説明

ブラシ及び回転ブラシ

【課題】基材上に立設されたフィルム部材の被接触部に対する摺動抵抗を抑えることができるとともに、基材が捻れた場合でもフィルム部材が基材上で倒れることを抑制することが可能なブラシ及び回転ブラシを提供する。
【解決手段】ブラシは、帯状の基材40上に複数の毛羽と帯状のフィルム部材42とが立設されてなる。フィルム部材42はその長手方向が基材40の長手方向に沿って延びるように且つその短手方向が基材40上からの立設方向となるように設けられている。そして、フィルム部材42には、基材40の長手方向と直交する方向に沿って延びる切目42aが複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ及び該ブラシを備えた回転ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機は本体部と該本体部にホースを介して接続された吸込具とを備えている。そして、この吸込具を絨毯、フローリング、畳等の床面上で移動させ、該吸込具の底面に設けられた吸込口からエアを吸引することにより、本体部内に塵埃が吸い込まれるように構成されている。ところで、近年では、例えば絨毯等のようにエアの吸引だけでは塵埃を吸い込みにくい床面に対する集塵能力を向上させるため、吸込具内に回転ブラシを設けたものが数多く見られるようになってきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の電気掃除機用吸込具の吸込本体ケースには、回転軸(回転体)にゴムブレードとパイル材(ブラシ)とを2つずつ該回転軸の周方向に沿って等間隔で交互に取着されてなる回転ブラシが回転自在に軸支されている。このパイル材は、基材と該基材上に立毛されたパイル糸の複合体であるパイル地(毛羽)とを備えており、さらにゴムブレードと同じような塵埃の掻き取り機能を該パイル材に付与すべく、基材上におけるパイル地の中であって該基材の幅方向の中間部位にU字状に折り曲げたフィルム(フィルム部材)が固着されている。
【0004】
そして、このように構成されたパイル材は、回転軸の外周面に該回転軸の長手方向に沿って螺旋状に刻設された溝に基材をスライド挿入することによって回転軸に取着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−120472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパイル材は、基材上にフィルムが固着されているため、床面(被接触部)に対する摺動抵抗が大きくなってしまうという問題があった。また、回転軸にパイル材を取着する際に、回転軸の螺旋状の溝にパイル材の基材をスライド挿入すると、基材が螺旋状に捻られてしまうが、該基材に固着されたフィルムは該基材の捻れに追従せずに倒れることとなる。そして、フィルムが倒れると、フィルムよりも該フィルムが倒れる方向側に位置するパイル地が該フィルムとともに倒れるので、パイル地が開いた状態になり、この結果、パイル材が本来の塵埃の掻き取り機能を発揮することができなくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、基材上に立設されたフィルム部材の被接触部に対する摺動抵抗を抑えることができるとともに、基材が捻れた場合でもフィルム部材が基材上で倒れることを抑制することが可能なブラシ及び回転ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、帯状の基材上に複数の毛羽と帯状のフィルム部材とが立設されたブラシにおいて、前記フィルム部材はその長手方向が前記基材の長手方向に沿って延びるように且つその短手方向が前記基材上からの立設方向となるように設けられており、前記フィルム部材には、前記基材の長手方向と交差する方向に沿って延びる切目または切欠が形成されていることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、フィルム部材には切目または切欠が形成されているため、該フィルム部材における切目または切欠が形成されている部分は他の部分に比べて柔軟性が高くなっている。このため、被接触部に対してフィルム部材における切目または切欠が形成されている部分を摺接させることで、フィルム部材の被接触部に対する摺動抵抗が抑えられるようになる。加えて、フィルム部材における切目または切欠が形成されている部分の高い柔軟性により、基材が捻れた場合でも該基材の捻れに追従してフィルム部材が捻れ易くなるので、該フィルム部材が基材上で倒れ難くなる。