説明

フロースルーセルの検出チップの固定構造

【課題】本発明は、フロースルーセルに装着される検出チップの対向面への貼り付きを防止し、弾性部材の圧縮率を一定にすることが可能な構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 溶液に両側又は片側が浸される圧電素子を基板上に設けることにより構成される検出チップの固定構造であって、前記基板上の前記圧電素子を除く前記基板の端部を上下から挟持して固定するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中の物質検知又は測定に用いるためのフロースルーセルに関し、特に検出方式が水晶振動子マイクロバランス法(以下、「QCM」とする。)であるフロースルーセルの検出チップの固定構造及びこれを使用したフロースルーセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料溶液中に特異な分子の存在を検出するための検出素子を基板上に設けて検出チップを構成し、これをフロースルーセルとして使用することが特許文献1〜2に提案されている。
特許文献1には、正方形状の基板上に円形状の水晶振動子を配置し、その周囲をシーリングして構成される検出チップが記載されている。
特許文献2には、水晶振動子を下部部材の円形凹部に配置し、水晶振動子の外形よりも一回り小さい四角形状のセル室シール部材を水晶振動子上に配置し、その上から上部部材を配置し、上部部材と下部部材とを両側に設けられた金具により押圧して固定する構造のフロースルーセルが記載されている。
また、特願2009-295923には、検出チップをフロースルーセルに配置し、蓋を下方に移動させるだけで簡単に検出チップをセルに取り付けるための構造が開示されている。
特願2009-295923に記載されているフロースルーセルの詳細な構造を図1を用いて説明する。
図示されるように、下型1に上型2が重なることができるように蝶番3により開閉自在となるように構成される。
下型1の上面には、平面視四角形状の凹部1aが設けられ、この凹部1a内の対角する位置にピン4が計2本立設される。この凹部1a内には、図2に示す支持部材5が配置される。この支持部材5は、略四角形状の板材により構成され、前記ピン4,4が挿通される貫通孔5h,5hが設けられる。また、支持部材5の上下面方向には、貫通孔5aが設けられており下面側で検出チップ6の底面を支持するための貫通孔5a中心に向かってフランジ5bが形成されている。尚、検出チップ6は、プリント配線基板等の基板6b上面に、基板6bの外形寸法よりも一回りほど小さい凹部を設け、水晶振動子等の検出素子6aを配置することにより構成される。そして、検出素子6aの外周にリング状のシール部材13を設けて上型1及び下型2間に挟持される。
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1の構造では、検出素子の上面側がセルの内壁天井に貼り付き、検出素子下側から上側に向かって押圧される際に、検出素子の周囲に設けられたシーリング材の圧縮率が変化してセル容量が一定にならないという問題がある。
また、特許文献2の構造では、検出素子を上下の部材で押圧して固定するため、固定する際の押圧力の度合いによりシール部材の圧縮率が変化してセル容量が一定にならないという問題がある。
また、特願2009-295923に開示の構造でも、検出チップ6がシール部材13により導入口および排出口を備えたセル構成部材10(セル上部部材)の底面に貼り付くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004-523150号公報(図4、図5)
【特許文献2】特開平8-75628号公報(図3、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、フロースルーセルに装着される検出チップの対向面への貼り付きを防止し、弾性部材の圧縮率を一定にすることが可能な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフロースルーセルの検出チップの固定構造は、請求項1に記載の通り、溶液に両側又は片側が浸される圧電素子を基板上に設けることにより構成される検出チップの固定構造であって、前記基板上の前記圧電素子を除く前記基板の端部を上下から挟持して固定するようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のフロースルーセルの検出チップの固定構造において、前記基板の端部上面に圧縮調整部材を備えたことを特徴とする。
また、本発明のフロースルーセルは、請求項3に記載の通り、請求項1又は2に記載の検出チップの固定構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧電素子を除く基板の端部が上下から挟持されて固定されるため、検出チップの上面側に配設されたシール部材が対向面であるセル上部部材に貼り付くことがなく、検出チップの脱離が簡便になる。
また、基板の端部上面に圧縮調整部材を備えているため、上型2が下型1に重なり合った際のバネ等の弾性部材による押圧に係わらずシール部材が一定に圧縮され、流路がシール部材で塞がれて遮断されるのを防ぐことができ、セル容量を常に一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】フロースルーセルの従来構造の説明図
【図2】フロースルーセルに配置される支持部材の説明図
【図3】本発明の一実施の形態の説明図
【図4】同実施の形態の基板6bの平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図3に示されるフロースルーセルは、下型1に上型2が重なることができるように蝶番3により開閉自在となるように構成される。
