説明

フロントリテーナ浮き検出装置

【課題】フロントリテーナの浮きの見逃しをより確実に抑制できるようにすること。
【解決手段】フロントリテーナ浮き検出装置20は、コネクタハウジング12のフロントリテーナ16に対してコネクタ10の接続方向前方側より当接可能な検査部22と、検査部22を、正常に装着されたフロントリテーナ16に当接可能な正常状態検出位置と正常状態検出位置から退避した退避位置との間で移動可能に支持する検査部支持部40と、検査部22を正常状態検出位置に向けて付勢する検査部付勢部材50とを備える。浮き検出スイッチ60が、検査部22が正常状態検出位置にある状態でオン状態を維持し、検査部22が正常状態検出位置よりも退避位置側に移動するとオフ状態に切り替るように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタハウジングに装着されるフロントリテーナの浮きを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコネクタは、樹脂製のコネクタハウジング内に金属製の端子を収容した構成とされている。コネクタハウジングのキャビティ内で端子を一定位置に支持するための構成として、ランスとリテーナとを用いた構成がある。ランスは、コネクタハウジングと一体形成された部分であり、キャビティ内に端子が挿入されることによって当該端子と係止可能に構成されている。また、リテーナは、コネクタハウジングに対して装着可能に構成されており、コネクタハウジングに装着された状態で、ランスに対して端子との係止部分反対側から当接するようになっている。このリテーナによって、ランスと端子との係止解除が抑制され、端子がより確実に一定位置に支持されるようになっている。
【0003】
上記のようなリテーナとして、コネクタの接続方向前方側よりコネクタハウジングに装着されるタイプのものがあり、このようなタイプのリテーナはフロントリテーナとも呼ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ランスと端子とが正常に係止していないような場合には、フロントリテーナをコネクタハウジングに正常に装着することができず、フロントリテーナがコネクタハウジングから浮いた状態となる場合がある。このようなフロントリテーナの浮きを検出する装置として、例えば、フロントリテーナが浮いた状態にあると押操作されてオン信号を出力するスイッチを設けた構成のものが想定される。かかる装置では、リテーナが正常に装着された状態であると、スイッチからオフ信号が継続して出力される。一方、フロントリテーナが浮いた状態であると、コネクタが押操作されてスイッチからオン信号が出力される。そして、オン信号が出力されることにより、フロントリテーナの浮きが検出されることとなる。
【0005】
しかしながら、上記装置では、スイッチ或は配線の不具合等によってスイッチからオン信号を出力できない状態も、フロントリテーナの浮きが無い状態として取扱われることになり、フロントリテーナの浮きを見逃してしまう恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、フロントリテーナの浮きの見逃しをより確実に抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置は、コネクタハウジングに対してその接続方向前方側よりフロントリテーナが装着されるコネクタに対して、前記フロントリテーナの浮きを検出するフロントリテーナ浮き検出装置であって、所定の検査位置に配設された前記コネクタハウジングの前記フロントリテーナに対して前記接続方向前方側より当接可能な検査部と、前記検査部を、前記コネクタハウジングに正常に装着された前記フロントリテーナに当接可能な正常状態検出位置と前記正常状態検出位置から退避した退避位置との間で移動可能に支持する検査部支持部と、前記検査部を前記正常状態検出位置に向けて付勢する検査部付勢部材と、前記検査部が前記正常状態検出位置にある状態でオン状態を維持し、前記検査部が前記正常状態検出位置よりも前記退避位置側に移動するとオフ状態に切り替るように設けられた浮き検出スイッチとを備える。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置であって、前記検査部支持部に、前記コネクタハウジングを前記検査位置で支持可能なセット凹部が設けられ、前記コネクタハウジングが前記セット凹部にセットされた状態で、前記検査部が前記コネクタハウジングの前記フロントリテーナに当接可能に支持されている。
【0009】
第3の態様は、第2の態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置であって、前記セット凹部への前記コネクタハウジングのセットを検出するセット状態検出部をさらに備える。
【0010】
第4の態様は、第1の態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置であって、前記コネクタハウジングをセット可能なセット凹部を有するコネクタセット部をさらに備え、前記コネクタセット部と前記検査部支持部とが相対的に接近離隔移動可能に配設されると共に、前記コネクタセット部と前記検査部支持部とが相対的に接近移動することで、前記コネクタハウジングが前記検査位置に支持される。
【0011】
第5の態様は、第4の態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置であって、前記コネクタセット部の前記セット凹部にセットされた前記コネクタハウジングと前記検査部支持部との接近移動を検出する検査タイミング検出部をさらに備える。
