ブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置
【課題】複数のループパイル部を有し、且つ設計の自由度が高くて製造が容易なブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置を提供する。
【解決手段】ブラシ32は、基材40上に毛羽部41を立設することで形成されている。毛羽部41は、糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部43を複数並列に一体形成してなっている。各ループパイル部43のうち、基材40に取着されるものは取着ループパイル部44とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部45とされている。そして、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立している。
【解決手段】ブラシ32は、基材40上に毛羽部41を立設することで形成されている。毛羽部41は、糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部43を複数並列に一体形成してなっている。各ループパイル部43のうち、基材40に取着されるものは取着ループパイル部44とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部45とされている。そして、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の本体部にホースを介して接続されたヘッド内に配設され、絨毯、畳、フローリング等の床面から塵埃を掻き上げるための電気掃除機用の回転ブラシ装置及び該回転ブラシ装置に用いられるブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機は本体部と該本体部にホースを介して接続されたヘッドとを備えている。そして、このヘッドを絨毯、フローリング、畳等の床面上で移動させ、該ヘッドの底面に設けられた吸込口からエアを吸引することにより、本体部内に塵埃が吸い込まれるように構成されている。ところで、近年では、例えば絨毯等のようにエアの吸引だけでは塵埃を吸い込みにくい床面に対する集塵能力を向上させるため、ヘッド内に回転ブラシを設けたものが数多く見られるようになってきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の回転ロータ(回転ブラシ装置)は、掃除機用床ノズル(ヘッド)内に回転可能に収容されるとともに長手方向に沿って螺旋状に延びる複数の溝部を有するロータ(回転体)と、該ロータの各溝部にそれぞれ取着された清掃体(ブラシ)からなっている。この清掃体は、平帯体と、略中央で折り曲げられた平帯体の下端部に挿入された芯線と、該芯線と共に平帯体の下端部を挟持する金属製の帯状体(基材)とから構成され、該帯状体をロータの溝部の一方の端部から挿入することでロータに取り付けられるようになっている。
【0004】
また、平帯体は、糸を、両端にループ状部(機能ループパイル部)を形成しながら平帯状に織り、両ループ状部間に支柱部(取着ループパイル部)を残すように、両ループ状部と支柱部との境界部分をそれぞれ綴じ糸で長手方向に沿って縫うことで形成される。
【特許文献1】特開2007−578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の回転ロータの清掃体は、その製造にあたり、平帯体にループ状部を形成するべく最終的に縫製を行う必要がある上、いわゆるチャンネルブラシ形態であるため、平帯体を帯状体に挟み込む必要もある。このため、清掃体の製造が困難、ひいては回転ロータの製造が困難になってしまうという問題があった。
【0006】
加えて、平帯体は、織物からなるため、ループ状部同士間、あるいはループ状部と支柱部との間で材質や大きさ等を異ならせることが困難であった。この結果、清掃体の設計の自由度の低下、ひいては回転ロータの設計の自由度の低下を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、複数のループパイル部を有し、且つ設計の自由度が高くて製造が容易なブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材上に毛羽部を設けてなるブラシにおいて、前記毛羽部は糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなり、前記各ループパイル部のうち、前記基材に取着されるものは取着ループパイル部とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部とされ、前記各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立していることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、毛羽部が糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなるため、縫製を行うことなく毛羽部を構成する各ループパイル部を形成することが可能となる。加えて、毛羽部を構成している各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立しているため、各ループパイル部間で材質や大きさ等を自由に異ならせることが可能となる。したがって、複数のループパイル部を有するブラシを、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記毛羽部は、前記各ループパイル部の並列方向における前記取着ループパイル部の両側に少なくとも1つずつの機能ループパイル部が配置されるとともに、前記取着ループパイル部が前記並列方向と交差する方向に沿って折り曲げられた状態で前記基材上に取着されていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、少なくとも2つの機能ループパイル部をブラシとして同時に機能させることが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記取着ループパイル部と前記機能ループパイル部とは材質が異なることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、取着ループパイル部を基材に対する取着性に特化した材質にするとともに、機能ループパイル部をブラシとしての機能性に特化した材質にすることで、ブラシの性能を向上することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記基材と前記取着ループパイル部とが同