説明

ブイおよびこのブイを用いた海洋環境モニタシステム

【課題】波浪等の影響を受けにくく、安定した姿勢を維持して所定水深の温度、塩分、潮の向き、流速等のデータを収集、送信できるブイおよびこのブイを用いた海洋環境モニタシステムを提供を提供する。
【解決手段】水上フロート2と水中フロート1とを連結し、水上フロート2の下面と水中フロート1の上面をそれぞれ球面状部1a、2aとし、水上フロート2の上にアンテナ4を、水中フロート1の下に制御筐体3をそれぞれ取り付け、制御筐体3の下方にセンサ筐体8をロープ7で連結して、センサ筐体8に備えた温度、塩分等のセンサから制御筐体3内の通信制御部がデータを収集し、アンテナ4から発信する。上下フロート1:2の球面状部1a、2aが、によるブイの揺れを抑え、センサ筐体8からのデータ収集、アンテナ4からのデータ発信を安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海水中の水温、塩分、潮の向き、流速、クロロフィル等の海洋環境状態を測定し、この測定データを発信するブイおよびこのブイを用いた海洋環境モニタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、海中探査や位置計測等を行い、測定データを発信するブイが知られている。
【0003】
特許文献1には、天空指向式位置計測アンテナで位置計測用信号を受信してブイ装置の位置を計測し、ハイドロフォンで水中の物体情報を捉え、ブイ位置情報と水中物体情報をアンテナから送信する自己位置計測式ソノブイ装置が記載されている。特許文献1のブイ装置では、天空指向式位置計測アンテナ12をジンバル121〜124で支えてブイ位置情報を得る。
【0004】
特許文献2には、GPS技術を用いてブイの位置を正確に得ることができる海中探査ブイが記載されている。特許文献2のブイでは、海面の波面に追従して傾いて揺れ動くフロート20にGPSアンテナ22、通信アンテナ25を揺動可能に保持してアンテナの姿勢を一定に維持する。フロートとアンテナとの間に揺動のための振り子構造が設けられている。
【0005】
特許文献1、2のようにアンテナを垂直に維持するのに、波により揺動するフロートに対してジンバルや振り子などの垂直維持構造を用いると、構造が複雑でコスト高であり、しかも作動の精密さ、応答性のよさを要し、メンテナンスが充分でないと長期間の使用に当たって耐久性に不安がある。
【0006】
特許文献3には、観測用船舶等に電波等によりデータを送る観測ブイであって、揚収時にフロート3をアンテナ2頂部にスライドして揚収作業の安全を確保する観測ブイが記載されている。特許文献3のブイでは、アンテナ2はフロート3の浮力とフロート3の下方のウエイト5の重力との復元作用により直立するようになっている。
【0007】
特許文献3のブイのフロート3は、下面が凸の樽状で海面に浮かべるのであるから、ウエイト5を支えるポール4の長さを長くして、梃子の原理で強い復元力を得るようにしているが、それでも、波面に追従して傾いて揺れ動き、フロート3とウエイト5との復元力に逆らってアンテナ2を傾けてしまい、揚収作業の安全確保が課題となっているのである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−289132号公報(図4、段落番号0138〜0145参照)
【0009】
【特許文献2】特開2005−328139号公報(明細書請求項1および段落番号0019参照)
【0010】
【特許文献3】特開平9−175480号公報(図1、段落番号0003参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ジンバルや振り子のような特別のアンテナ垂直維持構造を用いることなく、また、長いポールの先に取り付けたウエイトを用いることもなく、構造簡単で波による揺動が少なく、信頼性が高いブイおよびこのブイを用いた海洋環境モニタシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明になるブイは、上側に上向き球面状部を備えた下部フロートと、上記下部フロートの上側に設けられ、下側に上記上向き球面状部に対向する下向き球面状部を備えたと、上記下部フロートの下面に設けられ、通信制御部を水密に収容した制御筐体と、海洋環境状態を測定するセンサを収容したセンサ筐体と、上記制御筐体とセンサ筐体との間をフレキシブルにつなぎ、通信制御部とセンサとの間で信号を伝達する信号伝達用ロープと、上記上部フロートの上面に取り付けられ、上記制御筐体の通信制御部に接続され、上記信号伝達用ロープを経由してセンサから収集される海洋環境状態のデータを発信するロッド状アンテナとを具備することにより、上記目的を達成している。