【0012】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に係るフロントリテーナ浮き検出装置であって、前記検査部の外周部に凹部が形成され、前記検査部が前記正常状態検出位置から前記退避位置側に移動することで前記凹部内へ移動可能でかつ前記凹部内に向けて付勢された検出子をさらに備え、前記浮き検出スイッチが、前記凹部内への前記検出子の移動により、オン状態からオフ状態に切り替るように設けられている。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様によると、コネクタハウジングのフロントリテーナが浮いていると、検査部が正常状態検出位置から退避位置側に移動する。これにより、浮き検出スイッチがオン状態からオフ状態に切り替るので、このオフ状態への切り替りによってフロントリテーナの浮きを検出することができる。また、浮き検出スイッチ或はその配線の不具合等によってオン信号が出力されないような場合には、フロントリテーナの浮きの有無に拘らず、浮き検出スイッチからオフ信号が継続して出力され、フロントリテーナの浮きの有無の確認が促されることになる。このため、フロントリテーナの浮きの見逃しをより確実に抑制できる。
【0014】
第2の態様によると、コネクタハウジングをセット凹部にセットすることで、検査部をフロントリテーナに対して容易に当接させることができる。
【0015】
第3の態様によると、前記セット凹部へ前記コネクタハウジングがセットされた状態で、適切にフロントリテーナの浮きの有無を確認することができる。
【0016】
第4の態様によると、前記コネクタセット部と前記検査部支持部とが離隔した状態で、コネクタハウジングを容易にセット凹部にセットできる。
【0017】
第5の態様によると、前記コネクタセット部の前記セット凹部にセットされた前記コネクタハウジングが前記検査部支持部に接近した状態で、適切にフロントリテーナの浮きの有無を確認することができる。
【0018】
第6の態様によると、前記浮き検出スイッチが、前記凹部内への前記検出子の移動により、オン状態からオフ状態に切り替るように設けられているため、フロントリテーナの浮きが小さい場合でも、その浮きを検出できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置を示す分解斜視図である。
【図2】同上のフロントリテーナ浮き検出装置を示す概略側面図である。
【図3】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の介在部材を示す概略側面図である。
【図4】同上のフロントリテーナ浮き検出装置を示す概略正面図である。
【図5】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の内部構造を示す説明図である。
【図6】検出子の動作を示す説明図である。
【図7】浮き検出スイッチとセット状態検出部との電気的な接続例を示す回路図である。
【図8】第1実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【図9】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【図10】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【図11】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【図12】第2実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置を示す概略説明図である。
【図13】同上のフロントリテーナ浮き検出装置を示す概略説明図である。
【図14】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【図15】同上のフロントリテーナ浮き検出装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
{第1実施形態}
以下、第1実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置について説明する。図1は第1実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置20を示す分解斜視図であり、図2は同フロントリテーナ浮き検出装置20を示す概略側面図であり、図3は同フロントリテーナ浮き検出装置20の介在部材30を示す概略側面図であり、図4は同フロントリテーナ浮き検出装置20を示す概略正面図であり、図5は同フロントリテーナ浮き検出装置20の内部構造を示す説明図である。
【0021】
このフロントリテーナ浮き検出装置20は、コネクタ10に装着されたフロントリテーナ16の浮きを検出するための装置である。
【0022】
ここで、コネクタ10は、フロントリテーナタイプの一般的な構成のものである。すなわち、コネクタ10は、コネクタハウジング12と、端子14と、フロントリテーナ16とを備えている(図2参照)。コネクタハウジング12は、樹脂等で形成されており、角筒状の外部ハウジング12a内に端子収容部12bが形成され、その端子収容部12b内に複数の端子収容室(キャビティともいう)が形成されている。また、コネクタハウジング12には、端子収容室内に収容された端子14に係止可能なランスが一体形成されており、電線15の端部に接続された端子14が端子収容室に挿入されることで、前記ランスが端子14に係止可能に構成されている。また、このランスのうち端子14に係止する部分の反対側部分は、端子収容部12bの外周に露出している。また、フロントリテーナ16は、端子収容部12bに、コネクタ10の接続方向前方側(図2の左方側)から、端子収容部12bに覆い被さるように装着可能に構成されている。そして、フロントリテーナ16が端子収容部12bに奥まで正常に装着されることで、当該フロントリテーナ16がランスのうち端子14に係止する部分の反対側部分に当接する。これにより、ランスの外方への変形が抑制されて、ランスと端子との係止解除が抑制されるようになっている。
【0023】
なお、上記フロントリテーナ16には、相手方コネクタのオス端子が挿通可能な挿通孔が形成されており、本コネクタ10と相手側コネクタとを接続すると、相手側のオス端子がフロントリテーナ16を通って端子収容部12b内の端子14に挿入接続される。
【0024】
