説明

ブラシ毛材

【課題】研磨効果や洗浄効果に優れたブラシ毛材並びにブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ毛材は、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維フィラメント糸に砥粒を含有させたものからなる。前記フィラメント糸はモノフィラメント糸を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨や洗浄に用いられるブラシ毛材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブラシ毛材として、砥粒を含有させた合成樹脂、例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレート等のモノフィラメント糸ヤーンを用いた、製鉄工業におけるストリップの研磨や洗浄に用いるブラシロールが開示されている。しかし、さらに研磨効果や洗浄効果に優れたブラシ毛材が要求されている。
【特許文献1】特開2001−275755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、さらに研磨効果や洗浄効果に優れたブラシ毛材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
(1)ポリトリメチレンテレフタレート系繊維フィラメント糸に砥粒を含有させたことを特徴とするブラシ毛材。
(2)前記フィラメント糸がモノフィラメント糸であることを特徴とする(1)に記載のブラシ毛材。
(3)(1)または(2)に記載のブラシ毛材を用いたブラシ。
【発明の効果】
【0005】
本発明のブラシ毛材は、研磨効果や洗浄効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のブラシ毛材には、砥粒を含有する繊維として、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維フィラメント糸が用いられる。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル系繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位が約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分および/またはグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0007】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。初期引張抵抗度は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはその機能的誘導体と、トリメチレングリコールまたはその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種または二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしたり、複合紡糸(鞘芯、サイドバイサイド等)してもよい。(ブレンド、複合紡糸する際のポリトリメチレンテレフタレートの含有率は、質量%で50%以上が好ましい)
【0009】
複合紡糸の組み合わせとしては、固有粘度差を有するポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが最適であるが、この他に、ポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートとの組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレート(または共重合ポリトリメチレンテレフタレート)とポリエチレンテレフタレート(または共重合ポリエチレンテレフタレート)との組み合わせ、ポリトリメチレンテレフタレートまたは共重合ポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(または共重合ポリブチレンテレフタレート)との組み合わせが好ましい。
【0010】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(p−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個または3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等またはグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用できる。
【0011】
さらに二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
また、繊維の形態は、フィラメント糸であり、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
フィラメント糸の単糸繊度は、好ましくは5dtex以上、より好ましくは10dtex以上、特に好ましくは30dtex以上、最も好ましくは55〜1670dtex程度であり、フィラメント糸の形態としては、マルチフィラメント原糸(総繊度は20〜500dtex程度)、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、モノフィラメント糸等が挙げられるが、特にモノフィラメント原糸が好ましい。
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸法には特に制限はなく、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)などを採用することができる。
また、モノフィラメント糸は、紡出したモノフィラメント糸を、冷水浴中で冷却しつつ、所定の繊度まで細化し、未延伸モノフィラメント糸とした後、この未延伸糸を所定の温度の温水浴中で延伸し、次いで、所定の温度のスチーム浴中で定長または弛緩熱処理し、巻き取り機で巻き取ることにより製造することができる。モノフィラメント糸の沸水収縮率を調節するために、さらに所望の弛緩率で連続または非連続で熱処理してもよい。例えば、弛緩率−10〜+15%程度で100〜180℃程度の温度で、連続または非連続で熱処理する。ここで、弛緩率は、熱処理前のモノフィラメント糸の長さをL0 、熱処理中の拘束長さをL1 とした時に、次式で計算される。
弛緩率(%)={(L0 −L1 )/L0 }×100
【0013】
本発明は、上記のフィラメント糸に砥粒を含有させることに特徴がある。砥粒としては、コークス粉、アルミナ粉などのアルミナ系、白けい石などの炭化けい素、ダイヤモンド、エメリー、ざくろ石などの天然物系、炭化物系のジルコニア系、ガラス系等を用いることができる。好ましい砥粒の粒度は、日本工業規格(JIS)#10000〜80であり、より好ましくは#10000〜100、特に好ましくは#3000〜320である。
砥粒の含有形態としては、砥粒を練り込んでから紡糸するタイプの練り込み型と、接着剤を介して砥粒をフィラメント糸表面に付着させる付着型が挙げられるが、耐久性等の点からは前者の形態が好ましい。砥粒の含有率は0.2〜20質量%の範囲が好ましい。
【0014】
本発明のブラシ毛材は、単独で用いてもよいが、希望する本数を引き揃えてから他の合成繊維フィラメント糸(モノフィラメント糸やマルチフィラメント糸)でカバリング(シングルやダブル)したり、組み紐状に編み上げて用いてもよいし、さらにはこれらを希望する本数で引き揃えてからさらに他の合成繊維フィラメント糸でカバリングしたり、組み紐状に編み上げて用いてもよい。また、必要に応じてさらにナイロン系接着剤等により樹脂で固定してもよい。
【0015】
ここで、他の合成繊維フィラメント糸としては、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維(共重合ポリエステル繊維を含む)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、芳香族ポリアミド等のポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル繊維等を用いることができ、これらの一種または二種以上を混用してもよい。また、砥粒を含有したものを用いてもよい。
【実施例】
【0016】
本発明を実施例により説明する。なお、例中の固有粘度は下記の方法で測定した。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸またはポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0017】
[実施例1]
固有粘度[η]0.9のポリトリメチレンテレフタレート(SiC#320含有率5.5質量%)を溶融押し出し、常法により390dtexのモノフィラメント糸を製造した。
このモノフィラメント糸をブラシ毛材として用いたロール状のブラシを作製し、駆動装置としてのポリッシャーに装着し、200rpmの回転数で床面を洗浄した結果、極めて美麗に洗浄されていた。
【0018】
[比較例1]
実施例1において、ポリトリメチレンテレフタレートの代わりに、ナイロン66(SiC#320含有率5.5質量%)390dtexのモノフィラメント糸を用いて実施例1同様に洗浄性を評価した結果、実施例1よりも劣ったものであった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のブラシ毛材は、研磨効果や洗浄効果に優れるため、研磨や洗浄用ブラシとして好適に用いることができる。特に製鉄工業におけるストリップの研磨、バリ取りや洗浄に好適であるが、その他にもセラミックや床面等のブラッシング、ポリッシングが必要な用途に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート系繊維フィラメント糸に砥粒を含有させたことを特徴とするブラシ毛材。
【請求項2】
前記フィラメント糸がモノフィラメント糸であることを特徴とする請求項1に記載のブラシ毛材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブラシ毛材を用いたブラシ。

【公開番号】特開2006−141452(P2006−141452A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332007(P2004−332007)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】