説明

フローテータエアノズル洗浄装置及びフローテータ

【課題】エアノズルを少ない洗浄液の量で効果的に洗浄することができ、且つ構造を簡単にすることができるフローテータエアノズル洗浄装置を提供する。
【解決手段】フローテータ1は、エアノズル6内を洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置8を備える。フローテータエアノズル洗浄装置8はセル2の左右の壁板22,23に夫々取り付けられた第1及び第2の洗浄ノズル81,82を備え、第1,2の洗浄ノズル81,82は、中空円筒管状のパイプ83と、パイプ83の一端に設けられたノズルヘッド84とを有し、ノズルヘッド84の壁部84aには円筒形の円筒開口85と、スリット状のスリット開口86,87とが形成されている。円筒開口85から噴射された洗浄液は円錐状又は円錐形に広がり、スリット開口86,87から噴射された洗浄液は平板状又は平板形に広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱インク用のフローテータに関し、特に、フローテータのエアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置、及び該フローテータエアノズル洗浄装置を備えるフローテータに関する。
【背景技術】
【0002】
古紙からインクを取り除いて製紙原料とするための脱墨処理には、フローテータが用いられる。フローテータは、前工程によりインクがパルプ繊維から剥離して微細な粒子となった原料液に対して脱墨処理を行う。脱墨処理においてフローテータは、原料液に空気を混入し、気泡を発生させ、発生させた気泡の表面に原料液中を浮遊するインク粒子を付着させてフロスとし、これを気泡の上昇に伴って浮上させて原料液面に集積し、集積したフロスを取り除くことにより原料液に含まれるインク成分を減少させる。
【0003】
フローテータは、一般に、原料液を貯留するための槽状のセルと、セル内に原料液を供給するための注入口と、セルから原料液を排出するための排出口と、気泡発生装置とを備えている。気泡発生装置は、原料液内に空気を供給するためのエアノズルと、エアノズルから供給された空気に剪断力を加えて気泡を生成し、この気泡を原料液内に攪拌するロータとを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
フローテータにおいて、ロータが供給された空気を剪断するときに微小な圧力パルスが発生し、この圧力パルスによりエアノズルの空気供給口内に微量の原料が進入する。エアノズル内は、空気供給源からの熱により乾燥しやすい環境にあり、このため、進入した原料がエアノズル内において乾燥し、空気供給口が部分的に閉塞あるいは狭まることで脱墨機能が低下する。
【0005】
また、原料白水中には、珪素やアルミニウムが存在する他に塗工紙が原料に含まれると、塗料となるクレーや炭酸カルシウム等の白色顔料や接着剤が含まれる。このような原料状態で、これらが酸化物として析出し易い状態になると空気供給口内壁に酸化物が析出する可能性があり、そうなれば空気供給口が狭まり脱墨機能は低下する。
【0006】
従って、脱墨機能の低下を防止するために、空気供給口の詰まりを防止することが重要である。上述のような空気供給口の詰まりを防止するために、エアノズルの洗浄装置が用いられている。
【0007】
従来のエアノズルの洗浄装置として、スプレーノズル、高圧ホースに取り付けられた自走式管内洗浄ノズル、及びホース巻取り押出し装置を備えるエアノズルの洗浄装置がある。
【0008】
このエアノズルの洗浄装置において、スプレーノズルは、エアノズル内に水を噴霧しエアノズル内壁及びノズル開口内壁を常に湿らせ、進入した原料等が乾燥、固化することを防止する。自走式管内洗浄ノズルは、複数の小さな穴から高圧水を進行方向とは逆方向に噴出し、その水圧により推進力を得て、エアノズル内を直進・後退させて洗浄を行なう。高圧ホースはその長さが5mを超えるものもあり、このような高圧ホースにおいては、高圧ホースのエアノズル内への押し出しやエアノズル内からの巻き取りは人力では困難であり、ホース巻取り押出し装置によりこれを行っている。また、高圧ホースがエアノズル内を移動する際、空気供給口付近で高圧ホースはエア噴出圧に押されて摩擦抵抗が増す。これを防止するため、エアノズルを洗浄する間は、自動的に供給エア量をある程度絞るための計装弁が設けられている。
【0009】
