説明

ブラケットおよびこれを備えた給湯システム

【課題】所望の設置対象機器を浴室内の狭いスペースに対しても作業性よく適切に設置することを可能とするブラケットを提供する。
【解決手段】互いに間隔を隔てて並ぶようにして浴室内に設けられている一対の固定部材20,22を利用し、所望の設置対象機器5を浴室内に設置するのに用いられるブラケットBであって、設置対象機器5が取り付けられるブラケット本体部6に設けられ、かつ互いに間隔を隔てた配置とされた一対の係合部7を備えており、これら一対の係合部7のそれぞれは、弾性変形が可能な1または複数の係合用片7A,7Bを有し、かつこの係合用片7A,7Bを弾性変形させた状態で固定部材20,22の外面部に接触させたときには、その復元力によって係合用片7A,7Bが前記外面部に圧接し、一対の係合部7を固定部材20,22に係合保持させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内に所望の設置対象機器を設置するのに用いられるブラケット、およびこのブラケットを備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭において給湯装置を買い換えるような場合、非潜熱回収型のものから潜熱回収型のものに変更する場合が多い。潜熱回収型の給湯装置においては、潜熱回収に伴うドレイン(凝縮水)が大量に発生するために、ドレインの排水処理用の施工が必要である。ただし、たとえば集合住宅などにおいては、給湯装置が設置されるパイプスペース内にドレイン用の排水口が設けられていない場合がある。
【0003】
このような場合に対処し得る給湯システムとして、たとえば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された給湯システムでは、給湯装置において発生したドレインを浴室内に導き浴室の排水パンに流し込むように構成している。このような構成を具体的に実現するための手段として、浴槽の循環アダプタに、三方弁を配管接続している。この三方弁は、給湯装置からドレインが送られてきたときには、このドレインを排水パンに流し込む一方、給湯装置から湯水が送られてきたときには、この湯水を浴槽の循環アダプタに流れるように切り替え制御される。このような構成によれば、給湯装置が設置される箇所にドレイン専用の排水口が設けられていない場合であっても、浴室の排水パンを利用してドレインの廃棄処理を適切に行なうことが可能である。
【0004】
しかしながら、給湯装置の買い換えなどに伴い、前記したような給湯システムを構築する場合、浴室内に三方弁を設置する必要がある。この三方弁は、遠隔操作が可能なたとえば電磁方式であり、ある程度のサイズおよび重量があるため、浴槽の循環アダプタに直接組み付けることは容易ではなく、また循環アダプタについてもそのようなことに適合しない場合が殆どである。そこで、三方弁を循環アダプタから離間した位置に設置し、これらを配管することが考えられるが、従来においては、前記した三方弁などの機器を浴室内において容易に設置し得るためのブラケットは提案されていないのが実情である。前記した三方弁は、たとえば浴槽と浴室の壁部との間の領域に設置されることが好ましいが、従来では、そのような狭い領域に三方弁などの機器を容易に設置することができず、その設置作業に苦慮することとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−101075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、所望の設置対象機器を浴室内の狭いスペースに対しても作業性よく適切に設置することを可能とするブラケット、およびこのブラケットを備えた給湯システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供されるブラケットは、互いに間隔を隔てて並ぶようにし
て浴室内に設けられている一対の固定部材を利用し、所望の設置対象機器を前記浴室内に設置するのに用いられるブラケットであって、前記設置対象機器が取り付けられるブラケット本体部と、このブラケット本体部に設けられ、かつ互いに間隔を隔てた配置とされた一対の係合部と、を備えており、前記一対の係合部のそれぞれは、弾性変形が可能な1または複数の係合用片を有し、かつこの係合用片を弾性変形させた状態で前記各固定部材の外面部に接触させたときには、その復元力によって前記係合用片が前記外面部に圧接することにより、前記一対の係合部を前記一対の固定部材に係合保持させることが可能な構成とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、ブラケットの一対の係合部を一対の固定部材に係合保持させることにより、固定部材に対するブラケットの装着を容易に行なうことができる。