説明

ブイ及び専用受信装置

【課題】木付き巻き網漁等で使用するラジオブイにおいて、ブイ周辺における魚の謂集状況と他船による操業の有無を遠隔地にいる漁業者が容易に判断可能にするシステムを構築する。
【解決手段】集音器6と海鳥の鳴き声を検知する海鳥検知手段10とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音を検知する船舶検知手段11を含んだ信号処理装置4を搭載したブイとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漁業用のラジオブイに海鳥検知手段とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音を検知する船舶検知手段を搭載することで漁業の効率化を目的としたものである。
【背景技術】
【0002】
漁業用のラジオブイは、木付き巻き網漁を中心に昔から広く利用されている。木付き巻き網漁とは、魚が物影に集まる習性を利用し、海へ人為的に木材等を流し謂集した魚を得る漁法である。魚が謂集するまでには時間がかかるため、通常は数週間から数カ月間放置した後、ラジオブイが伝送するGPS受信機の位置情報または電波の到来方向を方向探知機で測定することで、漁場へ行き操業するものである。
上記した漁業において使用する漁業用のラジオブイは、現在の主流は、特許文献1にあるように、ブイに水温センサとGPSを搭載し、水温と位置情報を伝送するシステムである。漁業者は、通常遠隔地にいるため、伝送された水温情報をもとに魚の謂集状況を経験から推測し、位置情報を元に漁獲を行う。また、近年では、特許文献2にあるように、ブイに魚群探知機を搭載し、魚群探知機の漁影情報を伝送するシステムがある。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2002−152182
【特許文献2】特許公開2008−157736
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来のブイでは、伝送された水温情報をもとに魚の謂集状況を経験から推測するため、推測に経験が必要で難しく、また、推測の精度が悪い問題があった。また、特許文献2に記載された従来のブイでは、電源容量の制約からブイに搭載できる魚群探知機の出力が小さく、魚群探知機の振動子周辺でしか魚の謂集状況を判断できない問題があった。
さらに、上記漁業では、謂集した魚を他船に先を越されて漁獲されてしまうことも問題となっている。遠隔地にいる漁業者は他船による漁獲を把握できないため、漁場に行って謂集した魚を漁獲しようとしても、すでに他船に漁獲されて魚が謂集していないことはよくある。特許文献1および2のブイではこのような他船による漁獲を検知できない問題があった。
本発明では、上記した漁業で使用するラジオブイにおいて、魚の謂集状況を遠隔地にいる漁業者が容易に判断可能にすることを第一の課題とする。また、他船による漁獲の検知を第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
魚が謂集する場所には魚を捕食する海鳥が謂集することが多い。そこで、本発明におけるラジオブイは、集音器と、海鳥の鳴き声を検知する海鳥検知手段と、エンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音を検知する船舶検知手段とを搭載する。
遠隔地にいる漁業者は、ラジオブイが伝送した情報を受信するための受信装置を用い、ブイ周囲の状況を推測する。
【発明の効果】
【0006】
本発明におけるラジオブイは、海鳥と船舶を検知することで、魚の謂集状況と他船による漁獲状況を検知する。これによって、下記効果が期待される。
(1)遠隔地にいる漁業者が魚の謂集状況を把握できるため、魚が謂集していない漁場への無駄な移動をなくすことが可能となり、漁業の効率化が可能となる。
(2)遠隔地にいる漁業者が魚の謂集状況と合わせてブイ周辺にいる他船の動向を把握できるため、他船が操業・漁獲を行った漁場への無駄な移動をなくすことが可能となり、漁業の効率化が可能となる。
(3)集音器(音波受信装置)はパッシブセンサのため、魚群探知機を搭載する方式に比べて消費電力が少なく、ブイの小型化と低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明ブイと専用送受信機の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は、請求項1記載のブイと請求項2記載の受信装置を組み合わせた請求項3のラジオブイシステムのブロック図を示している。