【0013】
この発明のブイの使用状態では、ブイ全体の重量と下部フロートの浮力とのバランスにより、ロッド状アンテナと上部フロートが水面上にあり、下部フロートと制御筐体が水面下にあり、信号伝達用ロープとセンサ筐体は水中にあって、センサ筐体は所定の水深に位置してその水温等海洋環境状態の測定が行え、その測定データをロッド状アンテナから発信することができる。
【0014】
この発明のブイにおいて、上記下部フロートおよび上部フロートが球状であり、制御筐体がロッド状アンテナの軸線方向を軸とした円筒形であるようにすれば、形状がスリムになって敷設作業等がより容易になるばかりでなく、波の抵抗が小さくなって、波によるブイの動揺が一層少なくなる。
【0015】
この発明のブイにおいて、上記制御筐体に電源部を収容し、水密の電源部電池着脱用開閉部を制御筐体に設ければ、電池交換が容易になる。
【0016】
この発明のブイにおいて、更に、上記ロッド状アンテナに、灯部と外部明るさ検知部とを備え、外部明るさ検知部の検知出力に応じて灯部が点灯するようにすれば、夜間や濃霧等の悪天候時もブイの所在、状態を認識でき、船舶の航行、漁業の諸作業等の安全に寄与する。
【0017】
この発明のブイにおいて、上記下部フロートと制御筐体との間に更に第3のフロートを設けれて、3個のフロートをつなげた形状にすれば、万一ひとつのフロートが損傷しても、のこりのフロートの浮力を用いて、ブイを、上下フロートの球面状部の対向面が水面位置になるように設置し直すことができる。
【0018】
この発明のブイにおいて、上記制御筐体の通信制御部に、電子メール発信用の携帯電話と、この電子メール発信を制御する発信制御部と、センサの測定データ収集を制御するデータ収集制御部とを備えれば、収集したセンサの測定データをインターネットを用いて電子メールとして発信することができ、インターネットの優れたセキュリティサービスと高速通信サービスにより、安全かつ正確にセンサの測定データを送ることができる。
【0019】
この発明になる海洋環境モニタシステムは、上記下部フロートと上部フロートの対向する両球面状部の対向面を水面に、センサ筐体を所定の水深に、それぞれ設置して、センサ筐体のセンサが測定した海洋環境状態のデータをロッド状アンテナから発信するブイと、上記ロッド状アンテナから発信された海洋環境状態のデータを受信し、所定の編集を加えたコンテンツとして格納する海洋環境情報収集部とを具備することにより、上記目的を達成している。
【0020】
この発明の海洋環境モニタシステムにおいて、上記海洋環境情報収集部が、インターネットのサーバ機能を有し、インターネット端末が上記インターネット経由で上記海洋環境情報収集部にアクセスして上記コンテンツを得ることができるようにすれば、インターネットの優れたセキュリティサービスと高速通信サービスを利用でき、利用者が、安全かつ正確にブイの発信する海洋環境状態のデータを得ることができる。
【0021】
この発明の海洋環境モニタシステムにおいて、上記ロッド状アンテナから発信する海洋環境状態のデータが、インターネットを経由して電子メールとして発信されるようにすれば、ブイから海洋環境情報収集部に送られる海洋環境状態のデータが、インターネットの優れたセキュリティサービスと高速通信サービスにより、安全かつ正確に海洋環境情報収集部に到達する。
【0022】
この発明になる海洋環境モニタシステムは、また、上記下部フロートと上部フロートの対向する両球面状部の対向面を水面に、センサ筐体を所定の水深に、それぞれ設置して、センサ筐体のセンサが測定した海洋環境状態のデータを電子メールとしてロッド状アンテナから発信するブイと、上記ロッド状アンテナから発信された海洋環境状態のデータを受信する海洋環境情報収集部とを具備することにより、上記目的を達成している。
【0023】
この発明における「球面状」には、球面形状のほか、ほぼ球面形状、球面形に類似するほぼ長面球形状などを含むものである。
