台にものぼるが、フロンガスの回収をする場合、ほとんどは野外で行わなければならず、そのため電力で動く従来のフロンガス回収装置は充分に使用されず、結局大部分のカークーラーは自動車解体時にフロンガスの回収をしないまま、即ち大気にフロンガス放出しながら解体されていた。これは、きわめて深刻な環境破壊をもたらし、また、資源の無駄使いにもつながり、大きな経済的損失をもたらすのである。
【0006】本発明はこのような問題を解決すべく為されたものであり、野外でもフロンガスを簡単な装置を使用して低コストで回収できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1のフロンガスの回収方法は、被解体装置のフロンガスを動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサにより圧縮し、該圧縮されたフロンガスをコンプレッサによって液化し、フロンガスを回収器にて回収することを特徴とする。請求項2のフロンガスの回収方法は、請求項1のフロンガスの回収方法において、コンプレッサの前後にオイル分離器を設け、後の方のオイル分離器で分離されたオイルをコンプレッサの入口に帰還することを特徴とする。請求項3のフロンガス回収装置は、動力用エンジンと、該動力用エンジンに駆動されるコンプレッサと、該コンプレッサにより圧縮されたガスを液化するコンデンサと、該コンデンサからの液化フロンガスを回収する回収器とからなることを特徴とする。
【0008】
【作用】請求項1のフロンガスの回収方法によれば、動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサによりフロンガスを圧縮でき、この圧縮に駆動モーターを用いる必要がない。従って、野外でもフロンガスの回収を行うことができる。特に、クーラー付き自動車を利用すれば、そのカークーラーの動力用エンジンをコンプレッサ駆動に用い、更にカークーラーのコンデンサを回収用コンデンサとして用いた場合には、回収装置のほとんどを自動車を用いて構成でき、自動車のエンジンによって駆動できるので野外でのフロンガスの回収をきわめて簡単に行うことができる。また、使用した自動車に、回収装置及びタンクを載せて移動できるので、巡回回収もできる。
【0009】請求項2のフロンガスの回収方法によれば、コンプレッサの前側のオイル分離器によりフロンガス中に含まれるオイルを分離することができる。また、コンプレッサの後側のオイル分離器によりコンプレッサから出たフロンガス中のオイルを取出し、これをコンプレッサの入口に帰還するので、その帰還したオイルによりコンプレッサの焼き付けを防止することができ、延いては長時間の連続回収が可能である。請求項3の回収装置によれば、動力用エンジンによりコンプレッサを駆動してフロンガスを圧縮し、コンデンサによりフロンガスを液化し、液化フロンを回収器により回収することができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を図示実施例により詳細に説明する。図1は本発明の一つの実施例を示すものであり、本実施例はフロンガス回収装置の主要部を実際に走行可能なクーラー付き自動車のクーラーを利用して構成し、クーラー付き自動車の解体にあたってその被解体自動車のクーラー内の冷媒として用いられたフロンガスを回収しようとするものである。
【0011】1はフロンガス回収装置が積載されたクーラー付き自動車で、実際に走行することができるが、そのクーラー、即ちカークーラー2は、解体しようとする自動車のクーラーのフロンガスの回収に使用される。3は被解体クーラーの一例であり、その内部の冷媒(フロンガス)の状態は図2に示すとおりである。ここで、被解体クーラーについての概要を示す。
【0012】冷媒として回路を流れるフロンガスはコンプレッサにより吸入、圧縮されて高圧、高温の気体にされ、次にコンデンサにより凝縮されて(ここで放熱する)高温、高圧の液化フロンになり、リキッドタンクによってガス成分をカットされたうえでエバポレータに送られここで気化する。そして、この気化によって熱を奪う、即ち、吸熱するので冷却機能を発揮する。エバポレータで気化したフロンガスはコンプレッサに戻る。
【0013】ところで、このクーラーには図2のA点、B点でガスチューブ、ホースを連結することができるようになっている。そこで、上記の自動車1のクーラー2を利用したフロンガス回収装置にホース4を介して被解体クーラー3を連結してフロンガスの回収を行うのが本実施例である。次に、本実施例を図1に従って説明する。