上述の従来のエアノズルの洗浄装置は、複雑な制御が必要であり、製作コストが高くなっていた。
【0010】
このような従来の洗浄装置が有する問題を解決するフローテータとして、エアノズル内に設けられた洗浄用配管を備え、この洗浄用配管に等間隔に洗浄シャワーノズルを配置した洗浄装置が知られている。
【特許文献1】特許第2790338号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これらの低コスト形の洗浄装置でも洗浄ノズルの詰まりや洗浄水圧の変動、洗浄シャワーノズルの数、洗浄液のスプレーのパターンの有効性等の問題から、洗浄性能が低下した。さらに、24時間連続で洗浄を行う必要があることから洗浄水量が増し水源不足になる問題も加わり、フローテータの脱墨性能や洗浄能力が不安定となっていた。
【0012】
本発明の目的は、エアノズルを少ない洗浄液の量で効果的に洗浄することができ、且つ構造を簡単にすることができるフローテータエアノズル洗浄装置、及び該フローテータエアノズル洗浄装置を備えるフローテータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願発明に係るフローテータエアノズル洗浄装置は、フローテータに設けられたエアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置であって、液体を噴出する洗浄ノズル噴射口を有する洗浄ノズルを備え、前記洗浄ノズル噴射口が、噴射された液体が円錐状に広がり且つ平板状に広がる形状を有しており、前記洗浄ノズル噴射口は、前記円錐状の広がりを形成するための円筒形の円筒開口と、前記平板状の広がりを形成するための、前記円筒開口の軸に直交する第1の方向に延びるスリット状のスリット開口とを備え、該スリット開口は前記第1の方向において前記円筒開口から突出していることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記スリット開口は、前記第1の方向に直行する第2の方向の幅がエアノズルの空気供給口に対応した幅である。
【0015】
好ましくは、前記洗浄ノズルは、管状のパイプと、該パイプの一端において該一端側の縁部を覆うように取り付けられたノズルヘッダとを備え、該ノズルヘッダが前記洗浄ノズル噴出口を有している。
【0016】
好ましくは、前記スリット開口は前記第1の方向においても前記ノズルヘッダから開口している。
【0017】
好ましくは、前記ノズルヘッダは前記円筒開口と同軸の円筒形の形状を有している。
【0018】
好ましくは、前記ノズルヘッダは、前記液体の噴射方向の端部に前記円筒開口の軸に直行する平面に面する壁部を有しており、前記円筒開口及び前記スリット開口は前記壁部を貫通している。
【0019】
好ましくは、前記管状のパイプと前記円筒開口は同軸上に配設させている。
【0020】
好ましくは、前記円筒開口の直径は10〜30mmであり、前記スリットの前記第2の方向の幅は1〜5mmであり、前記壁部の厚さは2〜6mmである。
【0021】
本発明に係るフローテータは、原料液を貯留するセルと、原料液内に空気を供給するエアノズルと前記供給された空気に剪断力を加えて微小気泡を生成し且つ該微小気泡を前記原料液内に攪拌するロータとを備える気泡発生装置と、前記エアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置とを備え、前記エアノズル及び前記ロータは前記セルの対向する壁板間に延設されており、前記ロータは前記セルの対向する壁板に回転可能に軸支されており、前記エアノズルは前記ロータの上方において前記セルの対向する壁板に支持されており且つ空気を供給するための空気供給口を備え、前記フローテータエアノズル洗浄装置は前記エアノズル内に液体を噴射する少なくとも1つの洗浄ノズルを備え、前記洗浄ノズルは前記セルの外側から前記エアノズル内に突入していることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記エアノズルは中空室を有する中空円筒状の形状を有しており、前記フローテータエアノズル洗浄装置は洗浄ノズルとして第1の洗浄ノズルを有しており、該第1の洗浄ノズルは前記セルの外側において前記対向する壁板の一方に配設されており、前記第1の洗浄ノズルは前記エアノズルの一端から前記中空室内に突入している。
【0023】