このようなフロントリテーナタイプのコネクタ10では、例えば、端子14の挿入不足等が原因でランスと端子14とが正常に係止していないと、フロントリテーナ16がランスと干渉し、フロントリテーナ16を完全に押込めない状態、つまり、フロントリテーナ16が浮いた状態が生じ得る。本フロントリテーナ浮き検出装置20は、そのようなフロントリテーナ16の浮きを検出するための装置として構成されている。
【0025】
フロントリテーナ浮き検出装置20は、検査部22と、検査部支持部40と、検査部付勢部材50と、浮き検出スイッチ60とを備えている。
【0026】
検査部22は、所定の検査位置に配設されたコネクタハウジング12のフロントリテーナ16に対してコネクタ10の接続方向前方側より当接可能に構成されている。より具体的には、検査部22は、樹脂等で形成された長尺部材に形成されている。検査部22の先端部の当接部24は、上記コネクタハウジング12内に挿入可能な大きさ、ここでは、フロントリテーナ16の正面部分と略同じ大きさ及び形状に形成されている。そして、検査部22の当接部24をフロントリテーナ16の正面に押し当てることにより、当該フロントリテーナ16の位置に応じて検査部22のその長手方向における位置が定まるようになっている。
【0027】
検査部支持部40は、上記検査部22を移動可能に支持するように構成されている。ここでは、検査部支持部40には、コネクタハウジング12を所定の検査位置で支持可能なセット凹部43が形成されており、上記検査部22を、当該セット凹部43に支持されたコネクタハウジング12のフロントリテーナ16に向けて正常状態検出位置と退避位置との間で進退移動可能に支持している。なお、正常状態検出位置は、セット凹部43にコネクタハウジング12が支持された状態で、検査部22が、当該コネクタハウジング12に正常に装着されたフロントリテーナ16にその前方側より当接可能な位置である。また、退避位置は、当該正常状態検出位置よりもコネクタ10の接続方向前方側(換言すれば、フロントリテーナ16の装着方向手前側)に退避した位置である。つまり、これらの正常状態検出位置及び退避位置は、後述するようにセット凹部43内において所定の検査位置で支持されたコネクタハウジング12に対する相対的な位置である。
【0028】
より具体的には、検査部支持部40は、樹脂等で形成された部材であり、検査部支持本体部42と、一方側の側板部46と、他方側の側板部47と、背面板48とを備えている。検査部支持本体部42の両側に上記側板部46,47がねじ止等で固定され、検査部支持本体部42の背面側に背面板48がねじ止等で固定される。この検査部支持部40は、ブラケット40B等によってコネクタ10を含むワイヤーハーネスの製造装置等に取付固定される。
【0029】
この検査部支持本体部42の一主面にはセット凹部43が形成され、そのセット凹部43の奥側にガイド凹部44が形成されている。
【0030】
セット凹部43は、コネクタハウジング12の外周面に対応する形状に形成されており、その開口側よりコネクタハウジング12を一定の姿勢で押込めるようになっている。
【0031】
また、セット凹部43及びガイド凹部44の一側部(ここでは上側の一側部)に、スリット状の隙間41が形成され(図1参照)、当該隙間41にコネクタハウジング12を抜止め状に保持するロック片70が設けられている。ロック片70は、長尺棒状部材であり、その長手方向中間部が隙間41内で軸部71を介して揺動可能に支持されている。ロック片70のうち軸部71よりもセット凹部43の部分に、コネクタハウジング12の外周部の突起部12cに係止可能な突部72が形成されている。なお、突起部12cは、本コネクタ10と相手側のコネクタとの接続維持に供される係止用の突起部分等である。突部72は、ロック片70の先端側から奥側に向けて徐々に高さ寸法が大きくなる突部形状に形成されている。そして、ロック片70が、突部72をセット凹部43内に配設されたコネクタハウジング12の突起部12cに係止させるロック姿勢と、突部72をコネクタハウジング12の突起部12cから外方に移動させたロック解除姿勢との間で姿勢変更可能に支持されている。また、ロック片70の後端部と検査部支持本体部42との間に、ロック片70をロック姿勢側に付勢するロック片付勢部材76が配設されている。ロック片付勢部材76としては、コイルバネの他、板バネ、ねじりコイルバネ等を用いることができる。そして、コネクタハウジング12をセット凹部43内に押込むと、コネクタハウジング12の突起部12cとロック片70の突部72とが摺接することで、ロック片70がロック姿勢からロック解除姿勢に姿勢変更し、突起部12cが突部72を乗越えると、ロック片70がロック姿勢に姿勢変更する。これにより、ロック片70の突部72とコネクタハウジング12の突起部12cとが係止し合い、コネクタハウジング12がセット凹部43内で抜止め状態に支持される。なお、この状態では、コネクタハウジング12は、介在部材30の付勢力によってセット凹部43の外方に付勢されている。このため、コネクタハウジング12は、セット凹部43内に押込まれた後、突部と突起部12cが抜止め係止した状態で、外側に付勢されることで、一定の検査位置に支持されることになる。なお、必ずしも必須ではないが、セット凹部43とガイド凹部44との境界部分に当接受部43aを設け、前記検査位置にコネクタハウジング12が配設された状態で、当該コネクタハウジング12の先端部を当接受部43aのうちコネクタハウジング12の挿入方向に向く面に当接させることが好ましい。そして、コネクタハウジング12がセット凹部43にセットされた状態で、検査部22がコネクタハウジング12のフロントリテーナ16にその前方側より当接されるようになっている。
【0032】
なお、ロック片70の先端部は、隙間41内から検査部支持本体部42の外方に延出しており、このロック片70の先端部を上方に持上げることで、ロック片70の突部72とコネクタハウジング12の突起部12cとの係止状態が解除され、コネクタハウジング12をセット凹部43から取外せるようになる。
【0033】
ガイド凹部44は、上記セット凹部43の奥側に続く穴形状に形成されている。このガイド凹部44内で上記検査部22が移動可能に支持されている。
【0034】
ここでは、ガイド凹部44は、介在部材30を介して検査部22を移動可能に支持している。
【0035】