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、基材上に取着ループパイル部を容易に熱溶着することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、床面上の塵埃を吸い込むためのヘッド内に回転可能に収容された回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記ヘッドが床面上を移動する際に、前記回転体を回転させながら前記ブラシを床面に接触させるように構成された電気掃除機用の回転ブラシ装置であって、前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、請求項1と同様の作用効果により、複数のループパイル部を有するブラシを、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となり、ひいては、電気掃除機用の回転ブラシ装置を、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のループパイル部を有し、且つ設計の自由度が高くて製造が容易なブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、回転ブラシ装置が配設される電気掃除機のヘッドの構成について説明する。
図1及び図2に示すように、電気掃除機のヘッド11は、平面視略T字状のケース12を備えている。ケース12の後端部には接続パイプ13の一端側が該ケース12に対して回動可能に接続されており、接続パイプ13の他端側は図示しない電気掃除機の本体部に接続されている。ケース12の底壁における前端部には、長孔状の吸込口14が左右方向に延びるように設けられている。
【0018】
ケース12の内底面上には四角枠状をなす仕切板15が吸込口14を囲むように立設されており、該仕切板15の後端部中央にはエア吸引口16が貫通するように形成されている。ケース12の左内側面にはモータ軸受17が設けられており、該モータ軸受17にはケース12内に設けられたモータ18から延びるモータ軸19の先端部が回転可能に支持されている。
【0019】
仕切板15の左右両側壁にはそれぞれ回転支持体20が設けられており、該両回転支持体20はケース12の左右両内側面にそれぞれ設けられたブラシ軸受21によりそれぞれ回転可能に支持されている。仕切板15の内側には左右方向に延びる回転ブラシ装置22が収容されており、該回転ブラシ装置22の両端部は両回転支持体20にそれぞれ支持されている。
【0020】
また、左側の回転支持体20とモータ軸19の先端部に取着されたローラ19aとの間には、無端状のベルト23が掛装されている。そして、モータ18の駆動により、その回転が、モータ軸19、ローラ19a、ベルト23、及び左側の回転支持体20を介して回転ブラシ装置22に伝達されるようになっている。そして、電気掃除機を使用する際には、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16及び接続パイプ13を介して電気掃除機の本体部内に吸引されるとともに、回転ブラシ装置22が回転されることにより、床面F上の塵、埃、毛髪等の塵埃が掻き取られ、該塵埃がエアとともに吸込口14から吸い込まれるようになっている。このとき、回転ブラシ装置22は、電気掃除機のヘッド11の前進を妨げない方向(図2の矢印で示す方向)に回転される。
【0021】
次に、回転ブラシ装置22の構成について詳述する。
図3及び図4に示すように、回転ブラシ装置22は、断面視略X字状をなす棒状の金属よりなる回転体31と、該回転体31に取着される複数(本実施形態では4つ)のブラシ32とを備えている。回転体31は、4つの断面視略T字状をなす突条31aの基端部同士を、該各突条31aが互いに回転体31の周方向に等間隔に配置されるように、互いに一体に連結し、さらにその全体にわたって周方向に約180度捻ることで形成されている。したがって、回転体31の周面には各突条31a間に螺旋状をなす4本の凹溝33が形成されており、該各凹溝33に各ブラシ32がそれぞれ取着されるようになっている。そして、各凹溝33の開口部33aは、各突条31aの先端部に備えられた突片31bにより狭められている。
【0022】
次に、ブラシ32の構成について詳述する。
図5及び図6に示すように、ブラシ32は、合成樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)の成形品により構成された長尺帯状の基材40と、該基材40の長手方向に沿って延びるように該基材40上に熱溶着された側面視略U字状をなす毛羽部41とを備えている。毛羽部41は、糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部43を複数(本実施形態では3つ)並列に一体形成した編物を該各ループパイル部43の並列方向と直交する方向に沿ってU字状に二つ折りにしてなるものである。この場合、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立している。
【0023】
毛羽部41を構成する3つのループパイル部43のうち、中央に位置しているものは基材40上に熱溶着される取着ループパイル部44とされ、該取着ループパイル部44の両側に配置されているものはブラシとして機能する機能ループパイル部45とされている。取着ループパイル部44を構成する糸には、該取着ループパイル部44の基材40に対する熱溶着性を向上するべく基材40と同じ材質であるポリプロピレン製の糸が用いられている。一方、機能ループパイル部45を構成する糸にはポリアミド製の糸が用いられている。ポリアミド製の糸は、復元性、摺動性、及び耐摩耗性に優れているので、本用途に好適である。
【0024】
また、基材40上における該基材40の短手方向の中央部には毛羽部41を挟むように一対の凸条40aが基材40の長手方向に沿って延設されており、該両凸条40aは基材40上に毛羽部41の取着ループパイル部44を熱溶着する際の位置決め手段として機能するようになっている。なお、図4に示すように、基材40の短手方向の幅は、回転体31の凹溝33内に挿入可能でかつ凹溝33の開口部33aの幅よりも大きくなるように設定されている。
【0025】
次に、回転体31へのブラシ32の取り付け方法について説明する。
図3及び図4に示すように、回転体31へブラシ32を取り付ける場合、毛羽部41が凹溝33の開口部33aから外側へ突出するように、回転体31の端部から各凹溝33内に各ブラシ32の基材40をそれぞれスライド挿入する。すると、基材40は、適度な剛性と可撓性とを有しているため、各凹溝33に沿ってそれぞれ螺旋状に捻れた状態で回転体31に容易に挿着される。このとき、基材40は、突片31bによって強く係止されるため、凹溝33の開口部33aからのブラシ32の脱落が抑制される。
【0026】
