説明

ブラインドタイプの生地の製法

【課題】ロールブラインド、プリーツブラインド、あるいはバーチカルブラインド等用生地を樹脂処理等することなく所望の硬さを得て水洗い洗浄も可能にした生地の製法を得る。
【解決手段】鎖編みした経糸Aに編み糸Bを編成してブラインドタイプの生地を編み立てる際に、更に生地の硬度を増加させるために、単糸デニールの太い、1〜15本の単糸で単糸サイズ10以上で50以下のデニールの編み糸Cを、上述した鎖編み経糸Aに、その鎖編み目をくぐらせて左右に係止させながら、あるいは鎖編み目に縦方向に絡ませながら、A、B、Cの3種類の編み糸にて編成させたことを手段としたブラインドタイプの生地の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋の窓等でその屋内側に使用したりあるいは屋内で間仕切りに使用したりするロールブラインド、プリーツブラインド、あるいはバーチカルブラインド等用生地の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の家屋で使用するカーテンは、カーテンにドレープ状襞をつくり、カーテンのたまりを作り美観の向上を図っている。しかしそのようなカーテン機能は収納性でスペースを要し、カーテンや間仕切り装置のコンパクト化、シンプル化では問題があつた。この問題を解決した方式の一つにロールブラインド、プリーツブラインド、あるいはバーチカルブラインド式カーテン及び間仕切り装置がある。適切な張度と硬さを有した生地を用いて、縦方向にロール状に巻き上げ巻き降ろしを可能にしたロールブラインドタイプや縦方向に短冊状に分離したバーチカルブラインドタイプあるいはプリーツ状に折り目を設けて容易に折りたたみ可能にしたプリーツブラインドタイプのようにすれば、コンパクトにカーテンを開閉、収納することで機能性が向上する。更に通常のカーテンには無いシンプル性やすっきり感を有した多様性を伴う美観の向上を図ることが出来る。このため、近年この手のブラインドタイプが広く使用されるようになってきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのブラインドタイプの生地は巻き上げ時にスムーズに巻き上げられるように、あるいは容易に折りたためるように、適度な張りと硬さを必要とする。生地に適度な張りと硬さを持たせるためには編み上げ後に特殊な樹脂加工を施すことが行われている。また、防炎性も要求され、同時に加工することが多くあり、この場合は硬度を付与する樹脂と防炎薬剤を同時に布地に付着させ、熱処理をする加工方法である。しかしこの方法では硬さと防炎性は一般に相反するため、高度な樹脂配合と技術、経験を必要とするため、加工代が高価であった。また、硬仕上げ樹脂加工の代わりに熱融着糸を編みこみ後、加熱処理で張りと硬さを得ている方法もあるが、温度管理が難しく生地の硬さにバラツキが発生して問題となる場合がある。本発明はこれらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明を実現するには以下の手段による。
「手段1」
複数の地筬を用いた編み組織において、鎖編みする地筬に用いる経糸Aに、挿入編みする地筬に用いる編み糸Bもしくは、さらなる挿入編みする地筬に用いる編み糸B´等によりブラインドタイプの生地を編み立てる際に、更に生地の硬度を増加させるために、最大15本の単糸で構成した単糸サイズ10以上で50以下のデニールの糸を挿入編みする地筬に用いる編み糸Cとし、上述した鎖編み経糸Aに、その鎖編み目をくぐらせて横方向に係止させ、または鎖編み目に縦方向に絡ませ、あるいは両者を併用させながら、A、B、B´等、数種類の編み糸による組織に編み糸Cを加えて編成したことを手段としたブラインドタイプの生地の製法。
「手段2」
手段1において、更に熱融着糸Dを、上述した鎖編み経糸に、その鎖編み目をくぐらせて左右に係止させながら、あるいは鎖編み目に縦方向に絡ませながら、A、B、B´等、C、Dの数種類の編み糸にて編成したことを手段としたブラインドタイプの生地の製法。
「手段3」
手段1または手段2において経糸A、または編み糸B、B´等あるいは経糸Aおよび編み糸B、B´等の双方に防炎糸を使用して編成し、防炎性を得ることにより、後加工防炎を必要としないブラインドタイプの生地の製法。
【発明の効果】
【0005】