すなわち、介在部材30は、樹脂等で形成されたブロック状の部材であり、上記ガイド凹部44に、当該ガイド凹部44の延在方向(検査部22の進退方向)に沿って移動可能に配設されている。介在部材30がガイド凹部44側に移動した状態では、介在部材30の一部分がガイド凹部44内に配設されて、セット凹部43内に配設されるコネクタハウジング12の先端部と当接するようになっている。そして、セット凹部43内の所定の検査位置に向けてコネクタハウジング12を押込むと、コネクタハウジング12と介在部材30との当接によって、介在部材30がガイド凹部44内に押込まれるようになっている。また、介在部材30がガイド凹部44内に配設された状態で、介在部材30の背面側に延出するロッド部31が背面板48の孔48hに挿通されると共に、当該ロッド部31に装着されたコイルバネ等の介在部材付勢部材32が介在部材30と背面板48との間に圧縮状態で介在配置されている。そして、この介在部材付勢部材32によって、介在部材30がセット凹部43に向けて常時付勢されている。なお、介在部材付勢部材32としては、上記コイルバネの他、板バネ、ねじりコイルバネ等の各種部材を用いることができる。
【0036】
また、介在部材30の一主面には、上記セット凹部43内に向けて突出する環状突出部33が形成されている。環状突出部33は、コネクタハウジング12とフロントリテーナ16との間の環状隙間に配設可能な形状に形成されており、検査部22をより正確にフロントリテーナ16に向けて案内する役割を有している。
【0037】
また、介在部材30には、上記環状突出部33内からその反対側に向けて、その移動方向(検査部22の進退方向)に沿った支持穴34が形成されている。この支持穴34によって検査部22が、上記正常状態検出位置と退避位置との間で移動可能に支持されることになる。なお、後述するように、コネクタハウジング12をセット凹部43内で所定の検査位置で支持すると、介在部材30は当該コネクタハウジング12に対して一定の位置関係に配設され、この状態で、検査部22が正常状態検出位置と退避位置との間で移動する。このため、介在部材30と検査部22との関係で考えると、正常状態検出位置及び退避位置は、介在部材30に対する検査部22の位置としても捉えることができる。
【0038】
また、検査部22が支持穴34内に配設された状態で、検査部22の後方部分と介在部材30の背面部分にねじ止等によって固定された受部材36との間に、コイルバネ等の検査部付勢部材50が介在配置されている。そして、この検査部付勢部材50によって、検査部22が正常状態検出位置に向けて付勢されている。検査部付勢部材50としては、上記コイルバネの他、板バネ、ねじりコイルバネ等の各種部材を用いることができる。
【0039】
もっとも、介在部材30が省略され、検査部22が直接的に検査部支持部40によって進退移動可能に支持されていてもよい。
【0040】
浮き検出スイッチ60は、上記検査部22が正常状態検出位置にある状態でオン状態を維持し、検査部22が正常状態検出位置よりも退避位置側に移動するとオフ状態に切り替るように設けられている。
【0041】
本実施形態では、特に、次の構成を採用することによって、より鋭敏にフロントリテーナ16の浮きを検出できるようにしている。
【0042】
すなわち、検査部22の外周部に凹部26が形成されている。ここでは、凹部26は、角穴状に形成されているが、必ずしもその必要はない。凹部は、検査部22の後方側の平面部分から先端側に向けて段部を介して落込んでいる凹形状であればよい。
【0043】
また、検査部22が正常状態検出位置から退避位置側に移動することで、凹部26内へ移動可能でかつ凹部26に向けて付勢された検出子28が設けられている。
【0044】
より具体的には、検出子28は、凹部26内に配設可能な立方体状の部材に形成されている。また、介在部材30内であって検査部22を移動可能に支持する支持穴34の一側方に、検出子28を、凹部26に向けて進退可能に配設可能な検出子支持凹部35が形成されている(図5参照)。そして、検査部22が正常状態検出位置にある状態では、検出子支持凹部35内の検出子28が、検査部22のうち凹部26よりも後方側にずれて、当該検査部22の外周面に接触し、凹部26内への移動が抑制されている(図6(a)参照)。また、検査部22が正常状態検出位置にある状態から退避位置側へ移動すると、検出子28の位置と凹部26との位置とが一致し、当該検出子28が凹部26に移動できるようになる(図6(b)参照)。
【0045】
また、浮き検出スイッチ60は、押操作されている間だけオン状態となり、押操作する力を解除するとオフ状態に復帰する一種の自動復帰タイプのスイッチである。この浮き検出スイッチ60は、その復帰力によって検出子28を凹部26内に向けて付勢するように、介在部材30に設けられている。
【0046】
より具体的には、浮き検出スイッチ60として、接点を内蔵した直方体状の本体部61の一外周面の一端部から順次離間するようにレバー片62が斜め姿勢で延出する一般的なマイクロスイッチが用いられている。この浮き検出スイッチ60は、通常状態で内部の接点がオフ状態となっており、レバー片62が押されると当該押圧力が内部の接点に伝達され、当該接点がオン状態に切り替るようになっている。
【0047】
そして、図6(a)に示すように、検査部22が正常状態検出位置にある状態では、検査部22の外周面に当接する検出子28によって、レバー片62が押込まれ、浮き検出スイッチ60はオン状態が維持された状態となっている。この状態では、レバー片62が元の斜め姿勢に復帰しようとする力によって、検出子28が凹部26に向けて付勢されている。そして、図6(b)に示すように、検査部22が正常状態検出位置にある状態から退避位置側へ移動し、検出子28と凹部26との位置が一致すると、レバー片62の付勢力によって検出子28が凹部26内に押込まれ、レバー片62は元の斜め姿勢に復帰する。これにより、浮き検出スイッチ60がオフ状態に切り替るようになっている。
【0048】
なお、上記検出子28は、次の構成によって凹部26から脱した位置に復帰するようになっている。
【0049】