次に、ブラシ32の製造方法について説明する。
図7に示すように、ブラシ32を製造する場合には、まず、直線状に延びる、第1保持糸51、第2保持糸52、第3保持糸53、及び第4保持糸54を、所定間隔を置いて互いに平行となるように順次配置する。第2保持糸52及び第3保持糸53には、繊度が78デシテックス/17フィラメントのポリアミド製の糸と、繊度が335デシテックス/24フィラメントで熱溶融性を有するポリアミド製の糸(熱溶融糸)とを撚ってなる撚糸
が用いられている。一方、第1保持糸51及び第4保持糸54には、熱溶融性を有さないポリアミド製の糸が用いられている。また、第1保持糸51及び第2保持糸52の間隔と、第3保持糸53及び第4保持糸54の間隔とは同じになるように設定されており、第2保持糸52及び第3保持糸53の間隔は第1保持糸51及び第2保持糸52の間隔よりも若干広くなるように設定されている。
【0027】
続いて、第1保持糸51及び第2保持糸52間、第3保持糸53及び第4保持糸54間をそれぞれポリアミド製の糸によって各糸51〜54の延びる方向に沿って規則的に蛇行させてループ42がほぼ等ピッチで連続して形成されるように帯状に編む。これと同時に、第2保持糸52及び第3保持糸53間をポリプロピレン製の糸によって各糸51〜54の延びる方向に沿って規則的に蛇行させてほぼ等ピッチでループ42が連続して形成されるように帯状に編む。これにより、図7に示すような帯状の編物からなる毛羽部形成体50が形成される。
【0028】
毛羽部形成体50において、第1保持糸51及び第2保持糸52間、第3保持糸53及び第4保持糸54間にそれぞれ帯状に編まれたポリアミド製の糸は毛羽部41の機能ループパイル部45となる機能ループパイル部形成部55とされ、第2保持糸52及び第3保持糸53間に帯状に編まれたポリプロピレン製の糸は毛羽部41の取着ループパイル部44となる取着ループパイル部形成部56とされている。
【0029】
続いて、毛羽部形成体50に対して、第2保持糸52中及び第3保持糸53中に含まれる熱溶融糸が溶融する程度の温度で熱をかけながらプレスを行う熱プレス加工を施すと、第2保持糸52中及び第3保持糸53中に含まれる熱溶融糸が溶融する。そして、熱プレス加工された後に自然冷却されると、溶融していた熱溶融糸がそれぞれ固化する。これにより、取着ループパイル部形成部56と機能ループパイル部形成部55とが融着されて強固に連結される。
【0030】
続いて、図8に示すように、毛羽部形成体50から第1保持糸51及び第4保持糸54をほどきながら除去する。そして、図8及び図9に示すように毛羽部形成体50を短手方向に2等分する中央面Sに沿って毛羽部形成体50を二つ折りにした状態(毛羽部形成体50を毛羽部41にした状態)で基材40上の両凸条40a間に熱溶着することで、図6に示したブラシ32が得られる。この場合、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45の基材40からの高さは同じになっている。
【0031】
次に、回転ブラシ装置22の作用について説明する。
さて、電気掃除機を使用するときには、図2に示すように、まず、ヘッド11を床面F上に載せる。この状態で電気掃除機を稼動させると、モータ18が駆動されるとともに、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16を通り、接続パイプ13を介して図示しない電気掃除機の本体部内に吸引される。このとき、モータ18の駆動に連動して回転ブラシ装置22が左側から見て反時計回り(図2の矢印で示す方向)に回転されるとともに、該回転ブラシ装置22のブラシ32における各毛羽部41の各機能ループパイル部45が床面Fに摺接される。この各機能ループパイル部45の床面Fへの摺接により、該床面F上の塵埃が掻き取られてエアとともに図示しない電気掃除機の本体部内に吸引される。このとき、各機能ループパイル部45を構成する糸は多数のループ42を形成しているため、床面Fをソフトに拭き取る。
【0032】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)毛羽部41が糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなる3つのループパイル部43を複数並列に一体形成してなるため、各ループパイル部43を、縫製を行うことなく形成することができる。加えて、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立しているため、各ループパイル部43間で糸の材質やループ42の大きさを自由に異ならせることができる。したがって、複数のループパイル部43を有するブラシ32を、設計の自由度を高めつつ容易に製造することができる。
【0033】
(2)毛羽部41は、取着ループパイル部44の両側に1つずつの機能ループパイル部45が配置された毛羽部形成体50を短手方向(取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45の並列方向)の中央で長手方向(取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45の並列方向と直交する方向)に沿って二つ折りにしてなる。そして、この二つ折りにした状態の毛羽部41の取着ループパイル部44を基材40上に熱溶着することで、基材40上に毛羽部41が立設されたブラシ32が形成されている。このため、ブラシ32は、2つの機能ループパイル部45を床面Fに摺接するブラシとして同時に機能させることができる。すなわち、ブラシ32は、2つの機能ループパイル部45を床面Fに対して同時に摺接させることができる。
【0034】
(3)ブラシ32は、取着ループパイル部44を構成する糸が基材40と同じ材質のポリプロピレンからなり、床面Fに摺接する機能ループパイル部45を構成する糸が復元性、摺動性、及び耐摩耗性に優れたポリアミドからなる。このため、取着ループパイル部44の基材40に対する熱溶着性を高めつつ、機能ループパイル部45の床面F上に対する塵埃の掻き取り性能及び拭き取り性能を長期間維持することができる。すなわち、取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45がそれぞれの機能に特化した材質からなっているため、ブラシ32全体としての性能を向上することができ、ひいては電気掃除機用の回転ブラシ装置22の性能を向上することができる。
【0035】
(4)ブラシ32は、基材40と毛羽部41の取着ループパイル部44を構成する糸とが同じポリプロピレンからなるため、基材40上に取着ループパイル部44を容易に熱溶着することができる。
【0036】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・毛羽部41の取着ループパイル部44を構成する糸と基材40とは必ずしも同じ合成樹脂材料で構成する必要はない。例えば、基材40をポリアミド製のものにしてもよい。