1)上記の手段を実施することによって、単糸サイズのデニール値が従来より極太値とな り、生地の剛性が増し、ブラインドタイプの生地に最適な張りと硬さとなる。すなわ ち従来のような硬仕上げ樹脂処理が不要になる。そのため、製造コストが安価となる 。
2)熱融着糸を編みこみ後、加熱処理のみで硬さを得ていた従来方式に対しても本発明は 最適な極太糸を使用し、必要により熱融着糸も併用することで、張りと硬さの安定性 が増す。
3)従来の硬仕上げ加工は樹脂が生地表面に付着するために生地の風合いが損なわれるが 本発明では樹脂を使用しないので生地の風合いが生かされ、硬さの耐久性があるため 、ウォッシャブル性が得られる。
4)更に必要により経糸および編み糸の一方または双方に防炎糸を使用して編成すること で、防炎後加工を必要としないブラインドタイプの生地を実現できる。
5)ブラインドタイプの生地は適度な張りと硬さを必要とし、また防炎性も要求されているが、後加工により硬さと防炎性の機能を得ることは困難であるため、加工代が高価なものであった。これに対し、本発明は硬さと防炎性の機能を編成に用いる糸によって同時に得ることができ安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面によって説明する。
【実施例】
図1は本発明の請求項1を適応した図である。鎖編みした経糸Aに編み糸Bを編成してブラインドタイプの生地を編み、更に生地の硬度を増加させるために、太い単糸サイズの編み糸Cを、上述した鎖編み経糸Aに、その鎖編み目をくぐらせて左右に係止させながら、あるいは鎖編み目に縦方向に絡ませながら、A、B、Cの3種類の編み糸にて編成させたものである。図1で経糸A、編み糸B、更に硬度を増すために追加する太い単糸サイズの編み糸Cの軌跡を各糸ごとに単独に左サイドに示した。これらの糸の軌跡は、地筬という編み治具により作られる。そして、それらが組み合わされてブラインドタイプの生地を構成した図を右サイドに示したもので、上下に2つの編みパターンの例を示してある。即ち上図の編み組織パターン1はその鎖編み目をくぐらせて左右に係止させる場合を表現させたもので、経糸Aに対して編み糸Bは経糸Aの2列に渡ってジグザグに編みこみ、太い単糸サイズの編み糸Cは編み糸Bとは位相が180°で経糸Aの3列に渡ってジグザグに編みこんだ例である。下図の編み組織パターン2は鎖編みした経糸Aに対して編み糸Bは上図と同じく経糸Aの2列に渡ってジグザグに編みこみ、太い単糸サイズの編み糸Cは経糸Aの1列に編み糸Bとは位相が180°相違した位置で、編み込まれた例である。
本発明の請求項1は図1の例に限らず編み糸Bは1種類に限らず更にB´等の複数とすることもできる。
編み糸のサイズの単位としてデニールを用いる。1デニールとは1グラムの重量の糸材を9000mに引き伸ばした時の糸のサイズをいう。図1は本発明の一実施例であるが、デニールの大きい単糸の編み糸を4本束ねた編み糸Cは総量60デニールに構成した編み糸を使用する。この場合、1単糸の糸のサイズは60/4即ち15デニール単糸となる。総量300デニールで単糸数10本、従って単糸サイズ30デニールと大きくすることで更に硬度や張度を増加できる。従来は鎖編みした経糸Aと編み糸B、B´等で生地を構成していたのでブラインドタイプの生地として必要な剛性が単に数種類の編み糸で編成しただけでは得られず、樹脂処理や熱融着糸を編みこみ、その後加熱処理で硬さを得ていた。
これに対し本発明は、1から15本の単糸で単糸サイズ10以上で50以下のデニールの編み糸Cを更に編みこみ糸A及びB、B´等による編みに太い単糸サイズの編み糸Cを追加編みすることで、この編み方及び、太い単糸サイズの編み糸Cの相乗効果でブラインドタイプの生地の硬度や張度を増加するものである。
この場合、太い単糸サイズの編み糸Cは単糸サイズが10以上で50以下で、単糸数が1以上15以下とすれば本用途に適した硬度と張度が得られることが実験的に分かった実用的な範囲である。即ち単糸サイズが少ないと編みやすいが生地の剛性が小さく、単糸サイズが大きいと剛性が大きくなるが編み込みが困難になる。生地の剛性と編み易さから編み糸Cの総量には上限があり、上記の範囲からその本数は15以下が実用的な範囲となる。
【0007】