ブラケットの装着に際し、ネジ類や工具などを用いる必要はなく、たとえば浴槽エプロン内や、浴槽と浴室の壁部との隙間などの狭いスペースであっても、ブラケットを固定部材に対して容易に装着することが可能である。したがって、このブラケットを利用した設置対象機器の設置作業も容易に行なえることとなる。一対の係合部は、弾発力を発揮する係合用片を固定部材の外面部に圧接させることによって固定部材への係合保持が図られるものであるために、固定部材に対するブラケットの装着状態は安定したものとなる。また、ブラケットは、一対の固定部材に跨がった状態に装着できるために、その安定性はより優れたものとなる。
一方、浴室の壁部には、浴室外部の給湯装置と浴槽とを配管接続するための浴室貫通具(浴室貫通金具)が設けられているのが通例であり、この浴室貫通具は、互いに離れて並んだ2本の管体部やその付属部品を備えている。本発明では、浴室貫通具のそのような部分を、ブラケットの装着対象とすることが可能である。したがって、ブラケット装着用の一対の固定部材を浴室に新たに設けるといった手間はなく、または殆どなく、便利である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記一対の係合部のそれぞれは、前記係合用片として、正面視において一部が開口した略半円弧状の形態を有する第1の係合用片を備えており、この第1の係合用片を前記各固定部材に外嵌させることにより、前記一対の係合部を前記一対の固定部材に係合保持させることが可能とされている。
【0011】
このような構成によれば、ブラケットの各係合部を固定部材に係合保持させるには、第1の係合用片を固定部材に外嵌させればよいこととなる。したがって、ブラケットの装着作業性を良好にする上でより好ましい。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記一対の係合部のそれぞれは、前記係合用片として、第2の係合用片をさらに有しており、この第2の係合用片は、前記第1の係合用片が前記各固定部材に外嵌されるときに、前記各固定部材の外面部のうち、前記第1の係合用片が圧接する位置とは反対側の位置に圧接させることが可能とされている。
【0013】
このような構成によれば、ブラケットの各係合部を固定部材に係合保持させる際には、第1の係合用片と第2の係合用片との双方によって固定部材を挟み込んだ状態とすることができる。したがって、固定部材に対するブラケットの装着状態をより確実かつ強固なものとする上で好ましい。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記一対の係合部のそれぞれに設けられている係合用片のうち、少なくとも1つの係合用片の先端部には、摘まみ部として利用可能な外向きの屈曲部が設けられている。
【0015】
このような構成によれば、係合用片を弾性変形させるような場合に、その操作は屈曲部
を適宜摘んで行なうことができ、その操作が容易となる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記一対の係合部のそれぞれに設けられている係合用片のうち、少なくとも1つの係合用片には、この係合用片の前後幅方向とは交差する方向に突出する突出部が設けられており、この突出部を前記各固定部材に設けられている段差部分に係止させることによって、前記係合用片の前後方向への移動を阻止可能な構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、ブラケットの前後方向への移動が阻止され、固定部材に対するブラケットの装着状態をより安定させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記ブラケット本体部は、上下高さ方向に起立した背板部と、この背板部の前面側において前記設置対象機器を載置させることが可能な支持板部と、左右幅方向に間隔を隔てた配置に設けられて前記背板部から前方に突出し、かつ前記左右幅方向に弾性変形可能な一対の保持片部と、これら一対の保持片部のそれぞれの先端部から内向きに屈曲し、かつ前記一対の保持片部の相互間に前記設置対象機器が配されたときに前記設置対象機器の前面に係合可能な一対の屈曲片部と、を備えている。
【0019】
このような構成によれば、ネジ止めなどの手段を用いることなく、またはその必要性を少なくしつつ、設置対象機器をブラケット本体部に位置ずれなどを生じないように適切に保持させることが可能となる。したがって、設置対象機器の設置作業がより容易となる。