【0024】
この発明における「球状」には、球形状のほか、ほぼ球形状、球形に類似するほぼ長球形状、端面がほぼ球形状の樽型などを含むものである。
【0025】
この発明における「インターネット」には、インターネットのほか、イントラネット、無線LAN等の電子メール無線通信可能なコンピュータネットワークを含むものである。
【0026】
この発明における「海洋」には、湖沼、河川を含むものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明になるブイによれば、ブイの重力と浮力のバランスを調整することで、下部フロートと上部フロートの対向する両球面状部の対向面を水面に位置するようにでき、この状態では、波面の傾斜部にブイがあるときも、下部フロートの上球面状部を波面が押し下げたり、上部フロートの下球面状部を波面が押し上げたりすることがなく、したがって、波面の傾斜が変化してもその傾斜に応じてブイが傾斜するということがなく、ブイは揺れ動く波面に関係なくほぼ垂直の姿勢を維持する。
【0028】
ブイ自体が揺動することなく常にほぼ一定の姿勢を維持するから、この発明のブイは、特別なアンテナ垂直維持構造を用いたり、長いポールの先に付けたウエイトを用いて梃子の原理でブイの復元力を強めたりする必要がなく、取り扱いやすく、破損しにくく、所在位置確認容易で、安定した発信ができ、信頼性が高い。
【0029】
この発明になる海洋環境モニタシステムによれば、上記ブイを用い、姿勢の安定したブイのアンテナから海洋環境状態のデータを発信して海洋環境情報収集部に送り、所定の編集を加えて海洋環境情報コンテンツとして、ユーザーに提供することができる。
【0030】
ブイから海洋環境情報収集部へ、あるいは、海洋環境情報収集部からユーザーへの通信に、インターネット経由の電子メールを用いて、通信のコストを下げ、かつ、通信の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0032】
図1は、この発明のブイの要部を示す正面図、図2は、図1のブイを用いた海洋環境モニタシステムを示す説明図である。
【0033】
図1において、1は球状の下部フロート、2は球状の上部フロート、3は制御筐体、4はロッド状アンテナである。
【0034】
上記下部フロート1の上側には、上向き球面状部1aが、上部フロート2の下側には、下向き球面状部2aがそれぞれ備えられ、上向き球面状部1aと下向き球面状部2aとは相対向させてある。
【0035】
両フロート1、2は、ポリエチレン製で内部が浮力発生用の空洞になっている。この実施の形態では、フロート1、2の内部空洞は連通させず、それぞれ独立にしてあるから、万一一方が破損した場合にも、ブイが水底に沈んでしまうことはない。
【0036】
上記下部フロート1と制御筐体3との間に更に第3、第4‥‥のフロートを設けてもよい。このように、3個以上フロートを連結しておくと、いずれかのフロートが破損して浮力を失った場合も、ブイは充分な浮力を維持することができる。
【0037】
上記制御筐体3は、下部フロート1の下面に設けられている。より詳細には、下部フロート1の下面に取り付けられた制御筐体3の取り付け部3aと、この取り付け部3aの下側に設けられたフランジ(電源部電池着脱用開閉部)3bと、このフランジ3bを介して取り付けられ、通信制御部と電源部とを収容した制御筐体本体3cと、この制御筐体本体3c下側のロープ取付部3dとが、下部フロート1の下面に設けられている。
【0038】
上記制御筐体3内の通信制御部には、電子メール発信用の携帯電話と、この電子メール発信を制御する発信制御部と、後述するセンサの測定データ収集を制御するデータ収集制御部とが備えられている。
【0039】
上記制御筐体3は、取り付け部3aと制御筐体本体3cが耐蝕アルミ合金製、フランジ3bとロープ取付部3dがステンレス鋼製でなり、図に示すように、ロッド状アンテナ4の軸線方向を軸とした円筒形となっていて、下部フロート1との接続部等に隙間なく、内部を水密にしてあり、フランジ3bもガスケットにより密封し、内部の制御回路と電源部とを外部の海水から守っている。
【0040】
電源部は、制御筐体本体3c内に代えて取り付け部3a内に収容してもよく、いずれの場合であっても、フランジ(電源部電池着脱用開閉部)3bの開閉により、電池交換、充電が容易にできる。