【0014】5は低圧用オイル分離器で、被解体クーラー3に上記ホース4を介して連結されている。該オイルセパレータ5を経由したフロンガスはガス管6を介してコンプレッサ7に吸い込まれる。該コンプレッサ7はカークーラー用のコンプレッサで、自動車1のエンジン8により駆動されるものである。このコンプレッサ7により圧縮されたフロンガスはガス管9を経て高圧用オイル分離器10に送られ、該オイル分離器10を通ったフロンガスはガス管11を通ってクーラーコンデンサ12に送られる。クーラーコンデンサ12は、元来はカークーラー2の液化用として用いられるものであるが、本実施例においてはフロンガス回収装置の液化用として用いる。
【0015】クーラーコンデンサ12に送られてきたフロンガスは、このコンデンサ12によって液化され、液化フロンは管13を経て直列に接続されたリキッドタンク14a及び14bを通り、そして、回収タンク15に送られ、該回収タンク15にて回収される。このように、本実施例においては、解体しようとする自動車のカークーラー3、3、…のなかのフロンガスをホース4を介してフロンガス回収装置に取り込み、自動車1のクーラー用のコンプレッサ7で圧縮したうえでクーラー用コンデンサ12により凝縮して液化し、液化フロンを回収用タンク15によって回収するので、大気中に放出することにより液状の形で回収することができる。
【0016】ところで、上記低圧用オイル分離器5はフロンガスからその中に含まれていたオイルを分離するもので、分離されたオイルは、オイルタンク16にチューブ17を介して送られ、該オイルタンク16に貯蔵される。従って、フロンガス中のオイル成分を取り除くことができる。上記高圧用オイル分離器10はコンプレッサ7を経過したフロンガスからオイル成分を除去し、そのオイル成分をコンプレッサに帰還するものであり、18はその帰還用の管である。
【0017】このように回収オイル分離器10及び管18を通じてオイルをコンプレッサ7に常に流し続けるのは、フロンガスのみをコンプレッサ7に供給し続けるとコンプレッサ7が焼き付いてしまうからである。即ち、コンプレッサ7の焼き付け防止のために高圧用オイル分離器10及び管18を設けたのである。また、リキッドタンク14a、14bは液化フロンから水分とゴミなどを除去するものであり、タンク15には水分、ゴミが除去された液化フロンを貯めることができる。
【0018】このような本実施例によれば、コンプレッサ7を自動車1のエンジン8により駆動し、クーラーコンデンサ12のファン19もエンジン8についている発電機の働きにより駆動することができ、フロンガスの回収のために必要な動力を得るのに電動機(モーター)を用いる必要がない。従って、野外においても支障なくフロンガスの回収作業を行うことができる。
【0019】そして、フロンガス回収装置の要部を成すエアーコンプレッサ7、コンデンサ12、エアーコンプレッサ12の駆動源(エンジン8及びそれにより動く発電機)、コンデンサ12用のファン19は自動車1にもともと内蔵されているものをそのまま用いることができる。フロンガス回収装置を構成するために特別に必要となるのは、市販のホイル分離器5、10、オイルタンク16、リキッドタンク14a、14b、ガス管、ホース類等きわめて安価のものに過ぎない。そして、これ等は自動車1自身に積載することができる。従って、フロンガス回収装置を低価格で簡単につくることができる。尚、自動車1のカークーラー2のエバポレータは、該カークーラー2を冷却に用いずフロンガス回収に用いているので遊ばせておくことになる。
【0020】そして、自動車1は走行可能なので、解体すべき自動車等のあるところに自由に移動でき、解体すべき自動車をフロンガス回収装置のあるところに運搬することは必要でない。即ち、巡回回収が可能である。従って、多くの自動車をフロンガスの大気中への放出を伴うことなく解体でき、環境破壊を防止しつつ高価のフロンガスの再利用を図ることにより資源の無駄使いを回避することができ、多大な経済的利益を得ることができる。
【0021】尚、本実施例はカークーラーのフロンガスの回収に限らず、例えば家庭用クーラー、冷蔵庫、ビルデング内の業務用クーラー等フロンガスを使用した装置のフロンガスの回収一般に適用できる。また、LPガス車(主としてタクシー)のLPタンクの金具と配管を適宜加工してこれを回収用のタンクとして用いることができる。そして、このタンクからチャージングシリンダに液化フロンを移し、このチャージングシリンダの気化口からゲージ2にホールドに通すことにより新品のようなフロンガスを再使用できる。しかして、本発明における回収器には液状のフロンの形で回収するものと、液状のフロンを再び気化して供給できるものとが含まれる。