【0020】
本発明の第2の側面により提供される給湯システムは、浴室の外部に設置された給湯装置と、前記浴室の壁部に貫通するようにして前記壁部に取り付けられて、前記給湯装置に一端が接続された配管と前記浴室内の配管とを接続させるのに利用され、かつ少なくとも一部分が前記浴室内に位置する一対の管体部を有している浴室貫通具と、を備えている、給湯システムであって、前記浴室貫通具の前記一対の管体部および前記一対の管体部に固定して取り付けられた部材のいずれかに、本発明の第1の側面により提供されるブラケットが装着され、かつこのブラケットに、所望の設置対象機器が取り付けられていることを特徴としている。
本発明において、好ましくは、前記給湯装置から湯水が送られてくるときには、この湯水を浴槽に向かわせる一方、前記給湯装置において発生したドレインが前記給湯装置から送られてくるときには、このドレインを浴室の排水パンに排水させるための流路切り替え機能を有するドレイン排水ユニットを、さらに備えており、このドレイン排水ユニットが、前記設置対象機器とされている。なお、排水パンに排水させるとは、排水パンに設けられた排水口にドレインを直接排出させる場合も含む。
【0021】
このような構成によれば、本発明の第1の側面によって提供されるブラケットについて述べたのと同様な効果が得られ、浴室貫通具にブラケットを装着することによって、浴室内における設置対象機器の設置作業を容易かつ適切に行なうことが可能である。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る給湯システムの一例を模式的に示す概略説明図である。
【図2】図1に示す給湯システムにおいてドレイン排出動作が実行される場合を模式的に示す要部概略説明図である。
【図3】図1に示す給湯システムおいて用いられるドレイン排水ユニット、ブラケット、およびその取り付け対象部位を示す斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示すブラケットおよびその取り付け対象部位を示す正面図であり、(b)は、(a)のIV−IV断面図である。
【図5】図3に示すブラケットを所定部位に装着した状態を示す斜視図である。
【図6】図5の要部正面図である。
【図7】図3に示すブラケットにドレイン排水ユニットを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図8】ドレイン排水ユニットの向きを相違させた状態を示す斜視図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明に係るブラケットの他の例を示す要部正面図である。
【図10】(a)は、本発明に係るブラケットの他の例を示す要部正面図であり、(b)は、(a)のX−X端面図であり、(c)は、(a)に示すブラケットの使用状態を示す要部平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1に示す給湯システムSは、屋外に設置された給湯装置1、この給湯装置1と浴槽4の循環アダプタ40とを繋ぐ湯水流路Ra,Rb、ドレイン排水ユニット5、およびこのドレイン排水ユニット5を浴室内に設置するためのブラケットBを備えている。
ドレイン排水ユニット5は、本発明でいう設置対象機器の一例に相当し、後述する三方弁50を備えている。図1および図2では、理解の容易のため、ドレイン排水ユニット5がブラケットBに取り付けられていない状態に示されているが、このドレイン排水ユニット5は、後述するように、ブラケットBに取り付けられ、かつこのブラケットBは、浴室貫通具2に装着される。
【0026】
給湯装置1は、一般給湯機能および風呂給湯機能を有する潜熱回収型のガス給湯装置として構成されている。この給湯装置1は、その基本的な構成自体は従来既知のものと同様であり、ガスバーナ10a,10b、ファン11、ガスバーナ10a,10bによって発生された燃焼ガスから顕熱および潜熱を回収する熱交換器12a,12b、潜熱回収に伴って発生し、かつ流路37を介して送られてくる強酸性のドレインを中和する中和器13、および中和処理を終えたドレインを貯留するためのドレインタンク14を備えている。この給湯装置1の一般給湯動作では、入水口30aに供給された水が配管部30を介して熱交換器12aに供給されて加熱され、この加熱により生成された湯が配管部31,32を介してカラン33などに供給される。
【0027】