したがって、基材上に立設されたフィルム部材の被接触部に対する摺動抵抗を抑えることができるとともに、基材が捻れた場合でもフィルム部材が基材上で倒れることを抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記切目または切欠は、前記フィルム部材の長手方向に沿って等間隔となるように複数形成されていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、フィルム部材全体にわたって均一に柔軟性を高めることが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記基材からの前記フィルム部材の高さは、前記基材からの前記各毛羽の高さよりも低くなるように設定されていることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、被摺接部に対して、各毛羽のみを摺接させたり、各毛羽及びフィルム部材の双方を摺接させたりすることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記基材、前記各毛羽、及び前記フィルム部材は互いに同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、基材上に各毛羽及びフィルム部材を容易に溶着することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記回転体を回転させながら前記ブラシを被接触部に接触させるようにして使用される回転ブラシにおいて、前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、例えば、回転体にブラシを螺旋状に取着する際に基材が捻れた場合でも、該基材の捻れに追従してフィルム部材が捻れ易くなるので、該フィルム部材が基材上で倒れることを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材上に立設されたフィルム部材の被接触部に対する摺動抵抗を抑えることができるとともに、基材が捻れた場合でもフィルム部材が基材上で倒れることを抑制することが可能なブラシ及び回転ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の電気掃除機のヘッドを示す平断面図。
【図2】第1実施形態の電気掃除機のヘッドの使用状態を示す側断面図。
【図3】第1実施形態において、(a)は、電気掃除機の回転ブラシを示す斜視図、(b)は、(a)の側面拡大図。
【図4】第1実施形態のブラシの側面図。
【図5】第1実施形態において、(a)はフィルム部材を2つ折りにしたときの状態を示す斜視図、(b)は2つ折りにする前のフィルム部材の状態を示す展開図。
【図6】第2実施形態において、窓枠にガラス戸を取り付けたときの状態を示す一部を破断した斜視図。
【図7】図6の要部拡大断面図。
【図8】変更例のブラシの側面図。
【図9】変更例のブラシの側面図。
【図10】(a)〜(e)は変更例のフィルム部材の展開図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の回転ブラシを電気掃除機用の回転ブラシに具体化した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、回転ブラシが取着される電気掃除機のヘッドの構成について説明する。
図1及び図2に示すように、電気掃除機のヘッド11は、平面視略T字状のケース12を備えている。ケース12の後端部には接続パイプ13の一端側が該ケース12に対して回動可能に接続されているとともに、接続パイプ13の他端側は電気掃除機の本体部(図示略)に接続されている。ケース12の底壁における前端側の位置には左右方向に長い矩形状の吸込口14が該底壁を貫通するように形成されている。
【0019】
ケース12の内底面上には矩形枠状をなす仕切板15が吸込口14を囲むように立設されており、該仕切板15を構成する後壁の中央部には該後壁を貫通するようにエア吸引口16が形成されている。ケース12の左内側面にはモータ軸受17が設けられ、該モータ軸受17はケース12内における仕切板15の後方に設けられたモータ18から延びるモータ軸19の先端を回転可能に支持している。
【0020】
仕切板15の左右両側壁にはそれぞれ回転支持体20が設けられ、該両回転支持体20はケース12の左右両内側面に設けられたブラシ軸受21によってそれぞれ回転可能に支持されている。仕切板15の内側には、回転軸線が左右方向に延びる回転ブラシ22が収容されており、該回転ブラシ22の両端部は両回転支持体20によってそれぞれ支持されている。
【0021】
また、左側の回転支持体20とモータ軸19に取着されたローラ19aとの間には無端状のベルト23が掛装されている。したがって、モータ18が駆動されると、該モータ18の回転駆動力が、モータ軸19、ローラ19a、ベルト23、及び左側の回転支持体20を介して回転ブラシ22に伝達されるようになっている。
【0022】