【0037】
・毛羽部41において、取着ループパイル部44を構成する糸と機能ループパイル部45を構成する糸とを同じ合成樹脂材料で構成してもよい。例えば、取着ループパイル部44を構成する糸をポリアミド製のものにしてもよい。
【0038】
・毛羽部41は、図10に示すように、2つの機能ループパイル部45のうちいずれか一方を省略してもよいし、あるいは、図11〜図13に示すように、機能ループパイル部45を3つ以上にしてもよい。
【0039】
・毛羽部41は、機能ループパイル部45が少なくとも1つ以上あれば、図14に示すように、取着ループパイル部44を2つ以上にしてもよい。
・毛羽部41は、図15に示すように、取着ループパイル部44を各ループパイル部43の並列方向における端部に配置して折り曲げることなく該取着ループパイル部44を基材40上に熱溶着してもよい。
【0040】
・ブラシ32は、基材40上に毛羽部41を接着剤や両面粘着テープ等によって取着するように構成してもよい。
・毛羽部41は、短手方向の中央から少しずれた位置で取着ループパイル部44を折り曲げた状態で基材40上に熱溶着してもよい。このようにすれば、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45の基材40からの高さが異なるブラシ32を得ることができる。すなわち、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45間に段差を設けることができる。
【0041】
・毛羽部41は、第1保持糸51及び第4保持糸54のうち少なくとも一方を残した状態で基材40上に熱溶着してもよい。すなわち、毛羽部41を形成するための毛羽部形成体50から第1保持糸51及び第4保持糸54のうち少なくとも一方を除去しないようにしてもよい。
【0042】
・両機能ループパイル部45間で、材質を異ならせるようにしてもよい。例えば、一方の機能ループパイル部45を構成する糸をポリプロピレン製のものにするとともに、他方の機能ループパイル部45を構成する糸をポリアミド製のものにしてもよい。
【0043】
・両機能ループパイル部45を構成する糸の材質を、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアセタール(POM)などにしてもよい。これらの合成樹脂は一般に熱溶着が不可能とされているが、熱溶着しない両機能ループパイル部45を構成する糸の構成材料としては用いることができる。すなわち、両機能ループパイル部45を構成する糸の材質に熱溶着性を考慮する必要がない。
【0044】
・取着ループパイル部44のループ42及び両機能ループパイル部45のループ42は、適宜大きさを変更してもよい。例えば、取着ループパイル部44のループ42を機能ループパイル部45のループ42よりも小さくしてもよい。あるいは、両機能ループパイル部45のループ42間でループ42の大きさを異ならせるようにしてもよい。
【0045】
・毛羽部41の立設方向における両機能ループパイル部45のループ42の長さは、摺接する床面F(例えば、フローリングやカーペット)に合わせて適宜変更してもよい。
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸は、色を適宜変更してもよい。例えば、取着ループパイル部44を構成する糸を黒色にするとともに、両機能ループパイル部45を構成する糸を青色にしてもよい。このようにすれば、ブラシ32の意匠性を向上させることができる。
【0046】
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸は、太さを適宜変更してもよい。例えば、両機能ループパイル部45を構成する糸を取着ループパイル部44を構成する糸よりも太くしてもよい。あるいは、両機能ループパイル部45の糸間で糸の太さを異ならせるようにしてもよい。
【0047】
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸には、複数の異なる材質のフィラメントが混ざったマルチフィラメント糸を用いてもよい。
・ブラシ32は、電気掃除機の回転ブラシ装置22以外の用途、例えば、テレビや棚などの埃を払うためのブラシ、あるいはモップとして使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態における電気掃除機のヘッドを示す平断面図。
【図2】実施形態における電気掃除機のヘッドの使用状態を示す側断面図。
【図3】実施形態における電気掃除機の回転ブラシ装置を示す斜視図。
【図4】図3の側面拡大図。
【図5】実施形態におけるブラシの斜視図。
【図6】図5の側面拡大図。
【図7】実施形態における毛羽部形成体の平面図。
【図8】実施形態における毛羽部形成体から第1保持糸及び第4保持糸を除去したときの状態を示す平面図。
【図9】実施形態において基材に毛羽部を熱溶着するときの状態を示す側面図。
【図10】変更例のブラシを示す側面図。
【図11】変更例のブラシを示す側面図。
【図12】変更例のブラシを示す側面図。
【図13】変更例のブラシを示す側面図。
【図14】変更例のブラシを示す側面図。
【図15】変更例のブラシを示す側面図。
【符号の説明】
【0049】
11…電気掃除機のヘッド、22…回転ブラシ装置、31…回転体、32…ブラシ、40…基材、41…毛羽部、42…ループ、43…ループパイル部、44…取着ループパイル部、45…機能ループパイル部、F…床面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機の本体部にホースを介して接続されたヘッド内に配設され、絨毯、畳、フローリング等の床面から塵埃を掻き上げるための電気掃除機用の回転ブラシ装置及び該回転ブラシ装置に用いられるブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気掃除機は本体部と該本体部にホースを介して接続されたヘッドとを備えている。そして、このヘッドを絨毯、フローリング、畳等の床面上で移動させ、該ヘッドの底面に設けられた吸込口からエアを吸引することにより、本体部内に塵埃が吸い込まれるように構成されている。ところで、近年では、例えば絨毯等のようにエアの吸引だけでは塵埃を吸い込みにくい床面に対する集塵能力を向上させるため、ヘッド内に回転ブラシを設けたものが数多く見られるようになってきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の回転ロータ(回転ブラシ装置)は、掃除機用床ノズル(ヘッド)内に回転可能に収容されるとともに長手方向に沿って螺旋状に延びる複数の溝部を有するロータ(回転体)と、該ロータの各溝部にそれぞれ取着された清掃体(ブラシ)からなっている。この清掃体は、平帯体と、略中央で折り曲げられた平帯体の下端部に挿入された芯線と、該芯線と共に平帯体の下端部を挟持する金属製の帯状体(基材)とから構成され、該帯状体をロータの溝部の一方の端部から挿入することでロータに取り付けられるようになっている。