給湯装置1と浴槽4の循環アダプタ40とを繋ぐ湯水流路Ra,Rbは、次のような構成である。すなわち、この湯水流路Ra,Rbにおいては、一端が給湯装置1に接続されている外部配管35a,35bの他端が、浴室貫通具2が具備する一対の管体部20を介して、浴室内の配管部材36a,36bと接続されている。なお、図1において、符号43は、家屋の外壁を示し、符号42は、浴室の壁部を示している。配管部材36bの一端は、循環アダプタ40の吸込口40bに連通する接続口に接続されている。配管部材36aの一端は、ドレイン排水ユニット5に接続されており、かつこのドレイン排水ユニット5を介して循環アダプタ40の吐出口40aに連通する接続口に間接的に繋がっている。ドレイン排水ユニット5は、図3に示すように、ポートP1〜P3を有する三方弁50が、樹脂製などのケース51内に収容されて保護された構造である。三方弁50は、電磁弁であり、ケース51の外部には、電力供給用および信号用の電気配線52が引き出されている。
【0028】
図1においては、風呂追い焚き動作時の湯水流通経路が太線で示されている。この風呂追い焚き動作時においては、給湯装置1の内部配管38bに設けられた循環ポンプPが駆
動することにより、浴槽4の湯水が湯水流路Rbおよび内部配管38bに汲み上げられてから熱交換器12bに供給される。この熱交換器12bによって加熱された湯水は、内部配管38aおよび湯水流路Raを介して浴槽4に戻される。その際、ドレイン排水ユニット5は、ポートP1,P2間が連通していることにより、ドレイン排水ユニット5から循環アダプタ40への湯水流通が可能である。ポートP3は閉状態にある。また、ドレイン貯留用のタンク14と内部配管38bとの接続部に位置する三方弁V2については、タンク14側が閉状態にあり、タンク14から内部配管38bへのドレインの流れ込みが阻止されている。なお、浴槽4への湯張り動作は、給湯装置1に設けられている開閉弁V1を開状態として、配管部31,34から内部配管38bに湯水を供給し、流路Ra,Rbに流れさせることにより実行することができる。
【0029】
図2においては、ドレイン排出動作時のドレイン流通経路が太線で示されている。この動作時においては、三方弁V2は、ドレイン用のタンク14側が開状態にあり、循環ポンプPが駆動すると、タンク14内のドレインは、内部配管38b,38aおよび湯水流路Raを通過してドレイン排水ユニット5に送られる。ドレイン排水ユニット5は、ポートP1,P2間が不通状態にあり、ポートP3が開状態にある。このため、前記ドレインは、ポートP3から浴室の排水パン41に排出される。ドレイン排水ユニット5は、実際には、ブラケットBによって支持されて浴室貫通具2の上方に設置されているために、ポートP3には、図示されていないホースが接続され、かつこのホースを介して排水パン41へのドレイン排出がなされる。この給湯システムSでは、前記したドレイン排出動作を完了した後には、先のドレイン流通経路に湯水流通を行なわせて、その経路を洗浄する動作も実行可能である。ただし、その詳細は省略する。
【0030】
図3および図4(b)に示すように、浴室貫通具2は、一対の管体部20が固定プレート21に貫通して接合された構成を有している。一対の管体部20は、水平方向に間隔を隔てて並んでおり(ただし、図1および図2では便宜上、上下に並んだ状態に示している)、浴室の壁部42を貫通した状態に取り付けられる。各管体部20の先端部は、浴室内に位置しているが、後述するように、この部分がブラケットBの装着に利用される。各管体部20の先端側には、ナット22が螺合装着されているが、このナット22は、浴室貫通具2を壁部42に固定させるためのものである。ナット22を締め付けることにより、このナット22と固定プレート21とによって浴室の壁部42が挟み付けられ、浴室貫通具2の固定が図られる。
【0031】
図3および図4(a)に示すように、ブラケットBは、ブラケット本体部6と、このブラケット本体部6の下端両端部に繋がって設けられた一対の係合部7とを具備している。ブラケットBのこれらの部分は、所定形状に形成された1枚の金属板に曲げ加工を施すことによって一体的に形成することができる。
各係合部7は、係合用片7A,7Bを有している。係合用片7Aは、本発明でいう第1の係合用片の一例に相当し、係合用片7Bは、本発明でいう第2の係合用片の一例に相当する。
【0032】