そして、電気掃除機の使用時には、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16及び接続パイプ13を介して電気掃除機の本体部(図示略)内に吸引されるとともに、回転ブラシ22が回転されることで、被接触部としての床面F上の塵、埃、毛髪等の塵埃が掻き取られながらエアとともに吸込口14から吸い込まれるようになっている。このとき、回転ブラシ22は、電気掃除機のヘッド11の前進を妨げない方向(図2の矢印で示す方向)に回転される。
【0023】
次に、回転ブラシ22の構成について詳述する。
図3(a)、(b)に示すように、回転ブラシ22は、断面視X字状をなす金属棒よりなる回転体31と、該回転体31に取着される4つのブラシ32とを備えている。回転体31は、4つの断面視T字状をなす突条31aの基端部同士を該各突条31aが回転体31の周方向に沿って等間隔に配置されるように一体に連結し、さらにその全体にわたって周方向に約180度捻ることで形成されている。したがって、回転体31の周面には、各突条31a間に螺旋状をなす4本の凹溝33が形成される。そして、各凹溝33の開口部33aは、各突条31aの先端部に備えられた突片31bにより狭められている。
【0024】
次に、ブラシ32の構成について詳述する。
図4に示すように、ブラシ32は、帯状の基材40と、該基材40上に該基材40の長手方向に延びるように立設された多数の毛羽41aによって構成された毛羽部41と、該基材40上における毛羽部41内に2つ折りにした状態で立設された帯状のフィルム部材42とを備えている。そして、ブラシ32を構成する基材40、毛羽部41(各毛羽41a)、及びフィルム部材42は、全て同じ合成樹脂材料であるポリアミドによって構成されており、適度な剛性と弾性とを有している。
【0025】
また、毛羽部41を構成する各毛羽41aは基材40上に超音波溶着によって接合されている。一方、フィルム部材42は、その長手方向が基材40の長手方向に沿って延びるように且つその短手方向が基材40上からの立設方向となるように、基材40上に立設されている。すなわち、フィルム部材42は、その折り曲げた部分が基材40上に各毛羽41aとともに超音波溶着によって接合されている。したがって、フィルム部材42は長手方向から見て略V字状をなしている。
【0026】
フィルム部材42は、毛羽部41の短手方向の中央部に配置されているとともに、毛羽部41の長手方向に沿って延びている。また、基材40からのフィルム部材42の高さは、基材40からの毛羽部41の高さよりも低くなるように設定されている。本実施形態では、フィルム部材42の高さを、毛羽部41の高さの9割程度となるように設定している。
【0027】
基材40上における毛羽部41の短手方向の両側には、該毛羽部41を挟むように一対の凸条40aが該基材40の長手方向に沿って延設されている。両凸条40aは、基材40上に毛羽部41及びフィルム部材42を超音波溶着する際の位置決め手段として機能するようになっている。なお、図3(b)に示すように、基材40の幅は、該基材40を回転体31の凹溝33内にスライド挿入可能でかつ該基材40が凹溝33の開口部33aから脱落しない程度の値に設定されている。
【0028】
図5(a)に示すように、フィルム部材42には、基材40の長手方向と直交する方向に延びる複数の切目42a(切断部)が基材40の長手方向に沿って並ぶように形成されている。各切目42aは、等間隔でかつ互いに平行となるように配列され、フィルム部材42の長手方向の全体にわたって形成されている。フィルム部材42の先端からの各切目42aの深さは、基材40からのフィルム部材42の高さの7割程度に設定されている。
【0029】
なお、図5(b)に示すように、フィルム部材42には、2つ折りにする前の状態で各切目42aが入れられる。この場合、2つ折りにする前の状態の帯状のフィルム部材42の短手方向の両側には、対をなすように各切目42aがそれぞれ入れられる。したがって、短手方向の中央(図5(b)に一点鎖線で示している)に沿って2つに折りにした後のフィルム部材42の一方側の各切目42aと他方側の各切目42aとは基材40の短手方向においてそれぞれ対応している。
【0030】
次に、回転体31へのブラシ32の取り付け方法について説明する。
図3(a)、(b)に示すように、回転体31へブラシ32を取り付ける場合、毛羽部41が凹溝33の開口部33aから外側へ突出するように、回転体31の端部から各凹溝33内に基材40をそれぞれスライド挿入する。すると、基材40(ブラシ32)は、適度な剛性と弾性とを有しているため、各凹溝33に沿ってそれぞれ螺旋状に捻れた状態で回転体31に容易に挿着される。
【0031】
このとき、フィルム部材42は、各切目42aによって柔軟性が高められているので、基材40(ブラシ32)の捻れに追従して柔軟に変形する。したがって、フィルム部材42は、捻れた基材40上において倒れ難くなり、毛羽部41(各毛羽41a)を倒すことがほとんどなくなる。したがって、毛羽部41(各毛羽41a)が開くことが効果的に抑制されるので、ブラシ32としての塵埃の掻き取り機能が維持される。