【0041】
上記ロッド状アンテナ4は、上部フロート2の上面に取り付けられ、制御筐体3の上記通信制御部の携帯電話に接続され、発信制御部の制御に応じて、後述する信号伝達用ロープを経由して上記センサから収集される海洋環境状態のデータを発信するようになっている。
【0042】
上記ロッド状アンテナ4は、耐蝕アルミ合金製で、その上端には、ポリカーボネート製のケースに納められた灯部5と外部明るさ検知部6が取り付けられていて、外部明るさ検知部6の検知出力に応じて灯部5が点灯する。灯部5の電源は、上記制御筐体3の電源部を用いている。
【0043】
上記灯部5には、高輝度LEDが備えられ、外部明るさ検知部6が夜間を検知している間、約4秒毎に閃光を発してブイの所在を周囲に知らせる。
【0044】
この発明のブイは、下部フロート1と上部フロート2の対向する両球面状部1a、2aの対向面が水面Hに位置するように設置して使用する。このように設置すると、波があって、波面の傾斜部H’にブイがあるときも、下部フロート1の上球面状部1aを波面H’が、図の左側で、押し下げたり、上部フロート2の下球面状部2aを波面H’が、図の右側で、押し上げたりすることがなく、つまり、従来のブイのように波面H’の傾斜に応じてブイが傾斜するということがなく、ブイは揺れ動く波面に関係なくほぼ垂直の姿勢を維持する。
【0045】
したがって、この発明のブイにおいては、波浪の中にあっても、ブイ自体が揺動することなく常にほぼ一定の姿勢を維持するから、従来のように、特別のアンテナ垂直維持構造を用いたり、長いポールの先にウエイトを付けてブイの復元力を強めたりする必要がなく、取り扱いやすく、破損しにくく、ほぼ直立したアンテナから安定した発信ができ、信頼性が高い。しかも、ほぼ直立した灯部により夜間でも所在位置の確認が容易である。
【0046】
上記制御筐体3のロープ取付部3dには、信号伝達用ロープ7の一端が繋結されている。この信号伝達用ロープ7は、フレキシブルな化繊ロープに信号伝達用耐水ケーブルを結束したものである。
【0047】
信号伝達用ロープ7には、図2に示すように、円筒形のセンサ筐体8が、この実施の形態では所定の間隔を隔てて複数個、つながれている。そして、信号伝達用ロープ7の先端には、錘9がつながれている。
【0048】
上記センサ筐体8は、耐蝕アルミ合金製で、それぞれの内部に水温センサと水深算出用の水圧センサを収容している。センサ筐体8には、内部のセンサがセンサ筐体8の周囲の水の圧力等を検知できるように、小窓が開けられている。
【0049】
これらの水温センサ、水圧センサには、信号伝達用ロープ7の上記信号伝達用耐水ケーブルが接続され、センサにより測定された水温、水圧等の海洋環境状態のデータは信号伝達用ロープ7の信号伝達用耐水ケーブルを経由して制御筐体3内の通信制御部に送られるようになっている。そして、制御筐体3内の通信制御部に集められる海洋環境状態のデータは、ロッド状アンテナ4から発信されるようになっている。
【0050】
図2に示した繋留の場合は、ブイの周囲に放射状にロープ10でつないで浮かべた複数の繋留フロート11、11、‥‥でブイを繋留し、ブイに近い水中に設置した浮力補助フロート12、12の浮力も、上述の水面上でのブイの浮上高さ設置に使用する。なお、ロープ10は、最外周の繋留フロートから更に水底のアンカー(図示省略)につないで、ブイを確実に繋留している。
【0051】
所定浮上高さに設置されて繋留されたブイには、上下フロート1、2の下方に所定の水深、この実施の形態では、5m(表層)、25m(中層)、40m(底層)に、センサ筐体8、8、8が設置されていて、それぞれの水深の温度、水圧を測定する。
【0052】
次に、センサ筐体8内のセンサにより測定された海洋環境状態のデータの海洋環境情報収集部への送信処理について、更に図2を参照して説明する。
【0053】
図2において、20は陸上に設置した海洋環境情報収集部、21はインターネット、22はインターネット21にアクセス可能なパソコン(インターネット端末)、携帯電話等のインターネット端末である。
【0054】
上記海洋環境情報収集部20では、ロッド状アンテナ4から発信された水温等の海洋環境状態のデータを、インターネット21経由で受信し、測定時刻毎の天候、ブイの所在位置等の所定の編集を加えた海洋環境状態のコンテンツとして格納する。