係合用片7Aは、浴室貫通具2のナット22に係合させることが可能である。この係合用片7Aは、一端がブラケット本体部6の下部に一体的に繋がった固定端とされ、かつ先端が自由端とされた略半円弧状であり、ブラケットBの左右幅方向の外向きに開口している。この係合用片7Aが弾性変形を生じていない自然状態においては、図4(a)に示すように、一対の係合用片7Aの中心間距離L1(係合用片7Aの円弧の中心間距離)は、一対のナット22の中心間距離L2(配列ピッチ)よりも長い。このような構成により、図5および図6に示すように、一対のナット22の相互間に一対の係合用片7Aを弾性変形させた状態で配置させ、かつ各ナット22に係合用片7Aを外嵌させれば、これら一対の係合用片7Aは、その弾性復元力によりナット22の外面部に圧接し、係合保持される
。各係合用片7Aの先端部には、外向きに屈曲した屈曲部70aが連設されており、係合用片7Aを変形させる操作を行なう際には、この屈曲部70aを摘まみ部として利用することができる。
【0033】
係合用片7Bは、ナット22に係合用片7Aが係合した状態をより安定させる役割を果たす部分である。この係合用片7Bは、係合用片7Aと同様に、ブラケット本体部6の下方に突出した状態で左右一対に設けられているが、係合用片7Aよりも前方に位置している。また、この係合用片7Bは、係合用片7Aよりも短い円弧状であって、下向き開口状であり、上下方向に弾性変形可能である。この係合用片7Bにも、係合用片7Aの屈曲部70aと同様に、摘まみ部として利用可能な屈曲部70bが設けられている。
【0034】
係合用片7Bは、係合用片7Aをナット22に係合させた際に、浴室貫通具2の管体部20の上面に圧接させることが可能である。本実施形態では、配管部材36a,36bが管体部20の一端開口部に嵌入接続されて、管体部20の上面が露出した状態にあるために、係合用片7Bについてはその露出した上面に当接させることができる。本実施形態では、一対の管体部20およびナット22が、本発明におけるブラケットの係合対象としての固定部材に相当する。なお、本実施形態とは異なり、管体部20に配管部材36a,36bが外嵌接続されていることによって管体部20の上面が露出していない場合には、係合用片7Bは配管部材36a,36bの上面に圧接することとなる。この場合、配管部材36a,36bおよびナット22がブラケットBの係合対象としての固定部材に相当することとなる。
【0035】
ブラケット本体部6は、ドレイン排水ユニット5を取り付けるための部分である。本実施形態では、ビス止めなどの手段を用いることなく、ドレイン排水ユニット5をブラケット本体部6に保持させることが可能とされている。
【0036】
より具体的には、ブラケット本体部6は、一対の係合部7どうしを繋いでいる連接部63、この連接部63から上向きに起立した平板状の背板部60、この背板部60の前面側に形成された水平な板状の支持板部61、背板部60の上部から前方に突出した一対の保持片部62を備えている。一対の保持片部62の各先端には、内向きに屈曲した屈曲片部62aが形成されている。支持板部61は、背板部60の一部分を偏平な2つ折りの板状に加工することにより、背板部60と一体的に形成することが可能である。一対の保持片部62は、図3の矢印N1に示すように、これらが対向する方向に弾性変形(撓み変形)可能であり、これらの間隔を大きく広げることによって、屈曲片部62aとドレイン排水ユニット5との干渉を回避させて、ドレイン排水ユニット5を一対の保持片部62間に進入させることが可能である。このことにより、図7に示すように、支持板部61上にドレイン排水ユニット5を載せることができる。一対の保持片部62に弾性復元力を生じさせれば、屈曲片部62aがドレイン排水ユニット5の前面側に位置し、この前面部分に係止する。
【0037】
ブラケットBは、図8に示すように、ドレイン排水ユニット5を図7とは異なる向きに取り付けることが可能である。図7では、ポートP1〜P3がドレイン排水ユニット5の正面視左寄りに位置し、ポートP1が左向きであるのに対し、図8では、ポートP1〜P3が右寄りに位置し、ポートP1が右向きである。施工作業者は、ポートP1〜P3への配管接続作業性を考慮し、図7および図8のいずれかの向きを適宜選択できることとなる。
【0038】
次に、前記した給湯システムSの作用について説明する。
【0039】
ドレイン排水ユニット5を浴室内に設置するには、ブラケットBを浴室貫通具2に装着
する。ブラケットBの装着は、一対の係合用片7Aを弾性変形させるようにして浴室貫通具2の一対のナット22間に挿入し、かつこれらのナット22に外嵌させることにより行なう。その際、係合用片7Bについては、前記した操作の支障にならないように適宜変形させればよい。これらの操作は、屈曲部70a,70bを適宜摘むなどして簡単に行なうことが可能である。
【0040】