【0004】
また、平帯体は、糸を、両端にループ状部(機能ループパイル部)を形成しながら平帯状に織り、両ループ状部間に支柱部(取着ループパイル部)を残すように、両ループ状部と支柱部との境界部分をそれぞれ綴じ糸で長手方向に沿って縫うことで形成される。
【特許文献1】特開2007−578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の回転ロータの清掃体は、その製造にあたり、平帯体にループ状部を形成するべく最終的に縫製を行う必要がある上、いわゆるチャンネルブラシ形態であるため、平帯体を帯状体に挟み込む必要もある。このため、清掃体の製造が困難、ひいては回転ロータの製造が困難になってしまうという問題があった。
【0006】
加えて、平帯体は、織物からなるため、ループ状部同士間、あるいはループ状部と支柱部との間で材質や大きさ等を異ならせることが困難であった。この結果、清掃体の設計の自由度の低下、ひいては回転ロータの設計の自由度の低下を招いてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、複数のループパイル部を有し、且つ設計の自由度が高くて製造が容易なブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基材上に毛羽部を設けてなるブラシにおいて、前記毛羽部は糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなり、前記各ループパイル部のうち、前記基材に取着されるものは取着ループパイル部とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部とされ、前記各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立していることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、毛羽部が糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなるため、縫製を行うことなく毛羽部を構成する各ループパイル部を形成することが可能となる。加えて、毛羽部を構成している各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立しているため、各ループパイル部間で材質や大きさ等を自由に異ならせることが可能となる。したがって、複数のループパイル部を有するブラシを、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記毛羽部は、前記各ループパイル部の並列方向における前記取着ループパイル部の両側に少なくとも1つずつの機能ループパイル部が配置されるとともに、前記取着ループパイル部が前記並列方向と交差する方向に沿って折り曲げられた状態で前記基材上に取着されていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、少なくとも2つの機能ループパイル部をブラシとして同時に機能させることが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記取着ループパイル部と前記機能ループパイル部とは材質が異なることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、取着ループパイル部を基材に対する取着性に特化した材質にするとともに、機能ループパイル部をブラシとしての機能性に特化した材質にすることで、ブラシの性能を向上することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記基材と前記取着ループパイル部とが同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、基材上に取着ループパイル部を容易に熱溶着することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、床面上の塵埃を吸い込むためのヘッド内に回転可能に収容された回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記ヘッドが床面上を移動する際に、前記回転体を回転させながら前記ブラシを床面に接触させるように構成された電気掃除機用の回転ブラシ装置であって、前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、請求項1と同様の作用効果により、複数のループパイル部を有するブラシを、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となり、ひいては、電気掃除機用の回転ブラシ装置を、設計の自由度を高めつつ容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のループパイル部を有し、且つ設計の自由度が高くて製造が容易なブラシ及び電気掃除機用の回転ブラシ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、回転ブラシ装置が配設される電気掃除機のヘッドの構成について説明する。
図1及び図2に示すように、電気掃除機のヘッド11は、平面視略T字状のケース12を備えている。ケース12の後端部には接続パイプ13の一端側が該ケース12に対して回動可能に接続されており、接続パイプ13の他端側は図示しない電気掃除機の本体部に接続されている。ケース12の底壁における前端部には、長孔状の吸込口14が左右方向に延びるように設けられている。
【0018】
ケース12の内底面上には四角枠状をなす仕切板15が吸込口14を囲むように立設されており、該仕切板15の後端部中央にはエア吸引口16が貫通するように形成されている。ケース12の左内側面にはモータ軸受17が設けられており、該モータ軸受17にはケース12内に設けられたモータ18から延びるモータ軸19の先端部が回転可能に支持されている。
【0019】
仕切板15の左右両側壁にはそれぞれ回転支持体20が設けられており、該両回転支持体20はケース12の左右両内側面にそれぞれ設けられたブラシ軸受21によりそれぞれ回転可能に支持されている。仕切板15の内側には左右方向に延びる回転ブラシ装置22が収容されており、該回転ブラシ装置22の両端部は両回転支持体20にそれぞれ支持されている。
【0020】