【0032】
因みに、フィルム部材42に各切目42aが形成されていない場合には、フィルム部材42の柔軟性が不足し、該フィルム部材42が基材40の捻れに追従せずに倒れてしまう。このため、フィルム部材42が毛羽部41を構成する各毛羽41aの約半分を該フィルム部材42の倒れる方向へ倒すこととなる。この結果、毛羽部41(各毛羽41a)が開いてしまい、ブラシ32としての機能(塵埃の掃き取り機能や掻き取り機能など)が低下する。
【0033】
次に、回転ブラシ22の作用について説明する。
さて、電気掃除機を使用するときには、図2に示すように、まず、ヘッド11を床面F上に載せる。この状態で電気掃除機を稼動させると、モータ18が駆動されるとともに、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16を通り、接続パイプ13を介して電気掃除機の本体部(図示略)内に吸引される。このとき、モータ18の駆動に連動して回転ブラシ22が左側から見て反時計方向(図中の矢印で示す方向)に回転されるとともに、該回転ブラシ22の毛羽部41及びフィルム部材42が床面Fに摺接される。
【0034】
すると、床面F上の塵埃が、毛羽部41によって掃き取られるとともに、フィルム部材42によって掻き取られてエアとともに電気掃除機の本体部(図示略)内に吸引される。特に、床面Fが畳や絨毯である場合には、フィルム部材42によって畳内や絨毯内の塵埃がたたき出されながら掻き取られるため、清掃効果が高くなる。
【0035】
このように、回転ブラシ22のブラシ32にフィルム部材42を設けると、床面Fに対する清掃効果が高くなる一方で床面Fに対する摺動抵抗が高くなってしまう。しかしながら、本実施形態では、フィルム部材42における床面Fとの摺接部分に各切目42aが形成されているため、該摺接部分の柔軟性が高まり、結果として床面Fに対する摺動抵抗が抑えられる。
【0036】
以上詳述した第1実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)ブラシ32(回転ブラシ22)のフィルム部材42には各切目42aが形成されているため、該フィルム部材42は各切目42aがないものに比べて柔軟性が高くなっている。このため、電気掃除機の使用時に、フィルム部材42が床面Fを摺動するときの摺動抵抗を抑えることができる。加えて、回転体31へブラシ32を取着する際に基材40が捻れた場合でも該基材40の捻れに追従してフィルム部材42が柔軟に変形するため、該フィルム部材42が基材40上で倒れることを抑制することができる。この結果、フィルム部材42が倒れて毛羽部41(各毛羽41a)が開くことを抑制することができるので、ブラシ32(回転ブラシ22)としての機能(塵埃の掃き取り機能や掻き取り機能など)を維持することができる。
【0037】
(2)各切目42aはフィルム部材42の長手方向に沿って等間隔となるように形成されているため、フィルム部材42全体にわたって均一に柔軟性を高めることができる。
(3)基材40からのフィルム部材42の高さは、基材40からの毛羽部41(各毛羽41a)の高さよりも低くなるように設定されている。このため、床面Fがフローリングである場合には該フローリングに対して毛羽部41のみが摺接するように回転ブラシ22の位置を調整することで、フローリングに対する回転ブラシ22の摺動抵抗が抑えられるので、該フローリング上の塵埃を円滑に掃き取ることができる。一方、床面Fが絨毯である場合には該絨毯に対して毛羽部41及びフィルム部材42の双方が摺接するように回転ブラシ22の位置を調整することで、絨毯内の塵埃をフィルム部材42によってたたき出しながら掻き取ることができる。したがって、床面Fの種類に応じて回転ブラシ22の位置を調整することで、床面F上の塵埃を電気掃除機によって効果的に清掃することができる。
【0038】
(4)基材40、毛羽部41、及びフィルム部材42は、全て同じポリアミドからなっているため、基材40上に毛羽部41及びフィルム部材42を強固かつ容易に超音波溶着(熱溶着)することができる。このため、毛羽部41及びフィルム部材42が床面Fに対して摺動する際に、基材40からの毛羽部41(各毛羽41a)及びフィルム部材42の脱落を抑制することができる。
【0039】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、上記第1実施形態のブラシ32をシール材として用いたものである。そして、この第2実施形態では、遮断性の低下を抑えつつ摺動抵抗を抑えたシール材を提供することを目的としている。
【0040】