好ましくは、前記フローテータエアノズル洗浄装置は洗浄ノズルとして第2の洗浄ノズルを有しており、該第2の洗浄ノズルは前記セルの外側において前記対向する壁板の他方に配設されており、前記第2の洗浄ノズルは前記エアノズルの他端から前記中空室内に突入している。
【0024】
好ましくは、前記フローテータエアノズル洗浄装置は、請求項1乃至8のいずれか1項記載のフローテータエアノズル洗浄装置である。
【0025】
好ましくは、前記平板状の広がりが前記エアノズルの前記空気供給口内に広がるように、前記スリット開口は、前記第1の方向が前記空気供給口方向に一致するように配置されている。
【0026】
好ましくは、前記円筒開口と前記エアノズルは同軸上に配設されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るフローテータに設けられたエアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置は、洗浄ノズル噴射口の円筒形の円筒開口から円錐状に広がるように洗浄用の液体を噴射することができ、また、スリット状のスリット開口から平板状に広がるように液体を噴射することができる。このように、本発明に係るフローテータエアノズル洗浄装置は、液体を円錐状に広がるように且つ平板状に広がるように噴射することができる。従って、洗浄ノズルをエアノズルの端部に設けることにより、エアノズル内に、洗浄用の液体を円錐状に広がるように且つ平板状に広がるように噴射することができるので、エアノズル内全体を洗浄することができる。また、スリット開口の位置をエアノズルの空気供給口に対応させることにより、洗浄用の液体を空気供給口に向って平板状に広がるように噴射することができ、エアノズルの内面は円錐状に広がる液体により、空気供給口は平板状に広がる液体により夫々洗浄することができる。また、エアノズルの長さが長い場合には、エアノズルの両端に洗浄ノズルを夫々取り付けることにより、エアノズル内全体を洗浄することができる。このように、本発明によれば、少ない数の洗浄ノズルによって、少ない洗浄用の液体の量でエアノズル内全体を洗浄することができ、加えて、簡単な構成の洗浄ノズルによって、エアノズル内全体を洗浄することができる。従って、本発明によれば、エアノズルを少ない洗浄用の液体の量で効果的に洗浄することができると共に、フローテータエアノズル洗浄装置の構造を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係るフローテータエアノズル洗浄装置を備えるフローテータの平面図であり、図2は、図1の線II−IIに沿う断面図であり、図3は、図1のフローテータにおけるフローテータエアノズル洗浄装置近傍の正面図であり、図4は、図3の線IV-IVに沿う断面図である。尚、本実施の形態においては、図1において、上側及び下側を夫々右側及び左側と、また、右側及び左側を夫々正面側及び背面側とし、図2において、上側及び下側を夫々上側及び下側とする。
【0030】
図1及び図2に示すように、フローテータ1は、セル2と、原料液Mをセル2内に供給するための原料入口3と、原料液Mをセル2内から排出するための原料出口4と、微小気泡Bを生成して原料液内に微小気泡Bを攪拌するための気泡発生装置5とを備える。気泡発生装置5は、微小気泡Bを生成するために空気を供給するためのエアノズル6と、エアノズル6から供給された空気を微小気泡Bにして原料液M内に攪拌するためのロータ7とを備える。また、フローテータ1は、エアノズル6内を洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置8を備える。
【0031】
セル2は、左右方向に延び略円筒状の、上部が切断されて開口を有する筒状部材21と、筒状部材21の左右両端部を塞ぐように配設される壁板22,23と、筒状部材21の正面側の上部切断面24及び壁板22,23上に連設されると共に筒状部材21の背面よりも外側に張り出している矩形の枠部材25とを備える。また、セル2は、枠部材25の後方に張り出した部分の下部において、枠部材25と筒状部材21の背面とによって形成される開口を塞ぐ底板26が設けられている。セル2においては、筒状部材21の背面、枠部材25、及び底板26により、フロス用トラフ27が形成されている。また、筒状部材21の上部切断面24の背面側には、斜め後方に張り出したオーバフロー用板28が連設されている。
【0032】