すなわち、検出子28の側面に外方に突出するピン部材29が突設されている。ピン部材29は、介在部材30の孔部30h及び検査部支持本体部42の側方切欠部42h(図1参照)を通って当該検査部支持本体部42の側方に延出している(図3参照)。また、一方側の側板部46の内面に、当該ピン部材29を配設可能な作動凹部46aが形成されている。作動凹部46aは、コネクタハウジング12の装着方向(図2の左方向)に向けて徐々に広がる三角凹み形状に形成され、コネクタハウジング12の装着方向反対側(図2の右方向)に向けて検出子28の付勢方向反対側(図2の下側)に傾斜する傾斜片46bを有している。そして、コネクタハウジング12をセット凹部43に押込んで装着する際には、これに合わせて介在部材30及び検査部22がコネクタハウジング12の装着方向に向けて移動するので、ピン部材29が作動凹部46aの幅広側の部分内に配設される。これにより、検出子28は、検査部22の外周面に当接した状態から凹部26に入り込むように移動可能な状態となる。また、検出子28が凹部26に嵌り込んだ状態で、コネクタハウジング12をセット凹部43から抜くと、これに合わせて、介在部材30及び検査部22がコネクタハウジング12の装着方向反対側に向けて移動するので、ピン部材29が作動凹部46aの傾斜片46bに摺接する。これにより、ピン部材29が検出子28と共に、凹部26から離脱する方向に押され、検出子28が検査部22の外周面に当接した状態に復帰する。
【0050】
また、このフロントリテーナ浮き検出装置20では、セット凹部43へのコネクタハウジング12のセットを検出するセット状態検出部80を備えている。
【0051】
セット状態検出部80は、接点を内蔵する本体部82の一側部に押込み操作可能な操作部84が設けられたマイクロスイッチによって構成されている。このセット状態検出部80は、操作部84を介在部材30の移動軌跡上に配設させた状態で、検査部支持本体部42のうちセット凹部43とは反対側の部分に取付固定されている。そして、介在部材30がセット凹部43側に位置する状態では操作部84は介在部材30に当接せず、セット状態検出部80はオフ状態を維持するようになっている。また、セット凹部43にセットされたコネクタハウジング12によって、介在部材30がセット凹部43の奥側に押された状態では、操作部84が介在部材30の外周部に当接して押込まれ、セット状態検出部80はオン状態に切り替るようになっている。従って、このセット状態検出部80がオフ状態からオン状態に切り替ることによって、セット凹部43へのコネクタハウジング12のセットが検出されるようになっている。
【0052】
上記浮き検出スイッチ60と本セット状態検出部80とは、例えば、図7に示すように、直列接続されているとよい。そして、浮き検出スイッチ60とセット状態検出部80との双方がオン状態となったとき、つまり、浮き検出スイッチ60とセット状態検出部80との直列回路が導通状態となったときに、フロントリテーナ16の浮きがなく検査合格として取扱うことができ、当該回路が導通状態とならないときに、不合格として取扱えばよい。もっとも、浮き検出スイッチ60とセット状態検出部80とのオンオフ信号が別々に出力され、その両信号状態に基づいてフロントリテーナ浮き検出が行われてもよい。
【0053】
以上のように構成されたフロントリテーナ浮き検出装置20の動作について説明する。
【0054】
まず、初期状態では、図8に示すように、介在部材30はセット凹部43側に位置している。従って、セット状態検出部80は、オフ状態となっている。また、検査部22はセット凹部43内で正常状態検出位置に位置し、検出子28は、正常状態検出位置にある検査部22の外周部に当接している。従って、浮き検出スイッチ60は、オン状態となっている。
【0055】
この状態で、図9に示すように、コネクタハウジング12をセット凹部43内に押込む。すると、介在部材30の環状突出部33がコネクタハウジング12内に挿入されると共に、環状突出部33の基端部外周周りで介在部材30の一主面とコネクタハウジング12の先端部とが当接し、介在部材付勢部材32の付勢力に抗して介在部材30がセット凹部43の奥側に向けて押込まれる。また、コネクタハウジング12の突起部12cがロック片70の突部72に摺接して、ロック片付勢部材76の付勢力に抗してロック片70をロック解除姿勢に姿勢変更させる。
【0056】
そして、コネクタハウジング12をセット凹部43内に完全に押込むと、図10或は図11に示すように、コネクタハウジング12がセット凹部43内に押込まれることによって、突起部12cが突部72を乗越え、ロック片付勢部材76の付勢力によってロック片70がロック姿勢に姿勢変更する。これにより、突部72とコネクタハウジング12の突起部12cとが係止し合い、コネクタハウジング12がセット凹部43内で抜止め状態に支持され、コネクタハウジング12は、セット凹部43内で一定の検査位置に支持される。また、同時に、コネクタハウジング12によって介在部材30がセット凹部43の奥側に向けてさらに押込まれる。そして、介在部材30がセット状態検出部80の操作部84を押込み、これによりセット状態検出部80がオン状態に切り替り、コネクタハウジング12のセットが検出される。
【0057】
上記のようにコネクタハウジング12をセット凹部43内に押込む際、フロントリテーナ16が正常に装着された状態であるとすると、図10に示すように、コネクタハウジング12の前部と介在部材30の一主面との接触位置を基準として、フロントリテーナ16の前端部は環状突出部33内の一定位置に入り込む。この状態では、フロントリテーナ16の前端部と検査部22の当接部24とが当接し、検査部22は介在部材30内で正常状態検出位置を維持する。このため、検出子28は凹部26内に入り込まず、浮き検出スイッチ60は、オン状態を維持する。
【0058】
従って、セット状態検出部80がオン状態に切り替り、かつ、浮き検出スイッチ60がオン状態を維持することをもって、フロントリテーナ16の浮きが無いことが確認される。
【0059】
一方、コネクタハウジング12をセット凹部43内に押込む際、フロントリテーナ16が正常に装着されず浮いた状態であるとすると、図11に示すように、コネクタハウジング12の前部と介在部材30の一主面との接触位置を基準として、フロントリテーナ16の前端部は環状突出部33内の上記一定位置よりも奥に入り込む。この状態では、フロントリテーナ16の前端部と検査部22の当接部24とが当接して、検査部22が介在部材30内で正常状態検出位置よりも奥に押込まれる。このため、検出子28が凹部26内に入り込み、浮き検出スイッチ60はオフ状態に切り替る。