【0055】
この実施の形態では、ロッド状アンテナ4から発信される水温等の海洋環境状態のデータは、制御筐体3内の携帯電話から、インターネット接続等のサービスを使った電子メールで送信され、セキュリティサービスと高速通信サービスを利用することができる。
【0056】
上記海洋環境情報収集部20は、また、インターネット21のサーバ機能を有する。したがって、インターネット端末22は、インターネット21経由で海洋環境情報収集部20にアクセスして、そこに格納された上記コンテンツを得ることができる。また、海洋環境情報収集部20は、インターネット端末22に海洋環境状態のデータの電子メールを適時配信することもできる。
【0057】
インターネット21経由でブイのアンテナ4から海洋環境状態のデータが電子メールで発信されるから、必要な場合は、インターネット端末22が直接この電子メールを受けるように設定することもできる。
【0058】
次に、この発明の海洋環境モニタシステムのモニタリング動作例を説明する。
【0059】
各センサ筐体8、8、8は、制御筐体3の通信制御部のデータ収集制御部からの指令を受けて、10分毎にその計測データを上記通信制御部に送る。通信制御部では、受信した水圧データは水深データに換算して、水温、水深、計測時刻の計測データを一時蓄積し、データ収集制御部からの指令を受けて、携帯電話経由で電子メールにして、1時間毎に陸上の海洋環境情報収集部20に転送する。
【0060】
海洋環境情報収集部20では、ブイから受信した計測データに、測定時刻毎の天候、ブイの所在位置等の所定の編集を加えた海洋環境状態のコンテンツとして格納する。
【0061】
インターネット端末22では、海洋環境情報収集部20内に格納されたコンテンツを読み出したり、海洋環境情報収集部20からのメールで受け取ったりして、ブイ周辺の水深毎、時刻毎の水温をモニタすることができる。
【0062】
上記のモニタリング動作例では、定時測定データ収集、定時送信であるが、この発明の海洋環境モニタシステムでは他の任意のタイミングでのモニタリングも勿論可能である。たとえば、海洋環境情報収集部20やインターネット端末22からブイに指令を送って、臨時にデータを測定、収集したり、特定の日時指定、あるいは気象状況変化に応じたデータ測定、収集も可能である。
【0063】
この発明の海洋環境モニタシステムは、上述の海洋環境モニタシステムのほか、ブイの制御筐体3中に携帯電話を設けてインターネット接続等で電子メールを発信しない場合は、制御筐体3中の携帯電話を設けずに、制御筐体3中の通信制御部に送信機能も持たせ、海洋環境情報収集部20と直接通信する(図2のX)ようにすることもできる。
【0064】
この発明の海洋環境モニタシステムにおいて、海洋環境情報収集部20は、上述の実施の形態では陸上に設けたが、使用目的に応じて、船舶上や航空機内に設けてもよい。
【0065】
センサ筐体8に収容するセンサとしては、上述の水圧、水温のほか、塩分、潮の流向、流速、クロロフィル等のセンサ、あるいは、画像センサ(カメラ、映写機)を必要に応じて適宜組み合わせて、海洋環境状態のデータを得るようにしてもよい。
【0066】
画像センサは、上述の実施の形態のように水中のセンサ筐体8に設置して水中の画像を撮影するほか、上部フロート2やロッド状アンテナ4に取り付けて、洋上の画像を撮影するようにしてもよい。水深の深い位置での撮影や、悪天候時の撮影には、赤外線センサを赤外線ライトと併用してもよい。
【0067】
センサ筐体8は、上述の実施の形態では、水深40までの深さに配置したが、勿論それ以上の深さに配置することもでき、信号伝達用ロープ7を水底まで延長し、センサ筐体8を水面から水底までの間に分散配置して、水面から水底までの広い範囲で海洋環境状態を測定することができる。
【0068】
この発明のブイの設置場所は、その用途に合わせて、海の沿岸域、魚介類養殖域、海藻類養殖域、湖沼、河川にも展開できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明のブイおよびこのブイを用いた海洋環境モニタシステムは、養殖等の水産業の支援のほか、気象予測、海流予測、深海資源探査等への支援に有効に利用できるものと期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明のブイの要部を示す正面図。