セル2においては、微小気泡Bにインク粒子が付着したフロスFは筒状部材21内からオーバフロー用板28を乗り越えてフロス用トラフ27内に溢れ出る。
【0033】
セル2の左側底部には原料入口3が設けられている。原料入口3は、左右方向に延びる筒状の入口パイプ31と、入口パイプ31に連通し、筒状部材21の接線に沿って前後方向に延びるノズル部材32とを備える。また、ノズル部材32は筒状部材21の内部に連通する。セル2の右側底部には、原料入口3と略同一の形状の原料出口4が、左右方向に延びる線に対して原料入口3と鏡像的に設けられている。
【0034】
図1,2に示すように、気泡発生装置5はセル2内の下側において、壁板22,23の間に横架されている。気泡発生装置5は、図3,4に示すように、ロータ7と、ロータ7の上方に近接して設けられたエアノズル6とを有している。ロータ7は、円筒状かご型のロータ本体71と、ロータ本体71の左右両端部に同心に突設されたジャーナル72とを備える。ロータ本体71は、複数、例えば各2枚の互いに同径の円板状のリブ73a,73bと、左右方向に延びるストリップ状のブレード74とを備える。ロータ本体71において、ブレード74は、短辺がロータ本体71の軸を中心とした放射線方向に向くように、且つ互いに等角度間隔で同一円上に並べられており、ブレード74の左右両端部は、リブ73aの外周部に夫々取り付けられている。また、リブ73bは、リブ73aの間に等間隔にロータ本体71と同軸にブレード74に取り付けられている。ジャーナル72は、リブ73aの外側面の中心に夫々立設されている。フローテータ1において、ロータ7は、ジャーナル72がセル2の壁板22,23を貫通しており、ジャーナル72は壁板22,23に回転可能に軸支されている。また、ジャーナル72の一方の端部には、プーリ75が取り付けられており、プーリ75は図示しないベルトを介してモータに連結されている。このモータにより、ロータ7は高速回転駆動される。
【0035】
エアノズル6は、図3,4に示すように、内部に中空室62を有する筒状のノズル本体61を備える。フローテータ1において、ノズル本体61は、下部がロータ8と一定の間隔を有して対向するように配設されており、ノズル本体61の左右両端がセル2の壁板22,23に夫々支持されている。また、ノズル本体61には、ロータ7との対向部において、ノズル本体61の軸方向に延びるスリット状の空気供給口63が形成されている。また、エアノズル6には、空気供給管64を介して図示しない空気供給装置が接続されており、エアノズル6は、空気供給口63を介してロータ7に向って圧縮空気を供給可能になっている。尚、空気供給口63はスリット形状の開口に限るものではなく、例えば、複数の長孔開口から成る開口や複数の円形開口から成る開口であってもよい。
【0036】
また、フローテータ1は、フローテータ1の制御をするための制御装置9を備える。
【0037】
上述の構成を有するフローテータ1は、制御装置9の制御に基づいて脱墨処理を行う。具体的には、原料液Mが原料入口3からセル2内に供給され、供給された原料液Mは気泡発生装置5に向う。気泡発生装置5において、エアノズル6から高速回転するロータ7に向って圧縮空気が吹き付けられ、微細気泡Bが生成される。生成された微小気泡Bは、ロータ7の回転により、供給された原料液M内に攪拌される。微細気泡Bが混入された原料液Mは見かけの比重が低下し、浮力が発生するため、微細気泡Bを含む原料液Mは、貯留された原料液Mの自由液面10に達する。そして、自由表面10に達した微細気泡Bを含む原料液Mは、自由液面10に沿ってフロス用トラフ27方向に流れ、この間に微細気泡Bにインク粒子が付着し、微細気泡BはフロスFとなり、自由液面10に滞留する。
【0038】
微細気泡Bを失った原料液Mはフロス用トラフ27側の筒状部材21内面に沿って下降し、再び気泡発生装置5に達する。このように、原料液Mはセル2の筒軸心周りの旋回流となって流れるが原料液Mが連続的に供給されているので、旋回流は順次原料出口4方向に位相がずれ、原料液Mは、図1,2に示すように反時計回りの螺線状の流線11に沿った流れとなり、原料出口4から排出される。
【0039】
また、自由液面10上に形成されたフロスFの層は、原料液Mの螺線状の流れによってフロス用トラフ27の方向に押され、オーバフロー用板28を乗り越えてフロス用トラフ27に溢れ出す。
【0040】