図2は本発明の請求項2の一部を適応した図である。経糸A、編み糸B、更に硬度を増すために追加する太い単糸サイズの編み糸C、また更に硬度を上げるために必要により追加する熱融着糸Dの軌跡を各糸ごとに単独に左サイドに示し、それらが組み合わさってブラインドタイプの生地を構成した図を右サイドに示したものである。図2も上下に2つの編みパターンの例を示してある。即ち上図の編み組織パターン1は経糸Aに対して編み糸Bは経糸Aの2列に渡ってジグザグに編みこみ、太い単糸サイズの編み糸Cは編み糸Bとは位相が180°で経糸Aの3列に渡ってジグザグに編みこんだ例の図1の上図パターン1に更に熱融着糸DをBとは位相を180°相違させて経糸Aの2列に渡ってジグザグに編みこんだ例である。
下図の編み組織パターン2は図2の上図に対して、太い単糸サイズの編み糸CはBとは位相が180°相違した位置で経糸Aの1列に渡ってジグザグに編み込まれた例である。本発明の請求項2も図2の例に限らず編み糸Bは1種類に限らずB´等の複数とすることもできる。
【0008】
図3は本発明の請求項2の更なる一部を適応した図である。経糸A、編み糸B、更に硬度を増すために追加する太い単糸サイズの編み糸C、また熱融着糸Dの軌跡を各糸ごとに単独に左サイドに示し、それらが組み合わさってブラインドタイプの生地を構成した図を右サイドに示したものである。図3も上下に2つの編みパターンの例を示してある。即ち上図の編み組織パターン1は経糸Aに対して編み糸Bは経糸Aの2列に渡ってジグザグに編みこみ、太い単糸サイズの編み糸Cは編み糸Bとは位相が180°相違する位置で経糸Aの3列に渡ってジグザグに編みこんだ例の図1の上図パターン1に熱融着糸DをBと位相を同じ位置で経糸Aの1列にジグザグに編みこんだ例である。
下図の編み組織パターン2は図3の上図の編み組織パターン1に対して、太い単糸サイズの編み糸CはBとは位相が180°相違した位置で経糸Aの1列に渡ってジグザグに編み込まれた例である。
本発明の請求項2も図3の例に限らず編み糸Bは1種類に限らず更にB´等の複数とすることもできる。
【0009】
図は省略するが、経糸A、または編み糸B、B´等あるいは経糸Aおよび編み糸B、B´等の双方に防炎糸を使用して編成することで、硬度に加えて防炎性を容易に得ることができるため、従来のような後加工防炎を必要としないブラインドタイプの生地も必要により製作できる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明により作られる生地はブラインドタイプの生地として生地の風合いを生かしながら、安価で、適切な張りと硬さを有するブラインドカーテン等として、実用性、優美性、品質の均一性、安価性を備えたものであるので、工業的に大きな貢献が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の構成を示す図
【図2】本発明の別の構成を示す図
【図3】本発明の更に別の構成を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地筬を用いた編み組織において、鎖編みする地筬に用いる経糸Aに、挿入編みする地筬に用いる編み糸Bもしくは、さらなる挿入編みする地筬に用いる編み糸B´等によりブラインドタイプの生地を編み立てる際に、更に生地の硬度を増加させるために、最大15本の単糸で構成した単糸サイズ10以上で50以下のデニールの糸を挿入編みする地筬に用いる編み糸Cを、該鎖編み経糸Aに、その鎖編み目をくぐらせて横方向に係止させ、または鎖編み目に縦方向に絡ませ、あるいは両者を併用させながら、A、B、B´等、数種類の編み糸による組織に編み糸Cを加えて編成したことを特徴としたブラインドタイプの生地の製法。
【請求項2】
請求項1において、更に熱融着糸Dを、該鎖編み経糸に、その鎖編み目をくぐらせて左右に係止させながら、あるいは鎖編み目に縦方向に絡ませながら、A、B、B´等、C、Dの数種類の編み糸にて編成したことを特徴としたブラインドタイプの生地の製法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において経糸A、または編み糸B、B´等あるいは経糸Aおよび編み糸B、B´等の双方に防炎糸を使用して編成し、防炎性を得ることにより、後加工防炎を必要としないブラインドタイプの生地の製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−106645(P2010−106645A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300081(P2008−300081)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(593071823)株式会社黒沢レ−ス (13)