また、左側の回転支持体20とモータ軸19の先端部に取着されたローラ19aとの間には、無端状のベルト23が掛装されている。そして、モータ18の駆動により、その回転が、モータ軸19、ローラ19a、ベルト23、及び左側の回転支持体20を介して回転ブラシ装置22に伝達されるようになっている。そして、電気掃除機を使用する際には、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16及び接続パイプ13を介して電気掃除機の本体部内に吸引されるとともに、回転ブラシ装置22が回転されることにより、床面F上の塵、埃、毛髪等の塵埃が掻き取られ、該塵埃がエアとともに吸込口14から吸い込まれるようになっている。このとき、回転ブラシ装置22は、電気掃除機のヘッド11の前進を妨げない方向(図2の矢印で示す方向)に回転される。
【0021】
次に、回転ブラシ装置22の構成について詳述する。
図3及び図4に示すように、回転ブラシ装置22は、断面視略X字状をなす棒状の金属よりなる回転体31と、該回転体31に取着される複数(本実施形態では4つ)のブラシ32とを備えている。回転体31は、4つの断面視略T字状をなす突条31aの基端部同士を、該各突条31aが互いに回転体31の周方向に等間隔に配置されるように、互いに一体に連結し、さらにその全体にわたって周方向に約180度捻ることで形成されている。したがって、回転体31の周面には各突条31a間に螺旋状をなす4本の凹溝33が形成されており、該各凹溝33に各ブラシ32がそれぞれ取着されるようになっている。そして、各凹溝33の開口部33aは、各突条31aの先端部に備えられた突片31bにより狭められている。
【0022】
次に、ブラシ32の構成について詳述する。
図5及び図6に示すように、ブラシ32は、合成樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)の成形品により構成された長尺帯状の基材40と、該基材40の長手方向に沿って延びるように該基材40上に熱溶着された側面視略U字状をなす毛羽部41とを備えている。毛羽部41は、糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部43を複数(本実施形態では3つ)並列に一体形成した編物を該各ループパイル部43の並列方向と直交する方向に沿ってU字状に二つ折りにしてなるものである。この場合、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立している。
【0023】
毛羽部41を構成する3つのループパイル部43のうち、中央に位置しているものは基材40上に熱溶着される取着ループパイル部44とされ、該取着ループパイル部44の両側に配置されているものはブラシとして機能する機能ループパイル部45とされている。取着ループパイル部44を構成する糸には、該取着ループパイル部44の基材40に対する熱溶着性を向上するべく基材40と同じ材質であるポリプロピレン製の糸が用いられている。一方、機能ループパイル部45を構成する糸にはポリアミド製の糸が用いられている。ポリアミド製の糸は、復元性、摺動性、及び耐摩耗性に優れているので、本用途に好適である。
【0024】
また、基材40上における該基材40の短手方向の中央部には毛羽部41を挟むように一対の凸条40aが基材40の長手方向に沿って延設されており、該両凸条40aは基材40上に毛羽部41の取着ループパイル部44を熱溶着する際の位置決め手段として機能するようになっている。なお、図4に示すように、基材40の短手方向の幅は、回転体31の凹溝33内に挿入可能でかつ凹溝33の開口部33aの幅よりも大きくなるように設定されている。
【0025】
次に、回転体31へのブラシ32の取り付け方法について説明する。
図3及び図4に示すように、回転体31へブラシ32を取り付ける場合、毛羽部41が凹溝33の開口部33aから外側へ突出するように、回転体31の端部から各凹溝33内に各ブラシ32の基材40をそれぞれスライド挿入する。すると、基材40は、適度な剛性と可撓性とを有しているため、各凹溝33に沿ってそれぞれ螺旋状に捻れた状態で回転体31に容易に挿着される。このとき、基材40は、突片31bによって強く係止されるため、凹溝33の開口部33aからのブラシ32の脱落が抑制される。
【0026】
次に、ブラシ32の製造方法について説明する。
図7に示すように、ブラシ32を製造する場合には、まず、直線状に延びる、第1保持糸51、第2保持糸52、第3保持糸53、及び第4保持糸54を、所定間隔を置いて互いに平行となるように順次配置する。第2保持糸52及び第3保持糸53には、繊度が78デシテックス/17フィラメントのポリアミド製の糸と、繊度が335デシテックス/24フィラメントで熱溶融性を有するポリアミド製の糸(熱溶融糸)とを撚ってなる撚糸
が用いられている。一方、第1保持糸51及び第4保持糸54には、熱溶融性を有さないポリアミド製の糸が用いられている。また、第1保持糸51及び第2保持糸52の間隔と、第3保持糸53及び第4保持糸54の間隔とは同じになるように設定されており、第2保持糸52及び第3保持糸53の間隔は第1保持糸51及び第2保持糸52の間隔よりも若干広くなるように設定されている。
【0027】
続いて、第1保持糸51及び第2保持糸52間、第3保持糸53及び第4保持糸54間をそれぞれポリアミド製の糸によって各糸51〜54の延びる方向に沿って規則的に蛇行させてループ42がほぼ等ピッチで連続して形成されるように帯状に編む。これと同時に、第2保持糸52及び第3保持糸53間をポリプロピレン製の糸によって各糸51〜54の延びる方向に沿って規則的に蛇行させてほぼ等ピッチでループ42が連続して形成されるように帯状に編む。これにより、図7に示すような帯状の編物からなる毛羽部形成体50が形成される。
【0028】
毛羽部形成体50において、第1保持糸51及び第2保持糸52間、第3保持糸53及び第4保持糸54間にそれぞれ帯状に編まれたポリアミド製の糸は毛羽部41の機能ループパイル部45となる機能ループパイル部形成部55とされ、第2保持糸52及び第3保持糸53間に帯状に編まれたポリプロピレン製の糸は毛羽部41の取着ループパイル部44となる取着ループパイル部形成部56とされている。
【0029】
続いて、毛羽部形成体50に対して、第2保持糸52中及び第3保持糸53中に含まれる熱溶融糸が溶融する程度の温度で熱をかけながらプレスを行う熱プレス加工を施すと、第2保持糸52中及び第3保持糸53中に含まれる熱溶融糸が溶融する。そして、熱プレス加工された後に自然冷却されると、溶融していた熱溶融糸がそれぞれ固化する。これにより、取着ループパイル部形成部56と機能ループパイル部形成部55とが融着されて強固に連結される。
【0030】
続いて、図8に示すように、毛羽部形成体50から第1保持糸51及び第4保持糸54をほどきながら除去する。そして、図8及び図9に示すように毛羽部形成体50を短手方向に2等分する中央面Sに沿って毛羽部形成体50を二つ折りにした状態(毛羽部形成体50を毛羽部41にした状態)で基材40上の両凸条40a間に熱溶着することで、図6に示したブラシ32が得られる。この場合、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45の基材40からの高さは同じになっている。