【図2】図1のブイを用いた海洋環境モニタシステムを示す説明図。
【符号の説明】
【0071】
1 下部フロート
1a 上向き球面状部
2 上部フロート
2a 下向き球面状部
3 制御筐体
3a 取り付け部
3b フランジ(電源部電池着脱用開閉部)
3c 制御筐体本体
3d ロープ取付部
4 ロッド状アンテナ
5 灯部
6 外部明るさ検知部
7 信号伝達用ロープ
8 センサ筐体
9 錘
11 繋留フロート
12 浮力補助フロート
20 海洋環境情報収集部
21 インターネット
22 インターネット端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に上向き球面状部を備えた下部フロートと、
上記下部フロートの上側に設けられ、下側に上記上向き球面状部に対向する下向き球面状部を備えた上部フロートと、
上記下部フロートの下面に設けられ、通信制御部を水密に収容した制御筐体と、
海洋環境状態を測定するセンサを収容したセンサ筐体と、
上記制御筐体とセンサ筐体との間をフレキシブルにつなぎ、通信制御部とセンサとの間の信号を伝達する信号伝達用ロープと、
上記上部フロートの上面に取り付けられ、上記制御筐体の通信制御部に接続され、上記信号伝達用ロープを経由してセンサから収集される海洋環境状態のデータを発信するロッド状アンテナと
を具備したことを特徴とするブイ。
【請求項2】
上記下部フロートおよび上部フロートが球状であり、制御筐体がロッド状アンテナの軸線方向を軸とした円筒形である請求項1記載のブイ。
【請求項3】
上記制御筐体に電源部が収容され、水密の電源部電池着脱用開閉部が制御筐体に設けられた請求項1記載のブイ。
【請求項4】
上記ロッド状アンテナに、灯部と外部明るさ検知部とが備えられ、外部明るさ検知部の検知出力に応じて灯部が点灯する請求項1記載のブイ。
【請求項5】
上記下部フロートと制御筐体との間に更に第3のフロートを設けた請求項1記載のブイ。
【請求項6】
上記制御筐体の通信制御部に、電子メール発信用の携帯電話と、この電子メール発信を制御する発信制御部と、センサの測定データ収集を制御するデータ収集制御部とが備えられた請求項1記載のブイ。
【請求項7】
上記下部フロートと上部フロートの対向する両球面状部の対向面を水面に、センサ筐体を所定の水深に、それぞれ設置して、センサ筐体のセンサが測定した海洋環境状態のデータをロッド状アンテナから発信する請求項1記載のブイと、
上記ロッド状アンテナから発信された海洋環境状態のデータを受信し、所定の編集を加えたコンテンツとして格納する海洋環境情報収集部と
を具備したことを特徴とする海洋環境モニタシステム。
【請求項8】
上記海洋環境情報収集部が、インターネットのサーバ機能を有し、インターネット端末が上記インターネット経由で上記海洋環境情報収集部にアクセスして上記コンテンツを得ることができる請求項7記載の海洋環境モニタシステム。
【請求項9】
上記ロッド状アンテナから発信する海洋環境状態のデータが、インターネットを経由して電子メールとして発信される請求項8記載の海洋環境モニタシステム。
【請求項10】
上記下部フロートと上部フロートの対向する両球面状部の対向面を水面に、センサ筐体を所定の水深に、それぞれ設置して、センサ筐体のセンサが測定した海洋環境状態のデータを電子メールとしてロッド状アンテナから発信する請求項6記載のブイと、
上記ロッド状アンテナから発信された海洋環境状態のデータを受信する海洋環境情報収集部と
を具備したことを特徴とする海洋環境モニタシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−253888(P2007−253888A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83591(P2006−83591)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【特許番号】特許第3854984号(P3854984)
【特許公報発行日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(594162733)道南漁業資材株式会社 (1)
【出願人】(399121553)株式会社エスイーシー (4)