ブイ1は、密閉容器とし防水構造を有している。ブイ1の外には、音響信号を収集する集音器6がある。ブイ1の中には、無線送信機2、GPS受信機3、第一の信号処理装置4、蓄電池5がある。GPS受信機3はGPS衛星から位置情報を取得し、第一の信号処理装置4へ情報を出力する。蓄電池5は搭載した全ての電気部品へ電源供給を行う。集音器6は、周辺の音波を受信し、電気信号へ変換し第一の信号処理装置4へ出力する。第一の信号処理装置4には、海鳥検知手段10と船舶検知手段11、および、信号多重化部12から構成されている。図示しないが、海鳥検知手段10及び船舶検知手段11は、収集した音響信号の周波数スペクトルを出力する周波数スペクトル分析部と、海鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音で特徴的な周波数帯域において、得られた周波数スペクトル信号と準備した参照信号との相関度を求める相関演算部とからなる。信号多重化部12は、海鳥検知手段10及び船舶検知手段11で検知した情報と、GPS受信機3で取得したGPSによる位置情報とを多重化し、無線送信機2を通して伝送する。なお、海鳥と船舶が発生する音は特徴的な周波数成分がそれぞれ異なるため、同時に判別可能である。
受信装置7は、ブイが伝送した情報を受信する受信部8、受信した情報を表示する表示部9を搭載し、情報を表示する。
受信した情報から当該ブイの周囲の状況が以下のように判定できる。
(1)海鳥の鳴き声があり及びエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音なし:魚謂集状態
(2)海鳥の鳴き声があり及びエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音あり:他船による魚漁獲中
(3)海鳥の鳴き声がなし及びエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音あり:船通過中
(4)海鳥の鳴き声がなし及びエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音なし:魚謂集なし及び船なし状態
【実施例2】
【0009】
実施例1におけるブイは、第一の信号処理装置が海鳥検知手段及び船舶検知手段で検出した鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音の有無情報を検出し、無線送信機で送信し、受信装置で受信した前記情報を表示する。そして、受信装置の使用者がこれら情報から魚の謂集状況を判定する。これに対して、ブイで鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音の有無情報から魚の謂集状況を自動で判定して、無線送信機で送信することもできる。本実施例におけるブイでは、第二の信号処理装置が海鳥検知手段及び船舶検知手段で検出した鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音の有無情報を検出した結果から魚の謂集状況を判定し、GPSによる位置情報と多重化して無線送信機2を通して伝送する。
【実施例3】
【0010】
実施例2では、鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音の有無情報から魚の謂集状況をブイ側で判定していたが、受信装置側で判定させることもできる。本実施例における受信装置では、ブイから送信された鳥の鳴き声とエンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音の有無情報を受信し、信号処理部で魚の謂集状況を判定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集音器を備えたラジオブイであって、前記集音器で収集した音響信号から海鳥の鳴き声を検知する海鳥検知手段と、エンジン音やスクリュー音等の船舶が発生する音を検知する船舶検知手段と、これらの情報を無線で伝送する無線伝送手段を備えたブイ装置。
【請求項2】
請求項1記載のブイから伝送される情報を受信する受信装置であって、前記海鳥検知情報と船舶検知情報を表示する表示手段を備えた受信装置。
【請求項3】
前記海鳥検知情報と船舶検知情報を入力として、ブイ周辺の魚の謂集状況と他船による謂集した魚の盗難状況を推測した結果を出力する信号処理手段を備えた請求項1記載のブイ装置。
【請求項4】
請求項1記載のブイから伝送される情報を受信する受信装置であって、前記海鳥検知情報と船舶検知情報を入力として、ブイ周辺の魚の謂集状況と他船による謂集した魚の盗難状況を推測した結果を出力する信号処理手段を備えた受信装置。
【請求項5】
請求項1または3記載のブイ、および、請求項2または4記載の受信装置から構成されるラジオブイシステム。

【図1】
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