また、フローテータエアノズル洗浄装置8は、図3に示すように、セル2の左右の壁板22,23に夫々取り付けられた第1及び第2の洗浄ノズル81,82と、第1,2洗浄ノズル81,82に洗浄用の液体(洗浄液)、例えば水等を供給するための洗浄液供給装置88と、第1,2の洗浄ノズル81,82を洗浄液供給装置88に接続する洗浄液供給管89とを備える。
【0041】
図5は、フローテータエアノズル洗浄装置6の洗浄ノズルを示す図であり、図6は、図5の洗浄ノズルのノズルヘッドを示す図であり、図6(a)はノズルヘッドの平面図であり、図6(b)はノズルヘッドの側面図である。第1の洗浄ノズル81と、第2の洗浄ノズル82とは、同一の形状を有しているので、以下、第1の洗浄ノズル81についてのみ説明する。
【0042】
図5に示すように、第1の洗浄ノズル81は、中空円筒管状のパイプ83と、パイプ83の一端に設けられたノズルヘッド84とを有する。図6(a),(b)に示すように、ノズルヘッド84は、円板形状を有する壁部84aと、壁部84aの外周径と同一の外周形を有する中空円筒形の嵌合部84bとを有する。壁部84aは、嵌合部84bと同軸となるように嵌合部84bに結合しており、壁部84aの一方の面(図6(b)において下側の面)と、嵌合部84bの一端(図6(b)において上側端)とが互いに結合されている。即ち、壁部84aと嵌合部84bとは外周面が互いに面一となっている。嵌合部84bの内周径は、パイプ83の外周径と略同一であり、第1の洗浄ノズル81において、パイプ83の一端はノズルヘッド84の嵌合部84b内に嵌合されている。
【0043】
図6(a),(b)に示すように、壁部84aには、軸方向において断面円形の、壁部84aの軸(図6(b)の軸a)方向に延びる円筒形の円筒開口85が形成されている。円筒開口85は、壁部84aにおいて、壁部84aと同軸となるように形成されている。また、円筒開口85は、軸a方向に壁部84aを貫通している。
【0044】
また、壁部84aには、軸aに直交する方向(図6(a)の軸b方向)に延びるスリット状のスリット開口86,87が形成されている。スリット開口86,87は、軸bに直交する方向(図6(a)の軸c方向)に互いに同一の一定の幅dを有している。スリット開口86,87は、同一線(軸b)上に延びており、円筒開口85から壁部84aの外周に向って互いに反対側に延びている。スリット開口86,87は、壁部84aを軸a方向に貫通すると共に、壁部84aを軸b方向にも、つまり壁部84aの外周においても貫通する。また、スリット開口86,87は円筒開口85に開口している。即ち、ノズルヘッド84において、スリット開口86,87は、軸b方向の壁部84aの全幅に亘って延びており、また、軸a方向のスリット開口86,87の深さは壁部の厚さ(軸a方向の幅)と同一である。尚、壁部84aの厚さは均一である。
【0045】
図3に示すように、フローテータ1において、第1の洗浄ノズル81は、セル2の左側壁板22の外方からエアノズル6のノズル本体61の左側端部を貫通しており、ノズルヘッド84がエアノズル6のノズル本体61の左側端部において中空室62内に突入するように、パイプ83がノズル本体61の左側端部に固定されている。また、パイプ83及びノズルヘッド84の軸a(図5,6参照)がノズル本体61の軸線と一致するように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。また、スリット開口86,87が延びる方向、つまり軸bの方向が、エアノズル6の空気供給口63に向くように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。より具体的には、軸bとノズル本体61の軸とによって形成される平面内にエアノズル6の空気供給口63が位置するように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。
【0046】
フローテータ1において、第2の洗浄ノズル82は、第1の洗浄ノズル81と同様に配設されている。つまり、図3に示すように、第2の洗浄ノズル82は、セル2の右側壁板23の外方からエアノズル6のノズル本体61の右側端部を貫通しており、ノズルヘッド84がノズル本体61の右側端部において中空室62内に突入するように、パイプ83がノズル本体61の右側端部に固定されている。また、パイプ83及びノズルヘッド84の軸aがノズル本体61の軸線と一致するように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。また、スリット開口86,87が延びる方向、つまり軸bの方向が、エアノズル6の空気供給口63に向くように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。より具体的には、軸bとノズル本体61の軸とによって形成される平面内にエアノズル6の空気供給口63が位置するように、パイプ83及びノズルヘッド84は位置決めされている。