【0031】
次に、回転ブラシ装置22の作用について説明する。
さて、電気掃除機を使用するときには、図2に示すように、まず、ヘッド11を床面F上に載せる。この状態で電気掃除機を稼動させると、モータ18が駆動されるとともに、仕切板15の内側のエアがエア吸引口16を通り、接続パイプ13を介して図示しない電気掃除機の本体部内に吸引される。このとき、モータ18の駆動に連動して回転ブラシ装置22が左側から見て反時計回り(図2の矢印で示す方向)に回転されるとともに、該回転ブラシ装置22のブラシ32における各毛羽部41の各機能ループパイル部45が床面Fに摺接される。この各機能ループパイル部45の床面Fへの摺接により、該床面F上の塵埃が掻き取られてエアとともに図示しない電気掃除機の本体部内に吸引される。このとき、各機能ループパイル部45を構成する糸は多数のループ42を形成しているため、床面Fをソフトに拭き取る。
【0032】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)毛羽部41が糸を複数のループ42が連続して形成されるように帯状に編んでなる3つのループパイル部43を複数並列に一体形成してなるため、各ループパイル部43を、縫製を行うことなく形成することができる。加えて、各ループパイル部43を構成するそれぞれの糸は互いに独立しているため、各ループパイル部43間で糸の材質やループ42の大きさを自由に異ならせることができる。したがって、複数のループパイル部43を有するブラシ32を、設計の自由度を高めつつ容易に製造することができる。
【0033】
(2)毛羽部41は、取着ループパイル部44の両側に1つずつの機能ループパイル部45が配置された毛羽部形成体50を短手方向(取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45の並列方向)の中央で長手方向(取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45の並列方向と直交する方向)に沿って二つ折りにしてなる。そして、この二つ折りにした状態の毛羽部41の取着ループパイル部44を基材40上に熱溶着することで、基材40上に毛羽部41が立設されたブラシ32が形成されている。このため、ブラシ32は、2つの機能ループパイル部45を床面Fに摺接するブラシとして同時に機能させることができる。すなわち、ブラシ32は、2つの機能ループパイル部45を床面Fに対して同時に摺接させることができる。
【0034】
(3)ブラシ32は、取着ループパイル部44を構成する糸が基材40と同じ材質のポリプロピレンからなり、床面Fに摺接する機能ループパイル部45を構成する糸が復元性、摺動性、及び耐摩耗性に優れたポリアミドからなる。このため、取着ループパイル部44の基材40に対する熱溶着性を高めつつ、機能ループパイル部45の床面F上に対する塵埃の掻き取り性能及び拭き取り性能を長期間維持することができる。すなわち、取着ループパイル部44及び機能ループパイル部45がそれぞれの機能に特化した材質からなっているため、ブラシ32全体としての性能を向上することができ、ひいては電気掃除機用の回転ブラシ装置22の性能を向上することができる。
【0035】
(4)ブラシ32は、基材40と毛羽部41の取着ループパイル部44を構成する糸とが同じポリプロピレンからなるため、基材40上に取着ループパイル部44を容易に熱溶着することができる。
【0036】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・毛羽部41の取着ループパイル部44を構成する糸と基材40とは必ずしも同じ合成樹脂材料で構成する必要はない。例えば、基材40をポリアミド製のものにしてもよい。
【0037】
・毛羽部41において、取着ループパイル部44を構成する糸と機能ループパイル部45を構成する糸とを同じ合成樹脂材料で構成してもよい。例えば、取着ループパイル部44を構成する糸をポリアミド製のものにしてもよい。
【0038】
・毛羽部41は、図10に示すように、2つの機能ループパイル部45のうちいずれか一方を省略してもよいし、あるいは、図11〜図13に示すように、機能ループパイル部45を3つ以上にしてもよい。
【0039】
・毛羽部41は、機能ループパイル部45が少なくとも1つ以上あれば、図14に示すように、取着ループパイル部44を2つ以上にしてもよい。
・毛羽部41は、図15に示すように、取着ループパイル部44を各ループパイル部43の並列方向における端部に配置して折り曲げることなく該取着ループパイル部44を基材40上に熱溶着してもよい。
【0040】
・ブラシ32は、基材40上に毛羽部41を接着剤や両面粘着テープ等によって取着するように構成してもよい。
・毛羽部41は、短手方向の中央から少しずれた位置で取着ループパイル部44を折り曲げた状態で基材40上に熱溶着してもよい。このようにすれば、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45の基材40からの高さが異なるブラシ32を得ることができる。すなわち、取着ループパイル部44を挟む2つの機能ループパイル部45間に段差を設けることができる。
【0041】
・毛羽部41は、第1保持糸51及び第4保持糸54のうち少なくとも一方を残した状態で基材40上に熱溶着してもよい。すなわち、毛羽部41を形成するための毛羽部形成体50から第1保持糸51及び第4保持糸54のうち少なくとも一方を除去しないようにしてもよい。
【0042】
・両機能ループパイル部45間で、材質を異ならせるようにしてもよい。例えば、一方の機能ループパイル部45を構成する糸をポリプロピレン製のものにするとともに、他方の機能ループパイル部45を構成する糸をポリアミド製のものにしてもよい。
【0043】
・両機能ループパイル部45を構成する糸の材質を、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアセタール(POM)などにしてもよい。これらの合成樹脂は一般に熱溶着が不可能とされているが、熱溶着しない両機能ループパイル部45を構成する糸の構成材料としては用いることができる。すなわち、両機能ループパイル部45を構成する糸の材質に熱溶着性を考慮する必要がない。
【0044】
・取着ループパイル部44のループ42及び両機能ループパイル部45のループ42は、適宜大きさを変更してもよい。例えば、取着ループパイル部44のループ42を機能ループパイル部45のループ42よりも小さくしてもよい。あるいは、両機能ループパイル部45のループ42間でループ42の大きさを異ならせるようにしてもよい。
【0045】