前記したような操作を行なうと、一対の係合用片7Aは、その弾性復元力によって一対のナット22の外面部の内側部分に圧接した状態で外嵌するために、各ナット22からの脱落が容易に生じないように、係合部7はナット22に係合保持される。係合用片7Bは、浴室貫通具2の管体部20の上面に圧接するため、係合用片7A,7Bはナット22や管体部20を挟み込んだ状態となり、それらの部分に対する係合部7の係合状態はより確実かつ強固なものとなる。したがって、浴室貫通具2に対し,ブラケットBを安定した状態に装着することができる。ブラケットBは、一対のナット22の両者間に跨がった状態に装着されるために、その安定性はより優れたものとなる。
【0041】
ブラケットBの装着に際しては、浴室貫通具2を有効に利用しており、ネジ部材や工具類を用いる必要はない。ブラケットBの装着箇所は、浴槽4と浴室の壁部42との間の狭いスペースであるが、このような狭いスペースであっても、ブラケットBを浴室貫通具2に対して容易かつ適切に装着することが可能である。
【0042】
ブラケットBには、ドレイン排水ユニット5を取り付けるが、この取り付けは、ドレイン排水ユニット5をブラケット本体部6の一対の保持片部62間に進入させて、支持板部61上に載せることにより簡単に行なうことができる。この取り付け状態では、一対の保持片部62によってドレイン排水ユニット5の左右幅方向への移動が規制されることに加え、ドレイン排水ユニット5の前面側に屈曲片部62aが係止することによってドレイン排水ユニット5の前後方向への移動も規制される。したがって、ビス止め手段などを採用しなくても、ドレイン排水ユニット5を固定させることが可能であり、ブラケットBに対するドレイン排水ユニット5の取り付けも容易である。ドレイン排水ユニット5は、図7および図8を参照して説明したように、これらの図に示す取り付け状態のいずれにも設定することができるために、ポートP1〜P3への配管接続に都合のよい方の向きを選択し、ポートP1〜P3への配管接続作業の容易化を図ることも可能である。
【0043】
図9および図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0044】
図9(a)に示す実施形態においては、ブラケットBの各係合部7は、係合用片7Aを有するものの、前記実施形態の係合用片7Bに相当する部分を有しない構成とされている。一対の係合用片7Aは、これらのみによって浴室貫通具2のナット22に係合保持し得る構成である。したがって、ブラケットBにこのような係合用片7Aが設けられている場合には、あえて係合用片7Bに相当する係合用片をブラケットBに設けなくてもよい。浴室貫通具2に対するブラケットBの装着状態を安定させる上では、係合用片7Bに相当する手段を設けることが好ましいが、このような手段を省略すれば、係合部7をナット22に係合させる際の作業性がより良好となる利点が得られる。
【0045】
図9(b)に示す実施形態においては、係合用片7Aが内向きに開口した略半円弧状の形態に形成されている。この係合用片7Aは、一対のナット22をその両外側から挟むように配置されることにより、これらのナット22の外側面部に外嵌して圧接し、ナット22に係合保持可能である。図9(c)に示す実施形態においては、係合用片7Aが下向きに開口した略半円弧状とされている。このような構成であっても、係合用片7Aを各ナット22の上部に外嵌させることによってナット22に係合保持させることが可能である。
これらの実施形態から理解されるように、係合用片を一部が開口した略半円弧状に形成する場合、その開口の向きは、とくに限定されるものではない。
【0046】
図9(c)に示す実施形態においては、ブラケット本体部6は、一対の係合部7どうしを繋ぐ連接部63から下方に延びた形態とされている。このような構成であっても、ブラケット本体部6に設置対象機器を取り付けることが可能である。本実施形態から理解されるように、ブラケット本体部については、一対の係合部の上側に設けられることに代えて、下側に設けた構成とすることもできる。
【0047】
図10に示す実施形態においては、各係合用片7Aの凹状面71に、この係合用片7Aの開口部72側に向けて突出した突出部73が設けられている。この突出部73は、たとえば係合用片7Aの正面視形状と同様な略円弧状である。また、同図(b)に示すように、突出部73は、各係合用片7Aの前後方向の後部寄りに位置しており、各係合用片7Aの断面形状は略L字状となっている。同図(c)に示すように、本実施形態における係合用片7Aをナット22に係合させるときには、突出部73をナット22の背面側の段差部28に係止させる。ナット22と浴室の壁部42との間には、ナット22よりも小径のパッキン27が介装されており、このことにより前記の段差部28が生じている。段差部28にはコーキング材(図示略)が充填されている場合があるが、この場合には突出部73をコーキング材に食い込ませた状態で段差部28に係止させる。