【0047】
また、第1,2の洗浄ノズル81,82において、パイプ83のノズルヘッド84が取り付けられていない側の端部は、洗浄液供給管89に接続されている。そして、洗浄液供給装置88は、制御装置9に接続されている。
【0048】
スリット開口86,87の幅dは、エアノズル6の空気供給口63のエアノズル6の軸に直交する方向の幅に対応している。例えば、スリット開口86,87の幅dは、空気供給口63の幅と同一であるか、それよりも若干大きく設定さている。
【0049】
上述の構成を有するフローテータエアノズル洗浄装置8は、制御装置9の制御により、エアノズル6の洗浄処理を行う。洗浄処理は、例えば、予め設定された周期毎に行われたり、エアノズル6の汚れを検知するセンサ、例えば、エアノズル6から噴出される空気量を検知するセンサ等の検知結果に基づいて行われる。また、洗浄処理はオペレータの操作に基づいて行われる。
【0050】
洗浄処理において、洗浄液供給装置88が駆動され、洗浄液供給装置88から洗浄液供給管89を介して第1,2の洗浄ノズル81,82に洗浄液が供給されると、第1,2の洗浄ノズル81,82から洗浄液がエアノズル6のノズル本体61の中空室62内面及び空気供給口63内に噴射される。このとき、図7に示すように、円筒開口85から噴射された洗浄液は円錐状又は円錐形に広がり、また、スリット開口86,87から噴射された洗浄液は平板状又は平板形に広がる。平板形の広がりは、円錐形の広がりの軸を含むように広がる。
【0051】
ここで、上述のように、スリット開口86,87はエアノズル6の空気供給口63の方向に延びており、スリット開口86,87から噴射された平板状に広がる洗浄液は、エアノズル6の空気供給口63内全体に吹き付けられる。これにより、スリット開口86,87から噴射された洗浄液により、エアノズル6の空気供給口63内を効果的に洗浄することができる。また、円筒開口85から噴射された円錐状に広がる洗浄液は、エアノズル6のノズル本体61の内壁全体に吹き付けられる。これにより、円筒開口85から噴射された洗浄液により、エアノズル6のノズル本体61の内壁を効果的に洗浄することができる。
【0052】
円筒開口85から噴射された洗浄液が広がる円錐形の頂角は、円筒開口85の直径を変更することにより変えることができる。また、スリット開口86,87から噴射された洗浄液が広がる平板形の厚さ(軸c(図6(a)参照)方向の幅)は、スリット開口86,87の幅dを変更することにより変えることができる。例えば、円筒開口85の直径を大きく又は小さくすることにより、洗浄液が広がる円錐形の頂角を夫々大きく又は小さくすることができる。また、スリット開口86,87の幅dを大きく又は小さくすることにより、洗浄液が広がる平板形の厚さを夫々大きく又は小さくすることができる。また、壁部84aの軸a方向の厚さを2〜6mmに、スリット開口86,87の幅dを1〜5mmに、円筒開口85の直径を10〜30mmにするとエアノズル本体61の内壁、空気供給口63内全体を隈なく洗浄することができる。更に、壁部84aの軸a方向の厚さを2〜4mmに、スリット開口86,87の幅dを2〜3mmに、円筒開口85の直径を10〜20mmにするとエアノズル本体61の内壁、空気供給口63内全体をより隈なく洗浄することができる。また、洗浄ノズル81,82の機能を保つためには、洗浄液としてSS(浮遊物質)の少ない処理水を使用することが好ましい。さらに、洗浄能力を引上げるためには、洗浄ノズル81,82からの噴射する洗浄液の液圧が0.294MPaとなるように洗浄液供給装置88を制御することが好ましい。
【0053】
上述のように、本発明の実施の形態に係るフローテータエアノズル洗浄装置8によれば、洗浄ノズル81,82の円筒形の円筒開口85から円錐状に広がるように洗浄液を噴射することができ、また、スリット状のスリット開口86,87から平板状に広がるように洗浄液を噴射することができる。そして、洗浄ノズル81,82は、ノズルヘッド84aがエアノズル6のノズル本体61の左右両端部から中空室62内に突入するように設けられている。このため、エアノズル6のノズル本体61内全体に、洗浄液を円錐状に広がるように且つ平板状に広がるように噴射することができるので、エアノズル6内全体を洗浄することができる。