図6には窓に設けられた被接触部としての合成樹脂製の窓枠50の一部が示されている。窓枠50の内側には、移動体としてのガラス戸51が開閉移動可能に取り付けられている。ガラス戸51は、四角枠状をなす合成樹脂製の框52と、該框52の内側に嵌め込まれた窓ガラス53とを備えている。窓枠50の内周面にはレール54が突設されているとともに、框52の外周面にはレール54と対応するガイド溝55が凹設されている。
【0041】
図6及び図7に示すように、框52の上面及び下面におけるガイド溝55の内底部には車輪(図示略)がそれぞれ転動可能に取り付けられている。また、ガラス戸51は、その框52のガイド溝55に窓枠50のレール54が入り込むようにして該窓枠50の内側に収容される。そして、窓枠50のレール54上でガラス戸51の車輪(図示略)を転動させることで、ガラス戸51が窓枠50に対して相対移動され、窓が開閉される。なお、窓枠50の側部におけるレール54は、ガラス戸51によって窓を閉じたときに框52の側面におけるガイド溝55に入り込む。
【0042】
図7に示すように、窓枠50の内面と框52の外面との間には隙間56が形成されている。ガラス戸51の框52には、隙間56を塞ぐように、シール材としてのブラシ32が取着されている。すなわち、ガラス戸51において、框52の外側面における周縁部にはブラシ32を取着するための取着凹条57がガラス戸51の厚み方向に開口するように設けられており、該取着凹条57は框52の各側縁に沿って延びるように形成されている。
【0043】
そして、ブラシ32の基材40は取着凹条57に挿着されるとともに、ブラシ32の毛羽部41及びフィルム部材42は取着凹条57の開口から突出している。この場合、毛羽部41及びフィルム部材42の先端部が窓枠50の内面に摺接している。なお、本実施形態では、フィルム部材42の各切目42aは、該フィルム部材42における窓枠50の内面に摺接する先端部にのみ形成される。すなわち、本実施形態におけるフィルム部材42の各切目42aの深さは、上記第1実施形態におけるフィルム部材42の各切目42aの深さに比べて、かなり浅くなるように設定されている。具体的には、ガラス戸51を閉じた際に、ブラシ32のフィルム部材42における少なくとも各切目42aが形成された領域の全てが変形するように設計することが望ましい。
【0044】
そして、ガラス戸51を閉じた場合には、ブラシ32の毛羽部41及びフィルム部材42によって隙間56が塞がれ、この隙間56を介した空気、雨水等の流体の流れが遮断されるようになっている。このとき、フィルム部材42において、各切目42aは、窓枠50の内面に摺接する先端部にのみ形成されているため、ほとんど開くことはなく、空気、雨水等の遮断性の低下が抑えられる。
【0045】
一方、ガラス戸51の開閉に伴う移動時には、ブラシ32のフィルム部材42における窓枠50の内面に摺接する先端部の柔軟性が各切目42aの存在によって高まっているため、ガラス戸51の移動時におけるフィルム部材42の窓枠50の内面に対する摺動抵抗は低減される。
【0046】
以上詳述した第2実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(5)ブラシ32のフィルム部材42の各切目42aは窓枠50の内面に摺接する先端部にのみ形成されているため、空気、雨水等の遮断性の低下を抑えつつ、窓枠50の内面に対する摺動抵抗を抑えることができる。
【0047】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図8に示すように、ブラシ32は、毛羽部41を、その短手方向における両側から挟んで支えるようにフィルム部材42を基材40上に設けるようにしてもよい。このようにすれば、毛羽部41を倒れにくくすることができる。
【0048】
・図9に示すように、ブラシ32は、毛羽部41を、その短手方向における両側から挟んで支えるようにフィルム部材42を基材40上に設けるとともに、毛羽部41内にもフィルム部材42を設けるようにしてもよい。
【0049】
・図10(a)に示すように、フィルム部材42において、短手方向の両側に配置された各切目42aのそれぞれのピッチを長手方向に半ピッチ分だけずらしてもよい。
・図10(b)に示すように、フィルム部材42において、短手方向における一方側のほぼ半分を省略してもよい。
【0050】
・図10(c)に示すように、フィルム部材42の各切目42aをV字状の切欠60に変更するとともに、該フィルム部材42の短手方向の先端部をフラットにしてもよい。この場合、フィルム部材42の短手方向における一方側のほぼ半分を省略してもよい。
【0051】
・図10(d)に示すように、フィルム部材42の各切目42aをV字状の切欠60に変更するとともに、該フィルム部材42の短手方向の先端部を尖らせてもよい。
・図10(e)に示すように、フィルム部材42の各切目42aをU字状の切欠60に変更するとともに、該フィルム部材42の短手方向の先端部に丸みを帯びさせてもよい。