下型1の上面には、平面視四角形状の凹部1aが設けられ、この凹部1a内の対角する位置にピン4が計2本立設される。この凹部1a内には、図2に示す支持部材5が配置される。この支持部材5は、略四角形状の板材により構成され、前記ピン4,4が挿通される貫通孔5h,5hが設けられる。また、支持部材5の上下面方向には、貫通孔5aが設けられており下面側には貫通孔5a中心に向かってフランジ5bが形成され、このフランジ5bにより検出チップ6の底面が支持される。従って、本発明における凹部とは有底の凹部と貫通孔により得られる凹部の両方が含まれることになる。また、検出チップ6は、プリント配線基板等の基板6b上面に凹部を設け、凹部内に水晶振動子等の検出素子6aを配置することにより構成される。そして、図4に示すように、基板6b上面の凹部よりも外側の外周端部には把持部14(A又はB)が設けられており、図3に示すように、フランジ部5bとシール部材13とで基板6bを上下から挟持するようになっている。この把持部14は、例えばポリメチルメタクリレート、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリジメチルシロキサン等からなり、シール部材が必要以上に圧縮されるのを防いでシール部材の圧縮を一定に保つ圧縮調整部材としての役割も果たす。尚、把持部14は基板6bと一体として構成してもよい。
また、基板を構成する材料は特に制限はないが、ガラスエポキシ樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、紙ベークライト、テフロン(登録商標)、セラミックス等で構成することができる。
上型2は、本実施の第1形態では、上型2本体の下面に、バネ等の弾性部材7を介して下型1方向に付勢された溶液の導入口8及び排出口9を備えた部材10を設けて構成される。尚、部材10の飛び出しを防ぐために、上型2本体の下面に設けられた凹部の内周には、フランジ2aが設けられている。また、下型1は、下型1本体の上面に、バネ等の弾性部材7を介して上型2方向に付勢された支持部材5を設ける構成としてもよい。導入口8及び排出口9が下面に備えられた部材10の内部には、セルの外部から溶液を導入口8に導くための導入路11と、排出口9からの溶液をセルの外部に排出するための排出路12とが形成されている。
そして、上型2が下型1に重なりあった際に、検出チップ6の検出部上方をシールするために、上型2側の導入口8及び排出口9の外周部に検出部を開口したシール部材13が設けられている。シール部材は圧縮されて溶液の漏洩を防止するものであればその材料に特に制限は無いが、例えばシリコーンゴム、フッ素樹脂系パッキン材、天然ゴム、合成ゴム、ゲル状シール材、防水スポンジ材などを用いることが出来る。
導入口8及び排出口9を備えた部材10の材質は、例えば、PMMA、フッ素樹脂、PEEKなどの樹脂等を使用することができる。
【0010】
上記の構造により、支持部材5の上面に検出チップ6を配置した状態で下型1の凹部1aのピン4により支持部材5を固定し、上型2を閉じることにより、導入口8及び排出口9が設けられた部材10が検出チップ6の上方に溶液を溜めるべく、その外周をシール部材13によりシールされた空間を形成することができる。従って、導入口8及び排出口9を検出部上方に位置合わせする作業が容易となる。また、通常は外形寸法が単体での取扱が困難な数mm程度の検出チップ6を交換する際に、下型1から直接検出チップ6を取り外すことなく、支持部材5ごと取り外すことで極めて迅速に作業が可能となる。
【0011】
上記説明した構造では、下型1の凹部1a内にピン4を立設し、支持部材5にピン4を挿通させるための貫通孔5h、5hを設けているが、これらの構造については、支持部材5が導入口及び排出口を備えた部材10に接合した際に、実用上流路条件に支障ない精度があれば必ずしも必要なものではない。
また、上型2又は下型1には、図示しないが検出チップ6へ通電するための配線を設ける必要がある。
また、本実施の形態では、下型1と上型2とを蝶番3により接続したが、必ずしも、この接続方法に限定されるものではなく、下型1の上方位置において、下型1から離間自在のスライダにより上型2を支持するようにしてもよい。
上記説明では、シール部材13を検出チップ6の外周に設けるようにしたが、導入口及び排出口を備えた部材10に設けるようにしてもよい。また、シール部材13を構成する材料については特に制限はないが、例えば、高分子弾性材料を使用することができる。
また、本発明の測定装置は、フロースルーセル用に使用されている公知のポンプや水晶発振回路やネットワークアナライザー等から構成することができる。
【符号の説明】
【0012】
1 下型
2 上型
3 蝶番
4 ピン
5 支持部材(セル下部部材1)
6 検出チップ
7 弾性部材
8 導入口
9 排出口
10 導入口及び排出口を備えたセル構成部材(セル上部部材)
11 導入路
12 排出路
13 シール部材
14 把持部(圧縮調整部材;セル下部部材2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液に両側又は片側が浸される圧電素子を基板上に設けることにより構成される検出チップの固定構造であって、前記基板上の前記圧電素子を除く前記基板の端部を上下から挟持して固定するようにしたことを特徴とするフロースルーセルの検出チップの固定構造。
【請求項2】
前記基板の端部上面に圧縮調整部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のフロースルーセルの検出チップの固定構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の検出チップの固定構造を備えたことを特徴とするフロースルーセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−88160(P2013−88160A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226538(P2011−226538)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)