【0048】
本実施形態によれば、突出部73が段差部28に係止する作用により、係合用片7Aの前後方向(管体部20の軸長方向)への移動が規制される。係合用片7Aをナット22に強く圧接させるようにして外嵌させれば、係合用片7Aが前後方向に容易に位置ずれしないようにすることが可能であるものの、本実施形態によれば、係合用片7Aの位置ずれをより確実に防止し、ブラケットBの装着状態を一層安定させることができる利点が得られる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係るブラケット、およびこれを備えた給湯システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0050】
上述の実施形態では、ブラケットの装着対象が浴室貫通具とされているが、これ以外の部分を装着対象とすることが可能である。たとえば、浴室貫通具とは別の配管部材、電気配線挿通用の管体、浴室の壁部に取り付けられているボルトなどを装着対象(ブラケットの係合部の係合対象)とすることが可能である。図3〜図8の実施形態においては、ブラケットの係合部の係合対象が浴室貫通具の管体部とナットとの双方とされていることから理解されるように、本発明でいう「一対の固定部材」とは、必ずしも1つの固定部材どうしが対をなしている場合に限らず、1つに纏まった複数の固定部材どうしが互いに対をなしている場合も含む意である。一対の固定部材は、必ずしも形状やサイズが同一に揃えられていなくてもよい。したがって、本発明に係るブラケットの一対の係合部も、必ずしも左右対称に形成されていなくてもよい。たとえば、一対の固定部材のサイズが互いに相違する場合には、それに対応させて一対の係合部の各部のサイズを左右非対称に相違させるといったことも可能である。
【0051】
本発明に係るブラケットの係合部は、弾性変更可能な係合用片を有していることに基づいて所定の固定部材に係合保持可能な構成であればよい。したがって、係合部が複数の係合用片を有している場合において、これら複数の係合用片のそれぞれが、それ単独では係合部を所定の固定部材に係合保持させ得ない構成であったとしても、複数の係合用片が協働することによって、係合部全体として固定部材に係合保持可能であればよい。
【0052】
本発明でいうブラケット本体部は、設置対象機器を取り付け可能であればよい。ブラケット本体部に設置対象機器を取り付けるための手段としては、たとえばビス止め手段や、ワイヤによる拘束など、種々の手段を適用することも可能である。ブラケットに対する設置対象機器の取り付けは、ブラケットを浴室の所定箇所に設置する前に行なうことができるために、たとえばブラケットに設置対象機器をビス止めするような場合であっても、ブラケットに対する設置対象機器の取り付け作業に苦慮する不具合はない。ブラケット本体部は、設置対象機器の形状、サイズ、設置対象機器の取り付け手段に対応して設計すればよい。したがって、ブラケット本体部としては、たとえば上述した実施形態のブラケット本体部6のうち、連接部63に相当する部分のみを有し、かつこの部分にビス止め用の孔を設けるといった非常にシンプルな構成とすることもできる。
【0053】
設置対象機器としては、ドレイン排水ユニット以外の機器を適用することができる。たとえば、浴槽の自動洗浄装置の駆動機器ユニットや、浴槽の栓を遠隔操作によって開閉させるための駆動機器などを設置対象機器とすることが可能であり、その種類は問わない。なお、本発明でいうドレイン排水ユニットは、必ずしも三方弁がケースに収容されたものに限らない。たとえば、三方弁を容器に収容させることなく、三方弁単独部品をドレイン排水ユニットとすることもできる。本発明は、浴室内の狭い領域に設置対象機器を取り付けるのに好適であるが、その設置箇所は狭い領域に限らず、洗い場などの広い領域においても使用することができる。本発明に係る給湯システムでは、給湯装置の具体的な種類や構成は限定されず、種々のタイプの給湯装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
S 給湯システム
B ブラケット
1 給湯装置
2 浴室貫通具
4 浴槽
5 ドレイン排水ユニット(設置対象機器)
6 ブラケット本体部
7 係合部(ブラケットの)
7A 係合用片(第1の係合用片)
7B 係合用片(第2の係合用片)
20 浴室貫通具の管体部(固定部材)
22 浴室貫通具のナット(固定部材)