【0060】
従って、セット状態検出部80がオン状態に切り替り、かつ、浮き検出スイッチ60がオフ状態に切り替ることをもって、フロントリテーナ16の浮きが生じていることが確認される。
【0061】
以上のように構成されたフロントリテーナ浮き検出装置20によると、フロントリテーナ16に浮きが生じていると、検査部22が正常状態検出位置から退避位置側に移動する。これにより、浮き検出スイッチ60がオン状態からオフ状態に切り替るので、このオフ状態への切り替りによってフロントリテーナ16の浮きを検出することができる。特に、検査部22は、コネクタ10の接続方向前方側よりフロントリテーナ16に当接するため、フロントリテーナ16が外部ハウジング12a内に配設されている場合でも、当該フロントリテーナ16の浮きを検出できる。また、浮き検出スイッチ60或はその配線の断線不具合等によってオン状態に切り替った際に、そのオン信号が出力されないような場合には、フロントリテーナ16の浮きの有無に拘らず、浮き検出スイッチ60からオフ信号が継続して出力されることになる。このため、フロントリテーナ16の浮きの有無の確認が促される。そして、フロントリテーナ16に浮きが生じていれば、フロントリテーナ16の浮きの不具合が手直し等される。また、フロントリテーナ16に浮きが生じていなければ、本フロントリテーナ浮き検出装置20の不具合発生が疑われ、フロントリテーナ浮き検出装置20自体に対する不具合確認等が促される。従って、フロントリテーナ浮き検出装置20の不具合によるフロントリテーナ16の浮きの見逃しがより確実に抑制される。
【0062】
また、コネクタハウジング12をセット凹部43にセットすると、検査部22がフロントリテーナ16に当接し、フロントリテーナ16の装着状態に応じて、検査部22が正常状態検出位置に位置し或はその位置から退避位置側に移動する。このため、フロントリテーナ16と検査部22とをより正確かつ容易に突合わせるように当接させることができる。
【0063】
また、セット凹部43へのコネクタハウジング12のセットを検出するセット状態検出部80を備えているため、セット凹部43にコネクタハウジング12がセットされた状態で、適切なタイミングでフロントリテーナ16の浮きの有無を確認することができる。
【0064】
また、検査部22が正常状態検出位置から退避位置側に移動することで、検出子28が凹部26内に入り込んで、浮き検出スイッチ60がオフ状態に切り替るように設けられているため、浮き検出スイッチ60がオンオフ切り替るのに要する動作ストローク自体よりも鋭敏な精度でオンオフ切り替えすることができる。つまり、浮き検出スイッチ60をオンオフ切り替えするための動作ストロークがL(mm)であるとする。この場合、検査部22が移動可能に支持された位置と、正常状態検出位置でのセット凹部43の位置とのずれをM(mm)に設定し(図6参照)、検出子28が凹部26に嵌り込むと、動作ストロークL(mm)以上移動する構成とすればよい。前記ずれM(mm)は、検査部22、介在部材30、検出子28等の比較的簡易な形状部品の寸法設計によって設定することができ、また、その製造精度も比較的良好なものとし易い。このため、ずれ量Mを比較的小さく設定できると共に、その寸法公差も比較的向上させやすい。これにより、比較的鋭敏な精度で、浮き検出スイッチ60をオンオフ切り替えさせ易いことになる。
【0065】
{第2実施形態}
第2実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置120について説明する。なお、検査対象となるコネクタ10は、上記第1実施形態で説明したものと同じである。但し、本実施形態では、コネクタハウジング12の突起部12cは省略されている。
【0066】
図12は第2実施形態に係るフロントリテーナ浮き検出装置120を示す概略説明図であり、図13は同フロントリテーナ浮き検出装置120を開いた状態を示す概略説明図である。
【0067】
このフロントリテーナ浮き検出装置120は、検査部122と、検査部支持部140と、検査部付勢部材150と、浮き検出スイッチ160とを備えている。
【0068】
検査部122は、所定の検査位置に配設されたコネクタハウジング12のフロントリテーナ16に対してコネクタ10の接続方向前方側より当接可能に構成されている。より具体的には、検査部122は、樹脂等で形成された部材であり、検査本体部124と側方突起部126とが略L字状に連なる部材とされている。検査本体部124は、コネクタハウジング12内に挿入可能な大きさ、ここでは、フロントリテーナ16の正面部分と略同じ大きさ及び形状に形成されている。そして、検査本体部124の先端部をフロントリテーナ16の正面に押し当てることにより、当該フロントリテーナ16の位置に応じて検査部122のその長手方向における位置が定まるようになっている。
【0069】
検査部支持部140は、上記第1実施形態と同様に、上記検査部22を、コネクタハウジング12に正常に装着されたフロントリテーナ16に当接可能な正常状態検出位置と当該正常状態検出位置から退避した退避位置との間で移動可能に支持するように構成されている。
【0070】
より具体的には、検査部支持部140は、樹脂等で直方体ブロック状に形成され、その一方主面から他方主面に向けて、検査本体部124を移動可能に支持するガイド孔部144が形成されている。また、ガイド孔部144の他方主面側部分には、側方に向けて凹む側方凹部145が形成されている。そして、上記側方突起部126を側方凹部145内に配設すると共に、検査本体部124をガイド孔部144内にスライド移動可能に配設することで、検査部122が検査部支持部140に移動可能に支持されている。
【0071】