【0054】
また、洗浄ノズル81,82において、スリット開口86,87がエアノズル6の空気供給口63の方向に延びるように配設されており、スリット開口86,87から洗浄用の液体を空気供給口63に向って平板状に広がるように噴射することができる。従って、ノズル本体61の内面は円錐状に広がる液体により、空気供給口63は平板状に広がる液体により夫々洗浄することができる。
【0055】
このように、本発明の実施の形態に係るフローテータエアノズル洗浄装置8よれば、少ない数の洗浄ノズル81,82によって、少ない洗浄液の量でエアノズル6内全体を洗浄することができる。また、洗浄ノズル81,82をエアノズル6の端部に取り付ける構成であるので、フローテータエアノズル洗浄装置8の構成を簡単にすることができる。従って、本発明の実施の形態に係るフローテータエアノズル洗浄装置8よれば、エアノズル6を少ない洗浄液の量で効果的に洗浄することができると共に、フローテータエアノズル洗浄装置の構造を簡単にすることができる。
【0056】
尚、本発明に係るフローテータエアノズル洗浄装置は、上記構成に限るものではなく、例えば、ノズルヘッド84やパイプ83の形状は円筒状に限るものではなく、また、洗浄ノズル81,82のパイプ83の形状は、L字型との形状であってもよい。また、洗浄ノズル81,82の固定方法は、上記の固定方法に限るものではない。
【0057】
また、フローテータエアノズル洗浄装置の備える洗浄ノズルは1つであってもよい。エアノズルの形状(長さ等)に応じて、洗浄ノズルを増減させてもよい。
【0058】
また、本発明に係るフローテータエアノズル洗浄装置が取り付けられるフローテータの構成は、上記フローテータ1の構成に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係るフローテータエアノズル洗浄装置を備えるフローテータの平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う断面図である。
【図3】図1のフローテータにおけるフローテータエアノズル洗浄装置近傍の正面図である。
【図4】図3の線IV-IVに沿う断面図である。
【図5】フローテータエアノズル洗浄装置の洗浄ノズルを示す図である。
【図6】図5の洗浄ノズルのノズルヘッドを示す図であり、図6(a)はノズルヘッドの平面図であり、図6(b)はノズルヘッドの側面図である。
【図7】洗浄ノズルから噴射される洗浄液の広がりを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 フローテータ
2 セル
3 原料入口
4 原料出口
5 気泡発生装置
6 エアノズル
61 ノズル本体
62 中空室
63 空気供給口
7 ロータ
8 フローテータエアノズル洗浄装置
81 第1の洗浄ノズル
82 第2の洗浄ノズル
83 パイプ
84 ノズルヘッド
84a 壁部
84b 嵌合部
85 円筒開口
86,87 スリット開口
88 洗浄液供給装置
89 洗浄液供給管
9 制御装置
M 原料液
B 微小気泡
F フロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローテータに設けられたエアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置であって、
液体を噴出する洗浄ノズル噴射口を有する洗浄ノズルを備え、
前記洗浄ノズル噴射口が、噴射された液体が円錐状に広がり且つ平板状に広がる形状を有しており、前記洗浄ノズル噴射口は、前記円錐状の広がりを形成するための円筒形の円筒開口と、前記平板状の広がりを形成するための、前記円筒開口の軸に直交する第1の方向に延びるスリット状のスリット開口とを備え、該スリット開口は前記第1の方向において前記円筒開口から突出していることを特徴とするフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項2】
前記スリット開口は、前記第1の方向に直行する第2の方向の幅がエアノズルの空気供給口に対応した幅である請求項1記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄ノズルは、管状のパイプと、該パイプの一端において該一端側の縁部を覆うように取り付けられたノズルヘッダとを備え、該ノズルヘッダが前記洗浄ノズル噴出口を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項4】