・毛羽部41の立設方向における両機能ループパイル部45のループ42の長さは、摺接する床面F(例えば、フローリングやカーペット)に合わせて適宜変更してもよい。
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸は、色を適宜変更してもよい。例えば、取着ループパイル部44を構成する糸を黒色にするとともに、両機能ループパイル部45を構成する糸を青色にしてもよい。このようにすれば、ブラシ32の意匠性を向上させることができる。
【0046】
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸は、太さを適宜変更してもよい。例えば、両機能ループパイル部45を構成する糸を取着ループパイル部44を構成する糸よりも太くしてもよい。あるいは、両機能ループパイル部45の糸間で糸の太さを異ならせるようにしてもよい。
【0047】
・取着ループパイル部44を構成する糸及び両機能ループパイル部45を構成する糸には、複数の異なる材質のフィラメントが混ざったマルチフィラメント糸を用いてもよい。
・ブラシ32は、電気掃除機の回転ブラシ装置22以外の用途、例えば、テレビや棚などの埃を払うためのブラシ、あるいはモップとして使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施形態における電気掃除機のヘッドを示す平断面図。
【図2】実施形態における電気掃除機のヘッドの使用状態を示す側断面図。
【図3】実施形態における電気掃除機の回転ブラシ装置を示す斜視図。
【図4】図3の側面拡大図。
【図5】実施形態におけるブラシの斜視図。
【図6】図5の側面拡大図。
【図7】実施形態における毛羽部形成体の平面図。
【図8】実施形態における毛羽部形成体から第1保持糸及び第4保持糸を除去したときの状態を示す平面図。
【図9】実施形態において基材に毛羽部を熱溶着するときの状態を示す側面図。
【図10】変更例のブラシを示す側面図。
【図11】変更例のブラシを示す側面図。
【図12】変更例のブラシを示す側面図。
【図13】変更例のブラシを示す側面図。
【図14】変更例のブラシを示す側面図。
【図15】変更例のブラシを示す側面図。
【符号の説明】
【0049】
11…電気掃除機のヘッド、22…回転ブラシ装置、31…回転体、32…ブラシ、40…基材、41…毛羽部、42…ループ、43…ループパイル部、44…取着ループパイル部、45…機能ループパイル部、F…床面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に毛羽部を設けてなるブラシにおいて、
前記毛羽部は糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなり、
前記各ループパイル部のうち、前記基材に取着されるものは取着ループパイル部とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部とされ、
前記各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立していることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記毛羽部は、前記各ループパイル部の並列方向における前記取着ループパイル部の両側に少なくとも1つずつの機能ループパイル部が配置されるとともに、前記取着ループパイル部が前記並列方向と交差する方向に沿って折り曲げられた状態で前記基材上に取着されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記取着ループパイル部と前記機能ループパイル部とは材質が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記基材と前記取着ループパイル部とが同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
床面上の塵埃を吸い込むためのヘッド内に回転可能に収容された回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記ヘッドが床面上を移動する際に、前記回転体を回転させながら前記ブラシを床面に接触させるように構成された電気掃除機用の回転ブラシ装置であって、
前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを特徴とする電気掃除機用の回転ブラシ装置。
【請求項1】
基材上に毛羽部を設けてなるブラシにおいて、
前記毛羽部は糸を複数のループが連続して形成されるように帯状に編んでなるループパイル部を複数並列に一体形成してなり、
前記各ループパイル部のうち、前記基材に取着されるものは取着ループパイル部とされるとともに、ブラシとして機能するものは機能ループパイル部とされ、
前記各ループパイル部を構成するそれぞれの糸は互いに独立していることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記毛羽部は、前記各ループパイル部の並列方向における前記取着ループパイル部の両側に少なくとも1つずつの機能ループパイル部が配置されるとともに、前記取着ループパイル部が前記並列方向と交差する方向に沿って折り曲げられた状態で前記基材上に取着されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記取着ループパイル部と前記機能ループパイル部とは材質が異なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記基材と前記取着ループパイル部とが同じ種類の合成樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項5】
床面上の塵埃を吸い込むためのヘッド内に回転可能に収容された回転体と、該回転体に取着されるブラシとを備え、前記ヘッドが床面上を移動する際に、前記回転体を回転させながら前記ブラシを床面に接触させるように構成された電気掃除機用の回転ブラシ装置であって、
前記ブラシは、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のブラシによって構成されていることを特徴とする電気掃除機用の回転ブラシ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−51711(P2010−51711A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222338(P2008−222338)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】
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