40 循環アダプタ
42 浴室の壁部
60 背板部
61 支持板部
62 保持片部
62a 屈曲片部
70a,70b 屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を隔てて並ぶようにして浴室内に設けられている一対の固定部材を利用し、所望の設置対象機器を前記浴室内に設置するのに用いられるブラケットであって、
前記設置対象機器が取り付けられるブラケット本体部と、
このブラケット本体部に設けられ、かつ互いに間隔を隔てた配置とされた一対の係合部と、を備えており、
前記一対の係合部のそれぞれは、弾性変形が可能な1または複数の係合用片を有し、かつこの係合用片を弾性変形させた状態で前記各固定部材の外面部に接触させたときには、その復元力によって前記係合用片が前記外面部に圧接することにより、前記一対の係合部を前記一対の固定部材に係合保持させることが可能な構成とされていることを特徴とする、ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のブラケットであって、
前記一対の係合部のそれぞれは、前記係合用片として、正面視において一部が開口した略半円弧状の形態を有する第1の係合用片を備えており、
この第1の係合用片を前記各固定部材に外嵌させることにより、前記一対の係合部を前記一対の固定部材に係合保持させることが可能とされている、ブラケット。
【請求項3】
請求項2に記載のブラケットであって、
前記一対の係合部のそれぞれは、前記係合用片として、第2の係合用片をさらに有しており、
この第2の係合用片は、前記第1の係合用片が前記各固定部材に外嵌されるときに、前記各固定部材の外面部のうち、前記第1の係合用片が圧接する位置とは反対側の位置に圧接させることが可能とされている、ブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のブラケットであって、
前記一対の係合部のそれぞれに設けられている係合用片のうち、少なくとも1つの係合用片の先端部には、摘まみ部として利用可能な外向きの屈曲部が設けられている、ブラケット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のブラケットであって、
前記一対の係合部のそれぞれに設けられている係合用片のうち、少なくとも1つの係合用片には、この係合用片の前後幅方向とは交差する方向に突出する突出部が設けられており、
この突出部を前記各固定部材に設けられている段差部分に係止させることによって、前記係合用片の前後方向への移動を阻止可能な構成とされている、ブラケット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のブラケットであって、
前記ブラケット本体部は、
上下高さ方向に起立した背板部と、
この背板部の前面側において前記設置対象機器を載置させることが可能な支持板部と、
左右幅方向に間隔を隔てた配置に設けられて前記背板部から前方に突出し、かつ前記左右幅方向に弾性変形可能な一対の保持片部と、
これら一対の保持片部のそれぞれの先端部から内向きに屈曲し、かつ前記一対の保持片部の相互間に前記設置対象機器が配されたときに前記設置対象機器の前面に係合可能な一対の屈曲片部と、
を備えている、ブラケット。
【請求項7】
浴室の外部に設置された給湯装置と、
前記浴室の壁部に貫通するようにして前記壁部に取り付けられて、前記給湯装置に一端が接続された配管と前記浴室内の配管とを接続させるのに利用され、かつ少なくとも一部分が前記浴室内に位置する一対の管体部を有している浴室貫通具と、
を備えている、給湯システムであって、
前記浴室貫通具の前記一対の管体部および前記一対の管体部に固定して取り付けられた部材のいずれかに、請求項1ないし6のいずれかに記載のブラケットが装着され、かつこのブラケットに、所望の設置対象機器が取り付けられていることを特徴とする、給湯システム。
【請求項8】
請求項7に記載の給湯システムであって、
前記給湯装置から湯水が送られてくるときには、この湯水を浴槽に向かわせる一方、前記給湯装置において発生したドレインが前記給湯装置から送られてくるときには、このドレインを浴室の排水パンに排水させるための流路切り替え機能を有するドレイン排水ユニットを、さらに備えており、
このドレイン排水ユニットが、前記設置対象機器とされている、給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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