検査部付勢部材150は、上記検査部122を正常状態検出位置に向けて付勢するように設けられている。ここでは、上記検査本体部124内にその長手方向に沿って穴部124hが形成され、その穴部124h内に検査部付勢部材150としてコイルバネが配設されている。また、検査本体部124のうち穴部124hを囲む側壁部に長孔124haが形成され、検査部支持部140より突設されたピン部材141が当該長孔124haを通って穴部124h内に突出している。そして、検査部付勢部材150としてのコイルバネが、穴部124hの奥部とピン部材141との間に圧縮状に介在配置され、これにより、検査部122を正常状態検出位置に向けて付勢している。勿論、検査部付勢部材150としてはその他の板バネ等を用いてもよい。
【0072】
また、浮き検出スイッチ160は、側方突起部126のうち検査本体部124が突出する側の面に対向する位置で、検査部支持部140に固定されている。浮き検出スイッチ160は、接点を内蔵する本体部162の一側部に押込み操作可能な操作部164が設けられたマイクロスイッチによって構成されている。また、操作部164は、側方突起部126と対向する位置に設けられている。そして、検査部122が正常状態検出位置にある状態では操作部164は側方突起部126により押込まれ、浮き検出スイッチ160はオン状態となる。また、検査部122が正常状態検出位置から退避位置側に移動すると、操作部164が自己復帰して、浮き検出スイッチ160はオフ状態となる。
【0073】
また、本実施形態では、コネクタハウジング12をセット可能なセット凹部172を有するコネクタセット部170が、上記検査部支持部140とは別部材として設けられている。
【0074】
すなわち、基台190上の一定位置に本コネクタセット部170が設けられている。
【0075】
コネクタセット部170は、樹脂等で形成された略直方体ブロック状部材であり、コネクタハウジング12を一定姿勢で支持可能なセット凹部172を有している。セット凹部172は、コネクタハウジング12の外周形状に対応する凹形状であり、コネクタセット部170の上方及び検査部支持部140側に開口している。そして、コネクタハウジング12をセット凹部172の上方よりセットし、また、このセット状態で、コネクタハウジング12のフロントリテーナ16の前部を上記検査部122と対向して配設できるようになっている。
【0076】
また、基台190上にレール192が設けられ、上記検査部支持部140が当該レール192に沿ってスライド移動可能に支持されている。そして、検査部支持部140がコネクタセット部170側に移動することで、検査部122が検査位置に移動し、セット凹部172に支持されたコネクタハウジング12のフロントリテーナ16の前部に当接可能とされる。また、検査部支持部140がコネクタセット部170から離れる側に移動することで、コネクタハウジング12をセット凹部43に容易に脱着できるようになっている。なお、コネクタセット部170が検査部支持部140に対して移動する構成であってもよい。
【0077】
なお、基台190上であって検査部支持部140の背面側にレバー部材194が回動自在に支持されている。レバー部材194は、一種のカムレバーであり、このレバー部材194を揺動操作することによって、検査部支持部140をコネクタセット部170側に押付けた状態に維持できるようになっている。もっとも、レバー部材194は省略されてもよい。
【0078】
また、このフロントリテーナ浮き検出装置120は、セット凹部172へのコネクタハウジング12のセットを検出する検査タイミング検出部180を備えている。
【0079】
検査タイミング検出部180は、管部材182と、当該管部材182に対して進退可能に支持されたピン状部材184とを有している。ピン状部材184は、コイルバネ等の付勢部材によって進出方向に付勢されている。そして、ピン状部材184が管部材182内に退避移動することによって内蔵された接点がオフ状態からオン状態に切り替る構成とされている。この検査タイミング検出部180は、そのピン状部材184の先端部をセット凹部172に向けた姿勢で、検査部支持部140に支持されている。そして、コネクタセット部170と検査部支持部140とが離れた状態、及び、両者が接近していてもセット凹部172にコネクタハウジング12がセットされていない状態では、検査タイミング検出部180はオフ状態に維持されている。一方、セット凹部172内にコネクタハウジング12をセットした状態で、コネクタセット部170を検査部支持部140に向けて移動させると、セット凹部172内のコネクタハウジング12がピン状部材184の先端部に押し当り、当該ピン状部材184を管部材182内に退避させる。これにより、セット状態検出部80がオフ状態からオン状態に切り替るようになっている。
【0080】
なお、上記第1実施形態と同様に、浮き検出スイッチ160と本検査タイミング検出部180とは、直列接続され、この直列接続回路が導通状態となったときに、フロントリテーナ16の浮きがなく検査合格として取扱うとよい。
【0081】
以上のように構成されたフロントリテーナ浮き検出装置120の動作について説明する。
【0082】
まず、初期状態では、図13に示すように、コネクタセット部170は検査部支持部140よりも離れた状態とされている。この状態では、検査部122は、検査部付勢部材150の付勢力によって正常状態検出位置に位置した状態となっている。従って、浮き検出スイッチ160の操作部164は検査部122の側方突起部126によって押込まれており、浮き検出スイッチ160はオン状態となっている。また、検査タイミング検出部180のピン状部材184は押圧されておらず、従って、検査タイミング検出部180はオフ状態となっている。
【0083】
この状態で、コネクタハウジング12をセット凹部172内にセットし、この後、レバー部材194の操作等によって検査部支持部140をコネクタセット部170側に移動させる(図12参照)。
【0084】
すると、図14及び図15に示すように、セット凹部172内のコネクタハウジング12が検査タイミング検出部180のピン状部材184の先端部を押込む。これにより、検査タイミング検出部180がオフ状態からオン状態に切り替り、コネクタハウジング12のセットが検出される。
【0085】
この際、フロントリテーナ16が正常に装着された状態であると、図14に示すように、検査部122は正常状態検出位置でフロントリテーナ16の先端部に当接する。このため、浮き検出スイッチ160はオン状態を維持する。従って、検査タイミング検出部180がオン状態に切り替り、かつ、浮き検出スイッチ160がオン状態を維持することによって、フロントリテーナ16の浮きが無いことが確認される。