前記スリット開口は前記第1の方向においても前記ノズルヘッダから開口していることを特徴とする請求項3記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズルヘッダは前記円筒開口と同軸の円筒形の形状を有していることを特徴とする請求項3又は4記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズルヘッダは、前記液体の噴射方向の端部に前記円筒開口の軸に直行する平面に面する壁部を有しており、前記円筒開口及び前記スリット開口は前記壁部を貫通していることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項7】
前記管状のパイプと前記円筒開口は同軸上に配設させていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項8】
前記円筒開口の直径は10〜30mmであり、前記スリットの前記第2の方向の幅は1〜5mmであり、前記壁部の厚さは2〜6mmであることを特徴とする請求項6又は7記載のフローテータエアノズル洗浄装置。
【請求項9】
原料液を貯留するセルと、
原料液内に空気を供給するエアノズルと前記供給された空気に剪断力を加えて微小気泡を生成し且つ該微小気泡を前記原料液内に攪拌するロータとを備える気泡発生装置と、
前記エアノズルを洗浄するためのフローテータエアノズル洗浄装置とを備え、
前記エアノズル及び前記ロータは前記セルの対向する壁板間に延設されており、前記ロータは前記セルの対向する壁板に回転可能に軸支されており、前記エアノズルは前記ロータの上方において前記セルの対向する壁板に支持されており且つ空気を供給するための空気供給口を備え、前記フローテータエアノズル洗浄装置は前記エアノズル内に液体を噴射する少なくとも1つの洗浄ノズルを備え、前記洗浄ノズルは前記セルの外側から前記エアノズル内に突入していることを特徴とするフローテータ。
【請求項10】
前記エアノズルは中空室を有する中空円筒状の形状を有しており、前記フローテータエアノズル洗浄装置は洗浄ノズルとして第1の洗浄ノズルを有しており、該第1の洗浄ノズルは前記セルの外側において前記対向する壁板の一方に配設されており、前記第1の洗浄ノズルは前記エアノズルの一端から前記中空室内に突入していることを特徴とする請求項9記載のフローテータ。
【請求項11】
前記フローテータエアノズル洗浄装置は洗浄ノズルとして第2の洗浄ノズルを有しており、該第2の洗浄ノズルは前記セルの外側において前記対向する壁板の他方に配設されており、前記第2の洗浄ノズルは前記エアノズルの他端から前記中空室内に突入していることを特徴とする請求項10記載のフローテータ。
【請求項12】
前記フローテータエアノズル洗浄装置は、請求項1乃至8のいずれか1項記載のフローテータエアノズル洗浄装置であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載のフローテータ。
【請求項13】
前記平板状の広がりが前記エアノズルの前記空気供給口内に広がるように、前記スリット開口は、前記第1の方向が前記空気供給口方向に一致するように配置されていることを特徴とする請求項12記載のフローテータ。
【請求項14】
前記円筒開口と前記エアノズルは同軸上に配設されていることを特徴とする請求項12又は13記載のフローテータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43374(P2010−43374A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207937(P2008−207937)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(506408818)フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (52)
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D−89522 Heidenheim, Germany
【Fターム(参考)】