【0022】尚、チャージングシリンダを使用して回収フロンをカーデーラーのサービス部より各サービス工場に配分すれば、新たなフロンガスの必要生産量を回収フロン量分少なくできる。これは、環境破壊防止に寄与するだけでなく、経済的損失の防止に大きく寄与することになる。そして、今後、R134Aフロンガスの如きオゾン層破壊の虞れのない新しいフロンガスの使用が増える可能性があるが、このようなフロンガスを使用した装置の解体時においてフロンガスを回収することは、公害防止の意味が少なくなるけれども、フロンガスの再使用という大きな経済的利益を得ることができるので、フロンガス回収の意義はやはり大きい。
【0023】
【発明の効果】請求項1のフロンガスの回収方法は、被解体装置のフロンガスを動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサにより圧縮し、該圧縮されたフロンガスをコンプレッサによって液化し、フロンガスを回収器にて回収することを特徴とする。従って、請求項1のフロンガスの回収方法によれば、動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサによりフロンガスを圧縮でき、この圧縮にモーターを用いる必要がない。従って、野外でもフロンガスの回収を行うことができる。特に、クーラー付き自動車を利用すれば、そのカークーラーの動力用エンジンをコンプレッサ駆動に用い、更にカークーラーのコンデンサを回収用コンデンサとして用いた場合には、回収装置のほとんどを自動車を用いて構成でき、自動車のエンジンによって駆動できるので野外でのフロンガスの回収をきわめて簡単に行うことができる。また、使用した自動車に、回収装置及びタンクを載せて移動できるので、巡回回収もできる。
【0024】請求項3のフロンガスは、請求項2のフロンガスの回収方法は、請求項1のフロンガスの回収方法において、コンプレッサの前後にオイル分離器を設け、後の方のオイル分離器で分離されたオイルをコンプレッサの入口に帰還することを特徴とするものである。従って、請求項2のフロンガスの回収方法によれば、コンプレッサの前側のオイル分離器によりフロンガス中に含まれるオイルを分離することができる。また、コンプレッサの後側のオイル分離器によりコンプレッサから出たフロンガス中のオイルを取出し、これをコンプレッサの入口に帰還するので、その帰還したオイルによりコンプレッサの焼き付けを防止することができ、延いては長時間の連続回収が可能である。
【0025】請求項3のフロンガス回収装置は、動力用エンジンと、該動力用エンジンに駆動されるコンプレッサと、該コンプレッサにより圧縮されたガスを液化するコンデンサと、該コンデンサからの液化物を回収する回収器からなること特徴とする。従って、請求項3の回収装置によれば、動力用エンジンによりコンプレッサを駆動してフロンガスを圧縮し、コンデンサによりフロンガスを液化し、液化フロンを回収器により回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施例の概略図である。
【図2】被解体カークーラーの冷媒状態を示す図である。
【符号の説明】
1 自動車
2 カークーラー
3 被解体クーラー
7 コンプレッサ
8 エンジン
12 コンデンサ
15 回収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フロンガスを有する被解体装置のフロンガスの流れる回路を、動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサに連結し、上記フロンガスを上記コンプレッサにて圧縮し、上記圧縮された上記フロンガスをコンデンサにて液化し、上記液化されたフロンガスを回収することを特徴とするフロンガスの回収方法
【請求項2】 コンプレッサの前側と後側にオイル分離器を設け、後側のオイル分離器で分離されたオイルをコンプレッサの入口に帰還することを特徴とする請求項1の記載のフロンガスの回収方法
【請求項3】 動力用エンジンと、上記動力用エンジンにより駆動されるコンプレッサと、上記コンプレッサにより圧縮されたガスを液化するコンデンサと、上記コンデンサからの液化フロンを回収する回収器と、からなることを特徴とするフロンガスの回収装置

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−2995
【公開日】平成6年(1994)1月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−186215
【出願日】平成4年(1992)6月18日
【出願人】(592152510)有限会社中島自動車電装 (12)