【0086】
一方、フロントリテーナ16が正常に装着されず浮いた状態であるとすると、図15に示すように、検査部122と浮いた状態のフロントリテーナ16の先端部とが当接し、検査部122は正常状態検出位置から退避位置側に移動する。これにより、浮き検出スイッチ160はオン状態からオフ状態に切り替る。
【0087】
従って、検査タイミング検出部180がオン状態に切り替り、かつ、浮き検出スイッチ160がオフ状態に切り替ることをもって、フロントリテーナ16の浮きが生じていることが確認される。
【0088】
以上のように構成されたフロントリテーナ浮き検出装置120によると、上記第1実施形態と同様に、浮き検出スイッチ160がオン状態からオフ状態に切り替ることによってフロントリテーナ16の浮きを検出することができると共に、フロントリテーナ浮き検出装置20の不具合によるフロントリテーナ16の浮きの見逃しがより確実に抑制される。また、検査部122は、コネクタ10の接続方向前方側よりフロントリテーナ16に当接するため、フロントリテーナ16が外部ハウジング12a内に配設されている場合でも、当該フロントリテーナ16の浮きを検出できる。
【0089】
また、コネクタセット部170と検査部支持部140とが離隔移動可能に配設されているため、両者を離隔させた状態で、コネクタハウジング12を容易にセット凹部172にセットできる。
【0090】
また、セット凹部172にセットされたコネクタハウジング12と検査部支持部140との接近移動を検出する検査タイミング検出部180が設けられているため、適切なタイミングで、フロントリテーナ16の浮きの有無を確認することができる。
【0091】
本第1実施形態は、上記第2実施形態と比べて、介在部材30、検出子28等が省略されている分、構成の簡略化を図ることができるというメリットがある。
【0092】
もっとも、本実施形態において、上記第1実施形態と同様に、検査部の移動により検出子が移動して、浮き検出スイッチをオンオフ動作させる構成を適用してもよい。
【0093】
{変形例}
なお、上記各実施形態等で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0094】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0095】
10 コネクタ
12 コネクタハウジング
16 フロントリテーナ
20、120 フロントリテーナ浮き検出装置
22、122 検査部
26 凹部
28 検出子
40、140 検査部支持部
43 セット凹部
50、150 検査部付勢部材
60、160 浮き検出スイッチ
62 レバー片
80 セット状態検出部
170 コネクタセット部
172 セット凹部
180 検査タイミング検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングに対してその接続方向前方側よりフロントリテーナが装着されるコネクタに対して、前記フロントリテーナの浮きを検出するフロントリテーナ浮き検出装置であって、
所定の検査位置に配設された前記コネクタハウジングの前記フロントリテーナに対して前記接続方向前方側より当接可能な検査部と、
前記検査部を、前記コネクタハウジングに正常に装着された前記フロントリテーナに当接可能な正常状態検出位置と前記正常状態検出位置から退避した退避位置との間で移動可能に支持する検査部支持部と、
前記検査部を前記正常状態検出位置に向けて付勢する検査部付勢部材と、
前記検査部が前記正常状態検出位置にある状態でオン状態を維持し、前記検査部が前記正常状態検出位置よりも前記退避位置側に移動するとオフ状態に切り替るように設けられた浮き検出スイッチと、
を備えるフロントリテーナ浮き検出装置。
【請求項2】
請求項1記載のフロントリテーナ浮き検出装置であって、
前記検査部支持部に、前記コネクタハウジングを前記検査位置で支持可能なセット凹部が設けられ、
前記コネクタハウジングが前記セット凹部にセットされた状態で、前記検査部が前記コネクタハウジングの前記フロントリテーナに当接可能に支持されている、フロントリテーナ浮き検出装置。
【請求項3】
請求項2記載のフロントリテーナ浮き検出装置であって、
前記セット凹部への前記コネクタハウジングのセットを検出するセット状態検出部をさらに備えるフロントリテーナ浮き検出装置。
【請求項4】
請求項1記載のフロントリテーナ浮き検出装置であって、
前記コネクタハウジングをセット可能なセット凹部を有するコネクタセット部をさらに備え、
前記コネクタセット部と前記検査部支持部とが相対的に接近離隔移動可能に配設されると共に、前記コネクタセット部と前記検査部支持部とが相対的に接近移動することで、前記コネクタハウジングが前記検査位置に支持される、フロントリテーナ浮き検出装置。
【請求項5】
請求項4記載のフロントリテーナ浮き検出装置であって、
前記コネクタセット部の前記セット凹部にセットされた前記コネクタハウジングと前記検査部支持部との接近移動を検出する検査タイミング検出部をさらに備えるフロントリテーナ浮き検出装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフロントリテーナ浮き検出装置であって、
前記検査部の外周部に凹部が形成され、
前記検査部が前記正常状態検出位置から前記退避位置側に移動することで前記凹部内へ移動可能でかつ前記凹部内に向けて付勢された検出子をさらに備え、
前記浮き検出スイッチが、前記凹部内への前記検出子の移動により、オン状態からオフ状態に切り替るように設けられている、フロントリテーナ浮き検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−151026(P2012−151026A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9723(P2011−9723)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】