【0052】
・回転ブラシ22は、エアコンや換気扇のフィルタの清掃用ブラシとして用いてもよい。
・回転ブラシ22において、回転体31に取着するブラシ32の数や位置は任意に変更してもよい。例えば、回転体31に2つのブラシ32を該回転体31挟んだ両側に取着してもよい。
【0053】
・回転ブラシ22において、回転体31に取着される4つのブラシ32のうちの1つ〜3つをゴムブレードに変更してもよい。
・基材40、毛羽部41、及びフィルム部材42の材料としては、ポリアミド以外に、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル樹脂及びウレタン樹脂等を用いてもよい。あるいは、基材40、毛羽部41、及びフィルム部材42は互いに異なる材料によって構成してもよい。この場合、基材40上に毛羽部41を熱溶着することが不可能であれば、これらの材料に応じた取着方法(例えば、接着剤を用いる方法)を選択する必要がある。
【0054】
・ブラシ32において、基材40上にフィルム部材42を、該基材40の長手方向に沿って断続的に延設するようにしてもよい。
・ブラシ32において、フィルム部材42を、帯状の紙、布、織物、編物等によって構成してもよい。
【0055】
・ブラシ32において、基材40からのフィルム部材42の高さは、基材40からの毛羽部41の高さ以上であってもよい。
・ブラシ32において、フィルム部材42の各切目42a間の間隔は、必ずしも等間隔である必要はない。
【0056】
・フィルム部材42には、切目42aが少なくとも1つ以上形成されていればよい。
・フィルム部材42において、各切目42aの延びる方向は、基材40の長手方向と交差していれば、必ずしも基材40の長手方向と直交している必要はない。すなわち、各切目42aは、基材40の長手方向に対して斜めに延びていてもよい。
【0057】
・フィルム部材42には、各切目42aと各切欠60(図10(c)〜(e)参照)とを混在するように形成してもよい。
さらに、上記各実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0058】
(イ)被接触部に対して相対移動する移動体に取着され、前記移動体が前記被接触部に対して相対移動する際に該被接触部に摺接して前記移動体と前記被接触部との間の隙間をシールするシール材であって、
前記シール材は、前記移動体に取着される基材と、
前記基材上に立設されるとともに前記被接触部に摺接する複数の毛羽と、
前記基材上に立設されるとともに前記被接触部に摺接するフィルム部材とを備え、
前記フィルム部材における前記被接触部に摺接する部分には切目または切欠が形成されていることを特徴とするシール材。
【0059】
このように構成すれば、フィルム部材によってシール性能を確保しつつ、移動体が被接触部に対して相対移動する際にはフィルム部材の切目または切欠が形成された部分が被接触部に摺接するため、被接触部に対する摺動抵抗を低減することができる。
【符号の説明】
【0060】
22…回転ブラシ、31…回転体、32…ブラシ、40…基材、41a…毛羽、42…フィルム部材、42a…切目、60…切欠、F…被接触部としての床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材上に複数の毛羽と帯状のフィルム部材とが立設されたブラシにおいて、
前記フィルム部材はその長手方向が前記基材の長手方向に沿って延びるように且つその短手方向が前記基材上からの立設方向となるように設けられており、
前記フィルム部材には、前記基材の長手方向と交差する方向に沿って延びる切目または切欠が形成されていることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記切目または切欠は、前記フィルム部材の長手方向に沿って等間隔となるように複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記基材からの前記フィルム部材の高さは、前記基材からの前記各毛羽の高さよりも低くなるように設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記基材、前記各毛羽、及び前記フィルム部材は互いに同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記回転体を回転させながら前記ブラシを被接触部に接触させるようにして使用される回転ブラシにおいて、
前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを特徴とする回転ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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